(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023535
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20250207BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20250207BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
G02F1/1339 500
G02F1/1334
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127742
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩壁 靖
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088FA03
2H088FA04
2H088FA09
2H088GA02
2H088GA10
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA08
2H088KA20
2H088MA04
2H189AA04
2H189CA08
2H189EA03Y
2H189EA04Y
2H189EA05Y
2H189FA22
2H189FA44
2H189FA53
2H189GA47
2H189GA49
2H189LA03
2H189LA05
2H189LA10
(57)【要約】
【課題】表示ムラが生じず、表示品質が向上した表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、複数のスイッチング素子を有する、第1基板と、前記第1基板に対向して配置される、第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板との間に配置される、シール材と、前記第1基板及び前記第2基板との間、並びに、前記シール材で囲まれる領域に配置される、ポリマー及び液晶分子を有する高分子分散液晶層と、を備え、前記高分子分散液晶層のネマティック-アイソトロピック転移温度は、前記シール材の硬化温度より高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を有する、第1基板と、
前記第1基板に対向して配置される、第2基板と、
前記第1基板及び前記第2基板との間に配置される、シール材と、
前記第1基板及び前記第2基板との間、並びに、前記シール材で囲まれる領域に配置される、ポリマー及び液晶分子を有する高分子分散液晶層と、
を備え、
前記高分子分散液晶層のネマティック-アイソトロピック転移温度は、前記シール材の硬化温度より高い、表示装置。
【請求項2】
前記高分子分散液晶層の前記ネマティック-アイソトロピック転移温度は、120℃以上150℃以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数のスイッチング素子を含む、複数の画素と、
前記複数の画素を備える、表示領域と、
をさらに備え、
前記シール材は、前記表示領域を囲んで配置される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記高分子分散液晶層の前記液晶分子は、六員環を3つ有する三環式化合物又は六員環を4つ有する四環式化合物を含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
第1基材上に、複数のスイッチング素子を形成して、第1基板を形成し、
前記複数のスイッチング素子を含む表示領域を囲って、シール材を形成し、
前記シール材に囲まれた領域に、液晶分子を含む液晶材料と、液晶モノマーと、を含む高分子分散液晶材料を滴下し、
前記第1基板に対向して、第2基板を配置し、
紫外光を照射することにより、前記シール材を硬化し、
紫外線を照射することにより、前記液晶モノマーを高分子化して、ポリマーを形成し、
前記紫外線の照射により硬化した前記シール材を加熱することにより、前記シール材を硬化し、
前記高分子分散液晶材料のネマティック-アイソトロピック転移温度は、前記シール材の加熱による硬化温度より高い、表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記高分子分散液晶材料の前記ネマティック-アイソトロピック転移温度は、120℃以上150℃以下である、請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記表示装置は、
前記複数のスイッチング素子を含む、複数の画素と、
前記複数の画素を備える、表示領域と、
をさらに備え、
前記シール材は、前記表示領域を囲んで配置される、請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記高分子分散液晶材料の前記液晶分子は、六員環を3つ有する三環式化合物又は六員環を4つ有する四環式化合物を含む、請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
第1基材上に、複数のスイッチング素子を形成して、第1基板を形成し、
前記複数のスイッチング素子を含む表示領域を囲って、シール材を形成し、
前記シール材に囲まれた領域に、液晶分子を含む液晶材料と、液晶モノマーと、を含む高分子分散液晶材料を滴下し、
前記第1基板に対向して、第2基板を配置し、
前記シール材を加熱することにより、前記シール材を硬化し、
紫外線を照射することにより、前記液晶モノマーを高分子化して、ポリマーを形成し、
紫外光を照射することにより、前記加熱により硬化した前記シール材を硬化し、
前記高分子分散液晶材料のネマティック-アイソトロピック転移温度は、前記シール材の加熱による硬化温度より高い、表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記高分子分散液晶材料の前記ネマティック-アイソトロピック転移温度は、120℃以上150℃以下である、請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記表示装置は、
前記複数のスイッチング素子を含む、複数の画素と、
前記複数の画素を備える、表示領域と、
をさらに備え、
前記シール材は、前記表示領域を囲んで配置される、請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記高分子分散液晶材料の前記液晶分子は、六員環を3つ有する三環式化合物又は六員環を4つ有する四環式化合物を含む、請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入射光を散乱する散乱状態と入射光を透過する透過状態とを切り替え可能な高分子分散液晶を用いた表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、表示ムラが生じず、表示品質が向上した表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る表示装置は、
複数のスイッチング素子を有する、第1基板と、
前記第1基板に対向して配置される、第2基板と、
前記第1基板及び前記第2基板との間に配置される、シール材と、
前記第1基板及び前記第2基板との間、並びに、前記シール材で囲まれる領域に配置される、ポリマー及び液晶分子を有する高分子分散液晶層と、
を備え、
前記高分子分散液晶層のネマティック-アイソトロピック転移温度は、前記シール材の硬化温度より高い。
【0006】
また、一実施形態に係る表示装置の製造方法では、
第1基材上に、複数のスイッチング素子を形成して、第1基板を形成し、
前記複数のスイッチング素子を含む表示領域を囲って、シール材を形成し、
前記シール材に囲まれた領域に、液晶分子を含む液晶材料と、液晶モノマーと、を含む高分子分散液晶材料を滴下し、
前記第1基板に対向して、第2基板を配置し、
紫外光を照射することにより、前記シール材を硬化し、
紫外線を照射することにより、前記液晶モノマーを高分子化して、ポリマーを形成し、
前記紫外線の照射により硬化した前記シール材を加熱することにより、前記シール材を硬化し、
前記高分子分散液晶材料のネマティック-アイソトロピック転移温度は、前記シール材の加熱による硬化温度より高い。
【0007】
一実施形態に係る表示装置の製造方法では、
第1基材上に、複数のスイッチング素子を形成して、第1基板を形成し、
前記複数のスイッチング素子を含む表示領域を囲って、シール材を形成し、
前記シール材に囲まれた領域に、液晶分子を含む液晶材料と、液晶モノマーと、を含む高分子分散液晶材料を滴下し、
前記第1基板に対向して、第2基板を配置し、
前記シール材を加熱することにより、前記シール材を硬化し、
紫外線を照射することにより、前記液晶モノマーを高分子化して、ポリマーを形成し、
紫外光を照射することにより、前記加熱により硬化した前記シール材を硬化し、
前記高分子分散液晶材料のネマティック-アイソトロピック転移温度は、前記シール材の加熱による硬化温度より高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における表示装置の概略的な構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の表示装置の表示領域の概略的な構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した表示パネルに適用し得る構成の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、表示パネルの概略的な構成の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、比較例1の表示パネルの平面図である。
【
図6】
図6は、比較例1の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、比較例2の表示パネルの平面図である。
【
図8】
図8は、比較例2の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、比較例3の表示パネルの平面図である。
【
図10】
図10は、比較例3の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態における表示装置の他の構成例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本明細書で述べる実施形態は、一般的なものでなく、本発明の同一又は対応する特別な技術的特徴について説明する実施形態である。以下、図面を参照しながら一実施形態に係る表示装置について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第3方向Zの矢印の先端に向かう方向を上又は上方と定義し、第3方向Zの矢印の先端に向かう方向とは反対側の方向を下又は下方と定義する。なお第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zを、それぞれ、X方向、Y方向、及び、Z方向と呼ぶこともある。
【0012】
また、「第1部材の上方の第2部材」及び「第1部材の下方の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよく、又は第1部材から離れて位置していてもよい。後者の場合、第1部材と第2部材との間に、第3の部材が介在していてもよい。一方、「第1部材の上の第2部材」及び「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接している。
【0013】
また、第3方向Zの矢印の先端側に表示装置を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを平面視という。第1方向X及び第3方向Zによって規定されるX-Z平面、あるいは第2方向Y及び第3方向Zによって規定されるY-Z平面における表示装置の断面を見ることを断面視という。
【0014】
[実施形態]
図1は、本実施形態における表示装置の概略的な構成を示す平面図である。
図2は、
図1の表示装置の表示領域の概略的な構成を示す平面図である。本実施形態において、第1方向X及び第2方向Yは、表示装置DSPを構成する基板の主面と平行な方向に相当する。
【0015】
本実施形態においては、表示装置DSPとして、高分子分散液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal:PDLC)を適用した液晶表示装置を開示する。表示装置DSPは、表示パネルPNLと、配線基板FPCと、ICチップICP(駆動回路)と、複数の光源LSとを備えている。
【0016】
表示パネルPNLは、基板SUB1(アレイ基板)と、基板SUB2(対向基板)と、液晶層LCと、シール材SALと、を備えている。基板SUB1及び基板SUB2は、X-Y平面と平行な平板状に形成され、第3方向Zにおいて対向している。液晶層LCは、基板SUB1と基板SUB2との間に配置されている。
【0017】
表示パネルPNLは、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAを囲む額縁状の周辺領域PAとを有している。シール材SALは、表示領域DAを囲んで配置されている。表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。
【0018】
後に詳述するが、シール材SALは、光硬化樹脂及び熱硬化樹脂の混合物を硬化したものが用いられる。光硬化樹脂として、例えば、アクリル樹脂が用いられる。熱硬化樹脂として、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。アクリル樹脂は紫外光(UV)で硬化し、エポキシ樹脂は熱で硬化する。
【0019】
表示領域DAには、第1方向Xに沿って延伸し、第2方向Yに沿って並んで配置される、複数の走査線GLが設けられている。第1方向Xに沿って並んで配置され、第2方向Yに沿って延伸する、複数の信号線SLが設けられている。複数の走査線GL及び複数の信号線SLの交点には、それぞれ、画素PXが設けられている。1つの画素PXは、2本の走査線GL及び2本の信号線SLに囲まれている領域に配置されている。
【0020】
複数の画素PXは、それぞれ、スイッチング素子SWと、画素電極PEと、共通電極CEとを備えている。スイッチング素子SWは、例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって構成され、1本の走査線GL及び1本の信号線SLと電気的に接続されている。1本の走査線GLは、第1方向Xに並んだ複数の画素PXのそれぞれにおけるスイッチング素子SWと電気的に接続されている。1本の信号線SLは、第2方向Yに並んだ複数の画素PXのそれぞれにおけるスイッチング素子SWと電気的に接続されている。
【0021】
画素電極PEは、スイッチング素子SWと電気的に接続されている。共通電極CEは、複数の画素電極PEに対して共通に設けられている。液晶層LCは、画素電極PEと共通電極CEとの間に生じる電界によって駆動される。容量CSは、例えば共通電極CEと同電位の電極および画素電極PEと同電位の電極の間に形成される。
【0022】
走査線GL、信号線SL、スイッチング素子SW、及び画素電極PEは、基板SUB1に設けられ、共通電極CEは基板SUB2に設けられている。走査線GLは、周辺領域PAに延出し、配線基板FPCあるいはICチップICPと電気的に接続されている。信号線SLは、周辺領域PAに延出し、配線基板FPCあるいはICチップICPと電気的に接続されている。
【0023】
配線基板FPCは、基板SUB1の延出部Exに配置された端子と電気的に接続されている。延出部Exは、基板SUB1のうち基板SUB2と対向しない部分に相当する。例えば、配線基板FPCは、フレキシブルプリント配線基板である。ICチップICPは、配線基板FPCに実装されている。ICチップICPは、例えば、画像表示に必要な信号を出力するディスプレイドライバなどを内蔵している。なお、ICチップICPは、延出部Exに実装されてもよい。
【0024】
複数の光源LSは、延出部Exに重畳している。これら光源LSは、第1方向Xに沿って間隔をおいて並んでいる。複数の光源LSのそれぞれは、例えば赤色(R)の光を放つ発光素子、緑色(G)の光を放つ発光素子、および青色(B)の光を放つ発光素子を含む。これら発光素子としては、例えば発光ダイオード(LED)を用いることができるが、この例に限定されない。
【0025】
図3は、
図1に示した表示パネルに適用し得る構成の一例を示す断面図である。基板SUB1は、基材BA1と、絶縁層INS1と、絶縁層INS2と、容量電極YEと、配向膜AL1と、スイッチング素子SWと、画素電極PEと、を備えている。基材BA1は、面BA1aと、第3方向Zに沿って面BA1aの反対側に位置する面BA1bと、を有している。面BA1a及び面BA1bを、それぞれ、基材BA1の下面及び上面ともいう。
【0026】
スイッチング素子SWは、面BA1b側に配置されている。絶縁層INS1は、スイッチング素子SWを覆っている。
図3においてはスイッチング素子SWを簡略化しているが、実際にはスイッチング素子SWは半導体層や各種の電極を含む。また、
図1に示した走査線GLおよび信号線SLは、基材BA1と絶縁層INS1との間に配置されているが、
図3においては図示を省略している。
【0027】
容量電極YEは、絶縁層INS1及び絶縁層INS2の間に配置されている。画素電極PEは、絶縁層INS2と配向膜AL1との間において、画素PXごとに配置されている。画素電極PEは、容量電極YEの開口部OPを介してスイッチング素子SWと電気的に接続されている。画素電極PEは、容量電極YEと対向し、上述の容量CSを形成している。配向膜AL1は、画素電極PEを覆っている。
【0028】
基板SUB2は、基材BA2と、遮光層LBと、オーバーコート層(絶縁層)OCと、配向膜AL2と、共通電極CEとを備えている。基材BA2は、基板SUB1に対向する面BA2aと、第3方向Zに沿って面BA2aの反対側に位置する面BA2bと、を有している。面BA2a及び面BA2bを、それぞれ、基材BA2の下面及び上面ともいう。
【0029】
本開示では、基材BA1及び基材BA2を、それぞれ、第1基材及び第2基材ともいう。配向膜AL1及び配向膜AL2を、それぞれ、第1配向膜及び第2配向膜ともいう。
【0030】
遮光層LBおよび共通電極CEは、面BA2a側に配置されている。例えば、遮光層LBは、スイッチング素子SW、走査線GL、及び信号線SLと対向している。共通電極CEは、複数の画素PXに亘って配置され、第3方向Zにおいて複数の画素電極PEと対向している。また、共通電極CEは、遮光層LBを覆っている。共通電極CEは、容量電極YEと同電位である。オーバーコート層OCは、共通電極CEを覆っている。配向膜AL2は、オーバーコート層OCを覆っている。液晶層LCは、配向膜AL1および配向膜AL2の間に配置され、これら配向膜AL1及び配向膜AL2に接している。なおオーバーコート層OCを設けず、配向膜AL2が共通電極CEを覆っていてもよい。
【0031】
基板SUB1上(基材BA1上)の延出部Exには、上述したように、光源LS及び配線基板FPCが設けられている。なお光源LSは、延出部Exに設けられていなくてもよい。光源LSは、表示パネルPNLの外側であって、第2方向Yと逆方向に沿って延出部Exの反対側に配置されていてもよい。
【0032】
基材BA1および基材BA2は、例えばガラス基板やプラスチック基板などの透明絶縁基材である。絶縁層INS1は、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物またはアクリル樹脂などの透明な絶縁材料によって形成されている。一例では、絶縁層INS1は、無機絶縁膜および有機絶縁膜を含んでいる。絶縁層INS2は、例えばシリコン窒化物などの無機絶縁膜である。容量電極YE、画素電極PEおよび共通電極CEは、例えばインジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極である。
【0033】
なお、表示パネルPNLの構成は、
図1及び
図2の例に限定されない。例えば、基板SUB1は、容量電極YEを備えなくてもよい。また、基板SUB2は、遮光層LBを備えなくてもよい。
【0034】
また、表示装置DSPは偏光板を備えていない。すなわち表示パネルPNLの基板SUB1の面BA1aには偏光板が設けられておらず、基板SUB2の面BA2bにも偏光板が設けられていない。
【0035】
図4は、表示パネルの概略的な構成の一例を示す断面図である。表示パネルPNLは、基板SUB1と基板SUB2との間に、液晶層LCを有している。本実施形態において、液晶層LCは、ポリマー鎖を含むポリマーPMと、液晶分子MCとを有している。液晶分子MCは、ポリマーPMの隙間に分散されている。
【0036】
基板SUB1は、基材BA1と、絶縁層INS1と、信号線SLと、絶縁層INS2と、容量電極YEと、画素電極PEと、配向膜AL1と、を備えている。
【0037】
絶縁層INS1は、基材BA1の面BA1b上に設けられている。信号線SLは、絶縁層INS1上に設けられ、絶縁層ILYによって覆われている。容量電極YEは、開口部OPにおいて絶縁層INS1上に設けられ、絶縁層INS2によって覆われている。また、容量電極YEは、絶縁層ILYに重なり、信号線SLと対向している。
【0038】
画素電極PEは、開口部OPにおいて絶縁層INS2の上に設けられ、配向膜AL1によって覆
われている。つまり、容量電極YEは、基材BA1及び画素電極PEとの間に設けられている。画素電極PEは、絶縁層INS2を挟んで容量電極YEと対向し、画素PXの容量CSを形成している。配向膜AL1は、液晶層LCに接している。
【0039】
基板SUB2は、基材BA2と、共通電極CEと、配向膜AL2と、を備えている。
図3と同様に、共通電極CE及び配向膜AL2の間に、オーバーコート層を設けてもよい。共通電極CEは、基材BA2の面BA2aに接して設けられ、配向膜AL2によって覆われている。
【0040】
なお、基板SUB2において、スイッチング素子SW、走査線GL、及び信号線SLの直上にそれぞれ遮光層が設けられてもよい。また、基材BA2と共通電極CEとの間に、透明な絶縁層(オーバーコート層)が設けられてもよい。共通電極CEは、複数の画素電極PEと対向している。また、共通電極CEは、容量電極YEと電気的に接続されており、容量電極YEとは同電位である。配向膜AL2は、液晶層LCに接している。
【0041】
ポリマーPMおよび液晶分子MCのそれぞれは、光学異方性あるいは屈折率異方性を有している。ポリマーPMの電界に対する応答性は、液晶分子MCの電界に対する応答性より低い。例えば、ポリマーPMの配向方向は、画素電極PEと共通電極CEの間の電界にかかわらずほとんど変化しない。一方、液晶分子MCの配向方向は、当該電界に応じて変化する。
【0042】
液晶層LCに電界が作用していないか、あるいは当該電界が極めて弱い状態においては、ポリマーPMおよび液晶分子MCのそれぞれの光軸は互いに略平行となる。液晶分子MCとポリマーPMの屈折率が互いに実質的に等しくなる。換言すると、液晶分子MCとポリマーPMの屈折率差が実質的に無くなる。したがって、液晶層LCに入射した光は、液晶層LC内でほとんど散乱されることなく透過する。以下、このような状態を透明状態と呼ぶ。また、透明状態を実現するための画素電極PEの電圧を透明電圧と呼ぶ。透明電圧は、共通電極CEに印加される共通電圧と同じであってもよいし、共通電圧と僅かに異なる電圧であってもよい。
【0043】
一方、液晶層LCに十分な電界が作用している状態では、ポリマーPMおよび液晶分子MCのそれぞれの光軸は互いに交差する。したがって、液晶層LCに入射した光は、液晶層LC内で散乱される。以下、このような状態を散乱状態と呼ぶ。また、散乱状態を実現するための画素電極PEの電圧を散乱電圧と呼ぶ。散乱電圧は、透明電圧よりも共通電極CEとの電位差が大きくなるような電圧である。
【0044】
ここで、比較例について説明する。
図5は、比較例1の表示パネルの平面図である。
図5に示す表示パネルPNLr1(表示装置DSPr1)では、液晶層として、高分子分散液晶材料ではなく、例えば、ネマティック液晶材料が用いられている。
図5に示す表示パネルPNLr1について、
図1に示す表示パネルPNLと同じ構成要素は、同じ符号で示している。
【0045】
表示パネルPNLr1のシール材SALには切り欠きが存在し、この部分に注入孔INHが形成される。真空吸入によって液晶材料を表示パネルPNLr1の内部に吸入した後、封止材HSZによって注入孔INHを封止する。
【0046】
図6は、比較例1の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
図6では、特に液晶材料注入について説明する。
【0047】
表示パネルPNLr1の基板SUB1に走査線GL、スイッチング素子、信号線SL,画素電極、平坦化絶縁層等を形成後、配向膜材料を塗布する(Coating alignment film member)(ステップSR101)。配向膜材料として、例えば、ポリイミド樹脂が用いられる。
【0048】
配向膜材料をラビング又は光配向処理を行う(Rubbing or processing light orientation)(ステップSR102)。これにより、配向膜が形成される。
【0049】
表示領域DAを囲って、基板SUB1上にシール材SALを塗布する(Coating sealing member)(ステップSR103)。シール材SALには、熱硬化樹脂、例えば、エポキシ樹脂が用いられる。シール材SALには、上述のように、切り欠きを設ける。
【0050】
基板SUB1上に基板SUB2を重ね合わせる(Superposing substrates)(ステップSR104)。基板SUB1及び基板SUB2の間であり、シール材SALで囲まれた領域(表示領域DA)内には、空間が生じる。
【0051】
シール材SALを熱により硬化する(Curing sealing member by heating)(ステップSR105)。上述の切り欠きが、注入孔INHとなる。
【0052】
表示パネルPNLr1を真空チャンバ内に配置し、真空封入法により、注入孔INHから上述の空間内(表示領域DA内)に液晶材料を注入する(Injecting liquid crystal member)(ステップSR106)。
【0053】
液晶材料を注入後、注入孔INHを封止材HSZによって封止する(Sealing injection hole)(ステップSR107)。以上により、表示パネルPNLr1が完成する(Completion)(ステップSR108)。
【0054】
真空封入法では、シール材SALが完全に硬化した後に、シール材SALが液晶材料と接触する。このため、液晶材料への汚染の問題が少ないという利点がある。しかしながら、液晶材料を真空にした表示パネルPNLr1に毛細管現象で注入するため、基板SUB1及び基板SUB2のサイズが大きくなるにつれて、液晶材料の注入時間が長くなり、生産性が悪いという恐れがある。
【0055】
図7は、比較例2の表示パネルの平面図である。
図7に示す表示パネルPNLr2(表示装置DSPr2)では、液晶層として、高分子分散液晶材料ではなく、例えば、ネマティック液晶材料が用いられている。
図7に示す表示パネルPNLr2について、
図1に示す表示パネルPNLと同じ構成要素は、同じ符号で示している。
【0056】
表示パネルPNLr2では、シール材SALは、表示領域DAを囲って隙間なく設けられている。表示パネルPNLr2のシール材SALには、切り欠けは設けられていない。
【0057】
図8は、比較例2の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
図8では、特に液晶材料滴下について説明する。
【0058】
ステップSR101と同様に、配向膜材料を塗布する(Coating alignment film member)(ステップSR201)。
【0059】
ステップSR102と同様に、配向膜材料をラビング又は光配向処理を行う(Rubbing or processing light orientation)(ステップSR202)。これにより、配向膜が形成される。
【0060】
表示領域DAを隙間なく囲って、基板SUB1上にシール材SALを塗布する(Coating sealing member)(ステップSR203)。シール材SALには、光硬化樹脂及び熱硬化樹脂が用いられる。光硬化樹脂は、例えば、アクリル樹脂を用いればよい。熱硬化樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を用いればよい。表示パネルPNLr1と異なり、表示パネルPNLr2のシール材SALには、切り欠きを設けない。
【0061】
基板SUB1のシール材SALに囲まれた領域(表示領域DA)内に、液晶材料を滴下して注入する(Injecting liquid crystal member by dropping)(ステップSR204)。すなわち、ODF(One Drop Fill)法により、液晶材料を充填する。
【0062】
基板SUB1上に基板SUB2を重ね合わせる(Superposing substrates)(ステップSR205)。基板SUB1及び基板SUB2の間であり、シール材SALで囲まれた領域(表示領域DA)内には、液晶材料が充填されている。
【0063】
シール材SALをUV照射により硬化する(Curing sealing member by UV irradiation)(ステップSR206)。これにより、シール材SALに含まれる光硬化樹脂が硬化される。
【0064】
シール材SALを熱により硬化する(Curing sealing member by heating)(ステップSR207)。これにより、シール材SALに含まれる熱硬化樹脂が硬化される。
【0065】
以上により、表示パネルPNLr2が完成する(Completion)(ステップSR208)。
【0066】
液晶滴下(ODF)方式は、真空注入方式のように液晶材料の注入に時間がかかることはない。そのため、液晶滴下(ODF)方式は、生産性の点で真空封入方式に比べて優れている。また、液晶滴下(ODF)方式では、シール材SALの外側に液晶材料が入り込むこともない。
【0067】
しかしながら、シール材SALが未硬化の状態で液晶材料と接触するため、液晶材料や配向膜を汚染する恐れがある。
【0068】
上述のように、液晶滴下(ODF)方式で用いられるシール材SALは、一般的に、アクリル樹脂のような光硬化樹脂及びエポキシ樹脂のような熱硬化樹脂によって構成される。液晶滴下(ODF)方式で用いられるシール材のSALの光硬化樹脂に対して、UV照射をしても、温度も低いため、液晶材料への汚染は少ない。
【0069】
一方、液晶滴下(ODF)方式で用いられるシール材SALの熱硬化温度は、120℃程度である。シール材SALの熱硬化温度は、液晶材料のネマティック-アイソトロピック(ネマティック-等方相)転移温度(転移温度Tniとする)よりも高い。シール材SALの熱硬化の工程(ステップSR207)において、転移温度Tniよりも高い温度で液晶材料を加熱すると、液晶材料はネマティック相から流動性の高い等方性液体に相転移する。そのため、液晶材料がより汚染されやすくなる。
【0070】
図9は、比較例3の表示パネルの平面図である。
図9に示す表示パネルPNLr3(表示装置DSPr3)では、液晶層として、高分子分散液晶材料が用いられている。
図9に示す表示パネルPNLr3について、
図1に示す表示パネルPNLと同じ構成要素は、同じ符号で示している。
【0071】
表示パネルPNLr3のシール材SALには複数の注入孔INHが形成される。真空吸入によって液晶材料を表示パネルPNLr3の内部に吸入した後、封止材HSZによってそれぞれの注入孔INHを封止する。
【0072】
図10は、比較例3の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
図10では、特に液晶材料注入について説明する。
【0073】
ステップSR101と同様に、配向膜材料を塗布する(Coating alignment film member)(ステップSR301)。
【0074】
ステップSR102と同様に、配向膜材料をラビング又は光配向処理を行う(Rubbing or processing light orientation)(ステップSR302)。これにより、配向膜が形成される。
【0075】
表示領域DAを囲って、基板SUB1上にシール材SALを塗布する(Coating sealing member)(ステップSR303)。シール材SALには、熱硬化樹脂が用いられる。熱硬化樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を用いられる。シール材SALには、上述のように、複数の切り欠きを設ける。
【0076】
基板SUB1上に基板SUB2を重ね合わせる(Superposing substrates)(ステップSR304)。基板SUB1及び基板SUB2の間であり、シール材SALで囲まれた領域(表示領域DA)内には、空間が生じる。
【0077】
シール材SALの熱硬化樹脂を熱により硬化する(Curing sealing member by heating)(ステップSR305)。上述の複数の切り欠きが、複数の注入孔INHとなる。
【0078】
表示パネルPNLr3を真空チャンバ内に配置し、真空封入法により、複数の注入孔INHから上述の空間内(表示領域DA内)に高分子分散液晶(PDLC)材料を注入する(Injecting PDLC member)(ステップSR306)。
【0079】
高分子分散液晶(PDLC)材料には、液晶分子MCを含む液晶材料、液晶モノマー、光ラジカル重合開始剤等が含まれている。
【0080】
液晶材料を注入後、注入孔INHを封止材HSZによって封止する(Sealing injection hole)(ステップSR307)。
【0081】
次いで、PDLC材料をUV照射により硬化する(Curing PDLC member by UV irradiation)(ステップSR308)。
【0082】
紫外光(UV)が照射されると、光ラジカル重合開始剤により重合が開始され、液晶性モノマーが高分子化(ポリマー化)される。これにより、ポリマー鎖を含むポリマーPMが形成される。高分子分散液晶(PDLC)材料に含まれる液晶材料の液晶分子MCは、
図4で説明した通り、ポリマーPMの隙間に分散されている。
【0083】
以上により、表示パネルPNLr3が完成する(Completion)(ステップSR309)。
【0084】
上述の通り、真空注入法では、基板SUB1及び基板SUB2のサイズが大きくなるにつれて、液晶材料の注入時間が長くなり、生産性が悪いという恐れがある。そこで本実施形態では、高分子分散液晶材料を液晶層LCとして含む表示パネルの製造において、液晶滴下(ODF)方式を用いる。これにより、表示装置の生産性を向上させることが可能である。
【0085】
図11は、実施形態の表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
図11では、特に液晶滴下(ODF)方式について説明する。
図11に示すフローチャートにより製造される表示パネルが、
図1に示す表示パネルPNL(表示装置DSP)である。
【0086】
ステップSR101と同様に、配向膜材料を塗布する(Coating alignment film member)(ステップST101)。
【0087】
ステップSR102と同様に、配向膜材料をラビング又は光配向処理を行う(Rubbing or processing light orientation)(ステップST102)。これにより、配向膜が形成される。
【0088】
表示領域DAを隙間なく囲って、基板SUB1上にシール材SALを塗布する(Coating sealing member)(ステップST103)。シール材SALには、光硬化樹脂及び熱硬化樹脂が用いられる。光硬化樹脂は、例えば、アクリル樹脂を用いればよい。熱硬化樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を用いればよい。上述のように、表示領域DAは、シール材SALによって隙間なく囲まれており、切り欠きは存在しない。
【0089】
基板SUB1のシール材SALに囲まれた領域(表示領域DA)内に、高分子分散液晶(PDLC)材料を滴下して注入する(Injecting liquid crystal member by dropping)(ステップST104)。すなわち、ODF法により、高分子分散液晶(PDLC)材料を充填する。
【0090】
高分子分散液晶(PDLC)材料には、液晶分子MCを含む液晶材料、液晶モノマー、光ラジカル重合開始剤等が含まれている。
【0091】
基板SUB1上に基板SUB2を重ね合わせる(Superposing substrates)(ステップST105)。基板SUB1及び基板SUB2の間であり、シール材SALで囲まれた領域(表示領域DA)内には、高分子分散液晶(PDLC)が充填されている。
【0092】
シール材SALの光硬化樹脂をUV照射により硬化する(Curing sealing member by UV irradiation)(ステップST106)。これにより、シール材SALに含まれる光硬化樹脂が硬化される。
【0093】
次いで、高分子分散液晶(PDLC)材料をUV照射により硬化する(Curing PDLC member by UV irradiation)(ステップST107)。
【0094】
紫外光(UV)が照射されると、光ラジカル重合開始剤により重合が開始され、液晶性モノマーが高分子化(ポリマー化)される。これにより、ポリマー鎖を含むポリマーPMが形成される。高分子分散液晶(PDLC)材料に含まれる液晶材料の液晶分子MCは、
図4で説明した通り、ポリマーPMの隙間に分散されている。
【0095】
次いで、シール材SALの熱硬化樹脂を熱により硬化する(Curing sealing member by heating)(ステップST108)。これにより、シール材SALに含まれる熱硬化樹脂が硬化される。ステップST108での加熱温度を、温度Tcとする。シール材SALを温度Tcで加熱することにより、シール材SALが硬化する。よって、温度Tcは、シール材SALの硬化温度ともいう。温度Tcは、転移温度Tniより低い。
【0096】
以上により、表示パネルPNL(表示装置DSP)が完成する(Completion)(ステップST109)。
【0097】
図11に示すように、高分子分散液晶(PDLC)材料を適下注入(ステップST107)した後に、シール材SALをUV硬化させる(ステップST108)。このとき、シール材SAL近傍の高分子分散液晶(PDLC)材料にも紫外光(UV)が当たる。高分子分散液晶(PDLC)材料に含まれる液晶性モノマーが重合し、紫外光が当たった部分が表示異常となる恐れがある。そのため、高分子分散液晶(PDLC)材料の適下注入後に、シール材SALを熱硬化(ステップST108)させる。
【0098】
本実施形態の高分子分散液晶(PDLC)材料は、ステップST108でシール材SALを加熱する温度Tc以上の転移温度Tniを有する液晶材料を含む、高分子分散液晶(PDLC)材料である。より具体的には、本実施形態では、転移温度Tniが120℃以上150℃以下の液晶材料を含む高分子分散液晶(PDLC)材料を用いる。転移温度Tniがシール材SALの加熱温度である温度Tcより高ければ、ステップST108の加熱工程でも、液晶分子MCを含む液晶材料は、等方性液体とならず、ネマティック相のままとなる。これにより、表示パネルPNL(表示装置DSP)に表示ムラが発生しない。
【0099】
シール材SALの熱硬化(ステップST108)の加熱温度が、液晶材料の転移温度Tniより高いと、液晶材料はネマティック相から流動性の高い等方性液体に相転移する。そのため、液晶材料がより汚染しやすくなり、表示ムラが発生しやすくなる。
【0100】
転移温度Tniが120℃以上150℃以下の液晶材料とは、例えば、分子量の大きい液晶材料である。より具体的には、シクロヘキサン又はベンゼン環という六員環が3つ含まれる三環式化合物又は六員環が4つ含まれる四環式化合物の割合が多い液晶材料であればよい。さらに、三環式化合物又は四環式化合物を有する液晶材料の割合が、六員環が2つ含まれる二環式化合物を有する液晶材料の割合より、大きくてもよい。
【0101】
分子量が大きい液晶材料は、粘度が高くなる。そのため、このような液晶材料を用いた液晶層の応答速度は遅くなる。しかしながら、本実施形態の液晶層LCは、高分子分散液晶材料の液晶層である。高分子分散液晶材料の液晶層LCでは、液晶分子MCは、ポリマーPMの隙間(微小領域、ドロプレットともいう)に分散されている。したがって、液晶分子MCの応答速度は速い。よって、分子量が大きい液晶材料の液晶分子MCを用いても、本実施形態の表示パネルPNLの液晶層LCの応答速度は十分速い。本実施形態では、分子量の大きい液晶材料、すなわち、転移温度Tniが120℃以上150℃以下の液晶材料を用いても、十分応答速度の速い表示パネルPNL(表示装置DSP)を得ることが可能である。
【0102】
ただし、転移温度Tniが上がると、スメクティック-ネマティック転移温度(転移温度Tsnとする)も上がってしまう。液晶材料が転移温度Tsn以下になると、液晶材料はスメクティック相となってしまう。本実施形態の表示パネルPNLでは、液晶層LC中の液晶分子MCがスメクティック相となってしまうと、駆動しない恐れが生じる。
【0103】
本実施形態の液晶層LCの液晶材料の転移温度Tniが120℃以上150℃以下であれば、当該液晶材料の転移温度Tsnが高くなりすぎない。
【0104】
以上本実施形態により、表示ムラが起こらない表示装置及びその製造方法を得ることが可能である。本実施形態の表示装置DSP(表示パネルPNL)は、表示ムラが生じないので、表示品質を向上させることが可能である。
【0105】
<構成例1>
図12は、実施形態における表示装置の他の構成例のフローチャートである。
図12に示した構成例では、
図11に示した構成例と比較して、シール材SALの加熱による硬化工程とUV照射による硬化工程が逆であるという点で異なっている。
【0106】
本構成例において、ステップST101乃至ステップST105までは、実施形態と同様である(
図11参照)。本構成例では、実施形態のステップST101乃至ステップST105と同様の工程を、ステップST201乃至ステップST205とする。
【0107】
基板SUB1上に基板SUB2を重ね合わせた(ステップST205)後、シール材SALの熱硬化樹脂を熱により硬化する(Curing sealing member by heating)(ステップST206)。これにより、シール材SALに含まれる熱硬化樹脂が硬化される。ステップST206での加熱温度である温度Tcは、実施形態と同様に、転移温度Tniより低い。
【0108】
なお、ステップST206において、光硬化樹脂も加熱により硬化してもよい。光硬化樹脂に熱ラジカル剤を添加しておけば、光硬化樹脂も熱によって硬化する。熱による光硬化樹脂の硬化は、全体に及んでいてもよいし、光硬化樹脂の一部のみに及んでいてもよい。
【0109】
次いで、高分子分散液晶(PDLC)材料をUV照射により硬化する(Curing PDLC member by UV irradiation)(ステップST207)。これにより、実施形態と同様に、液晶性モノマーが高分子化(ポリマー化)される。
【0110】
シール材SALの光硬化樹脂をUV照射により硬化する(Curing sealing member by UV irradiation)(ステップST208)。これにより、シール材SALに含まれる光硬化樹脂が硬化される。熱により光硬化樹脂の一部を硬化した場合は、ステップST208により、光硬化樹脂の全体が硬化する。
【0111】
以上により、表示パネルPNL(表示装置DSP)が完成する(Completion)(ステップST209)。
本構成においても、実施形態と同様の効果を奏する。
【0112】
本開示では、基板SUB1及び基板SUB2を、それぞれ、第1基板及び第2基板とする。高分子分散液晶材料を有する液晶層LCを、高分子分散液晶層とする。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
DA…表示領域、DSP…表示装置、HSZ…封止材、INH…注入孔、LC…液晶層、MC…液晶分子、PM…ポリマー、PNL…表示パネル、SAL…シール材、ST101…ステップ、ST102…ステップ、ST103…ステップ、ST104…ステップ、ST105…ステップ、ST106…ステップ、ST107…ステップ、ST108…ステップ、ST109…ステップ。