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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023705
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
E04B1/94 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128075
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛇石 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 慧
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真美
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
(72)【発明者】
【氏名】飯田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA12
2E001HB02
2E001HC01
(57)【要約】
【課題】鉄骨柱及び鉄骨梁の少なくとも一方の耐火被覆材の外側が木質耐火被覆材で構成されている仕口部において、木質耐火被覆材が焼失することによる耐火性能の低下を抑制する。
【解決手段】柱側耐火被覆材120で耐火被覆された鉄骨柱20と梁側耐火被覆材150で耐火被覆された鉄骨梁50との仕口部11の耐火被覆構造100は、仕口部11において、柱側耐火下地材122と梁側耐火下地材152とが接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁との仕口部の耐火被覆構造であって、
前記鉄骨柱の周囲には、柱側耐火下地材が設けられ、
前記鉄骨梁の周囲には、梁側耐火下地材が設けられ、
前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材の少なくとも一方の周囲には、木質耐火被覆材が設けられ、
前記仕口部において、
前記柱側耐火下地材と前記梁側耐火下地材とが接触している、
耐火被覆構造。
【請求項2】
前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材における熱膨張係数が大きい一方の側面に熱膨張係数が小さい他方の端面が接触している、
請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材における柔軟性を有する一方の側面に他方の端面が接触している、
請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項4】
耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁との仕口部の耐火被覆構造であって、
前記鉄骨柱の周囲には、柱側耐火下地材が設けられ、
前記鉄骨梁の周囲には、梁側耐火下地材が設けられ、
前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材の少なくとも一方の周囲には、木質耐火被覆材が設けられ、
前記仕口部の外周は、仕口側耐火部材で構成され、
前記仕口部において、
前記柱側耐火下地材と前記梁側耐火下地材とが、それぞれ前記仕口側耐火部材に接触している、
耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、補強材に固定されたラスシートとラスシートのラスが形成された面に吹付けられた耐火被覆材とを有する耐火構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、補強材は、鉄骨梁と間仕切り壁の間で、鉄骨梁から間仕切り壁の位置まで至るように水平方向に配置され、ラスが形成された面がラスシートの下面であり、ラスシートの下面の耐火被覆材と鉄骨梁に吹付けられた耐火被覆材が連続している。
【0003】
特許文献2には、上下の水平耐火区画の間に建込む乾式工法の耐火間仕切壁と柱・梁との接合構造及び接合方法に関する技術が開示されている。この先行技術では、耐火間仕切壁の末端部又は上端部は、柱又は梁の耐火被覆を分断して柱又は梁の表面に達する。耐火間仕切壁の中空部には、壁面材と連接する壁内耐火材が配置される。壁内耐火材は、壁面材を介して耐火被覆材と耐火上連続し、柱又は梁を全面的に被覆する耐火被覆が、耐火被覆材、壁面材及び壁内耐火材により形成される。柱又は梁の耐火被覆材は、耐火間仕切壁の壁面材及び壁内耐火材を施工した後に施工される。
【0004】
特許文献3には、鉄骨構造部材からなる柱または梁に耐火間仕切壁を取り合わせる構造及び方法に関する技術が開示されている。この先行技術では、鉄骨構造部材の下面に耐火間仕切壁の上端部が突き付けられた状態で接続され、鉄骨構造部材に取り付けられた複数の下地を介して複数の成型耐火被覆材が鉄骨構造部材の周囲に配置される。鉄骨構造部材の下部を覆う成型耐火被覆材は耐火間仕切壁を挟んで2分割され、分割された成型耐火被覆材の端部が耐火間仕切壁の表面に接続され、成型耐火被覆材と耐火間仕切壁とが一体となって鉄骨構造部材の所定の耐火性能を確保し、且つ、防火区画を形成する。
【0005】
特許文献4には、耐火被覆が施された鉄骨部材にて構成される軸組み内に遮音壁を設けた遮音耐火構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、耐火被覆に当接する遮音壁の端部に、耐火被覆の表面に密接する遮音材を設けており、さらに遮音材は、遮音壁の端部から壁厚方向外側に張り出して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7267473号
【特許文献2】特開2003-064804号公報
【特許文献3】特開2008-240355号公報
【特許文献4】特開2011-163042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
耐火被覆された鉄骨柱及び耐火被覆された鉄骨梁の少なくとも一方の耐火被覆材の外側が木質耐火被覆材で構成されていることがある。このような耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁との仕口部では、木質耐火被覆材が焼失して耐火被覆材に隙間が生じると耐火性能が著しく低下する虞がある。
【0008】
本発明は、上記事実を鑑み、鉄骨柱及び鉄骨梁の少なくとも一方の耐火被覆材の外側が木質耐火被覆材で構成されている仕口部において、木質耐火被覆材が焼失することによる耐火性能の低下を抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様は、耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁との仕口部の耐火被覆構造であって、前記鉄骨柱の周囲には、柱側耐火下地材が設けられ、前記鉄骨梁の周囲には、梁側耐火下地材が設けられ、前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材の少なくとも一方の周囲には、木質耐火被覆材が設けられ、前記仕口部において、前記柱側耐火下地材と前記梁側耐火下地材とが接触している、耐火被覆構造である。
【0010】
第一態様の耐火被覆構造では、耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁との仕口部において、柱側耐火下地材と梁側耐火下地材とが接触しているので、木質耐火被覆材が焼失しだけでは耐火被覆に隙間が生じない。したがって、木質耐火被覆材が焼失すると隙間が生じる場合と比較し、耐火性能の低下が抑制される。
【0011】
第二態様は、前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材における熱膨張係数が大きい一方の側面に熱膨張係数が小さい他方の端面が接触している、第一態様に記載の耐火被覆構造である。
【0012】
第二態様の耐火被覆構造では、柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材の熱膨張係数が大きい一方の耐火下地材(柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材の熱膨張係数が大きい方)の側面に熱膨張係数が小さい他方の耐火下地材(柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材の熱膨張係数が小さい方)の端面が接触している。言い換えると、熱膨張係数が大きい柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材の一方の側面に熱膨張係数が小さい柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材の他方の端面が接触している。したがって、熱膨張係数が大きい一方の耐火下地材が熱膨張しても熱膨張係数が小さい他方の耐火下地材は破損しないので、耐火性能の低下が防止又は抑制される。
【0013】
第三態様は、前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材における柔軟性を有する一方の側面に他方の端面が接触している、第一態様に記載の耐火被覆構造である。
【0014】
第三態様の耐火被覆構造では、柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材における柔軟性を有する一方の耐火下地材(柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材の柔軟性がある一方)の側面に他方の耐火下地材(柱側耐火下地材及び梁側耐火下地材の他方)の端面が接触している。他方の耐火下地材が熱膨張しても一方の柔軟性を有する耐火下地材は追従して変形するだけで破損しない。よって、耐火性能の低下が防止又は抑制される。
【0015】
第四態様は、耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁との仕口部の耐火被覆構造であって、前記鉄骨柱の周囲には、柱側耐火下地材が設けられ、前記鉄骨梁の周囲には、梁側耐火下地材が設けられ、前記柱側耐火下地材及び前記梁側耐火下地材の少なくとも一方の周囲には、木質耐火被覆材が設けられ、前記仕口部の外周は、仕口側耐火部材で構成され、前記仕口部において、前記柱側耐火下地材と前記梁側耐火下地材とが、それぞれ前記仕口側耐火部材に接触している、耐火被覆構造である。
【0016】
第四態様の耐火被覆構造では、耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁との仕口部において、柱側耐火下地材と梁側耐火下地材とが仕口側耐火部材に接触しているので、木質耐火被覆材が焼失しただけでは耐火被覆に隙間が生じない。したがって、木質耐火被覆材が焼失すると隙間が生じる場合と比較し、耐火性能の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、木質耐火被覆材が焼失することによる耐火性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態の耐火被覆構造が適用された仕口部のX方向に沿った鉛直断面図である。
図2】第一実施形態の耐火被覆構造が適用された仕口部の水平断面図である。
図3】第一実施形態の変形例の耐火被覆構造が適用された仕口部のX方向に沿った鉛直断面図である。
図4】第一実施形態の変形例の耐火被覆構造が適用された仕口部の水平断面図である。
図5】第二実施形態の耐火被覆構造が適用された仕口部のX方向に沿った鉛直断面図である。
図6】第二実施形態の耐火被覆構造が適用された仕口部の水平断面図である。
図7】第三実施形態の耐火被覆構造が適用された仕口部の水平断面図である。
図8】耐火被覆された鉄骨柱の水平断面図である。
図9】耐火被覆された鉄骨梁の鉛直断面図である。
図10図1の要部の拡大図である。
図11】第一比較例の図10に対応する拡大図である。
図12】第二比較例の図10に対応する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に耐火被覆構造について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向と直交する鉛直方向をZ方向として、矢印Zで示す。
【0020】
[構成]
まず、耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁とが接合された仕口部における本実施形態の耐火被覆構造100の構成について説明する。
【0021】
図1には耐火被覆された鉄骨柱20と耐火被覆された鉄骨梁50A、50B、50C、50D(図2も参照)とが接合された仕口部11における鉛直断面が図示され、図2には水平断面が図示されている。本実施形態では、図2に示すように、鉄骨柱20は角形鋼管で構成され(図8も参照)、図1に示すように、鉄骨梁50A、50B、50C、50D(図2及び図9も参照)はH形鋼で構成されているが、これらに限定されるものではない。
【0022】
なお、以降、鉄骨梁50A、50B、50C、50Dを区別して説明する必要がない等のときは、符号の後のA、B、C、Dを省略し鉄骨梁50と記載し説明する場合がある。更に、他の部材においても符号の後のA、B、C、Dを省略して記載し説明する場合もある。
【0023】
図1に示すように、鉄骨梁50は、前述したようにH形鋼であり、上フランジ52、下フランジ54及びウエブ56でH字形状を成す鋼材である。また、鉄骨梁50の上フランジ52の上には、鉄筋コンクリート造のスラブ15が設けられている。本実施形態では、図1及び図2における左側に延びる鉄骨梁50Cは、他の鉄骨梁50A、50B、50Cよりも梁成が小さいが、これに限定されるものではない。
【0024】
図1及び図2に示すように、鉄骨梁50A、50B、50C、50Dは、鉄骨柱20の各側面22にそれぞれ接合されている。図1に示すように、鉄骨柱20の内部には、梁成に応じた鋼製のダイヤフラム12が設けられている。なお、鉄骨柱20と鉄骨梁50との接合構造は、既存の技術を用いた構造であるので、詳細な図示及び説明は省略する。
【0025】
図1図2及び図8に示すように、鉄骨柱20の周囲には柱側耐火被覆材120が設けられている。図2及び図8に示すように、柱側耐火被覆材120は、鉄骨柱20の側面22と間隔をあけて設けられている。なお、図8に示すように、本実施形態では、柱側耐火被覆材120は、鉄骨柱20の側面22に接合されたリップ溝形鋼で構成された固定金具190にビス192で固定されているが、一例であってこれに限定されるものではない。例えば、特開2023-084597号公報の技術を用いることが可能である。
【0026】
図8に示すように、柱側耐火被覆材120は、水平断面が筒状とされ、筒状の柱側耐火下地材122と筒状の柱側木質耐火被覆材124とが積層されて構成されている。柱側耐火下地材122と柱側木質耐火被覆材124とは、接着剤やビス等によって接合されている。
【0027】
本実施形態の柱側耐火下地材122は複数枚の金属板121で構成されている。また、本実施形態の柱側木質耐火被覆材124は複数の集成材123で構成されている。更に、柱側木質耐火被覆材124の外面には、ビス192が納まるザグリ194が形成されている。本実施形態では、柱側木質耐火被覆材124の外面には化粧板102で被覆されている。なお、化粧板102で被覆されていなくてもよい。
【0028】
図9に示すように、各鉄骨梁50A、50B、50C、50D(図2参照)の上側、つまりスラブ15側を除く周囲には梁側耐火被覆材150A、150B、150C、150Dが設けられている。なお、図9では、鉄骨梁50Bの断面構造を図示しているが、他の鉄骨梁50A、50C、50Dも断面構造は同様である。よって、以降の図9の説明では符号の後のBを省略して説明する。
【0029】
図9に示すように、梁側耐火被覆材150は、鉄骨梁50の上フランジ52の側端部、下フランジ54の側端部及び下フランジ54の下面とそれぞれ間隔をあけて設けられている。なお、本実施形態では、梁側耐火被覆材150は、前述した柱側耐火被覆材120と同様に(図8参照)、鉄骨梁50の上フランジ52の下面、下フランジ54の上面及び下フランジ54の下面に接合されたリップ溝形鋼で構成された固定金具190にビス192で固定されているが、一例であってこれに限定されるものではない。同様に、特開2023-084597号公報の技術を用いることが可能である。
【0030】
梁側耐火被覆材150は、梁方向と直交する鉛直断面がU字状で不燃性の梁側耐火下地材152とU字状の梁側木質耐火被覆材154とが積層されて構成されている。梁側耐火下地材152と梁側木質耐火被覆材154とは、接着剤やビス等によって接合されている。
【0031】
本実施形態の梁側耐火下地材152は複数の石膏ボード151で構成されている。また、本実施形態の梁側木質耐火被覆材154は複数の集成材153で構成されている。梁側木質耐火被覆材154の外面には、ビス192が納まるザグリ194が形成されている。更に、本実施形態では、梁側木質耐火被覆材154の外面には化粧板102で被覆されているが、化粧板102で被覆されていなくてもよい。
【0032】
なお、図8及び図9以外の図では、固定金具190、ビス192、ザグリ194及び化粧板102の図示が省略されている。これは以降の変形例及び以降の実施形態でも同様である。また、図8及び図9で示す柱側耐火被覆材120及び梁側耐火被覆材150の鉄骨柱20及び鉄骨梁50への接合構造は、一例であって、これらに限定されるものではない。
【0033】
ここで、前述したように、柱側耐火下地材122は金属板121で構成されているので熱膨張係数が大きい。これに対して、梁側耐火下地材152は石膏ボード151で構成されているので熱膨張係数が非常に小さく殆ど熱膨張しない。つまり、柱側耐火下地材122の熱膨張係数は、梁側耐火下地材152の熱膨張係数よりも大きい。
【0034】
なお、図1に示すように、柱側耐火被覆材120におけるスラブ15の上方の下端部、つまり、柱側耐火下地材122の下端部127及び柱側木質耐火被覆材124の下端部129は、それぞれスラブ15に接触又は埋設されている。なお、施工上隙間ができた場合は、同材で埋めたり、耐火性のある材料、例えば耐火パテ、ロックウール及びAESウールで隙間を埋めたりしてもよい。
【0035】
また、図1及び図9に示すように、梁側耐火被覆材150におけるスラブ15の下方の上端部、つまり、梁側木質耐火被覆材154の上端部及び梁側耐火下地材152の上端部は、それぞれスラブ15に接触又は埋設されている。なお、同様に施工上隙間ができた場合は、同材で埋めたり、耐火性のある材料、例えば耐火パテ、ロックウール及びAESウールで隙間を埋めたりしてもよい。
【0036】
(仕口部の耐火被覆材の収まり)
つぎに、発明の要部である仕口部11における柱側耐火被覆材120と梁側耐火被覆材150との納まりについて説明する。
【0037】
図2に示すように、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124には、鉄骨梁50と干渉する部位に開口部119A、119B、119C、119Dが形成されている。なお、柱側木質耐火被覆材124の仕口部11における開口部119以外の部位を上部139とする。また、梁側耐火被覆材150の梁側耐火下地材152には、鉄骨梁50の下フランジ54及びウエブ56と干渉する部位にスリット118A、118B、118C、118Dが形成されている。
【0038】
図1図2及び図10に示すように、仕口部11においては、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124の側面126に、各梁側耐火被覆材150A、150B、150C、150Dの梁側木質耐火被覆材154A、154B、154C、154Dの端面156A、156B、156C、156Dが接触し接合されている。
【0039】
更に、仕口部11においては、柱側耐火被覆材120の柱側耐火下地材122の側面130に、各梁側耐火被覆材150A、150B、150C、150Dの梁側木質耐火被覆材152A、152B、152C、152Dの端面132A、132B、132C、132Dが接触し接合されている。
【0040】
このように、仕口部11は、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124と梁側耐火被覆材150の梁側木質耐火被覆材154とで囲まれている。そして、柱側木質耐火被覆材124と梁側木質耐火被覆材154とで囲まれた空間内で、柱側耐火下地材122の側面130に梁側耐火下地材152の端面132が接触し接合されている。つまり、仕口部11において、不燃性の柱側耐火下地材122と不燃性の梁側耐火下地材152とは、必ず接触しており、非接触部はない、つまり両者間に隙間はない。なお、梁側耐火下地材152の端面132と柱側耐火下地材122の側面130との間に施工上隙間が形成される場合、その隙間に梁側耐火下地材152と同材のものを埋める。また、この場合も柱側耐火下地材122の側面130に梁側耐火下地材152の端面132が接触して接合された構成に含まれる。
【0041】
[作用]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0042】
火災時に、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124及び梁側耐火被覆材150の梁側木質耐火被覆材154が燃焼して炭化することで断熱層として機能する。よって、柱側木質耐火被覆材124及び梁側木質耐火被覆材154を有していない場合と比較し、鉄骨柱20及び鉄骨梁50に対する耐火性能が向上する。
【0043】
また、火災時に、仕口部11において、柱側木質耐火被覆材124と梁側木質耐火被覆材154との接合部位が開いたり一部が焼失したりして隙間が生じても不燃性の柱側耐火下地材122と不燃性の梁側耐火下地材152とよって耐火性能が確保される。
【0044】
仕口部11において、不燃性の柱側耐火下地材122と不燃性の梁側耐火下地材152とは、必ず接触しており、非接触部はない、つまり両者間に隙間はない。したがって、柱側木質耐火被覆材124と梁側木質耐火被覆材154との接合部位が開いたり一部が焼失したりして隙間が生じることによる耐火性能の低下が抑制される。
【0045】
また、仕口部11において、金属板121で構成されている熱線膨張係数が大きい柱側耐火下地材122の側面130に石膏ボードで構成されている熱線膨張係数が小さい梁側耐火下地材152の端面132が接触している。したがって、火災熱によって金属板121で構成された柱側耐火下地材122が熱膨張して伸びても石膏ボード151で構成されている梁側耐火下地材152は破損しないので、耐火性能の低下が防止又は抑制される。
【0046】
(第一比較例)
ここで、仕口部11において、不燃性の柱側耐火下地材122と梁側耐火下地材152とが接触していない部位がある図11に示す第一比較例について説明する。
【0047】
図11の第一比較例では、柱側木質耐火被覆材124の側面126に梁側耐火下地材152の端面132が接触している。よって、柱側木質耐火被覆材124の側面126と梁側耐火下地材152の端面132との接触部位が燃焼して焼失すると、耐火被覆に隙間が生じ(S部参照)、耐火性能が大きく低下する。
【0048】
これに対して、図1図2及び図10の本実施形態では、前述したように不燃性の柱側耐火下地材122と梁側耐火下地材152とが接触している。よって、柱側木質耐火被覆材124及び梁側木質耐火被覆材154が焼失しても耐火被覆に隙間が生じないので耐火性能の低下が抑制される。
【0049】
(第二比較例)
次に、仕口部11において、金属板で構成されている熱線膨張係数が大きい柱側耐火下地材122の端面232が、石膏ボードで構成されている熱線膨張係数が小さい梁側耐火下地材152の側面に接触している図12に示す第二比較例について説明する。
【0050】
図12の第二比較例では、火災熱によって金属板で構成された柱側耐火下地材122が伸びると、石膏ボード151で構成されている梁側耐火下地材152が押されて破損し(H部参照)、耐火性能が低下する虞がある。
【0051】
これに対して、図1図2及び図10の本実施形態では、前述したように、金属板で構成されている熱線膨張係数が大きい柱側耐火下地材122の側面130に石膏ボードで構成されている熱線膨張係数が小さい梁側耐火下地材152の端面132が接触している。したがって、火災熱によって金属板で構成された柱側耐火下地材122が伸びても石膏ボード151で構成されている梁側耐火下地材152は破損しないので、耐火性能の低下が防止又は抑制される。
【0052】
[変形例]
次に本実施形態の変形例について説明する。
【0053】
図4に示す変形例では、梁側耐火被覆材150の梁側耐火下地材152には、柱側木質耐火被覆材124と同じように、鉄骨梁50と干渉する部位は、開口部117A、117B、117C、117Dが形成されている。つまり、図3に示すように、梁側耐火下地材152の上端の端面232は、下フランジ54よりも下方に位置している。
【0054】
よって、図2の柱側木質耐火被覆材124の仕口部11における開口部119以外の部位である上部139は、図4では図示されていない。
【0055】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略する。
【0056】
[構成]
まず、耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁とが接合された仕口部における本実施形態の耐火被覆構造104の構成について説明する。
【0057】
図5には耐火被覆された鉄骨柱20と耐火被覆された鉄骨梁50A、50B、50C、50D(図6参照)とが接合された仕口部11における鉛直断面が図示され、図6には水平断面が図示されている。
【0058】
図5及び図6に示すように、鉄骨柱20の周囲には柱側耐火被覆材120が設けられている。なお、柱側耐火被覆材120は、後述する要部以外の構造は第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
図5及び図6に示すように、各鉄骨梁50の上側、つまりスラブ15側を除く周囲には梁側耐火被覆材250が設けられている。梁側耐火被覆材250は、梁方向と直交する鉛直断面がU字状で不燃性の梁側耐火下地材252とU字状の梁側木質耐火被覆材154とが積層されて構成されている。本実施形態の梁側耐火下地材252は柔軟性を有するグラスウール251で構成されている。
【0060】
梁側木質耐火被覆材154は、第一実施形態と同様であるので説明を省略する。また、図示されていないが、梁側耐火被覆材250は、鉄骨梁50に巻き付けられ耐熱性の接着剤等で固定されている。よって、梁側耐火被覆材250は、鉄骨梁50に接触している。また、梁側木質耐火被覆材154は、同様に鉄骨梁50に接合した固定金具190にビス192(図9参照)で固定されている。なお、ビス192は梁側耐火被覆材250を貫通する。
【0061】
(仕口部の耐火被覆材の収まり)
つぎに、発明の要部である仕口部11における柱側耐火被覆材120と梁側耐火被覆材250との納まりについて説明する。
【0062】
図5及び図6に示すように、仕口部11においては、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124の側面126に、各梁側耐火被覆材150A、150B、150C、150Dの梁側木質耐火被覆材154A、154B、154C、154Dの端面156A、156B、156C、156Dが接触している。
【0063】
更に、仕口部11においては、各梁側耐火被覆材250A、250B、250C、250Dの梁側耐火下地材252A、252B、252C、252Dの側面230A、230B、230C、230Dに、柱側耐火被覆材120の柱側耐火下地材122の端面232が接触し接合されている。
【0064】
このように、仕口部11は、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124と梁側耐火被覆材150の梁側木質耐火被覆材154とで囲まれた空間内で、柱側耐火下地材122の端面232が梁側耐火下地材252の側面230に接触し接合されている。つまり、仕口部11において、不燃性の柱側耐火下地材122と不燃性の梁側耐火下地材252とは、必ず接触しており、非接触部はない、つまり両者間に隙間はない。
【0065】
なお、梁側耐火被覆材250の梁側耐火下地材252には、鉄骨梁50の下フランジ54及びウエブ56と干渉しないようにスリット218A、218B、218C、218Dが形成されている。
【0066】
[作用]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0067】
火災時に、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124及び梁側耐火被覆材150の梁側木質耐火被覆材154が燃焼して炭化することで断熱層と機能する。よって、柱側木質耐火被覆材124及び梁側木質耐火被覆材154を有していない場合と比較し、鉄骨柱20及び鉄骨梁50に対する耐火性能が向上する。
【0068】
また、仕口部11において、不燃性の柱側耐火下地材122と不燃性の梁側耐火下地材252とは、必ず接触しており、非接触部はない、つまり両者間に隙間はない。したがって、柱側木質耐火被覆材124と梁側木質耐火被覆材154との接合部位が開いたり一部が焼失したりして隙間が生じることによる耐火性能の低下が抑制される。
【0069】
更に、柔軟性を有するグラスウール251で構成され梁側耐火下地材252の側面230に金属板121で構成されている熱線膨張係数が大きい柱側耐火下地材122の端面232が接触している。したがって、火災熱によって金属板121で構成された柱側耐火下地材122が熱膨張して伸びても梁側耐火下地材252は柔軟性を有するグラスウール251で構成されているので容易に追従して変形し(本例では圧縮され)、破損しない。よって、耐火性能の低下が防止又は抑制される。
【0070】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略する。
【0071】
[構成]
まず、耐火被覆された鉄骨柱と耐火被覆された鉄骨梁とが接合された仕口部における本実施形態の耐火被覆構造106の構成について説明する。
【0072】
図7には耐火被覆された鉄骨柱20と耐火被覆された鉄骨梁50A、50B、50C、50Dとが接合された仕口部11における鉛直断面が図示されている。
【0073】
図7に示すように、鉄骨柱20の周囲には柱側耐火被覆材120が設けられている。なお、柱側耐火被覆材120は、後述する要部以外の構造は第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
各鉄骨梁50A、50B、50C、50Dの上側、つまりスラブ15側を除く周囲には梁側耐火被覆材150が設けられている。なお、梁側耐火被覆材150は、後述する要部以外の構造は第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
仕口部11の外周は、不燃性の仕口側耐火部材300で構成されている。本実施形態では、仕口部11の周囲にはコンクリートを打設することで、仕口側耐火部材300を構築している。別の観点から説明すると、本実施形態では、コンクリートで構成された仕口側耐火部材300内に鉄骨柱20と鉄骨梁50との接合部位が埋設された構造となっている。
【0076】
なお、仕口部11の外周を不燃性の仕口側耐火部材300とする構成は、一例であってこれに限定されるものではない。例えば、鉄骨柱20と鉄骨梁50との接合部位を石膏ボードで囲った構成であってもよいし、グラスウール251で覆った構成であってもよい。 また、鉄骨柱20の周囲には柱側耐火被覆材120が設けられ、鉄骨梁50の周囲には梁側耐火被覆材150が設けられている。柱側耐火被覆材120及び梁側耐火被覆材150は、後述する要部以外の構造は第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
(仕口部の耐火被覆材の収まり)
つぎに、発明の要部である仕口部11における柱側耐火被覆材120と梁側耐火被覆材150との納まりについて説明する。
【0078】
図7に示すように、仕口部11においては、仕口側耐火部材300の周面302に、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124の端面が接触する。また、各梁側耐火被覆材150の梁側木質耐火被覆材154の端面156は、仕口側耐火部材300の周面302又は柱側木質耐火被覆材124の側面126に接触する。
【0079】
更に、仕口部11においては、仕口側耐火部材300の周面302に、柱側耐火被覆材120の柱側耐火下地材122の端面232が接触すると共に各梁側耐火被覆材150の梁側耐火下地材152の端面132が接触する。つまり、仕口部11において、不燃性の柱側耐火下地材122及び不燃性の梁側耐火下地材152は、仕口側耐火部材300に必ず接触しており、非接触部はない、つまり両者間に隙間はない。なお、柱側耐火下地材122の端面232及び梁側耐火下地材152の端面132と仕口側耐火部材300の周面302との間に隙間がある場合、それぞれ同材のもので埋める。
【0080】
[作用]
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0081】
火災時に、柱側耐火被覆材120の柱側木質耐火被覆材124及び梁側耐火被覆材150の梁側木質耐火被覆材154が燃焼して炭化することで断熱層と機能する。よって、柱側木質耐火被覆材124及び梁側木質耐火被覆材154を有していない場合と比較し、鉄骨柱20及び鉄骨梁50に対する耐火性能が向上する。
【0082】
また、仕口部11において、不燃性の柱側耐火下地材122及び不燃性の梁側耐火下地材152は、不燃性の仕口側耐火部材300の周面302に必ず接触しており、非接触部はない、つまり両者間に隙間はない。したがって、柱側木質耐火被覆材124と梁側木質耐火被覆材154との接合部位が開いたり一部が焼失したりして隙間が生じることによる耐火性能の低下が抑制される。
【0083】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0084】
例えば、上記実施形態では、柱側耐火下地材122はいずれも金属板121で構成されていたが、これに限定されるものではない。柱側耐火下地材122は、例えば、石膏ボード、グラスウール、ロックウール、ケイカル板及びAESウールなどであってもよい。
【0085】
また、例えば、上記実施形態では、梁側耐火下地材152は石膏ボード151又はグラスウール251であったが、これらに限定されるものではない。梁側耐火下地材152は、金属板、グラスウール、ロックウール、ケイカル板及びAESウールなどであってもよい。
【0086】
また、例えば、上記実施形態では、柱側耐火被覆材120は柱側耐火下地材122と柱側木質耐火被覆材124とで構成され、梁側耐火被覆材150は梁側耐火下地材152と梁側木質耐火被覆材154とで構成されていたが、これに限定されるものではない。柱側木質耐火被覆材124及び梁側木質耐火被覆材154のいずれか一方がない構成であってもよい。
【0087】
また、第一実施形態では、熱膨張係数の大きい柱側耐火下地材の側面に熱膨張係数の小さい梁側耐火下地材の端面が接触した構成であったが、これに限定されるものではない。熱膨張係数の大きい梁側耐火下地材の側面に膨張係数の小さい柱側耐火下地材の端面が接触する構成であってもよい。
【0088】
また、第二実施形態では、柱側耐火下地材の端面が柔軟性を有する梁側耐火下地材の側面に接触した構成であったが、これに限定されるものではない。梁側耐火下地材の端面が柔軟性を有する柱側耐火下地材の側面に接触した構成であってもよい。なお、柔軟性を有する不燃性の耐火下地材としては、グラスウール251以外に、ロックウール及びAESウール等が挙げられる。
【0089】
また、例えば、上記実施形態では鉄骨柱20は、角形鋼管であったが、これに限定されるものではない。鉄骨柱は、例えば、丸形鋼管、H形鋼及びコンクリート充填鋼管等であってもよい。
【0090】
本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0091】
11 仕口部
20 鉄骨柱
50A 鉄骨梁
50B 鉄骨梁
50C 鉄骨梁
50D 鉄骨梁
100 耐火被覆構造
104 耐火被覆構造
106 耐火被覆構造
120 柱側耐火被覆材
122 柱側耐火下地材
124 柱側木質耐火被覆材
126 側面
130 側面
132A 端面
132B 端面
132C 端面
132D 端面
150A 梁側耐火被覆材
150B 梁側耐火被覆材
150C 梁側耐火被覆材
150D 梁側耐火被覆材
152A 梁側木質耐火被覆材
152B 梁側木質耐火被覆材
152C 梁側木質耐火被覆材
152D 梁側木質耐火被覆材
154A 梁側木質耐火被覆材
154B 梁側木質耐火被覆材
154C 梁側木質耐火被覆材
154D 梁側木質耐火被覆材
156A 端面
156B 端面
156C 端面
156D 端面
230A 側面
230B 側面
230C 側面
230D 側面
232 端面
250A 梁側耐火被覆材
250C 梁側耐火被覆材
300 仕口側耐火部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12