(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023703
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】移動体検出システム、及び、移動体検出方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20250207BHJP
G06M 7/00 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
G08G1/01 C
G06M7/00 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128073
(22)【出願日】2023-08-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和4年度国土技術政策総合研究所「交通流動(車・歩行者)の計測を簡便に実現する、振動センサを用いた技術研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大黒 智貴
(72)【発明者】
【氏名】日月 伸也
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB20
5H181CC27
(57)【要約】
【課題】
移動体検出システムにおいて、長時間の測定を行うこと、又は、コストをかけることなく、移動体の検出精度を向上させることである。
【解決手段】
本発明に係る移動体検出システムは、振動データを学習用測定データとして読み込み、学習用測定データから一部が他の学習用データと時間的に重複した学習モデルを作成するための2以上の学習用データを作成する。そして、移動体検出システムは、学習用データに基づいて、学習モデルを作成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の測定データである学習用測定データから、一部が他の学習用データと時間的に重複した、学習モデルを作成するための2以上の前記学習用データを作成し、
前記学習用データに基づいて、移動体を検出するための前記学習モデルを作成し、
作成した前記学習モデルと移動体の測定データとに基づいて、移動体を検出することを特徴とする移動体検出システム。
【請求項2】
前記学習用測定データにおいて、所定時間ずつ時間軸方向にスライドし、スライドした時間から所定長さのデータを抽出することで、前記学習用データを作成することを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項3】
前記学習用測定データから、一部が他の前記学習用データと時間的に重複した所定長さのデータを抽出することで、前記学習用データを作成することを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項4】
前記学習用測定データ及び前記測定データは、振動データであることを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項5】
前記移動体が移動する移動対象に生じる振動を測定し、
測定した振動データを前記学習用測定データとして用いることを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項6】
前記移動体が移動する移動対象に生じる振動を測定し、
測定した振動データから振動ピークを抽出し、
抽出した前記振動ピークを前記学習用測定データとして用いることを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項7】
作成した前記学習モデルと測定データとに基づいて、移動体の数を検出することを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項8】
作成した前記学習モデルと測定データとに基づいて、移動体の種別を検出することを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項9】
前記移動体は、歩行者であることを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項10】
前記移動体は、車両であることを特徴とする請求項1に記載の移動体検出システム。
【請求項11】
センサーと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記センサーによって測定された、移動体の測定データである学習用測定データから、一部が他の学習用データと時間的に重複した学習モデルを作成するための2以上の前記学習用データを作成し、
前記学習用データに基づいて、移動体を検出するための前記学習モデルを作成し、
作成した前記学習モデルと移動体を測定した測定データとに基づいて、移動体を検出することを特徴とする移動体検出システム。
【請求項12】
移動体の測定データである学習用測定データから、一部が他の学習用データと時間的に重複した学習モデルを作成するための2以上の前記学習用データを作成し、
前記学習用データに基づいて、移動体を検出するための前記学習モデルを作成し、
作成した前記学習モデルと移動体を測定した測定データとに基づいて、移動体を検出することを特徴とする移動体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動を検出する移動体検出システム、及び、移動体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、振動センサーを用いて、車両等の移動体の移動を検出する発明を出願している(特許文献1参照)。この特許出願に係る発明のように、振動センサーを用いて、移動体の移動が検出される場合、例えば、移動体である車両の通過(移動)台数が検出される。この場合、例えば、車両の通過台数を検出するための学習モデルが作成される。すなわち、まず、振動センサーにより、車両の通過による道路の振動が測定(取得)される。次に、振動センサーにより測定(取得)された車両の通過による道路の振動データ(学習用測定データ、学習用振動データ)に対し、ピーク検出が行われ、ピーク部分が学習された学習モデルが作成される。また、車両の通過台数を検出する対象となる車両の通過による道路の振動が測定される。そして、作成された学習モデルと、測定された車両の通過による道路の振動データ(測定データ)とに基づいて、車両の通過台数が検出される。
【0003】
このような移動体検出システムにおいて、学習用データの数が不十分な学習モデルが作成された場合、作成された学習モデルは、学習用データの傾向に沿ったモデルとなってしまう。その結果、学習したデータについては、検出精度が良好であるが、未知のデータについては、検出精度が低下する過学習が問題となる。例えば、速度が遅い車両の通過による道路の振動データのみを学習用データとして、学習用モデルが作成されたとする。この場合、測定された道路の振動データが、速度が遅い車両の通過によるデータである場合は、学習モデルを基に車両を検出することができる。しかしながら、測定された道路の振動データが、速度が遅い車両の通過による道路の振動データと特性が異なる速度が速い車両の通過によるデータである場合には、車両を検出することができないという問題が発生する。そのため、過学習を防ぐためには、十分な数の学習用データが取得される必要がある。しかしながら、従来の手法では、単に学習用測定データを分割した学習用データが作成されていたため、過学習を防止するための十分な数の学習用データを取得するためには、長時間の測定時間が必要となる。
【0004】
また、例えば、歩行者の人数を検出する場合、4つの振動センサーを用いて歩行者の人数を検出する技術がある(非特許文献1参照)。しかしながら、複数のセンサーを用いた方法では、複数のセンサーを必要とするため、コストがかかるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yu Yang、外4名、“Pedestrian Counting Based on Piezoelectric Vibration Sensor”、[online]、2022年2月12日、MDPI、[2023年5月15日検索]、<URL:https://www.mdpi.com/2076-3417/12/4/1920>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、過学習が発生しない、検出精度が高い学習モデルを作成するために、十分な学習用データを必要とする。しかしながら、多くの学習用データを取得するためには、長時間の測定が必要であること、複数のセンサーが必要であるため、コストがかかること、等の種々の問題がある。
【0008】
。
本発明の目的は、長時間の測定を行うこと、又は、コストをかけることなく、移動体の検出精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の移動体検出システムは、移動体の測定データである学習用測定データから、一部が他の学習用データと時間的に重複した、学習モデルを作成するための2以上の前記学習用データを作成し、前記学習用データに基づいて、移動体を検出するための前記学習モデルを作成し、作成した前記学習モデルと移動体の測定データとに基づいて、移動体を検出することを特徴とする。
【0010】
従来の手法では、単に学習用測定データを分割した学習用データを作成していたため、学習用データの数が少なく、少ないデータの数で学習モデルを作成した場合に起こる、学習したデータについては精度良く検出するが、未知のデータについては、検出精度が低下する過学習が発生する。本発明に係る移動体検出システムは、学習用測定データから一部が他の学習用データと時間的に重複した学習モデルを作成するための2以上の学習用データを作成する。そして、移動体検出システムは、学習用データに基づいて、学習モデルを作成する。このように、本発明に係る移動体検出システムは、時間的に重複した学習用データを作成することで、従来の手法よりも学習用データの数を増やすことができる。
【0011】
このため、十分な数のデータで学習モデルを作成することができ、過学習を防ぐことができる。過学習が防止された学習モデルにより、移動体を検出することで、移動体を検出する精度を向上させることが可能となる。また、複数のセンサーを用いることなく、学習用データの数を増やすことができるため、センサーの数を減らすことにより、コストの削減が可能となる。また、精度を向上させるために必要な数の学習用データを測定することなく取得できるため、データを取得するための測定時間を削減することができる。
【0012】
すなわち、本発明によれば、長時間の測定を行うこと、又は、コストをかけることなく、移動体の検出精度を向上させることができる。
【0013】
第2の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、前記学習用測定データにおいて、所定時間ずつ時間軸方向にスライドし、スライドした時間から所定長さのデータを抽出することで、前記学習用データを作成することを特徴とする。
【0014】
例えば、60秒間の学習用測定データから1個30秒の学習用データを作成する場合、0.5秒ずつ時間軸方向にスライドして学習用データを作成すると、学習用データを61個作成することができる。
【0015】
第3の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、前記学習用測定データから、一部が他の前記学習用データと時間的に重複した所定長さのデータを抽出することで、前記学習用データを作成することを特徴とする。
【0016】
第4の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、前記学習用測定データ及び前記測定データは、振動データであることを特徴とする。
【0017】
第5の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、前記移動体が移動する移動対象に生じる振動を測定し、測定した振動データを前記学習用測定データとして用いることを特徴とする
【0018】
第6の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、前記移動体が移動する移動対象に生じる振動を測定し、測定した振動データから振動ピークを抽出し、抽出した前記振動ピークを前記学習用測定データとして用いることを特徴とする。
【0019】
第7の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、作成した前記学習モデルと測定データとに基づいて、移動体の数を検出することを特徴とする。
【0020】
第8の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、作成した前記学習モデルと測定データとに基づいて、移動体の種別を検出する。
【0021】
第9の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、前記移動体は、歩行者であることを特徴とする。
【0022】
第10の発明の移動体検出システムは、第1の発明の移動体検出システムにおいて、前記移動体は、車両であることを特徴とする。
【0023】
第11の発明の移動体検出システムは、センサーと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサーによって測定された、移動体の測定データである学習用測定データから、一部が他の学習用データと時間的に重複した学習モデルを作成するための2以上の前記学習用データを作成し、前記学習用データに基づいて、移動体を検出するための前記学習モデルを作成し、作成した前記学習モデルと移動体を測定した測定データとに基づいて、移動体を検出することを特徴とする。
【0024】
第12の発明の移動体検出システムは、移動体の測定データである学習用測定データから、一部が他の学習用データと時間的に重複した学習モデルを作成するための2以上の前記学習用データを作成し、前記学習用データに基づいて、移動体を検出するための前記学習モデルを作成し、作成した前記学習モデルと移動体を測定した測定データとに基づいて、移動体を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、長時間の測定を行うこと、又は、コストをかけることなく、移動体の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】学習用測定データに基づき学習用データを作成する処理を説明するための図である。
【
図2】学習用データを作成する移動体検出システムの処理動作を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態に係る移動体検出システムの学習処理動作を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態に係る移動体検出システムの車両検出処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、説明する。本発明の実施形態に係る移動体検出システムは、例えば、車両等の移動体の移動を検出し、移動体を検出した数を計数(カウント)する。移動体検出システムは、振動センサー、CPU(Central Processing Unit)等の制御部等を備える。移動体検出システムは、1つの装置から構成されていてもよいし、2以上の装置から構成されていてもよい。また、振動センサーによって検出された振動データに基づく移動体の検出は、例えば、サーバー(クラウド)によって行われるようになっていてもよい。なお、以下で説明する処理等は、基本的に制御部によって実行されるが、「制御部は、~する。」という「~する」処理において、「制御部は」の文言を省略している場合がある。以下では、移動体が車両であり、移動対象である道路を通過する車両の数が計数される実施形態について説明する。
【0028】
本発明の実施形態に係る移動体検出システムは、機械学習によって作成された学習モデルを用いて、振動センサーから出力される振動データから車両の移動を検出し、車両を検出した数を計数する。機械学習とは、コンピュータに人のような学習能力を獲得させるための技術であり、コンピュータが、事前に取り込まれる学習用データから学習モデルを作成し、新たなデータについてこれを適用して検出を行う技術のことをいう。
【0029】
学習モデルとは、ディープラーニング等の任意の機械学習アルゴリズムに従った機械学習モデルに対して、事前に適切な学習用データを用いて学習を行ったモデルをいう。本実施形態では、車両を検出するための学習モデルが、振動センサーから出力される学習モデルを作成するための振動データ(学習用測定データ)に基づく学習用データを用いて作成される。なお、本実施形態における学習モデルとして、回帰モデルが採用される。回帰モデルとは、機械学習アルゴリズムに教師データを用いて学習を行い、数値の予測が行えるように構築されたモデルのことである。
【0030】
振動センサーは、例えば、道路等に設置されている。振動センサーは、道路を通過した車両から道路に伝わる振動を検出し、振動データを出力する。制御部は、振動センサーから出力される振動データ(学習用測定データ)に基づいて学習用データを作成する。
【0031】
図1は、学習用測定データに基づき学習用データを作成する処理を説明するための図である。
図1(a)は、学習用測定データを示す図である。学習用測定データは、車両が道路を通過したときに道路に発生する振動が振動センサーによって検出された振動データである。本実施形態では、車両の測定データである学習用測定データから、一部が他の学習用データと時間的に重複した、2以上の学習用データが作成される。
【0032】
制御部は、学習用データを作成する場合、まず、学習用測定データの測定開示時刻(0秒)から所定長さのデータを抽出する。本実施形態では、所定長さを30秒とし、制御部は、
図1(b-1)に示すように、学習用測定データの測定開始時刻から30秒のデータを抽出する。抽出された30秒のデータが、学習用データとして使用される。1つ目の学習用データとしてデータの抽出を開始する時間(以下、「抽出開始時間」という。)は、学習用測定データの測定開始時刻(0秒)である。
【0033】
次に、制御部は、抽出開始時間を所定時間、時間軸方向にスライドし、所定長さのデータを抽出する。本実施形態では、所定時間を0.5秒とし、制御部は、
図1(b-2)に示すように、測定開始時刻から0.5秒、時間軸方向にスライドした抽出開始時間(0.5秒)から30秒のデータを抽出する。次に、制御部は、
図2(b-3)に示すように、測定開始時刻から0.5秒経過した時点からさらに0.5秒時間軸方向にスライドした抽出開始時間(1.0秒)から30秒のデータを抽出する。このように、制御部は、学習用測定データにおいて、抽出開始時間を、所定時間(0.5秒)ずつ時間軸方向にスライドし、スライドした時間から所定長さ(30秒)のデータを抽出することで、学習用データを作成する。
【0034】
学習用データを作成する移動体検出システムの処理動作について、
図2に示すフローチャートにて説明する。制御部は、振動データを予め設定した長さ(60秒)に切り出して、学習用測定データとして読み込む(S1)。次に、制御部は、学習用測定データから所定長さ(30秒)のデータを抽出し、学習用データを作成する(S2)。次に、制御部は、抽出した学習用データの抽出が終了する時間(以下、「抽出終了時間」)が学習用測定データの測定終了時刻と一致しているか否かを判断する(S3)。制御部は、抽出した学習用データの抽出終了時間が学習用測定データの測定終了時刻と一致していないと判断した場合(S3:NO)、学習用データの抽出開始時間を所定時間(0.5秒)時間軸方向にスライドし(S4)、S2の処理を実行する。
【0035】
制御部は、抽出した学習用データの抽出終了時間が学習用測定データの測定終了時刻と一致していると判断した場合(S3:YES)、処理を終了する。制御部は、
図1に基づいて説明したとおり、学習用データの抽出終了時間が学習用測定データの測定終了時刻と一致するまで時間軸方向にスライドを繰り返し、複数の学習用データを作成する。
【0036】
例えば、学習用測定データの長さが60秒であったとする。制御部は、60秒間の振動データから所定長さが30秒の学習用データの抽出終了時間が学習用測定データの測定終了時刻と一致するまで、抽出開始時間を0.5秒ずつスライドする。この場合、抽出開始時間が0.5秒ずつ60回スライドされると、学習用データの終了時刻(30秒+0.5秒×60回=60秒)が学習用測定データの測定終了時刻(60秒)と一致するため、学習用データが61個作成されることになる。なお、スライドする時間が0.5秒とした場合、S3において、抽出した学習用データの抽出終了時間が学習用測定データの測定終了時刻と一致していると判断されるように、学習用測定データの長さは、60秒等、0.5秒で割り切れる長さとされる。
【0037】
次に、本実施形態に係る移動体検出システムの学習処理動作について、
図3に示すフローチャートに基づいて説明する。制御部は、上述した方法で学習用データを作成する(S21)。次に、制御部は、作成した各学習用データに対応する時間帯の通過車両数を計数し、正解ラベルを作成する(S22)。例えば、制御部は、移動する車両を撮影したビデオデータに対して、動画認識を用いて、車両の通行時間を認識し、車両の通行時間を記録した正解ラベルを作成する。
【0038】
次に、制御部は、学習用データに基づいて、ログメルスペクトログラム(log-Mel-spectrogram)を用いて特徴量を抽出する(S23)。
【0039】
ログメルスペクトログラムは、周波数分析を時間的に連続して行い、色によって強さを表すことで、強さ、周波数、時間の3次元表示する。また、メルスペクトログラムは、信号の周波数スペクトルを人間の聴覚特性に近づけるために、周波数軸がメル尺度と呼ばれる周波数尺度で表示される。メル尺度は、低い周波数帯域では周波数の変化が細かく表現され、高い周波数帯域では変化が緩やかに表現されるように設計される。ログメルスペクトログラムはメルスペクトログラムに対して対数を取る操作を行う。これにより、信号の強度や振幅の大きさを対数的に表示することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、ログメルスペクトログラムを用いて特徴量を抽出しているが、メル周波数ケプストラム係数(Mel Frequency Cepstrum Coefficients:MFCC)等その他の方法によって、特徴量を抽出してもよい。
【0041】
次に、制御部は、S23で抽出した特徴量と、S22で作成した通過台数の正解ラベルの時間帯とを関連づけて、学習させ、ディープラーニングを利用した学習モデルを作成する(S24)。
【0042】
ディープラーニングは、AI(人工知能)の要素技術の一つである。ディープラーニングとは、十分なデータ量があれば、人間の力なしに機械が自動的にデータから特徴を抽出してくれるディープニューラルネットワークを用いた学習のことである。ディープラーニングは、入力層と出力層との間の中間層を多層にすることで情報伝達及び処理を増やし、特徴量の精度や汎用性をあげ、検出精度を良好にすることが可能となる。
【0043】
次に、本実施形態に係る移動体検出システムの車両検出処理動作について、
図4に示すフローチャートに基づいて説明する。制御部は、振動センサーから出力された振動データを読み込む(S31)。次に、制御部は、読み込んだ振動データを所定長さ(30秒)のデータに分割する(S32)。本実施形態における学習モデルは、所定長さが30秒の学習用データを用いて作成されているため、通過台数を検出するためには、振動データを学習用データの長さに合わせる必要がある。このため、振動データを30秒ごとに分割する。
【0044】
次に、制御部は、分割したデータに基づいて、各分割したデータから特徴量を抽出する(S33)。なお、制御部は、学習モデルの作成と同様の抽出方法を用いて抽出する。つまり、本実施形態においては、ログメルスペクトログラムを用いて特徴量を抽出する。次に、制御部は、学習モデルとデータの特徴量とに基づいて、通過台数を検出する(S34)。次に、制御部は、分割した各データから検出した通過台数を集計する(S35)。本実施形態では、長さ30秒の学習モデルに基づいて、30秒ごとの通過台数が検出される。すなわち、30秒ごとに、2台、3台、5台といった通過台数が検出される。そして、これらの通過台数が、集計される。
【0045】
上述した方法で作成した学習用データに基づいて、学習が行われ、学習モデルが作成される。そして、作成された学習モデルと、測定された振動データと、に基づいて、移動体が検出される。具体的には、作成された学習モデルと振動データと、に基づいて、移動体の数が検出される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、移動体検出システムは、振動データを所定時間ずつ時間軸方向にスライドし、スライドした時間から所定長さのデータを抽出することで、学習用データに基づいて、学習モデルを作成する。これにより、長時間の測定を行うこと、又は、コストをかけることなく、移動体の検出精度を向上させることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0048】
上述の実施形態においては、移動体が車両である場合について説明した。これに限らず、移動体は、車両以外であってもよく、また、車両を含んでいてもよい。例えば、移動体は、四輪車両、二輪車両、及び、歩行者であり、大型四輪車両、中型四輪車両、小型四新車両、大型二輪車両、中型二輪車両、小型二輪車両、又は、歩行者に分類されるようになっていてもよい。また、移動体は、歩行者のみでもよい。
【0049】
上述の実施形態においては、制御部は、時間軸方向に0.5秒スライドすることによって複数の学習用データを作成した場合について説明した。これに限らず、スライドする所定時間は学習用データが、他の学習用データに重複するように調整すればよい。例えば、所定長さが30秒の学習用データであれば、30秒以内であれば、時間軸方向にスライドする時間は適宜変更してもよい。また、制御部は、スライドすることによって学習用データを作成する必要はなく、他の学習用データと時間的に重複するように学習用データを作成すればよい。例えば、学習用データ1の抽出開始時間を学習用測定データの測定開始時刻0秒とし、30秒の学習用データを作成する。また、学習用データ2の抽出開始時間を学習用測定データの測定開始時刻0.5秒とし、30秒の学習用データを作成する。このように予め抽出開始時間と所定長さを設定しておくようにしてもよい。
【0050】
上述の実施形態においては、制御部は、抽出した学習用データの抽出終了時間が学習用測定データの測定終了時刻と一致していると判断した場合に処理を終了する場合について説明した。これに限らず、抽出した学習用データの抽出終了時間が学習用測定データの終了時刻を超えた後の場合においても処理を終了してもよい。例えば、抽出した学習用データの抽出開始時間と、学習用測定データの終了時刻が一致した場合に処理を終了してもよい。この場合、制御部は、学習用測定データの終了時刻を超過した部分は無音データとして、学習用データを作成する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、移動体を検出する移動体検出システム、及び、移動体検出方法に好適に採用され得る。