IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AGCテクノグラス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-細胞培養容器 図1
  • 特開-細胞培養容器 図2
  • 特開-細胞培養容器 図3
  • 特開-細胞培養容器 図4
  • 特開-細胞培養容器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023539
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】細胞培養容器
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
C12M3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127751
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000158208
【氏名又は名称】AGCテクノグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】龍腰 健太郎
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC07
4B029GA01
4B029GA03
4B029GB06
4B029GB07
4B029GB09
(57)【要約】
【課題】自動培養・観察装置に適しており、また自動観察において各ウェルの培養細胞にピントを合わせやすく観察効率に優れる細胞培養容器を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のウェルを有する細胞培養容器であって、各ウェルの底面に培養面を有し、前記細胞培養容器を平坦な定盤の上に載置し、各ウェルについて前記培養面の中心から前記定盤までの距離Dを測定したとき、前記距離Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差が400μm以下であり、かつ、前記培養面に5.0mm以上の長さの傷がない、細胞培養容器。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルを有する細胞培養容器であって、
各ウェルの底面に培養面を有し、
前記細胞培養容器を平坦な定盤の上に載置し、各ウェルについて前記培養面の中心から前記定盤までの距離Dを測定したとき、前記距離Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差が400μm以下であり、
かつ、前記培養面に5.0mm以上の長さの傷がない、細胞培養容器。
【請求項2】
前記培養面が平坦である、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項3】
前記距離Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差が200μm以下であり、かつ、前記培養面に2.0mm以上の長さの傷がない、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項4】
各ウェルについて前記培養面の中心におけるウェルの肉厚Tを測定したとき、前記肉厚Tの最大値Tmaxと最小値Tminの差が100μm以下である、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項5】
前記培養面に細胞外マトリックスコートがされている、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項6】
前記培養面には細胞低接着コートがされている、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項7】
前記培養面はガス透過性を有する材料からなる、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項8】
前記細胞培養容器の前記培養面以外の筐体が着色されている、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項9】
前記細胞培養容器は、バイオプラスチックを含む、請求項1に記載の細胞培養容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
生命現象を解明する基礎研究、創薬研究等には検体として培養細胞が多く用いられており、大量の検体を得るための培養容器が広く利用されている。従来の培養細胞の評価は、MTT assay、ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)等、細胞代謝もしくは代謝物による特性評価が主であった。一方、3次元培養で得られる、細胞が凝集した3次元細胞塊(スフェロイド)は、生体内と同様に立体的な構造を有している。そのため、近年では細胞塊を用いた形態観察の重要性が増している。
【0003】
細胞観察としては、自動観察装置を用いて大量の細胞をハイスループットに観察する方法が開発されている。しかし、従来のマイクロプレートでは、ANSI/SBS規格に合うものであっても各ウェルの培養細胞に自動でピントを合わせることに時間がかかり、自動観察の時間効率が低下することがある。
【0004】
自動培養・観察装置に適しており、自動観察において各ウェルの培養細胞にピントを合わせやすいマイクロプレートとして、特許文献1には、基準面算出法で算出した基準面を基準としたウェルの最深部同士の距離が400μm以下であるマイクロプレートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-78638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者等が検討した結果、特許文献1に記載されたマイクロプレートであっても、その基準面が観察装置の定盤(ステージ)面と必ずしも平行にならないため、観察装置を使った自動観察において、観察装置の定盤(ステージ)に対して傾きが生じる場合があり、ピント合わせが難しくなることがあることが分かった。
【0007】
本発明の目的の一つは、自動培養・観察装置に適しており、また自動観察において各ウェルの培養細胞にピントを合わせやすく、自動観察の時間効率に優れた細胞培養容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を含む。
[1]複数のウェルを有する細胞培養容器であって、
各ウェルの底面に培養面を有し、
前記細胞培養容器を平坦な定盤の上に載置し、各ウェルについて前記培養面の中心から前記定盤までの距離Dを測定したとき、前記距離Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差が400μm以下であり、
かつ、前記培養面に5.0mm以上の長さの傷がない、細胞培養容器。
[2]前記培養面が平坦である、[1]に記載の細胞培養容器。
[3]前記距離Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差が200μm以下であり、かつ、前記培養面に2.0mm以上の長さの傷がない、[1]又は[2]に記載の細胞培養容器。
[4]各ウェルについて前記培養面の中心におけるウェルの肉厚Tを測定したとき、前記肉厚Tの最大値Tmaxと最小値Tminの差が100μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の細胞培養容器。
[5]前記培養面に細胞外マトリックスコートがされている、[1]~[4]のいずれかに記載の細胞培養容器。
[6]前記培養面には細胞低接着コートがされている、[1]~[5]のいずれかに記載の細胞培養容器。
[7]前記培養面はガス透過性を有する材料からなる、[1]~[6]のいずれかに記載の細胞培養容器。
[8]前記細胞培養容器の前記培養面以外の筐体が着色されている、[1]~[7]のいずれかに記載の細胞培養容器。
[9]前記細胞培養容器は、バイオプラスチックを含む、請求項1に記載の細胞培養容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動培養・観察装置に適しており、また自動観察において各ウェルの培養細胞にピントを合わせやすく、自動観察の時間効率に優れた細胞培養容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例の細胞培養容器を示した斜視図である。
図2図1の細胞培養容器を示した平面図である。
図3図2の細胞培養容器のI-I断面図である。
図4】細胞培養容器を平坦な定盤の上に載置した状態のウェル近傍を拡大して示した断面図である。
図5】実施形態の他の一例の細胞培養容器を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における用語の意味及び定義は以下である。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
「培養面の中心」とは、上方から見た平面視での培養面の中心を意味し、ウェルを上方から見たときのウェルの底面(培養面)の中心と一致する。ウェルの平面視形状が円の場合はその円の中心が培養面の中心であり、ウェルの平面視形状が円以外の形状の場合には、その形状に内接する円の中心を培養面の中心とする。
【0012】
以下、本発明の細胞培養容器の実施形態の一例を示し、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
図1は、実施形態の一例の細胞培養容器1を示した斜視図である。図2は、細胞培養容器1の平面図である。
細胞培養容器1は、平面視形状が矩形状の外枠10と、外枠10の内側に配置された有底筒状の複数のウェル12と、を備えている。
【0014】
図1~3に示す一例の細胞培養容器1では、各ウェル12の底面が培養面13となる。この例のウェル12の底面を、平面視での底面の中心を通る深さ方向に平行な面で切断したときの断面形状は、直線状である。すなわち、この一例のウェル12は、培養面13が平坦な平底になっている。ウェル12の底面を、平面視での底面の中心を通る深さ方向に平行な面で切断したときの断面形状は、直線状には限定されず、下に凸の円弧状(U底)、下に凸の折れ線状(V底)等であってもよい。
【0015】
ウェル12の平面視の開口形状は、この例では円形であるが、限定はされず、例えば矩形であってもよい。
ウェル12の数は、この例では6個であるが、限定はされない。ウェル12の数は、例えば、6~1536個とすることができる。
【0016】
図2に示す一例の細胞培養容器1におけるウェル12の配置パターンは、縦横に2×3個の矩形のマトリックス状に配置されたパターンである。なお、ウェル12の配置パターンはこのパターンには限定されず、例えば、縦横にn×m個(2×3以外)の矩形のマトリックス状に配置するパターン、千鳥状のパターンを例示できる。
【0017】
図4に示すように、細胞培養容器1を平坦な定盤100の上に載置し、各ウェル12について培養面13の中心aから定盤100までの距離Dを測定したとき、距離Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差(Dmax-Dmin)は、400μm以下である。これにより、自動培養・観察装置に適した細胞培養容器1となり、自動観察において各ウェル12で培養した培養細胞にピントを合わせやすく、自動観察の時間効率に優れる。
【0018】
max-Dminは、400μm以下であり、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。Dmax-Dminが前記上限値以下であれば、各ウェル12の培養面13の高さのずれが小さいため、自動観察装置を用いたハイスループットな観察においても各培養細胞にピントを合わせやすく、自動観察の時間効率が高くなる。
【0019】
max-Dminは、例えば、隣り合うウェル12の間に、それらウェル12に連結した補強リブを設けることにより、より小さい値に制御することが容易になる。
図2に示す一例では、上方から見て正方形の各頂点に位置するように隣り合う4つのウェル12で囲われた領域に、それら4つのウェル12にそれぞれ連結された補強リブ20が設けられている。この一例の補強リブ20は、円筒部21と、上方から見て円筒部21から各ウェル12に向かって放射状に延びる4つの板片部22と、を有している。このような形態の補強リブ20は、連結している4つのウェル12に均等に力を及ぼして補強できるため、金型からの離型の際に各ウェル12の高さにずれが生じることが抑制されやすくなる。
【0020】
図2に示す一例では、上方から見て外枠10の側壁11沿いに隣り合う2つのウェル12と、外枠10で囲われた領域に、それら2つのウェル12と外枠10にそれぞれ連結された補強リブ30が設けられている。この一例の補強リブ30は、円柱部31と、上方から見て円柱部31から各ウェル12と外枠10に向かって放射状に延びる3つの板片部32と、を有している。このような形態の補強リブ30は、連結している2つのウェル12と外枠10に均等に力を及ぼして補強できるため、金型からの離型の際に各ウェル12の高さにずれが生じることが抑制されやすくなる。
【0021】
また、Dmax-Dminは、例えば、離型剤等を用いて金型からの細胞培養容器1の脱型を容易にすることでも小さくすることができる。
【0022】
実施形態に係る細胞培養容器1における各ウェル12の培養面13には、5.0mm以上の長さの傷がない。なお、「5.0mm以上の長さの傷がない」とは、培養面13の面方向における長さが5.0mm以上の傷がないことを意味する。
各ウェル12の培養面13に5.0mm以上の長さの傷がないことにより、ピント合わせ時の傷による外乱が著しく減少し、各ウェル12の培養細胞にピントを合わせることがさらに容易になり、自動観察の時間効率がさらに高くなる。
自動観察の時間効率がさらに高くなることから、各ウェル12の培養面13には、4.0mm以上の長さの傷がないことが好ましく、2.0mm以上の長さの傷がないことがより好ましく、1.0mm以上の長さの傷がないことがさらにより好ましい。
【0023】
各ウェル12の培養面13には、0.50mm以上の深さのえぐれ傷もないことで自動観察の時間効率がさらに高くなる。0.40mm以上の深さのえぐれ傷がないことが好ましく、0.20mm以上の深さのえぐれ傷がないことがさらに好ましく、0.10mm以上の深さのえぐれ傷がないことがよりさらに好ましい。
【0024】
また、各ウェル12の培養面13には、面積が3.14mm以上の曇り傷もないことが自動観察の時間効率がさらに高くなる。面積が0.78mm以上の曇り傷がないことが好ましく、面積が0.50mm以上の曇り傷がないことがさらに好ましく、面積が0.12mm以上の曇り傷がないことがよりさらに好ましい。
【0025】
実施形態に係る細胞培養容器1においては、各ウェルの培養細胞にピントを合わせやすく、自動観察の時間効率が特に優れることから、Dmax-Dminが200μm以下であり、かつ、培養面13に2.0mm以上の長さの傷がないことが好ましい。
【0026】
各ウェル12について培養面13の中心aにおけるウェルの肉厚T(図3)を測定したとき、肉厚Tの最大値Tmaxと最小値Tminの差(Tmax-Tmin)は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、20μm以下がよりさらに好ましい。Tmax-Tminが前記上限値以下であれば、各ウェル12の培養細胞にピントを合わせることがさらに容易になり、自動観察の時間効率がさらに高くなる。
【0027】
各ウェル12の培養面13には、細胞の接着を抑制するための細胞低接着コートが施されていてもよい。細胞低接着コートが施されていることで、各ウェル12から培養細胞を取り出しやすくなる。
細胞低接着コートは、例えば、細胞接着抑制剤を塗布することによって行うことができる。細胞接着抑制剤としては、リン脂質ポリマー(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等)、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、フッ素含有化合物、ポリエチレングリコール等を例示できる。細胞接着抑制剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
各ウェル12の培養面13には、培養細胞が容易に接着して足場を形成しやすくするための細胞外マトリックスコートが施されていてもよい。用いる細胞外マトリックスとしては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ファイブロネクチン、ポリ-D-レジン、ポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン等を例示できる。細胞外マトリックスとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
サイズが均一な細胞塊が得られやすい点では、ウェル12の培養面13には、サイズが均一な複数の微細ウェルが形成されていてもよい。
微細ウェルの開口形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形、不規則な形状を例示できる。微細ウェルの開口の平均直径、開口面積、深さ等の寸法は、特に限定されず、適宜設定すればよい。例えば、開口の平均直径が100~2500μm、開口面積が7850~4906250μm、平均深さが50~1000μmの微細ウェルを形成してもよい。培養面13に形成される微細ウェルの数は、単位面積あたり、10~10000個/cmに設定できる。
【0030】
微細ウェルを形成する場合の配置パターンは、特に限定されず、規則的なパターンで形成してもよく、不規則に形成してもよく、規則的な部分と不規則な部分が混在していてもよい。
微細ウェルは、例えば、COレーザ等を用いたレーザ照射によって形成できる。ウェル12の培養面13にレーザ光が照射されると、培養面13を構成する樹脂が溶解及び気化して、非常に滑らかな表面を持つ微細ウェルが形成される。レーザ照射の条件は、例えばレーザ出力1~100W、照射時間0.1~100μsとすることができる。
【0031】
細胞培養容器1を構成する材料としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂を例示できる。なかでも、透明性が高く、薬剤吸着性が低いことから、ポリスチレン樹脂が好ましい。樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
環境負荷が低い点では、細胞培養容器1は、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチック等のバイオプラスチックを含むことが好ましい。
【0032】
各ウェル12の培養面13を含む部分は、ガス透過性を有する材料からなることが好ましい。なお、ここで「ガス透過性を有する材料」の代表的な厚さ及び範囲は、中間の値及び範囲を含め、例えば約25.4μm~約635μm、約38.1μm~約762μmとすることができる。ただし、高ガス透過性を有する材料などであれば、上記範囲から逸脱しても問題はない。例えばポリジメチルシロキサンポリマーなどの場合は、約2.54cmまでの厚さで十分なガス透過性を提供することが可能である。
ガス透過性を有する材料としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
培養細胞が観察しやすくなることから、細胞培養容器1の培養面13以外の筐体は着色されていてもよい。より具体的には、ウェル12における培養面13の周りを囲う周壁部14や、外枠10は、着色されていてもよい。
細胞培養容器1におけるウェル12の周壁部14や外枠10が着色される場合、色調としては黒がより好ましい。ウェル12の周壁部14や外枠10を着色する方法としては、特に限定されず、例えば、微粒子を添加する方法、顔料を添加する方法等を採用できる。
【0034】
細胞培養容器1の製造方法は、特に限定されず、例えば、射出成形法、圧縮成形法によって成形できる。
本発明の細胞培養容器は、各ウェルで細胞を培養し、培養後に、オートフォーカス機構を有する自動観察装置によって各ウェルの培養細胞を自動観察する方法に好適に利用できる。
【0035】
以上説明したように、実施形態に係る細胞培養容器は、平坦な定盤の上に載置して各ウェルについて培養面の中心から定盤までの距離Dを測定したときの、距離Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差が400μm以下に制御されている。これにより、各ウェルの培養面のずれが小さく、自動観察装置であっても各ウェルで培養した培養細胞に自動でピントを合わせることが容易になる。そのため、大量の培養細胞を自動観察装置によってハイスループットに効率良く観察できる。
【0036】
なお、本発明の細胞培養容器は、前記した態様には限定されない。
例えば、本発明の細胞培養容器は、図5に例示した細胞培養容器2であってもよい。細胞培養容器2は、外枠10及び外枠10の内側に設けられた複数の円筒状の周壁部14を有する本体部15の底に、板状部材16が貼り付けられることにより、各ウェル12が形成されている以外は、細胞培養容器1と同様の形態である。図5における図3と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0037】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0038】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
以下の例1~4は実施例であり、例5は比較例である。
【0039】
[例1]
細胞培養容器として、Dmax-Dminが400μmであり、かつ5.0mm以上の傷がない平底形状の96ウェルプレート(AGCテクノグラス社製)を用意した。
TIG-3細胞を、培養液(10%ウシ胎児血清含有E-MEM培地(富士フィルム和光純薬社製))を用いて1×10cells/mLに調整し、0.2mLずつ上述の96ウェルプレートの各ウェルに播種し、5%CO/95%空気存在下の37℃保湿インキュベーター内で24時間培養した。
【0040】
[例2]
細胞培養容器として、Dmax-Dminが300μmであり、かつ4.0mm以上の傷がない平底形状の96ウェルプレート(AGCテクノグラス社製)を用いる以外は、例1と同様にしてTIG-3細胞を培養した。
【0041】
[例3]
細胞培養容器として、Dmax-Dminが200μmであり、かつ2.0mm以上の傷がない平底形状の96ウェルプレート(AGCテクノグラス社製)を用いる以外は、例1と同様にしてTIG-3細胞を培養した。
【0042】
[例4]
細胞培養容器として、Dmax-Dminが100μmであり、かつ1.0mm以上の傷がない平底形状の96ウェルプレート(AGCテクノグラス社製)を用いる以外は、例1と同様にしてTIG-3細胞を培養した。
【0043】
[例5]
細胞培養容器として、Dmax-Dminが420μmであり、かつ5.2mm以上の傷がある平底形状の96ウェルプレート(AGCテクノグラス社製)を用いる以外は、例1と同様にしてTIG-3細胞を培養した。
【0044】
[自動観察の時間効率の評価]
各例において、培養後、蛍光電動倒立顕微鏡システム(カールツァイス社製 Axio Observer7)の蛍光・位相差仕様を使用し、自動観察を行い、測定に要した時間を測った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、例1については、96ウェルすべての画像取得が約40分で完了し、かつ傷のないクリアな画像が得られた。例2については、96ウェルすべての画像取得が約25分で完了し、かつ傷のないクリアな画像が得られた。また、例3、例4では、96ウェルすべての画像取得が約20分、約15分とさらに短縮され、かつ傷のないクリアな画像が得られた。
一方、例5においては、オートフォーカス機構を使った96ウェルすべての画像取得に約60分かかった。
【符号の説明】
【0047】
1 細胞培養容器
2 細胞培養容器
10 外枠
11 側壁
12 ウェル
13 培養面
14 周壁部
15 本体部
16 板状部材
20 補強リブ
21 円筒部
22 板片部
30 補強リブ
31 円柱部
32 板片部
100 定盤
図1
図2
図3
図4
図5