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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023647
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】電子機器およびヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20250207BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20250207BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H05K7/20 D
H01L23/46 C
G06F1/20 C
G06F1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127973
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神保 三四郎
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA05
5E322BB03
5E322EA10
5E322FA04
5F136BA03
5F136BA22
5F136CA06
5F136DA41
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】ヒートシンクでの放熱において、放熱効率を高めるために、表面積や体積を大きくする必要がある。しかし、大きさには限界があるため、別の観点からの放熱効率の向上が求められている。
【解決手段】空冷によって排熱を行う電子機器であって、前記電子機器の筐体内に設置された発熱素子と、発熱素子に接するように上部に設けられたヒートシンクと、前記ヒートシンクに空気を送風し、前記筐体外へ排出するファンと、を備え、前記ヒートシンクは、前記ファンにより空気を吸気する吸気側から前記筐体外に空気を排出する排気側へと延びるように配列された複数のフィンからなるフィン群を有し、複数の前記フィンは、前記排気側出口近傍を除きそれぞれ略平行に配置され、前記発熱素子により高温となる高温部を経由する複数のフィンは、他のフィンよりも前記排気側出口近傍において間隔が広がるように配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷によって排熱を行う電子機器であって、
前記電子機器の筐体内に設置された発熱素子と、
発熱素子に接するように上部に設けられたヒートシンクと、
前記ヒートシンクに空気を送風し、前記筐体外へ排出するファンと、を備え、
前記ヒートシンクは、前記ファンにより空気を吸気する吸気側から前記筐体外に空気を排出する排気側へと延びるように配列された複数のフィンからなるフィン群を有し、
前記複数のフィンは、前記排気側出口近傍を除きそれぞれ略平行に配置され、前記複数のフィンのうち、前記発熱素子により高温となる高温部を経由する複数のフィンは、他のフィンよりも前記排気側出口近傍において間隔が広がるように配置されている、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記フィン群の前記排気側出口近傍は屈曲しており、前記高温部を経由する複数のフィンは、他のフィンよりも、屈曲が小さく形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記筐体内には前記発熱素子より発熱の小さい第2の発熱素子が設けられ、
前記ヒートシンクは、前記発熱素子及び前記第2の発熱素子と接するように設けられ、
前記発熱素子による高温部を経由する前記フィンの間隔は、前記第2の発熱素子による高温部を経由する前記フィンの間隔よりも、前記排気側出口近傍において大きく形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
発熱素子との接触面を有し、上部に通過する空気の流れに沿って設置された複数のフィンからなるフィン群を有するヒートシンクであって、
前記複数のフィンは、吸気側から排気側に空気を誘導するように、前記排気側出口近傍を除きそれぞれ略平行に配置され、
前記複数のフィンのうち、前記接触面の上方を経由する複数のフィンは、前記排気側出口近傍において、その間隔が広がるように配置されている、
ことを特徴とするヒートシンク。
【請求項5】
前記フィン群の前記排気側出口近傍は屈曲しており、前記高温部を経由する複数のフィンは、他のフィンよりも、屈曲が小さく形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の冷却構造およびヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放熱効率の向上を目的として、ヒートシンクの冷却効率を高める研究がされている。例えば、特許文献1には、フィンの密度が高い第1領域とフィンの密度が低い第2領域を持たせることで、フィンを通過する空気の流速をあげ、熱効率を改善するヒートシンクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-110640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートシンクでの放熱において、放熱効率を高めるために、表面積や体積を大きくする必要がある。しかし、大きさには限界があるため、別の観点からの放熱効率の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、空冷によって排熱を行う電子機器であって、前記電子機器の筐体内に設置された発熱素子と、発熱素子に接するように上部に設けられたヒートシンクと、前記ヒートシンクに空気を送風し、前記筐体外へ排出するファンと、を備え、前記ヒートシンクは、前記ファンにより空気を吸気する吸気側から前記筐体外に空気を排出する排気側へと延びるように配列された複数のフィンからなるフィン群を有し、複数の前記フィンは、前記排気側出口近傍を除きそれぞれ略平行に配置され、前記複数のフィンのうち、前記発熱素子により高温となる高温部を経由する複数のフィンは、他のフィンよりも前記排気側出口近傍において間隔が広がるように配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、放熱用のフィンの形状変更により、放熱効率を向上させた電子機器及びヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1に係る車載装置の右手前上から見た斜視図である。
図2】実施の形態1に係る車載装置の左後方下から見た斜視図である。
図3】筐体からアップケースとフロントケースを外した斜視図である。
図4図1のIV-IV線の位置で切断した断面図である。
図5図3の上方図である。
図6図5におけるヒートシンクの排気側出口近傍の拡大図である。
図7】実施の形態2に係る筐体からアップケースとフロントケースを外した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.実施の形態1に係る電子機器の構成]
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施の形態1に係る車載装置1の右手前上から見た斜視図である。
本実施の形態では、電子機器の一例としての車載装置1について説明する。本実施の形態では、車載装置1は、基本的には水平面に設置されたものとして説明する。本実施の形態では、車載装置1について、前後、左右という場合には、以下を基準にする。すなわち、車載装置1の前側は、図1上の左下側が対応し、車載装置1の後側は、図1上の右上側が対応するものとして説明する。また、車載装置1の左側は、図1上の左上側が対応し、車載装置1の右側は、図1上の右下側が対応するものとして説明する。
【0010】
車載装置1は、例えば、インフォテイメント装置やオーディオ装置、ナビゲーション装置といった車両に搭載される電子機器である。車載装置1は、外観形状を構成する筐体2を備える。筐体2は、車両における設置スペースに収まる形状(図示例では直方体形状)、及び寸法に、金属や樹脂などの適宜の材料から形成されている。設置スペースとしては、例えば、車両のダッシュボードに設けられた収納凹部が挙げられるが、表示部や操作パネルを有さない場合は車両のダッシュボード内部の見えない場所に埋め込まれる場合もある。この設置スペースのサイズには、ドイツ工業規格の1DIN、または2DINのサイズ規格が用いられることがあるが、これに限定されない。
【0011】
図3は、車載装置1からトップケース4とフロントカバー5とを取り外した斜視図である。
車載装置1は、下方に配置されるボトムケース3と、ボトムケース3に取り付けられた回路基板6、7と、回路基板6、7に設置されるヒートシンク8、9と、下側のヒートシンク8の上方に配置されるファンユニット10と、を有する。トップケース4は、ボトムケース3に上方から取り付けられ、回路基板6、7とヒートシンク8、9とファンユニット10とを覆う。フロントカバー5は、ボトムケース3およびトップケース4の前面を覆う。
【0012】
ボトムケース(第1の部材)3は、上方が開放された浅底の箱形状である。ボトムケース3は、矩形平板状の底板部(底板)30(図4参照)と、底板部30の前後左右に設けられた側板部に対応する前板部31、後板部32、左板部33、右板部34と、を有する。
【0013】
トップケース(第2の部材)4は、下方が開放された深底の箱形状である。本実施の形態のトップケース4は、図1に示すように、矩形平板状の天板部(天板)40と、天板部40の前後左右に設けられた側板と、を有する。側板は、前板部41、後板部(側板)42、左板部43、右板部44により構成される。
【0014】
フロントカバー(第3の部材)5は、ボトムケース3の前板部31およびトップケース4の前板部41を覆う。フロントカバー5は、前側の側板部に対応する前板部51と、前板部51の上端から後方に屈曲する天板接続部50と、を有する。
【0015】
ボトムケース3とトップケース4とフロントカバー5とリアカバー52(図2を参照)とにより、中空の筐体2が構成される。すなわち、ボトムケース3の前板部31、後板部32、左板部33、右板部34が、それぞれ、トップケース4の前板部41(図4を参照)、後板部42、左板部43、右板部44と接続される。フロントカバー5の前板部51、天板接続部50が、それぞれ、ボトムケース3の前板部31およびトップケース4の前板部41、トップケース4の天板部40と接続される。
【0016】
前板部31と前板部41と前板部51とにより、筐体2の前側の側板が構成される。後板部32と後板部42とリアカバー52とにより、筐体2の後側の側板が構成される。左板部33と左板部43とにより、筐体2の左側の側板が構成される。右板部34と右板部44とにより、筐体2の右側の側板が構成される。天板部40と天板接続部50とにより、筐体2の天板が構成される。底板部30により、筐体2の底板が構成される。
【0017】
図2は、車載装置1の左後方下から見た斜視図である。筐体2の底板、すなわち、ボトムケース3の底板部30には、吸気穴35が形成される。吸気穴35は、複数の丸穴により構成される。吸気穴35は、下側の回路基板6の発熱素子61(図4参照)に対向する位置に形成される。筐体2の後ろ側には、コネクタ73、74、75および77が露出しており、その部分を除き、トップケース4の後板部42とリアカバー52とによって内部が覆われている。
【0018】
筐体2の天板、すなわち、トップケース4の天板部40には、複数の放熱穴2aが形成される。放熱穴2aは天板部40の外周部に形成される。放熱穴2aは、後端部に形成される。放熱穴2aは、前後方向に延びる長孔状に形成される。放熱穴2aは、左右方向に複数形成され、全体の放熱口を構成する。本実施の形態では、放熱穴2aは、トップケース4の天板部40から後板部42に渡って形成される。すなわち、本実施の形態では、放熱穴2aは、トップケース4の天板部40および後板部42に形成される。
【0019】
筐体2の側面には、放熱穴2aの下方に対応して排水穴2bが形成される。本実施の形態では、筐体2の後側の側板に、排水穴2bが形成される。排水穴2bは、水平方向に延びる開口である。排水穴2bは、放熱穴2aの形成範囲よりも左右方向に長く形成される。本実施の形態では、トップケース4の後板部42には上方に凹んだ下縁部42aが形成される。後板部42の下縁部42aと、後述する水受け部100の延出方向の先端102との囲み形状により、排水穴2bが構成される。
【0020】
筐体2の側面には、放熱穴2aの下方に対応してコネクタ穴2cが形成される。本実施の形態では、筐体2の後側の側板に、複数のコネクタ穴2cが適宜に形成される。コネクタ穴2cは、排水穴2bよりも下方に形成される。本実施の形態では、一部のコネクタ穴2cと、排水穴2bとは一体の開口形状を形成する。
【0021】
図4は、図1のIV-IV線断面図である。
筐体2の内部には、回路基板6、7が配置される。回路基板6、7は、例えば、プリント基板である。回路基板6、7は、上下に間隔を空けて配置される。回路基板6、7は、ボトムケース3またはトップケース4に固定される。下側の回路基板6は、図3に示すように、底板部30の略全面に亘って設置される基板60を有する。上側の回路基板7は、ファンユニット10を回避する形状に形成された基板70を有する。基板60、70には、図3図5に示すように、車載装置1に必要な電気・電子部品61、62、71、72、76、およびコネクタ73、74、75、77が搭載されている。基板60、70には、その他、車載装置1の各種の機能を実現するための多数の部品が実装面に配置されている。
【0022】
これらの部品の中には、他の部品に比べて発熱量が多く、また安定動作のために放熱を要する部品としての発熱素子61、71が含まれている。発熱素子61、71としては、例えば、MPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサや、SoC(System-on-a-Chip)やPIC(Peripheral Interface Controller)などの各種の集積回路が挙げられる。本実施の形態では、発熱素子61は、SoCである。発熱素子71は、PICである。
【0023】
上側の基板60と下側の基板70とは、ハーネス62により電気的に接続される。
基板60、70の後端部には、適宜のコネクタ73、74、75、77(図2図4参照)が設けられている。コネクタ73、74、75、77には、外部機器から延びるそれぞれの外部端子が着脱可能に接続される。コネクタ73、74、75、77は、コネクタ穴2cを通じて筐体2の外部に突出している。
【0024】
発熱素子61、71には、それぞれ、ヒートシンク8、9が密着される。ヒートシンク8、9の下面は、発熱素子61、71の上面に、熱伝導性グリスや熱伝導性シートを介して密着する。これにより、ヒートシンク8、9は発熱素子61、71から熱を受ける。なお、熱伝導性グリスや熱伝導性シートは省略してもよい。ヒートシンク8、9は、発熱素子61、71の熱を吸収して、その熱を周囲の空気に放出する。これにより、ヒートシンク8、9は、発熱素子61、71の発熱を空冷によって放熱する。ヒートシンク8、9は、例えば、アルミニウムや、銅、それらを含む合金などの高熱伝導性材料から形成されている。本実施の形態では、ヒートシンク8にはアルミ板、ヒートシンク9には、アルミダイカストを用いている。
【0025】
下側のヒートシンク8は、図4に示すように、断面でL字状に形成される。ヒートシンク8は、上下方向に厚みを有し前後方向に延びる板状の本体部80と、本体部80の前端から上方に曲がる板状の屈曲部81と、を有する。ヒートシンク8は、本体部80の下面が、発熱素子61の上面に密着する。
【0026】
下側のヒートシンク8の上方には、ファンユニット10が配置される。ファンユニット10は、ファン110と、ファン110を支持するエアダクト120とを有する。エアダクト120が天板部40の内面に固定される。エアダクト120の下面には、ファン110が固定される。
【0027】
本実施の形態では、ファン110には軸流ファンが用いられている。ファン110は、矩形環状のファンケーシング110aと、ファンケーシング110aの内周部に支持されたファンモータ110bと、ファンモータ110bに回転可能に支持された羽根(不図示)と、を有する。ファンケーシング110aは、ボルトなどの固定具によりエアダクト120の下面に固定される。ファン110は、ファンモータ110bの上下方向に延びるモータ軸を回転中心として回転する。ファン110は、下方から空気を吸いこみ上方に送風する。なお、ファン110の種類は、シロッコファンなどの軸流ファン以外でもよい。
【0028】
エアダクト120は、ファン110により送風される空気をヒートシンク9に導く。エアダクト120は、上下方向に厚みを有する板状の本体部121を有する。本体部121は、後方に進むに連れて左側に傾斜して延びる平板状である(図3参照)。本体部121の前端部には、上下方向に貫通する通風口121aが形成される。通風口121aに対応して、本体部121の下面には、ファン110が固定される。ファン110は、通風口121aを覆うように配置される。これにより、ファン110がヒートシンク8の本体部80に対向する。
【0029】
このとき、ファンケーシング110aの下面は、ヒートシンク8の屈曲部81の上端よりも下方に位置する。ファンケーシング110aの下面は、上側の基板70よりも下方に位置する。これにより、ヒートシンク8の本体部80の上方を流れる空気が、ファン110により通風口121aを通じてエアダクト120内に送られ易くなっている。
【0030】
本体部121の上面には、上面に対して起立した形状のダクト壁122(図3参照)が形成される。ダクト壁122は、平面視で、通風口121aの左前側に沿って半円弧状に延びる前側壁123と、前側壁123の左端から左後方に延びる左側壁124と、前側壁123の右端から左後方に延びる右側壁125と、を有する。本体部121の上面では、通風口121aの前側、左側、および、右側が、ダクト壁122の前側壁123、左側壁124、および、右側壁125で包囲される。左側壁124と右側壁125とは所定の間隔を空けて後方に延びる。前側壁123の上端、左側壁124の上端、および、右側壁125の上端の囲み形状により、後方に開放された略U字状の上部開口122aが形成される。ダクト壁122の上端は、天板部40に当接または近接するように構成される。本体部121の後端、左側壁124の後端、および、右側壁125の後端の囲み形状により、上方に開放された略U字状の後部開口122bが形成される。
【0031】
ダクト壁122の上部には、外周部に複数の固定部126が形成される(図3参照)。固定部126は、トップケース4の天板部40に固定される。このとき、上部開口122aが天板部40により閉塞されると共に、後部開口122bの上方が閉塞される。すなわち、ダクト壁122と天板部40とによって囲まれた空間により空気の流路120S(図4参照)が形成される。エアダクト120では、通風口121aから流入した空気は、流路120Sを流れ、後部開口122bから流出する。
【0032】
前側壁123は、上方に延びる下部123aと、下部123aの上端から上方に進むに連れて左後方に傾斜する上部123bとを有する。上部123bの傾斜形状により、通風口121aから上方に流れる空気が左後方に流速を落とさずに案内され易くなっている。
【0033】
エアダクト120の後部開口122bの後方には、ヒートシンク9が配置される。ヒートシンク9は、エアダクト120から放熱穴2aに向けて延びる。ヒートシンク9は、発熱素子71の上方に位置する放熱部90と、放熱部90に接続され放熱穴2aの下方に位置する水受け部100と、を一体に有する。
【0034】
ヒートシンク9の上面、すなわち、放熱部90の上面91と水受け部100の上面101とには、幅方向に一対の外壁部111、112(図3参照)が形成される。外壁部111、112は、エアダクト120から放熱穴2aに向けて延びる。外壁部111、112は、放熱部90および水受け部100の上面91、101と共に、上方に開放された凹部形状を構成する。
【0035】
水受け部100における外壁部111、112は、放熱穴2aよりも左右方向外側に形成される。外壁部111、112は、天板部40に当接または近接する高さに形成される。放熱部90および水受け部100の上面91、101と、外壁部111、112と、天板部40と、によって囲まれた空間により、空気の流路9Sが形成される。ヒートシンク9では、エアダクト120の後部開口122bから流出した空気は、流路9Sを流れ、放熱穴2aや排水穴2bから筐体2の外に排出される。
【0036】
以下、ヒートシンク9について吸気側という場合には、ヒートシンク9のエアダクト12側の意味で用いる。一方、ヒートシンク9について排気側という場合には、ヒートシンク9の放熱穴2a側の意味で用いる。
【0037】
図4に示すように、放熱部90は、ブロック状のベース部92を有する。ベース部92は、エアダクト120から放熱穴2aに向けて延びる。ベース部92の下面には、角柱状に形成された受熱部93が形成される。受熱部93の下面は、発熱素子71の上面に密着する。
【0038】
ベース部92の吸気側端には、ダクト接続部94が形成される。ダクト接続部94は、ベース部92から下方に突出した後、前方に突出する。ダクト接続部94は、エアダクト120の下方に進入している。
【0039】
ベース部92の上面、すなわち、放熱部90の上面91は、排気側に進むに連れて上方に傾斜する吸気側上面91aを有する。換言すれば、吸気側上面91aは、排気側に進むに連れて天板部40との間隔が狭まっている。吸気側上面91aの吸気側端は、エアダクト120の本体部121の上面と同様の高さに形成される。吸気側上面91aの吸気側端は、本体部121の上面よりも低くてもよい。これにより、エアダクト120から排出された空気が放熱部90の上面91に移動し易くなっている。
【0040】
吸気側上面91aの排気側には、天板部40に沿って延びる中流上面91bが形成される。中流上面91bは受熱部93の上方に位置する。中流上面91bの排気側には、排気側に進むに連れて上方に傾斜する排気側上面91cが形成される。
【0041】
ベース部92の排気側端には、コネクタ回避部95が形成される。コネクタ回避部95は、L字状に切り欠かれている。コネクタ回避部95には、コネクタ74(図2図4参照)が収容される。
【0042】
図5図3の上方図である。本実施の形態では、発熱素子71(図4参照)は、筐体2の上方から見て、前後方向ではヒートシンク9の吸気側寄りに、左右方向はヒートシンクの外壁部111寄りに設けられている。ヒートシンクの上面91であって、発熱素子71の上方に対応する位置は、発熱素子71の熱を受けて、上面91の中でも温度が高くなる高温部105となっている。
ヒートシンクには、上面91に立設される複数の放熱フィン(フィン)96が形成される。これら複数のフィンにより本発明のフィン群が構成される。放熱フィン96は、外壁部111、112の間に形成される。放熱フィン96は、排気側出口近傍を除き、ヒートシンク9の吸気側から排気側に向けて平面視で略平行な直線状に延び、左右方向には一定の間隔をあけて配置される。
【0043】
図6は、図5におけるヒートシンクの排気側出口近傍の拡大図である。放熱フィン96の排気側出口近傍は、それまでの吸気側から排気側にかけての直線から屈曲するように形成される。放熱フィン96の排気側出口近傍での左右方向の間隔は、前記ベース部92の高温部105を通過するフィンほど広くなるように配置される。放熱フィン96での排気側出口近傍の屈曲は、高温部を通過するフィンほど小さくなるように形成される。放熱フィン96の断面は、上方に進むに連れて先細る略台形状である。放熱フィン96は、後方に進むに連れて左側に傾斜するように延びる。なお、図4では、傾斜する放熱フィン96に交差する断面を示すため、放熱フィン96は、前後方向に間隔を空けるように図示されている。
【0044】
[2.電子機器の作用]
次に、実施の形態1の作用について説明する。
車載装置1が作動してファン110が作動すると、ボトムケース3の吸気穴からトップケース4の放熱穴2a、排水穴2b等に向けて移動する気流A(図4参照)が生じる。すなわち、吸気穴から取り込まれた空気は、下側の回路基板6の下面に沿って移動し、下側の回路基板6の外周部を迂回してファンユニット10に向かう。このファンユニット10に向かう空気により、下方のヒートシンク8は冷される。
【0045】
ヒートシンク8を冷した空気はファンユニット10のファン110に取り込まれてエアダクト120の流路120Sに送り込まれる。流路120Sに送り込まれた空気は、上方のヒートシンク9の上面91に案内され、放熱フィン96に沿って流れる。通過する空気は、その過程で放熱部90に熱せられて高温となる。高温となった空気は、放熱穴2aや排水穴2bから排出される。
本実施の形態では、放熱フィン96の排気側出口近傍を屈曲させ、高温部105の上にあるフィンの間隔が排気側の出口近傍で広がるように配置したことで、ベンチュリ効果が生じ、出口近傍よりも流路が狭くなっている高温部に流れる気流の風速をあげることができ、高温部の放熱を効率よく行うことができる。なお、ベンチュリ効果とは、流体の流路において、部分的に断面積を狭めたとき、流体の流速が増加し、圧力の低い部分が作り出される現象であり、流量を一定にした場合のベルヌーイの定理から導かれる。
【0046】
[3.効果]
以上説明したように、本実施の形態においては、空冷によって排熱を行う電子機器であって、前記電子機器の筐体内に設置された発熱素子と、発熱素子に接するように上部に設けられたヒートシンクと、前記ヒートシンクに空気を送風し、前記筐体外へ排出するファンと、を備え、前記ヒートシンクは、ファンから空気を吸気する吸気側から筐体外へ空気を排出する排気側へと延びるように設置されたフィン群を有し、前記フィン群は、前記排気側出口近傍を除き平行に配置され、前記複数のフィンのうち、発熱素子により高温となる高温部を経由する複数のフィンは、他のフィンよりも前記排気側出口近傍において間隔が広がるように配置されている。
この構成によれば、放熱用のフィンの形状変更、すなわち、高温部を経由するフィンの排気側出口間隔を広げることで、ベンチュリ効果を生じさせ、出口近傍よりも流路が狭くなっている放熱部を通る空気の風速を高めることができ、発熱素子の放熱効率を向上させることができる。また、発熱素子がヒートシンクに接する位置が変わっても、前記排気側出口近傍におけるフィンの間隔を調整するだけで様々なバリエーションに対応できる。
【0047】
本実施の形態では、前記発熱素子は、上方から見て前記ヒートシンクの前記吸気側寄りに設けられ、前記フィン群の前記排気側端は屈曲している。前記高温部を経由する複数のフィンの屈曲は、他のフィンの屈曲よりも小さい。
この構成によれば、フィンの排気側端を適切に屈曲させてそれらの間隔を調整すること、すなわち、高温部を経由するフィンの屈曲を小さくすることにより、フィンの排気側出口間隔を広げることで、ベンチュリ効果が生じさせ、出口近傍よりも流路が狭くなっている高温部を経由する気流の速度を上げ、効率よく冷却を行うことができる。
【0048】
[4.実施の形態2に係る電子機器の構成]
以下、本発明の実施の形態2について図面を参照して説明する。実施の形態2の説明では、実施の形態1と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図7は、実施の形態2における筐体からアップケースとフロントケースを外した斜視図である。
実施の形態2に係るヒートシンク209は、上部基板の第1の発熱素子71に加えて、発熱素子71より発熱の小さい第2の発熱素子72の放熱も行なう。
ヒートシンク209には、第2の発熱素子72に接触する接触部材210が一体に設けられている。
【0050】
第1の発熱素子71による高温部105を経由するフィンの間隔は、第2の発熱素子72による高温部(不図示)を経由するフィンの間隔よりも、排気側出口近傍において大きく形成されている。
これにより、第2の発熱素子72の高温部(不図示)より、発熱の大きい発熱素子71の高温部105におけるフィンを流れる風速を高めることができる。
【0051】
[5.効果]
本実施の形態では、筐体内には第1の発熱素子より発熱の小さい第2の発熱素子が設けられ、ヒートシンクは、第1の発熱素子及び第2の発熱素子と接するように設けられる。第1の発熱素子による高温部を経由するフィンの間隔は、第2の発熱素子による高温部を経由するフィンの間隔よりも、前記排気側出口近傍において大きく形成されている。
この構成によれば、発熱素子は複数設けられても良く、より高温となる発熱素子を経由するフィンほど、排気側出口近傍の間隔を大きくすること、つまり、より大きなベンチュリ効果が生じさせることで、気流の流速が増し、効率よく冷却をすることができる。すなわち、第2の発熱素子の高温部においてフィンを流れる空気の速度よりも、より発熱の大きい第1の発熱素子の高温部においてフィンを流れる空気の速度を高めることができるので、発熱素子の放熱効率を向上させることができる。第2の発熱素子も接触部材を介してヒートシンクに接触しているので、ヒートシンクを流れる、第1の発熱素子による温度化上昇が少ない空気により第2の発熱素子の冷却を行うことができる。また、第1の発熱素子と第2の発熱素子がヒートシンクに接する位置関係が変わっても、前記排気側出口近傍におけるフィンの間隔を調整するだけで様々なバリエーションに対応できる。
【0052】
[6.他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
【0053】
上記した実施の形態では、フィンの形状を変更させることで、気流の風速をあげる構成を説明した。しかし、この形状変更はフィン部でなくともよい。すなわち、トップケース及びヒートシンク堤防部やエアダクトの形状を変更することで、左右方向に問わずに、気流経路をすぼめた形状を形成することができ、風速をあげることができる。
【符号の説明】
【0054】
9 ヒートシンク
90 放熱部
96 放熱フィン
105 発熱素子による高温部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7