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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023686
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】ポリカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/30 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
C08G64/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128032
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 恵太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将吾
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB04
4J029AC01
4J029AC02
4J029AD01
4J029BA00
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BB00
4J029BB13A
4J029BC00
4J029BD00
4J029BD04A
4J029BF30
4J029HC05A
4J029JF011
4J029JF021
4J029JF031
4J029JF041
4J029JF111
4J029KB01
4J029KB02
4J029KB05
4J029KC02
4J029KE02
4J029KE05
4J029LA01
4J029LA04
4J029LA05
4J029LA06
4J029LB02
(57)【要約】
【課題】原料ロスを低減するポリカーボネートの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリカーボネートの製造方法であって、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒とを含む重合原料を重合器において減圧条件下でエステル交換反応させて溶融プレポリマーを得る予備重合工程と、前記溶融プレポリマーを、重合器において減圧条件下で更にエステル交換反応させポリカーボネートを得る縮合重合工程と、含み、前記予備重合工程における、前記エステル交換反応を、下記式(1)を満足する条件下で行なう、ポリカーボネートの製造方法。
1100 ≦ [―0.043×A+0.028×B+0.79]×C×D ≦ 22000 (1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートの製造方法であって、
ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒とを含む重合原料を重合器において減圧条件下でエステル交換反応させて溶融プレポリマーを得る予備重合工程と、
前記溶融プレポリマーを、重合器において減圧条件下で更にエステル交換反応させポリカーボネートを得る縮合重合工程と、
含み、
前記予備重合工程における、前記エステル交換反応を、下記式(1)を満足する条件下で行なう、ポリカーボネートの製造方法。
1100 ≦ [―0.043×A+0.028×B+0.79]×C×D ≦ 22000 (1)
(式(1)中、
Aは、ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)であり、但し、2種以上のジヒドロキシ化合物を用いる場合は、各ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)を加重平均した値をAとし、
Bは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの1時間当たりの供給量(ton/hour)であり、
Cは、触媒中の金属元素の質量に換算した値から算出した、ジアリールカーボネートに対する触媒濃度(質量ppb)であり、且つ、
Dは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを1時間重合させた後の溶融プレポリマーの粘度(mPa・s)である。)
【請求項2】
前記Aについて、下記式(2)を満足する、請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
8 ≦ A ≦ 15 (2)
【請求項3】
前記Bについて、下記式(3)を満足する、請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
0.01 ≦ B ≦ 35 (3)
【請求項4】
前記Cについて、下記式(4)を満足する、請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
50 ≦ C ≦ 600 (4)
【請求項5】
前記Dについて、下記式(5)を満足する、請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
10 ≦ D ≦ 200 (5)
【請求項6】
前記予備重合工程における前記重合器が、攪拌式重合器である、請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記縮合重合工程は、ガイド接触流下式重合装置を用いて行われ、
前記ガイド接触流下式重合装置が、下記<条件(1)>~<条件(9)>を満たす、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカーボネートの製造方法。
<条件(1)>
液体受給口、多孔板を通して蒸発ゾーンのガイドに液体を供給するための液体供給ゾーン、前記多孔板と側面ケーシングと底部ケーシングとに囲まれた空間に前記多孔板から下方に延びる複数のガイドが設けられた蒸発ゾーン、前記蒸発ゾーンに設けられた真空ベント口、及び、底部ケーシングの最下部に設けられた液体排出口を有する。
<条件(2)>
前記液体供給ゾーンにおいて、前記液体受給口から多孔板に供給される液体を、多孔板の周辺部から中央部の方向に流す機能を有する流路制御部品が前記液体供給ゾーンに設置されている。
<条件(3)>
前記蒸発ゾーンの側面ケーシングの水平面における内部断面積a(m2)が、下記式(I)を満足する。
0.7 ≦ a ≦ 300 式(I)
<条件(4)>
前記内部断面積a(m2)と、前記液体排出口の水平面における内部断面積b(m2)との比が、下記式(II)を満足する。
20 ≦ a/b ≦ 1000 式(II)
<条件(5)>
前記蒸発ゾーンの底部を構成する底部ケーシングが、上部の側面ケーシングに対して、その内部において、角度C度で接続されており、前記角度c度が、下記式(III)を満足する。
110 ≦ c ≦ 165 式(III)
<条件(6)>
前記ガイドの長さh(cm)が、式(IV)を満足する。
150 ≦ h ≦ 5000 式(IV)
<条件(7)>
複数の前記ガイド全体の外部総表面積S(m2)が、式(V)を満足する。
2 ≦ S ≦ 50000 式(V)
<条件(8)>
前記多孔板1m2あたりの平均孔数N(個/m2)が、式(VI)を満足する。
50 ≦ N ≦ 3000 式(VI)
<条件(9)>
前記多孔板の孔の上部面積を含む前記多孔板の上部面積T(m2)と、前記孔の有効断面積の合計Q(m2)との比が、下記式(VII)を満足する。
50 ≦ T/Q ≦ 3000 式(VII)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートの代表的な製造方法として、エステル交換法が挙げられる。当方法では、ビスフェノールA、イソソルビドなどのジヒドロキシ化合物と、ジフェニルカーボネート(DPC)などのジアリールカーボネートをエステル交換し、副生するヒドロキシアリール化合物を系外に取り除くことにより重合を進行させている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/121210号公報
【特許文献2】特開2011-202188号公報
【特許文献3】国際公開第2019/163964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、副生するヒドロキシアリール化合物の蒸気を系外に取り除きながら重合反応を行うポリカーボネートの製造方法では、当該蒸気に同伴して原料であるジヒドロキシ化合物、及びジアリールカーボネートの飛沫が排出され、原料ロスとなるため、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明では、原料ロスを低減するポリカーボネートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、下記の実施形態を含む。
<1>
ポリカーボネートの製造方法であって、
ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒とを含む重合原料を重合器において減圧条件下でエステル交換反応させて溶融プレポリマーを得る予備重合工程と、
前記溶融プレポリマーを、重合器において減圧条件下で更にエステル交換反応させポリカーボネートを得る縮合重合工程と、
含み、
前記予備重合工程における、前記エステル交換反応を、下記式(1)を満足する条件下で行なう、ポリカーボネートの製造方法。
1100 ≦ [―0.043×A+0.028×B+0.79]×C×D ≦ 22000 (1)
(式(1)中、
Aは、ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)であり、但し、2種以上のジヒドロキシ化合物を用いる場合は、各ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)を加重平均した値をAとし、
Bは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの1時間当たりの供給量(ton/hour)であり、
Cは、触媒中の金属元素の質量に換算した値から算出した、ジアリールカーボネートに対する触媒濃度(質量ppb)であり、且つ、
Dは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを1時間重合させた後の溶融プレポリマーの粘度(mPa・s)である。)
<2>
前記Aについて、下記式(2)を満足する、<1>に記載のポリカーボネートの製造方法。
8 ≦ A ≦ 15 (2)
<3>
前記Bについて、下記式(3)を満足する、<1>又は<2>に記載のポリカーボネートの製造方法。
0.01 ≦ B ≦ 35 (3)
<4>
前記Cについて、下記式(4)を満足する、<1>~<3>のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
50 ≦ C ≦ 600 (4)
<5>
前記Dについて、下記式(5)を満足する、<1>~<4>のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
10 ≦ D ≦ 200 (5)
<6>
前記予備重合工程における前記重合器が、攪拌式重合器である、<1>~<5>のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
<7>
前記縮合重合工程は、ガイド接触流下式重合装置を用いて行われ、
前記ガイド接触流下式重合装置が、下記<条件(1)>~<条件(9)>を満たす、<1>~<6>のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
<条件(1)>
液体受給口、多孔板を通して蒸発ゾーンのガイドに液体を供給するための液体供給ゾーン、前記多孔板と側面ケーシングと底部ケーシングとに囲まれた空間に前記多孔板から下方に延びる複数のガイドが設けられた蒸発ゾーン、前記蒸発ゾーンに設けられた真空ベント口、及び、底部ケーシングの最下部に設けられた液体排出口を有する。
<条件(2)>
前記液体供給ゾーンにおいて、前記液体受給口から多孔板に供給される液体を、多孔板の周辺部から中央部の方向に流す機能を有する流路制御部品が前記液体供給ゾーンに設置されている。
<条件(3)>
前記蒸発ゾーンの側面ケーシングの水平面における内部断面積a(m2)が、下記式(I)を満足する。
0.7 ≦ a ≦ 300 式(I)
<条件(4)>
前記内部断面積a(m2)と、前記液体排出口の水平面における内部断面積b(m2)との比が、下記式(II)を満足する。
20 ≦ a/b ≦ 1000 式(II)
<条件(5)>
前記蒸発ゾーンの底部を構成する底部ケーシングが、上部の側面ケーシングに対して、その内部において、角度c度で接続されており、前記角度c度が、下記式(III)を満足する。
110 ≦ c ≦ 165 式(III)
<条件(6)>
前記ガイドの長さh(cm)が、式(IV)を満足する。
150 ≦ h ≦ 5000 式(IV)
<条件(7)>
複数の前記ガイド全体の外部総表面積S(m2)が、式(V)を満足する。
2 ≦ S ≦ 50000 式(V)
<条件(8)>
前記多孔板1m2あたりの平均孔数N(個/m2)が、式(VI)を満足する。
50 ≦ N ≦ 3000 式(VI)
<条件(9)>
前記多孔板の孔の上部面積を含む前記多孔板の上部面積T(m2)と、前記孔の有効断面積の合計Q(m2)との比が、下記式(VII)を満足する。
50 ≦ T/Q ≦ 3000 式(VII)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原料ロスを低減するポリカーボネートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポリカーボネートの製造装置を構成する不活性ガス吸収装置の一例の概略構成図を示す。
図2】ポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置の一例の概略構成図を示す。
図3】不活性ガス吸収装置及びガイド接触流下式重合装置の一例の上部の概略構成図を示す。
図4】不活性ガス吸収装置及びガイド接触流下式重合装置の一例の上部の拡大概略構成図を示す。
図5】本実施形態のポリカーボネートの製造装置の一例の概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
〔ポリカーボネートの製造方法〕
本実施形態に係るポリカーボネートの製造方法は、
ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒とを含む重合原料を重合器において減圧条件下でエステル交換反応させて溶融プレポリマーを得る予備重合工程と、
前記溶融プレポリマーを、重合器において減圧条件下で更にエステル交換反応させポリカーボネートを得る縮合重合工程と、
含み、
前記予備重合工程における、前記エステル交換反応を、下記式(1)を満足する条件下で行なう。
1100 ≦ [―0.043×A+0.028×B+0.79]×C×D ≦ 22000 (1)
(式(1)中、
Aは、ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)であり、但し、2種以上のジヒドロキシ化合物を用いる場合は、各ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)を加重平均した値をAとし、
Bは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの1時間当たりの供給量(ton/hour)であり、
Cは、触媒中の金属元素の質量に換算した値から算出した、ジアリールカーボネートに対する触媒濃度(質量ppb)であり、且つ、
Dは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを1時間重合させた後の溶融プレポリマーの粘度(mPa・s)である。)
以上、本実施形態によれば、原料ロスを低減するポリカーボネートの製造方法を提供することができる。
【0011】
本実施形態のポリカーボネートの製造方法に用いるポリカーボネートの製造装置の具体的な構成の一例について、以下に図を参照して説明する。
【0012】
図5に、本実施形態に用いるポリカーボネートの製造装置の一例の概略構成図を示す。
このポリカーボネートの製造装置においては、重合原料及び触媒を混合槽31に投入し混合し、次に移送ポンプ32により溶解混合物貯槽33A、33Bに移送し、ここからさらに移送ポンプ34A、34Bにより、第1重合器35で予備重合工程を行う。
さらに供給ポンプ36を介して第2重合器37で予備重合工程を行い、ポリカーボネートのプレポリマーを得る。
【0013】
ポリカーボネートのプレポリマーを、供給ポンプ38を介して第1不活性ガス吸収装置39に移送し、不活性ガスの溶解度を圧力調整弁41により調節して第1ガイド接触流下式重合装置42に移送して重合を行う。ここで、低沸点物質である低分子量成分としてフェノールがベントから排出される。
【0014】
次に、供給ポンプ43を介して第2不活性ガス吸収装置44に移送し、さらに、ここから、供給ポンプ46A、46Bにより、移送される。不活性ガスの溶解度を圧力調整弁47A、47Bにより調節して、連結された第2ガイド接触流下式重合装置48A、48Bに移送して縮合重合工程を行う。ここで、フェノールがベントから排出される。
さらに、供給ポンプ49A、49Bにより移送し、後段の機器50A、50Bで添加剤を添加し、目的とするポリカーボネートを得る。
なお、不活性ガスの溶解度を調節する圧力調整弁41、47A、47Bは、その形態については限定されるものではなく、所定の配管に設けたバルブであってもよく、その他所定の圧力を制御可能な機器であってもよい。
【0015】
<予備重合工程>
予備重合工程では、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとアルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒とを含む重合原料を重合器において減圧条件下でエステル交換反応させて溶融プレポリマーを得る。
予備重合工程における重合器は、好ましくは攪拌式重合器である。
【0016】
本実施形態に係るポリカーボネートの製造方法では、予備重合工程におけるエステル交換反応を、下記式(1)を満足する条件下で行なう。式(1)を満足する条件とすることで、原料ロスを低減することができる。
1100 ≦ [―0.043×A+0.028×B+0.79]×C×D ≦ 22000 (1)
【0017】
例えば、本明細書の実施例で示すとおり、予備重合工程を2回行う場合、先に行う予備重合工程が式(1)を満足することで、本実施形態に示す原料ロスを低減するポリカーボネートの製造方法とすることができる。
【0018】
式(1)中、
Aは、ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)であり、但し、2種以上のジヒドロキシ化合物を用いる場合は、各ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)を加重平均した値をAとする。
酸解離定数(pKa)は、第一解離定数であり、文献値を用いてもよい。また酸解離定数(pKa)の測定方法は、一般的に用いられているものを何れも用いることができ、例えば、中和滴定法、電気伝導度法、吸光光度法で測定してもよい。
Aについて、下記式(2)を満足することが好ましい。
8 ≦ A ≦ 15 (2)
【0019】
Bは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの1時間当たりの供給量(ton/hour)である。
Bについて、下記式(3)を満足することが好ましい。
0.01 ≦ B ≦ 35 (3)
【0020】
Cは、触媒中の金属元素の質量に換算した値から算出した、ジアリールカーボネートに対する触媒濃度(質量ppb)である。より具体的には、以下の式から算出することができる。
触媒濃度(質量ppb)=〔触媒中の金属元素の質量〕/〔ジアリールカーボネート質量〕
Cについて、下記式(4)を満足することが好ましい。
50 ≦ C ≦ 600 (4)
【0021】
Dは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを1時間重合させた後の溶融プレポリマーの粘度(mPa・s)である。「1時間重合させた後の溶融プレポリマー」とは、重合原料を予備重合工程により1時間重合させた後の溶融プレポリマー粘度を意味する。つまり、Dは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの縮重合のしやすさ、触媒の量、予備重合時に生成するヒドロキシアリール化合物の排出量、反応圧力、攪拌翼回転数、温度等に依存する。これらの条件を調整することで、Dを制御する。
溶融プレポリマーの粘度測定方法は、回転式粘度計により測定する。また、粘度測定の温度は、予備重合工程の温度を適用する。
【0022】
Dについて、下記式(5)を満足することが好ましい。
10 ≦ D ≦ 200 (5)
【0023】
予備重合工程における反応圧力は、好ましくは0.1kPaA~20kPaAであり、より好ましくは1.0kPaA~17.5kPaAであり、さらに好ましくは2.0kPaA~15.0kPaAである。
【0024】
予備重合工程における反応温度は、好ましくは100℃~290℃であり、より好ましくは150℃~280℃であり、さらに好ましくは200℃~270℃である。
【0025】
予備重合工程における撹拌翼回転数は、好ましくは40rpm~80rpmであり、より好ましくは45rpm~75rpmであり、さらに好ましくは50rpm~70rpmである。
【0026】
〔ポリカーボネートの製造方法に用いる原料〕
本実施形態のポリカーボネートの連続製造方法において、原料として、ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネート化合物、又はこれらのプレポリマーを用いる。
以下、本実施形態のポリカーボネートの連続製造方法に用いる原料である、ジヒドロキシ化合物、及びジアリールカーボネート化合物について説明する。
【0027】
(ジヒドロキシ化合物)
本実施形態のポリカーボネートの連続製造方法においては、芳香族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、複素脂環式ジヒドロキシ化合物、及び脂肪族ジヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる酸解離定数(pKa)が8~15のジヒドロキシ化合物を1種以上含んでいることが好ましい。
【0028】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、ビスフェノール化合物、下記式(A)で表される化合物、及び下記式(B)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。ビスフェノール化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール-A)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)―1―フェニルエタン(ビスフェノール-AP)、2,2-ビス(4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノール-AF)、2,2-ビス(4―ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノール-B)、ビス(4―ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン(ビスフェノール-BP)、2,2-ビス(3―メチル―4―ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール-C)、1,1-ビス(4―ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノール-E)、ビス(4―ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール-F)、5,5’-(1―メチルエチリデン)―ビス[1,1’―(ビスフェニル)―2―オール]プロパン(ビスフェノール-PH)、1,1-ビス(4―ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノール-Z)から選ばれる1種以上であることが好ましく、ビスフェノール-Aがより好ましい。
【0029】
【化1】
(式中、R1~R5は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
式(A)で表される化合物としては、クルクミンが挙げられる。
【0030】
【化2】
(式中、R11~R12は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
式(B)で表される化合物としては、フラン-2,5-ビスメタノールが挙げられる。
【0031】
脂環式ジヒドロキシ化合物は、下記式(C)で表される化合物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールから選ばれる1種以上であることが好ましい。1,4-シクロヘキサンジメタノールのように、シス体とトランス体の異性体がある化合物は、シス体とトランス体の混合物でよく、混合比率(質量比)に特に制限はないが、入手し易い混合比の物でよい。
【化3】
(式中、R13~R16は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
式(C)で表される化合物としては、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールが挙げられる。
【0032】
複素脂環式ジヒドロキシ化合物は、下記式(D)で表される化合物、下記式(E)で表される化合物、及び下記式(F)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0033】
【化4】
(式中、R7~R8は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
式(D)で表される化合物としては、1,4-ジオキサン-2,5-ジオールが挙げられる。
【0034】
【化5】
(式中、R9~R10は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
式(E)で表される化合物としては、1,4-アンヒドロエリトリトールが挙げられる。
【0035】
【化6】
(式中、R1~R4は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。)
式(F)で表される化合物としては、イソソルビドが挙げられる。
【0036】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、下記式(G)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【化7】
(式中、R5は炭素数2~12のアルキレン基を表す。)
式(G)で表される化合物としては、特にエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0037】
本実施形態において使用される、ジヒドロキシ化合物は、1種単独でも2種類以上でもよい。分岐構造を導入するための3価以上のポリオール化合物を併用してもよい。
【0038】
(ジアリールカーボネート化合物)
本実施形態において使用される、ジアリールカーボネート化合物としては、下記式(H)で表されるジアリールカーボネート化合物であることが好ましい。
【化8】
(式中、Ar3、Ar4はそれぞれ独立して炭素数5から20の1価の芳香族基を表す。)
Ar3及びAr4は、1価の炭素環式又は複素環式芳香族基であることが好ましい。このAr3、Ar4において、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであってもよい。Ar3、Ar4は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。1価の芳香族基Ar3及びAr4の代表例としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ピリジル基を挙げることができる。これらは、上述の1種以上の置換基で置換されたものでもよい。好ましいAr3及びAr4としては、特に限定されないが、それぞれ例えば、下記式に示されるものなどが挙げられる。
【化9】
ジアリールカーボネート化合物の代表的な例としては、特に限定されないが、例えば、下記式(H-1)で表される置換又は非置換のジフェニルカーボネート類が挙げられる。
【化10】
(式中、R9及びR10は、各々独立に水素原子、炭素数1~10を有するアルキル基、炭素数1~10を有するアルコキシ基、環構成炭素数5~10のシクロアルキル基又はフェニル基を示し、p及びqは各々独立に1~5の整数であり、pが2以上の場合には、各R9はそれぞれ異なるものであってもよいし、qが2以上の場合には、各R10は、それぞれ異なるものであってもよい。
【0039】
このジアリールカーボネート化合物の中でも、非置換のジフェニルカーボネートや、ジトリルカーボネート、ジ-t-ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーボネートが好ましい。特にもっとも簡単な構造のジアリールカーボネートであるジフェニルカーボネートが好適である。これらのジアリールカーボネート化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、ジアリールカーボネート化合物は、原料に二酸化炭素を使用して得られるジアリールカーボネート化合物を含むことが好ましい。
【0041】
本実施形態の製造方法で原料となるジアリールカーボネート化合物として特に好ましいのは、エチレンオキシドとCO2を反応させて製造・精製されたエチレンカーボネートを、メタノールと反応させて製造及び精製されたジメチルカーボネートと精製フェノールとを反応蒸留法によって製造され、精製されたジフェニルカーボネートであり、アルカリ金属/アルカリ土類金属及び塩素を含まない超高純度品である。これらの製造方法についは、特に限定されないが、例えば国際公開第2004/105696号公報、国際公開第2007/34669号公報、国際公開第2007/60893号公報、国際公開第2007/60984号公報、国際公開第2007/69462号公報、国際公開第2007/69513号公報、国際公開第2007/69514号公報、国際公開第2007/72728号公報、国際公開第2005/123638号公報、国際公開第2007/74692号公報、国際公開第2007/88782号公報、国際公開第2006/1256号公報、国際公開第2006/1257号公報、国際公開第2006/6566号公報、国際公開第2006/6568号公報、国際公開第2006/6585号公報、国際公開第2006/6588号公報、国際公開第2006/41075号公報、国際公開第2006/43491号公報、国際公開第2007/69529号公報、国際公開第2007/69531号公報、国際公開第2007/72705号公報などを参照することができる。さらに、本実施形態の製造方法で原料となるジアリールカーボネート化合物として、アルコールとCO2を反応させて製造及び精製されたジアルキルカーボネートと精製フェノールとを反応させて製造され、精製されたジフェニルカーボネートも好適である。これらの製造方法についは、特に限定されないが、例えば国際公開第2005/783号公報、国際公開第2007/114130号公報、国際公開第2003/55840号公報、国際公開第2011/105442号公報、国際公開第2006/67982号公報などを参照することができる。
【0042】
(溶融プレポリマー)
本実施形態のポリカーボネートの製造方法において使用される原料の溶融プレポリマーは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとから製造される。その使用割合(仕込み比率)は、用いられるジヒロドキシ化合物及びジアリールカーボネート化合物の種類や、重合温度その他の重合条件によって異なるが、ジアリールカーボネート化合物はジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常0.9~2.5モル、好ましくは0.95~2.0モル、より好ましくは0.98~1.5モルの割合で用いられる。
【0043】
前記ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネート化合物とから製造された溶融状態のプレポリマー(溶融プレポリマー)とは、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネート化合物から製造される、目的とする重合度を有するポリカーボネートより重合度の低い重合途中の溶融物を意味しており、もちろんオリゴマーであってもよい。
【0044】
本実施形態のポリカーボネートの製造方法で製造できるポリカーボネートの溶融プレポリマーの平均重合度は、いくらであってもよいし、またその化学構造によっても異なるが、通常約2~2,000である。
重合原料として用いられるこのような溶融プレポリマーは、公知のいかなる方法によって得られたものでよい。
【0045】
本実施形態において、ジヒドロキシ化合物の合計とジアリールカーボネート化合物とのモル比、すなわち仕込みモル比は、目的とするポリカーボネートの数平均分子量MnやOH%、ジヒドロキシ化合物の合計及びジアリールカーボネートの種類、重合温度、並びにその他の重合条件によって決定される。より良好な重合反応を実現し、且つ着色や耐熱性の低下を更に有効に防止する観点から、所定の範囲内の仕込み比は、ジヒドロキシ化合物の合計の仕込み量に対するジアリールカーボネート化合物の仕込み量として、モル基準で、0.90~1.15であると好ましく、より好ましくは0.92~1.13、更に好ましくは0.94~1.10である。
【0046】
(触媒)
本実施形態におけるポリカーボネートの製造方法は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒の存在下で行われる。
本実施形態で用いる触媒としては、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム等のホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化合物類;リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO-Ar-OLi、NaO-Ar-ONa(Arはアリール基)等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の有機酸塩類;等の触媒が挙げられる。触媒は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
それらの中で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物類が好ましい。
【0047】
また、触媒の使用量は、実用上良好な重合反応を実現し、且つ着色や耐熱性の低下を防止する観点から、原料のジアリールカーボネート化合物に対して好ましくは30~1,000質量ppbであり、より好ましくは40~800質量ppb、さらに好ましくは50~600質量ppbである。
【0048】
ヒドロキシ基とアリールカーボネート基との比率に特に制限はないが、好ましくは95:5~5:95の範囲であり、より好ましくは90:10~10:90の範囲であり、さらに好ましくは80:20~20:80の範囲である。特に好ましいのは、末端基中のフェニルカーボネート基の占める割合が85モル%以上のポリカーボネートである。
【0049】
<縮合重合工程>
縮合重合工程では、溶融プレポリマーを、重合器において減圧条件下で更にエステル交換反応させポリカーボネートを得る。
溶融プレポリマーを原料として用い、該原料を更に重合する際に用いられる重合器としては、一般的に用いられているものを何れも用いることができ、特に限定されるものではない。
例えば、撹拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型撹拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付多孔板型反応器等が挙げられ、
原料をガイドに沿わせて自由落下させながら重合するガイド接触流下式重合装置を使用することが好ましい。上述した原料をガイドの外部表面に沿って流下させて溶融重縮合法により連続的にポリカーボネートを製造することで、得られるポリカーボネートは、メルトフローレートが低い、ヘイズが抑制される、色相に優れる等の効果を有する。
本実施形態において用いられる「ガイド」とは、溶融状態の原料が沿って移動する物品を意味する。ガイドとしては、特に限定されないが、例えば、パイプ、ロッド等が挙げられる。
【0050】
本実施形態のポリカーボネートの製造方法において、ガイド接触流下式重合装置に供給する前のポリカーボネートの溶融プレポリマーに、不活性ガスを吸収させるための不活性ガス吸収装置が設置されていても良い。また、本実施形態において、ガイド接触流下式重合装置を複数基連結して用いる場合、それぞれの重合装置に対し、該重合装置に供給する前のポリカーボネートの溶融プレポリマーに、不活性ガスを吸収させるための不活性ガス吸収装置が設置されていても良い。不活性ガス吸収設備としては、特に限定されないが、例えば、内部にワイヤー及び/又は金網が設けられている竪型筒槽(例えば、竪型円筒槽)並びに撹拌槽が挙げられる。
【0051】
これらの製造方法については、特に限定されないが、例えば国際公開第1997/22650号公報、国際公開第1999/36457号公報、国際公開第2005/121211号公報、国際公開第2005/123805号公報、国際公開第2006/64656号公報、国際公開第2006/64664号公報、国際公開第2006/64667号公報、国際公開第2006/67993号公報、国際公開第2006/67994号公報を参照することができる。
【0052】
本実施形態に用いるガイド接触流下式重合装置では、原料をガイドの外部表面に沿って流下させることにより、例えば、原料のプレポリマーが自重で流下する間にプレポリマーの内部での自然攪拌を伴う効率的な表面更新が行われているので、比較的低温で重合反応を進行させることができる。したがって、好ましい反応温度は、100~280℃であり、さらに好ましいのは、150~270℃である。このように本実施形態の製造方法は、原料をガイドの外部表面に沿って流下させることにより、従来の機械的攪拌式重合器の場合よりも低温で十分に重合を進めることができ、着色や物性低下のない高品質のポリカーボネートを製造することができる製造方法である。
【0053】
本実施形態に用いるガイド接触流下式重合装置や配管の材質に特に制限はなく、例えば、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の金属や、耐熱性の高いポリマー材料等の中から選ぶことができる。また、これらの材質の表面は、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄、フェノール洗浄等必要に応じて種々の処理がなされてもよい。好ましいのは、ステンレススチールやニッケル、グラスライニング等であり、特に好ましいのはステンレススチールである。なお、溶融プレポリマー、又はポリカーボネートの排出ポンプは通常、定量的に高粘度物質を排出できるギアポンプ類が用いられるのが好ましいが、これらのギアの材質はステンレススチールであってもよいし、他の特殊な金属であってもよい。
【0054】
縮合重合工程においては、低沸点物質の蒸発を、ガイド接触流下式重合装置を用いて行われることが好ましい。また、当該ガイド接触流下式重合装置は、後述する<条件(1)>~<条件(9)>を満たすことが好ましい。
【0055】
図1に、第1不活性ガス吸収装置39、第2不活性ガス吸収装置44の一例の概略構成図を示し、図2にガイド接触流下式重合装置42、48A、48Bの一例の概略構成図を示す。
なお、図1に示す不活性ガス吸収装置と図2に示すガイド接触流下式装置とは、それぞれ内部空間において不活性ガスの吸収を行う不活性ガス吸収ゾーン、低沸点物質の蒸発を行う蒸発ゾーンを有している点で異なるが、基本的な装置構造は共通する。
図3及び図4は、不活性ガス吸収装置、及びガイド接触式流下重合装置の一例の上部の概略図を示す。
【0056】
本実施形態に用いるポリカーボネートの製造装置は、前記ガイド接触流下式重合装置が、下記の<条件(1)>~<条件(9)>を満たすことが好ましい。本実施形態に係るポリカーボネートの製造方法では、上述の予備重合工程で得られる溶融プレポリマーが、下記液体として供給される。
【0057】
<条件(1)>
液体受給口1、多孔板2を通して蒸発ゾーン5のガイド4に液体を供給するための液体供給ゾーン3、前記多孔板2と側面ケーシング10と底部ケーシング11とに囲まれた空間に前記多孔板2から下方に延びる複数のガイド4が設けられた蒸発ゾーン5、前記蒸発ゾーン5に設けられた真空ベント口6、及び、底部ケーシングの最下部に設けられた液体排出口7を有する。
【0058】
<条件(2)>
前記液体供給ゾーン3において、前記液体受給口1から多孔板2に供給される液体を、多孔板2の周辺部から中央部の方向に流す機能を有する流路制御部品20が前記液体供給ゾーン3に設置されている。
【0059】
<条件(3)>
前記蒸発ゾーン5の側面ケーシング10の水平面(図2中、a-a’における切断面)における内部断面積A(m2)が、下記式(I)を満足する。
0.7 ≦ A ≦ 300 式(I)
【0060】
<条件(4)>
前記内部断面積A(m2)と、前記液体排出口7の水平面(図2中、b-b‘面)における内部断面積B(m2)との比が、式(II)を満足する。
20 ≦ A/B ≦ 1000 式(II)
前記式(II)を満たすことにより、蒸発濃縮された液体やポリマー、又は製造されたポリマーの品質を低下させることなく溶融粘度の高められたこれらの溶融物を排出することができる傾向にある。
【0061】
<条件(5)>
前記蒸発ゾーン5の底部を構成する底部ケーシング11が、上部の側面ケーシング10に対してその内部において、角度C度で接続されており、前記角度C度が式(III)を満足することが好ましい。
110 ≦ C ≦ 165 式(III)
設備費を低下させるためには、Cはできるだけ90度に近い方がよいが、ガイド4の下端から落下してくる濃縮された液体やポリマーの品質を低下させることなく溶融粘度の高められたこれらの溶融物を液体排出口7に移動させるためには、Cは式(III)を満足することが好ましい。
【0062】
<条件(6)>
前記ガイド4の長さ h(cm)が、式(IV)を満足する。
150 ≦ h ≦ 5000 式(IV)
ガイド4の長さhが150cm以上であることにより、実用上十分な速度及び品質で濃縮や重合を進めることができる。hが5000cm以下であることにより、ガイド4の上部と下部での液体の粘度の違いが大きくなりすぎず、濃縮度のバラツキや重合度のバラツキの発生を防止できる傾向にある。
【0063】
<条件(7)>
複数の前記ガイド4の外部総表面積S(m2)が下記式(V)を満足する。
2 ≦ S ≦ 50000 式(V)
S(m2)が2以上であることにより、1時間あたり1トン以上の蒸発処理された液体量や、製造ポリマーの生産量を達成できる傾向にある。
また、S(m2)が50000以下であることにより、設備費を低下させつつこの生産量を達成し、且つ物性にバラツキをなくすことができる傾向にある。
【0064】
<条件(8)>
前記多孔板1m2 あたりの平均孔数N(個/m2)が、式(VI)を満足する。
50 ≦ N ≦ 3000 式(VI)
多孔板の平均孔数N(個/m2)とは、孔の総数を、多孔板2の上部面の面積(孔の上部面積を含む)T(m2)で割った数値である。
多孔板2の孔は、多孔板2にほぼ均一に配置されていることが好ましいが、多孔板2の周縁部と蒸発ゾーン5の内壁面との距離K(cm)は、通常隣接する孔間の距離よりも長くすることが好ましいので、周縁部での単位面積あたりの孔数は、中央部のそれよりも少なくすることが好ましい。本実施形態においては、かかる意味において、平均孔数Nを使う。より好ましいNの範囲は、70≦N≦2000であり、さらに好ましい範囲は、100≦N≦1000である。
【0065】
<条件(9)>
前記多孔板の孔の上部面積を含む前記多孔板の上部面積T(m2)と、前記孔の有効断面積の合計Q(m2)との比が、下記式(VII)を満足する。
50 ≦ T/Q ≦ 3000 式(VII)
前記T/Qは、より好ましくは100~2,500であり、さらに好ましくは250~1,500である。
なお、多孔板の孔の「有効断面積」とは、液体が通過する孔の断面で最も狭い部分の面積を表す。ガイド4がこの孔を貫通している場合には、孔の断面積からガイド4の断面積を差し引いた面積である。
Q(m2)は、それら孔の有効断面積の合計を表す。
【0066】
前記式(VI)及び(VII)を満足すると、大量の液体、特に粘度の高い液体の蒸発処理を長期間連続的に、安定的に行うことができる傾向にある。
【0067】
上述した構成を満足するポリカーボネートの製造装置を用いることにより、従来公知の蒸発装置の課題を解決するだけでなく、着色がなく高品質且つ高性能の濃縮液体やポリマーが得られる傾向にある。また、上述した製造装置を用いることによって、蒸発処理された液体を、1時間あたり1トン以上の量で、しかも、数千時間以上、例えば5,000時間以上の長期間、安定的に製造することができる傾向にある。
【0068】
上述した構成を満足するポリカーボネートの製造装置が、このような優れた効果を有することは、上述の種々の理由に加えて、それらの条件が組み合わさった時にもたらされる複合効果が現れたためであると推定される。
例えば前記式(IV)及び(V)を満足する高表面積のガイドは、比較的低温度で供給される大量の液体やプレポリマーやポリマーの効率的な内部攪拌と表面更新に非常に有効であって、低沸点物質の蒸発を効率的に行うことができ、高品質の濃縮液体やポリマーを1時間あたり1トン以上の大量に得ることに役立つとともに、前記式(III)を満足する角度Cは、ガイド4から落下してくる大量の高品質の濃縮液体やポリマーが液体排出口7から排出されるまでの時間を短縮でき熱履歴を減らせるためと推定される。
【0069】
なお、工業的規模でのガイド接触流下式重合装置の性能は、大規模な製造設備を用いる長時間運転によって初めて確立できるものであるが、その際の製造設備費は考慮すべき重要な因子である。
上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置は、従来の蒸発装置や重合器に比べ、性能に対する設備費を低くすることができる。
【0070】
上述のガイド接触流下式重合装置における特定の条件や寸法・角度等の好適な範囲は、上記のとおりであるが、さらに好ましい範囲は次のとおりである。
式(I)に示した、蒸発ゾーン5の側面ケーシング10の水平面における内部断面積A(m2)のより好ましい範囲は、 0.8 ≦ A ≦ 250 であり、さらに好ましくは、 1 ≦ A ≦ 200 である。
【0071】
また、式(II)に示した、内部断面積A(m2)と、液体排出口7の水平面における内部断面積B(m2)との比のより好ましい範囲は、 25 ≦ A/B ≦ 900 であり、さらに好ましくは、 30 ≦ A/B ≦ 800 である。
【0072】
また、式(III)に示した、蒸発ゾーン5の底部を構成する底部ケーシング11が、上部の側面ケーシング10に対してその内部においてなす角度C度のより好ましい範囲は、 120 ≦ C ≦ 165 であり、さらに好ましくは、 135 ≦ C ≦ 165 である。なお、複数のガイド接触流下式重合装置を用いて順に濃縮度あるいは重合度を上げていく場合には、それぞれに対応する角度を、C1、C2、C3、・・・とすれば、 C1≦ C2 ≦ C3 ≦ ・・・であることが好ましい。
【0073】
また、式(IV)に示した、ガイド4の必要な長さ h(cm)は、処理すべき液体の量や粘度や温度、低沸点物質の量や、沸点、蒸発ゾーンの圧力や温度、必要とする濃縮度あるいは重合度等の要因の違いによって異なるが、より好ましい範囲は、 200 ≦ h ≦ 3000 であり、さらに好ましくは、 400 < h ≦ 2500 である。
【0074】
また、式(V)に示した、必要なガイド全体の外部総表面積S(m2)も、上記と同様の要因の違いによって異なるが、そのより好ましい範囲は、 10 ≦ S ≦ 40000 であり、さらに好ましくは、 15≦ S ≦ 30000 である。
【0075】
本明細書において、ガイド全体の外部総表面積とは、液体が接触して流下するガイドの表面積全体を意味しており、例えばパイプなどのガイドの場合、外側の表面積を意味しており、液体を流下させないパイプ内側の面の表面積は含めない。
【0076】
図1図3に示すように、液体受給口1は、液体供給ゾーン3の上部に設けることが好ましい。
液体受給口1は一箇所でも複数箇所でもよいが、液体が液体供給ゾーン3でできるだけ均一に多孔板2へと供給されるように配置することが好ましく、一箇所の場合は液体供給ゾーン3の上部の中央部に設けることが好ましい。
液体供給ゾーン3において、液体受給口1から多孔板2に供給される液体の流れが主として多孔板2の周辺部から中央部の方向に流す機能を有する流路制御部品20が、前記液体供給ゾーン3に設置されていることが好ましい。前記流路制御部品20は、液体の流れを多孔板2の周辺部から中央部に向かわせることによって、多孔板2の孔部(例えば21)と液体供給ゾーンの内部側壁面22との間のスペースに液体が長期滞留することを防ぐ効果がある。主として多孔板2の周辺部から中央部に向かって流された液体は、その間に存在する多孔板の孔からガイド4に供給されるようになる。
【0077】
前記流路制御部品20の形状は、その効果を発揮できればどのようなものであってもよいが、その横断面の外形は、多孔板2の横断面の外形と相似形であることが好ましい。ここで、流路制御部品20の横断面とは、流路制御部品20を横方向の面で切断した場合最大の面積を示す場所のことである。
前記流路制御部品20と液体供給ゾーン3の内部側壁面22との間の間隔は、処理すべき液体の量、粘度等によって好ましい範囲は異なるが、上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置や、不活性ガス吸収装置において、取り扱う液体の粘度が比較的高い場合、通常1cm~50cmの範囲が好ましく、より好ましくは2cm~30cmであり、さらに好ましくは3cm~20cmである。
【0078】
図3及び図4に示すように、液体供給ゾーン3の上部内側壁面23と流路制御部品20との間には所定の間隔があり、この間隔はどのようなものであってもよいが、液体供給ゾーン3内における液体の滞留時間をできるだけ少なくするようにすることが好ましい。この意味でこの間隔は、好ましくは1cm~200cmであり、より好ましくは2cm~170cmであり、さらに好ましくは3cm~150cmである。
液体供給ゾーン3の上部内側壁面23と流路制御部品20との間の間隔は、液体受給口1から液体供給ゾーン3の内部側壁面22に到るまでほぼ同じ間隔となるような流路制御部品20とすることもできるし、その間隔を徐々に狭くしていく、あるいは、逆に徐々に広げていくような流路制御部品20とすることもできる。
また、流路制御部品20と多孔板2との間隔は通常1cm~50cmであり、好ましくは2cm~30cmであり、より好ましくは3cm~20cmである。
多孔板2と流路制御部品20との間の間隔は、液体供給ゾーン3の内部側壁面22から多孔板の中央部に到るまでほぼ同じ間隔となるようにしてもよく、その間隔を徐々に狭くしていく、あるいは逆に徐々に広げていくようにしてもよい。好ましくは、ほぼ同じ間隔か、あるいは徐々に狭くしていくような流路制御部品20とする。
【0079】
前記流路制御部品20は、液体受給口1から供給された液が、多孔板2の孔に直接導かれることを邪魔しているため、ある種の邪魔板として機能する。なお、多孔板2の面積が広い場合は、供給された液の一部を多孔板2の周辺部を経由させずに多孔板2の中央部付近に短絡させることも好ましく、そのために、流路制御部品20の中央部付近、あるいはその他適当な部分に一箇所又はそれ以上の孔を設けることも好ましい形態である。
【0080】
液体供給ゾーン3において「デッドスペース」を作らせないためには、さらに液体供給ゾーンの内部側壁面22と多孔板2とのなす角度、すなわちE度が、下記式(VIII)を満足することが好ましい:
100 ≦ E < 180 式(VIII)
ここで、前記液体供給ゾーンの内部側壁面22が平面状の場合、その平面に垂直で、且つ多孔板2の上面に垂直な面での切断面における内部側壁面22と多孔板2とのなす角度がEである。
また、前記内部側壁面22が凹面の曲面の場合、その凹面に垂直で、且つ多孔板2の上面に垂直な面での切断面においてなす曲線が立ち上がり始める点における接線と多孔板2の上面とのなす角度がEである。
より好ましいEの範囲は、120≦E<180であり、さらに好ましくは、145≦E<180である。
また、液体供給ゾーン3の上部内壁面23と内部側壁面22との接合部付近も「デッドスペース」とならないように工夫することも好ましく、これらの両面がなす角度を90°より大きくするか、90°又はそれに近い場合は、接合部付近を凹面状にして液が滞留しないようにすることが好ましい。
【0081】
上述のポリカーボネートの製造装置においては、前記蒸発ゾーン5の側面ケーシング10の内壁面に最も近いガイド4と前記内壁面との距離K(cm)が、下記式(IX)を満足することが好ましい。
5 ≦ K ≦ 50 式(IX)
前記蒸発ゾーン5の側面ケーシング10の内壁面に液体が付着すると、内壁面で蒸発濃縮が起こり、濃縮された液体が内壁面を流下していくことになる。しかしながら、この内壁は、通常蒸発ゾーン5の保温及び/又は加熱のために外壁面はジャケット等で水蒸気や熱媒加熱されているか、あるいは電熱ヒーター等で加熱されているので、内壁面に付着した液体は、ガイド4を流下する液体よりも高度に濃縮され、通常粘度が高くなる。このような粘度の高くなった液体は壁面を流下する時間(滞留時間)が長くなり、さらに高粘度化する。
しかも通常、外壁面から絶えず加熱されているので熱変性も起こりやすくなる。特に重合器やポリマーの精製及び/又は回収装置として用いる場合のように、プレポリマーやポリマーなどの粘度の高い液体を扱う場合には、この傾向は非常に高くなる。このような場合、蒸発ゾーン5の内壁面に付着したポリマー類は、着色や、高分子量化、ゲル化が起こりやすくなり、このような変性物が混入すると製品としてのポリマーに好ましくない。従って、内壁面に最も近いガイド4と内壁面との距離K(cm)は、長いほうが好ましいが、工業的装置の場合、製造コストの考慮やできるだけ小さい装置で高い蒸発能力を得ようとすれば短い方が好ましい。
【0082】
上述のポリカーボネートの製造装置を用いることにより、上述したような製品への悪影響を抑制でき、しかもできるだけ短いK(cm)の範囲(前記式(IX))とすることができるので、小さい装置で高い蒸発能力を得ることができる。
このような観点から、より好ましいK(cm)の範囲は、10≦K≦40であり、さらにより好ましい範囲は、12≦K≦30である。
【0083】
上述のポリカーボネートの製造装置において、ガイド接触流下式重合装置の蒸発ゾーン5の側面ケーシング10の水平面における内部断面の形状は多角形、楕円形、円形等、どのような形状であってもよい。
蒸発ゾーン5は、通常減圧下で操作されるため、それに耐えるものであればどのようなものでもよいが、好ましくは円形、又はそれに近い形状である。従って、蒸発ゾーン5の側面ケーシング10は、円筒形であることが好ましい。この場合、円筒形の側面ケーシング10の下部にコーン形の底部ケーシングが設置され、前記底部ケーシングの最下部に円筒形の液体排出口7が設けられることが好ましい。
【0084】
上述のポリカーボネートの製造装置のガイド接触流下式重合装置において、蒸発ゾーン5の側面及び底部ケーシングが、それぞれ、前記の円筒形及びコーン部からなっており、濃縮された液体、又はポリマーの液体排出口7が円筒形である場合、前記側面ケーシングの円筒形部の内径をD(cm)、長さをL(cm)とし、液体排出口7の内径をd(cm)としたとき、D、L、dは、下記式(X)、(XI)、(XII)、及び(XIII)を満足していることが好ましい。
100 ≦ D ≦ 1800 式(X)
5 ≦ D/d ≦ 50 式(XI)
0.5 ≦ L/D ≦ 30 式(XII)
h-20 ≦ L ≦ h+300 式(XIII)
なお、hは、前記<条件(6)>に示したガイド4の長さである。
【0085】
前記ガイド接触流下式重合装置において、D(cm)のより好ましい範囲は、 150 ≦ D ≦ 1500 であり、さらに好ましくは、 200 ≦ D ≦ 1200 である。
また、D/d のより好ましい範囲は、 6 ≦ D/d ≦ 45 であり、さらに好ましくは、 7 ≦ D/d ≦ 40 である。
また、L/Dのより好ましい範囲は、0.6 ≦ L/D ≦ 25 であり、さらに好ましくは、 0.7 ≦ L/D ≦ 20 である。
また、L(cm)のより好ましい範囲は、 h - 10 ≦ L ≦ h +250 であり、さらに好ましくは、 h ≦ L ≦ h + 200 である。
なお、D、d、Lについては、ワイヤーに付着できるプレポリマーの量と重合器の大きさ(D)とのバランスと、重合器下部の抜き出し口dの大きさのバランスが、上記範囲の中に入ることは好ましい。
プレポリマーの供給量に対して、ワイヤーの数=重合器サイズ(D)の大きさが決まり、落下したポリマー(重合が進んでいるため、供給されたプレポリマーより粘度が高くなっている)を抜き出すためには、粘度に対応した配管径(d)が必要となる場合がある。
一方、ガイドには上部から液体や溶融物が連続的に供給されているので、上述した式の関係を満たすことにより、ほぼ同じ粘度をもつ液体やほぼ同じ溶融粘度をもつ重合度のより高められた溶融物が、ガイドの下端から底部ケーシングに連続的に落下して行くことになる。すなわち底部ケーシングの下部には、ガイドを流下しながら生成したほぼ同じ粘度の液体やほぼ同じ重合度のポリマーが溜まってくることになり、蒸発度のバラツキのない濃縮液体や分子量のバラツキのないポリマーが連続的に製造される傾向にある。このことは上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置の持つ他の優れた特徴の1つである。
【0086】
底部ケーシング11の下部に溜まった濃縮液体やポリマーは、液体排出口7を経て、排出ポンプ8によって連続的に抜き出され、ポリマーの場合は、通常押出し機等を経て連続的にペレット化される。この場合、押出し機で添加剤等を添加することも可能である。
【0087】
また、上述のポリカーボネートの製造装置においては、液体受給口1(液体受給口1と液体供給ゾーン3の上部内壁面23との接合部)から多孔板2の上面までの、液体供給ゾーン3において液体が存在することのできる空間容積V(m3)と、孔の上部面積を含む多孔板2の上部面積T(m2)が、下記式(XIV)を満足することが好ましい。
0.02(m) ≦ V/T ≦ 0.5(m) 式(XIV)
前記空間容積V(m3)は、ガイド接触流下式重合装置を連続運転中は、液体供給ゾーン3における実質的な液体の容積であって、流路制御部品20の容積は除くものである。
液体供給ゾーン3における液体保持量はV(m3)であるが、この量は少ない方が液体供給ゾーン3における滞留時間が少なくて熱変性による悪影響がないが、蒸発処理された液体が1トン/hr以上で、且つ長期間安定的に所定の濃縮度又は重合度の濃縮液体及び/又はポリマーを得るためには、多孔板2の孔に液体を可能な限り均等に供給することが好ましい。そのためには、V/Tの値が、前記式(XIV)の範囲であることが好ましい。より好ましいV/Tの値の範囲は、0.05(m)≦V/T ≦0.4(m) であり、さらに好ましくは、0.1(m)≦V/T ≦0.3(m)である。
【0088】
さらに、上述のポリカーボネートの製造装置のガイド接触流下式重合装置においては、前記液体供給ゾーン3において液体が存在することができる空間容積V(m3)と、蒸発ゾーン5の空間容積Y(m3)が、下記式を満足することが好ましい。
10 ≦ Y/V ≦ 500
熱変性による物性の低下を招かずに、長時間安定的に効率よく、単位時間あたり大量の液体を蒸発処理するためには、Y/Vの値がこの範囲であることが好ましい。より好ましいY/Vの値の範囲は、15≦Y/V≦400 であり、さらに好ましくは、20≦Y/V≦300である。
なお、蒸発ゾーン5の空間容積Y(m3)とは、多孔板2の下面から液体排出口7までの空間容積であって、ガイドの占める容積を含むものである。
【0089】
上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置において、1つのガイド4が、外径r(cm)の円柱状又は内側に液体やガス状物質や溶融プレポリマーが入らないようにしたパイプ状のものである場合、外径r(cm)が、下記式(XV)を満足していることが好ましい。
0.1 ≦ r ≦ 1 式(XV)
【0090】
ガイド4は、液体や溶融プレポリマーを流下させながら、蒸発濃縮や重合反応を進めるものであるが、液体や溶融プレポリマーをある時間保持する機能も有している。この保持時間は、蒸発時間や重合反応時間に関連するものであり、蒸発や重合の進行とともにその液粘度や溶融粘度が上昇していくために、その保持時間及び保持量は増加していく傾向にある。ガイド4が液体や溶融プレポリマーを保持する量は、同じ溶融粘度であってもガイド4の外部表面積、すなわち、円柱状又はパイプ状の場合、その外径によって異なってくる。
また、ガイド接触流下式重合装置に設置されたガイド4は、ガイド4自身の質量に加え、保持している液体や溶融プレポリマーやポリマーの質量をも支えるだけの強度があることが好ましい。このような意味において、ガイド4の太さは重要であり、円柱状又はパイプ状の場合、前記式(XV)を満足していることが好ましい。
【0091】
前記ガイド4の外径r(cm)が0.1以上であると、強度的な面で長時間の安定運転が可能となる傾向にある。また、r(cm)が1以下であることにより、ガイド自身が非常に重くなることが防止でき、例えばそれらをガイド接触流下式重合装置に保持するために多孔板2の厚みを非常に厚くしなければならないなどの不都合を回避でき、液体や溶融プレポリマーやポリマーを保持する量が多くなりすぎる部分が増えてしまうことを防止でき、濃縮度のバラツキや分子量のバラツキが大きくなるなどの不都合を回避できる傾向にある。
このような意味で、より好ましいガイド4の外径r(cm)の範囲は、0.15≦r≦0.8 であり、さらに好ましくは、0.2≦r≦0.6である。
【0092】
ガイド4と多孔板2との位置関係、及びガイド4と多孔板2の孔との位置関係については、液体や原料溶融プレポリマーやポリマーがガイドに接触して流下していくことが可能である限り特に限定されない。
ガイド4と多孔板2は互いに接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
ガイド4を多孔板2の孔に対応させて設置することが好ましいが、これに限定されない。その理由は、多孔板2から落下する液体や原料溶融プレポリマーやポリマーが適当な位置でガイド4に接触するように設計されていてもよいためである。
【0093】
ガイド4を多孔板2の孔に対応させて設置する好ましい態様としては、例えば、(1)ガイドの上端を流路制御部品の下部面などに固定して、ガイドが多孔板の孔の中心部付近を貫通した状態でガイドを設けるやり方や、(2)ガイドの上端を多孔板の孔の上端の周縁部に固定して、ガイドが多孔板の孔を貫通した状態でガイドを設けるやり方や、(3)ガイドの上端を多孔板の下側面に固定するやり方等が挙げられる。
【0094】
多孔板2を通じて液体や原料溶融プレポリマーやポリマーをガイド4に沿わせて流下させる方法としては、特に限定されないが、例えば、液ヘッド又は自重で流下させる方法、又はポンプ等を使って加圧にすることにより、多孔板2から液体や原料溶融プレポリマーやポリマーを押し出す等の方法が挙げられる。好ましい方法は、供給ポンプを用いて加圧下、所定量の液体や原料溶融プレポリマーやポリマーを蒸発装置の液体供給ゾーンに供給し、多孔板2を経てガイド4に導かれた液体や原料溶融プレポリマーやポリマーが自重でガイドに沿って流下していく方法である。
【0095】
上述のポリカーボネートの製造装置において、このようなガイドの好ましい材質は、ステンレススチール、カーボンスチール、ハステロイ、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム及びその他の合金等の金属や、耐熱性の高いポリマー材料等の中から選ばれる。特に好ましい材料はステンレススチールである。
また、ガイドの表面は、メッキ、ライニング、不動態処理、酸洗浄、溶媒やフェノール等での洗浄等必要に応じて種々の処理がなされてもよい。
【0096】
上述のポリカーボネートの製造装置を用いることにより、速い蒸発速度や速い重合速度で、着色が無く、色相が良好で、機械的物性に優れた高品質・高性能の濃縮液体やポリマーを、工業的規模で長期間安定的(ポリマー製造の場合分子量のバラツキ等が無く)に製造できる理由は明らかではないが、以下のように推定している。
すなわち、上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置においては、原料の液体は液体受給口1から、液体供給ゾーン3及び多孔板2を経由して、ガイド4に導かれ、ガイド4に沿って流下しながら濃縮されるか、あるいは重合度が上昇していく。この場合、液体や溶融プレポリマーはガイドに沿って流下しながら効果的な内部攪拌と表面更新が行われ、低沸点物質の抜出しが効果的に行われるため、速い速度で濃縮や重合が進行する。濃縮や重合の進行とともにその粘度が高くなってくるために、ガイド4に対する粘着力が増大し、ガイド4に粘着する液体や溶融物の量はガイド4の下部に行くに従って増えてくる。このことは、液体や溶融プレポリマーのガイド上での滞留時間、すなわち蒸発時間や重合反応時間が増えることを意味している。しかも、ガイド4に支えられながら自重で流下している液体や溶融プレポリマーは、重量当たりの表面積が非常に広く、その表面更新が効率的に行われているので、従来公知の蒸発装置や機械的攪拌式重合器ではどうしても不可能であった高粘度領域での蒸発濃縮や重合後半の高分子量化が容易となると考えられる。これが上述のポリカーボネートの製造装置の、優れた特徴の1つである。
【0097】
上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置において、蒸発や重合の後半では、ガイド4に粘着する液体や溶融物の量が増えてくるが、その粘度に見合った粘着保持力しかないので、複数のガイド4の同じ高さにおいては、ほぼ同じ粘度をもつほぼ同じ量の液体や溶融物が、それぞれのガイド4に支えられていることになる。一方、ガイド4には上部から液体や溶融物が連続的に供給されているので、ほぼ同じ粘度をもつ液体やほぼ同じ溶融粘度をもつ重合度のより高められた溶融物が、ガイドの下端から底部ケーシングに連続的に落下して行くことになる。すなわち底部ケーシングの下部には、ガイドを流下しながら生成したほぼ同じ粘度の液体やほぼ同じ重合度のポリマーが溜まってくることになり、蒸発度のバラツキのない濃縮液体や分子量のバラツキのないポリマーが連続的に製造される傾向にある。このことは上述のガイド接触流下式重合装置の他の優れた特徴の1つである。底部ケーシングの下部に溜まった濃縮液体やポリマーは、液体排出口7を経て、排出ポンプ8によって連続的に抜き出され、ポリマーの場合は、通常押出し機等を経て連続的にペレット化される。この場合、押出し機で添加剤等を添加することも可能である。
【0098】
ガイド接触流下式重合装置を構成する多孔板2は、特に限定されないが、通常、例えば、平板、波板、中心部が厚くなった板等から選ばれる。多孔板2横断面の形状については、特に限定されないが、通常、円状、長円状、三角形状、多角形状等の形状から選ばれる。
多孔板の孔の横断面は、特に限定されないが、通常、例えば、円状、長円状、三角形状、スリット状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。
孔の断面積は、通常、例えば、0.01~100cm2であり、好ましくは0.05~10cm2であり、より好ましくは0.1~5cm2の範囲である。孔と孔との間隔は、孔の中心と中心の距離で通常、例えば、1~500mmであり、好ましくは10~100mmである。多孔板2の孔は、多孔板2を貫通させた孔であっても、多孔板2に管を取り付けた場合でもよい。また、テーパー状になっていてもよい。
【0099】
前記ガイド接触流下式重合装置においては、多孔板2とその孔に関して、上述したように、式(VI)、式(VII)を満足していることが好ましい。
また、ガイド接触流下式重合装置を構成するガイド4とは、それ自身内部に熱媒や電気ヒーターなどの加熱源を持たないものであって、水平方向断面の外周の平均長さに対して断面と垂直方向の長さの比率が非常に大きい材料により構成されていることが好ましい。(断面と垂直方向の長さ/水平方向の断面の外周の平均長さ)の比率は、通常、例えば、10~1,000,000の範囲であり、好ましくは50~100,000の範囲である。
【0100】
ガイド4の水平方向の断面の形状は、特に限定されないが、通常、例えば、円状、長円状、三角形状、四角形状、多角形状、星形状等の形状から選ばれる。ガイド4の断面の形状は長さ方向に同一でもよいし異なっていてもよい。また、ガイド4は中空状のものでもよい。上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド4は、それ自身加熱源をもっていないため、ガイド4の表面での液体の熱変性の懸念が全くないことは大きな特徴である。
【0101】
ガイド4は、針金状のものや細い棒状のものや内側に液体や溶融プレポリマーが入らないようにした細いパイプ状のもの等の単一なものでもよいが、捩り合わせる等の方法によって複数組み合わせたものでもよい。また、網状のものや、パンチングプレート状のものであってもよい。
ガイド4の表面は平滑であっても凹凸があるものであってもよく、部分的に突起等を有するものでもよい。好ましいガイド4は、針金状や細い棒状等の円柱状のもの、前記の細いパイプ状のもの網状のもの、パンチングプレート状のものである。
【0102】
工業的規模(生産量、長期安定製造等)での高品質の濃縮液体やポリマーの製造を可能とする上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置において、特に好ましいのは、複数の針金状又は細い棒状又は前記の細いパイプ状のガイド4の上部から下部までにおいて横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔で各々のガイド間を結合したタイプのガイドである。
例えば、複数の針金状又は細い棒状又は前記の細いパイプ状のガイドの上部から下部までにおいて横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔、例えば1cm~200cmの間隔で固定した格子状、又は網状ガイド、複数の格子状又は網状のガイドを前後に配置し、それらを横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔、例えば1cm~200cmの間隔で結合させた立体的なガイド、又は複数の針金状又は細い棒状又は前記の細いパイプ状のガイドの前後左右を横方向の支持材を用いて上下の適当な間隔、例えば1cm~200cmの間隔で固定したジャングルジム状の立体的なガイドである。
横方向の支持材は各ガイド間の間隔をほぼ同じに保つために役立つだけでなく、全体として平面状や曲面状になるガイド、あるいは立体的になるガイドの強度の強化に役立っている。これらの支持材はガイドと同じ素材であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0103】
上述のガイド接触流下式重合装置は、縮合系ポリマー用重合装置や、モノマーやオリゴマーや副生物等の低沸点物質を含む熱可塑性ポリマーの精製装置や、熱可塑性ポリマー溶液からの該ポリマーの分離回収装置など、粘度の比較的高い液体を対象とする蒸発装置としても用いることができる。
従って、前記液体供給ゾーンから供給される液体が縮合系ポリマーを製造するためのモノマー、2種以上のモノマー混合物、縮合系ポリマーのプレポリマー、縮合系ポリマーの溶融液であって低沸点物質が重縮合反応で生成する副生物質及び/又はオリゴマーであり、前記溶融液から低沸点物質を蒸発除去することによって、縮合系ポリマーのプレポリマー及び/又は前記ポリマーの重合度を向上させるための縮合系ポリマー用重合装置として、使用することができる。
【0104】
前記縮合系ポリマーとしては、脂肪族ポリカーボネートやポリカーボネート及び種々のコポリカーボネート等のポリカーボネート類;ポリエステルポリカーボネート類等が好ましい。
上述したガイド接触流下式重合装置を具備するポリカーボネートの製造装置を用いることによって、着色やゲル状物質や固形異物がなく、分子量のバラツキのない、高純度、高性能の縮合系ポリマーを長時間安定的に製造できる。
【0105】
上述のガイド接触流下式重合装置は、比較的粘度の高い液体から低沸点物質を蒸発除去することに適している。
例えば、上述のガイド接触流下式重合装置を、縮合系ポリマーの重合器として用いた場合、従来公知の重合器では液の一部が長時間加熱されたままで滞留する場所があり、そのことによって滞留した液が、着色、ゲル化、架橋化、超高分子量化、固化、焼け、炭化等の変性が起こり、それらの変性物が徐々に又は集中的にポリマーに混入する欠点が避けられなかったが、このような欠点がないだけでなく、従来の重合器にはない優れた効果を有している。
すなわち、例えば、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとから得られる溶融プレポリマーを重合させてポリカーボネートを製造する場合の反応の温度は、通常200~350℃の範囲が必要とされ、特に重合の後半ではその粘度が急激に高くなり、その超高粘度物質から平衡反応で生成してくる芳香族モノヒドロキシ化合物を抜き出さねばならないため、これまでの重合器、例えば、横型2軸撹拌式超高粘度ポリマー用リアクターを用いても、300℃以上の高温で、しかも133Pa以下の高真空下で長時間反応させなければならない上に、しかもシート用などの高分子量体は製造困難であった。
しかしながら、上述のポリカーボネートの製造装置を構成するガイド接触流下式重合装置においては、内部攪拌を伴う効率的な表面更新が行われているので、比較的低温で重合反応を進行させることができる。したがって、好ましい反応温度は、100~290℃であり、さらに好ましくは150~270℃である。従来の機械的攪拌式重合器の場合よりも低温で十分に重合を進めることができることが、上述のポリカーボネートの製造装置の特徴であり、このことも、着色や物性低下のない高品質のポリカーボネートを製造することができるひとつの原因となっている。
さらに、従来公知の重合器では、高真空下での撹拌機のシール部からの空気等の漏れこみ、異物混入などが起こる欠点があるが、上述のガイド接触流下式重合装置においては、機械的攪拌がなく、攪拌機のシール部もないため空気等の漏れこみや異物混入は非常に少なく、高純度・高性能のポリカーボネートを製造することができる。
【0106】
また、上述のポリカーボネートの製造装置を用いて、縮合系ポリマーを製造する場合の、ガイド接触流下式重合装置における反応圧力は、副生する低沸点物質の種類や製造するポリマーの種類や分子量、重合温度等によっても異なるが、数平均分子量が5,000以下の範囲では、400~3,000PaA範囲が好ましく、数平均分子量が5,000~10,000の場合は、50~500PaAの範囲が好ましい。数平均分子量が10,000以上の場合は、300PaA以下が好ましく、特に20~250PaAの範囲が好ましく用いられる。
【0107】
上述のガイド接触流下式重合装置を重合器として用いて、縮合系ポリマーを製造する場合、このガイド接触流下式重合装置1基だけで、目的とする重合度を有するポリマーを製造することも可能であるが、原料とする溶融モノマーや溶融プレポリマーの重合度や、ポリマーの生産量などに応じて、2基以上のガイド接触流下式重合装置を連結して、順に重合度をあげていく方式を採用してもよい。
かかる場合、2基以上のガイド接触流下式重合装置は、直列、並列、及び直列と並列の併用の、いずれかの態様により連結されていることが好ましい。
【0108】
また、この場合、それぞれのガイド接触流下式重合装置において、製造すべきプレポリマー又はポリマーの重合度に適したガイドや反応条件を別々に採用することができる。
例えば、第1ガイド接触流下式重合装置、第2ガイド接触流下式重合装置、第3ガイド接触流下式重合装置、第4ガイド接触流下式重合装置・・・・を用い、この順に重合度を上げていく方式の場合、それぞれの重合装置がもつガイド全体の外部総表面積を、S1、S2、S3、S4・・・・とすれば、 S1≧S2≧S3≧S4≧・・・・ とすることができる。
また、重合温度も、それぞれの重合装置において同じ温度でもよいし、順に上げていくことも可能である。
重合圧力も、それぞれの重合装置で、順に下げていくことも可能である。
このような意味において、例えば、第1ガイド接触流下式重合装置、第2ガイド接触流下式重合装置の、2基の重合装置を用いてこの順に重合度を上げていく場合、第1重合装置のガイド全体の外部総表面積S1(m2)と前記第2重合装置のガイド全体の外部総表面積S2(m2)とが、下記式(XVI)を満足するようなガイドを用いることが好ましい:
1 ≦ S1/S2 ≦ 20 式(XVI)
前記S1/S2が1以上であることにより、分子量のバラツキを抑制でき、長期間安定製造が可能となり、所望の生産量が得られる。
S1/S2が20以下であることにより、第2重合装置でのガイドを流下する溶融プレポリマーの流量を抑制でき、その結果、溶融プレポリマーの滞留時間を十分に確保でき、必要とする分子量のポリマーが得られる。より好ましい範囲は、1.5≦S1/S2≦15である。
【0109】
上述のポリカーボネートの製造装置においては、ガイド接触流下式重合装置に供給する前の縮合系ポリマーの溶融プレポリマーに、不活性ガスを吸収させるための不活性ガス吸収装置を、さらに設置することが好ましい。
また、ガイド接触流下式重合装置を複数基連結して用いる場合、それぞれの重合装置に対し、前記ガイド接触流下式重合装置に供給する前の縮合系ポリマーの溶融プレポリマーに、不活性ガスを吸収させるための不活性ガス吸収装置が、それぞれ設置されていることが好ましい。
【0110】
以下、ガイド接触流下式重合装置1基と不活性ガス吸収装置1基とを一対で用いる場合について説明する。
溶融プレポリマーは、ガイド接触流下式重合装置に供給する前に、不活性ガス吸収装置に導入される。不活性ガス吸収装置において、溶融プレポリマーを不活性ガスで処理することによって、溶融プレポリマーに不活性ガスを吸収させ、それにより、溶融プレポリマーに、溶融プレポリマー1kg当り、0.0001~1Nリットル(但し、Nリットルは標準温度・圧条件下で測定した容積である)の特定量の不活性ガスを吸収させ、次いで、この特定量の不活性ガスを吸収させた溶融プレポリマーを、ガイド接触流下式重合装置に供給し、重合させる。
【0111】
溶融プレポリマーを不活性ガスで処理するとは、溶融プレポリマーを、溶融プレポリマーが重合し難い条件下で不活性ガスを吸収させることを意味する。
溶融プレポリマーに吸収させる不活性ガス量は、溶融プレポリマー1kg当り、0.0001~1Nリットルが好ましく、より好ましくは0.001~0.8Nリットルの範囲であり、さらに好ましくは0.005~0.6Nリットルの範囲である。
吸収された不活性ガスの量が該溶融プレポリマー1kgに対して0.0001Nリットル以上である場合は、不活性ガス吸収プレポリマーを用いることによって達成される重合速度上昇効果、及び、不活性ガス吸収プレポリマーを用いることによって達成される、ポリカーボネートの安定製造の効果が大きくなる。また、本実施形態においては吸収される不活性ガスの量を該溶融プレポリマー1kgに対して1Nリットルより多くしなくてもよい。
【0112】
溶融ポリマーに吸収される不活性ガスの量は、通常、供給した不活性ガスの量を直接測定することによって容易に測定することができる。不活性ガス吸収装置に不活性ガスを流通させながら溶融プレポリマーに吸収させる場合は、供給した不活性ガス量と排出された不活性ガス量の差から、吸収させた不活性ガスの量を求めることができる。また、それは所定の圧力の不活性ガスを仕込んだ不活性ガス吸収装置に溶融プレポリマーを所定量供給し、溶融プレポリマーに不活性ガスが吸収されることによって生ずる不活性ガス吸収装置の圧力の低下量から測定することもできる。更に、それは所定量の溶融プレポリマーを吸収装置にバッチ的に供給した後に不活性ガス吸収量を測定するバッチ方式でも可能であるし、また溶融プレポリマーを吸収装置に連続的に供給し、連続的に抜き出しながら不活性ガス吸収量を測定する連続方式でも、可能である。
【0113】
本実施形態においては、不活性ガス吸収装置を用いて所定の圧力下、及び溶融プレポリマーが重合し難い条件下で、溶融プレポリマーを不活性ガスで処理することによって、不活性ガスを吸収させることが好ましい。
溶融プレポリマーに不活性ガスを吸収させることとは、溶融プレポリマー中に不活性ガスを分散及び/又は溶解させることを意味している。
分散とは、溶融プレポリマー中に不活性ガスが気泡状で混合され、気液混相となっているような状態を意味し、溶解とは溶融プレポリマーに不活性ガスが混じり合い、均一な液相を形成しているような状態を意味する。
不活性ガスは単に分散されるだけでなく、溶融プレポリマー中に溶解されることが特に好ましい。
不活性ガスを溶融プレポリマー中に効率よく溶解させるためには、気液界面積を大きくして接触効率をよくすることや、不活性ガスの加圧下で実施することが好ましい。
【0114】
上述のポリカーボネートの製造装置を構成する不活性ガス吸収装置としては、不活性ガスを溶融プレポリマーに吸収させることができる装置であれば特に型式に制限はなく、例えば、化学装置設計・操作シリーズNo.2、改訂ガス吸収49~54頁(昭和56年3月15日、化学工業社発行)に記載の充填塔型吸収装置、棚段型吸収装置、スプレー塔式吸収装置、流動充填塔型吸収装置、液膜十字流吸収式吸収装置、高速旋回流方式吸収装置、機械力利用方式吸収装置等の公知の装置や、不活性ガス雰囲気下で該溶融プレポリマーをガイドに沿わせて落下させながら吸収させる装置等が挙げられる。
また、ガイド接触流下式重合装置に溶融プレポリマーを供給する配管中に直接不活性ガスを供給して吸収させる装置でもよい。スプレー塔式吸収装置や、ガイドに沿わせて落下させながら吸収させる装置を用いることは特に好ましい方法である。
【0115】
不活性ガス吸収装置としては、ガイド接触流下式重合装置と同じ形式の装置が特に好ましい。
不活性ガス吸収装置は、重合をほとんど進行させない条件で運転されるため、重合装置とは機能的に全く異なるものであるが、この形式の装置の優れた特徴は、ガイドを流下中の溶融物の、質量あたりの表面積が非常に大きいことと、溶融物の表面更新と内部攪拌が非常に良好であることが相まって、短時間に非常に効率的な不活性ガス吸収を可能としていることである。
重合装置とは異なり、不活性ガス吸収装置では、ガイドの上部と下部での溶融プレポリマーの粘度の変化がほとんどないので、単位時間当りの溶融プレポリマーの処理能力は大きい。従って、同じ形式であっても、不活性ガス吸収装置は、ガイド接触流下式重合装置よりも一般的に小さくすることができる。
【0116】
本実施形態で好ましいポリカーボネートの製造について述べる。
不活性ガス吸収前後の溶融プレポリマーの数平均分子量を各々M1、M2とした時、不活性ガス吸収前後における分子量変化(M2-M1)が、実質的に2,000以下であることが好ましく、より好ましくは、1,000以下であり、さらにより好ましくは、500以下である。
溶融プレポリマーに不活性ガスを吸収させる温度は、溶融状態であれば特に制限はないが、通常150~350℃、好ましくは180~300℃、より好ましくは、230~270℃の範囲である。
【0117】
溶融プレポリマーに不活性ガスを吸収させる圧力Pg(PaA)は、溶融プレポリマーを製造するために用いられた圧力以上であることが好ましい。
すなわち、ジヒドロキシ化合物をジアリールカーボネートと反応させることによってポリカーボネートの溶融プレポリマーを製造する際に用いられた反応圧力と同じか、又はそれより高い圧力条件下で不活性ガスを吸収させることが好ましい。
また、Pg(PaA)は、次に続く、ガイド接触流下式重合装置における重合反応の圧力Pp(PaA)よりも高い圧力であるが、M1(上記に定義した通り)に対して、下記式の関係を満足することが好ましい。
式: Pg > 4 × 1012× M1 -2.6871
Pg(PaA)が、上記式の関係を満足する場合には、不活性ガス吸収プレポリマーを用いることによって達成される重合速度上昇効果、及び、不活性ガス吸収プレポリマーを用いることによって達成される、ポリカーボネートの安定製造の効果が大きくなる。
不活性ガスを吸収させる時の圧力が常圧若しくは加圧であることは、不活性ガスの溶融プレポリマーへの吸収速度を高め、結果的に吸収装置を小さくできる点で特に好ましい。
不活性ガス吸収時の圧力の上限に特に制限はないが、通常、2×107PaA以下、好ましくは1×107PaA以下、より好ましくは5×106PaA以下の圧力下で不活性ガス吸収を行わせる。
【0118】
不活性ガス吸収装置で溶融プレポリマーに不活性ガスを吸収させる方法としては、不活性ガス吸収装置に供給した不活性ガスの大部分を溶融プレポリマー中に吸収させる方法でもよく、供給した不活性ガスの一部を溶融プレポリマー中に吸収させる方法でもよい。
前者の方法としては、特に限定されないが、例えばスプレー塔式吸収装置や、ガイドに沿わせて落下させながら吸収させる装置を用い、溶融プレポリマー中に吸収された不活性ガスとほぼ等量の不活性ガスを供給して吸収装置の圧力をほぼ一定に保ちながら吸収させる方法や、溶融プレポリマーを重合器に供給する配管中に直接不活性ガスを供給する吸収装置を用いる方法等が挙げられる。
また後者の方法としては、特に限定されないが、例えばスプレー塔式吸収装置や、溶融プレポリマーをガイドに沿わせて落下させながら吸収させる装置を不活性ガス吸収装置として用い、吸収装置内に溶融プレポリマー中に吸収される以上の不活性ガスを流通させ、過剰の不活性ガスを不活性ガス吸収装置から排出させる方法等が挙げられる。
不活性ガスの使用量をより少なくする点で、前者の方法が特に好ましい。
【0119】
また、不活性ガス吸収は、吸収装置に溶融プレポリマーを連続的に供給して不活性ガスを吸収させ、不活性ガスを吸収した溶融プレポリマーを連続的に抜き出す連続法、吸収装置に溶融プレポリマーをバッチ的に仕込んで不活性ガスを吸収させるバッチ法のいずれも可能である。
【0120】
不活性ガスとは、溶融プレポリマーと化学反応を起こさず、且つ重合条件下で安定なガスの総称である。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や、プレポリマーが溶融状態を保つ温度においてガス状である有機化合物、炭素数1~8の低級炭化水素ガス等が挙げられる。特に好ましい不活性ガスは窒素である。
【0121】
本実施形態のポリカーボネートの製造方法においては、上述したガイド接触流下式重合装置において、不活性ガス吸収装置からガイド接触流下式重合装置間の溶融プレポリマーの供給配管内の不活性ガスが吸収された溶融プレポリマーの圧力を所定の圧力に保つため、ガイド接触流下式重合装置の入り口直前に、所定の圧力調整弁を設置し、これにより、溶融プレポリマーの圧力を制御してもよい。
ガイド接触流下式重合装置の内部は、比較的高真空であり、本装置への供給口付近の溶融プレポリマーは本装置に吸引され圧力が低い状態となりやすい。そのため、不活性ガス吸収装置で吸収させた不活性ガスが溶融プレポリマーから分離し、凝集することがある。そのため、これらを防止するため、不活性ガス吸収装置で溶融プレポリマーに不活性ガスを吸収させる圧力以上に保って供給させることが好ましい。
具体的には、15kPaA~200kPaAの範囲であることが好ましく、より好ましくは20kPaA~150kPaA、さらに好ましくは20~100kPaAである。
【0122】
圧力調整弁を設置する場合や、溶融プレポリマーに不活性ガスを吸収させる圧力より高い場合、配管内の溶融プレポリマーの圧力が安定し、溶融プレポリマーに一旦吸収された窒素等の不活性ガスの分離及び凝集を抑制でき、溶融プレポリマーの均一性が安定し、ガイド接触流下式重合装置内での、溶融プレポリマーの均一で継続的な発泡現象が維持され、安定した製品が製造でき、色調の向上、フィッシュアイ、ゲルなどの異物の発生を抑制できる傾向にある。
一方、200kPaAを超えても効果は変わらず、不活性ガス吸収装置の排出ギアポンプや配管に過剰の負荷がかかり、耐圧性を向上させる必要があり現実的ではないため、上限値は200kPaAとすることが好ましい。
【0123】
本実施形態に用いるポリカーボネートの製造装置は、上述した各種の条件を満たし、且つそれに相応した機械的強度を有するものが好ましく、連続運転に必要な他のいかなる機能を有する装置・設備を付加したものであってもよい。
また、本実施形態に用いるポリカーボネートの製造装置は、上述したガイド接触流下式重合装置や不活性ガス吸収装置を複数結合したものであってもよいし、蒸発以外の他のいかなる機能を有する装置・設備を付加したものであってもよい。
【0124】
後段の機器50A及び50Bとしては、従来、溶融したポリカーボネートを受け入れる機器であれば特に限定されず、例えば、押出機、ペレタイザー、篩分機、乾燥機、サイロ及び包装機等が挙げられる。
例えば、溶融したポリカーボネートを押出機に供給し、押出機において、ABSやPET等の他の樹脂や、触媒失活剤や添加剤を混合することが好ましい。これら他の樹脂及び任意の添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0125】
(触媒失活剤)
本実施形態のポリカーボネートの製造方法において、特に限定されないが、例えば、国際公開第2005/121213号公報に記載されている公知の触媒失活剤を用いてもよい。特に、熱安定性が良く、着色の少ないポリカーボネートを製造する観点から、スルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類がより好ましい。 また、触媒失活剤として、スルホン酸のエステルも用いることができ、当該スルホン酸のエステルとしては、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が挙げられる。特に、熱安定性が良く、着色の少ないポリカーボネートを製造する観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が、好ましく用いられる。
前記重合触媒にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を用いた場合、触媒失活剤の量は、前記重合触媒1モルあたり0.5~50モルの割合とすることが好ましく、より好ましくは0.5~10モルの割合とし、さらに好ましくは0.8~5モルの割合とする。
【0126】
(添加剤)
前記ポリカーボネートには、ABSやPET等の、ポリカーボネート以外の樹脂や、各種安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、染顔料、難燃剤等の添加剤等を添加することができる。これにより、さまざまな用途に適合させたポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。
さらに、これらを組み合わせることで、多様なポリカーボネート樹脂組成物を製造できる。
当該添加剤としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、染料及び顔料の他、金属不活性化剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤等が挙げられる。
耐熱安定剤や酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、燐化合物、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。
光安定剤や紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いることができ、以下に限定されるものではないが、例えば、パラフィン類などの炭化水素系離型剤、ステアリン酸等の脂肪族酸系離型剤、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド系離型剤、ステアリルアルコール、ペンタエリスリトール等のアルコール系離型剤、グリセンモノステアレート等の脂肪族エステル系離型剤、シリコーンオイル等のシリコーン系離型剤が挙げられる。
染料及び顔料としては、有機系や無機系の公知の染料及び顔料を用いることができる。
その他にも、金属不活性化剤、帯電防止剤、滑剤、造滑剤等については、目的に応じて、これらの特性を発揮する公知の材料を用いることができる。これらは、いずれも1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0127】
(押出機)
熱安定性が良く、着色の少ないポリカーボネートを製造する観点から、滞留時間の短い単軸押出機が好ましく、異物の少ないポリカーボネートを製造する観点から、滞留部のない攪拌機を有する動的ミキサーが好ましく、さらにセルフクリーニング性を有している二軸押出機がより好ましい。
触媒失活剤及び/又は添加剤を、溶融状態又は溶液状態で添加する場合、混練装置への供給装置として、プランジャーポンプ等の定量ポンプが好ましく用いられる。
触媒失活剤及び/又は添加剤を供給する配管に、前記混練装置から溶融状態のポリカーボネートが逆流することを防止するため、混練装置における触媒失活剤及び/又は添加剤供給部は、逆止機能を有する注入弁が設置されているのが一般的であるが、複数の供給部が合流し注入弁に繋げられている場合、前記定量ポンプと混練装置との間の配管中に逆止弁を設置することが好ましい。
また、定量ポンプと混練装置の間に、ベーンポンプなどの強制注入装置を設置してもよい。
触媒失活剤及び/又は添加剤を供給する配管は、保温されている状態とすることが好ましい。
触媒失活剤及び/又は添加剤を溶融状態で供給する場合は、それらの融点或いは融点以上且つそれらが変質しない温度以下に制御することが好ましく、触媒失活剤及び/又は添加剤を所定の溶剤を用いて溶液状態で供給する場合は、溶液の融点或いは融点以上、又は触媒失活剤及び/又は添加剤が析出しない温度以上且つそれらが変質しない温度以下に制御することが好ましい。
溶融状態のポリカーボネートの軟化温度が前記温度範囲内に入っている場合は、供給配管に溶融状態のポリカーボネートが逆流しても溶融状態が維持され、ポリカーボネートの固化が防止される。
これら供給配管は、混練装置に向かって下り勾配で設けられていることが好ましい。
【0128】
このような本実施形態のポリカーボネートは、上述したポリカーボネートの製造方法により得ることができる。
【0129】
以上の記載から明らかなとおり、本実施形態の製造方法により、連続的にポリカーボネートを製造することができる。
本実施形態のポリカーボネートの製造方法により得られたポリカーボネートは、所定の成形工程を経て成形品とすることができる。
成形工程は、公知の成形工程であればよく、特に限定されないが、例えば、射出成形機、押出成形機、ブロー成型機及びシート成形機等を用いて、ポリカーボネートを成形して成形品を得ることができる。
得られた成形品は、自動車、電気、電子、OA、光メディア、建材及び医療等の幅広い用途として利用できる。
【実施例0130】
本実施例において、各種測定は以下に示す方法により行った。
【0131】
〔A:酸解離定数pKa〕
本実施例においては、酸解離定数pKaについては、以下の文献値を使用した。
ビスフェノールA:9.80
1,3-プロパンジオール:14.46
1,4-ブタンジオール:14.73
1,6-ヘキサンジオール:14.87
1,4-シクロヘキサンジメタノール:14.70
エチレングリコール:15.10
グリセロール:14.15
エリトリトール:13.90
キシリトール:13.24
1,4-ジオキサン-2,5-ジオール:11.97
フラン-2,5-ビスメタノール:13.70
1,4-アンヒドロエリトリトール:13.66
2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール:14.67
クルクミン:8.09
イソソルビド:13.10
なお、2種以上のジヒドロキシ化合物を用いる場合は、各ジヒドロキシ化合物の酸解離定数(pKa)を加重平均した値をAとした。
【0132】
〔B:供給量〕
ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの1時間当たりの供給量は、撹拌槽式の第1重合器35へ供給するジヒドロキシ化合物と、ジアリールカーボネートの総量とした。
【0133】
〔C:触媒濃度〕
ジアリールカーボネートに対する触媒濃度であって、触媒中の金属元素の質量に換算した値から算出した(単位:質量ppb)。
触媒濃度(質量ppb)=〔触媒中の金属元素の質量〕/〔ジアリールカーボネート質量〕
【0134】
〔D:溶融プレポリマーの粘度〕
JIS Z 8803:2011に従い、回転粘度計を用いて粘度を測定した。測定温度は、攪拌槽式の第一重合器の温度を適用した。
【0135】
〔原料ロス重量〕
製造開始24時間後から72時間まで、組成分析(液体クロマトグラフィー)、及び1日当たりの原料ロス量測定用に、撹拌槽式第1重合器35、撹拌槽式の第2重合器37、第1ガイド接触流下式重合装置42、第2ガイド接触流下式重合装置48A、及び第2ガイド接触流下式重合装置48Bの各ベントから排出される、未反応原料を同伴したフェノールガスを、凝縮器(図示せず)を用いて全量凝縮し回収した。組成分析の結果、及び未反応原料を含むフェノールガスの回収量から、系外に排出されたジヒドロキシ化合物、及びジアリールカーボネートの重量を算出した。
【0136】
〔運転継続性〕
製造開始から72時間後に溶融プレポリマーにおける変色異物(ポリマーに過剰に熱がかかることで生成する、ポリマーが変色した異物)の発生有無を確認した。
<基準>
〇:変色異物の発生なし
×:変色異物の発生あり
【0137】
〔実施例1〕
図5に示す構成を有するポリカーボネートの製造装置を用いて、下記のようにしてポリカーボネートの製造を行った。
【0138】
図5に示すように、不活性ガス吸収装置2基(第1不活性ガス吸収装置39、第2不活性ガス吸収装置44)と、ガイド接触流下式重合装置2基(第1ガイド接触流下式重合装置42、第2ガイド接触流下式重合装置48A)とを、第1不活性ガス吸収装置39、第1ガイド接触流下式重合装置42、第2不活性ガス吸収装置44、第2ガイド接触流下式重合装置の順に直列に配置した重合設備連結した、ポリカーボネートの製造装置を用いて、ポリカーボネートを製造した。
【0139】
図1に概略構成図を示す第1不活性ガス吸収装置39及び第2不活性ガス吸収装置44を用いた。なお、不活性ガス吸収装置39、44は、装置構成が後述するガイド接触流下式重合装置42、48A、48Bと略共通しているため、共通箇所については、同一符号を使用する。
【0140】
第1不活性ガス吸収装置については、不活性ガス吸収ゾーンにおいてケーシングの上部は円筒形であり、底部ケーシング11を構成するテーパー型下部は逆円錐であって、内径0.5mであり、直径3mmのワイヤ5本を8cm間隔で配置した幅32.3cm、h=4mであり、各5本のワイヤは、該ワイヤに垂直に配置された直径3mm、長さ32.3cmのワイヤが25cm間隔で取り付けられているガイド4を2枚有しており、これらの上端部は多孔板2に直接取付けられていた。2枚のガイドの間隔は各80mmであった。溶融プレポリマーは、多孔板2には、直径=約0.2cmの10個の孔により各ガイドに分配されるようになっていた。第1不活性ガス吸収装置の外側にはジャケット(図示せず)が取付けられており、熱媒で加温されていた。また、第2不活性ガス吸収装置は、多孔板2の孔の直径が約0.6cmである以外は第1不活性ガス吸収装置とほぼ同じ形状であった。
【0141】
第1ガイド接触流下式重合装置42については、不活性ガス吸収装置と同様の構造であり、重合反応ゾーンにおいて該ケーシング上部は円筒形であり、底部ケーシング11のテーパー型下部は逆円錐であって、内径0.5mであり、直径3mmのワイヤ5本を8cm間隔で配置した幅32.3cm、h=8mでありガイドを2枚有しており、これらの上端部は多孔板2に直接取付けられている。2枚のガイドの間隔は各80mmであった。
【0142】
溶融プレポリマーは、多孔板(分配板)2には、直径=約0.2cmの10個の孔により各ガイド4に分配されるようになっていた。第1ガイド接触流下式重合装置の外側にはジャケット(図示せず)が取付けられており、熱媒で加温されていた。また、第2ガイド接触流下式重合装置は、多孔板の孔の直径が約0.4cmである以外は第1ガイド接触流下式重合装置とほぼ同じ形状であった。
【0143】
以下、実施例1におけるポリカーボネートの製造方法について具体的に説明する。
混合槽31(内容量1m3)に、160℃の溶融したジフェニルカーボネート(以下「DPC-1」)200kgを投入した。次いで触媒として、水酸化カリウムをジフェニルカーボネートに対して200質量ppb(水酸化カリウム中の金属元素質量に換算した触媒濃度)添加し、混合槽31内の混合液の温度が100℃以上を維持するように、加熱、撹拌しながら投入したDPC-1と同モルのビスフェノールA(酸解離定数 pKa=9.8)を徐々に投入した。
前記混合液の温度が180℃に達した時点で、溶解混合物貯槽(内容量1m3)33Aに移送した。
溶解混合物貯槽33A内で4~6時間保持した溶解混合物を、流量0.04ton/hrで、溶解混合物貯槽33Aと撹拌槽式第1重合器35との間に直列に配置して設けられた孔径の異なる2個のポリマーフィルター(図示せず、上流側の孔径が5μm、下流側の孔径が2.5μm)で濾過した。
【0144】
濾過後の溶解混合物を、予熱器(図示せず)で加熱し、撹拌槽式の第1重合器35へ供給した。予熱器出口の液温は210℃であった。
溶解混合物貯槽33A中の溶解混合物のレベルが所定値よりも低下した時点で、撹拌槽式の第1重合器35へ溶解混合物を供給する供給元を溶解混合物貯槽33Aから溶解混合物貯槽33Bに切り替えた。撹拌槽式第1重合器35への溶解混合物の供給は、供給元の溶解混合物貯槽33Aと33Bを3.9時間毎に交互に切り替える操作を繰り返すことによって連続的に行った。
なお、溶解混合物貯槽33A、33Bともに、内部コイルとジャケットとが設置されており、180℃を保持した。
【0145】
撹拌槽式の第1重合器35、及び撹拌槽式の第2重合器37で、減圧下で撹拌を行い、発生するフェノールを除去しながら溶解混合物を重合させて予備重合を行い、溶融プレポリマーを得た。予備重合中、第1重合器35、及び第2重合器37のベントから、ガスを排出した。
そのときの撹拌槽式の第1重合器35の温度は220℃、圧力は13.3kPaA、撹拌翼回転数は60rpmであり、撹拌槽式の第1重合器35出口(撹拌槽式の第1重合器35滞留時間=攪拌槽式の第一重合器の液保有量を攪拌槽式の第一重合器への液供給量で除した値:1時間)の溶融プレポリマーの粘度は41mPa・sであった。さらに、撹拌槽式の第2重合器37の温度は270℃、圧力は2.66kPaAであった。
得られたポリカーボネートの溶融プレポリマーを、供給ポンプ38によって第1不活性ガス吸収装置の液体受給口1より液体供給ゾーン3に連続的に供給した。
【0146】
第1不活性ガス吸収装置39の分配板である多孔板2を通して、内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15に連続的に供給された、前記プレポリマーは、ガイド4に沿って流下しながら不活性ガスの吸収が行われた。
第1不活性ガス吸収装置39の内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15は、不活性ガス供給口9から窒素ガスを供給して180kPaAに保持されている。
ガイド4の下部から第1不活性ガス吸収装置39の底部ケーシング11のテーパー型下部に落下した溶融プレポリマー(該溶融プレポリマー1kgあたり窒素を0.04Nリットル含む)は、前記装置の底部での量がほぼ一定となるように排出ポンプ8(図5中、符号40に相当)によって連続的に排出し、第1ガイド接触流下式重合装置42の液体受給口1にある圧力調整弁41により、弁に入る溶融プレポリマーの圧力を25kPaAに保持して、第1ガイド接触流下式重合装置42の液体受給口1を経て液体供給ゾーン3に連続的に供給した(図2参照)。
【0147】
第1ガイド接触流下式重合装置42の分配板である多孔板2を通して、内部空間である内部空間である蒸発ゾーン5に連続的に供給された、前記プレポリマーを、ガイド4に沿って流下しながら溶融重縮合法により連続的にポリカーボネートの重合反応が進められた。溶融重縮合中、第1ガイド接触流下式重合装置42のベントから、ガスを排出した。
第1ガイド接触流下式重合装置42の内部空間である蒸発ゾーン5は、真空ベント口6を通して800PaAの圧力に保持した。
ガイド4の下部から、第1ガイド接触流下式重合装置42の底部ケーシング11のテーパー型下部に落下した重合度の高められたポリカーボネートの溶融プレポリマーは、底部での量がほぼ一定となるように排出ポンプ8(図5中、符号43に相当)によって、液体排出口7から一定の流量で連続的に抜き出され、次いで第2不活性ガス吸収装置44の液体供給ゾーン3に連続的に供給した。
【0148】
前記溶融プレポリマーを、第2不活性ガス吸収装置44の分配板である多孔板2を通して、内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15に連続的に供給した。
溶融プレポリマーは、ガイド4に沿って流下しながら不活性ガスの吸収が行われた。
第2不活性ガス吸収装置44の内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15は、不活性ガス供給口9から窒素ガスを供給して200kPaAに保持されているものとした。
ガイド4の下部から第2不活性ガス吸収装置44の底部ケーシング11のテーパー型下部に落下した溶融プレポリマー(該溶融プレポリマー1kgあたり窒素を0.05Nリットル含む)は、供給ポンプ46A及び46Bによって一定量で連続的に排出し、第2ガイド接触流下式重合装置48A及び48Bの液体受給口1にある圧力調整弁47A及び47Bにより、弁に入る溶融プレポリマーの圧力を25kPaAに保持してそれぞれの液体供給ゾーン3に連続的に供給した。
第2ガイド接触流下式重合装置48A及び48B内の分配板である多孔板2を通して、内部空間である蒸発ゾーン5に連続的に供給された、溶融プレポリマーを、ガイド4に沿って流下しながら溶融重縮合法により連続的にポリカーボネートの重合反応が進められた(図2参照)。溶融重縮合中、第2ガイド接触流下式重合装置48A及び48Bのベントから、ガスを排出した。
第2ガイド接触流下式重合装置48A及び48Bの内部空間である蒸発ゾーンは、真空ベント口6を通してそれぞれ120PaAの圧力に保持した。
ガイド4の下部から、第2ガイド接触流下式重合装置48A及び48Bの底部ケーシング11のテーパー型下部に落下したポリカーボネートは、該底部での量がほぼ一定となるように排出ポンプ8(図5中、符号49A及び49Bに相当)によって後段の機器50A及び50Bからストランドとして連続的に抜き出し、冷却後切断してペレット状のポリカーボネートを得た。
添加剤は無添加とした。
【0149】
製造は72時間継続し、製造開始から24時間後から、組成分析(液体クロマトグラフィー)、及び1日当たりの原料ロス量測定用に、撹拌槽式第1重合器35、撹拌槽式の第2重合器37、第1ガイド接触流下式重合装置42、第2ガイド接触流下式重合装置48A、及び第2ガイド接触流下式重合装置48Bの各ベントから排出される、未反応原料を同伴したフェノールガスを、凝縮器(図示せず)を用いて全量凝縮し回収した。さらに、製造開始から72時間後に、撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の発生有無を確認した。各結果を表1に示す。
【0150】
〔実施例2~4〕
表1に示すように原料・条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0151】
〔比較例1~2〕
表1に示すように条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0152】
【表1】
【0153】
〔実施例5〕
図5に示す構成を有するポリカーボネートの製造装置を用いて、下記のようにしてポリカーボネートの製造を行った。
第1不活性ガス吸収装置39については、内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15において、側面ケーシング10の上部は円筒形であり、ケーシングを構成するテーパー型下部である底部ケーシング11は逆円錐であって、図1中、L=500cm、h=400cm、D=200cm、d=20cm、C=150°であるものとした。
また、内部空間である不活性ガス吸収ゾーン50に設けられているガイド4の直径が、0.3cmであり、ガイド4の外部総表面積S=60m2、内部空間である不活性ガス吸収ゾーン50の上部に設けられている多孔板の孔の直径=約0.2cmであった。
また、第2不活性ガス吸収装置44は、多孔板の孔の直径が約0.6cmである以外は第1不活性ガス吸収装置39とほぼ同じ形状であった。
図2に、ガイド接触流下式重合装置の概略図を示す。このガイド接触流下式重合装置は、図3に示すような、厚さ約2cmの円盤状の流路制御部品20、及び円柱状のガイド4を有していた。
【0154】
また、図3に、ガイド接触流下式重合装置の、ガイド4の上部の概略構成図を示す。
ガイド接触流下式重合装置においては、流路制御部品20は、液体供給ゾーン3の上部内壁面23からの間隔が約8cmとなるように、上部から懸垂固定されていた。
また、液体供給ゾーン3の内部側壁面22と流路制御部品20との間隔は約9cmで、多孔板2と流路制御部品20との間隔は約8cmであった。
なお、この円盤状の流路制御部品20の周縁部は垂直断面が半径約1cmの半円となるように細工されており、周縁部に液体が滞留しないように工夫されていた。
このガイド接触流下式重合装置の材質は、全てステンレススチールであった。
排出ポンプ8は、濃縮液体が高粘度の場合、ギアポンプとし、それほど粘度が高くない場合は通常の送液ポンプとした。
ガイド接触流下式重合器42は、円筒形の側面ケーシング10とコーン形の底部ケーシング11を有し、図2中、L=950cm、h=850cmであった。
蒸発ゾーン5の側面ケーシングの内径D=400cmであり、コーン形の底部ケーシング11の液体排出口7の内径d=20cmであり、C=150度であった。
ガイド4全体の外部総表面積S=750m2であった。
また、前記ガイドの直径=0.3cmであった。
多孔板2の1m2あたりの平均孔数(個/m2)=約500であった。多孔板の孔の直径=約0.2cmであった。多孔板の孔の上部面積を含む多孔板の上部面積T(m2)と、孔の有効断面積の合計Q(m2)との比(T/Q)は1300であった。
【0155】
図2中、液体供給ゾーン3においては、液体受給口1から供給された低沸点物質を含む液体は、図3中、流路制御部品20の上面と液体供給ゾーン3の上部内壁面23の間、及び液体供給ゾーン3の内部側壁面22と流路制御部品20との間を経由して、主として多孔板2の周辺部から中央部の方向に流れながら、多孔板2の孔21等から各ガイド4に均一に分配された。
ガイド接触流下式重合装置の下部には、不活性ガス供給口9が備えられており、上部には低沸点物質の蒸発物抜出し口である真空ベント口6(ガス凝縮器及び減圧装置に接続している)が備えられていた。
ガイド接触流下式重合装置の外側は、ジャケット、又は熱媒用加熱管が設置されており、熱媒で所定の温度に保持できるようになされていた。
第2ガイド接触流下式重合装置48A,48Bは、図3に示す構造において、厚さ約2cmの円盤状の流路制御部品20、及びガイド4を有していた。
円盤状の流路制御部品20は、液体供給ゾーンの上部内壁面23からの間隔が約8cmとなるように上部から懸垂固定されていた。
また、液体供給ゾーンの内部側壁面22と流路制御部品20との間隔は約9cmで、多孔板2と流路制御部品20との間隔は約8cmであった。
なお、この円盤状の流路制御部品20の周縁部は垂直断面が半径約1cmの半円となるように細工されており、周縁部に液体が滞留しないように工夫されていた。
また、液体供給ゾーンの内部側壁面22と多孔板2との接続部の断面は、図4に示すような内側が凹状に細工されており、その立ち上がり部の角度Eは約170度であった。
【0156】
ガイド接触流下式重合装置の材質は、全てステンレススチールであった。
第2ガイド接触流下式重合装置の下部には、排出ポンプ8が設けられており、濃縮液体が高粘度の場合、ギアポンプとし、それほど粘度が高くない場合は通常の送液ポンプとした。
第2ガイド接触流下式重合装置は、円筒形の側面ケーシング10と、コーン形の底部ケーシング11を有していた。
第2ガイド接触流下式重合装置は、図2中、L=1,000cm、h=900cmであった。
蒸発ゾーン5の側面ケーシングの内径D=500cmであり、コーン形の底部ケーシング11の液体排出口7の内径d=40cmであり、C=155度であった。
ガイド4全体の外部総表面積S=250m2であった。
また、前記ガイドの外径r=0.3cmであった。
多孔板2の1m2あたりの平均孔数(個/m2)N=約140であった。多孔板の孔の直径=約0.4cmであった。多孔板の孔の上部面積を含む多孔板の上部面積T(m2)と、孔の有効断面積の合計Q(m2)との比(T/Q)は470であった。
第2ガイド接触流下式重合装置の構造は、液体供給ゾーン3においては、第1ガイド接触流下式重合装置と同様であった。
上述した不活性ガス吸収装置、第1及び第2ガイド接触流下式重合装置の材質は、排出ポンプ8を除き、すべてステンレススチールであった。
【0157】
図5に示すように、不活性ガス吸収装置2基(第1不活性ガス吸収装置39、第2不活性ガス吸収装置44)と、ガイド接触流下式重合装置2基(第1ガイド接触流下式重合装置42、第2ガイド接触流下式重合装置48A,48B)を、第1不活性ガス吸収装置39、第1ガイド接触流下式重合装置42、第2不活性ガス吸収装置44、第2ガイド接触流下式重合装置(2機を並列に配置)の順に直列に配置した重合設備連結した、ポリカーボネートの製造装置を用いて、ポリカーボネートを製造した。
以下、実施例5におけるポリカーボネートの製造方法について具体的に説明する。
混合槽31(内容量120m3)に、160℃の溶融したジフェニルカーボネート(DPC-1)40tonを投入した。
次いで触媒として、水酸化カリウムをジフェニルカーボネートに対して120質量ppb添加し、混合槽内の混合液の温度が100℃以上を維持するように、加熱、撹拌しながら投入したDPC-1と同モルのビスフェノールA(酸解離定数 pKa=9.8)を1.8時間かけて投入した。
なお、ジヒドロキシ化合物が固体の場合は、ロードセル計量器が設けられている計量ホッパーを用いて秤量し、液体の場合は、コリオリ式質量重量計を用いて秤量した。
前記混合液の温度が180℃に達した時点で、溶解混合物貯槽(内容量120m3)33Aに1時間かけて移送した。
溶解混合物貯槽33A内で4~6時間保持した溶解混合物を、流量10ton/hrで、溶解混合物貯槽33Aと撹拌槽式第1重合器35との間に直列に配置して設けられた孔径の異なる2個のポリマーフィルター(図示せず、上流側の孔径が5μm、下流側の孔径が2.5μm)で濾過した。
濾過後の溶解混合物を、予熱器(図示せず)で加熱し、撹拌槽式の第1重合器35へ供給した。予熱器出口の液温は210℃であった。
溶解混合物貯槽33A中の溶解混合物のレベルが所定値よりも低下した時点で、撹拌槽式の第1重合器35へ溶解混合物を供給する供給元を溶解混合物貯槽33Aから溶解混合物貯槽33Bに切り替えた。撹拌槽式第1重合器35への溶解混合物の供給は、供給元の溶解混合物貯槽33Aと33Bを3.9時間毎に交互に切り替える操作を繰り返すことによって連続的に行った。
なお、溶解混合物貯槽33A、33Bともに、内部コイルとジャケットとが設置されており、180℃を保持した。
【0158】
撹拌槽式の第1重合器35、及び撹拌槽式の第2重合器37で、減圧下で撹拌を行い、発生するフェノールを除去しながら溶解混合物を反応させて、プレポリマーを得た。
そのときの撹拌槽式の第1重合器35の温度は220℃、圧力は13.3kPaA、撹拌翼回転数は60rpmであり、撹拌槽式の第1重合器35出口(撹拌槽式の第1重合器35の滞留時間:1時間)の溶融プレポリマーの粘度は78mPa・sであった。さらに、撹拌槽式の第2重合器37の温度は270℃、圧力は2.66kPaAであった。
得られたポリカーボネートの溶融プレポリマーを、供給ポンプ38によって第1不活性ガス吸収装置の液体受給口1より液体供給ゾーン3に連続的に供給した。
第1不活性ガス吸収装置39の分配板である多孔板2を通して、内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15に連続的に供給された、前記プレポリマーは、ガイド4に沿って流下しながら不活性ガスの吸収が行われた。
第1不活性ガス吸収装置39の内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15は、不活性ガス供給口9から窒素ガスを供給して180kPaAに保持されていた。
ガイド4の下部から第1不活性ガス吸収装置39の底部ケーシング11のテーパー型下部に落下した溶融プレポリマー(該溶融プレポリマー1kgあたり窒素を0.04Nリットル含む)は、前記装置の底部での量がほぼ一定となるように排出ポンプ8(図5中、符号40に相当)によって連続的に排出し、第1ガイド接触流下式重合装置42の液体受給口1にある圧力調整弁41により、弁に入る溶融プレポリマーの圧力を25kPaAに保持して、第1ガイド接触流下式重合装置42の液体受給口1を経て液体供給ゾーン3に連続的に供給した。
第1ガイド接触流下式重合装置42の分配板である多孔板2を通して、内部空間である蒸発ゾーン5に連続的に供給された、前記プレポリマーを、ガイド4に沿って流下しながら溶融重縮合法により連続的にポリカーボネートの重合反応が進められた。
第1ガイド接触流下式重合装置42の内部空間である蒸発ゾーン5は、真空ベント口6を通して800PaAの圧力に保持した。
ガイド4の下部から、第2ガイド接触流下式重合装置42の底部ケーシング11のテーパー型下部に落下した重合度の高められたポリカーボネートの溶融プレポリマーは、底部での量がほぼ一定となるように排出ポンプ8(図5中、符号43に相当)によって、液体排出口7から一定の流量で連続的に抜き出され、次いで第2不活性ガス吸収装置44の液体供給ゾーン3に連続的に供給した。
【0159】
前記溶融プレポリマーを、第2不活性ガス吸収装置44の分配板である多孔板2を通して、内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15に連続的に供給した。
溶融プレポリマーは、ガイド4に沿って流下しながら不活性ガスの吸収が行われた。
第2不活性ガス吸収装置44の内部空間である不活性ガス吸収ゾーン15は、不活性ガス供給口9から窒素ガスを供給して200kPaAに保持されているものとした。
ガイド4の下部から第2不活性ガス吸収装置の底部ケーシング11のテーパー型下部に落下した溶融プレポリマー(該溶融プレポリマー1kgあたり窒素を0.05Nリットル含む)は、三方ポリマーバルブ45で二分割(50:50の比で分割)し、該底部での量がほぼ一定となるように排出ポンプ8(図5中、符号46A、46Bに相当)によって一定量で連続的に排出し、第2ガイド接触流下式重合装置48A、48Bの液体受給口1にある圧力調整弁47A、47Bにより、弁に入る溶融プレポリマーの圧力を25kPaAに保持してそれぞれの液体供給ゾーン3に連続的に供給した。
第2ガイド接触流下式重合装置内の分配板である多孔板2を通して、内部空間である蒸発ゾーン5に連続的に供給された、溶融プレポリマーを、ガイド4に沿って流下しながら溶融重縮合法により連続的にポリカーボネートの重合反応が進められた。
第2ガイド接触流下式重合装置の内部空間である蒸発ゾーン5は、真空ベント口6を通してそれぞれ120PaAの圧力に保持した。
ガイド4の下部から、第2ガイド接触流下式重合装置の底部ケーシング11のテーパー型下部に落下したポリカーボネートは、該底部での量がほぼ一定となるように供給ポンプ49A、49Bによって後段の機器50A、50Bからストランドとして連続的に抜き出し、冷却後切断してペレット状のポリカーボネートを得た。
添加剤は無添加とした。
【0160】
製造は72時間継続し、製造開始から24時間後から、組成分析(液体クロマトグラフィー)、及び1日当たりの原料ロス量測定用に、撹拌槽式第1重合器35、撹拌槽式の第2重合器37、第1ガイド接触流下式重合装置42、第2ガイド接触流下式重合装置48A、及び第2ガイド接触流下式重合装置48Bの各ベントから排出される、未反応原料を同伴したフェノールガスを、凝縮器(図示せず)を用いて全量凝縮し回収した。さらに、製造開始から72時間後に、撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の発生有無を確認した。各結果を表2に示す。
【0161】
〔実施例6~9〕
表2に示すように原料・条件を変更したこと以外は、前記実施例5と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0162】
〔比較例3~6〕
表2に示すように条件を変更したこと以外は、前記実施例5と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0163】
【表2】
【0164】
〔実施例10~13〕
ジヒドロキシ化合物を、表3に示すイソソルビド(下記式F-1)を含む成分に変更し、表3に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【化11】
【0165】
〔比較例7~8〕
表3に記載しているように条件を変更したこと以外は、前記実施例10と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0166】
【表3】
【0167】
〔実施例14~25〕
ジヒドロキシ化合物を、表4に示すクルクミン(下記式A-1)を含む成分に変更し、表4に記載しているように条件を変更したこと以外は、前記実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【化12】
【0168】
〔比較例9〕
表4に記載しているように条件を変更したこと以外は、前記実施例14と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量を、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0169】
【表4】
【0170】
〔実施例26~28〕
ジヒドロキシ化合物を、表5に示す1,4-ジオキサン-2,5-ジオール(下記式D-1)を含む成分に変更し、表5に記載しているように条件を変更したこと以外は、前記実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【化13】
【0171】
〔比較例10〕
表5に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例26と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量を、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0172】
【表5】
【0173】
〔実施例29~31〕
ジヒドロキシ化合物を、表6に示すフラン-2,5-ビスメタノール(下記式B-1)を含む成分に変更し、表6に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【化14】
【0174】
〔比較例11〕
表6に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例29と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0175】
【表6】
【0176】
〔実施例32~34〕
ジヒドロキシ化合物を、表7に示す1,4-アンヒドロエリトリトール(下記式E-1)を含む成分に変更し、表7に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【化15】
【0177】
〔比較例12〕
表7に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例32と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0178】
【表7】
【0179】
〔実施例35~37〕
ジヒドロキシ化合物を、表8に示す2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(下記式C-1)を含む成分に変更し、表8に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【化16】
【0180】
〔比較例13〕
表8に記載しているように条件を変更したこと以外は、実施例35と同様にポリカーボネートの製造を実施し、該条件における原料ロス量、及び撹拌槽式第1重合器35出口の溶融プレポリマーにおける変色異物の有無を確認した。
【0181】
【表8】
【符号の説明】
【0182】
1 液体受給口
2 多孔板
3 液体供給ゾーン
4 ガイド
5 内部空間である蒸発ゾーン
6 真空ベント口
7 液体排出口
8 排出ポンプ
9 不活性ガス供給口
10 側面ケーシング
11 底部ケーシング
12 抜き出し口
15 内部空間である不活性ガス吸収ゾーン
20 流路制御部品
21 多孔板の孔部
22 液体供給ゾーンの内部側壁面
23 液体供給ゾーンの上部内壁面
31 混合槽
32、34A,34B 移送ポンプ
33A,33B 溶解混合物貯槽
35 第1重合器
36、38、40、43、46A、46B、49A、49B 供給ポンプ
37 第2重合器
39 第1不活性ガス吸収装置
41、47A、47B 圧力調整弁
42 第1ガイド接触流下式重合装置
44 第2不活性ガス吸収装置
45 三方ポリマーバルブ
48A、48B 第2ガイド接触流下式重合装置
50A 後段の機器
50B 後段の機器
図1
図2
図3
図4
図5