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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023672
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20250207BHJP
   B63B 3/46 20060101ALI20250207BHJP
   B63B 3/48 20060101ALI20250207BHJP
   B63B 21/04 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
B63B25/16 N
B63B3/46
B63B3/48
B63B21/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128012
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 温人
(72)【発明者】
【氏名】西郷 康平
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩
(57)【要約】
【課題】必要な係船エリアを確保しつつタンクを大きくする。
【解決手段】船舶は、一対の舷側を有する船体と、船体に設けられた上甲板と、船体内に設けられ、上部が上甲板の船幅方向中央部を貫通して上甲板よりも上方に突出するタンクと、一対の舷側に対して船幅方向内側に間隔をあけて設けられ、複数のタンクを上方から覆うとともに、船首尾方向に延びる頂部平坦面を有するタンクカバーと、頂部平坦面から船首側に連なるように形成されるとともに、一対の舷側の間で船幅方向にわたって延びる船首甲板と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の舷側を有する船体と、
前記船体に設けられた上甲板と、
前記船体内に設けられ、上部が前記上甲板の船幅方向中央部を貫通して前記上甲板よりも上方に突出するタンクと、
一対の前記舷側に対して船幅方向内側に間隔をあけて設けられ、複数の前記タンクを上方から覆うとともに、船首尾方向に延びる頂部平坦面を有するタンクカバーと、
前記頂部平坦面から船首側に連なるように形成されるとともに、一対の前記舷側の間で船幅方向にわたって延びる船首甲板と、を備える
船舶。
【請求項2】
前記船首甲板の上面と、前記頂部平坦面とは同一高さに形成されている
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船首甲板上に、
係船索を繰出し及び巻取り可能な係船装置と、
前記係船装置から繰り出される前記係船索を案内可能な係船ガイド具と、を含む係船機器の少なくとも一部が配置されている
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記上甲板は、前記タンクカバーと、一対の前記舷側との間で上方に向けて露出し、船首尾方向に延びる通路部を備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス運搬船は、船体内に、液化ガスを貯留可能なタンクを備えている。液化ガス運搬船は荷役を行う港湾の設備要件から船長や喫水等といった主要目にある程度の制限が設けられている。そのような中で液化ガス運搬船における液化ガスの搭載量を増大させるため、タンクの上部を、船体の上甲板の一部を貫通させて上方に突出させることが行われている。特許文献1には、上甲板の上方に突出させたタンクの上部を、上方から覆うように設けられたタンクカバーを上甲板上に備える構成が開示されている。また、特許文献1には、タンクカバーよりも船首側の上甲板上に、係船機を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-187190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたような構成では、係船機が、タンクカバーよりも船首側の上甲板上に配置されている。タンクカバーは、係船機が配置された船首側の上甲板よりも高い位置にある。このため、タンクを前方に大きくしようとすれば係船エリアが狭くなる。また、係船機器等を配置する係船エリアを後方に広げればタンクが小さくなる。したがって、必要な係船エリアを確保しつつタンクを大きくすることが困難である。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、必要な係船エリアを確保しつつタンクを大きくすることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、上甲板と、タンクと、タンクカバーと、船首甲板と、を備える。前記船体は、一対の舷側を有する。前記上甲板は、前記船体に設けられている。前記タンクは、前記船体内に設けられている。前記タンクは、上部が前記上甲板の船幅方向中央部を貫通して前記上甲板よりも上方に突出している。前記タンクカバーは、一対の前記舷側に対して船幅方向内側に間隔をあけて設けられている。前記タンクカバーは、複数の前記タンクを上方から覆うとともに、船首尾方向に延びる頂部平坦面を有している。前記船首甲板は、前記頂部平坦面から船首側に連なるように形成されている。前記船首甲板は、一対の前記舷側の間で船幅方向にわたって延びている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、必要な係船エリアを確保しつつタンクを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
図2】本開示の実施形態に係る船舶の平面図である。
図3】本開示の実施形態に係る船舶のタンク、及びタンクカバーを、船首尾方向から見た断面図である。
図4】本開示の実施形態における船首甲板とタンクカバーの頂部平坦面を示す平面図である。
図5】本開示の実施形態の船舶の変形例において、船首甲板とタンクカバーの頂部平坦面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る船舶を図1から図5に基づき説明する。
(船舶の構成)
図1から図3に示すように、本実施形態で例示する船舶1Aは、LNG(Liquefied Natural Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化二酸化炭素、液化アンモニア等の液化ガスを運搬する液化ガス運搬船である。船舶1Aは、船体2と、タンク10と、タンクカバー20と、船首甲板30と、係船機器40Aと、を少なくとも備えている。なお、船舶1Aの船種は一例であって、液化ガス運搬船に限られない。
【0010】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす一対の舷側3A,3Bと、船底4(図1図3参照)と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有する。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有する。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。船体2は、その上部に、上甲板5を備えている。上甲板5は、船首甲板30よりも船尾2b側における、最上層に配置される甲板である。本実施形態の上甲板5は、その少なくとも一部を外部に露出する暴露甲板になっている。船体2は、船底4(船底外板)の上方に間隔をあけて配置され、二重底を形成する内底部9(図3参照)を備えている。
【0011】
船体2には、上部構造7が形成されている。上部構造7は、例えば、船体2の船尾2b側の上甲板5上に形成され、その内部に居住区を形成している。
【0012】
船体2は、上部構造7よりも船首2a側に、貨物搭載区画8(言い換えれば、カーゴホールド)を備えている。本実施形態で例示する貨物搭載区画8は、上甲板5に対して、上下方向Dvの下方の船底4に向けて凹み、上方に開口する開口部を備えている。
【0013】
(タンクの構成)
タンク10は、上記貨物搭載区画8内に配置されている。本実施形態で例示するタンク10は、上部構造7よりも船首2a側の貨物搭載区画8に、船首尾方向FAに間隔を空けて、例えば、四個配置されている。なお、タンク10は、一個のみ配置されていてもよい。
【0014】
各タンク10は、その内部に液化ガスを貯留可能である。図3に示すように、本実施形態のタンク10は、角型のタンクであって、底壁部12と、一対の下部傾斜壁部13と、一対の側壁部14と、一対の上部傾斜壁部15と、天壁部16と、一対の端壁部17と、を備えている場合を例示している。
【0015】
底壁部12は、内底部9上に、複数のタンク支持部材19により下方から支持されている。底壁部12は、上下方向Dvに交差する面に沿っている。底壁部12は、上下方向Dvから見た際に矩形の板状である。一対の下部傾斜壁部13は、下部傾斜壁部13の船幅方向Dwの両端縁から上方に向かって、船幅方向Dwの外側に傾斜して延びている。一対の側壁部14は、一対の下部傾斜壁部13の各々の上端から、上方に向かって延びている。一対の側壁部14は、船幅方向Dwに間隔をあけて配置され、舷側3A、3Bに間隔をあけて沿うように設けられている。一対の上部傾斜壁部15は、一対の側壁部14の各々の上端から上方に向かって、船幅方向Dwの内側に傾斜して延びている。天壁部16は、一対の上部傾斜壁部15の上端縁同士を接続するように設けられている。天壁部16は、上下方向Dvに交差する方向である船幅方向Dwに延びている。天壁部16は、上面視で矩形の板状をなしている。
【0016】
本実施形態のタンク10は、上述した底壁部12、一対の下部傾斜壁部13、一対の側壁部14、一対の上部傾斜壁部15、及び天壁部16により形成された、船首尾方向FAに延びる断面多角形状の筒状部18を有している。
図1図2に示すように、一対の端壁部17は、上記筒状部18の船首尾方向FAの両側の開口をそれぞれ塞ぐように設けられている。各端壁部17は、船首尾方向FAに交差する面に沿っている。なお、船体2の貨物搭載区画8内に配置されるタンク10の形状、タンク10の数、タンク10の形状、及びタンク10のレイアウトは、適宜変更可能である。タンク10は、例えば、船首尾方向FAに延びる断面円形の筒状、球状、方形状等であってもよい。
【0017】
図1図3に示すように、上下方向Dvにおけるタンク10の上部10aは、船体2の上甲板5よりも上方に位置している。つまり各タンク10は、上甲板5よりも上方に突出するように設けられている。より具体的には、図3に示すように、上甲板5の船幅方向Dwの中央部には、開口5hが形成されており、各タンク10の上部10aは、上甲板5の船幅方向Dwの中央部に形成された開口5hを貫通して、上甲板5よりも上方に突出している。
【0018】
タンクカバー20は、上甲板5上に配置されている。タンクカバー20は、タンク10を上下方向Dvの上方から覆っている。タンクカバー20は、船首尾方向FAに並んだ複数のタンク10を連続して覆っている。図3に示すように、本実施形態のタンクカバー20は、上甲板5よりも上方に突出した上部10aのみを上方から覆っている。
【0019】
図3に示すように、タンクカバー20は、上甲板5から上方に突出するタンク10の上部10aに対して上下方向Dvに間隔をあけて配置されている。言い換えれば、タンクカバー20のタンク10側を向く内面20gは、タンク10の上部10aの外面10fに対して上下方向Dvに間隔を開けて配置されている。タンクカバー20は、更に、一対の舷側3A、3Bに対して船幅方向Dwの内側に間隔をあけて設けられている。
【0020】
タンクカバー20は、一対のカバー側壁部21A、21Bと、頂部平坦面24と、を有している。そして、本実施形態で例示するカバー側壁部21A、21Bは、それぞれ上部21aと下部21bとを備えている。
カバー側壁部21Aの下部21bは、舷側3Aに対して船幅方向Dwの内側に所定寸法離れた位置から、上方に向かって延びている。カバー側壁部21Aの上部21aは、上方に向かって船幅方向Dwの内側に傾斜して延びている。カバー側壁部21Bは、カバー側壁部21Aと左右対称に形成されている。カバー側壁部21Bの下部21bは、上甲板5において、舷側3Bに対して船幅方向Dwの内側に所定寸法離れた位置から、上方に向かって延びている。本実施形態において、カバー側壁部21Bの上部21aは、上方に向かって船幅方向Dwの内側に傾斜して延びている。
【0021】
頂部平坦面24は、一対のカバー側壁部21A、21Bの上端同士を接続している。図2に示すように、頂部平坦面24は、上面視で、船首尾方向FAを長辺とし、船幅方向Dwを短辺とした、平面視長方形状をなしている。頂部平坦面24は、上下方向Dvに交差する船幅方向Dwに延びている。頂部平坦面24は、平面であってもよいが、例えば、後述の係船機器40Aの設置や頂部平坦面24上の作業員の歩行移動に支障が生じなければ、船幅方向Dwの中央部から船幅方向Dwの両外側に向かって漸次下方に傾斜または湾曲していてもよい。
【0022】
図2図3に示すように、上甲板5は、一対の通路部51A、51Bを有している。通路部51Aは、カバー側壁部21Aと、舷側3Aとの間において、上方に向けて露出し、船首尾方向FAに延びている。通路部51Bは、カバー側壁部21Bと、舷側3Bとの間において、上方に向けて露出し、船首尾方向FAに延びている。通路部51A、51Bは、それぞれ、少なくとも作業員(人)が行き来できる程度の幅を有している。これにより、作業員は、通路部51A、51Bを行き来することができる。
【0023】
また、図1図2に示すように、本実施形態の通路部51A、51Bには、マニホールド101等の機器類100が設けられている。マニホールド101は、船舶1Aの外部からタンク10に液化ガスを供給するための外部配管(図示せず)、タンク10内に貯留された液化ガスを外部に払い出すための外部配管(図示無し)等を着脱可能な接続口を備えている。なお、上記通路部51A、51Bに設けられる機器類100は、マニホールド101に限られない。マニホールド101以外の機器類100を通路部51A、51Bに設けてもよい。
【0024】
図4は、本実施形態における船首甲板とタンクカバーの頂部平坦面を示す平面図である。
図1図2図4に示すように、船首甲板30は、タンクカバー20に対して船首2a側に配置されている。船首甲板30は、船首尾方向FAにおいて、タンクカバー20の頂部平坦面24に連なるように形成されている。上下方向Dvにおいて船首甲板30は、上甲板5に対して、所定寸法上方に設けられている。本実施形態の船首甲板30と頂部平坦面24とは、同一高さに形成され、船首尾方向FAにおいて連続して形成されている。なお、船首甲板30と頂部平坦面24とは、同一高さに限られない。例えば、船首甲板30と頂部平坦面24との間には、船首甲板30と頂部平坦面24との間を人が直接行き来できる程度に、上下方向Dvに多少の段差を有していてもよい。さらに、船首甲板30と頂部平坦面24とは、船首甲板30と頂部平坦面24との間を人が直接行き来できる程度に、船首尾方向FAに間隔をあけて設けられていてもよい。その場合、作業員が行き来し易いように、船首甲板30と頂部平坦面24との間に跨る板状の部材(図示せず)等を設けてもよい。
【0025】
図4に示すように、船首甲板30は、一対の舷側3A、3Bの間にわたるように船幅方向Dwに延びている。船首甲板30のうち最も船尾2b側に位置する後縁30tの船幅方向Dwの幅寸法W1は、上述したタンクカバー20の頂部平坦面24の最も船首2a側に位置する前縁24sの船幅方向Dwの幅寸法W2よりも大きい。
【0026】
図1図4に示すように、本実施形態で例示する上甲板5は、船首甲板30よりも船首尾方向FAの船尾2b側に設けられている。上甲板5の船首2a側の縁部5s(図1参照)と、船首甲板30の船尾2b側の後縁30tとは、上下方向Dvに延びる垂直壁35により接続されている。これにより、上甲板5と船首甲板30との間には段差部が形成されている。この段差部には、例えば、階段や梯子(図示せず)等を設けて、作業員が上甲板5と船首甲板30との間を昇降可能にしてもよい。
【0027】
図4に示すように、係船機器40Aは、係船装置41Aと、係船ガイド具45Aとを含んでいる。係船装置41Aは、係船索42を繰出し及び巻取り可能なホーサードラム(図示せず)等を備えている。係船ガイド具45Aは、係船装置41Aのホーサードラム(図示せず)から繰り出される係船索42を案内する。係船ガイド具45Aとしては、係船索42の配索方向を変換するデッキスタンドローラー46A、係船索42が挿通される挿通孔47hを有したクローズドフェアリーダー47A等を例示できる。
【0028】
このような係船機器40Aの少なくとも一部は、船首甲板30上に配置されている。本実施形態では、例えば、係船装置41A、及びデッキスタンドローラー46Aが、船首甲板30上に配置されている。例えば、係船装置41Aは、船首甲板30の船幅方向Dwの中央部に配置されている。係船装置41Aのホーサードラム(図示せず)から繰り出される係船索42は、デッキスタンドローラー46Aによって、船幅方向Dwで両側の舷側3A、3B側に延びるように、配索方向が変換される。船首甲板30の船幅方向Dwの両側に位置する舷側3A、3Bは、船首甲板30の上面30fよりも上方に突出している。そして、本実施形態のクローズドフェアリーダー47Aは、舷側3A、3Bのうち、船首甲板30の上面30fよりも上方に突出する部分に形成されている。係船索42は、クローズドフェアリーダー47Aを通して、船外(陸上等)へと導出される。
【0029】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1Aでは、船首甲板30が、タンクカバー20の頂部平坦面24から連なるように形成されている。これにより、船首甲板30に加えて、頂部平坦面24に及ぶ領域を、様々な目的で利用することが可能となる。船首甲板30上に、係船機器40Aが設けられている場合、係船機器40Aを取り扱う作業者は、船首甲板30上だけでなく、頂部平坦面24までに及ぶ範囲で作業を行うことができ、作業性が高まる。つまり、船首甲板30上だけで、係船機器40Aを取り扱う際の作業スペースを確保する必要が無くなり、船首甲板30上における係船機器40Aの配置の自由度が高まる。また、係船機器40Aの配置スペースの都合によって、船首甲板30が船尾2b側に拡大することが抑えられる。したがって、必要な係船エリアを確保しつつタンク10を大きくすることができる。また、係船機器40Aの配置スペースを増大させるために、タンク10やタンクカバー20を小型化する必要がない。その結果、液化ガスの搭載量の減少を抑えつつ、係船機器40A等を配置するスペースを増大させて、係船機器40A等の配置の自由度を高めることができる。
また、船首甲板30が、タンクカバー20の頂部平坦面24から連なるように形成されることで、タンクカバー20が受ける空気抵抗を軽減でき、船舶1Aの航行時における燃料消費量を抑えることができる。さらに、頂部平坦面24と船首甲板30との間の人の行き来を容易にすることができるため、係船作業を行う作業者の負担を軽減できる。
【0030】
さらに、上記実施形態では、船首甲板30の上面30fと、頂部平坦面24とが同一高さに形成されている。これにより、船首甲板30と頂部平坦面24との間における作業員の行き来を容易に行うことができる。さらに、係船索42等を船首甲板30と頂部平坦面24との間を渡るように配索する必要が生じた場合には、係船索42等が、頂部平坦面24に接触し正常な係船作業を妨げることを防ぎ、係船索42等を円滑に出し入れすることができる。
【0031】
また、上記実施形態では、船首甲板30上に係船機器40Aの少なくとも一部が配置されている。これにより、係船機器40Aを取り扱う際に、作業者は、船首甲板30だけでなく、頂部平坦面24上も作業スペースとして利用することができ、作業性が向上する。
【0032】
さらに、上記実施形態では、タンクカバー20と一対の舷側3A、3Bとの間に、通路部51A、51Bを備えている。これにより、作業員の船首尾方向FAへの移動スペースを確保することができる。また、通路部51A、51Bに、例えばマニホールド101等の機器類100を配置することができるため、例えばタンクカバー20の上部に機器類100を配置する場合のように、機器類100の上下方向Dvの位置が過度に高くなり、船陸整合性が損なわれるのを抑えることができる。
【0033】
(実施形態の変形例)
図5は、本実施形態の船舶の変形例において、船首甲板とタンクカバーの頂部平坦面を示す平面図である。
上記実施形態では、係船機器40Aのうち、係船装置41A、及びデッキスタンドローラー46Aが、船首甲板30上に配置され、クローズドフェアリーダー47Aが、船首甲板30の船幅方向Dwの両側の舷側3A、3Bの上端部3tに形成されているようにしたが、これに限られない。
【0034】
図5に示す本実施形態の変形例のように、船舶1Bにおいては、係船機器40Bのうち、係船装置41Bを船首甲板30上に配置し、係船ガイド具45Bとしてとしてのデッキスタンドローラー46B、及びクローズドフェアリーダー47Bを、タンクカバー20の頂部平坦面24上に配置するようにしてもよい。この場合、係船装置41Bのホーサードラム(図示せず)から繰り出される係船索42は、船尾2b側に延び、デッキスタンドローラー46Bによって、舷側3A、3B側に延びるように、配索方向が変換される。クローズドフェアリーダー47Bは、頂部平坦面24において船幅方向Dwの両端部に設けられている。クローズドフェアリーダー47Bは、頂部平坦面24の両端部から上方に突出するように設けられている。係船索42は、クローズドフェアリーダー47Bに形成された挿通孔47gを通して、船外(陸上等)へと導出される。
【0035】
上記実施形態の変形例による船舶1Bでは、船首甲板30が、タンクカバー20の頂部平坦面24から連なるように形成されている。これにより、係船機器40Bの一部の係船ガイド具45Bを、タンクカバー20の頂部平坦面24上にも配置できる。したがって、係船機器40Bの配置の自由度を高めることができる。
【0036】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では、上甲板5は、船首尾方向FAにおいて、船首甲板30よりも船尾2b側に設けられているようにしたが、これに限られない。上甲板5は、船体2の船首尾方向FAの船首2aから船尾2bまでの全体にわたる全通甲板であってもよい。この場合、船首甲板30は、上甲板5の船首2a側の端部の上方に間隔をあけて設けられる。
【0037】
また、タンクカバー20の船首尾方向FAから見た際の断面形状は、上記実施形態に例示した構成に限らない。タンクカバー20の断面形状は、頂部平坦面24を有しているのであれば、適宜他の形状に変更可能である。また、船首甲板30が連なるような頂部平坦面24は、タンクカバー20の船首尾方向FAの全体に形成されているとは限らず、例えば、船首2a側の一部にのみに形成されていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態において、タンクカバー20は、複数のタンク10を連続して覆うようにしたが、これに限られない。タンクカバー20は、複数のタンク10の各々を覆うように設けられる等してもよい。その場合、船首甲板30は、船首尾方向FAにおいて最も船首2a側に位置するタンクカバー20の頂部平坦面24に連なるように形成される。
さらに、上記実施形態ではクローズドフェアリーダー47Bを一例にして説明したが、フェアリーダーは、クローズ型のフェアリーダーに限られない。
また、船首甲板30は、船首尾方向FA及び船幅方向Dwに一定の高さで形成されるものに限られない。例えば、頂部平坦面24と同様に船幅方向Dwの中央部から船幅方向Dwの両外側に向かって漸次下方に傾斜または湾曲していてもよい。さらに、船首甲板30は、船尾2b側の後縁30tから船首2a側に向かって傾斜したり、僅かな段差が形成されていたりしてもよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、船首甲板30上に係船機器40Aを設ける場合について説明した。しかし、係船機器40Aは、船首甲板30上に配置する場合に限られない。この場合、例えば、船首甲板30よりも下層の甲板(図示せず)の上などに係船機器40Aを配置すればよい。
【0040】
また、船舶1A、1Bが液化ガス運搬船の場合を例示したが、これに限られない。船舶1A、1Bは、例えばケミカルタンカー、原油タンカー等、他の船種であってもよい。
【0041】
<付記>
実施形態に記載の船舶1A、1Bは、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)第1の態様に係る船舶1A、1Bは、一対の舷側3A、3Bを有する船体2と、前記船体2に設けられた上甲板5と、前記船体2内に設けられ、上部10aが前記上甲板5の船幅方向Dw中央部を貫通して前記上甲板5よりも上方に突出するタンク10と、一対の前記舷側3A、3Bに対して船幅方向Dw内側に間隔をあけて設けられ、複数の前記タンク10を上方から覆うとともに、船首尾方向FAに延びる頂部平坦面24を有するタンクカバー20と、前記頂部平坦面24から船首2a側に連なるように形成されるとともに、一対の前記舷側3A、3Bの間で船幅方向Dwにわたって延びる船首甲板30と、を備えている。
【0043】
これにより、船首甲板30に加えて頂部平坦面24に及ぶ領域を、様々な目的で利用することが可能となる。これにより、係船機器40A、40B等の配置の自由度が高められる。また、係船機器40A、40B等の配置スペースの都合によって、船首甲板30が船尾2b側に拡大することが抑えられる。つまり、係船機器40A、40Bの配置スペースを増大させるために、タンク10やタンクカバー20を小型化する必要がない。その結果、液化ガスの搭載量の減少を抑えつつ、係船機器40A、40B等を配置するスペースを増大させて、係船機器40A、40B等の配置の自由度を高めることができる。
また、船首甲板30が、タンクカバー20の頂部平坦面24から連なるように形成されることで、タンクカバー20が受ける空気抵抗を軽減でき、船舶1A、1B航行時における燃料消費量を抑えることができる。
【0044】
(2)第2の態様に係る船舶1A、1Bは、(1)の船舶1A、1Bであって、前記船首甲板30の上面30fと、前記頂部平坦面24とは同一高さに形成されている。
【0045】
これにより、係船索42等が船首甲板30と頂部平坦面24との段差に引っ掛かるのを抑えることができる。また、船首甲板30と頂部平坦面24との間における作業員の行き来を容易に行うこともできる。
【0046】
(3)第3の態様に係る船舶1A、1Bは、(1)又は(2)の船舶1A、1Bであって、前記船首甲板30上に、係船索42を繰出し及び巻取り可能な係船装置41A、41Bと、前記係船装置41A、41Bから繰り出される前記係船索42を案内可能な係船ガイド具45A、45Bと、を含む係船機器40A、40Bの少なくとも一部が配置されている。
係船ガイド具45A、45Bとしては、デッキスタンドローラー46A、46B、クローズドフェアリーダー47A、47Bが挙げられる。
【0047】
これにより、船首甲板30上に係船機器40A、40Bの少なくとも一部を配置することで、係船機器40A、40Bを、船首甲板30上に限らず、タンクカバー20の頂部平坦面24上にも配置可能となる。また、係船機器40A、40Bを取り扱う際には、船首甲板30だけでなく、頂部平坦面24上も、作業スペースとして利用することができ、作業性が向上する。
【0048】
(4)第4の態様に係る船舶1A、1Bは、(1)から(3)の何れか一つの船舶1A、1Bであって、前記上甲板5は、前記タンクカバー20と、一対の前記舷側3A、3Bとの間で上方に向けて露出し、船首尾方向FAに延びる通路部51A、51Bを備える。
【0049】
これにより、タンクカバー20と一対の舷側3A、3Bとの間に、通路部51A、51Bが備えられることで、作業員の船首尾方向FAへの移動スペースを確保することができる。また、通路部51A、51Bに、例えばマニホールド101等の機器類100を配置することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1A、1B…船舶 2…船体 2a…船首 2b…船尾 3A、3B…舷側 3t…上端部 4…船底 5…上甲板 5h…開口 5s…縁部 6…底部甲板 7…上部構造 8…貨物搭載区画 9…内底部 10…タンク 10a…上部 10f…外面 12…底壁部 13…下部傾斜壁部 14…側壁部 15…上部傾斜壁部 16…天壁部 17…端壁部 18…筒状部 19…タンク支持部材 20…タンクカバー 20g…内面 21A、21B…カバー側壁部 24…頂部平坦面 24s…前縁 30…船首甲板 30f…上面 30t…後縁 35…垂直壁 40A、40B…係船機器 41A、41B…係船装置 42…係船索 45A、45B…係船ガイド具 46A、46B…デッキスタンドローラー 47A、47B…クローズドフェアリーダー 47g、47h…挿通孔 51A、51B…通路部 100…機器類 101…マニホールド Dv…上下方向 FA…船首尾方向 Dw…船幅方向 W1…幅寸法 W2…幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5