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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023717
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
B60C13/00 D
B60C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128098
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 ひかる
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC47
3D131BC49
3D131GA01
3D131GA03
(57)【要約】
【課題】隆起マークに起因したRFVの悪化を抑制することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤTは、サイドウォールゴム9が配設された一対のサイドウォール部2を備え、一対のサイドウォール部2のうち少なくとも一方は、第1標章表示部21と、第1標章表示部21よりもタイヤ周方向長さが大きい第2標章表示部22とを有する。第1及び前記第2標章表示部21,22には、それぞれ、タイヤ軸方向外側に隆起し且つサイドウォールゴム9と色彩が異なる異色ゴムを露出させた隆起マーク30が設けられている。第1標章表示部21に設けられた隆起マーク30は、異色ゴムがベタ塗り状に露出した第1隆起マーク31だけで形成され、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30は、異色ゴムが縁取り状に露出した第2隆起マーク32を含んで形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォールゴムが配設された一対のサイドウォール部を備え、
一対の前記サイドウォール部のうち少なくとも一方は、第1標章表示部と、前記第1標章表示部よりもタイヤ周方向長さが大きい第2標章表示部とを有し、
前記第1及び前記第2標章表示部には、それぞれ、タイヤ軸方向外側に隆起し且つ前記サイドウォールゴムと色彩が異なる異色ゴムを露出させた隆起マークが設けられ、
前記第1標章表示部に設けられた前記隆起マークは、前記異色ゴムがベタ塗り状に露出した第1隆起マークだけで形成され、前記第2標章表示部に設けられた前記隆起マークは、前記異色ゴムが縁取り状に露出した第2隆起マークを含んで形成されている空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2標章表示部に設けられた前記隆起マークは、前記第1及び前記第2隆起マークの組合せにより形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1標章表示部と前記第2標章表示部との間に標章非表示部が形成されており、
前記標章非表示部を挟む前記第1標章表示部と前記第2標章表示部との間の開き角度が40~80度である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記隆起マークの内周で囲まれる内領域の底面が、前記サイドウォール部のプロファイルラインよりもタイヤ軸方向外側に位置している請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1標章表示部に設けられた前記隆起マークのタイヤ径方向長さに比べて、前記第2標章表示部に設けられた前記隆起マークのタイヤ径方向長さが小さい請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1及び第2隆起マークの立ち上がり隅部が、それぞれ円弧状に形成されており、
前記第1隆起マークの前記立ち上がり隅部の曲率半径に比べて、前記第2隆起マークの前記立ち上がり隅部の曲率半径が小さい請求項1~5いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのサイドウォール部には、メーカ名や商品名、ブランド名などを表す文字や記号などの標章が表示されている。標章の視認性を高める観点から、サイドウォールゴムとは色彩が異なる白色ゴム(異色ゴムの一例)を用いた隆起マークによって標章を形成することが知られており、例えば特許文献1に記載されている。そのような隆起マークにより形成される標章がタイヤ周方向長さを互いに異ならせた一対で設けられている場合には、それらのボリューム差に起因して、タイヤのユニフォミティ、特にはRFV(ラジアルフォースバリエーション)の悪化を引き起こしやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-131283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、隆起マークに起因したRFVの悪化を抑制することができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の空気入りタイヤは、サイドウォールゴムが配設された一対のサイドウォール部を備え、一対の前記サイドウォール部のうち少なくとも一方は、第1標章表示部と、前記第1標章表示部よりもタイヤ周方向長さが大きい第2標章表示部とを有し、前記第1及び前記第2標章表示部には、それぞれ、タイヤ軸方向外側に隆起し且つ前記サイドウォールゴムと色彩が異なる異色ゴムを露出させた隆起マークが設けられ、前記第1標章表示部に設けられた前記隆起マークは、前記異色ゴムがベタ塗り状に露出した第1隆起マークだけで形成され、前記第2標章表示部に設けられた前記隆起マークは、前記異色ゴムが縁取り状に露出した第2隆起マークを含んで形成されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態の空気入りタイヤを示す半断面図
図2】空気入りタイヤをタイヤ軸方向外側から見た正面図
図3】第1標章表示部に設けられた隆起マークの(A)正面図、(B)X3-X3断面図、及び、(C)Y3-Y3断面図
図4図3(C)で示した部位の加硫成形直後の状態を示す断面図
図5】第2標章表示部に設けられた隆起マークの(A)正面図、(B)X4-X4断面図、及び、(C)Y4-Y4断面図
図6図5(C)で示した部位の加硫成形直後の状態を示す断面図
図7】内領域を有する隆起マークの(A)正面図、(B)X7-X7断面図、及び、(C)Y7-Y7断面図
図8】変形例に係る空気入りタイヤをタイヤ軸方向外側から見た正面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0008】
図1は、本実施形態の空気入りタイヤTを示す半断面図であり、タイヤ半部のタイヤ子午断面(タイヤTの中心軸を含む平面で切断した断面)を示している。このタイヤTは、サイドウォールゴム9が配設された一対のサイドウォール部2を備えている。タイヤTは、一対のビード部1と、ビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えた自動車用タイヤである。
【0009】
ここで、タイヤ径方向は、タイヤTの直径に沿った方向であり、図1の上下方向に相当する。図1に示す範囲において上側がタイヤ径方向外側となり、下側がタイヤ径方向内側となる。タイヤ軸方向は、タイヤTの中心軸(回転軸)と平行な方向であり、図1の左右方向に相当する。タイヤ赤道TCに近付く側がタイヤ軸方向内側となり、タイヤ赤道TCから離れる側がタイヤ軸方向外側となる。タイヤ赤道TCは、タイヤTのタイヤ軸方向中央に位置し、トレッド平面視においてタイヤTの中心軸に直交する仮想線である。タイヤ周方向は、タイヤTの中心軸周りの方向である。
【0010】
ビード部1には、環状のビードコア1aが埋設されている。ビードコア1aは、鋼線などの収束体をゴム被覆して形成されている。ビードコア1aのタイヤ径方向外側には、ビードフィラー1bが配置されている。ビードフィラー1bは、ビードコア1aからタイヤ径方向外側に延びた断面三角形状のゴムにより形成されている。ビードフィラー1bのタイヤ軸方向外側には、環状のリムプロテクタ81が形成されている。リムプロテクタ81は、図示しないホイールに装着された状態でリムフランジを保護するように、タイヤ軸方向外側へ突出している。
【0011】
タイヤTは、一対のビード部1の間に跨ってトロイド状に延在したカーカス4を備える。カーカス4は、ビードコア1a及びビードフィラー1bを挟み込むようにしてタイヤ軸方向の内側から外側に巻き上げられている。カーカス4は、カーカスコードをゴム被覆して形成されたカーカスプライにより形成されている。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して交差する方向(例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度となる方向)に引き揃えられている。カーカスコードの材料には、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミドなどの有機繊維が好ましく用いられる。
【0012】
タイヤTは、カーカス4のタイヤ径方向外側に積層されたベルト5を備える。ベルト5は、互いに積層された複数(本実施形態では2枚)のベルトプライ5a,5bにより形成されている。ベルトプライ5a,5bは、それぞれベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルトコードは、タイヤ周方向に対して傾斜する方向(例えば、タイヤ周方向に対して20~30度の角度となる方向)に引き揃えられている。ベルトコードの材料には、スチールなどの金属が好ましく用いられる。ベルトプライ5a,5bは、それらの間でベルトコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。
【0013】
タイヤTは、ベルト5のタイヤ径方向外側に積層されたベルト補強材6を備える。ベルト補強材6は、ベルト補強コードをゴム被覆して形成されたベルト補強プライにより形成されている。ベルト補強コードは、タイヤ周方向に対して実質的に平行に引き揃えられている。ベルト補強プライは、例えば、ゴム被覆された1本又は複数本のベルト補強コードをタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回することにより形成される。ベルト補強コードの材料には、上述した有機繊維が好ましく用いられる。
【0014】
タイヤ内面には、タイヤTの内圧を保持するインナーライナーゴム7が設けられている。インナーライナーゴム7は、ブチルゴムなどの空気遮蔽性に優れるゴムにより形成されている。ビード部1におけるカーカス4のタイヤ軸方向外側にはリムストリップゴム8が配設されている。トレッド部3の外表面には、トレッド面を形成するトレッドゴム10が設けられている。本実施形態では、トレッドゴム10がサイドウォールゴム9の外側に重ねられるTOS構造が採用されている。図示を省略しているが、トレッドゴム10の外周面には、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じたトレッドパターンが形成されている。
【0015】
サイドウォール部2におけるカーカス4のタイヤ軸方向外側には、サイドウォールゴム9及び白色ゴム11が設けられている。サイドウォールゴム9には、補強性充填剤としてのカーボンブラックを配合した黒色のゴム組成物(黒色ゴム)が用いられている。白色ゴム11には、補強性充填剤としてシリカやタルク、クレーなどのカーボンブラック以外の充填剤(非カーボンブラック系充填剤)を配合した白色のゴム組成物が用いられている。白色ゴム11は、サイドウォールゴム9と色彩が異なる異色ゴムに相当する。異色ゴムは、典型的には白色を呈するが、白色以外の色相を呈するゴムでもよい。
【0016】
本実施形態では、バットレス領域にブロック12が設けられている例を示す。ブロック12は、タイヤ周方向に間隔を置いて複数配設されている。バットレス領域は、サイドウォール部2のタイヤ径方向外側の領域、より詳しくはタイヤ最大幅位置2Mよりもタイヤ径方向外側の領域であって、平坦な舗装路での通常走行時には接地しない部分である。タイヤ最大幅位置2Mは、サイドウォール部2のプロファイルラインPLがタイヤ軸方向においてタイヤ赤道線TCから最も離れる位置である。プロファイルラインPLは、リムプロテクタ81やブロック12などの突起物を除いたサイドウォール部2の基本的な輪郭である。
【0017】
図2は、空気入りタイヤTをタイヤ軸方向外側から見た正面図であるが、ブロック12の図示は省略している。サイドウォール部2は、第1標章表示部21と、その第1標章表示部21よりもタイヤ周方向長さが大きい第2標章表示部22とを有する。第1及び第2標章表示部21,22には、メーカ名や商品名、ブランド名、タイヤサイズなどの情報を表す文字や記号などの標章が表示されている。第1標章表示部21のタイヤ周方向長さに対する第2標章表示部21,22のタイヤ周方向長さの比率は、例えば1.45~1.65である。図2では、第1及び第2標章表示部21,22のタイヤ周方向端を通ってタイヤ径方向に延びる4本の仮想線VLを描いており、上記の比率はこれらを基準として求められる。
【0018】
第1標章表示部21と第2標章表示部22とはタイヤ周方向に離隔し、タイヤTの中心軸CPを挟んで相対する位置に設けられている。第1標章表示部21と第2標章表示部22とは実質的に同じタイヤ径方向位置に設けられており、第1標章表示部21(の標章)を横切ってタイヤ周方向に延びる仮想線(図示せず)を引いた場合、その仮想線は第2標章表示部22(の標章)を横切る。第1及び第2標章表示部21,22は、いずれもタイヤ最大幅位置2M(図1参照)よりもタイヤ径方向内側に位置している。第1標章表示部21と第2標章表示部22との間には、標章の表示が無い標章非表示部23,24が形成されている。本実施形態では、タイヤ最大幅位置2Mを含まないタイヤ径方向の一定領域である帯状領域において標章表示部と標章非表部とが交互に並んでいる。
【0019】
標章非表示部23,24を挟む第1標章表示部21と第2標章表示部22との間の開き角度θ23,θ24は、好ましくは80度以下、より好ましくは70度以下であり、これにより第1及び第2標章表示部21,22のタイヤ周方向長さが適度に確保される。その結果、加硫成形の際にサイドウォールゴム9のジョイント箇所を第1標章表示部21または第2標章表示部22に配置する作業が簡単になり、当該ジョイント箇所による局部的な凹凸に起因した外観品質の低下を抑えるうえで都合が良い。開き角度θ23,θ24は、例えば40度以上である。第1標章表示部21の開き角度θ21及び第2標章表示部22の開き角度θ22は、例えば50度以上である。開き角度θ21~θ24は、タイヤTの中心軸CPを中心とした角度である。
【0020】
第1及び第2標章表示部21,22には、それぞれタイヤ軸方向外側に隆起し且つ白色ゴム11を露出させた隆起マーク30が設けられている。本実施形態では、「T」及び「O」の文字からなる標章をなす隆起マーク30が設けられているが、無論これに限られるものではない。白色ゴム11は、薄肉のカバーゴム90(図1参照)によって表面を覆われた状態で加硫成形され、隆起マーク30に対応する部分をモールド(図示せず)の凹部により隆起させた後、バフ加工などでカバーゴム90を研削除去することによりサイドウォール部2の表面に露出する。カバーゴム90は、白色ゴム11よりも耐オゾン性や耐疲労性、耐カット性に優れた黒色のゴム組成物(黒色ゴム)により形成されている。
【0021】
図3は、第1標章表示部21に設けられた隆起マーク30を示している。隆起マーク30は、プロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に隆起している。この隆起マーク30は、異色ゴムである白色ゴム11がベタ塗り状に露出した第1隆起マーク31により形成されている。白色ゴム11は、第1隆起マーク31の外表面(隆起マーク30の輪郭で囲まれた範囲)の全面に亘って露出している。尚、厳密には、カバーゴム90が第1隆起マーク31の輪郭に沿って露出するが、その厚みは極めて小さいため実質的に無視し得る。第1標章表示部21に設けられた隆起マーク30は、このような第1隆起マーク31だけで形成されている。
【0022】
図4は、図3(C)で示した部位の加硫成形直後の状態を示す。白色ゴム11は、カバーゴム90によって表面を覆われている。加硫成形で用いられるモールドには、隆起マーク30に対応する凹部が設けられており、その凹部に流入した白色ゴム11とカバーゴム90がプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に隆起している。プロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に離隔した研削ラインGLに沿って研削除去を施すことにより、図3(C)の状態となる。研削除去の作業性や隆起マーク30の見栄えを良くする観点から、研削ラインGLはプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に2.0mm以上離隔していることが好ましい。
【0023】
図5は、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30を示している。隆起マーク30は、プロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に隆起している。この隆起マーク30は、異色ゴムである白色ゴム11が縁取り状に露出した第2隆起マーク32により形成されている。白色ゴム11は、第2隆起マーク32の外表面(隆起マーク30の輪郭で囲まれた範囲)の周囲に沿って露出している。尚、厳密には、カバーゴム90が第2隆起マーク32の輪郭に沿って露出するが、その厚みは極めて小さいため実質的に無視し得る。第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30は、このような第2隆起マーク32を含んで形成されている。
【0024】
図6は、図5(C)で示した部位の加硫成形直後の状態を示す。図3及び4の例と同様に、研削ラインGLに沿って研削除去を施すことで図5(C)の状態となる。但し、図4では、隆起マーク30(第1隆起マーク31)の外表面の全面が研削ラインGLを越えて隆起しているのに対し、図6では、隆起マーク30(第2隆起マーク32)の外表面の周囲に沿った縁取り部分のみが研削ラインGLを越えて隆起し、その縁取り部分で囲まれた部分は研削ラインGLよりもタイヤ軸方向内側に位置している。このため、第2隆起マーク32は、第1隆起マーク31に比べてボリュームが小さくなる傾向にある。
【0025】
このタイヤTでは、タイヤ周方向長さが相対的に小さい第1標章表示部21に設けられた隆起マーク30が第1隆起マーク31だけで形成され、タイヤ周方向長さが相対的に大きい第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30が第2隆起マーク32を含んで形成されている。これにより、第1標章表示部21と第2標章表示部22とのボリューム差を低減して、隆起マーク30に起因したRFV(ラジアルフォースバリエーション)の悪化を抑制することができる。RFVは、タイヤのユニフォミティの一種であり、タイヤを転動させたときにトレッド部の接地面に発生するタイヤ径方向の力の変動量である。かかる第1及び第2標章表示部21,22は、一対のサイドウォール部2のうち少なくとも一方が有していればよい。
【0026】
本実施形態では、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30が、第1及び第2隆起マーク31,32の組合せにより形成されている。第2標章表示部22に設けられた複数の隆起マーク30のうち一部(具体的には3つの文字)は第1隆起マーク31であり、残りが第2隆起マーク32である。このように第1隆起マーク31と第2隆起マーク32とを混在させて標章の表示に変化を付けることにより、視認性を高めることができる。但し、これに限られず、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30は、第2隆起マーク32だけで形成されていてもよい。
【0027】
第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30において、第1隆起マーク31のボリュームV31に対する第2隆起マーク32のボリュームV32の比率(V32/V31)は、0.15以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましい。この比率を0.15以上とすることで、第2標章表示部22に占める第2隆起マーク32の割合を確保し、RFVの悪化を抑制する効果を適切に奏し得る。第1隆起マーク31と第2隆起マーク32との併用により視認性を高めるうえで、上記比率は0.30以下であってもよい。第2標章表示部22に含まれる第2隆起マーク32の個数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
【0028】
ボリュームV31は、白色ゴム11(及びカバーゴム90)が露出した第1隆起マーク31の各々の外表面の面積にプロファイルラインPLからの隆起高さH1を乗じることで求められる。また、ボリュームV32は、白色ゴム11(及びカバーゴム90)が露出した第2隆起マーク32の各々の外表面の縁取り部分の面積にプロファイルラインPLからの隆起高さH2を乗じて得られる値と、その縁取り部分で囲まれて白色ゴム11が露出しない部分の面積にプロファイルラインPLからの隆起高さH3を乗じて得られる値とを合計して求められる。ボリュームV32を小さくしてRFVの悪化を抑制するうえで、隆起高さH3は隆起高さH2の30%以下であることが好ましい。
【0029】
隆起高さH1,H2は、プロファイルラインPLと研削ラインGL(図4,6参照)との離隔距離に相当し、したがって2.0mm以上であることが好ましい。また、隆起高さH1は、隆起高さH2と実質的に同じであることが好ましい。これにより、隆起マーク30の外表面の高さのバラツキが抑えられ、標章の見栄えが良くなる。加えて、バフ加工などの研削除去が施されるタイヤ軸方向位置を第1隆起マーク31と第2隆起マーク32とで一律に設定できるため、作業性の悪化が避けられる。
【0030】
白色ゴム11(及びカバーゴム90)が露出した第2隆起マーク32の外表面の縁取り部分の幅W(図5参照)は、2.0mm以上であることが好ましい。これにより、加硫成形の際に、縁取り部分に対応したモールドの凹部に白色ゴム11が円滑に流入しやすくなり、白色ゴム11を適正に露出させるうえで都合が良い。また、幅Wは、4.0mm以下であることが好ましい。これにより、縁取り部分が太くなり過ぎず、第2隆起マーク32のボリュームを小さくしてRFVの悪化を抑制するうえで都合が良い。
【0031】
図7は、「O」の文字をなす第1隆起マーク31を示している。基本的な構造は、上述した「T」の文字をなす第1隆起マーク31と同じであるため、重複した説明を省略する。この例では、隆起マーク30の内周で囲まれる内領域30uの底面30Bが、サイドウォール部2のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に位置している。かかる構成によれば、そうでない構成と比べて、加硫成形の際に、モールドの凹部に白色ゴム11が円滑に流入しやすくなり、隆起マーク30を適正に形成するうえで都合が良い。図7では第1隆起マーク31が内領域30uを有する例を示すが、第2隆起マーク32が内領域を有する場合もこれと同様である。
【0032】
一対のサイドウォール部2のうち両方が上記の如き第1及び第2標章表示部21,22を有する場合は、それらの間で第1標章表示部21と第2標章表示部22とのタイヤ周方向における位置が逆の関係にあることが好ましい。つまり、タイヤ軸方向に沿ってタイヤTを透過させて見たときには、手前のサイドウォール部2の第1標章表示部21が奥のサイドウォール部2の第2標章表示部22と重複し、手前のサイドウォール部2の第2標章表示部22が奥のサイドウォール部2の第1標章表示部21と重複することが好ましい。このように一対のサイドウォール部2の間で標章表示部の位相をずらすことは、RFVの悪化を抑制するうえで都合が良い。
【0033】
第1及び第2標章表示部21,22の各々では、隆起マーク30のタイヤ径方向長さが一律に揃えられている。本実施形態では、第1標章表示部21に設けられた隆起マーク30のタイヤ径方向長さDL21が、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30のタイヤ径方向長さDL22と実質的に同じである(図2参照)。但し、図8に示すように、長さDL21に比べて長さDL22が小さい構造でもよく、その場合における長さDL22は、例えば長さDL1の55~75%である。かかる構成によれば、第1及び第2標章表示部21,22のボリューム差が更に低減するため、RFVの悪化の抑制に寄与し得る。
【0034】
第1及び第2隆起マーク31,32の立ち上がり隅部31c,32cは、プロファイルラインPLに沿ったサイドウォール部2の外表面と、そこから立ち上がる隆起マーク30の側面との入隅である(図3,5参照)。立ち上がり隅部31c,32cは、それぞれ円弧状に形成されている。かかる構成によれば、加硫成形後にモールドの凹部から隆起マーク30を取り出す際の脱型性が向上する。立ち上がり隅部31cの曲率半径Raに比べて、立ち上がり隅部32cの曲率半径Rbが小さいことが好ましく、その場合における曲率半径Rbは、例えば曲率半径Raの20~75%である。かかる構成によれば、第1及び第2標章表示部21,22のボリューム差が更に低減するため、RFVの悪化の抑制に寄与し得る。
【0035】
[1]
上記の通り、本実施形態の空気入りタイヤTは、サイドウォールゴム9が配設された一対のサイドウォール部2を備え、一対のサイドウォール部2のうち少なくとも一方は、第1標章表示部21と、第1標章表示部21よりもタイヤ周方向長さが大きい第2標章表示部22とを有し、第1及び前記第2標章表示部21,22には、それぞれ、タイヤ軸方向外側に隆起し且つサイドウォールゴム9と色彩が異なる異色ゴム(白色ゴム11)を露出させた隆起マーク30が設けられ、第1標章表示部21に設けられた隆起マーク30は、異色ゴムがベタ塗り状に露出した第1隆起マーク31だけで形成され、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30は、異色ゴムが縁取り状に露出した第2隆起マーク32を含んで形成されている。かかる構成によれば、第1標章表示部21と第2標章表示部22とのボリューム差を低減して、隆起マーク30に起因したRFVの悪化を抑制することができる。
【0036】
[2]
上記[1]の空気入りタイヤTにおいて、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30は、第1及び第2隆起マーク31,32の組合せにより形成されているものでもよい。第1隆起マーク31と第2隆起マーク32とを混在させて標章の表示に変化を付けることにより、視認性を高めることができる。
【0037】
[3]
上記[1]または[2]の空気入りタイヤTにおいて、第1標章表示部21と第2標章表示部22との間に標章非表示部23,24が形成されており、標章非表示部23,24を挟む第1標章表示部21と第2標章表示部22との間の開き角度θ23,θ24が40~80度であることが好ましい。かかる標章非表示部23,24が形成されていることにより、サイドウォールゴム9のジョイント箇所による局部的な凹凸に起因した外観品質の低下を抑えるうえで都合が良い。
【0038】
[4]
上記[1]~[3]いずれか1つの空気入りタイヤTにおいて、隆起マーク30の内周で囲まれる内領域30uの底面30Bが、サイドウォール部2のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に位置していることが好ましい。かかる構成によれば、そうでない構成と比べて、加硫成形の際に、モールドの凹部に白色ゴム11が円滑に流入しやすくなり、隆起マーク30を適正に形成するうえで都合が良い。
【0039】
[5]
上記[1]~[4]いずれか1つの空気入りタイヤTにおいて、第1標章表示部21に設けられた隆起マーク30のタイヤ径方向長さDL1に比べて、第2標章表示部22に設けられた隆起マーク30のタイヤ径方向長さDL2が小さいものでもよい。かかる構成によれば、第1及び第2標章表示部21,22のボリューム差を更に低減して、RFVの悪化をより効果的に抑制できる。
【0040】
[6]
上記[1]~[5]いずれか1つの空気入りタイヤTにおいて、第1及び第2隆起マーク31,32の立ち上がり隅部31c,32cが、それぞれ円弧状に形成されており、第1隆起マーク31の立ち上がり隅部31cの曲率半径Raに比べて、第2隆起マーク32の立ち上がり隅部32cの曲率半径Rbが小さいものでもよい。かかる構成によれば、第1及び第2標章表示部21,22のボリューム差を更に低減して、RFVの悪化をより効果的に抑制できる。
【0041】
以上、本開示の実施形態について説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、更に、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0042】
本開示の空気入りタイヤは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した実施形態で採用されている各構成については、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
9 サイドウォールゴム
11 白色ゴム(異色ゴム)
21 第1標章表示部
22 第2標章表示部
23 標章非表示部
30 隆起マーク
31 第1隆起マーク
31c 立ち上がり隅部
32 第2隆起マーク
32c 立ち上がり隅部
PL プロファイルライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8