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特開2025-23741配線化ガラス基板及び配線化ガラス基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023741
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】配線化ガラス基板及び配線化ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20250207BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20250207BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
H05K3/10 E
H01L23/14 C
H05K1/03 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128143
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】391012729
【氏名又は名称】株式会社ミクロ技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】吉川 実
(72)【発明者】
【氏名】松原 智広
(72)【発明者】
【氏名】谷地田 智広
(72)【発明者】
【氏名】玉置 勝也
(72)【発明者】
【氏名】相坂 直樹
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA26
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB38
5E343BB44
5E343BB49
5E343BB75
5E343DD01
5E343DD76
5E343EE37
5E343GG11
(57)【要約】
【課題】エッチングによる穿孔による配線化ガラス基板の作製を簡素化して導電化のための加工を簡便とし、かつ配線化ガラス基板同士の積層化が容易である導電性の良好な配線化ガラス基板を提供する。
【解決手段】ガラス基板の厚さ方向に貫通孔部を備えて電気的に接続する配線化ガラス基板であって、ガラス基板の第1面部に形成される第1凹孔部と、ガラス基板の第1面部の反対面となる第2面部に形成され第1凹孔部と連通して貫通孔部を形成する第2凹孔部と、第1凹孔部に被着しガラス基板に対するエッチングの処理から第1金属膜部を保護する保護金属膜と、第1凹孔部に沿って被着する第1金属膜部と、第2凹孔部に沿って被着するとともに第1金属膜部と接触して電気的に接続する第2金属膜部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の厚さ方向に貫通孔部を備えて電気的に接続する配線化ガラス基板であって、
前記ガラス基板の第1面部に形成される第1凹孔部と、
前記ガラス基板の前記第1面部の反対面となる第2面部に形成され前記第1凹孔部と連通して前記貫通孔部を形成する第2凹孔部と、
前記第1凹孔部に被着し前記ガラス基板に対するエッチングの処理から前記第1金属膜部を保護する保護金属膜と、
前記第1凹孔部に沿って被着する第1金属膜部と、
前記第2凹孔部に沿って被着するとともに前記第1金属膜部と接触して電気的に接続する第2金属膜部と、を備える
ことを特徴とする配線化ガラス基板。
【請求項2】
前記保護金属膜は前記第1凹孔部に沿って被着し、
前記第2金属膜部は前記第2凹孔部に沿って被着し前記第1金属膜部と接触して電気的に接続する、請求項1に記載の配線化ガラス基板。
【請求項3】
前記保護金属膜が除去されている請求項1に記載の配線化ガラス基板。
【請求項4】
一の前記配線化ガラス基板の前記第2金属膜部に、他の前記配線化ガラス基板の前記第1金属膜部が接続される請求項1に記載の配線化ガラス基板。
【請求項5】
一の前記配線化ガラス基板の前記第2金属膜部に、他の前記配線化ガラス基板の前記第1金属膜部が導電性材料を介在して接続される請求項1に記載の配線化ガラス基板。
【請求項6】
前記導電性材料に金属部材が含まれている請求項5に記載の配線化ガラス基板。
【請求項7】
前記保護金属膜がクロムからなり、前記第1金属膜部及び前記第2金属膜部が銅からなる請求項1に記載の配線化ガラス基板。
【請求項8】
前記ガラス基板の厚さが10~50μmである請求項1に記載の配線化ガラス基板。
【請求項9】
前記第1凹孔部に沿って被着する前記第1金属膜部の凹部及び前記第2凹孔部に沿って被着する前記第2金属膜部の凹部に補強剤が備えられる請求項1に記載の配線化ガラス基板。
【請求項10】
請求項1に記載の配線化ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラス基板の第1面部にエッチング処理により第1凹孔部を形成する第1凹孔部形成工程と、
前記第1凹孔部に前記ガラス基板に対するエッチングの処理から前記第1金属膜部を保護する保護金属膜を被着させる保護金属膜被着工程と、
前記第1凹孔部に沿って第1金属膜部を被着させる第1金属膜部被着工程と、
前記ガラス基板の前記第1面部の前記第1凹孔部の反対面の第2面部にエッチング処理により第2凹孔部を形成する第2凹孔部形成工程と、
前記第2凹孔部に沿って第2金属膜部を被着させ前記第1金属膜部と接続させる第2金属膜部被着工程と、を備える
ことを特徴とする配線化ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
前記保護金属膜を除去する除去工程が備えられる請求項10に記載の配線化ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
一の前記配線化ガラス基板の前記第2金属膜部に、他の前記配線化ガラス基板の前記第1金属膜部を、導電性材料を介在させて接続し積層化する積層化工程が備えられる請求項10に記載の配線化ガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線化ガラス基板及び配線化ガラス基板の製造方法に関し、ガラスインターポーザ等に代表されるガラス板において細孔に導電性を付与した配線化ガラス基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装される各種のメモリ、CPU、GPU等の半導体素子は、電気的接続用の端子を有する。その接続用端子のピッチと、半導体素子と電気的に接続される回路基板の接続部のピッチは、通常、数倍から数十倍程度異なる。そのため、半導体素子と回路基板を電気的に接続するため、インターポーザと称される接続のための中継用基板が使用される。インターポーザの一方の面に半導体素子が実装され、他方の面に回路基板が接続される。
【0003】
インターポーザの材質としては、有機樹脂材料が使用されてきた。しかしながら、半導体素子の処理能力の向上、高度集積化に対応するため、インターポーザの微細な配線形成が求められている。しかしながら、従来の有機樹脂材料を使用したインターポーザでは、樹脂の吸湿、温度による伸縮が大きく微細配線への対応は困難であった。
【0004】
そこで、現在では有機樹脂材料の問題に対処するべく、ケイ素(シリコン)、ガラスを基材に用いたインターポーザが開発されている。これらの無機材料によると吸湿の影響が少なく、また、半導体素子との熱膨張率が近似し、温度による伸縮の影響は軽減されている。
【0005】
ただし、ケイ素(シリコン)を基材に用いたインターポーザは表面保護の必要性があり、材料、加工経費等が高価である。このことから、現在、ガラス製のインターポーザが趨勢である(特許文献1、2等参照)。
【0006】
ガラス製インターポーザ等のガラス基板への穿孔にはレーザ照射が使用されることが多い。しかしながら、レーザ照射によりガラス基板に複数の貫通孔を形成する際に必要となる処理時間の関係からガラス基板のエッチングによる穿孔が相対的に有利となり得る。また、ガラス基板の薄層化への要望も高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-113392号公報
【特許文献2】特開2018-170372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者はガラス基板のエッチングによる穿孔について鋭意検討を重ねた結果、穿孔後の貫通孔への導電性の付与に際し、導電化のための加工を簡便とし、配線化ガラス基板同士の積層化の容易な配線化ガラス基板を開発するに至った。
【0009】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、エッチングによる穿孔による配線化ガラス基板の作製を簡素化して導電化のための加工を簡便とし、かつ配線化ガラス基板同士の積層化が容易である導電性の良好な配線化ガラス基板及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、実施形態の配線化ガラス基板は、ガラス基板の厚さ方向に貫通孔部を備えて電気的に接続する配線化ガラス基板であって、ガラス基板の第1面部に形成される第1凹孔部と、ガラス基板の第1面部の反対面となる第2面部に形成され第1凹孔部と連通して貫通孔部を形成する第2凹孔部と、第1凹孔部に被着しガラス基板に対するエッチングの処理から第1金属膜部を保護する保護金属膜と、第1凹孔部に沿って被着する第1金属膜部と、第2凹孔部に沿って被着するとともに第1金属膜部と接触して電気的に接続する第2金属膜部とを備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、配線化ガラス基板において、保護金属膜は前記第1凹孔部に沿って被着し、第2金属膜部は第2凹孔部に沿って被着し第1金属膜部と接触して電気的に接続することとしてもよい。
【0012】
さらに、配線化ガラス基板において、保護金属膜が除去されていることとしてもよい。
【0013】
さらに、配線化ガラス基板において、一の配線化ガラス基板の第2金属膜部に、他の配線化ガラス基板の第1金属膜部が接続されることとしてもよい。
【0014】
さらに、配線化ガラス基板において、一の配線化ガラス基板の第2金属膜部に、他の配線化ガラス基板の第1金属膜部が導電性材料を介在して接続されることとしてもよい。
【0015】
さらに、配線化ガラス基板において、導電性材料に金属部材が含まれていることとしてもよい。
【0016】
さらに、配線化ガラス基板において、保護金属膜がクロムからなり、第1金属膜部及び第2金属膜部が銅からなることとしてもよい。
【0017】
さらに、配線化ガラス基板において、ガラス基板の厚さが10~50μmであることとしてもよい。
【0018】
さらに、配線化ガラス基板において、第1凹孔部に沿って被着する第1金属膜部の凹部及び第2凹孔部に沿って被着する第2金属膜部の凹部に補強剤が備えられることとしてもよい。
【0019】
また、実施形態の配線化ガラス基板の製造方法においては、ガラス基板の第1面部にエッチング処理により第1凹孔部を形成する第1凹孔部形成工程と、第1凹孔部にガラス基板に対するエッチングの処理から第1金属膜部を保護する保護金属膜を被着させる保護金属膜被着工程と、前記第1凹孔部に沿って第1金属膜部を被着させる第1金属膜部被着工程と、ガラス基板の第1面部の第1凹孔部の反対面の第2面部にエッチング処理により第2凹孔部を形成する第2凹孔部形成工程と、第2凹孔部に沿って第2金属膜部を被着させ第1金属膜部と接続させる第2金属膜部被着工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
さらに、配線化ガラス基板の製造方法において、保護金属膜を除去する除去工程が備えられることとしてもよい。
【0021】
さらに、配線化ガラス基板の製造方法において、一の配線化ガラス基板の第2金属膜部に、他の配線化ガラス基板の第1金属膜部を、導電性材料を介在させて接続し積層化する積層化工程が備えられることとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の配線化ガラス基板によると、ガラス基板の厚さ方向に貫通孔部を備えて電気的に接続する配線化ガラス基板であって、ガラス基板の第1面部に形成される第1凹孔部と、ガラス基板の第1面部の反対面となる第2面部に形成され第1凹孔部と連通して貫通孔部を形成する第2凹孔部と、第1凹孔部に被着しガラス基板に対するエッチングの処理から第1金属膜部を保護する保護金属膜と、第1凹孔部に沿って被着する第1金属膜部と、第2凹孔部に沿って被着するとともに第1金属膜部と接触して電気的に接続する第2金属膜部とを備えるため、エッチングによる穿孔による配線化ガラス基板の作製を簡素化して導電化のための加工が簡便となる。
【0023】
また、本発明の配線化ガラス基板の製造方法によると、ガラス基板の第1面部にエッチング処理により第1凹孔部を形成する第1凹孔部形成工程と、第1凹孔部にガラス基板に対するエッチングの処理から第1金属膜部を保護する保護金属膜を被着させる保護金属膜被着工程と、前記第1凹孔部に沿って第1金属膜部を被着させる第1金属膜部被着工程と、ガラス基板の第1面部の第1凹孔部の反対面の第2面部にエッチング処理により第2凹孔部を形成する第2凹孔部形成工程と、第2凹孔部に沿って第2金属膜部を被着させ第1金属膜部と接続させる第2金属膜部被着工程とを備えるため、エッチングによる穿孔による配線化ガラス基板の作製を簡素化して導電化のための加工を簡便とし、かつ配線化ガラス基板同士の積層化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】配線化ガラス基板の製造工程を示す(A)第1断面模式図、(B)第2断面模式図、(C)第3断面模式図である。
図2】配線化ガラス基板の製造工程を示す(A)第4断面模式図、(B)第5断面模式図、(C)第6断面模式図である。
図3】配線化ガラス基板の製造工程を示す(A)第7断面模式図、(B)第8断面模式図、(C)第9断面模式図である。
図4】(A)第1の実施形態の配線化ガラス基板の断面模式図、(B)第2の実施形態の配線化ガラス基板の断面模式図である。
図5】(A)エッチング処理時の第1断面模式図、(B)エッチング処理時の第2断面模式図、(C)エッチング処理時の第3断面模式図である。
図6】配線化ガラス基板の積層時の断面模式図である。
図7】配線化ガラス基板の積層時の他の例の断面模式図である。
図8】ベース基板に配線化ガラス基板を実装した状態の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態の配線化ガラス基板とは、ガラス基板の表裏面を貫通する貫通孔部を備え、当該貫通孔部に導電性の金属材料を配したガラス基板であり、主に、インターポーザとして用いられる。ここで言うガラスインターポーザとは、回路基板に実装される各種のメモリ、CPU、GPU等の半導体素子と、当該回路基板とを電気的に配線接続するための中継用の基板となる部材である。特に、ガラスインターポーザ自体はガラスと配線のための導電性材料のみにより形成されているため、樹脂等の熱膨張率の異なる材料を備えず、使用時の熱曝露に伴う変形が軽減される。むろん、実施形態の配線化ガラス基板は、インターポーザ以外の各種用途へ適用可能である。
【0026】
実施形態の配線化ガラス基板1について、図示とともにその製造方法から説明する。図1ないし図4の断面模式図は、ガラス基板の穿孔と導電性付与の加工工程を示す。図1(A)では、加工対象のガラス基板10が用意される。ガラス基板10には、例えば、半導体を有する基板の信頼性のされやすさの観点から無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス等が使用される。以降のエッチングの処理による腐食の影響から、最終的なガラス基板10の厚さは、10ないし50μm、好ましくは10ないし30μm、より好ましくは10ないし20μである。なお、図1(A)の加工の開始時点では、エッチングによる影響を考慮して厚さはおよそ50μm前後としている。図示では便宜上、ガラス基板10における下方側を第1面部11とし、その反対側を第2面部12としている。
【0027】
図1(B)のとおり、ガラス基板10の第1面部11に第1凹孔部13を形成する予定領域をエッチングするため(第1凹孔部13を形成するため)の表面保護膜21が備えられる。表面保護膜21にはガラスのフッ酸によるエッチングへの耐性からクロムが使用され、第1凹孔部13を形成する予定領域が表面保護膜21の開口部24として開口している。第1面部11の開口部24の形成に際しては、公知のパターン形成の手法が採用される。例えば、レジスト塗布、加熱(プリベーク)、露光、現像、加熱(ポストベーク)等の処理が行われる。また、第2面部12の開口部24の形成に際しても同様の処理が行われる。
【0028】
図1(C)のとおり、表面保護膜21の開口部24においてガラス基板10の第1面部11が露出しているため、同開口部24から浸入するフッ酸によりガラス基板10の第1面部11に凹部が形成されはじめて徐々に凹部は大きくなる。こうして、ガラス基板10の第1面部11にガラス基板10の厚さに応じた十分な面積の第1凹孔部13が形成される(「第1凹孔部形成工程」)。表面保護膜21はガラス基板10の第2面部12に形成されても、表面保護膜21を省略して第2面部12が露出されてもよい。実施形態はガラス基板10のエッチングにフッ酸を使用している。フッ酸に代えて苛性ソーダ等の強塩基溶液を用いてエッチングをすることができる。この場合、表面保護膜21及び保護金属膜23の材質を耐塩基性の材質に適宜変更可能である。
【0029】
図1の各図より、ガラス基板10の片面側である第1面部11に所定の大きさの第1凹孔部13が形成される。そして、図2(A)のとおり、第1面部11及び第2面12に形成された表面保護膜21が除去される。図2(B)のとおり、先に、保護金属膜23が第1凹孔部13の内周面16及び第1凹孔部13の開口部近傍に形成される(「保護金属膜被着工程」)。保護金属膜23に被さるように、第1金属膜部26が第1凹孔部13の全体及び第1凹孔部13の周囲の第1面部11に被着される(「第1金属膜部被着工程」)。
【0030】
保護金属膜23は後述の第2凹孔部14を形成する際の第1凹孔部13の周囲の第1金属膜部26へのエッチングの腐食作用の軽減を目的とする。図1の工程を経ることにより第1凹孔部13は規定された大きさに形成されている。そこで、出来上がった第1凹孔部13の形状を保持し、さらに、第2凹孔部14が形成される際に、保護金属膜23を被着させることにより極端に第1凹孔部13側へエッチングが進行して凹部の形状を大きくしすぎなくするためである。ガラス基板10の第1面部11における保護金属膜23及び第1金属膜部26の形成に際しては、公知のパターン形成の手法が採用される。例えば、レジスト塗布、加熱(プリベーク)、露光、現像、加熱(ポストベーク)等の処理が行われる。そこで、図示のとおり、保護金属膜23及び第1金属膜部26にパターン(図示では溝状の切れ込み)が形成される。
【0031】
図2(C)においては、前述の図2(B)のガラス基板10が支持用の基板に載置される。図示の実施形態は支持用の基板として後述のベース基板50を使用する。ベース基板50において、符号51はベース基板50の孔部、52はベース電極である。そして、第1凹孔部13を閉塞するように導電性材料31が充填される(詳細は図6の説明参照)。なお、支持用の基板として図示のベース基板50の他に支持用のダミー基板等のガラス基板10を保持可能な部材である限り適宜である。ガラス基板10は後述するエッチングに伴う薄層化により、板厚は10μm前後となる。この場合、薄層化したガラス基板10を単独で搬送、加工することは困難であるため、予めガラス基板10の取り扱いやすさの向上、撓み変形への抵抗性、搬送の容易さの観点からガラス基板10は加工の初期段階において支持用の基板に載置される。
【0032】
図3(A)においては、前述の図2(B)のガラス基板10の第2面12側において、ガラス基板10に対してエッチングによる薄層化(スリミングとも称され、エッチング処理を通じてのガラス基板の板厚を減少させること)が行われ、ガラス基板10の最終的な板厚に加工される。ガラス基板10の最終的な板厚は好ましくは10ないし20μmである。エッチングによる薄層化(スリミング)に際し、ベース基板50へのエッチングの影響を回避するため、ベース基板50には腐食保護用のフィルムの貼着または樹脂塗材の塗布等が行われる。
【0033】
エッチングによる薄層化(スリミング)の後、図3(B)のとおり、ガラス基板10の第2面12側に第2凹孔部14を形成する予定領域をエッチングするため(第2凹孔部14を形成するため)の表面保護膜21が備えられる。第2凹孔部14を形成する予定領域が表面保護膜21の開口部24として開口している。そこで、表面保護膜21の開口部24においてガラス基板10の第2面部12が露出しているため、同開口部24から浸入するフッ酸によりガラス基板10の第2面部12にも凹部が形成されはじめて徐々に凹部は大きくなる。こうして、ガラス基板10の第2面部12にもガラス基板10の厚さに応じた十分な大きさの第2凹孔部14が形成される(「第2凹孔部形成工程」)。
【0034】
そして、第2凹孔部14はついに第1凹孔部13に到達し、ガラス基板10の第1面部11から第2面部12につながる貫通孔部15が形成される。保護金属膜23は第1凹孔部13に被着しているため、第2面部12側から浸入するエッチングの障害となり、エッチングは第1凹孔部13側に極度に進みにくくなる。従って、第1凹孔部13の形状が維持されて第2面部12のエッチングは終了する。
【0035】
図3(C)では、エッチングからの保護目的で備えられた表面保護膜21が除去される。保護金属膜23については、第2凹孔部14の底部分が除去され貫通孔部15において第1凹孔部13側の第1金属膜部26が露出する。そして、第2凹孔部14の凹形状に沿って第2金属膜部27が被着される(「第2金属膜部被着工程」)。ガラス基板10の第1凹孔部13を除く第1面部11に形成された保護金属膜23は、直下の支持用の基板となるベース基板50と密着している。このため、密着の間隙への薬液の浸透等は難しく、保護金属膜23の除去は困難であり、保護金属膜23は残留される。
【0036】
図1ないし図3の加工を経てガラス基板10の厚さ方向に貫通孔部15が形成され、第1金属膜部26と第2金属膜部27はガラス基板10の貫通孔部15において接合する。図示では、便宜上、貫通孔部15は1箇所の表示としている。実際のガラス基板10では、貫通孔部15は複数箇所形成される。
【0037】
図4(A)は表面保護膜21及び保護金属膜23の除去が省略された形態である。保護金属膜23を第1金属膜部26が被覆し、表面保護膜21を第2金属膜部27が被覆した形態である。図4(A)の形態では、表面保護膜21及び保護金属膜23の除去を省略することにより加工及び付帯する処理の簡素化が図られる。図示では、説明の都合からベース基板50の構成は省略している。
【0038】
これに対し図4(B)では、前述の図3(C)に対応しており、第2金属膜部27の被着に先立ち、表面保護膜21及び貫通孔部15の保護金属膜23が除去される(「除去工程」)。そして、除去後に第1金属膜部26が露出して第2金属膜部27が被着される。
第1金属膜部26及び第2金属膜部27は銅等の同一の金属種であり、表面保護膜21及び保護金属膜23の成分はクロムであり、第1金属膜部26及び第2金属膜部27とは金属種が異なる。そのため、異種金属が除去されることにより、第1金属膜部26及び第2金属膜部27が直接接合することとなり導電性は良好となる。
【0039】
図1ないし図3にて詳述の工程を経ることにより配線化ガラス基板1は完成する。当該配線化ガラス基板1の構造をまとめると、配線化ガラス基板1は、ガラス基板10の厚さ方向に貫通孔部15が備えられ、電気的に接続される。ガラス基板10の第1面部11に第1凹孔部13が形成される。ガラス基板10の第1面部11の反対面となる第2面部12に第1凹孔部13と連通して貫通孔部15を形成する第2凹孔部が形成される。第1凹孔部13に被着しガラス基板10に対するエッチングの処理から第1金属膜部26を保護する保護金属膜23が備えられる。第1凹孔部13に沿って被着する第1金属膜部26が備えられる。第2凹孔部14に沿って被着するとともに第1金属膜部26と接触して電気的に接続する第2金属膜部27が備えられる。
【0040】
図4(A)の構造では、第1金属膜部26は保護金属膜23を被覆して第1凹孔部13に沿って被着する。そして、第2金属膜部27は第2凹孔部14に沿って被着し、第1金属膜部26は保護金属膜23を介して第2金属膜部27と接触して電気的に接続する。図4(B)の構造では、貫通孔部15の保護金属膜23が除去され、既に第1凹孔部13に沿って被着している第1金属膜部26の貫通孔部15内の第1凹孔部13の頂上側が露出する。そして、表面保護膜21が除去されて、第2面部12でガラス基板10のみとなった状態において、第2金属膜部27は第2凹孔部14に沿って被着し第1金属膜部26と接触して互いに電気的に接続する。
【0041】
第1金属膜部26と第2金属膜部27は共に銅箔、金箔等の導体であり、図4から理解されるように、第1金属膜部26と第2金属膜部27は貫通孔部15の中央で互いに接合する。そこで、ガラス基板10の両表面は貫通孔部15を通じて電気的に接続され(導電性が確保される)、配線化ガラス基板1が作製される。
【0042】
図5の断面模式図はエッチングによる第1凹孔部13及び第2凹孔部14の形成の様子を示す。特に図5は第1凹孔部13の近傍のみを拡大して示す。図5(A)では、フッ酸等のエッチング用の薬液に耐性を有するクロムの表面保護膜21がガラス基板10の第1面部11に形成(貼着)され、同時に表面保護膜21の開口部24が形成され第1面部11が露出する。図5の例示によると、開口部24の開口直径は約10μmである。開口部24のガラス基板10の露出面はエッチング用の薬液に曝露されてガラス質は徐々に浸食され、凹状の孔部が生じる。なお、フッ酸以外のエッチング用の処理液の場合には表面保護膜21等の材質は変更される。
【0043】
図5(B)では、さらに開口部24のエッチングが進行した状態である。図示から理解されるように、表面保護膜21は当初のまま残留し、開口部24から浸入したエッチング用の薬液によりガラス基板10のガラス質は浸食されて溶解する。つまり、エッチング用の薬液は表面保護膜21の背面にも回り込んでガラス質を浸食する。
【0044】
そして図5(C)のとおり、さらにエッチングの進行により所望の大きさの第1凹孔部13が形成される。ガラス質の浸食量はエッチング用の薬液との曝露時間に相関する。浸食により形成される凹状の孔部の大きさと深さは、ガラス基板10のエッチング用の薬液の散布または浸漬の時間を通じて調整される。
【0045】
図5の例示によると、エッチングを経て形成される第1凹孔部13はおおよそ台形錐の形状として形成される。図中、第1凹孔部13の第1面部11の起点位置13a,13a間の距離、すなわち第1凹孔部13の開口直径は開口部24の開口直径よりも大きい。第1凹孔部13の頂上部(底部)の起点位置13b,13bの距離、すなわち第1凹孔部13の頂上部(底部)の直径は第1凹孔部13の開口直径よりも小さくなる。そして、第1凹孔部13の第1面部11からの深さは開口部24の開口直径と同程度ないし開口直径よりも大きくなる。第1凹孔部13を台形錐と見立てたときの起点位置13aに傾斜角度θの斜辺が形成される。同様に、起点位置13bに傾斜角度φの斜辺が形成される。なお、傾斜角度θ及びφは説明の便宜上、模式化のために付した角度であり、実際のエッチングに際して起点位置、斜辺に変形、湾曲等は生じ得る。
【0046】
図5はガラス基板10における第1凹孔部13の形成の様子である。なお、第2凹孔部14の形成に際し、第2凹孔部14の形状は第1凹孔部13と同様に台形錐の形状であり、斜辺の傾斜角度は第1凹孔部13と同様の角度の範囲である。ただし、第2面部12の開口直径、第2面部12からの深さは、ガラス基板10のエッチング処理の時間を通じて加減され、最終的な第2凹孔部14の大きさが調整される。
【0047】
一連の図示から理解されるように、第1凹孔部13及び第2凹孔部14はともに台形錐の形状として形成され、しかも、ガラス基板10の表面を起点として凹状に落ち込む傾斜角度を有するすり鉢状である。このような傾斜角度であることから、第1金属膜部26と第2金属膜部27は比較的容易に第1凹孔部13と第2凹孔部14の表面に被着可能である。第1金属膜部26と第2金属膜部27は銅箔等の金属であるため、第1金属膜部26と第2金属膜部27は金属の延展性により、ガラス基板10の表面である第1面部11及び第2面部12と、第1凹孔部13及び第2凹孔部14の各傾斜面に順応して貼り付くことが可能となる。
【0048】
こうして、ガラス基板10に形成された第1凹孔部13及び第2凹孔部14は互いに貫通することになり、結果的にガラス基板10の厚さ方向に貫通孔部15が形成される。そこで、前出の図4の説明のとおり、第1金属膜部26と第2金属膜部27は貫通孔部15の中央で互いに接合して、ガラス基板10の両表面は貫通孔部15を通じて電気的に接続される。
【0049】
図示の実施形態の第1凹孔部13及び第2凹孔部14は台形錐に近似した形状であることから、銅箔等の金属皮膜の被着による加工が可能である。つまり、第1凹孔部13及び第2凹孔部14の該当箇所に金属箔を載置することにより、金属箔は静電気等の作用により簡便にガラス基板10の表面(凹状孔部)に被着できる。銅箔等が使用できることから貫通孔部15における導電性は良好であり、配線化ガラス基板1における電気抵抗の上昇、発熱(抵抗発熱)を抑制しやすくなる。むろん、第1金属膜部26と第2金属膜部27は金属箔以外の導電性材料を使用することとしてもよい。
【0050】
これに対し、背景技術にて提示の特許文献1、2等に例示されるガラス基板に形成される貫通孔部の形状は、円筒に近似した形状とされている。このため、従前の特許文献では、貫通孔部の形状に起因して金属箔等の導電性材料の被着は容易ではなかった。そこで、鍍金(めっき)等の手法により貫通孔部の内部を導電化してガラス基板の両表面同士を電気的に接続(導電化)していた。自明ながら、実施形態の第1金属膜部26及び第2金属膜部27に金属箔を用いる製法と比較して、鍍金の場合は処理等が煩雑化する。
【0051】
従って、実施形態の配線化ガラス基板、配線化ガラス基板の製造方法は、エッチングを通じてガラス基板に形成される第1凹孔部及び第2凹孔部の形状から、従前の製造方法よりも簡便かつ安価な製造が可能となる。また、従前の鍍金の製造方法と比較して金属箔は厚さが増すため、電気抵抗を上昇させにくくなる利点が生じる。
【0052】
実施形態の配線化ガラス基板は単独(単層)での使用も可能ではある。ただし、通常、配線化ガラス基板は複数枚積層されて一体化される。図6は配線化ガラス基板1を複数枚の積層した時の断面模式図である。図示のとおり、一の配線化ガラス基板1の第2金属膜部27に、他の配線化ガラス基板1の第1金属膜部26が接続される。当該形態が繰り返されて配線化ガラス基板1は積層化される。
【0053】
配線化ガラス基板1同士を積層するに際し、配線化ガラス基板1同士の間に導電性材料31が介在される。図示では、導電性材料31は一の配線化ガラス基板1の第2金属膜部27と、他の配線化ガラス基板1の第1金属膜部26との間の周囲に注入され、第1凹孔部13及び第2凹孔部14を充たすように充填される。
【0054】
原理上、導電性材料31を省略して一の配線化ガラス基板1の第2金属膜部27と、他の配線化ガラス基板1の第1金属膜部26とを直接接合することは可能である。しかしながら、仮に第1金属膜部26と第2金属膜部27が互いに直接接触する場合、第1金属膜部26と第2金属膜部27はガラス基板10の熱膨張による変形、撓みの影響を被る。すると、ガラス基板10の変形量いかんにより第1金属膜部26と第2金属膜部27の間に隙間が生じて導電性が喪失したり、ガラス基板10同士の過度な圧迫が生じて貫通孔部15の周囲に亀裂が生じたりするおそれがある。そこで、導電性材料31はガラス基板10の変形に対応する緩衝材として使用される。
【0055】
導電性材料31は、銅、銀、金、白金、ニッケル、鉛等の金属の微粒子を含有する導電樹脂ペーストであることが好ましい。また、導電樹脂ペーストはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、各種有機溶剤を主剤とし、当該主剤中に重量割合において60ないし90重量%の比率で金属の微粒子が分散されている。この導電樹脂ペーストには、導電樹脂インクが含まれる。
【0056】
導電性材料31による導電性は比較的良好である。ただし、樹脂成分に含有される金属の微粒子が比重等により偏在する影響から導電性材料31の導電性が不均一となるおそれがある。そこで、安定した導電性を確保するため、導電性材料31に金属部材32が含められる。図6の金属部材32は、一の配線化ガラス基板1の第2金属膜部27と、他の配線化ガラス基板1の第1金属膜部26との間の導電性材料31に介在され双方の金属皮膜に接触する金属球である。従って、第2金属膜部27と第1金属膜部26は金属部材32(図示の金属球)を通じて直接電気的に接続可能となる。なお、金属部材32は図示の金属球の代わりにワッシャ(図示せず)等の部材を用いてもよい。加えて、導電性材料31と金属部材32との導電性を揃えるため、導電性材料31に含有される金属の微粒子と同一材質の金属部材32が用いられる。
【0057】
実施形態の配線化ガラス基板1においては第1金属膜部26と第2金属膜部27に金属箔(銅箔)が使用される。第1金属膜部26と第2金属膜部27は第1凹孔部13及び第2凹孔部14に充填される導電性材料31の圧迫を受けて凹孔部の奥側(貫通孔部15の中央側)に押される。ただし、第1凹孔部13及び第2凹孔部14に充填された導電性材料31の流動性が影響するため、第1金属膜部26と第2金属膜部27の接合部分28に位置ずれ、変形が生じるおそれがある。
【0058】
図7の断面模式図が参照されるように、このような問題への対処として、補強剤33が使用される。導電性材料31を第1凹孔部13の第1金属膜部26と第2凹孔部14の第2金属膜部27へ注入するに先立ち、第1金属膜部26の凹部及び第2金属膜部27の凹部に補強剤33が注入される。注入された補強剤33は各凹部において硬化する。すると、それぞれ硬化した補強剤33により第1金属膜部26と第2金属膜部27の接合部分28の形状は保持され、相互の接合は維持されたままとなる。その後、補強剤33を残留させたまま導電性材料31は一の配線化ガラス基板1の第2金属膜部27と、他の配線化ガラス基板1の第1金属膜部26との間の周囲に注入され、第1凹孔部13及び第2凹孔部14を充たすように充填される。補強剤33は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性の樹脂剤である。補強剤33は前述の導電性材料31と同様に導電性を備える組成としてもよい。
【0059】
図8の断面模式図は、一連の図示及び説明にある配線化ガラス基板1を複数枚積層し、ガラス製のベース基板50の上部に実装した状態を示す。図8は前出の図7の配線化ガラス基板1を使用した図示であり、いわゆるガラスインターポーザ1Gの開示例である。ベース基板50の下方には回路基板(図示せず)が備えられ、複数枚積層された配線化ガラス基板1の上方にCPU、GPU等の半導体素子が装着される。ベース基板50の孔部51の上端部にはベース電極52が備えられ、さらに電極プローブ(図示せず)が挿入される。電極プローブはベース電極52と接続し、ベース電極52は導電性材料31と接するため、配線化ガラス基板1の導電性材料31と電気的に接続可能となる。そして、図示のとおり、各配線化ガラス基板1の貫通孔部15に備えられる第1金属膜部26と第2金属膜部27の相互の接続によりベース基板50側から最上段の配線化ガラス基板1までの導電性が確保される。
【符号の説明】
【0060】
1 配線化ガラス基板
1G ガラスインターポーザ
10 ガラス基板
11 第1面部
12 第2面部
13 第1凹孔部
14 第2凹孔部
15 貫通孔部
16 内周面
21 表面保護膜
23 保護金属膜
24 開口部
26 第1金属膜部
27 第2金属膜部
31 導電性材料
32 金属部材
33 補強剤
50 ベース基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8