(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023642
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】制御装置、モータ装置、及びオイルポンプ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20250207BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20250207BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
H02K5/10
H02K11/33
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127966
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小粥 駿
(72)【発明者】
【氏名】内村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 匡将
(72)【発明者】
【氏名】亀井 政幸
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB06
5H605CC01
5H605DD07
5H605DD17
5H607AA12
5H607BB01
5H607DD08
5H607FF06
5H611BB01
5H611TT01
(57)【要約】
【課題】液中で電動モータを制御する制御装置を、軽量でシンプルに実現する技術を提供する。
【解決手段】制御装置は、制御基板と、制御基板を支持する金属製のハウジングと、制御基板を覆うようにハウジングに取り付けられた樹脂製のカバーとを備える。カバーは、制御基板の厚み方向の他方側の面を覆う天壁、及び天壁の外縁からハウジングに向けて突出して制御基板の周囲を覆う枠形の側壁を備えるカバー部と、側壁を貫通する貫通口を囲んでカバー部の外側に突出し、制御基板と外部装置とを電気的に接続する配線を収容するホルダ部とが一体成形されている。側壁の先端は、ハウジングに当接して、ハウジング及びカバー部で囲まれた制御基板の収容空間を密閉する。ホルダ部には、貫通口を通じて収容空間に連通する第1開口と、ホルダ部の外面に露出する第2開口とを有する通気路が形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを制御する制御回路が実装された制御基板と、
前記制御基板の厚み方向の一方側の面を支持する金属製のハウジングと、
前記制御基板の厚み方向の他方側の面及び前記制御基板の周囲を覆うように、前記ハウジングに取り付けられた樹脂製のカバーとを備える制御装置において、
前記カバーは、
前記制御基板の厚み方向の他方側の面を覆う天壁、及び前記天壁の外縁から前記ハウジングに向けて突出して前記制御基板の周囲を覆う枠形の側壁を備えるカバー部と、
前記側壁を貫通する貫通口を囲んで前記カバー部の外側に突出し、前記制御基板と外部装置とを電気的に接続する配線を収容するホルダ部とが一体成形され、
前記側壁の先端は、前記ハウジングに当接して、前記ハウジング及び前記カバー部で囲まれた前記制御基板の収容空間を密閉し、
前記ホルダ部には、前記貫通口を通じて前記収容空間に連通する第1開口と、前記ホルダ部の外面に露出する第2開口とを有する通気路が形成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記第2開口を囲んで前記ホルダ部から突出する筒体と、
前記筒体の内部に配置されて、前記第2開口を通じた気体の流通を許容し、前記第2開口を通じた液体の流通を阻止する多孔質膜と、
前記筒体の先端開口を閉塞させるキャップとを備え、
前記筒体の周方向の一部には、スリットが形成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
前記キャップは、
前記筒体の先端開口を閉塞させる閉塞壁と、
前記閉塞壁から前記ホルダ部に向けて突出して、前記筒体を径方向に離間した位置で囲む周壁とを備え、
前記周壁の突出長さは、前記筒体の先端開口から前記ホルダ部に向かう前記スリットの長さより長いことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の制御装置において、
前記スリットは、前記筒体の周方向のうち、前記側壁に対面する位置に形成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の制御装置において、
前記通気路は、前記第1開口から前記側壁の突出方向に直交する方向に直線的に延びた先に位置する第3開口を有し、
前記第2開口は、前記通気路が前記第1開口及び前記第3開口の間で分岐した先に位置し、
前記第3開口は、閉塞されていることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
前記ハウジングに支持された電動モータと、
前記電動モータを制御する請求項1に記載の制御装置とを備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ装置と、
前記電動モータの駆動力によってオイルを圧送するポンプ部とを備えることを特徴とするオイルポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、モータ装置、及びこれを搭載したオイルポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物の発生防止、廃棄物の削減、ならびに製品の再生利用および再利用によって廃棄物の発生を大幅に削減することなどを目指す技術が知られている。
【0003】
従来より、オイルを循環させるポンプと、ポンプを駆動する電動モータと、電動モータを制御する制御基板とがハウジングに収容されて一体化された電動ポンプが知られている。また、このような電動ポンプは、大部分がオイルの中に浸漬され、外部装置に接続される部分のみがオイル外に露出されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の電動ポンプは、制御基板を収容する金属製のハウジングと、ハウジングの天面を閉塞させる樹脂製のカバーと、制御基板と外部装置とを接続する配線をハウジングから引き出す樹脂製の配線ホルダとを備える。この電動ポンプは、ハウジング及びカバーの接合部分と、ハウジング及び配線ホルダの接合部分とを、オイルシールでシールする必要がある。また、この電動ポンプは、ハウジングとカバーとで構成された制御基板の収容空間を、外気に連通させる通気路を備える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の電動ポンプでは、オイル中に制御基板を配置するための部品点数(ハウジング、カバー、ホルダ、2か所のオイルシール)及びシール箇所が多いので、重量が重くなると共に構造が複雑になるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、液中で電動モータを制御する制御装置を、軽量でシンプルに実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、電動モータを制御する制御回路が実装された制御基板と、前記制御基板の厚み方向の一方側の面を支持する金属製のハウジングと、前記制御基板の厚み方向の他方側の面及び前記制御基板の周囲を覆うように、前記ハウジングに取り付けられた樹脂製のカバーとを備える制御装置において、前記カバーは、前記制御基板の厚み方向の他方側の面を覆う天壁、及び前記天壁の外縁から前記ハウジングに向けて突出して前記制御基板の周囲を覆う枠形の側壁を備えるカバー部と、前記側壁を貫通する貫通口を囲んで前記カバー部の外側に突出し、前記制御基板と外部装置とを電気的に接続する配線を収容するホルダ部とが一体成形され、前記側壁の先端は、前記ハウジングに当接して、前記ハウジング及び前記カバー部で囲まれた前記制御基板の収容空間を密閉し、前記ホルダ部には、前記貫通口を通じて前記収容空間に連通する第1開口と、前記ホルダ部の外面に露出する第2開口とを有する通気路が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液中で電動モータを制御する制御装置を、軽量でシンプルに実現することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るオイルポンプ装置の外観図である。
【
図3】カバーを取り外した状態の制御部の斜視図である。
【
図8】筒体及びキャップの関係を示す断面図である。
【
図9】カバーを射出成形する前後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るオイルポンプ装置1を説明する。
図1は、本実施形態に係るオイルポンプ装置1の外観図である。
【0012】
本実施形態に係るオイルポンプ装置1は、例えば自動車に搭載されたエンジンクラッチや変速機構クラッチにオイル(例えば、潤滑油)を供給する。オイルは、液体の一例である。但し、オイルポンプ装置1の用途は、これに限定されない。
【0013】
図1に示すように、オイルポンプ装置1は、モータ部2と、制御部3(制御装置)と、ポンプ部4とを備える、所謂「電動オイルポンプ」である。また、モータ部2及び制御部3は、ポンプ部4とは独立して、所謂「機電一体型」のモータ装置5を構成する。そして、モータ装置5は、ポンプ部4を駆動することに限定されず、冷却ファンやワイパーを駆動してもよい。
【0014】
モータ部2は、制御部3から供給される駆動電力によって回転する(駆動力を発生させる)電動モータ6(
図7参照)を備える。電動モータ6の具体例は特に限定されないが、例えば、インナーロータ型のブラシレスモータを採用することができる。電動モータ6の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。制御部3は、外部装置(図示省略)から供給される電力を、駆動電力として電動モータ6に供給する。制御部3の具体的な構成は、
図2以降を参照して後述する。ポンプ部4は、モータ部2の駆動力が伝達されて、オイルを圧送する。ポンプ部4の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0015】
モータ部2、制御部3、及びポンプ部4は、後述する電動モータ6の回転軸7(
図7参照)の延設方向に隣接して配置されている。より詳細には、中央に配置されたモータ部2に対して、回転軸7の延設方向の一方側に隣接して制御部3が配置され、回転軸7の延設方向の他方側に隣接してポンプ部4が配置されている。
【0016】
オイルポンプ装置1は、モータ部2、制御部3、及びポンプ部4を収容する金属製のハウジング10を備える。ハウジング10は、例えば、アルミダイキャスト等の金属材料で構成されている。なお、ハウジング10は、モータ部2、制御部3、及びポンプ部4を纏めて収容する一体型に限定されず、一部が別体で構成されていてもよい。
【0017】
図2は、制御部3の分解斜視図である。
図3は、カバー60を取り外した状態の制御部3の斜視図である。
図2及び
図3に示すように、制御部3は、ハウジング10と、制御基板20と、配線ユニット30と、中継ユニット40と、ヒートシンク50と、カバー60とを主に備える。以下、回転軸7の延設方向を単に「軸方向」と表記し、回転軸7の延設方向に直交する方向(回転軸7の径方向)を単に「径方向」と表記する。
【0018】
図2に示すように、ハウジング10には、電動モータ6を収容するモータ収容空間11が形成されている。モータ収容空間11は、概ね円柱形状の外形を呈する空間である。また、ハウジング10は、制御部3の構成部品(20~60)を支持する支持面12を有する。支持面12は、モータ収容空間11から軸方向にズレた位置において、径方向に拡がる面である。支持面12は、軸方向から見たときに、概ね四角形状の外形を呈する。
【0019】
支持面12には、複数(本実施形態では、4つ)の支持突起13a、13b、13c、13dと、複数(本実施形態では、4つ)のネジ座14a、14b、14c、14dと、ヒートシンク支持部15とが設けられている。
【0020】
支持突起13a~13dは、支持面12の異なる位置(典型的には、モータ収容空間11を囲む位置)において、支持面12から軸方向に突出している。支持突起13a~13dは、先端で制御基板20の第1面21aを支持する。また、支持突起13a~13dには、後述する位置決めピン66a~66dを受け入れる第2位置決め孔16a、16b、16c、16dが形成されている。第2位置決め孔16a~16dは、支持突起13a~13dの先端から基端に向かって延びている。
【0021】
ネジ座14a~14dは、支持面12の異なる位置(典型的には、モータ収容空間11を囲む位置)において、支持面12から軸方向に突出している。ネジ座14a~14dには、カバー60がハウジング10に取り付けられたときに、カバー60のネジ穴67a~67dに連通するネジ穴17a、17b、17c、17dが形成されている。そして、連通するネジ穴17a~17d、67a~67dにネジ18a~18dが螺合されることによって、ハウジング10にカバー60が固定される。
【0022】
ヒートシンク支持部15は、ヒートシンク50の端部を支持する。ヒートシンク支持部15は、モータ収容空間11から径方向に外れた位置に設けられている。また、ヒートシンク支持部15は、支持面12の外縁を構成する4つの辺のうちの1つに隣接する位置において、当該辺と平行に直線的に設けられている。
【0023】
制御基板20は、基板21を有する。基板21は、概ね四角形状の外形を呈する平板状の部材である。また、基板21は、第1面21a及び第2面21b(
図7参照)を有する。第1面21aは、基板21の厚み方向の一方側(モータ収容空間11に対面する側)の面である。第2面21bは、基板21の厚み方向の他方側(第1面21aと反対側)の面である。
図7に示すように、基板21は、軸方向から見たときに、モータ収容空間11に重なるように配置されている。また、基板21の外縁部は、軸方向から見たときに、モータ収容空間11の外側に位置している。
【0024】
基板21には、厚み方向に貫通する第1位置決め孔22a、22b、22c、22dが形成されている。第1位置決め孔22a~22dは、基板21の外縁部において、支持突起13a~13dに対応する位置に形成されている。そして、支持突起13a~13dの先端で基板21が支持されると、対応する第1位置決め孔22a~22d及び第2位置決め孔16a~16dが連通する。そして、対応する第1位置決め孔22a~22d及び第2位置決め孔16a~16dに位置決めピン66a~66dが挿入されると、ハウジング10、制御基板20、及びカバー60が位置決めされる。
【0025】
基板21の第1面21a及び第2面21bの一方または両方には、電動モータ6を制御する制御回路23を構成する複数の回路素子23a、23bが実装されている。また、回路素子23a、23bの少なくとも一部(例えば、回路素子23b)は、発熱量が大きい発熱素子である。回路素子23bは、基板21の外縁を構成する4つの辺のうち、配線ユニット30が配置される辺(
図3の右辺)、及び中継ユニット40が配置される辺(
図3の上辺)とは異なる辺(
図3の左辺)の近傍において、基板21の第2面21bに実装されている。
【0026】
配線ユニット30は、カバー60のホルダ部62に収容されている。配線ユニット30は、例えば、カバー60を射出成形する際にインサートされて、一体成形される。配線ユニット30は、外部装置と制御回路23とを接続する配線31と、配線31を収容(モールド)する収容体32とで構成される。
【0027】
配線31は、例えば、外部装置から出力される駆動電力を制御回路23に供給するための一対の電力線と、外部装置及び制御回路23の間で制御信号を送受信するための一対の信号線と含む。収容体32は、配線31をインサートした金型に樹脂材料を射出することによって、配線31を収容した状態で一体成形される。また、収容体32には、後述する通気路70の一部が形成されている。
【0028】
中継ユニット40は、制御回路23と電動モータ6(より詳細には、コイル)とを接続する。中継ユニット40は、制御回路23から出力される駆動電力をコイルに供給する。これにより、電動モータ6が回転する。
【0029】
図2に示すように、ヒートシンク50は、回路素子23bが発生させる熱をハウジング10に放熱する放熱部材である。ヒートシンク50は、熱伝導率の高い金属材料(例えば、銅)によって形成される。例えば、平板をプレス加工することによって、互いに交差(直交)するように屈曲された受熱板51と伝熱板52とを備えるヒートシンク50が形成される。すなわち、ヒートシンク50は、概ねL字形状の外形を呈する。
【0030】
[カバー60の構成]
図4は、カバー60の斜視図である。
図5は、
図4(A)の分解斜視図である。
図6は、
図4(B)の分解斜視図である。
図7は、モータ部2及び制御部3の断面図である。カバー60は、例えば、樹脂材料を射出成形して一体成形される。すなわち、カバー60は、ハウジング10より熱伝導率が低く、且つハウジング10より軽量な材料で形成されている。
図4~
図7に示すように、カバー60は、カバー部61と、ホルダ部62と、フランジ部63とを備える。
【0031】
図4に示すように、カバー部61及びホルダ部62は、フランジ部63を挟んで反対側に配置されている。換言すれば、フランジ部63は、カバー部61及びホルダ部62の間に配置されている。そして、
図1に示すように、オイルポンプ装置1は、フランジ部63がオイルケース8の開口に取り付けられる。これにより、カバー部61がオイルケース8の内部に配置され、ホルダ部62のみがオイルケース8の外部に配置される。また、オイルケース8(液体貯留部の一例)には、オイル(液体の一例)が貯留されている。
【0032】
これにより、モータ部2、ポンプ部4、及び制御部3のフランジ部63よりカバー部61側がオイルケース8の内部に配置(すなわち、オイルに浸漬)され、制御部3のフランジ部63よりホルダ部62側のみがオイルケース8の外部に配置される。オイルに浸漬されるカバー部61は、制御基板20を収容する基板収容空間24を液密にする必要がある。また、基板収容空間24は、オイルケース8の外部に連通される必要がある。
【0033】
カバー部61は、制御基板20の第2面21b及び制御基板20の周囲を覆うように、ハウジング10に取り付けられる部分である。カバー部61は、天壁64と、側壁65と、複数の位置決めピン66a、66b、66c、66dとを主に備える。
【0034】
天壁64は、制御基板20(基板21)の第2面21bを覆う部分である。ハウジング10にカバー60が取り付けられると、天壁64は、制御基板20から軸方向に所定の間隔を隔てて、第2面21bに対面する。また、天壁64の第2面21bに対面する面(裏面)には、ヒートシンク50の受熱板51が取り付けられる。さらに、天壁64の四隅には、厚み方向に貫通するネジ穴67a、67b、67c、67dが形成されている。
【0035】
側壁65は、制御基板20の周囲を覆う枠型の部分である。側壁65は、天壁64の外縁部からハウジング10に向かって(すなわち、軸方向に)突出する。ハウジング10がカバー60に取り付けられると、側壁65の先端は、ハウジング10の支持面12に当接する。側壁65の先端と支持面12との当接部分は、制御基板20を囲むように周方向に連続している。
【0036】
これにより、ハウジング10及びカバー60(より詳細には、支持面12、天壁64、及び側壁65)の間に、制御基板20を収容する基板収容空間24が形成される。側壁65の先端と支持面12との当接部分は、基板収容空間24への液体の進入を阻止するように液密にシールされる。すなわち、基板収容空間24は、オイルケース8の内部に対して密閉されており、後述する貫通口68を通じてのみオイルケース8の外部に連通している。
【0037】
さらに、側壁65の先端と支持面12との間には、リング状のオイルシールが配置されてもよい。換言すれば、側壁65の先端と支持面12とでオイルシールを挟持して、オイルケース8に対して基板収容空間24を密閉してもよい。これにより、側壁65の先端と支持面12との当接部分がさらに液密にシールされる。すなわち、側壁65の先端は、オイルシールを介して間接的に支持面12に当接していてもよい。
【0038】
側壁65の周方向の一部には、フランジ部63が設けられている。本明細書では、フランジ部63を側壁65の一部として取り扱う。そして、側壁65及びフランジ部63には、側壁65及びフランジ部63を厚み方向に貫通する貫通口68が形成されている。貫通口68は、配線31を基板収容空間24からホルダ部62に向けて引き出すと共に、ホルダ部62に設けられた通気路70を基板収容空間24に連通させる。
【0039】
位置決めピン66a~66dは、側壁65の内側において、天壁64の裏面から軸方向に突出している。位置決めピン66a~66dが第1位置決め孔22a~22dに挿入されると、第2面21bを天壁64に向けた状態の制御基板20がカバー60に取り付けられる。この状態で位置決めピン66a~66dが第2位置決め孔16a~16dに挿入されると、ネジ穴17a~17d、67a~67dが連通すると共に、伝熱板52の突出端がヒートシンク支持部15に軸方向に挿入される。そして、連通したネジ穴17a~17d、67a~67dにネジ18a~18dが螺合されることによって、ハウジング10、制御基板20、ヒートシンク50、及びカバー60が位置決めされた状態で、ハウジング10にカバー60が固定される。
【0040】
ホルダ部62は、貫通口68を囲んでカバー部61の外側に突出している。また、ホルダ部62は、配線ユニット30を収容している。さらに、ホルダ部62は、概ねL字形状の外形を呈する。より詳細には、ホルダ部62は、側壁65及びフランジ部63から離れる向きに突出し、天壁64側に屈曲している。また、ホルダ部62の突出端は開口されて、配線31の他端(制御基板20に接続される側と反対側の端部)を露出させる。そして、ホルダ部62の突出端は、外部装置に配線31を接続するコネクタとして機能する。但し、ホルダ部62の形状は、オイルポンプ装置1が組み込まれる装置の仕様によって、適宜変更することができる。
【0041】
図7に示すように、ホルダ部62の内部には、通気路70が形成されている。本実施形態に係る通気路70の一部は、ホルダ部62に収容された配線ユニット30の内部に形成されている。通気路70は、基板収容空間24をオイルケース8の外部に連通させる空気の通路である。より詳細には、オイルケース8内の温度が上昇すると、基板収容空間24内の空気が通気路70を通じてオイルケース8の外部に排出される。一方、オイルケース8内の温度が低下すると、オイルケース8の外部の空気が通気路70を通じて基板収容空間24内に流入する。これにより、基板収容空間24の気圧が一定に保たれる。
【0042】
通気路70は、第1開口71と、第2開口72と、第3開口73とを有する。第1開口71は、貫通口68を通じて通気路70を基板収容空間24に連通させる。第2開口72及び第3開口73は、通気路70をホルダ部62の外部に露出させる。第3開口73は、通気路70が第1開口71から側壁65に直交するする方向に延びた先に位置する。一方、第2開口72は、通気路70が第1開口71及び第3開口73の間で分岐した先に位置する。但し、通気路70の具体的な形状は、オイルポンプ装置1が組み込まれる装置の仕様によって、適宜変更することができる。
【0043】
ホルダ部62には、筒体74が設けられている。筒体74は、概ね筒形状(より詳細には、円筒形状)の外形を呈する。筒体74は、第2開口72を囲んでホルダ部62から突出している。筒体74の先端は開口(以下、「先端開口」と表記する。)されている。また、筒体74には、スリット75が形成されている。スリット75は、筒体74を厚み方向に貫通している。また、スリット75は、筒体74の先端開口からホルダ部62に向けて延びている。さらに、スリット75は、筒体74の周方向のうち、側壁65に対面する位置に形成されている。
【0044】
筒体74の内部には、多孔質膜76が配置されている。多孔質膜76は、第2開口72を通じた気体の流通を許容し、第2開口72を通じた液体の流通を阻止する膜である。本実施形態では、既に一般に流通している周知の多孔質膜76を用いるので、多孔質膜76の詳細な説明は省略する。
【0045】
筒体74には、キャップ77が取り付けられている。キャップ77は、有底筒形状(より詳細には、有底円筒形状)の外形を呈する。キャップ77は、筒体74の先端開口を閉塞すると共に、スリット75の周囲に液体に進入を防止するラビリンスを形成する。本実施形態に係るキャップ77は、平板(円板)形状の閉塞壁78と、閉塞壁78からホルダ部62に向けて突出し且つ周方向に連続する周壁79とで構成されている。
【0046】
図8は、筒体74及びキャップ77の関係を示す断面図である。
図8(A)に示すように、周壁79の内径寸法D1は、筒体74の外径寸法D2より大きい。また、周壁79の突出長さL1は、筒体74の突出長さL2より短い。さらに、周壁79の突出長さL1は、スリット75の長さL3より長い。
【0047】
そして、
図8(B)に示すように、キャップ77は、周壁79の先端をホルダ部62に向けて、閉塞壁78が筒体74の先端開口を閉塞するように、筒体74に取り付けられる。キャップ77は、例えば、筒体74の先端開口と閉塞壁78とを溶着することによって、筒体74に固定される。但し、筒体74に対するキャップ77の固定方法は、前述の例に限定されない。
【0048】
これにより、筒体74の先端開口を通じた液体及び気体の流通が阻止される。また、周壁79は、筒体74の外周面から径方向に離間した位置において、筒体74を囲んでいる。これにより、スリット75を通じた液体及び気体の流通は許容される。但し、スリット75の周囲には、筒体74及び周壁79によって、筒体74を通じた通気路70への液体の進入を抑制するラビリンスが形成される。さらに、スリット75を通じて筒体74に進入した液体は、多孔質膜76に捕捉されて、通気路70への進入が阻止される。
【0049】
さらに、通気路70の第3開口73は、ゴム栓80(閉塞部材)によって閉塞されている。これにより、第3開口73を通じた液体及び気体の流通は阻止される。第3開口73を閉塞するゴム栓80の外面は、ホルダ部62の外面と面一となっている。但し、閉塞部材の具体例は、ゴム栓80に限定されず、第3開口73を埋めるパテなどでもよい。
【0050】
[カバー60の成形方法]
図9は、カバー60を射出成形する前後の状態を示す図である。
図9(A)に示すように、カバー60を成形するのに先立って、配線ユニット30が射出成形される。この配線ユニット30は、配線31をモールドすると共に、ピン81が挿入されている。ピン81は、配線ユニット30内の通気路70となる位置に挿入される。また、ピン81は、カバー60の側壁65の突出方向に直交する方向に延設される。
【0051】
次に、配線ユニット30をインサートした第1金型82及び第2金型83内に樹脂材料を射出することによって、カバー部61、ホルダ部62、及びフランジ部63を含むカバー60が一体成形される。第1金型82及び第2金型83は、側壁65の突出方向に沿って接離される。換言すれば、第1金型82及び第2金型83は、ピン81の延設方向に直交する方向に接離される。
【0052】
次に、
図9(B)に示すように、射出成形されたカバー60からピン81が抜去される。ここで、矢印Aで示すように、ピン81をカバー部61側に抜去しようとすると、側壁65が邪魔になって抜き作業が複雑になる。そこで、矢印Bに示すように、ピン81をホルダ部62側に抜去する。これにより、ピン81を抜去した後に第3開口73がホルダ部62の外部に露出する。
【0053】
[実施形態の作用効果]
上記の実施形態によれば、天壁64及び側壁65を有する樹脂製のカバー60を採用することによって、従来の構成と比較して、制御部3を軽量化することができるので、カーボンニュートラルに貢献する。また、カバー部61及びホルダ部62を一体成形することによって、側壁65の先端と支持面12との当接部分だけをシールすればよいので、従来の構成と比較して、制御部3の部品点数を削減することができるので、廃棄物の削減に貢献する。さらに、通気路70を設けることによって、基板収容空間24の気圧を一定に保つことができるので、オイルポンプ装置1を液中で使用することができる。その結果、オイルケース8の内部で動作する電動モータ6を制御する制御部3を、軽量でシンプルに実現することができる。
【0054】
また、上記の実施形態によれば、多孔質膜76及びキャップ77を筒体74に取り付けることによって、通気路70を通じた気体の流通を許容し、通気路70に対する液体の進入を阻止することができる。また、既存のブリーザキャップを採用する場合と比較して、シンプルな構成で前述の作用効果を得ることができる。但し、筒体74に取り付ける部品の構成は、前述の例に限定されない。
【0055】
また、上記の実施形態によれば、筒体74及びキャップ77によって、スリット75の周囲にラビリンスを形成することによって、筒体74に液体が進入するのを阻止しつつ、気体の流通を許容することができる。但し、筒体74及びキャップ77の各部の寸法関係は、前述の例に限定されない。
【0056】
また、上記の実施形態によれば、筒体74の周方向のうちの側壁65に対面する位置にスリット75を形成することによって、筒体74への液体の進入をさらに有効に防止できる。また、スリット75は、筒体74の周方向のうち、オイルポンプ装置1の組み込み姿勢における下側に設けるのが望ましい。但し、スリット75の位置は、前述の例に限定されない。
【0057】
さらに、上記の実施形態によれば、第1開口71から側壁65の突出方向に直交する方向に直線的に延びた先の第3開口73を閉塞し、第1開口71及び第3開口73の間から分岐した先の第2開口72に多孔質膜76及びキャップ77を設けることによって、側壁65を有するカバー60にシンプルな手順で通気路70を形成することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :オイルポンプ装置
2 :モータ部
3 :制御部
4 :ポンプ部
5 :モータ装置
6 :電動モータ
7 :回転軸
8 :オイルケース
10 :ハウジング
11 :モータ収容空間
12 :支持面
13 :支持突起
14 :ネジ座
15 :ヒートシンク支持部
16 :第2位置決め孔
17,67 :ネジ穴
18 :ネジ
20 :制御基板
21 :基板
21a :第1面
21b :第2面
22 :第1位置決め孔
23 :制御回路
23 :回路素子
24 :基板収容空間
30 :配線ユニット
31 :配線
32 :収容体
40 :中継ユニット
50 :ヒートシンク
51 :受熱板
52 :伝熱板
60 :カバー
61 :カバー部
62 :ホルダ部
63 :フランジ部
64 :天壁
65 :側壁
66 :位置決めピン
68 :貫通口
70 :通気路
71 :第1開口
72 :第2開口
73 :第3開口
74 :筒体
75 :スリット
76 :多孔質膜
77 :キャップ
78 :閉塞壁
79 :周壁
80 :ゴム栓
81 :ピン
82 :第1金型
83 :第2金型