(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023729
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】木質板材の加工方法
(51)【国際特許分類】
B27M 1/08 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
B27M1/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128115
(22)【出願日】2023-08-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1. 2022年9月27日付で宮城県仙台市青葉区梅田町1丁目において、株式会社大林組が建設中の建物の見学会を行うことにより公開。 2. https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220830_1.html# 2022年8月30日付で、株式会社大林組が自社ウェブページへの掲載及びプレスリリースを行うことによって公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】都築 民幸
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 秀利
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 得壮
【テーマコード(参考)】
2B250
【Fターム(参考)】
2B250AA01
2B250CA11
2B250DA04
2B250FA31
2B250HA01
(57)【要約】
【課題】板状建材の製作作業を容易に行うことが可能な木質板材の加工方法を提供することである。
【解決手段】木質板材1を建築物に用いられる板状建材2に加工する木質板材の加工方法であって、建築物のBIMモデルに含まれる板状建材2のデータを、汎用のデータ形式を介して加工機6に利用可能な加工機用データに変換するデータ変換工程と、加工機用データを用いて加工機6により木質板材1を加工して板状建材2を形成する加工工程と、を有することを特徴とする木質板材の加工方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質板材を建築物に用いられる板状建材に加工する木質板材の加工方法であって、
前記建築物のBIMモデルに含まれる前記板状建材のデータを、汎用のデータ形式を介して加工機に利用可能な加工機用データに変換するデータ変換工程と、
前記加工機用データを用いて前記加工機により前記木質板材を加工して前記板状建材を形成する加工工程と、を有することを特徴とする木質板材の加工方法。
【請求項2】
前記汎用のデータ形式がACIS形式を含む、請求項1に記載の木質板材の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCLTパネルなどの木質板材から板状建材を形成する木質板材の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅、共同住宅、仮設住宅、寄宿舎、宿泊施設、病院、老人介護施設などの建築物として、CLT(Cross Laminated Timber)などの木質板材で形成された板状建材により、壁、床、天井などが構成されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような建築物に使用される板状建材は、加工場などにおいて、大判の木質板材を加工機により加工して所定の形状に形成されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築物を実際に建築する前に、コンピュータ上で3次元CADソフトウェアを用いてBIM(Building Information Modeling)モデルを作成することで、建築作業の合理化や効率化を図ることが行われている。この場合、BIMモデルには、壁、床、天井などを構成する板状建材の形状のデータも含まれることになる。
【0006】
しかし、BIMモデルが作成された場合であっても、加工機により木質板材を加工して板状建材を形成する際には、加工機専用の形式で板状建材の形状等のデータを新たに作成する必要があり、その製作作業が煩雑である、という問題点があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、板状建材の製作作業を容易に行うことが可能な木質板材の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の木質板材の加工方法は、木質板材を建築物に用いられる板状建材に加工する木質板材の加工方法であって、前記建築物のBIMモデルに含まれる前記板状建材のデータを、汎用のデータ形式を介して加工機に利用可能な加工機用データに変換するデータ変換工程と、前記加工機用データを用いて前記加工機により前記木質板材を加工して前記板状建材を形成する加工工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の木質板材の加工方法は、上記構成において、前記汎用のデータ形式がACIS形式を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、板状建材の製作作業を容易に行うことが可能な木質板材の加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の一実施形態に係る木質板材の加工方法により形成された板状建材の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る木質板材の加工方法のフローチャート図である。
【
図4】本実施形態に係る木質板材の加工方法のより具体的な手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る木質板材の加工方法について、図面を参照しつつ詳細に例示説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る木質板材の加工方法は、木質板材を建築物に用いられる板状建材に加工する木質板材の加工方法である。
【0014】
板状建材が用いられる建築物は、例えば、戸建て住宅、共同住宅、仮設住宅、寄宿舎、宿泊施設、病院、老人介護施設などの種々の建築物であってよい。
【0015】
図1に示すように、本実施形態では、木質板材1は、厚みが一定の矩形形状の大判のCLT(Cross Laminated Timber)パネルである。CLTパネルは、複数枚のひき板1aを、互いに繊維方向が直交するように積層するとともに互いに接着して形成された木質の積層板材である。
【0016】
本実施形態では、木質板材1としてCLTパネルを用いるようにしているが、これに限らず、木質の板材であれば、例えばLVL(Laminated Veneer Lumber:複数枚のひき板1aを、繊維方向を揃えて積層するとともに互いに接着して形成された木質の積層板材)パネル、無垢材ないし集成材からなる板材など、種々のものを木質板材1として用いてもよい。また、木質板材1の形状、大きさ等も種々変更可能である。
【0017】
図2に示す板状建材2は、木質板材1を加工(トリミング加工)して所定形状に形成されたものである。本実施形態では、板状建材2は、建築物(不図示)を建築する際に、他の板状建材と組み合わされて建築物の躯体を構成するものであり、他の板状建材との組み合わせ部分となる2つの矩形の凹部2a、複数の孔2b(便宜上、
図2においては1つのみに符号を付している。)を有している。
【0018】
本実施形態では、板状建材2を建築物の躯体を構成するものとしたが、これに限らず、建築物の建材として用いられるものであれば、建築物の壁材ないし天井材として用いられるものなど、種々のものとしてもよい。また、板状建材2は、建築物の建材として用いられるものであれば、その形状や大きさ、孔2bの配置や数等も種々変更可能である。
【0019】
板状建材2を用いて建築される建築物は、実際に建築される前に、コンピュータ上で3次元CADソフトウェア(例えば「Revit」(登録商標))を用いてBIM(Building Information Modeling)モデルが作成されたものである。建築物のBIMモデルは、当該建築物に用いられる板状建材2の形状のデータを含んでいる。
【0020】
本実施形態に係る木質板材の加工方法は、加工機により木質板材1を加工して板状建材2を形成するにあたり、コンピュータ上で作成された建築物のBIMモデルと加工機との間でデータを連携させることで、従来必要とされていた加工機専用の形式での板状建材2の形状等のデータを新たに作成することを不要として、板状建材2の加工を容易に行うことができる。
【0021】
具体的には、
図3に示すように、本実施形態に係る木質板材の加工方法は、データ変換工程S1と加工工程S2とを有している。
【0022】
データ変換工程S1においては、建築物のBIMモデルに含まれる板状建材2のデータを、汎用のデータ形式(フォーマット)を介して加工機に利用可能な加工機用データに変換する。なお、BIMモデルに含まれる板状建材2のデータは、板状建材2の3次元の形状データである。
【0023】
図4に示すように、本実施形態では、データ変換工程S1において、コンピュータ3上で3次元CADソフトウェア(Revit(登録商標))を用いて建築物のBIMモデルを作成した後、BIMモデルに含まれる板状建材2のデータを、当該コンピュータ3により汎用のデータ形式に変換して出力し、加工を行う加工場のコンピュータ4に転送する。
【0024】
データ変換工程S1において用いられる汎用のデータ形式としては、ACIS形式(.sat)を用いるのが好ましい。ACIS形式は、BIMモデルに含まれる部品ないし部材のデータを出力する際に、面やボディを互いに別のファイルとして分解し、再構築して出力することができるので、BIMモデルに含まれる板状建材2のデータをACIS形式のデータに精度よく変換することができる。
【0025】
ACIS形式(.sat)の板状建材2のデータを受領した加工場のコンピュータ4において、当該コンピュータ4上において、板状建材2のデータに、例えば化粧面の識別表示付け、トラックで搬送する際に用いる止め穴を示す表示付けなどのデータ修正作業を行うようにしてもよい。
【0026】
なお、データ変換工程S1において用いられる汎用のデータ形式は、ACIS形式(.sat)に限らず、他のデータ形式であってもよい。
【0027】
本実施形態では、加工場のコンピュータ4において、汎用のデータ形式に変換されて転送されてきた板状建材2のデータを、当該コンピュータ4においてCADソフト用のデータ形式に変換する。本実施形態では、CADソフトはCADWORK社製の3次元キャドである「Cadwork」である。
【0028】
加工場のコンピュータ4において、CADソフトを用いて板状建材2のデータを修正するようにしてもよい。本実施形態では、コンピュータ4において、CADソフトを用いて板状建材2の加工機用データに穴加工用指示、材料の番号付けなどの修正を行うようにしている。また、加工場のコンピュータ4において、CADソフト上で、加工機により木質板材1を所定の形状の板状建材2に精度よく加工が可能か否かの確認を行うようにしてもよい。
【0029】
次に、コンピュータ4から加工機用ソフト(例えば「EasyWood」)を搭載した加工機用のコンピュータ5に板状建材2のデータを転送する。この際、板状建材2のデータは、Btl形式に変換して加工機用のコンピュータ5に転送するのが好ましい。板状建材2のデータをBtl形式に変換することで、加工機用のコンピュータ5に板状建材2のデータを精度よく転送することができる。コンピュータ5に入力された板状建材2のデータは、加工機に利用可能な加工機用データである。
【0030】
加工機用のコンピュータ5において板状建材2のデータを加工機用ソフトに読み込んだ後、さらに加工機用のコンピュータ5に加工機の情報等を入力することで、コンピュータ5上でシミュレーションを行って加工精度を確認するようにしてもよい。
【0031】
このように、データ変換工程S1においては、BIMモデルに含まれる板状建材2のデータを、汎用のデータ形式であるACIS形式(.sat)を含む複数の汎用データ形式を介して加工機6に利用可能な加工機用データに変換する。
【0032】
次に、加工工程S2において、データ変換工程S1においてデータ形式を変換されて加工機用のコンピュータ5に入力された板状建材2のデータすなわち加工機用データを加工機6に向けて出力する。加工機用データが入力された加工機6は、当該加工機用データに従って作動して木質板材1を所定形状に加工する。加工機6により木質板材1の加工が完了すると、BIMモデルにおける形状と同一の形状の板状建材2の製作が完了する。
【0033】
加工工程S2において用いられる加工機6は、加工機用データに従って作動して木質板材1を所定形状に加工することができるものであれば、種々のものを用いることができる。
【0034】
このように、本実施形態に係る木質板材の加工方法によれば、データ変換工程S1において、建築物のBIMモデルに含まれる板状建材2のデータを汎用のデータ形式を介して加工機6に利用可能な加工機用データに変換するようにしたので、BIMモデルに含まれる板状建材2のデータから、精度よく且つ容易に加工機用データを作成することができる。したがって、BIMモデルとは別に、加工機専用の形式で板状建材2の形状のデータを新たに作成する必要を無くして、板状建材2の製作作業を容易に行い得るようにすることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る木質板材の加工方法によれば、加工機専用の形式で板状建材2の形状のデータを新たに作成する必要がないので、板状建材2の製作作業を簡素化ないし省力化することができるとともに、当該データの作成ないし作図を含めた板状建材2の製作スケジュールを短縮することができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る木質板材の加工方法によれば、加工機専用の形式で板状建材2の形状のデータを新たに作成することなく、BIMモデルを精度よく変換して加工機用データを作成することができるので、加工機用データを用いた加工機6により木質板材を加工して形成される板状建材2の品質を高めることができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る木質板材の加工方法によれば、BIMモデルを精度よく加工機用データに変換することができるので、BIMモデルに含まれる板状建材2のデータと変換後の加工機用データとの一致を確認する作業を容易にすることができる。
【0038】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0039】
例えば、前記実施形態では、データ変換工程S1において、BIMデータに含まれる板状建材2のデータを、複数回の汎用のデータ形式への変換を介して加工機用データに変換するようにしているが、これに限らず、BIMデータに含まれる板状建材2のデータを、少なくとも1回の汎用のデータ形式を介して加工機用データに変換していれば、汎用のデータ形式を介した変換の回数は種々変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 木質板材
2 板状建材
3 コンピュータ
4 コンピュータ
5 コンピュータ
6 加工機