(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002368
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】可搬式木造家屋
(51)【国際特許分類】
E04B 1/343 20060101AFI20241226BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
E04B1/343 Q
E04B1/348 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102492
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】523208383
【氏名又は名称】株式会社ハウスサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】若松 高美
(72)【発明者】
【氏名】長町 雅人
(57)【要約】
【課題】 運搬および設置を容易且つ確実に行うことができる可搬式木造家屋を提供する。
【解決手段】 柱および梁15からなる構造体の側方周囲が外壁11で覆われた家屋本体と、外壁11の複数箇所に着脱可能に取り付けられる吊上げ具20とを備え、吊上げ具20に吊材を係合させて家屋本体を吊り上げることができる可搬式木造家屋であって、吊上げ具20は、外壁11に当接するフランジ部21と、フランジ部21の表面から突出して先端側に吊材が係合する係合部23を備える本体部22と、フランジ部21の裏面から突出してナット25の螺合によりフランジ部21を外壁11に締結するボルト部24とを備え、ボルト部24は、上下に複数配置されており、少なくとも上側のボルト部24が家屋本体の梁15を貫通する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱および梁からなる構造体の側方周囲が外壁で覆われた家屋本体と、
前記外壁の複数箇所に着脱可能に取り付けられる吊上げ具とを備え、
前記吊上げ具に吊材を係合させて前記家屋本体を吊り上げることができる可搬式木造家屋であって、
前記吊上げ具は、前記外壁に当接するフランジ部と、前記フランジ部の表面から突出して先端側に吊材が係合する係合部を備える本体部と、前記フランジ部の裏面から突出してナットの螺合により前記フランジ部を前記外壁に締結するボルト部とを備え、
前記ボルト部は、上下に複数配置されており、少なくとも上側の前記ボルト部が前記家屋本体の前記梁を貫通する可搬式木造家屋。
【請求項2】
前記梁における上側の前記ボルト部が貫通する部分の下方には横桟が配置されており、
下側の前記ボルト部は、前記横桟を貫通する請求項1に記載の可搬式木造家屋。
【請求項3】
前記本体部は、H形鋼状である請求項1または2に記載の可搬式木造家屋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式木造家屋に関する。
【背景技術】
【0002】
組み立てた状態で運搬可能な従来の可搬式木造家屋として、特許文献1には、上端に吊上げ具が着脱可能に連結された鉄棒を小型家屋に配置した構成が開示されている。小型家屋は、土台枠に設けられた2重壁上に桁枠が配置されており、2重壁内を通って桁枠を上下に貫通するように鉄棒を複数箇所に配置して、各鉄棒の下端を土台枠に結合することにより、吊上げ具にワイヤを掛けてクレーン等で吊り上げて運搬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の可搬式木造家屋は、屋根の各鉄棒が対応する部分に開口が形成されており、現場での設置後に各鉄棒から吊上げ具が取り外された後、それぞれの開口が屋根材片で閉塞される。
【0005】
ところが、各開口は屋根の上面に形成されていることから、屋根材片による閉塞作業が煩雑になり易いだけでなく、この部分から雨水等が浸入するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、運搬および設置を容易且つ確実に行うことができる可搬式木造家屋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、柱および梁からなる構造体の側方周囲が外壁で覆われた家屋本体と、前記外壁の複数箇所に着脱可能に取り付けられる吊上げ具とを備え、前記吊上げ具に吊材を係合させて前記家屋本体を吊り上げることができる可搬式木造家屋であって、前記吊上げ具は、前記外壁に当接するフランジ部と、前記フランジ部の表面から突出して先端側に吊材が係合する係合部を備える本体部と、前記フランジ部の裏面から突出してナットの螺合により前記フランジ部を前記外壁に締結するボルト部とを備え、前記ボルト部は、上下に複数配置されており、少なくとも上側の前記ボルト部が前記家屋本体の前記梁を貫通する可搬式木造家屋により達成される。
【0008】
この可搬式木造家屋は、前記梁における上側の前記ボルト部が貫通する部分の下方に横桟が配置されていることが好ましく、下側の前記ボルト部は前記横桟を貫通することが好ましい。
【0009】
また、前記本体部は、H形鋼状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の可搬式木造家屋によれば、運搬および設置を容易且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る可搬式木造家屋を吊り上げた状態を示す正面図である。
【
図3】
図1に示す可搬式木造家屋の要部断面図である。
【
図5】
図1に示す可搬式木造家屋の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る可搬式木造家屋を吊り上げた状態を示す正面図である。また、
図2は、
図1に示す可搬式木造家屋の側面図である。本実施形態の可搬式木造家屋は、離れ部屋等として好適に使用することができるプレハブハウスやユニットハウス等の家屋であり、木造とすることで軽量化および低コスト化が図られている。
【0013】
図1および
図2に示すように、可搬式木造家屋1は、家屋本体10と、家屋本体10に取り付けられる吊上げ具20とを備えており、吊上げ具20を利用して、家屋本体10を予め組み上げた状態で吊り上げて、トラック等により運搬することができる。
【0014】
家屋本体10は、柱および梁からなる木質の構造体の側方周囲が外壁11で覆われて構成されている。吊上げ具20は、家屋本体10の外壁11の複数箇所に着脱可能に設けられる。本実施形態においては、家屋本体10の長手方向両側に、吊上げ具20が同じ高さに2つずつ着脱可能に取り付けられている。
【0015】
吊上げ具20には、ベルトやワイヤ等の線状の吊材30を係合させることで、家屋本体10を吊り上げることができる。吊材30は、角筒状の支持パイプ31の両端部に支持されており、支持パイプ31は、支持ワイヤ32を介してクレーン33により吊り上げられる。
【0016】
図3は、吊上げ具20が家屋本体10に取り付けられた状態を示す可搬式木造家屋1の要部断面図である。
図3に示すように、吊上げ具20は、外壁11の表面に当接する矩形状のフランジ部21と、フランジ部21の表面から水平に突出する本体部22と、フランジ部21の裏面から水平に突出する複数のボルト部24とを備えている。
【0017】
図4は、
図3に示す吊上げ具20を矢示A方向に見た側面図である。
図3および
図4に示すように、本体部22は、水平板状の上フランジおよび下フランジの間にウェブを備えるH形鋼状に形成されており、高い曲げ剛性を有する。本体部22の突出方向先端側の上面には、吊材30が係合するリング状の係合部23が設けられている。本体部22の突出長さは特に限定されないが、係合部23を利用した吊上げを容易にするため、係合部23が家屋本体10の軒先よりも若干外方に配置されるように、本体部22を形成することが好ましい。
【0018】
ボルト部24は、矩形状の各頂点に対応する4か所に配置されており、ナット25の螺合により、フランジ部21を外壁11に締結することができる。ボルト部24は、少なくともフランジ部21の上下に複数配置されていればよく、その個数は特に限定されない。
【0019】
家屋本体10の外壁11は、構造用合板等からなる外壁材12の外表面が、ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)等からなる外装材13により覆われて構成されている。外壁11の内側には、家屋本体10の構造体の最外部を構成する木質の梁15が配置されており、梁15の内側に石膏ボード等からなる内装材14が配置されている。外壁材12と内装材14との間には、木製の横桟16および縦桟17が配置されている。
【0020】
吊上げ具20が備える4つのボルト部24のうち、フランジ部21の上側に配置された2つのボルト部24は、外壁11、梁15および内装材14を貫通して、内装材14の裏面側に突出する。一方、フランジ部21の下側に配置された2つのボルト部24は、外壁11、横桟16および内装材14を貫通して、内装材14の裏面側に突出する。
【0021】
図5は、
図3に示す梁15、横桟16および縦桟17を矢示B方向に見た図である。縦桟17は、左右に間隔をあけて梁15の上下にそれぞれ複数配置されている。一方、横桟16は、上側の2つのボルト部24が梁15に挿通された部分の下方に配置されており、両端部が縦桟17,17に支持されて、下側の2つのボルト部24が挿通される。
【0022】
内装材14の裏面側に突出した4つのボルト部24には、
図6に示すように各ボルト部24に対応する位置に貫通孔26aを有する受けプレート26が装着され、座金を介してナット25が螺合する。横桟16は、本発明において必須のものではなく、少なくとも上側のボルト部24が梁15を貫通する構成であれば、本実施形態とは異なる構成であってもよい。但し、横桟16を備えることで、下側のボルト部24にナット25を螺合して締結した際の内装材14の凹みを確実に防止することができる。
【0023】
上記の構成を備える可搬式木造家屋1は、
図3に示す吊上げ具20の係合部23に吊材を係合させて吊り上げると、上側のボルト部24が挿通された梁15が、本体部22の撓み変形によって生じる大きな圧縮荷重を受ける一方、下側のボルト部24が挿通された横桟16には圧縮荷重が作用しないため、吊り上げる家屋本体10を損傷させることなく確実に吊り上げることができる。家屋本体10を運搬先で降ろして設置した後は、吊上げ具20を取り外して、ボルト部24の挿通孔にシーリング材を充填して着色することにより、止水を行うと共に、吊上げ具20を取り外した跡を目立たなくすることができる。
【0024】
本実施形態の可搬式木造家屋1は、家屋本体10が構造体として本来的に備える高圧縮耐力の梁を利用して、吊上げ具20が外壁11から側方に突出するように取り付けられるため、吊上げ具20の取付作業、家屋本体10の吊上げ作業および家屋本体10の据付け作業を迅速容易に行うことができると共に、吊上げ具20を取り外した後の雨水等の浸入を抑制することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 可搬式木造家屋
10 家屋本体
11 外壁
15 梁
16 横桟
20 吊上げ具
21 フランジ部
22 本体部
23 係合部
24 ボルト部
25 ナット