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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023554
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20250207BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20250207BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
B60C11/00 B
B60C11/00 D
B60C11/03 100A
B60C11/12 D
B60C11/12 A
B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127800
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 尭志
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC33
3D131EA02U
3D131EA09V
3D131EA09X
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB82V
3D131EB82W
3D131EB86V
3D131EB86W
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EC01V
3D131EC01W
3D131EC01X
(57)【要約】
【課題】耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2はトレッド4を備える。トレッド4はベース層28とキャップ層30とを備える。トレッド4は複数の周方向溝34を有する。複数の周方向溝34は複数の陸部36をトレッド4に構成する。複数の陸部36は2本の周方向溝34の間に位置するメイン陸部36Mを含む。キャップ層30とベース層28との界面38は、周方向溝34の溝深さの50%深さ位置と、この周方向溝34の溝深さの75%深さ位置との間に位置する。メイン陸部36Mは横断サイプ40を備える。横断サイプ40は外側部42と内側部44とを備える。界面38は内側部44と交差する。外側部42は2本の周方向溝のそれぞれと繋がる。内側部44は2本の周方向溝34のそれぞれと繋がらない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備えるタイヤであって、
前記トレッドが、前記ベルト全体を覆うベース層と、前記ベース層の径方向外側に位置するキャップ層とを備え、
前記ベース層が、前記キャップ層の損失正接よりも低い損失正接を有し、
前記トレッドが周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、
複数の前記周方向溝が、軸方向に並ぶ複数の陸部を前記トレッドに構成し、
複数の前記陸部が、2本の周方向溝の間に位置するメイン陸部を含み、
前記メイン陸部における前記キャップ層と前記ベース層との界面が、前記メイン陸部の隣に位置する周方向溝の溝深さの50%深さ位置と、前記周方向溝の溝深さの75%深さ位置との間に位置し、
前記メイン陸部が、前記メイン陸部を横断する横断サイプを備え、
前記横断サイプが、前記横断サイプの溝口を含む外側部と、前記横断サイプの溝底を含む内側部とを備え、
前記キャップ層と前記ベース層との界面が、前記内側部と交差し、
前記外側部が、2本の前記周方向溝のそれぞれと繋がり、
前記内側部が、2本の前記周方向溝のそれぞれと繋がらない、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記トレッドが、路面と接地するトレッド面を備え、
前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧の5%の圧力に調整した状態にある前記タイヤの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭線が複数の円弧で構成され、複数の前記円弧が、センター円弧と、前記センター円弧の軸方向外側に位置する一対のショルダー円弧とを含み、
前記センター円弧が、前記タイヤの赤道面に中心を有し、半径R1を有し、
それぞれのショルダー円弧が、前記センター円弧に連なり、半径R2を有し、
前記センター円弧の半径R1が、前記ショルダー円弧の半径R2よりも大きく、
前記センター円弧と前記ショルダー円弧との境界の位置が、前記タイヤの赤道面から前記トレッド面の端までの軸方向距離の半分となる、前記トレッド面上の位置と軸方向において一致するか、前記境界が、前記タイヤの赤道面から前記トレッド面の端までの軸方向距離の半分となる、前記トレッド面上の位置の軸方向内側に位置する、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
複数の前記陸部が、センター陸部と、前記センター陸部の軸方向外側に位置する一対のミドル陸部と、前記ミドル陸部の軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部とを備え、
前記センター陸部が前記タイヤの赤道を含み、
前記ショルダー陸部が前記トレッド面の端を含み、
前記ミドル陸部が、前記タイヤの赤道面から前記トレッド面の端までの軸方向距離の半分となる、前記トレッド面上の位置と、前記センター円弧と前記ショルダー円弧との境界とを含む、
請求項2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記メイン陸部を横断する前記横断サイプが、角度θbで折れ曲がる複数の屈曲部を含む、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記角度θbが90度以上である、
請求項4に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドは架橋ゴムからなる。転がり抵抗の低減の観点から、トレッドには低発熱性の架橋ゴムが用いられる。
トレッドは通常、キャップ層と、このキャップ層の内側に位置するベース層とで構成される。キャップ層は路面と接地する。キャップ層には、グリップ性能や耐摩耗性等を考慮した架橋ゴムが用いられる。ベース層はキャップ層で覆われる。ベース層には、低発熱性を考慮した架橋ゴムが用いられる。
キャップ層は摩耗する。これによりベース層が露出する。低発熱性の架橋ゴムは機械的特性に劣る。ベース層が露出した場合、カット傷等の損傷の発生リスクが高まる。
転がり抵抗の低減に対する社会の要求レベルは高い。損傷の発生リスク等も考慮しながら、タイヤの転がり抵抗をさらに低減することが検討されている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-41821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる、重荷重用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る重荷重用タイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える。前記トレッドは、前記ベルト全体を覆うベース層と、前記ベース層の径方向外側に位置するキャップ層とを備える。前記ベース層は、前記キャップ層の損失正接よりも低い損失正接を有する。前記トレッドは周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有する。複数の前記周方向溝は、軸方向に並ぶ複数の陸部を前記トレッドに構成する。複数の前記陸部は、2本の周方向溝の間に位置するメイン陸部を含む。前記メイン陸部における前記キャップ層と前記ベース層との界面は、前記メイン陸部の隣に位置する周方向溝の溝深さの50%深さ位置と、前記周方向溝の溝深さの75%深さ位置との間に位置する。前記メイン陸部は、前記メイン陸部を横断する横断サイプを備える。前記横断サイプは、前記横断サイプの溝口を含む外側部と、前記横断サイプの溝底を含む内側部とを備える。前記キャップ層と前記ベース層との界面は、前記内側部と交差する。前記外側部は、2本の前記周方向溝のそれぞれと繋がる。前記内側部は、2本の前記周方向溝のそれぞれと繋がらない。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる、重荷重用タイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤの一部を示す断面図である。
図2】トレッドに刻まれる溝の一例を示す断面図である。
図3】トレッド面の一部を示す展開図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図1に示された断面の一部を示す拡大断面図である。
図6】トレッド面の輪郭線の一部を示す断面図である。
図7図3に示されたトレッド面の一部を示す拡大展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0009】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と呼ばれる。
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧の5%の圧力に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、基準状態と呼ばれる。
【0010】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0011】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0012】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0013】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0014】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
トレッド部の中央部分はクラウン部分とも呼ばれる。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも呼ばれる。
【0015】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の損失正接(tanδ)は、JIS K6394の規定に準拠して粘弾性スペクトロメータを用いて測定される。測定条件は以下の通りである。
初期歪み=10%
動歪み=±1%
周波数=10Hz
モード=伸長モード
温度=70℃
この測定では、試験片(長さ40mm×幅4mm×厚さ1mm)はタイヤからサンプリングされる。試験片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
本発明において架橋ゴムからなる要素の損失正接は、70℃での損失正接で表される。
【0016】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の引張強さ及び切断時伸びは、JIS K6251の規定に準拠して引張試験機を用いて23℃の温度雰囲気下で測定される。
この測定では、タイヤから短冊片(長さ150mm×幅25mm×厚さ2mm)をサンプリングし、この短冊片を用いて3号ダンベル試験片が準備される。短冊片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから短冊片をサンプリングできない場合は、前述のゴムシートから試験片が準備される。
本発明において破壊エネルギーとは、引張強さと切断時伸びとの積の半分の値で表される。破壊エネルギーの単位は、MPa・%である。
【0017】
[本発明の基礎となった知見]
トレッドに含まれるベース層の体積を増やせば、タイヤは転がり抵抗を低減できる。
ベース層の体積を増やすと、トレッド面からベース層までの距離が短くなる。ベース層がトレッド面に近づくので、クラウン部分でのカットチッピングの発生リスクが高まる。
ベース層が露出するタイミングが早まるので、これまでベース層の露出を想定していなかった、周方向溝の溝深さが半分以下になる摩耗後期において、ベース層が露出するという懸念がある。
ベース層はキャップ層に比べて機械的特性に劣るので、ベース層が露出するとカットチッピングの発生リスクがさらに高まる。
転がり抵抗のさらなる低減を図るには、耐カットチッピング性の考慮が必要である。
ベース層に用いる架橋ゴムの改良は、耐カットチッピング性の向上を図る一つの手段である。架橋ゴムの改良と組み合わせれば、性能の飛躍的向上を図ることができることから、本発明者は、タイヤの構造的な側面から、摩耗したタイヤの耐カットチッピング性の低下を抑制できる技術について検討を行い、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0018】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備えるタイヤであって、前記トレッドが、前記ベルト全体を覆うベース層と、前記ベース層の径方向外側に位置するキャップ層とを備え、前記ベース層が、前記キャップ層の損失正接よりも低い損失正接を有し、前記トレッドが周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、複数の前記周方向溝が、軸方向に並ぶ複数の陸部を前記トレッドに構成し、複数の前記陸部が、2本の周方向溝の間に位置するメイン陸部を含み、前記メイン陸部における前記キャップ層と前記ベース層との界面が、前記メイン陸部の隣に位置する周方向溝の溝深さの50%深さ位置と、前記周方向溝の溝深さの75%深さ位置との間に位置し、前記メイン陸部が、前記メイン陸部を横断する横断サイプを備え、前記横断サイプが、前記横断サイプの溝口を含む外側部と、前記横断サイプの溝底を含む内側部とを備え、前記キャップ層と前記ベース層との界面が、前記内側部と交差し、前記外側部が、2本の前記周方向溝のそれぞれと繋がり、前記内側部が、2本の前記周方向溝のそれぞれと繋がらない。
【0019】
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0020】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記トレッドが、路面と接地するトレッド面を備え、前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧の5%の圧力に調整した状態にある前記タイヤの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭線が複数の円弧で構成され、複数の前記円弧が、センター円弧と、前記センター円弧の軸方向外側に位置する一対のショルダー円弧とを含み、前記センター円弧が、前記タイヤの赤道面に中心を有し、半径R1を有し、それぞれのショルダー円弧が、前記センター円弧に連なり、半径R2を有し、前記センター円弧の半径R1が、前記ショルダー円弧の半径R2よりも大きく、前記センター円弧と前記ショルダー円弧との境界の位置が、前記タイヤの赤道面から前記トレッド面の端までの軸方向距離の半分となる、前記トレッド面上の位置と軸方向において一致するか、前記境界が、前記タイヤの赤道面から前記トレッド面の端までの軸方向距離の半分となる、前記トレッド面上の位置の軸方向内側に位置する。
【0021】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載の重荷重用タイヤにおいて、複数の前記陸部が、センター陸部と、前記センター陸部の軸方向外側に位置する一対のミドル陸部と、前記ミドル陸部の軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部とを備え、前記センター陸部が前記タイヤの赤道を含み、前記ショルダー陸部が前記トレッド面の端を含み、前記ミドル陸部が、前記タイヤの赤道面から前記トレッド面の端までの軸方向距離の半分となる、前記トレッド面上の位置と、前記センター円弧と前記ショルダー円弧との境界とを含む。
【0022】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記メイン陸部を横断する前記横断サイプが、角度θbで折れ曲がる複数の屈曲部を含む。
【0023】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成4]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記角度θbが90度以上である。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2はトラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2は重荷重用タイヤである。
【0026】
図1は、タイヤ2の回転軸(図示されず)を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。図1に示された断面は子午線断面とも呼ばれる。両矢印ADで示される方向は、タイヤ2の軸方向である。タイヤ2の軸方向とはタイヤ2の回転軸に平行な方向を意味する。両矢印RDで示される方向は、タイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1において径方向にのびる一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
【0027】
図1において符号PCで示される位置は、タイヤ2の外面2G(具体的には、後述するトレッド面)と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。赤道面上に溝が位置する場合は、溝がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて赤道PCは特定される。赤道PCはタイヤ2の径方向外端である。
【0028】
図1はタイヤ2のトレッド部の一部を示す。トレッド部は、トレッド4、ベルト6、カーカス8、インナーライナー10、一対のクッション層12、ストリップ層14、及び一対のサイドウォール16を備える。
図示されないが、これら要素以外に、タイヤ2はビードやクリンチ等の要素を備える。
トレッド4以外の要素は、重荷重用タイヤの構成要素として一般的な構成を有する。トレッド4以外の要素の詳細な説明は省略される。
【0029】
ベルト6はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト6はカーカス8に積層される。
ベルト6は径方向に積層された複数のベルトプライ18を備える。このタイヤ2のベルト6は4枚のベルトプライ18を備える。4枚のベルトプライ18は、第一ベルトプライ18A、第二ベルトプライ18B、第三ベルトプライ18C及び第四ベルトプライ18Dであり、径方向にこの順で並ぶ。第一ベルトプライ18Aが径方向において最も内側に位置する。第二ベルトプライ18Bが最も広い幅を有し、第四ベルトプライ18Dが最も狭い幅を有する。
【0030】
図示されないが、各ベルトプライ18は並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2のベルトコードには、スチールコードが用いられる。
【0031】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ18Bの端、及び第三ベルトプライ18Cの端はそれぞれゴム層20で覆われる。ゴム層20で覆われた第二ベルトプライ18Bの端と第三ベルトプライ18Cの端との間には、さらに2枚のゴム層20が配置される。このタイヤ2では、第二ベルトプライ18Bの端と第三ベルトプライ18Cの端との間に、計4枚のゴム層20からなるエッジ部材22が構成される。エッジ部材22は架橋ゴムからなる。エッジ部材22は、第二ベルトプライ18Bの端と第三ベルトプライ18Cの端との間隔維持に貢献する。エッジ部材22は、ベルト6の一部である。
【0032】
カーカス8は、トレッド4及び一対のサイドウォール16の内側に位置する。図示されないが、カーカス8は一対のビードの間を架け渡す。
カーカス8は少なくとも1枚のカーカスプライ24を備える。このタイヤ2のカーカス8は1枚のカーカスプライ24で構成される。
【0033】
図示されないが、カーカスプライ24はそれぞれのビードで折り返される。カーカスプライ24は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカス8はラジアル構造を有する。このタイヤ2のカーカスコードはスチールコードである。有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられてもよい。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0034】
インナーライナー10は、カーカス8の内側に位置する。インナーライナー10はタイヤ2の内面2Nを構成する。インナーライナー10は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー10はタイヤ2の内圧を保持する。
【0035】
それぞれのクッション層12はベルト6の端において、ベルト6とカーカス8との間に位置する。クッション層12は軟質な架橋ゴムからなる。
【0036】
ストリップ層14はトレッド4の径方向内側においてベルト6とカーカス8との間に位置する。軸方向においてストリップ層14は、一方のクッション層12と他方のクッション層12との間に位置する。ストリップ層14は架橋ゴムで構成される。
【0037】
それぞれのサイドウォール16はトレッド4の端に連なる。サイドウォール16はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール16はカーカス8の軸方向外側に位置する。サイドウォール16は架橋ゴムからなる。サイドウォール16はタイヤ2の側面2Gsをなす。タイヤ2の外面2Gは、一対の側面2Gsを備える。
【0038】
トレッド4は、タイヤ2の径方向外側に位置し、周方向にのびる。トレッド4はベルト6に積層される。
トレッド4の外周面がトレッド面26である。タイヤ2は、トレッド面26において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面26を備える。トレッド面26は、タイヤ2の外面2Gに含まれる。
【0039】
トレッド4は摩耗する。摩耗したトレッド4の外周面が路面と接地する。摩耗したトレッド4の外周面もトレッド面である。これに対して前述のトレッド面26は、摩耗していないトレッド4の外周面である。トレッド面26との区別のために、摩耗したトレッド4の外周面からなるトレッド面には符号が付されない。
【0040】
図1において、符号TEはトレッド面26の端である。トレッド面26が有する2つの端TEのうち、一方の端TEが第一端TE1と呼ばれ、他方の端TEが第二端TE2と呼ばれる。この明細書では、図1において矢印AD1で示される側に位置するトレッド面26の端TEが第一端TE1と呼ばれ、矢印AD2で示される側に位置するトレッド面26の端TEが第二端TE2と呼ばれる。
【0041】
両矢印WTで示される長さは、トレッド面26の幅である。トレッド面26幅WTは、トレッド面26の第一端TE1から第二端TE2までの軸方向距離により表される。タイヤ2において、外観上、トレッド面26の端TEが識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としタイヤ2を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外端に対応する外面2G上の位置がトレッド面26の端TEとして定められる。
【0042】
トレッド4は架橋ゴムからなる。トレッド4はベース層28とキャップ層30とを備える。このトレッド4は、径方向に並ぶベース層28とキャップ層30とで構成される。
ベース層28はベルト6とキャップ層30との間に位置する。ベース層28はベルト6全体を覆う。キャップ層30はベース層28の径方向外側に位置する。キャップ層30はベース層28全体を覆う。キャップ層30はトレッド面26を含む。
キャップ層30は、グリップ性能及び耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。ベース層28は、低発熱性を考慮した架橋ゴムからなる。ベース層28の損失正接LTbはキャップ層30の損失正接LTcよりも低い。ベース層28は、キャップ層30の損失正接LTcよりも低い損失正接LTbを有する。
【0043】
トレッド4には溝32が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
図2は、トレッド4に刻まれる溝32の一例を示す。図2はこの溝32の断面を示す。図2に基づいて溝32の主たる構成が説明される。
【0044】
溝32は、溝口32Mを含む一対の壁面32Wと、溝底32Tを含む底面32Bとを有する。溝32の溝幅は、一対の壁面32Wである第一壁面32Wと第二壁面32Wとの間の距離、すなわち壁面間距離で表される。
図2において両矢印WGで示される長さは、溝口32Mにおける溝幅である。溝幅WGは、溝口32Mを構成する一対のエッジ32E間の最短距離で表される。溝32の溝口32Mの部分がテーパー様に加工されている場合は、テーパー様に加工されていないと仮定して得られる仮想エッジに基づいて、溝口32Mにおける溝幅が表される。
両矢印DGで示される長さは、溝32の溝深さである。溝32の溝深さDGは、左右のエッジ32Eを結ぶ線分から溝32の溝底32Tまでの最短距離で表される。
ウェインジゲータのような凸部が溝底32Tに設けられている場合、溝深さDGは、凸部が設けられていない位置での溝深さ、又は、凸部が設けられていないと仮定して得られる溝深さで表される。
溝32の位置、溝幅WG及び溝深さDGは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0045】
溝口32Mにおいて1.0mm未満の溝幅WGを有し、路面と接地することで一対の壁面32Wが互いに接触できる溝32はサイプとも呼ばれる。
【0046】
このタイヤ2のトレッド4には、複数の周方向溝34が刻まれる。図1に示されたトレッド4には、4本の周方向溝34が刻まれる。これら周方向溝34は軸方向に並列する。それぞれの周方向溝34は、周方向に連続してのびる。
【0047】
軸方向に並ぶ4本の周方向溝34のうち、最外側に位置する2本の周方向溝34は、ショルダー周方向溝34sである。それぞれのショルダー周方向溝34sの軸方向内側に位置する周方向溝34は、ミドル周方向溝34mである。このタイヤ2のトレッド4は、2本のミドル周方向溝34mと、2本のショルダー周方向溝34sとを有する。
図1において両矢印DGmで示される長さが、ミドル周方向溝34mの溝深さである。両矢印DGsで示される長さが、ショルダー周方向溝34sの溝深さである。
【0048】
周方向溝34は1.0mm以上の溝幅を有する。このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ミドル周方向溝34mの溝幅はトレッド面26幅WTの2~10%程度であるのが好ましい。ミドル周方向溝34mの溝深さDGmは、13~25mmであるのが好ましい。ショルダー周方向溝34sの溝幅はトレッド面26幅WTの1~7%程度であるのが好ましい。ショルダー周方向溝34sの溝深さDGsは、13~25mmであるのが好ましい。
【0049】
複数の周方向溝34は、軸方向に並ぶ複数の陸部36をトレッド4に構成する。前述したように、このトレッド4は4本の周方向溝34を有する。このトレッド4には5本の陸部36が構成される。陸部36の外面(以下、陸面とも呼ばれる。)は、トレッド面26に含まれる。
周方向溝34の溝口34Mを構成するエッジ34Eは陸面のエッジでもある。エッジ34Eは、陸面と周方向溝34との境界である。
【0050】
軸方向に並ぶ複数の陸部36のうち、最外側に位置する2本の陸部36は、ショルダー陸部36sである。ショルダー陸部36sはトレッド面26の端TEを含む。それぞれのショルダー陸部36sの軸方向内側に位置する陸部36はミドル陸部36mである。2本のミドル陸部36mの間に位置する陸部36はセンター陸部36cである。このタイヤ2では、センター陸部36cは中央に位置する陸部36である。センター陸部36cは赤道PCを含む。このトレッド4には、1本のセンター陸部36cと、2本のミドル陸部36mと、2本のショルダー陸部36sとが構成される。
詳述しないが、各陸部36の幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
なお、陸部36の幅は、陸面の一方のエッジから他方のエッジまでの軸方向距離で表される。陸部36の幅が周方向において変動する場合は、最大幅と最小幅との平均値で、陸部36の幅が表される。
【0051】
このタイヤ2では、2本の周方向溝34の間に位置する陸部36はメイン陸部36Mとも呼ばれる。図1に示されたトレッド4では、センター陸部36cとミドル陸部36mとがメイン陸部36Mである。
【0052】
前述したように、トレッド4は径方向に並ぶベース層28及びキャップ層30で構成される。トレッド4には、ベース層28とキャップ層30との界面38が含まれる。
界面38は、トレッド4の端の部分を除いて、トレッド面26に沿って広がる。界面38は平坦な面で構成される。
周方向溝34が刻まれている部分では、図1に示されるように、周方向溝34を迂回する迂回部38uが界面38に構成されてもよい。この場合、迂回部38uは周方向溝34から2mm以内の範囲に構成される。周方向溝34から迂回部38uまでの距離は2mm以下である。周方向溝34におけるキャップ層30の厚さは2mm以下である。
周方向溝34を迂回することなく、周方向溝34を横断するように、この界面38が構成されてもよい。
【0053】
図1に示された界面38では、隣り合う2つの迂回部38uの間は平坦部38hを構成する。メイン陸部36Mは界面38の平坦部38hを含む。平坦部38hにおいてキャップ層30は一様な厚さを有する。
以下の説明において、メイン陸部36Mにおける界面38は、メイン陸部36Mに含まれる迂回部38u以外の部分、つまり平坦部38hを意味する。
【0054】
図3はトレッド面26の一部を示す展開図である。図3において両矢印CDで示される方向はタイヤ2の周方向である。
図3は、ミドル陸部36m並びにミドル周方向溝34m及びショルダー周方向溝34sを示す。言い換えれば、図3は、2本の周方向溝34の間に位置するメイン陸部36Mを示す。
【0055】
図3に示されるように、ミドル周方向溝34m及びショルダー周方向溝34sはジグザグ状にのびる。このタイヤ2では、ミドル周方向溝34m及びショルダー周方向溝34sが、波状にのびる周方向溝で構成されてもよく、ストレートにのびる周方向溝で構成されてもよい。
【0056】
メイン陸部36Mは、このメイン陸部36Mを横断する横断サイプ40を備える。このタイヤ2のメイン陸部36Mには、複数の横断サイプ40が設けられる。複数の横断サイプ40は周方向に間隔をあけて配置される。
【0057】
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。この図4は、メイン陸部36Mの幅の中心における横断サイプ40の断面を示す。
横断サイプ40はその深さ方向にストレートにのびる。横断サイプ40は、溝口40Mを含む一対の壁面40Wと、溝底40Tを含む底面40Bとを有する。
図4において両矢印WGpで示される長さは、横断サイプ40の溝口40Mでの溝幅である。両矢印DGpで示される長さは、横断サイプ40の溝深さである。
【0058】
横断サイプ40はメイン陸部36Mを横断する。横断サイプ40は、メイン陸部36Mの隣に位置する一方の周方向溝34と他方の周方向溝34との間を架け渡す。横断サイプ40の溝口40Mを構成するエッジ40Eは、路面を掻くエッジ成分として機能できる。横断サイプ40はウェット性能の向上に貢献できる。
【0059】
横断サイプ40は前述のサイプである。横断サイプ40の溝幅WGpは1.0mm未満である。路面と接地することでメイン陸部36Mに荷重が作用し、メイン陸部36Mが変形する。これにより、横断サイプ40の一対の壁面40Wが互いに接触する。一対の壁面40Wが互いに支え合うことで、メイン陸部36Mの剛性が見かけ上高まる。メイン陸部36Mの変形が抑制される。このタイヤ2は、ウェット性能の向上を図りながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。横断サイプ40は、ウェット性能の向上と、転がり抵抗の低減とに貢献できる。
【0060】
このタイヤ2では、横断サイプ40は周方向溝34よりも浅い。横断サイプが、ウェット性能の向上と、転がり抵抗の低減とに効果的に貢献できる観点から、横断サイプ40の溝深さDGpの、周方向溝34の溝深さに対する比率は60%以上80%以下であるのが好ましい。
【0061】
このタイヤ2では、メイン陸部36Mの隣に位置する2本の周方向溝34が異なる溝深さを有する場合は、深い周方向溝34の溝深さを基準に、前述の、横断サイプ40の溝深さDGpの、周方向溝34の溝深さに対する比率が求められる。
メイン陸部36Mであるミドル陸部36mの隣に位置する2本の周方向溝34は、ミドル周方向溝34mとショルダー周方向溝34sとである。ミドル陸部36mの隣に位置する2本の周方向溝34のうち、ショルダー周方向溝34sの溝深さDGsが、ミドル周方向溝34mの溝深さDGmよりも深い。図3に示された横断サイプ40の溝深さDGpの、周方向溝34の溝深さに対する比率は、横断サイプ40の溝深さDGpの、ショルダー周方向溝34sの溝深さDGsに対する比率(DGp/DGs)で表される。
【0062】
前述したように、このタイヤ2では、センター陸部36cとミドル陸部36mとがメイン陸部36Mである。このタイヤ2では、センター陸部36c及びミドル陸部36mのそれぞれに横断サイプ40が設けられる。センター陸部36cのみに横断サイプ40が設けられてもよいし、ミドル陸部36mのみに横断サイプ40が設けられてもよい。ウェット性能の向上と、転がり抵抗の低減とを効果的に図ることができる観点から、センター陸部36c及びミドル陸部36mのそれぞれに横断サイプ40が設けられるのが好ましい。言い換えれば、トレッド4に構成される全てのメイン陸部36Mに横断サイプ40が設けられるのが好ましい。
【0063】
図5は、図1に示された断面の一部を示す。図5において符号P50で示される位置は、周方向溝34の溝深さの50%深さ位置である。実線L50は、メイン陸部36Mの陸面の一方のエッジ34Eと他方のエッジ34Eとを通る直線と平行であり、50%深さ位置P50を通る直線である。実線L50は、50%深さ位置線とも呼ばれる。符号P75で示される位置は、周方向溝34の溝深さの75%深さ位置である。実線L75は、50%深さ位置線L50と平行であり、75%深さ位置P75を通る直線である。実線L75は、75%深さ位置線とも呼ばれる。
【0064】
メイン陸部36Mの隣に位置する2本の周方向溝34が異なる溝深さを有する場合は、深い周方向溝34の溝深さに基づいて、50%深さ位置線L50及び75%深さ位置線L75が規定される。
図5は、メイン陸部36Mとしてのミドル陸部36mの断面を示す。前述したように、ミドル陸部36mの隣に位置する2本の周方向溝34のうち、ショルダー周方向溝34sの溝深さDGsが、ミドル周方向溝34mの溝深さDGmよりも深い。この図5に示された50%深さ位置線L50及び75%深さ位置線L75は、ショルダー周方向溝34sの溝深さDGsを基準に設定される。
【0065】
ベース層はキャップ層に比べて機械的特性に劣ることから、路面と接触した場合、ベース層には損傷が生じやすい。そのため、周方向溝の溝深さが1/4未満になる摩耗末期においてベース層が露出しないように、従来トレッドは設計されている。従来トレッドでは、メイン陸部における、キャップ層とベース層との界面は、周方向溝の溝深さの75%深さ位置の径方向内側に位置する。
【0066】
これに対して、このタイヤ2では、図5に示されるように、メイン陸部36Mにおける界面38は50%深さ位置線L50の径方向内側に位置する。図示されないが、この界面38の位置が、径方向において、50%深さ位置線L50の位置と一致していてもよい。図5に示されるように、メイン陸部36Mにおける界面38は75%深さ位置線L75の径方向外側に位置する。図示されないが、この界面38の位置が、径方向において、75%深さ位置線L75の位置と一致していてもよい。
【0067】
このタイヤ2では、メイン陸部36Mにおけるキャップ層30とベース層28との界面38は、メイン陸部36Mの隣に位置する周方向溝34の溝深さの50%深さ位置P50と、この周方向溝34の溝深さの75%深さ位置P75との間に位置する。
このタイヤ2のトレッド4に含まれるベース層28の体積は、従来トレッドのそれに比べて大きい。前述したように、ベース層28は低発熱性の架橋ゴムからなる。このタイヤ2のトレッド4は転がり抵抗の低減に貢献できる。
【0068】
前述したように、このタイヤ2では、メイン陸部36Mにおけるキャップ層30とベース層28との界面38は、周方向溝34の溝深さの50%深さ位置P50と、この周方向溝34の溝深さの75%深さ位置P75との間に位置する。このタイヤ2のトレッド面26からベース層28までの距離は、従来タイヤのそれに比べて近い。従来タイヤよりもベース層28がトレッド面26に近づくので、クラウン部分でのカットチッピングの発生リスクが高まる。さらにベース層28が露出するタイミングが早まるので、これまでベース層28の露出を想定していなかった、周方向溝34の溝深さが半分以下になる摩耗後期において、ベース層28が露出するという懸念がある。ベース層28はキャップ層30に比べて機械的特性に劣るので、ベース層28が露出するとカットチッピングの発生リスクがさらに高まる。
【0069】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4のメイン陸部36Mには、横断サイプ40が設けられる。このタイヤ2の横断サイプ40は、外側部42と、内側部44とを備える。外側部42は、横断サイプ40の溝口40Mを含む。内側部44は、横断サイプ40の溝底40Tを含む。内側部44は、外側部42の径方向内側に位置する。
図5に示されるように、キャップ層30とベース層28との界面38は外側部42と溝底40Tの間に位置する。外側部42はその全体がキャップ層30に含まれる。
【0070】
このタイヤ2では、外側部42は、メイン陸部36Mの隣に位置する2本の周方向溝34のそれぞれと繋がる。外側部42は、メイン陸部36Mの表層部分に柔軟性を付与する。表層部分は路面の状態に応じて変形できるので、表層部分は拡がりをもって路面と接地できる。接地圧が過剰に高まることが抑制されるので、カットチッピングの発生が抑制される。
【0071】
摩耗により周方向溝34は浅くなる。これに伴い、陸部36の剛性は高まる。トレッド4において摩耗が進むと、陸部36を横断するサイプが、クラックの起点となり、カットチッピングの発生を促すという懸念がある。
【0072】
このタイヤ2では、摩耗により外側部42が消失すると内側部44が露出する。内側部44は路面を掻くエッジ成分として機能できるので、良好なウェット性能が持続される。
図5に示されるように、このタイヤ2の内側部44は、メイン陸部36Mの隣に位置する2本の周方向溝34のそれぞれと繋がらない。言い換えれば、内側部44は周方向溝34から距離をあけて配置される。内側部44が露出したメイン陸部36Mにおいて、メイン陸部36Mの剛性は低下し過ぎることなく適切に維持される。この内側部44はクラックの起点になりにくい。このタイヤ2では、カットチッピングの発生が抑制される。
【0073】
前述したように、キャップ層30の径方向内側にベース層28が位置する。トレッド4が摩耗すると、やがてベース層28が露出する。
このタイヤ2では、メイン陸部36Mにおいて、キャップ層30とベース層28との界面38は、横断サイプ40の内側部44と交差する。トレッド4がさらに摩耗すると、内側部44を含んだベース層28が露出する。ベース層28はキャップ層30に比べて機械的特性に劣るので、内側部44が、クラックの起点となり、カットチッピングの発生を促すという懸念がある。
【0074】
しかし前述したように、内側部44は周方向溝34から距離をあけて配置される。ベース層28が露出した状態においても、メイン陸部36Mの剛性は、低下し過ぎることなく適切に維持される。この内側部44はクラックの起点になりにくい。このタイヤ2では、カットチッピングの発生が抑制される。
【0075】
このタイヤ2では、トレッド4に含まれるベース層28の体積が、従来トレッドのそれに比べて多いにもかかわらず、カットチッピングの発生が効果的に抑制される。しかもこのタイヤ2のトレッド4は従来トレッドに比べてベース層28を多く含むので、このタイヤは転がり抵抗をさらに低減できる。
このタイヤ2は、耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0076】
前述したように、メイン陸部36Mにおいて、キャップ層30とベース層28との界面38は、横断サイプ40の内側部44と交差する。内側部の一部は、キャップ層30とベース層28との界面38の径方向内側に位置する。
図5において両矢印PDで示される長さは、メイン陸部36Mにおけるキャップ層30とベース層28との界面38から径方向内向きに入り込んでいる内側部44の長さである。この長さPDは、内側部44の入り込み長さとも呼ばれる。
【0077】
このタイヤ2では、内側部44の入り込み長さPDの、周方向溝34の溝深さに対する比率は5%以上20%以下であるのが好ましい。
内側部44の入り込み長さPDの、周方向溝34の溝深さに対する比率が5%以上に設定されることにより、内側部44が、カットチッピングの発生を抑制することに効果的に貢献できる。このタイヤ2は、耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。この観点から、この比率は10%以上であるのがより好ましい。
内側部44の入り込み長さPDの、周方向溝34の溝深さに対する比率が20%以下に設定されることにより、適切な溝深さDGpを有する横断サイプ40が構成される。この横断サイプ40は、ウェット性能の向上と、転がり抵抗の低減とに効果的に貢献できる。この観点から、この比率は15%以下であるのがより好ましい。
【0078】
このタイヤ2では、メイン陸部36Mの隣に位置する2本の周方向溝34が異なる溝深さを有する場合は、深い周方向溝34の溝深さに基づいて、内側部44の入り込み長さPDの、周方向溝34の溝深さに対する比率が表される。
前述したように、図5に示されたメイン陸部36Mはミドル陸部36mであり、ミドル陸部36mの隣に位置する2本の周方向溝34のうち、ショルダー周方向溝34sの溝深さDGsが、ミドル周方向溝34mの溝深さDGmよりも深い。図5に示されたメイン陸部36Mでは、内側部44の入り込み長さPDの、周方向溝34の溝深さに対する比率は、内側部44の入り込み長さPDの、ショルダー周方向溝34sの溝深さDGsに対する比率(PD/DGs)で表される。
【0079】
図6は、タイヤ2の子午線断面における、トレッド面26の輪郭線の一部を示す断面図である。
詳述しないが、本発明においてトレッド面26の輪郭線は、例えば変位センサーを用いて、基準状態、つまり、タイヤ2を正規リムに組み、タイヤ2の内圧を正規内圧の5%の圧力に調整した状態にある、タイヤ2の外面形状を計測することで得られる。このタイヤ2の外面2Gを形づける、モールド(図示されず)のキャビティ面の形状に基づいて、このトレッド面26の輪郭線が特定されてもよい。
【0080】
子午線断面においてトレッド面26の輪郭線は軸方向に並ぶ複数の円弧で構成される。図6に示されたトレッド面26の輪郭線を構成する複数の円弧は、センター円弧と、一対のショルダー円弧とを含む。
センター円弧は一対のショルダー円弧の間に位置する。センター円弧は赤道PCを含む。図6において矢印R1は、センター円弧の半径である。図示されないが、センター円弧は赤道面に中心を有する。
それぞれのショルダー円弧は、センター円弧の軸方向外側に位置する。ショルダー円弧は、トレッド面26の端TEを含む。ショルダー円弧は、センター円弧に連なる。符号CSで示されるトレッド面26の輪郭線上の位置は、ショルダー円弧とセンター円弧との境界である。図6において矢印R2は、ショルダー円弧の半径である。図示されないが、ショルダー円弧は、境界CSとセンター円弧の中心と結ぶ直線上に中心を有する。ショルダー円弧は、境界CSにおいてセンター円弧と接する。
【0081】
図6において、両矢印HWTで示される長さは、赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離である。符号PHで示される、トレッド面26の輪郭線上の位置は、軸方向距離HWTが半分となる位置である。両矢印HCSで示される長さは、赤道面からセンター円弧とショルダー円弧との境界CSまでの軸方向距離である。
【0082】
前述したように、このタイヤ2ではセンター陸部36cが赤道PCを含み、ショルダー陸部36sがトレッド面26の端TEを含む。ミドル陸部36mが境界CSを含む。図6に示されるように、ミドル陸部36mは、赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離HWTが半分となる位置PHを含む。
【0083】
センター円弧の半径R1はショルダー円弧の半径R2よりも大きい。
このタイヤ2は、トレッド面26のクラウン部分をショルダー部分よりもフラットにできる。このタイヤ2は、クラウン部分における接地圧を低減できるので、カットチッピングの発生リスクを低減できる。このタイヤ2は、トレッド4がベース層28を多く含むことで懸念された、耐カットチッピング性の低下を効果的に抑制できる。
この観点から、センター円弧の半径R1はショルダー円弧の半径R2よりも大きいのが好ましい。具体的には、ショルダー円弧の半径R2の、センター円弧の半径R1に対する比(R2/R1)は0.12以上0.20以下であるのがより好ましく、0.16以上0.18以下であるのがさらに好ましい。
【0084】
図6に示されるように、センター円弧とショルダー円弧との境界CSは、タイヤ2の赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離HWTの半分となる、トレッド面26上の位置PHよりも軸方向内側に位置する。図示されないが、この境界CSの位置が、軸方向において、軸方向距離HWTの半分となる、トレッド面26上の位置PHと一致していてもよい。
このタイヤ2は、トレッド4に作用する荷重が変動しても、トレッド面26の輪郭線においてクラウン部分をフラットな状態で維持できる。荷重が変動しても、路面との接地面の形状において、周方向側の縁をフラットな状態で維持できる。このタイヤ2は、クラウン部分における接地圧を低減できるので、耐カットチッピング性の低下を効果的に抑制できる。このタイヤ2は、カットチッピングの発生リスクを効果的に低減できる。
この観点から、センター円弧とショルダー円弧との境界CSの位置が、タイヤ2の赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離HWTの半分となる、トレッド面26上の位置PHと軸方向において一致するか、境界CSが、タイヤ2の赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離HWTの半分となる、トレッド面26上の位置PHの軸方向内側に位置するのが好ましい。具体的には、赤道面からセンター円弧とショルダー円弧との境界CSまでの軸方向距離HCSの、赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離HWTに対する比は、0.35以上0.50以下であるのがより好ましく、0.40以上0.45以下であるのがさらに好ましい。
【0085】
耐チッピング性の低下を効果的に抑制できる観点から、センター円弧の半径R1はショルダー円弧の半径R2よりも大きく、センター円弧とショルダー円弧との境界CSの位置が、タイヤ2の赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離HWTの半分となる、トレッド面26上の位置PHと軸方向において一致するか、境界CSが、タイヤ2の赤道面からトレッド面26の端TEまでの軸方向距離HWTの半分となる、トレッド面26上の位置PHの軸方向内側に位置するのがより好ましい。
【0086】
前述したように、このタイヤ2のメイン陸部36Mは、このメイン陸部36Mを横断する横断サイプ40を備える。図3に示されるように、横断サイプ40は、複数の屈曲部46を含むことができる。横断サイプ40は屈曲部46において曲がる。これにより、路面に接地することでメイン陸部36Mが変形した時に、横断サイプ40の一対の壁面40Wが互いの動きを効果的に拘束できる。メイン陸部36Mの剛性が見かけ上高まり、メイン陸部36Mの変形が抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図ることができる。複数の屈曲部46を含む横断サイプ40は、転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。この観点から、横断サイプ40は、複数の屈曲部46を含むのが好ましい。
【0087】
横断サイプ40が屈曲部46において曲がるとは、図3に示された展開図において、横断サイプ40の向きが屈曲部46において変わることを意味する。
【0088】
図3に示された展開図において、角度θbは屈曲部46における横断サイプ40の屈曲の程度を示す。角度θbは、屈曲部46の両端から延長線を描くことで把握できる、2本の延長線がなす角度で表される。角度θbは、屈曲部46の内側のエッジにおいて特定される。
横断サイプ40が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる観点から、角度θbは90度以上であるのが好ましい。
【0089】
図3に示されるように、横断サイプ40の屈曲部46は丸みを帯びた形状を有する。この屈曲部46が角張った形状を有するように構成されてもよい。屈曲部46に歪みが集中することを効果的に抑制できるとの観点から、屈曲部46は丸みを帯びた形状を有するのが好ましい。この場合、屈曲部46の形状は円弧で表されるのがより好ましい。
【0090】
この横断サイプ40の屈曲部46の形状は円弧で表される。屈曲部46における外側のエッジの輪郭と、内側のエッジの輪郭とは、円弧で表される。図3において矢印Rbは、屈曲部46の内側のエッジの輪郭を表す円弧の半径である。
本発明においては、横断サイプ40の屈曲部46の形状は円弧で表される場合、その円弧の半径は、屈曲部46の内側のエッジの輪郭を表す円弧の半径Rbで表される。
【0091】
図3に示されるように屈曲部46の形状が円弧で表される場合、屈曲部46に歪が集中することを抑制できる観点から、この円弧の半径Rbは、3.0mm以上15mm以下であるのが好ましく、5.0mm以上15mm以下であるのがより好ましい。
【0092】
図3に示された横断サイプ40は2つの屈曲部46を含む。2つの屈曲部46はストレートにのびる中央連結部48を介して繋がる。
トレッド面26の第一端TE1側の屈曲部46(以下、第一屈曲部50)は、トレッド面26の第一端TE1側に位置する周方向溝34(この図3では、ミドル周方向溝34m)と第一連結部52を介して繋がる。
トレッド面26の第二端TE2側の屈曲部46(以下、第二屈曲部54)は、トレッド面26の第二端TE2側に位置する周方向溝34(この図3では、ショルダー周方向溝34s)と第二連結部56を介して繋がる。
横断サイプ40は、第一連結部52、第一屈曲部50、中央連結部48、第二屈曲部54及び第二連結部56を備える。
図3に示されるように、第一連結部52、中央連結部48及び第二連結部56は、軸方向に対して傾斜する。
【0093】
図7は、図3に示された展開図の一部を示す拡大展開図である。この図7はメイン陸部36Mとしてのミドル陸部36mを示す。
図7において角度θfは第一連結部52が軸方向に対してなす角度である。角度θcは、中央連結部48が軸方向に対してなす角度である。角度θsは第二連結部56が軸方向に対してなす角度である。角度θfは第一連結部52の傾斜角度と呼ばれ、角度θcは中央連結部48の傾斜角度と呼ばれ、角度θsは第二連結部56の傾斜角度と呼ばれる。
【0094】
このタイヤ2では、第一連結部52、中央連結部48及び第二連結部56の傾斜の向きは同じである。しかし第一連結部52及び第二連結部56の傾斜は緩やかであり、中央連結部48の傾斜は急である。言い換えれば、中央連結部48の傾斜角度θcは、第一連結部52の傾斜角度θfよりも大きく、第二連結部56の傾斜角度θsよりも大きい。
この横断サイプ40を有するメイン陸部36Mでは、路面に接地することでメイン陸部36Mが変形した時に、横断サイプ40の一対の壁面40Wが互いの動きをより効果的に拘束できる。メイン陸部36Mの剛性が見かけ上高まり、メイン陸部36Mの変形が抑制される。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図ることができる。この観点から、横断サイプ40は、軸方向に対して傾斜する、第一連結部52、中央連結部48及び第二連結部56を備え、中央に位置する中央連結部48が急な傾斜を有し、第一連結部52及び第二連結部56が緩やかな傾斜を有するのが好ましい。
【0095】
横断サイプ40が転がり抵抗の低減により効果的に貢献できる観点から、中央連結部48の傾斜角度θcと、第一連結部52の傾斜角度θfとの差(θc-θf)は、30度以上70度以下であるのが好ましく、40度以上60度以下であるのがより好ましい。
同様の観点から、中央連結部48の傾斜角度θcと、第二連結部56の傾斜角度θsとの差(θc-θs)は、30度以上70度以下であるのが好ましく、40度以上60度以下であるのがより好ましい。
【0096】
このタイヤ2では、第一連結部52は第一端部52a及び第一本体部52bを備える。第一端部52a及び第一本体部52bはストレートにのびる。第一端部52aは、ミドル周方向溝34mに繋がる。第一端部52aは、ミドル周方向溝34mと第一本体部52bとの間に位置する。
第一端部52aと第一本体部52bとが直接、繋げられてもよいし、円弧部を介して繋げられてもよい。図3に示された第一連結部52では、第一端部52aと第一本体部52bとは第一円弧部52cを介して繋げられる。
図3に示されるように、第一本体部52bの傾斜角度は、第一端部52aのそれよりも大きい。前述の第一連結部52の傾斜角度θfは、第一本体部52bの傾斜角度で表される。
【0097】
このタイヤ2では、第二連結部56は第二端部56a及び第二本体部56bを備える。第二端部56a及び第二本体部56bはストレートにのびる。第二端部56aは、ショルダー周方向溝34sに繋がる。第二端部56aは、ショルダー周方向溝34sと第二本体部56bとの間に位置する。
第二端部56aと第二本体部56bとが直接、繋げられてもよいし、円弧部を介して繋げられてもよい。図3に示された第二連結部56では、第二端部56aと第二本体部56bとは第二円弧部56cを介して繋げられる。
図3に示されるように、第二本体部56bの傾斜角度は第二端部56aのそれよりも大きい。前述の第二連結部56の傾斜角度θsは、第二本体部56bの傾斜角度で表される。
【0098】
図7において、両矢印L1aで示される長さは第一端部52aの長さである。両矢印L1bで示される長さは、第一本体部52bの長さである。両矢印L2aで示される長さは第二端部56aの長さである。両矢印L2bで示される長さは、第二本体部56bの長さである。長さL1a及びL1b、並びに長さL2a及びL2bは、横断サイプ40の幅中心線に沿って計測される。
【0099】
このタイヤ2では、横断サイプ40が転がり抵抗の低減により効果的に貢献できる観点から、第一端部52aの長さL1aの、第一本体部52bの長さL1bに対する比率(L1a/L1b)は、5%以上25%以下であるのが好ましく、10%以上20%以下であるのがより好ましい。同様の観点から、第二端部56aの長さL2aの、第二本体部56bの長さL2bに対する比率(L2a/L2b)は、5%以上25%以下であるのが好ましく、10%以上20%以下であるのがより好ましい。
【0100】
図3に示されるように、このタイヤ2は、ミドル周方向溝34mの溝底に突条58を設けることができる。突条58は、ミドル周方向溝34mの溝底の動きを拘束する。これにより、クラウン部分での剛性が高められ、変形が抑制される。このタイヤ2は、トレッド4に作用する荷重が変動しても、トレッド面26の輪郭線においてクラウン部分をフラットな状態で維持できる。荷重が変動しても、路面との接地面の形状において、周方向側の縁をフラットな状態で維持できる。このタイヤ2は、クラウン部分における接地圧を低減できるので、耐カットチッピング性の低下を効果的に抑制できる。このタイヤ2は、カットチッピングの発生リスクを効果的に低減できる。この観点から、ミドル周方向溝34mの溝底には、突条58が設けられるのが好ましい。
【0101】
図3に示されるように、突条58は、広い幅を有する幅広部60と、狭い幅を有する幅狭部62とを備えることができる。図3に示された突条58は、複数の幅広部60と複数の幅狭部62とを備える。幅広部60と幅狭部62とは、周方向に交互に配置される。
この突条58は、全てが幅広部60で構成された突条よりも軟質で、全てが幅狭部62で構成された突条よりも硬質である。この突条58は、ミドル周方向溝34mの溝底の動きを効果的に拘束する。このタイヤ2は、トレッド4に作用する荷重が変動しても、トレッド面26の輪郭線においてクラウン部分をフラットな状態で維持できる。このタイヤ2は、荷重が変動しても、路面との接地面の形状において、周方向側の縁をフラットな状態で維持できる。このタイヤ2は、クラウン部分における接地圧を低減できるので、耐カットチッピング性の低下を効果的に抑制できる。この観点から、突条58は複数の幅広部60と複数の幅狭部62とを備え、幅広部60と幅狭部62とが周方向に交互に配置されるのが好ましい。
【0102】
図3において両矢印WWで示される長さは、幅広部60の幅である。両矢印WNで示される長さは、幅狭部62の幅である。突条58がミドル周方向溝34mの溝底の剛性コントロールに効果的に貢献できる観点から、幅広部60の幅WWは、ミドル周方向溝34mの溝口での溝幅の25%以上45%以下であるのが好ましく、30%以上40%以下であるのが好ましい。幅狭部62の幅WNの、幅広部60の幅WWに対する比(WN/WW)は0.3以上0.7以下であるのが好ましく、0.4以上0.6以下であるのがより好ましい。
【0103】
前述したように、トレッド4に刻まれる周方向溝34はジグザグ状にのびる。周方向溝34は、トレッド面26の端TE側に突出する頂点Tを有する。図3に示されるように、突条58の幅広部60は、ジグザグ状にのびる周方向溝34の頂点Tに配置される。この突条58は、ミドル周方向溝34mの溝底の動きを効果的に拘束する。耐カットチッピング性の低下を効果的に抑制できる観点から、トレッド4に刻まれる周方向溝34がジグザグ状にのびる場合、突条58の幅広部60は、ジグザグ状にのびる周方向溝34の、トレッド面26の端TE側に突出する頂点Tに配置されるのが好ましい。
【0104】
前述したように、ベース層28は、キャップ層30の損失正接LTcよりも低い損失正接LTbを有する。具体的には、このタイヤ2では、ベース層28の損失正接LTbの、キャップ層30の損失正接LTcの比(LTb/LTc)は0.38以下であるのが好ましい。これにより、ベース層28が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。この観点から、比(LTb/LTc)は0.30以下であるのがより好ましい。
【0105】
このタイヤ2では、ベース層28の破壊エネルギーは7500MPa・%以上であるのが好ましい。このベース層28は、耐カットチッピング性の向上に貢献できる。この観点から、ベース層28の破壊エネルギーは8000MPa・%以上であるのがより好ましく、8500MPa・%以上であるのがさらに好ましい。
【0106】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明された、耐カットチッピング性の低下を抑制しながら、転がり抵抗の低減を図ることができる技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0108】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・ベルト
8・・・カーカス
16・・・サイドウォール
18・・・ベルトプライ
24・・・カーカスプライ
26・・・トレッド面
28・・・ベース層
30・・・キャップ層
32・・・溝
34、34s、34m・・・周方向溝
36、36s、36m、36c、36M・・・陸部
38・・・界面
38u・・・迂回部
38h・・・平坦部
40・・・横断サイプ
42・・・外側部
44・・・内側部
46・・・屈曲部
58・・・突条
60・・・幅広部
62・・・幅狭部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7