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特開2025-23652監視システム、監視方法及び監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023652
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】監視システム、監視方法及び監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08C 15/00 20060101AFI20250207BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
G08C15/00 D
G08C17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127980
(22)【出願日】2023-08-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒 洋造
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA22
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG05
2F073GG08
2F073GG09
(57)【要約】
【課題】ユニットが設置される二つの位置の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが可能な監視システム、監視方法及び監視プログラムを提供する。
【解決手段】監視システムは、複数の第1時点における、第1位置に設置された第1ユニットと第1位置から離間した第2位置に設置された第2ユニットとの間の距離の第1変化量の移動平均値、及び、複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定する設定手段と、第2時点における、第1ユニットと第2ユニットとの間の距離の第2変化量に基づく値と、しきい値とを比較することにより、第1位置と第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定する判定手段と、判定手段による判定結果に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1時点における、第1位置に設置された第1ユニットと前記第1位置から離間した第2位置に設置された第2ユニットとの間の距離の第1変化量の移動平均値、及び、前記複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定する設定手段と、
第2時点における、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の第2変化量に基づく値と、前記しきい値とを比較することにより、前記第1位置と前記第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に関する情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記複数の第1時点における前記第1変化量の移動平均値と、前記複数の第1時点における前記第1温度の移動平均値とについて線形回帰分析又は重回帰分析を行うことにより、前記第1変化量の移動平均値と、前記第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式を算出する算出手段をさらに有し、
前記設定手段は、さらに前記関係式に基づいて、前記しきい値を設定する、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記設定手段は、前記第1温度の年間最高温度又は年間最低温度に基づいて、前記第1変化量の年間最小変化量又は年間最大変化量を算出し、前記第1変化量の年間最小変化量又は年間最大変化量に基づいて、前記しきい値を設定する、請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記複数の第1時点は、複数日にわたり、
前記設定手段は、前記第1変化量の日ごとの変化幅のうちの最大値である日内変化幅を算出し、前記日内変化幅に基づいて、前記しきい値を設定する、請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項5】
前記設定手段は、前記関係式と複数の前記第2時点における第2温度の平均値に基づいて、前記しきい値を設定し、
前記判定手段は、前記第2変化量又は前記第2変化量の平均値と、前記しきい値とを比較することにより、前記第1位置と前記第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定する、請求項2に記載の監視システム。
【請求項6】
複数の第1時点における、第1位置に設置された第1ユニットと前記第1位置から離間した第2位置に設置された第2ユニットとの間の距離の第1変化量の移動平均値、及び、前記複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定し、
第2時点における、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の第2変化量に基づく値と、前記しきい値とを比較することにより、前記第1位置と前記第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定し、
判定結果に関する情報を出力する、
ことを特徴とする監視方法。
【請求項7】
計測装置を制御するプログラムであって、
複数の第1時点における、第1位置に設置された第1ユニットと前記第1位置から離間した第2位置に設置された第2ユニットとの間の距離の第1変化量の移動平均値、及び、前記複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定し、
第2時点における、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間の距離の第2変化量に基づく値と、前記しきい値とを比較することにより、前記第1位置と前記第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定し、
判定結果に関する情報を出力する、
ことを前記計測装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システム、監視方法及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁等の構造物の維持管理のために、構造物の変位を監視する監視システムが開発されている。監視システムは、例えば、構造物上の相互に離間した二つの位置に設置されたユニットの間の距離の変化量を通知する。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のケースと、各ケースの収容部が形成する空間に配置され、所定方向に移動可能なスケール部と、センサ部とを含む間隙幅データ収集システムが開示されている。各ケースは、構造物の間隙をまたいで構造物に設置され、センサ部は、スケール部における間隙をまたぐ第1の点と第2の点との間の長さを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-120521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
監視システムでは、長期にわたる維持管理を効率的に行うために日常的には生じ得ない大きな変位を日常的な変位と区別し、非日常的な変位が生じたことを異常として通知することが要求されている。
【0006】
しかしながら、上記距離は構造物の非日常的な変状の他に日常的な温度によっても変化する。そのため、監視システムでは、温度変化によらず、ユニットが設置される二つの位置の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが要求されている。
【0007】
本発明は、ユニットが設置される二つの位置の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが可能な監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る監視システムは、複数の第1時点における、第1位置に設置された第1ユニットと第1位置から離間した第2位置に設置された第2ユニットとの間の距離の第1変化量の移動平均値、及び、複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定する設定手段と、第2時点における、第1ユニットと第2ユニットとの間の距離の第2変化量に基づく値と、しきい値とを比較することにより、第1位置と第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定する判定手段と、判定手段による判定結果に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【0009】
また、本発明に係る監視システムにおいて、複数の第1時点における第1変化量の移動平均値と、複数の第1時点における第1温度の移動平均値とについて線形回帰分析又は重回帰分析を行うことにより、第1変化量の移動平均値と、第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式を算出する算出手段をさらに有し、設定手段は、さらに関係式に基づいて、しきい値を設定することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る監視システムにおいて、設定手段は、第1温度の年間最高温度又は年間最低温度に基づいて、第1変化量の年間最小変化量又は年間最大変化量を算出し、第1変化量の年間最小変化量又は年間最大変化量に基づいて、しきい値を設定することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る監視システムにおいて、複数の第1時点は、複数日にわたり、設定手段は、第1変化量の日ごとの変化幅のうちの最大値である日内変化幅を算出し、日内変化幅に基づいて、しきい値を設定することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る監視システムにおいて、設定手段は、関係式と複数の前記第2時点における第2温度の平均値に基づいて、しきい値を設定し、判定手段は、第2変化量又は第2変化量の平均値と、しきい値とを比較することにより、第1位置と第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定することが好ましい。
【0013】
本発明に係る監視方法は、複数の第1時点における、第1位置に設置された第1ユニットと第1位置から離間した第2位置に設置された第2ユニットとの間の距離の第1変化量の移動平均値、及び、複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定し、第2時点における、第1ユニットと第2ユニットとの間の距離の第2変化量に基づく値と、しきい値とを比較することにより、第1位置と第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定し、判定結果に関する情報を出力する。
【0014】
本発明に係るプログラムは、計測装置を制御するプログラムであって、複数の第1時点における、第1位置に設置された第1ユニットと第1位置から離間した第2位置に設置された第2ユニットとの間の距離の第1変化量の移動平均値、及び、複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定し、第2時点における、第1ユニットと第2ユニットとの間の距離の第2変化量に基づく値と、しきい値とを比較することにより、第1位置と第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定し、判定結果に関する情報を出力することを計測装置に実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る監視システム、監視方法及び監視プログラムは、ユニットが設置される二つの位置の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】監視システム1の一例の構成図である。
図2】計測装置100の構成を説明するための模式図である。
図3】計測装置100の構成を説明するための模式図である。
図4】計測装置100の概略構成を示すブロック図である。
図5】情報処理装置200の概略構成を示すブロック図である。
図6】管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】(A)は第1変化量と温度の変化を示すグラフであり、(B)は第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値の変化を示すグラフである。
図8】(A)、(B)は第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値の相関図である。
図9】(A)は第1変化量と第1変化量の移動平均値の変化を示すグラフであり、(B)は第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値の相関図である。
図10】計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶことに留意されたい。
【0018】
以下では、日常的な変位(定常的な変位)に対して有意な差を有する変位(非定常的な変位)が生じたこと、すなわち日常的に計測される移動量(移動量の定常値)に対して有意な差を有する移動量(移動量の非定常値)が計測されたことを構造物(例:橋梁)の異常または変位異常と称する。
【0019】
図1は、本発明に係る監視システム1の一例の構成図である。
【0020】
監視システム1は、一又は複数の計測装置100と、情報処理装置200と、一又は複数の構造物管理者端末300と、一又は複数の装置管理者端末400とを有する。各計測装置100、情報処理装置200、各構造物管理者端末300及び各装置管理者端末400は、第1ネットワークN1及び第2ネットワークN2を介して相互に通信接続されている。第1ネットワークN1は、例えば携帯電話ネットワークである。各計測装置100は、基地局を介して第1ネットワークN1に通信接続される。なお、第1ネットワークN1は、無線LAN(Local Area Network)等でもよい。その場合、各計測装置100は、アクセスポイントを介して第1ネットワークN1に通信接続されてもよい。第2ネットワークN2は、イントラネット又はインターネット等である。第1ネットワークN1及び第2ネットワークN2は、ゲートウェイ装置等を介して通信接続される。情報処理装置200、各構造物管理者端末300及び各装置管理者端末400は、第2ネットワークN2に通信接続される。
【0021】
監視システム1は、橋梁、トンネル又はビル等の構造物における異常の発生を監視する。各構造物管理者端末300は、監視システム1の利用者(顧客)、即ち構造物(監視対象)の管理者(以下では構造物管理者と称する場合がある)が利用する装置である。各構造物管理者端末300は、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン等である。各装置管理者端末400は、計測装置100(監視システム1)の管理者(以下では装置管理者と称する場合がある)が利用する装置である。各装置管理者端末400は、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン等である。
【0022】
図2及び図3は、計測装置100の構成を説明するための模式図である。図2は、使用時における計測装置100の斜視図であり、図3は、第1ユニット110のフレームを外した状態の計測装置100の斜視図である。
【0023】
複数の計測装置100のそれぞれは、同様の構成及び機能を有する。図2及び図3に示すように、計測装置100は、基準物T2と、基準物T2に対して間隙を跨いだ位置に配置された、計測対象である対象物T1との間の距離の変化を計測することにより、基準物T2に対する対象物T1の変位、即ち相対位置の変化を計測する。間隙は、遊間、遊間以外として設けられた二つの物の間の空間、又は、ひび割れにより生じる隙間である。対象物T1は、例えば橋梁の橋桁、トンネル又はビル等である。対象物T1が橋桁である場合、基準物T2は、例えばその橋桁の端部が配置される、橋梁の橋台等である。対象物T1がトンネルである場合、基準物T2は、例えばそのトンネルのセグメントを連結する継手部等である。対象物T1がビルである場合、基準物T2は、例えばそのビルとビルの間をつなぐエキスパンションジョイント部の一方等である。なお、基準物T2及び対象物T1は、遊間を有する橋桁の、遊間を挟んで配置された各部、又は、遊間を有するトンネルの、遊間を挟んで配置された壁面等のように、同一の構造物でもよい。
【0024】
計測装置100は、第1ユニット110、第2ユニット120及び接続部130等を有する。第1ユニット110は、対象物T1内の間隙付近の適宜な位置P1に設置される。第2ユニット120は、対象物T1内の位置P1から間隙を跨いだ、基準物T2内の位置P2に、即ち対象物T1内の位置P1から離間した、基準物T2内の位置P2に設置される。位置P1は、第1位置の一例であり、位置P2は、第2位置の一例である。接続部130は、第1ユニット110と第2ユニット120の間に配置される。
【0025】
なお、第1ユニット110が対象物T1内の位置P1に、第2ユニット120が基準物T2内の位置P2に設置されるのでなく、第1ユニット110が基準物T2内の位置P2に、第2ユニット120が対象物T1内の位置P1に設置されてもよい。その場合、基準物T2内の位置P2が第1位置の一例であり、対象物T1内の位置P1が第2位置の一例である。橋梁が監視の対象である場合は、このように、第1ユニット110が設置される第1位置及び第2ユニット120が設置される第2位置のうちの一方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの一方に設定される。一方、第1ユニット110が設置される第1位置及び第2ユニット120が設置される第2位置のうちの他方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの他方に設定される。
【0026】
第1ユニット110は、略直方体の形状を有するフレームで囲まれた筐体(ケース)と第1センサ112等の内容物とで構成される。第1ユニット110の底面110aは、対象物T1の上面、底面又は側面等の表面に設置される設置面である。第1ユニット110の、第2ユニット120側の側面110bには、開口110cが形成される。第1ユニット110の上面110dには、開口110eが形成される。第1ユニット110には、固定部材111、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、バッテリ115、基板116、第1通信装置117、アンテナ118及び制御ユニット119等が配置される。
【0027】
第2ユニット120は、略直方体の形状を有するフレームで囲まれた筐体(ケース)である。第2ユニット120の底面120aは、基準物T2の上面、底面又は側面等の表面に設置される設置面である。第2ユニット120の、第1ユニット110側の側面120bには、保持部121が設けられる。
【0028】
接続部130は、第1ユニット110と第2ユニット120の間に配置される。接続部130の一端は、第2ユニット120の保持部121に取り付けられる。接続部130の他端は、第1ユニット110の側面110bに形成された開口110cを介して第1ユニット110の内部に配置される。接続部130は、ロッド部131等を有する。
【0029】
図2において、矢印A1はロッド部131の延伸方向を示し、矢印A2は高さ方向を示し、矢印A3はロッド部131の延伸方向A1及び高さ方向A2と直交する横方向A3を示す。
【0030】
ロッド部131の初期位置は、ロッド部131の先端(第1センサ112により検知される位置)が第1センサ112の検知可能範囲の中心に配置される位置に設定される。これにより、計測装置100は、対象物T1が基準物T2から離間する方向に移動する場合と、基準物T2に接近する方向に移動する場合の両方について、対象物T1の移動距離の計測可能な上限を最大にすることができる。
【0031】
第1センサ112は、センサの一例である。第1センサ112は、第1ユニット110内部に、接続部130のロッド部131の先端(第2ユニット120の反対側の端部)と対向する位置に配置される。ロッド部131の、第2ユニット120の反対側の端部は、接続部の他端の一例である。第1センサ112は、リニアポジションセンサであり、例えば可変抵抗器である。第1センサ112は、ロッド部131の延伸方向A1に沿って延伸する抵抗体と、ロッド部131の先端の移動に従ってその抵抗体上を移動する接点(摺動子)とを含む。抵抗体の両端に設けられた端子には一定の電圧がかけられ、接点の抵抗体上の位置に応じて、接点から出力される電圧が変動する。したがって、第1センサ112は、接点から出力される電圧に基づいて、ロッド部131の先端の位置を検出し、接続部130の移動量を計測することができる。第1センサ112は、ロッド部131が初期位置に配置されている時に接点から出力される電圧に対する、接点から現在出力されている電圧の差に対応するロッド部131の変位、即ち接続部130の移動量を示す変位信号を制御ユニット119に出力する。なお、移動量は正値及び負値を含む。例えば、第1ユニット110が第2ユニット120から離間する方向の移動量が正値を示し、第1ユニット110が第2ユニット120に接近する方向の移動量が負値を示すように定められる。
【0032】
接続部130の一端は、第2ユニット120の保持部121に取り付けられ、それにより、接続部130は第2ユニット120に対して固定される(延伸方向A1にスライド移動しない)。第2ユニット120が設置される基準物T2内の位置P2に対して、第1ユニット110が設置される対象物T1内の位置P1が延伸方向A1に移動した場合、第1センサ112がロッド部131に対して移動し、その結果、第1センサ112から見てロッド部131が相対的に延伸方向A1に移動する。即ち、第1センサ112は、接続部130の他端側の変位を、接続部130の移動量、即ち第2ユニット120が設置される基準物T2内の位置P2と第1ユニット110が設置される対象物T1内の位置P1の間の距離の変化として計測する。
【0033】
なお、第1センサ112は、ロッド部131の延伸方向A1に沿って並べて配置された複数の発光器及び受光器でもよい。各発光器及び各受光器は、ロッド部131の先端の移動範囲を挟んで相互に対向して配置される。第1センサ112は、各受光器が対向して配置された各発光器から出射された光を受光しているか、ロッド部131に遮られて受光していないかにより、各発光器及び各受光器の間にロッド部131が存在するか否かを検出する。第1センサ112は、ロッド部131が初期位置に配置されている時に発光器から出射された光を受光する受光器の数に対する、発光器から出射された光を現在受光している受光器の数の差に対応するロッド部131の変位を示す変位信号を制御ユニット119に出力する。また、第1センサ112は、ロッド部131の先端に向けて光を照射する発光器と、発光器により照射され且つロッド部131の先端で反射した光を受光する受光器とを有してもよい。その場合、第1センサ112は、発光器が光を照射してから受光器が光を受光するまでの時間に基づいてロッド部131の変位を検出する。また、第1センサ112は、撮像センサ等の、ロッド部131の変位を検出可能な他の任意のセンサでもよい。
【0034】
第2センサ113は、第1ユニット110の傾きを検出するためのセンサである。
【0035】
温度センサ114は、第1ユニット110内部に配置される。温度センサ114は、計測装置100が設置される環境、特に第1ユニット110内部における温度(気温)を検出し、検出した温度を示す温度信号を制御ユニット119に出力する。
【0036】
バッテリ115は、一次電池または二次電池である。バッテリ115は、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117、アンテナ118及び制御ユニット119と接続され、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117、アンテナ118及び制御ユニット119に電力を供給する。また、第1ユニット110には、バッテリ115の電池電圧を計測可能な電圧計(不図示)が設けられ、制御ユニット119は、電圧計によりバッテリ115の電池電圧を検出することができる。
【0037】
第1通信装置117は、第1通信部及び出力部の一例であり、情報処理装置200と通信可能に設けられる。第1通信装置117は、無線通信インタフェース回路を備え、計測装置100を無線通信ネットワークに接続する。第1通信装置117は、アンテナ118を介して不図示の基地局との間でLTE(Long Term Evolution)方式、特にLPWA(Low Power Wide Area)方式等による無線通信を行う。なお、基地局との間の通信方式は、LTE方式に限定されず、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式、5G(Fifth Generation)方式等の他の通信方式でもよく、今後使用される通信方式でもよい。第1通信装置117は、制御ユニット119から供給されたデータを、基地局を介して情報処理装置200に送信する。第1通信装置117は、基地局を介して情報処理装置200から受信したデータを制御ユニット119に供給する。また、第1通信装置117は、制御ユニット119からの指示に従って、受信電波強度を制御ユニット119に供給する。なお、第1通信装置117は、アンテナ118を介して不図示のWifi(Wireless Fidelity)のアクセスポイントとの間でIEEE802.11規格の無線通信方式による無線通信を行うものでもよい。
【0038】
アンテナ118は、2GHz帯、1.7GHz帯、900MHz帯、800MHz帯等の帯域を感受帯域とするアンテナである。なお、アンテナ118は、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナでもよい。
【0039】
制御ユニット119は、計測装置100による処理を制御するユニットである。制御ユニット119は、例えばMCU(Micro Controller Unit)である。制御ユニット119の詳細については後述する。
【0040】
図4は、計測装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0041】
図4に示すように、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117及び制御ユニット119は、相互に接続される。制御ユニット119は、第1記憶装置140及び第1処理回路150等を有する。
【0042】
第1記憶装置140は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の半導体メモリを備える。第1記憶装置140は、第1処理回路150による処理に用いられるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。コンピュータプログラムは、情報処理装置200から第1通信装置117を介して、又は、インストール用装置から不図示のシリアル通信回路を介して第1記憶装置140にインストールされる。なお、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて第1記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。また、第1記憶装置140は、データとして計測情報、判定用パラメータ等を記憶する。計測情報、判定用パラメータ等の詳細については後述する。
【0043】
第1処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。第1処理回路150は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等でもよい。第1処理回路150は、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117及び第1記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。第1処理回路150は、第1記憶装置140に記憶されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従って動作することにより、第1取得手段151、判定手段152及び送信手段153として機能する。
【0044】
図5は、情報処理装置200の概略構成を示すブロック図である。
【0045】
情報処理装置200は、例えばサーバである。なお、情報処理装置200は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。図5に示すように、情報処理装置200は、操作装置201、表示装置202、第2通信装置203、第2記憶装置210及び第2処理回路220等を有する。操作装置201、表示装置202、第2通信装置203、第2記憶装置210及び第2処理回路220は、相互に接続される。
【0046】
操作装置201は、キーボード、マウス等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による操作を受け付け、利用者の入力に応じた信号を第2処理回路220に出力する。
【0047】
表示装置202は、液晶、有機EL等から構成されるディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、第2処理回路220からの指示に従って、画像データをディスプレイに表示する。
【0048】
第2通信装置203は、第2通信部の一例であり、複数の計測装置100と通信可能に設けられる。第2通信装置203は、有線又は無線の通信インタフェース回路を備え、情報処理装置200を通信ネットワークに接続する。第2通信装置203は、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルに従った有線通信を行う。なお、第2通信装置203は、第1通信装置117と同様の方式による無線通信を行ってもよい。第2通信装置203は、第2処理回路220から供給されたデータを計測装置100、構造物管理者端末300又は装置管理者端末400に送信する。また、第1通信装置117は、計測装置100、構造物管理者端末300又は装置管理者端末400から受信したデータを第2処理回路220に供給する。
【0049】
第2記憶装置210は、例えばRAM、ROM等の半導体メモリ、ハードディスク等の固定ディスク装置、又は、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を備える。第2記憶装置210は、第2処理回路220による処理に用いられるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。コンピュータプログラムは、不図示のサーバから第2通信装置203を介して第2記憶装置210にインストールされる。なお、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて第2記憶装置210にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM、DVD-ROM等である。また、第2記憶装置210は、データとして、複数の計測装置100毎の計測情報、判定用パラメータ等を記憶する。
【0050】
第2処理回路220は、例えばCPUである。第2処理回路220は、LSI、ASIC、DSP、FPGA等でもよい。第2処理回路220は、操作装置201、表示装置202、第2通信装置203及び第2記憶装置210等と接続され、これらの各部を制御する。第2処理回路220は、第2記憶装置210に記憶されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従って動作することにより、制御手段221、第2取得手段222、算出手段223、設定手段224及び通知手段225として機能する。
【0051】
図6は、情報処理装置200によって実行される管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0052】
以下、図6に示したフローチャートを参照しつつ、情報処理装置200の管理処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め第2記憶装置210に記憶されているプログラムに基づき主に第2処理回路220により情報処理装置200の各要素と協働して実行される。
【0053】
管理処理を実行中の任意のタイミングにおいて、制御手段221は、装置管理者が利用する装置管理者端末400から設置情報を受信し、第2記憶装置210に記憶する。設置情報には、設置された計測装置100の装置ID及び判定用パラメータ送信日時等が含まれる。判定用パラメータ送信日時の初期値は未送信を示す日時(例えば、ブランク)に設定される。
【0054】
最初に、制御手段221は、第2通信装置203を介して何れかの計測装置100から計測情報を受信したか否かを判定する(ステップS101)。計測情報には、その計測装置100の装置ID、計測が実行された各計測日時、各計測日時における計測装置100(第1ユニット110)の温度及び移動量等が含まれる。新たに計測情報を受信していない場合、制御手段221は、ステップS103へ処理を移行する。一方、計測情報を受信した場合、制御手段221は、計測情報に含まれる各情報を関連付けて第2記憶装置210に記憶する(ステップS102)。
【0055】
次に、制御手段221は、第2記憶装置210に装置IDが記憶された各計測装置100のうち、サンプル期間分の計測情報を受信済みであり且つ判定用パラメータを未送信である計測装置100(以下、要設定装置と称する場合がある)が存在するか否かを判定する(ステップS103)。サンプル期間は、各計測装置100において、判定用パラメータを算出するために十分なデータ(後述する第1変化量及び第1温度)を取得できる期間(例えば1カ月)に予め設定される。制御手段221は、サンプル期間分の計測情報を受信済みであり且つ第2記憶装置210に記憶された判定用パラメータ送信日時が未送信を示す日時に設定された計測装置100を要設定装置として特定する。要設定装置が存在しない場合、制御手段221は、ステップS110へ処理を移行する。
【0056】
一方、要設定装置が存在する場合、第2取得手段222は、現在までの複数の時点における要設定装置の接続部130の移動量(第1ユニット110と第2ユニット120との間の距離の変化量)と、その各時点における要設定装置の温度(又は周辺温度)とを取得する(ステップS104)。複数の時点は、複数日にわたる。以下では、サンプル期間の複数の時点を第1時点と称し、第1時点における上記の移動量(変化量)を第1変化量と称し、第1時点における上記の温度を第1温度と称する場合がある。例えば、第2取得手段222は、第2記憶装置210において要設定装置の装置IDに関連付けて記憶された現在までの各計測日時における接続部130の移動量及び要設定装置の温度を第1変化量及び第1温度として取得する。このように、第2取得手段222は、複数の第1時点における、位置P1に設置された第1ユニット110と、位置P2に設置された第2ユニット120との間の距離の第1変化量と、各第1時点における第1温度とを取得する。
【0057】
次に、算出手段223は、複数の第1時点における第1変化量の移動平均値、及び、複数の第1時点における第1温度の移動平均値を算出する(ステップS105)。算出手段223は、複数の第1時点のうちの連続する所定期間における第1変化量の移動平均値、及び、第1温度の移動平均値を算出する。所定期間は、例えばサンプル期間の1/4以上且つ2/3以下の期間に設定される。例えばサンプル期間が1カ月である場合、所定期間は、7日以上且つ20日以下の期間に設定される。所定期間が短すぎる場合、第1変化量及び第1温度が十分に平滑化されず、測定タイミング毎のデータ変動の影響が大きくなる。一方、所定期間が長すぎる場合、十分なサンプル数の第1変化量の移動平均値及び第1温度の移動平均値が得られず、第1変化量と第1温度の間の関係が適切に算出されない可能性がある。算出手段223は、所定期間を適切に設定することにより、第1変化量及び第1温度を適切に平滑化し、第1変化量と第1温度の間の関係を適切に算出することができる。
【0058】
図7(A)は、特定の期間における第1変化量と第1温度の変化を示すグラフである。図7(A)の横軸は各計測日時を示し、左側の縦軸は各計測日時における第1変化量を示し、右側の縦軸は各計測日時における第1温度を示す。図7(A)のグラフG1は各計測日時における第1変化量の変化を示すグラフであり、グラフG2は各計測日時における第1温度の変化を示すグラフである。図7(A)に示すように、第1温度と第1変化量は、第1温度が高いほど第1変化量が小さくなり、第1温度が低いほど第1変化量が大きくなるという相関関係を有している。なお、第1温度と第1変化量は、第1温度が高いほど第1変化量が大きくなり、第1温度が低いほど第1変化量が小さくなるという相関関係を有する場合もある。
【0059】
図7(B)は、図7(A)に示した特定の期間における第1変化量G1の移動平均値G3と第1温度G2の移動平均値G4の変化を示すグラフである。図7(B)の横軸は各計測日時を示し、左側の縦軸は各計測日時における第1変化量の移動平均値を示し、右側の縦軸は各計測日時における第1温度の移動平均値を示す。図7(A)、(B)に示すように、第1温度と第1変化量は、移動平均値が算出されることにより、適切に平滑化される。これにより、第1変化量及び第1温度について、季節変動と比較して高い周波数成分を有する日内変動の影響が除去され、第1温度と第1変化量の相関関係がより明確になる。
【0060】
次に、算出手段223は、複数の第1時点における第1変化量の移動平均値と、各第1時点における第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式を算出する(ステップS106)。
【0061】
図8(A)は、特定の期間における第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値の相関図である。図8(A)の横軸は第1温度の移動平均値を示し、縦軸は第1変化量の移動平均値を示す。図8(A)の各点E1は、特定の期間における各第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値の組合せに対応する点を示す。図8(A)に示すように、第1変化量の移動平均値は、第1温度の移動平均値に対して、傾きが負である略線形の関係を有している。上記した通り、第1温度の移動平均値と第1変化量の移動平均値の相関関係は、第1変化量と第1温度の相関関係より明確であり、第1変化量と第1温度の相関関係より高い線形性を有する。
【0062】
例えば、算出手段223は、各第1時点における第1温度の移動平均値と、各第1時点における第1変化量の移動平均値とについて線形単回帰分析を行うことにより、第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式(1元1次式)を算出する。即ち、算出手段223は、第1変化量の移動平均値r(k)、及び、第1温度の移動平均値kについて、以下の式(1)で示される相関関数を関係式として算出する。
r(k)=a・k+b (1)
ここで、a、bは定数である。
【0063】
例えば、算出手段223は、最小二乗法、最尤推定法又はベイズ推定法等を利用して、第1変化量と第1温度との間の関係を示す回帰直線を算出する。図8(A)に示す例では、各第1変化量と各第1温度の組合せに対応する各点E1の相関の分布範囲の中心を通過する回帰直線E2が関係式として算出されている。このように、算出手段223は、各第1時点における第1温度の移動平均値と、各第1時点における第1変化量の移動平均値とについて線形単回帰分析を行うことにより、第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との間の関係を精度良く算出することができる。
【0064】
なお、算出手段223は、各第1時点における第1温度の移動平均値と、各第1時点における第1変化量の移動平均値とについて重回帰分析を行うことにより、第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式(1元且つ3次以上の関係式)を算出してもよい。この場合も、算出手段223は、最小二乗法、最尤推定法又はベイズ推定法等を利用して、第1変化量と第1温度との間の関係を示す関係式を算出する。算出手段223は、各第1時点における第1温度の移動平均値と、各第1時点における第1変化量の移動平均値とについて重回帰分析を行う場合も、第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との間の関係を精度良く算出することができる。
【0065】
次に、設定手段224は、第1温度の年間最高温度に基づいて、第1変化量の年間最小変化量を算出し、第1温度の年間最高温度に基づいて、第1変化量の年間最大変化量を算出する(ステップS107)。設定手段224は、年間最高温度及び年間最低温度を取得する。例えば、設定手段224は、年間最高温度及び年間最低温度として、予め定められた温度(例えば50℃及び-5℃)を設定しておく。設定手段224は、年間最高温度及び年間最低温度として、予め定められた温度を使用することにより、第1変化量の年間最小変化量及び年間最大変化量を短時間且つ低負荷に算出することができる。
【0066】
なお、設定手段224は、年間最高温度及び年間最低温度として、計測装置100が設置される地域毎に予め定められた温度を設定しておいてもよい。また、設定手段224は、気象庁の地域気象観測システム(アメダス)等から、要設定装置が設置された地域の年間最高気温及び年間最低気温を取得してもよい。情報処理装置200は、計測装置100が測定する温度と気温との関係を示すテーブル又は関係式を予め第2記憶装置210に記憶しておく。設定手段224は、予め記憶されたテーブル又は関係式を用いて、年間最高気温及び年間最低気温から要設定装置の年間最高温度及び年間最低温度を算出する。また、設定手段224は、年間最高温度及び年間最低温度として、要設定装置又は監視システム1が有する計測装置100のうち要設定装置から所定距離内に設置された計測装置100の温度センサ114が直近の一年間に検出した温度の最高値及び最低値を取得してもよい。これらにより、設定手段224は、計測装置100の設置場所の特性に応じた第1変化量の年間最小変化量及び年間最大変化量をより正確に算出することができる。
【0067】
設定手段224は、ステップS106で算出手段223により算出された関係式の第1温度の移動平均値kに年間最高温度及び年間最低温度を代入することにより得られる第1変化量の移動平均値r(k)のうち小さい方の値を第1変化量の年間最小変化量として算出し、大きい方の値を第1変化量の年間最大変化量として算出する。設定手段224は、年間最高温度及び年間最低温度を用いることにより、設置場所に応じた第1変化量の年間最小変化量及び年間最大変化量を簡易に算出することができる。
【0068】
図8(B)は、図8(A)に示した相関関係を用いて年間最小・最大変化量を算出する様子を示した図である。この例では、年間最低温度に対応する変化量が最も大きくなり、年間最大温度に対応する変化量が最も小さくなる。
【0069】
次に、設定手段224は、日内変化幅を算出する(ステップS108)。日内変化幅は、第1変化量の日ごとの変化幅のうちの最大値である。
【0070】
図9(A)は、図7(A)、(B)に示した、特定の期間における第1変化量G1と第1変化量の移動平均値G3の変化を示すグラフである。図9(A)の横軸は各計測日時を示し、縦軸は各計測日時における第1変化量を示す。
【0071】
設定手段224は、日ごとに各第1変化量の最大値M1と最小値M2を特定し、特定した最大値M1と最小値M2の差Wを算出する。設定手段224は、日ごとに算出した差Wの最大値を日内変化幅として算出する。
【0072】
次に、設定手段224は、運用中に第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離の変化量に基づく値と比較するためのしきい値を設定する(ステップS109)。設定手段224は、設定したしきい値を、第1位置と第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定するための判定用パラメータとして、その要設定装置の装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶する。
【0073】
図9(B)は、図8(B)に示した、特定の期間における第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値の相関図である。
【0074】
設定手段224は、しきい値として上限値及び下限値を設定する。設定手段224は、第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式E2と、第1温度の年間最高温度とに基づいて算出された第1変化量の年間最小変化量から所定値を減じた値を下限値として設定する。また、設定手段224は、第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式E2と、第1温度の年間最低温度とに基づいて算出された第1変化量の年間最大変化量に所定値を加えた値を上限値として設定する。所定値は、日内変化幅にさらにマージンを加えた値に設定される。マージンは、温度マージン、橋梁設計マージン、計測マージンを含む。
【0075】
温度マージンは、年によって年間最高温度及び年間最低温度が変動する可能性があることを考慮して加えられるマージンである。下限値用の温度マージン及び上限値用の温度マージンのそれぞれとして、例えば、関係式E2の第1温度の移動平均値kに予め定められた温度(例えば5℃)を代入することにより得られる第1変化量の移動平均値r(k)が設定される。なお、下限値を算出するための温度及び上限値を算出するための温度として相互に異なる温度が用いられてもよい。また、計測装置100が設置される地域毎に異なる温度が用いられてもよい。また、マージンに、温度マージンが含まれなくてもよい。
【0076】
橋梁設計マージンは、橋梁に、橋梁の施工時の据付誤差による余裕量に応じて設けられるマージンである。余裕量には伸縮装置の設計ガイドライン(2019年4月)及び橋梁の設計書を参照して10mm以下の値が設定され、下限値用の橋梁設計マージン及び上限値用の橋梁設計マージンのそれぞれとして、余裕量の1/2が予め設定される。
【0077】
計測マージンは、事前に計測される第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離の変化量と、運用中に計測される第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離の変化量との間の計測誤差、即ち第1変化量と後述する第2変化量との間の計測誤差を考慮して加えられるマージンである。下限値用の計測マージン及び上限値用の計測マージンのそれぞれとして、予め定められた大きさ(例えば0.1mm)が設定される。
【0078】
このように、設定手段224は、複数の第1時点における第1変化量の移動平均値及び複数の第1時点における第1温度の移動平均値に基づいて、しきい値を設定する。設定手段224は、各計測装置100が計測する距離の変化量と温度とを平滑化することにより、第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離に対して、季節毎の温度変動と比較して高い周波数成分を有する日毎の温度変動の影響を除去することができる。
【0079】
また、設定手段224は、第1変化量の移動平均値と、第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式E2に基づいて、しきい値を設定する。これにより、設定手段224は、温度に応じて変動する、第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離の変化量と比較するためのしきい値として、信頼性が高い値を簡易に設定することができる。
【0080】
また、設定手段224は、第1変化量の年間最小変化量及び年間最大変化量に基づいて、しきい値を設定する。設定手段224は、第1変化量の年間最小変化量及び年間最大変化量を考慮することにより、第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離に対して、第2変化量の季節変動を誤って変位異常と判定することを抑制できる。
【0081】
さらに、設定手段224は、日内変化幅に基づいて、しきい値を設定する。設定手段224は、日内変化幅を考慮することにより、第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離に対して、第2変化量の日内変動を誤って変位異常と判定することを抑制できる。
【0082】
さらに、設定手段224は、温度マージン、橋梁設計マージン及び計測マージンを考慮して、しきい値を設定する。これにより、監視システム1は、変位異常が発生していないにもかかわらず誤って変位異常の発生を通知してしまうことを抑制し、利用者からの信頼性を向上させることができる。
【0083】
また、設定手段224は、要設定装置毎に、即ち複数の計測装置100毎に、しきい値を設定する。これにより、情報処理装置200は、計測装置100毎に、各計測装置100の設置環境に適した判定用パラメータを設定することができる。
【0084】
また、情報処理装置200は、各計測装置100を設置してから、判定用パラメータを算出するために十分なデータ(第1変化量及び第1温度)を取得した後に判定用パラメータを設定する。即ち、算出手段223は、複数の計測装置100毎に、第1取得手段151が複数の第1時点における第1変化量及び第1温度を取得した時に第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式を算出する。設定手段224は、複数の計測装置100毎に、第1取得手段151が複数の第1時点における第1変化量及び第1温度を取得し、算出手段223が関係式を算出した時にしきい値を設定する。これにより、情報処理装置200は、計測装置100毎に、適切なタイミングで判定用パラメータを設定することができる。
【0085】
なお、設定手段224は、しきい値として、上限値又は下限値のうちの何れか一方のみを設定してもよい。その場合、設定手段224は、第1温度の年間最高温度又は年間最低温度に基づいて、第1変化量の年間最小変化量又は年間最大変化量のうちの何れか一方のみを算出する。設定手段224は、第1変化量の年間最小変化量又は年間最大変化量に基づいて、上限値又は下限値のうちの何れか一方のみを設定する。
【0086】
また、設定手段224は、第1変化量の移動平均値と、第1温度の移動平均値との間の関係を示す関係式を用いずに、しきい値を設定してもよい。例えば、設定手段224は、第1変化量の移動平均値と第1温度の移動平均値との複数のセットを学習用データとして事前学習された学習モデルを用いて、しきい値を設定する。学習モデルは、例えば決定木等の公知の機械学習技術を用いて、温度が入力された場合に、その温度に対応する変化量が出力されるように学習される。設定手段224は、事前学習された学習モデルに年間最低温度から年間最高温度の範囲内で様々な温度を入力し、学習モデルから出力された変化量の最大値に所定値を加えた値を上限値として設定し、学習モデルから出力された変化量の最小値から所定値を減じた値を下限値として設定する。
【0087】
次に、制御手段221は、第2通信装置203を介して何れかの計測装置100から、判定用パラメータを要求するパラメータ要求信号を受信したか否かを判定する(ステップS110)。パラメータ要求信号には、その計測装置100の装置IDが含まれる。新たにパラメータ要求信号を受信していない場合、制御手段221は、ステップS112へ処理を移行する。一方、パラメータ要求信号を受信した場合、制御手段221は、パラメータ要求信号に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された判定用パラメータ(しきい値)を、第2通信装置203を介してパラメータ要求信号の送信元の計測装置100に送信する(ステップS111)。そして、制御手段221は、パラメータ要求信号に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された判定用パラメータ送信日時に、現在の日時を設定する。
【0088】
次に、通知手段225は、第2通信装置203を介して何れかの計測装置100から、変位異常が発生したことを示す変位異常情報を受信したか否かを判定する(ステップS112)。変位異常情報には、その計測装置100の装置IDが含まれる。新たに変位異常情報を受信していない場合、通知手段225は、ステップS101へ処理を戻す。
【0089】
一方、変位異常情報を受信した場合、通知手段225は、変位異常通知を、第2通信装置203を介して、変位異常情報に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された構造物管理者の連絡先に送信し(ステップS113)、ステップS101へ処理を戻す。変位異常通知には、変位異常情報に含まれる装置IDと、対応する構造物の識別情報と、対応する構造物を確認することを促す案内メッセージとが含まれる。変位異常情報は、計測装置100において第1センサ112により計測される接続部130の移動量に基づく値がしきい値を超えたときに送信される。即ち、通知手段225は、第1センサ112により計測される接続部130の移動量に基づく値がしきい値を超えた場合、即ち構造物における異常が発生した場合に、構造物管理者の連絡先に異常の発生を通知する。構造物管理者は、構造物管理者端末300を用いて変位異常通知を閲覧することにより、速やかに構造物の状態を確認し、適切な対策を講じることができる。
【0090】
なお、通知手段225は、変位異常通知を、構造物管理者の連絡先に送信するとともに、装置管理者の連絡先にも送信してもよい。その場合、構造物管理者が変位異常通知を装置管理者の連絡先に転送してもよい。装置管理者は、装置管理者端末400を用いて変位異常通知を閲覧することにより、該当する計測装置100の状態を速やかに確認し、必要に応じて交換することができる。
【0091】
図10は、計測装置100によって実行される計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0092】
以下、図10に示したフローチャートを参照しつつ、計測装置100の計測処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め第1記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に第1処理回路150により計測装置100の各要素と協働して実行される。
【0093】
最初に、第1取得手段151は、第1間隔が経過したか否かを判定する(ステップS201)。第1間隔は、計測装置100の状態を監視すべき間隔(例えば1時間未満の予め定められた時間)に予め設定される。まだ第1間隔が経過していない場合、第1取得手段151は、ステップS209へ処理を移行する。
【0094】
一方、第1間隔が経過した場合、第1取得手段151は、現在日時を取得する。また、第1取得手段151は、温度センサ114から温度信号を取得し、取得した温度信号に示される温度を取得する。また、第1取得手段151は、第1センサ112から変位信号を取得し、取得した変位信号に示される移動量を取得する(ステップS202)。以下では、サンプル期間以降における第1間隔ごとの各時点を第2時点と称し、第2時点における上記の移動量を第2変化量と称し、第2時点における上記の温度を第2温度と称する場合がある。第1取得手段151は、ステップS202における移動量及び温度を、それぞれ第2時点における第2変化量及び第2温度として取得する。
【0095】
次に、判定手段152は、判定用パラメータ(しきい値)を情報処理装置200から受信済みであるか否かを判定する(ステップS203)。判定用パラメータは、後述する処理で情報処理装置200から送信され、第1記憶装置140に記憶される。判定手段152は、判定用パラメータが第1記憶装置140に記憶されているか否かにより、判定用パラメータを情報処理装置200から受信済みであるか否かを判定する。判定用パラメータをまだ受信していない場合、判定手段152は、ステップS208へ処理を移行する。
【0096】
一方、判定用パラメータを既に受信している場合、判定手段152は、取得した第2変化量(移動量)が、判定用パラメータに含まれるしきい値を超えたか否かを判定する(ステップS204)。判定手段152は、第2変化量が上限値より大きい場合、又は、下限値未満である場合、第2変化量がしきい値を超えたと判定する。一方、判定手段152は、第2変化量が上限値以下であり且つ下限値以上である場合、第2変化量がしきい値を超えていないと判定する。第2変化量は、第2変化量に基づく値の一例である。
【0097】
また、判定手段152は、第2変化量の代わりに、第2変化量の平均値を用いて、第2変化量がしきい値を超えたか否かを判定してもよい。第2変化量の平均値は、複数の第2時点のうちの連続する所定期間における第2変化量の平均値である。所定期間は、第1変化量の移動平均値が算出された所定期間と同一の期間に設定される。所定期間は、第1変化量の移動平均値が算出された所定期間より短い期間に設定されてもよい。この場合のしきい値は、図6のステップS108で算出される日内変化幅を含まないように設定される。即ち、図6のステップS109でしきい値を算出する際に設定される所定値は、マージン自体に(日内変化幅を含まないように)設定される。判定手段152は、第2変化量の平均値が上限値より大きい場合、又は、下限値未満である場合、第2変化量がしきい値を超えたと判定する。一方、判定手段152は、第2変化量の平均値が上限値以下であり且つ下限値以上である場合、第2変化量がしきい値を超えていないと判定する。なお、判定手段152は、第2変化量の平均値が上限値より大きい場合、第2変化量がしきい値を超えたと判定し、第2変化量の平均値が上限値以下である場合、第2変化量がしきい値を超えていないと判定してもよい。また、判定手段152は、第2変化量の平均値が下限値未満である場合、第2変化量がしきい値を超えたと判定し、第2変化量の平均値が下限値以上である場合、第2変化量がしきい値を超えていないと判定してもよい。この場合、判定手段152は、所定期間が経過したか否かを判定し、所定期間が経過するまでは変位異常が発生したか否かを判定しない。この場合、第2変化量の平均値が第2変化量に基づく値の一例である。
【0098】
第2変化量がしきい値を超えた場合、判定手段152は、構造物において変位異常が発生したと判定する(ステップS205)。このように、判定手段152は、第2時点における、第1ユニット110と第2ユニット120との間の距離の第2変化量に基づく値と、しきい値とを比較することにより、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。
【0099】
判定手段152は、自装置において事前に計測された第1変化量及び第1温度に基づいて設定されたしきい値を用いて、構造物における変位異常が発生しているか否かを判定する。したがって、判定手段152は、構造物における変位異常が発生しているか否かを高精度に判定することができる。
【0100】
次に、送信手段153は、第1通信装置117を介して情報処理装置200に変位異常情報を送信することにより出力し(ステップS206)、ステップS208へ処理を移行する。変位異常情報は、判定手段152による判定結果に関する情報の一例である。この変位異常情報には、その計測装置100の装置IDと、直近の所定数(例えば10)の移動量とが含まれる。これにより、構造物管理者は、変位異常が発生する直前の構造物の状態を確認でき、構造物の状況をより的確に把握することができる。
【0101】
一方、第2変化量がしきい値を超えていない場合、判定手段152は、構造物において変位異常が発生していないと判定し(ステップS207)、変位異常情報を送信することなく、ステップS208へ処理を移行する。なお、今回算出した第2変化量がしきい値を超えていない場合でも、直前の所定回数以内に算出した第2変化量がしきい値を超えていた場合、送信手段153は、情報処理装置200に変位異常情報を送信してもよい。この変位異常情報には、その計測装置100の装置IDと、最新の移動量とが含まれる。これにより、構造物管理者は、変位異常が発生した後の構造物の状態を確認でき、構造物の状況をより的確に把握することができる。
【0102】
次に、第1取得手段151は、ステップS202で取得した現在日時、温度、移動量及び傾きを相互に関連付けて第1記憶装置140に記憶する(ステップS208)。即ち、第1取得手段151は、変位異常が発生したか否かに関わらず、各情報を第1記憶装置140に記憶しておく。この情報は、変位異常が発生した場合に、遡って読み出され、変位異常情報として情報処理装置200に送信される。
【0103】
次に、第1取得手段151は、第2間隔が経過したか否かを判定する(ステップS209)。第2間隔は、情報処理装置200と定期通信を行うべき間隔(例えば24時間)に予め設定される。まだ第2間隔が経過していない場合、第1取得手段151は、ステップS201へ処理を戻す。
【0104】
一方、第2間隔が経過した場合、送信手段153は、第1通信装置117を介して情報処理装置200に計測情報を送信する(ステップS210)。計測情報には、ステップS208で記憶され且つ情報処理装置200にまだ送信されていない現在日時、温度及び移動量のセットが含まれる。
【0105】
次に、第1取得手段151は、判定用パラメータを情報処理装置200から受信済みであるか否かを判定する(ステップS211)。判定用パラメータを受信済みである場合、第1取得手段151は、ステップS201へ処理を戻す。
【0106】
一方、判定用パラメータを受信済みでない場合、第1取得手段151は、判定用パラメータを情報処理装置200から取得して第1記憶装置140に記憶し(ステップS212)、ステップS201へ処理を戻す。第1取得手段151は、自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されているか否かを問い合わせる問合せ信号を、第1通信装置117を介して情報処理装置200に送信する。問合せ信号には、自装置の装置IDが含まれる。情報処理装置200の制御手段221は、第2通信装置203を介して計測装置100から問合せ信号を受信した場合、第2記憶装置210において、問合せ信号に含まれる装置IDと関連付けて判定用パラメータが記憶されているか否かを判定する。制御手段221は、判定用パラメータが記憶されているか否かを示す応答信号を、第2通信装置203を介して計測装置100に送信する。第1取得手段151は、第1通信装置117を介して情報処理装置200から応答信号を受信し、受信した応答信号に基づいて、自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されているか否かを判定する。自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されていない場合、第1取得手段151は、ステップS201へ処理を戻す。一方、自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されている場合、第1取得手段151は、パラメータ要求信号を、第1通信装置117を介して情報処理装置200に送信し、第1通信装置117を介して情報処理装置200から判定用パラメータを受信することにより取得する。このパラメータ要求信号には、自装置の装置IDが含まれる。
【0107】
なお、情報処理装置200は、計測装置100の運用中においても、定期的に(例えば1カ月毎に)図6のステップS104~S109の処理を実行して、判定用パラメータを作成(更新)し、計測装置100に送信して更新させてもよい。これにより、監視システム1は、常に計測装置100の最新の環境に応じた適切な判定用パラメータを用いて、構造物における変位異常が発生しているか否かを高精度に判定することができる。
【0108】
以上説明したように、監視システム1は、所定期間における第1変化量の移動平均値及び第1温度の移動平均値に基づいて、運用中の第2変化量に基づく値と比較するためのしきい値を設定する。橋梁等の構造物における遊間等の間隙における離隔距離は、温度変化等による日常的な構造物の伸縮の影響を受けて変化する。このような伸縮の影響は、構造物自体の変状(橋桁の撓み等、日常的には生じ得ない構造的な変化)の影響よりも大きい場合がある。また、このような構造物の間隙における離隔距離は、構造物の規模(大きさ)、材質又は構造等の特性によっても異なる。監視システム1は、各計測装置100が計測する距離の変化量と温度とを平滑化することにより、距離の変化量と温度の関係を明確にすることができる。監視システム1は、距離の変化量と温度の関係を考慮して、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。これにより、監視システム1は、計測装置100が設置される環境における温度、又は、計測対象の構造物の特性に関わらず、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが可能となる。
【0109】
なお、計測装置100の送信手段153は、計測情報として、さらにバッテリ115の電池電圧、第1通信装置117による受信電波強度及び/又は第1ユニット110の傾きを情報処理装置200に送信してもよい。その場合、情報処理装置200の制御手段221は、受信した計測情報に含まれる電池電圧が予め設定された電圧下限値未満である場合、又は、予め設定された電圧上限値より大きい場合、電池異常が発生したと判定する。また、制御手段221は、受信した計測情報に含まれる第1通信装置117による受信電波強度が予め設定された電波強度下限値未満である場合、又は、予め設定された電波強度上限値より大きい場合、電波異常が発生したと判定する。また、制御手段221は、受信した計測情報に含まれる第1ユニット110の傾きが予め設定された傾き下限値未満である場合、又は、予め設定された傾き上限値より大きい場合、傾き異常が発生したと判定する。通知手段225は、各異常が発生したと判定された場合、機器異常が発生したことを示す機器異常通知(例えばメール)を装置管理者の連絡先(例えば、装置管理者が装置管理者端末400で閲覧可能な装置管理者のメールアドレス)に送信する。装置管理者は、装置管理者端末400を用いて機器異常通知を閲覧することにより、速やかに対象の計測装置100を交換することができる。
【0110】
以下、他の実施形態に係る監視システム1について説明する。本実施形態に係る監視システム1では、計測装置100の第1処理回路150が設定手段224の一部を有する。第1処理回路150により実行される設定手段224の処理はしきい値設定処理である。
【0111】
本実施形態で実行される管理処理では、図6のステップS107及びステップS109の処理が省略される。また、図6のステップS111において情報処理装置200は判定用パラメータとして関係式及び日内変化幅を送信し、図10のステップS212において計測装置100は判定用パラメータとして関係式及び日内変化幅を受信する。
【0112】
また、本実施形態で実行される計測処理では、図10のステップS204において、設定手段224は、上述した関係式、第2温度の平均値、日内変化幅及びマージンに基づいてしきい値を設定し、判定手段152は、第2変化量(移動量)をしきい値と比較する。
【0113】
まず設定手段224は、第1記憶装置140から過去の所定期間の第2温度を読み出す。次に設定手段224は、読み出した第2温度とステップS202で取得した現在の第2温度の平均値を算出する。所定期間は、第1変化量の移動平均値が算出された所定期間と同一の期間に設定される。所定期間は、第1変化量の移動平均値が算出された所定期間より短い期間に設定されてもよい。続いて設定手段224は、関係式(r(k)=a・k+b)により各第2時点における第2温度の平均値(k)から算出される変化量(r(k))を算出する。算出される変化量は季節変動を考慮したしきい値の基準となる値である。
【0114】
続いて設定手段224は、関係式に予め定められた温度を代入して温度マージンを算出する。そして設定手段224は、関係式に第2温度の平均値を代入して得られる値から、上述した日内変化幅と、算出した温度マージンと、予め設定された橋梁設計マージン及び測定精度マージンとを減算して下限値を設定する。また、設定手段224は、関係式に第2温度の平均値を代入して得られる値に、上述した日内変化幅と、算出した温度マージンと、予め設定された橋梁設計マージン及び測定精度マージンとを加算して上限値を設定する。
【0115】
次に、判定手段152は、第2変化量が判定用パラメータに含まれるしきい値を超えたか否かを判定する。例えば、判定手段152は、第2変化量が下限値未満である場合、又は、上限値よりも大きい場合に、第2変化量がしきい値を超えたと判定する。一方、判定手段152は、第2変化量が下限値以上であり且つ上限値以下である場合、補正値がしきい値を超えていないと判定する。第2変化量がしきい値を超えた場合、判定手段152は、ステップS205において、構造物において変位異常が発生したと判定する。一方、第2変化量がしきい値を超えていない場合、判定手段152は、ステップS207において、構造物において変位異常が発生していないと判定する。
【0116】
なお、設定手段224は、所定期間が経過したか否かを判定し、所定期間が経過するまではしきい値を算出しない。また、判定手段152は、しきい値が算出されない間は変位異常の有無の判定を行わない。設定手段224は、所定期間が経過した場合に所定期間における平均値を算出してしきい値を算出し、判定手段152は、しきい値が算出された場合に第2変化量としきい値との比較を行う。
【0117】
なお、判定手段152は、第2変化量の代わりに、第2変化量の平均値を用いて、第2変化量がしきい値を超えたか否かを判定してもよい。第2変化量の平均値は、複数の第2時点のうちの連続する所定期間における第2変化量の平均値である。所定期間は、第2温度の平均値が算出された所定期間と同一の期間に設定される。所定期間は、第2温度の移動平均値が算出された所定期間と異なる期間に設定されてもよい。この場合のしきい値は、日内変化幅を含まないように設定される。即ち、下限値は、関係式と第2温度の平均値とから算出された変化量から、温度マージン、橋梁設計マージン及び測定精度マージンを減算した値に設定され、上限値は、関係式と第2温度の平均値とから算出された変化量に、温度マージン、橋梁設計マージン及び測定精度マージンを加算した値に設定される。判定手段152は、各第2時点における第2変化量の平均値が下限値未満である場合、又は、上限値よりも大きい場合に、第2変化量の平均値がしきい値を超えたと判定する。一方、判定手段152は、第2変化量の平均値が下限値以上であり且つ上限値以下である場合、第2変化量の平均値がしきい値を超えていないと判定する。
【0118】
このように、判定手段152は、第2時点における、第1ユニット110と第2ユニット120との間の距離の第2変化量又は第2変化量の平均値と、しきい値とを比較することにより、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。第2変化量又は第2変化量の平均値は、第2変化量に基づく値の一例である。特に、判定手段152は、第2変化量又は第2変化量の平均値を、関係式により第2時点における第2温度の平均値から算出される変化量を用いて算出したしきい値と比較することにより、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。計測装置100における温度を考慮することにより、監視システム1は、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することができる。
【0119】
判定手段152は、自装置において事前に計測された第1変化量及び第1温度に基づいて設定された関係式と第2温度の平均値とを用いてしきい値を算出することにより、自装置が設置された環境、特に自装置の温度に応じてしきい値を適切に設定することができる。また、判定手段152は、第2変化量又は第2変化量の平均値と自装置の温度に応じて適切に設定されたしきい値とを比較して、構造物における変位異常が発生しているか否かを判定する。したがって、判定手段152は、構造物における変位異常が発生しているか否かを高精度に判定することができる。
【0120】
以上説明したように、監視システム1は、関係式により各第2時点でのしきい値を設定する場合も、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが可能となる。
【0121】
以上、好適な実施形態について説明してきたが、実施形態はこれらに限定されない。例えば、計測装置100と情報処理装置200の機能分担は、上記した例に限られず、計測装置100及び情報処理装置200の各手段を計測装置100と情報処理装置200の何れに配置するかは適宜変更可能である。
【0122】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 監視システム
100 計測装置
110 第1ユニット
117 第1通信装置
120 第2ユニット
152 判定手段
200 情報処理装置
203 第2通信装置
223 算出手段
224 設定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10