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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002380
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/20 20060101AFI20241226BHJP
   B63H 23/08 20060101ALI20241226BHJP
   F16H 61/32 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B63H20/20 100
B63H23/08
F16H61/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102522
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】増田 知晴
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 有希
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 公隆
(72)【発明者】
【氏名】柴本 貴弘
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA21
3J067AB23
3J067AC05
3J067BA56
3J067DB32
3J067EA04
3J067EA21
3J067FB78
3J067FB81
3J067GA21
(57)【要約】
【課題】船外機の小型化に寄与すると共に、シフトアクチュエータのメンテナンス性を高める。
【解決手段】エンジン15からの動力を伝達するドライブシャフト13と、ドライブシャフト13の一部を収容するドライブシャフトハウジング31を収容するアッパーケース30と、ドライブシャフト13から伝達される動力によって回転駆動されるプロペラシャフト21と、モータ41を含むシフトアクチュエータ40と、シフトアクチュエータ40からの出力によって、ドライブシャフト13からプロペラシャフト21へ伝達される動力の回転方向を切り替える前後進切替機構26と、を有する船外機100が提供される。モータ41は、カウル104の外で且つ、ロワーケース20の外で且つ、ドライブシャフトハウジング31の外に配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の駆動源と、
前記第1の駆動源からの動力を伝達するドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトの一部を収容するドライブシャフトハウジングを収容するアッパーケースと、
前記ドライブシャフトから伝達される動力によって回転駆動されるプロペラシャフトと、
第2の駆動源を含むシフトアクチュエータと、
前記シフトアクチュエータからの出力によって、前記ドライブシャフトから前記プロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向を切り替える前後進切替機構と、を有し、
前記第2の駆動源は、前記第1の駆動源を収容するカウルの外で且つ、前記前後進切替機構を収容するロワーケースの外で且つ、前記ドライブシャフトハウジングの外に配置された、船外機。
【請求項2】
前記第2の駆動源は、前記ドライブシャフトハウジングよりも前方に配置された、請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記第2の駆動源は、前記船外機の本体を支持する上下のマウント部のうち上のマウント部よりも下のマウント部に近い位置に配置された、請求項1に記載の船外機。
【請求項4】
前記シフトアクチュエータからの出力を前記前後進切替機構へ伝えるシフトカムを有し、
前記シフトアクチュエータは、回転力を出力する出力軸を含み、
前記出力軸の回転力によって前記シフトカムが回転することによって、前記ドライブシャフトから前記プロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向が切り替わる、請求項1に記載の船外機。
【請求項5】
前記出力軸は、前記アッパーケース内から前記アッパーケース外にかけて配置された、請求項4に記載の船外機。
【請求項6】
前記出力軸は、前記ドライブシャフトハウジングの外に配置された、請求項4に記載の船外機。
【請求項7】
前記出力軸の少なくとも一部は、前記アッパーケース内に配置され、
前記アッパーケースには開口部が形成され、前記開口部を通じて前記出力軸を手動で回転操作可能である、請求項4に記載の船外機。
【請求項8】
前記第2の駆動源は、前記船外機の筐体の外に配置された、請求項1に記載の船外機。
【請求項9】
前記シフトアクチュエータは前記アッパーケースに固定された、請求項1に記載の船外機。
【請求項10】
前記シフトアクチュエータの少なくとも一部を覆うカバー部材をさらに有する、請求項1に記載の船外機。
【請求項11】
前記カバー部材は、さらに、前記船外機の本体を支持する上下のマウント部のうち下のマウント部の少なくとも一部も覆う、請求項10に記載の船外機。
【請求項12】
前記カバー部材は、複数に分割して構成された、請求項10に記載の船外機。
【請求項13】
前記カバー部材は、前記アッパーケースに固定された、請求項10に記載の船外機。
【請求項14】
前記船外機の本体を支持する上下のマウント部のうち下のマウント部の少なくとも一部を覆うエプロンを有し、
前記カバー部材は、さらに前記エプロンにも固定された、請求項13に記載の船外機。
【請求項15】
前記カバー部材は、前記船外機の本体を支持する上下のマウント部のうち下のマウント部よりも下方に位置する部分を含み、
前記部分は、前記下のマウント部との干渉を避けるための逃げ部を有する、請求項10に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機においては一般に、ドライブシャフトから伝達される動力によってプロペラシャフトが回転駆動される。その際、前後進切替機構によって、ドライブシャフトからプロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向が切り替えられる。例えば、駆動源としてのモータを含むシフトアクチュエータからの駆動力によって、前後進切替機構におけるシフト部材が移動し、シフト位置が切り替えられる。シフトアクチュエータは一般に、船外機の筐体内に配置される。
【0003】
例えば、特許文献1では、シフトアクチュエータはアッパーケース内に配置される。特許文献2では、シフトアクチュエータはカウル内に配置される。特許文献3では、シフトアクチュエータはギヤケース(ロワーケース)内に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9896177号明細書
【特許文献2】特開2010-63350号公報
【特許文献3】特開2004-1638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2、3のいずれにおいても、シフトアクチュエータは船外機の筐体内に配置されるため、外部からアクセスすることは容易でない。例えば、モータなどをメンテナンスする際、アッパーケース、カウルまたはギヤケース等を外す必要があり、メンテナンス性は高くない。
【0006】
また、シフトアクチュエータの配置によって筐体内のスペースが割かれることで、高さの抑制などの小型化に不利となる。
【0007】
本発明は、船外機の小型化に寄与すると共に、シフトアクチュエータのメンテナンス性を高めることができる船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一態様による船外機は、第1の駆動源と、前記第1の駆動源からの動力を伝達するドライブシャフトと、前記ドライブシャフトの一部を収容するドライブシャフトハウジングを収容するアッパーケースと、前記ドライブシャフトから伝達される動力によって回転駆動されるプロペラシャフトと、第2の駆動源を含むシフトアクチュエータと、前記シフトアクチュエータからの出力によって、前記ドライブシャフトから前記プロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向を切り替える前後進切替機構と、を有し、前記第2の駆動源は、前記第1の駆動源を収容するカウルの外で且つ、前記前後進切替機構を収容するロワーケースの外で且つ、前記ドライブシャフトハウジングの外に配置された。
【0009】
この構成によれば、アッパーケースは、ドライブシャフトの一部を収容するドライブシャフトハウジングを収容する。第1の駆動源からの動力がドライブシャフトから伝達されプロペラシャフトが回転駆動される。前後進切替機構は、第2の駆動源を含むシフトアクチュエータからの出力によって、ドライブシャフトからプロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向を切り替える。第2の駆動源は、第1の駆動源を収容するカウルの外で且つ、前後進切替機構を収容するロワーケースの外で且つ、ドライブシャフトハウジングの外に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、船外機の小型化に寄与すると共に、シフトアクチュエータのメンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】船外機の模式的な左側面図である。
図2】船外機の主要部のブロック図である。
図3】シフトACTの主要部の分解斜視図である。
図4】カバー部材およびその周辺の斜視図である。
図5】シフトACT、下マウントおよびこれらの周辺の上面図である。
図6】アッパーケース、シフトACTおよびこれらの周辺の模式的な縦断面図である。
図7】カバー部材の斜視図である。
図8】変形例のカバー部材の斜視図である。
図9】第2の実施形態に係るカバー部材およびその周辺の斜視図である。
図10】カバー部材の斜視図である。
図11】第3の実施形態に係るカバー部材およびその周辺の斜視図である。
図12】カバー部材の斜視図である。
図13】変形例のカバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る船外機の模式的な左側面図である。この船外機100は、船外機本体101およびスイベルブラケット102を備える。船外機100は、懸架装置(不図示)を介して船体の船尾(不図示)に取り付けられる。以下、船外機100における上下方向および前後方向については、図1に示す航行時における姿勢を基準として特定する。+Y方向が上方であり、+Z方向が前方である。
【0014】
スイベルブラケット102は、左右方向に延びるチルト軸まわりに懸架装置のクランプブラケット(不図示)に対して回転可能である。従って、船外機本体101は、スイベルブラケット102と共に船体に対してチルト回転する。
【0015】
また、ステアリングシャフト103は、上下方向に延びるステアリング軸線(ステアリングシャフト103の中心線)まわりに回転可能にスイベルブラケット102に支持されている。船外機本体101は、上マウント部11および下マウント部12を介してステアリングシャフト103の上端部および下端部に連結されている。従って、船外機本体101は、上マウント部11および下マウント部12を介して支持され、ステアリングシャフト103と共にステアリングシャフト103の軸中心まわりに回転する。
【0016】
船外機本体101は、アッパ部およびロワー部を含む。アッパ部は、カウル104、エプロン105およびアッパーケース30を含む。カウル104は、エンジン15を収容する(覆う)。エンジン15は第1の駆動源の一例である。第1の駆動源は電動モータであってもよい。エプロン105は、アッパーケース30に固定され、アッパーケース30の一部を覆う。エプロン105は、複数に分割して構成される。
【0017】
ロワー部はロワーケース20を含む。ロワーケース20には前後進切替機構26が収容されている。また、ロワー部は、プロペラシャフト21、プロペラ22を含む。プロペラシャフト21は前後方向に延びている。プロペラ22は、プロペラシャフト21の後端部に取り付けられており、プロペラシャフト21と共にプロペラシャフト21の軸中心まわり回転可能である。プロペラ22が正転方向/逆転方向に回転することにより、前進/後進方向の推力を発生させる。
【0018】
エンジン15の動力(回転)が伝達されるドライブシャフト13が上下方向に延びている。ドライブシャフト13は、ドライブシャフト13の中心線まわりに回転可能である。ドライブシャフト13の下端部は、前後進切替機構26に連結されている。プロペラシャフト21は、ドライブシャフト13から伝達される動力によって回転駆動される。その際、前後進切替機構26は、ドライブシャフト13からプロペラシャフト21へ伝達される動力の回転方向を切り替える(詳細は図2図3で説明する)。
【0019】
アッパ部にはシフトアクチュエータ40(以下、シフトACT40と記す)が設けられている。また、アッパ部には、シフトACT40の少なくとも一部を覆うカバー部材50が設けられる。シフトACT40からの出力を前後進切替機構26へ伝えるシフトカム14が、主としてロワーケース20に配置されている。シフトカム14は上下方向に延びている。シフトACT40からの出力によってシフトカム14を介して前後進切替機構26が駆動されることで、ドライブシャフト13からプロペラシャフト21へ伝達される動力の回転方向が切り替わる。
【0020】
図2は、船外機100の主要部のブロック図である。船外機100は、ECU(Engine Control Unit)17を含む。また、船体にはリモコン16が配置される。シフトACT40には、モータ41(第2の駆動源)およびSP(シフトポジション)センサ42が含まれる。SPセンサ42は、シフトACT40が出力しているシフト位置を検出し、その結果をECU17へ送る。モータ41の回転によってシフトカム14が回転する。
【0021】
ECU17は、リモコン16の操作に起因して出力された信号に基づいて、エンジン15の駆動およびシフトACT40の駆動を制御する。例えば、船外機100の推力(プロペラ22の回転数)の変更、船外機100のシフト状態(前進状態、後進状態、ニュートラル状態)の切り替え等が行われる。従って、リモコン16に対する操作とステアリングホイール(不図示)対する操作との組み合わせにより、船体の移動、旋回等が行われる。なお、ジョイスティックの操作によって船体の移動、旋回等が行われてもよい。シフトACT40の制御の際には、SPセンサ42から出力されたシフト位置の信号が参照される。
【0022】
前後進切替機構26には、特開2015-147541号公報等に開示されている公知の構成を採用可能である。一例として、前後進切替機構26には、スライダ24、ドッグクラッチ25、ギヤ部23が含まれる。
【0023】
ギヤ部23およびドッグクラッチ25は、プロペラシャフト21の軸中心上に配置されている。ギヤ部23は、前ギヤおよび後ギヤを含み、前ギヤと後ギヤとの間にドッグクラッチ25が配置される。ドッグクラッチ25が、前ギヤ、後ギヤと噛み合う位置が、それぞれ正転位置、逆転位置であり、いずれとも噛み合わない位置が中立位置である。スライダ24は前後方向に移動可能である。なお、前後進切替機構26の構成は例示したものに限定されない。
【0024】
図3は、シフトACT40の主要部の分解斜視図である。シフトACT40は、モータ41の回転力を出力する出力軸43を含む。モータ41の回転は、複数のギヤ等からなる伝達部44を介して出力軸43に伝わる。モータ41は両方向に回転可能である。
【0025】
シフトカム14の上端部にはスプライン部14bが形成されている。出力軸43の内周には、スプライン部14bに対応するスプライン部が形成されており、両スプライン部が係合されることで、出力軸43と連動してシフトカム14が回転する。出力軸43とシフトカム14とを相対的に上下方向に移動させ、両スプライン部を係合または係合を解除することで、シフトACT40とシフトカム14との組み付けまたは取り外しが可能である。
【0026】
シフトカム14の下端部にはカム部14aが設けられている。カム部14aはシフトカム14の中心線に対して偏心しているので、その前後方向の位置がシフトカム14の回転によって変化する。
【0027】
シフトACT40は、モータ41の駆動力によってシフトカム14を回転させる。シフトカム14が回転すると、カム部14aによってスライダ24(図2)が前方または後方に駆動されて前後方向に移動し、ドッグクラッチ25を前後方向に移動させる。これにより、ドッグクラッチ25が、正転位置、逆転位置、中立位置のいずれかに移動し、シフト位置が切り替わる。このように、シフトACT40には回転式が採用されている。
【0028】
次に、シフトACT40およびカバー部材50の配置について説明する。
【0029】
図4は、カバー部材50およびその周辺の斜視図である。図5は、シフトACT40、下マウント部12およびこれらの周辺の上面図である。図5では、エプロン105およびカバー部材50を外した状態が示されている。図6は、アッパーケース30、シフトACT40およびこれらの周辺の模式的な縦断面図である。なお、各図において、下マウント部12を覆うマウントハウジングの図示が省略されている。
【0030】
アッパーケース30はスプラッシュプレート32を有する(図1図4図6)。スプラッシュプレート32より下方の位置において、アッパーケース30の側面には開口部33が形成されている(図1図4)。開口部33は左右両方に形成されているが、図1図4では左の開口部33のみが表されている。シフトACT40は、ビスにより、アッパーケース30(例えば、スプラッシュプレート32)に固定されている。
【0031】
図6に示すように、アッパーケース30は、ドライブシャフトハウジング31を有する(収容する)。ドライブシャフトハウジング31には、ドライブシャフト13の一部が収容される。シフトACT40の全体は、カウル104の外で且つ、ロワーケース20の外に配置される。シフトACT40の多くの部分はアッパーケース30の外に位置する。出力軸43は、アッパーケース30内からアッパーケース30外にかけて配置されている。出力軸43は、ドライブシャフトハウジング31の外に位置する。
【0032】
モータ41に着目すると、モータ41は、カウル104の外で且つ、ロワーケース20の外で且つ、ドライブシャフトハウジング31の外に配置されている。これにより、作業者がモータ41へアクセスしやすくなっている。さらにいえば、モータ41はアッパーケース30の外に位置する。このように、モータ41が船外機の筐体(カウル104、アッパーケース30、ロワーケース20)の外に配置されたことで、モータ41へアクセスしやすくメンテナンスが容易となっている。
【0033】
仮に、シフトACT40の全体が、カウル、アッパーケースまたはロワーケース(ギヤケース)内に配置されたとすると、駆動源であるモータなどをメンテナンスする際、アクセスが簡単でない。しかし、本実施形態では、モータ41がドライブシャフトハウジング31の外に配置されたことで、特にモータ41へのアクセスが容易となっている。また、船外機100の小型化にも寄与している。
【0034】
また、図6に示すように、モータ41は、ドライブシャフトハウジング31よりも前方に配置されている。これにより、前方や船体からモータ41にアクセスしやすく、メンテナンス性が高い。また、モータ41は、上下のマウント部のうち上マウント部11よりも下マウント部12に近い位置に配置されている。これにより、シフトACT40と前後進切替機構26との距離を短くするのに有利である。従って、シフトACT40の出力を前後進切替機構26に伝える機構をコンパクト化しやすいことから、シフトACT40に回転式を採用することが容易となっている。ただし、シフトACT40は回転式に限定されず、リンク機構等を介した直動式を採用してもよい。
【0035】
カバー部材50は、エプロン105の最前位置E1よりも前方に配置されている(図1図4)。ここでいう最前位置E1は、上下方向におけるカバー部材50が存在する領域において、エプロン105の最も前の位置である。カバー部材50は、シフトACT40を覆うだけでなく、下マウント部12の少なくとも一部も覆っている。これにより、シフトACT40および下マウント部12の保護だけでなく、意匠的効果により外観を向上させている。
【0036】
カバー部材50は、ビスによりアッパーケース30に固定されている。上述のようにシフトACT40もアッパーケース30に固定されるため、シフトACT40とカバー部材50との相対位置精度が高く、シフトACT40が適切に保護される。カバー部材50の材料は問わないが、例えば金属または樹脂で構成される。
【0037】
図7は、カバー部材50の斜視図である。カバー部材50の後部には、後部開口51、52が形成されている。カバー部材50の上部には、上部開口53が形成されている。後部開口51、52は、ワイヤハーネス18およびオイル配管19(図5)が通るための開口である。ワイヤハーネス18およびオイル配管19はエンジン15に繋がっている。上部開口53には、スイベルブラケット102(図1)およびステアリングシャフト103(図4)が通っている。
【0038】
このような構成において、シフトACT40のメンテナンスを行いたい場合、作業者は、カバー部材50を取り外せばシフトACT40にアクセスすることができる。また、カバー部材50とエプロン105とは別体であるので、メンテナンスの際に大きなエプロン105を外す必要がなく、作業が容易である。
【0039】
また、シフトACT40の出力軸43とシフトカム14との連結を解き、シフトACT40全体を取り外せば、スプライン部14bの砂の除去や清掃等のメンテナンスを行うことが容易である。
【0040】
また、アッパーケース30に設けた開口部33(図1図4)を通じてシフトACT40の出力軸43を手動で回転操作可能である。例えば、出力軸43の外径断面形状が6角形であるとした場合、作業者は、開口部33を通じてスパナを用いて出力軸43を回転させることでシフトカム14を回転させることが可能である。従って、シフトACT40が電動では動かなくなった場合のような緊急時でも、シフト位置を手動で切り替えることができる。
【0041】
本実施形態によれば、シフトACT40のモータ41は、カウル104の外で且つ、ロワーケース20の外で且つ、ドライブシャフトハウジング31の外に配置された。シフトACT40をカウル104内に配置しなくてよいので、船外機100の高さを抑制できる。また、チルトアップ時に船体のモータウェル(不図示)の船外機100との干渉を避けやすくなる。また、エプロン105を外すことなくシフトACT40のメンテナンスを行うことが容易である。特にモータ41は、船外機100の筐体の外に配置されたのでモータ41へのアクセスが容易である。
【0042】
よって、船外機100の小型化に寄与すると共に、シフトACT40のメンテナンス性を高めることができる。
【0043】
また、モータ41は、ドライブシャフトハウジング31よりも前方に配置されたので、前方や船体からモータ41にアクセスしやすくメンテナンス性が高い。
【0044】
また、モータ41は、上マウント部11よりも下マウント部12に近い位置に配置されたので、シフトACT40の出力を前後進切替機構26に伝える機構をコンパクト化するのに有利である。例えば、シフトACT40に回転式を採用できたことで、コンパクト化や構成簡素化に寄与している。
【0045】
また、シフトACT40の出力軸43は、アッパーケース30内からアッパーケース30外にかけて(亘って)配置されている。出力軸43がドライブシャフトハウジング31の外に位置することから、手動により出力軸43を回転させることで、シフト位置切り替えが可能である。しかも、アッパーケース30の開口部33を通じて出力軸43を回転させることが可能であるので、非常時には、比較的容易な作業でシフト位置を手動で切り替えることができる。
【0046】
また、シフトACT40の少なくとも一部を覆うカバー部材50を設けた。さらに、カバー部材50は下マウント部12の少なくとも一部も覆っている。従って、シフトACT40および下マウント部12を保護すると共に、意匠的効果を付与することができる。
【0047】
また、カバー部材50は、アッパーケース30に固定されたので、シフトACT40を適切に保護することができる。
【0048】
図8は、本実施形態における変形例のカバー部材50の斜視図である。図8に示すように、カバー部材50を、複数(2以上)に分割して構成してもよい。例えば、カバー部材50を第1部材50-1と第2部材50-2の2つに左右に分割して構成し、これらを連結してカバー部材50が構成されるようにしてもよい。これにより、カバー部材50の製造およびアッパーケース30に対する着脱が容易になる。なお、分割の数や態様は例示したものに限定されない。
【0049】
第1部材50-1および第2部材50-2は、それぞれアッパーケース30に固定される。第1部材50-1と第2部材50-2との連結方法は問わないが、係合部同士の係合や、締結具を用いた締結であってもよい。第1部材50-1と第2部材50-2とは、アッパーケース30に固定される前に連結してもよいし、アッパーケース30に固定される際または固定後に連結してもよい。第1部材50-1、第2部材50-2を、アッパーケース30から個別に着脱可能に構成すれば、シフトACT40のメンテナンスが一層容易になる。
【0050】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係るカバー部材およびその周辺の斜視図である。本実施形態の船外機100は、第1の実施形態に対して、エプロンおよびカバー部材の形状が異なり、その他の構成は同様である。本実施形態では、エプロン105B、カバー部材50Bが採用される。図10は、カバー部材50Bの斜視図である。
【0051】
エプロン105Bは、前部に、下マウント部12を覆うマウント被覆部105aを有する(図9)。カバー部材50Bはエプロン105Bと干渉しない形状に形成され、下マウント部12を覆っていない。カバー部材50Bは、左右に固定部55を有する。カバー部材50Bは、第1の実施形態と同様にアッパーケース30に固定される。本実施形態ではさらに、カバー部材50Bは、固定部55を介してエプロン105Bにも固定される。
【0052】
エプロン105Bには、スイベルブラケット102(図1)およびステアリングシャフト103(図4)が通るための開口105bが形成されている(図9)。カバー部材50Bの後部には、ワイヤハーネス18およびオイル配管19(図5)が通るための開口54が形成されている(図10)。
【0053】
本実施形態によれば、船外機100の小型化に寄与すると共に、シフトACT40のメンテナンス性を高めることに関し、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
また、エプロン105Bが下マウント部12を覆うので、外観を向上させることができる。なお、エプロン105Bは、下マウント部12の少なくとも一部を覆う構成であってもよい。
【0055】
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係るカバー部材およびその周辺の斜視図である。本実施形態の船外機100は、第1の実施形態に対してカバー部材の形状が異なり、その他の構成は同様である。本実施形態では、カバー部材50Cが採用される。図12は、カバー部材50Cの斜視図である。
【0056】
カバー部材50Cは、最上部よりも低い段差面56を有する。段差面56は、下マウント部12よりも下方に位置する部分であり、下マウント部12に対して下方から対向している。段差面56の高さは、下マウント部12と干渉しないように設定されている。エプロン105の形状は第1の実施形態と同様であるので、下マウント部12は露出している。なお、マウントハウジングの図示は省略されている。
【0057】
カバー部材50Cは、シフトACT40の少なくとも一部を覆っている。カバー部材50Cの後部には後部開口58、59が形成されている。後部開口58、59は、それぞれ、ワイヤハーネス18およびオイル配管19(図5)が通るための開口である。
【0058】
本実施形態によれば、船外機100の小型化に寄与すると共に、シフトACT40のメンテナンス性を高めることに関し、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
なお、段差面56の高さをより高くしたい場合は、下マウント部12との干渉を避けるための逃げ部57を設けてもよい(図12)。段差面56の高さを高くすることで、シフトACT40の設計の自由度が高くなる。また、逃げ部57を設けることで、下マウント部12との干渉を避けつつ、上下方向をコンパクト化するのに有利である。なお、逃げ部57は穴でもよいし、下方へ窪んだ凹部であってもよい。
【0060】
図13は、本実施形態における変形例のカバー部材50Dの斜視図である。カバー部材50Dは、カバー部材50C(図12)に対し、庇部61、62を有する点が異なり、その他の部分はカバー部材50Cと同様である。庇部61、62は、下マウント部12の少なくとも一部を、左右および上方から簡易的に覆い隠す。これにより意匠的効果が得られる。庇部61、62は、翼形状の部分または鍔形状の部分と称されてもよい。
【0061】
なお、カバー部材50Dにも逃げ部57を採用してもよい。なお、カバー部材を分割して構成することは、第2、第3の実施形態にも適用してもよい。
【0062】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
13 ドライブシャフト、 15 エンジン、 20 ロワーケース、 21 プロペラシャフト、 26 前後進切替機構、 30 アッパーケース、 31 ドライブシャフトハウジング、 40 シフトアクチュエータ、 41 モータ、 100 船外機、 101 船外機本体、 104 カウル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
図12
図13