IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横店集団東磁股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図1
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図2
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図3
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図4
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図5
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図6
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図7
  • 特開-太陽電池及びその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023825
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10F 10/174 20250101AFI20250207BHJP
   H10F 10/00 20250101ALI20250207BHJP
【FI】
H01L31/06 520
H01L31/04 240
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114358
(22)【出願日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】202310975523.7
(32)【優先日】2023-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】方 超炎
(72)【発明者】
【氏名】黄 剛鋒
(72)【発明者】
【氏名】杜 清閃
(72)【発明者】
【氏名】馬 嵐嵐
(72)【発明者】
【氏名】王 文睿
(72)【発明者】
【氏名】陳 徳爽
(72)【発明者】
【氏名】任 勇
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA07
5F251CB11
5F251CB22
5F251CB24
5F251CB30
5F251DA04
5F251DA10
5F251FA06
5F251GA04
5F251GA15
5F251HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電極と輸送層との間の良い電気接触効果を実現し、さらに高いの光電変換効率を実現することができるIBC太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板10と、第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層21及び電子輸送層40であって、正孔輸送層21の材料が酸化バナジウムを含み、電子輸送層40の材料が酸化チタンを含む正孔輸送層21及び電子輸送層40と、正孔輸送層21の半導体基板10から離れる表面に位置している第1不動態化層22と、第1不動態化層22の半導体基板10から離れる表面と、電子輸送層40の半導体基板10から離れる表面と、第1表面とを覆う第2不動態化層50と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板と、
前記第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層及び電子輸送層であって、前記正孔輸送層の材料が酸化バナジウムを含み、前記電子輸送層の材料が酸化チタンを含む正孔輸送層及び電子輸送層と、
前記正孔輸送層の前記半導体基板から離れる表面に位置している第1不動態化層と、
材料が前記第1不動態化層の材料と異なり、前記第1不動態化層の前記半導体基板から離れる表面と、前記電子輸送層の前記半導体基板から離れる表面と、前記第1表面とを覆う第2不動態化層と、を備える
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記正孔輸送層の厚さは20~30nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記電子輸送層の厚さは45~55nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1不動態化層の材料は酸化アルミニウムを含み、
且つ/或いは、前記第2不動態化層の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸窒化ケイ素の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第2表面はスエードである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第2表面には第3不動態化層が設けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第3不動態化層の前記半導体基板から離れる表面には第4不動態化層がさらに設けられ、前記第4不動態化層及び前記第3不動態化層は材料が異なる
ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板を提供する工程と、
前記第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層及び電子輸送層を製造する工程であって、前記正孔輸送層の材料が酸化バナジウムを含み、前記電子輸送層の材料が酸化チタンを含む工程と、
前記正孔輸送層の前記半導体基板から離れる表面に位置している第1不動態化層を製造する工程と、
前記第1不動態化層の前記半導体基板から離れる表面と、前記電子輸送層の前記半導体基板から離れる表面と、前記第1表面とを覆う第2不動態化層を製造する工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記正孔輸送層を製造する工程は、
原子層を用いて120~130℃で蒸着してバナジウム源及び第1酸化剤により前記正孔輸送層を製造し、あるいは、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でバナジウム源及び第2酸化剤により前記正孔輸送層を製造する工程を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記電子輸送層を製造する工程は、具体的に、
原子層蒸着を用いて100~160℃でチタン源及び第1酸化剤により前記電子輸送層を製造し、あるいは、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でチタン源及び第2酸化剤により前記電子輸送層を製造する工程を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、太陽電池の技術分野に関し、特に太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターダイジテッドバックコンタクト太陽電池(IBC太陽電池)は、エミッター背面不動態化電池(PERC電池)及びヘテロ接合電池(HJT電池)に比べて、その前面にグリッド線がなく、正負電極として交差配置の方法で電池の背面に製造され、太陽電池において前面のグリッド線による遮光損失を避けることができる。従来のIBC太陽電池において、拡散の方式で千鳥状に配置されたn型ドープ半導体領域とp型ドープ半導体領域を形成し、さらに誘電体層に孔を開いて電極と発射領域との電気的接触による接続を実現する。該従来のIBC太陽電池において、電極と半導体領域との間の電気的接触の品質が低く、IBC太陽電池の光電変換効率のさらなる向上を規制する。
【発明の概要】
【0003】
本出願の様々な実施例によれば、太陽電池及びその製造方法が提供される。
【0004】
第1態様では、本出願は、
対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板と、
前記第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層及び電子輸送層であって、前記正孔輸送層の材料が酸化バナジウムを含み、前記電子輸送層の材料が酸化チタンを含む正孔輸送層及び電子輸送層と、
前記正孔輸送層の前記半導体基板から離れる表面に位置している第1不動態化層と、
前記第1不動態化層の前記半導体基板から離れる表面と、前記電子輸送層の前記半導体基板から離れる表面と、第1表面とを覆う第2不動態化層と、を備える太陽電池が提供される。
【0005】
いくつかの実施例において、前記正孔輸送層の厚さは20~30nmである。
【0006】
いくつかの実施例において、前記電子輸送層の厚さは45~55nmである。
【0007】
いくつかの実施例において、前記第1不動態化層の材料は酸化アルミニウムを含む。
【0008】
いくつかの実施例において、前記第2不動態化層の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸窒化ケイ素の少なくとも一つを含む。
【0009】
いくつかの実施例において、前記第2表面はスエードである。
【0010】
いくつかの実施例において、前記第2表面には第3不動態化層が設けられる。
【0011】
いくつかの実施例において、前記第3不動態化層の前記半導体基板から離れる表面には第4不動態化層がさらに設けられ、前記第4不動態化層及び前記第3不動態化層は材料が異なる。
【0012】
第2態様では、本出願は、
対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板を提供する工程と、
前記第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層及び電子輸送層を製造する工程であって、前記正孔輸送層の材料が酸化バナジウムを含み、前記電子輸送層の材料が酸化チタンを含む工程と、
前記正孔輸送層の前記半導体基板から離れる表面に位置している第1不動態化層を製造する工程と、
前記第1不動態化層の前記半導体基板から離れる表面と、前記電子輸送層の前記半導体基板から離れる表面と、前記第1表面とを覆う第2不動態化層を製造する工程と、を含む上記いずれか一項に記載の太陽電池の製造方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施例において、正孔輸送層を製造する工程は、
原子層蒸着を用いて120~130℃でバナジウム源及び第1酸化剤により前記正孔輸送層を製造し、あるいは、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でバナジウム源及び第2酸化剤により前記正孔輸送層を製造する工程を含む。
【0014】
いくつかの実施例において、電子輸送層を製造する工程は、
原子層蒸着を用いて100~160℃でチタン源及び第1酸化剤により前記電子輸送層を製造し、あるいは、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でチタン源及び第2酸化剤により前記電子輸送層を製造する工程を含む。
【0015】
本出願の1つ又は複数の実施例の詳細は、下記の図面及び説明で提出される。本出願の他の特徴、目的及び利点については、明細書、図面及び特許請求の範囲から明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
ここで開示している発明の実施例及び/又は例をよりよく記載し説明するために、一つ又は複数の図面を参照してもよい。図面を説明するための追加の詳細または例は、開示された発明、現在説明されている実施例および/または例、並びに現在理解されているこれらの発明の最適的形態のいずれかの範囲を限定するものとみなされるべきではない。
図1図1は本出願の一つまたは複数の実施例の半導体基板の表面に正孔輸送層及び第1不動態化層を製造する構造概略図である。
図2図2図1に示す構造を基に第1マスク層及び第2マスク層を製造する構造概略図である。
図3図3図2に示す構造を基に一部の正孔輸送層及び誘電体層が除去された構造概略図である。
図4図4図3に示す構造を基に第1マスク層が除去された構造概略図である。
図5図5図4に示す構造を基に電子輸送層を製造する構造概略図である。
図6図6図5に示す構造を基に第1不動態化層を製造する構造概略図である。
図7図7図6に示す構造を基に第3不動態化層及び第4不動態化層を製造する構造概略図である。
図8図8図6に示す構造を基に第1電極及び第2電極を製造する構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかにするために、以下に図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の説明において、本発明を十分に理解するように、多くの具体的な詳細を説明する。しかしながら、本発明は、ここで説明するものと異なる多くの方式で実施されることができ、当業者は本発明の内容に反しない状況で類似する改良を行うことができるので、本発明は以下に開示される具体的な実施例に限定されるものではない。
【0018】
特別な定義がない限り、本明細書に使用される全ての技術及び科学的用語は、本出願の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書において本出願の明細書に使用される用語は具体的な実施例を説明する目的だけであり、本出願を限定するものではない。本明細書で使用される用語「及び/又は」は一つ又は複数の関連する列挙された項目の任意の全部又は全ての組み合わせを含む。
【0019】
本出願の一実施例では、対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板10と、第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層21及び電子輸送層40であって、正孔輸送層21の材料が酸化バナジウムを含み、電子輸送層40の材料が酸化チタンを含む正孔輸送層21及び電子輸送層40と、正孔輸送層21の半導体基板10から離れる表面に位置している第1不動態化層22と、第1不動態化層22の半導体基板10から離れる表面と、電子輸送層40の半導体基板10から離れる表面と、第1表面とを覆う第2不動態化層50と、を備える太陽電池が提供される。
【0020】
上記太陽電池において、正孔輸送層21の材料は、酸化バナジウムを含み、酸化バナジウムは、正孔選択タイプの状態を呈する。電子輸送層40の材料は酸化チタンを含み、酸化チタンは電子選択の状態を呈する。本出願における正孔輸送層21及び電子輸送層40は互いに合わさって、且つ両者と電極との間の接触バリアが小さく、光生成キャリアの伝導効果を実現できる。同時に、正孔輸送層21の表面に、異なる2つの材料の蒸着不動態化を行い、不動態化後の正孔輸送層21と電極との間の表面接触効果をよく改良することができる。該太陽電池は、電極と正孔輸送層21、電子輸送層40との間の良い電気接触効果を実現し、さらに高いIBC太陽電池の光電変換効率を実現することができる。
【0021】
いくつかの実施例において、正孔輸送層21の材料は酸化バナジウムである。
【0022】
いくつかの実施例において、電子輸送層40の材料は酸化チタンである。
【0023】
いくつかの実施例において、正孔輸送層21の厚さは20~30nmである。該正孔輸送層21の厚さの範囲で、正孔輸送層21の膜形成品質がよく、得られた電池の選択的接触の効果がよくなる。好ましくは、正孔輸送層21の厚さは、20nm、21nm、22nm、23nm、24nm、25nm、26nm、27nm、28nm、29nmまたは30nmである。
【0024】
いくつかの実施例において、電子輸送層40の厚さは、45~55nmである。該電子輸送層40の厚さの範囲で、電子輸送層40の膜形成品質がよく、得られた電池の選択的接触の効果がよくなる。好ましくは、電子輸送層40の厚さは、45nm、46nm、47nm、48nm、49nm、50nm、51nm、52nm、53nm、54nmまたは55nmである。
【0025】
いくつかの実施例において、第1不動態化層22の材料は酸化アルミニウムを含む。酸化アルミニウム及びn型半導体材料のマッチング効果がよく、正孔輸送層21をよく不動態化することができ、接触効果がよい太陽電池を取得する。
【0026】
いくつかの実施例において、第1不動態化層22の材料は酸化アルミニウムである。
【0027】
いくつかの実施例において、第2不動態化層50の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸窒化ケイ素の少なくとも一つを含む。
【0028】
いくつかの実施例において、第2表面はスエードである。理解できることとして、スエードは異なるパターンのテクスチャーであってもよい。例として、スエードは、ピラミッドテクスチャーであってもよい。
【0029】
いくつかの実施例において、第2表面には第3不動態化層61がさらに設けられる。電池の前面を鈍化すると、太陽電池の光電性能をさらに向上させることができる。
【0030】
いくつかの実施例において、第3不動態化層61の材料は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸窒化ケイ素の少なくとも1つを含む。
【0031】
いくつかの実施例において、第3不動態化層61の半導体基板10から離れる表面には第4不動態化層62がさらに設けられ、第4不動態化層62及び第3不動態化層61は材料が異なる。電池の前面を蒸着して不動態化すると、太陽電池の光電性能をさらに向上させることができる。
【0032】
いくつかの実施例において、第4不動態化層62の材料は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸窒化ケイ素の少なくとも一つを含む。
【0033】
いくつかの実施例において、第3不動態化層61及び第4不動態化層62は材料が異なる。
【0034】
いくつかの実施例において、半導体基板10の材料は、n型単結晶シリコンウェーハである。
【0035】
いくつかの実施例において、太陽電池は、第1不動態化層22を覆う、第2不動態化層50の半導体基板10から離れる表面に位置している第1電極71と、電子輸送層40を覆う、第2不動態化層50の半導体基板10から離れる表面に位置している第2電極72とをさらに備える。
【0036】
本出願の別の一実施例では、対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板10を提供する工程と、第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層21及び電子輸送層40を製造する工程であって、正孔輸送層21の材料が酸化バナジウムを含み、電子輸送層40の材料が酸化チタンを含む工程と、正孔輸送層21の半導体基板10から離れる表面に位置している第1不動態化層22を製造する工程と、第1不動態化層22の半導体基板10から離れる表面と、電子輸送層40の半導体基板10から離れる表面と、第1表面とを覆う第2不動態化層50を製造する工程と、を含む上記いずれ一項の太陽電池の製造方法が提供される。
【0037】
該実施例のいくつかの例において、太陽電池の製造方法は工程S100~工程S500を含み、具体的に、下記の通りである。
【0038】
S100:対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板10を提供する。
【0039】
いくつかの実施例において、半導体基板10表面の不純物を除去するように、半導体基板10を洗浄する工程をさらに含む。
【0040】
いくつかの実施例において、半導体基板10を洗浄する工程は、水酸化カリウム溶液と過酸化水素溶液との混合溶液を用いて半導体基板10を洗浄する工程を含む。
【0041】
いくつかの実施例において、洗浄された半導体基板10をテクスチャー加工して、半導体基板10の表面にスエードを形成する工程をさらに含む。
【0042】
いくつかの実施例において、洗浄された半導体基板10をテクスチャー加工する工程は、エッチング液を用いて半導体基板10に対して異方性エッチングを行い、半導体基板10の表面にピラミッドテクスチャーを形成する工程を含む。
【0043】
いくつかの実施例において、エッチング液は水酸化カリウム溶液を含む。
【0044】
S200:第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層21及び電子輸送層40を製造し、正孔輸送層21の材料が酸化バナジウムを含み、電子輸送層40の材料が酸化チタンを含む。
【0045】
いくつかの実施例において、正孔輸送層21を製造する工程は、原子層蒸着を用いて120~130℃でバナジウム源及び第1酸化剤により正孔輸送層21を製造する工程を含む。該原子層蒸着の温度の範囲で、蒸着して膜形成効果、及び密度が高い正孔輸送層21を取得すると同時に、低い蒸着温度は、高温度による不動態化の安定性の破壊を低減させることができる。好ましくは、原子層蒸着の温度は120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃または130℃である。例として、原子層蒸着のバナジウム源は、テトラエチルメチルアミノバナジウム(VTIP)を含む。例として、原子層蒸着の第1酸化剤は脱イオン水を含む。
【0046】
いくつかの実施例において、原子層蒸着のサイクル数は160~240回である。該原子層蒸着のサイクル数内で、厚さが適当である正孔輸送層21を取得することができる。好ましくは、原子層蒸着のサイクル数は160回、170回、180回、190回、200回、210回、220回、230回または240回である。
【0047】
いくつかの実施例において、正孔輸送層21を製造する工程は、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でバナジウム源及び第2酸化剤により正孔輸送層21を製造する工程を含む。該プラズマ強化化学蒸着の温度の範囲で、蒸着して膜形成効果、及び密度が高い正孔輸送層21を取得すると同時に、低い蒸着温度は、高温度による不動態化の安定性の破壊を低減させることができる。好ましくは、プラズマ強化化学蒸着の温度は、380℃、385℃、390℃、395℃、400℃、405℃、410℃、415℃または420℃である。例として、プラズマ強化化学蒸着のバナジウム源はVTIPを含む。プラズマ強化化学蒸着の第2酸化剤はNOを含む。
【0048】
いくつかの実施例において、電子輸送層40を製造する工程は、原子層蒸着を用いて100~160℃でチタン源及び第1酸化剤により電子輸送層40を製造する工程を含む。
【0049】
いくつかの実施例において、電子輸送層40を製造する工程は、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でチタン源及び第2酸化剤により電子輸送層40を製造する工程を含む。
【0050】
S300:正孔輸送層21の半導体基板10から離れる表面に位置している第1不動態化層22を製造する。
【0051】
いくつかの実施例において、図1乃至図5を参照すると、図1は半導体基板10の表面に正孔輸送層21及び第1不動態化層22を製造する構造概略図であり、図2図1に示す構造を基に第1マスク層31及び第2マスク層32を製造する構造概略図であり、図3図2に示す構造を基に一部の正孔輸送層21及び誘電体層を除去した構造概略図であり、図4は、図3に示す構造を基に第1マスク層31を除去した構造概略図であり、図5図4に示す構造を基に電子輸送層40を製造する構造概略図であり、正孔輸送層21、電子輸送層40及び第1不動態化層22を製造する工程は、半導体基板10に、順に積層される正孔輸送層21及び第1不動態化層22を製造する工程と、第1不動態化層22の表面に第1マスク層31及び第2マスク層32を製造する工程であって、第1マスク層31が現像液で除去されることができず、第2マスク層32が現像液で除去されることができる工程と、第2マスク層32を除去し、露出した第1不動態化層22及び正孔輸送層21をエッチングする工程と、第1マスク層31を除去し、半導体基板10の表面に電子輸送層40を製造する工程と、を含む。
【0052】
いくつかの実施例において、第1マスク層31の材料は、感光性ポリイミドを含む。いくつかの実施例において、第2マスク層32の材料は、感光性ポリイミドを含む。
【0053】
S400:第1不動態化層22の半導体基板10から離れる表面と、電子輸送層40の半導体基板10から離れる表面と、第1表面とを覆う第2不動態化層50を製造する。
【0054】
図6図5に示す構造を基に第1不動態化層22を製造する構造概略図であり、図6に示すように、第2不動態化層50は第1不動態化層22の半導体基板10から離れる表面と、電子輸送層40の半導体基板10から離れる表面と、第1表面とを覆う。
【0055】
S500:第1不動態化層22を覆う、第2不動態化層50の半導体基板10から離れる表面に位置している第1電極71と、電子輸送層40を覆う、第2不動態化層50の半導体基板10から離れる表面に位置している第2電極72とを製造する。
【0056】
図8図6に示す構造を基に第1電極71及び第2電極72を製造する構造概略図である。図8に示すように、第1電極71は、第1不動態化層22を覆う、第2不動態化層50の半導体基板10から離れる表面に位置しており、第2電極72は、電子輸送層40を覆う、第2不動態化層50の半導体基板10から離れる表面に位置している。
【0057】
いくつかの実施例において、第1電極71及び第2電極72の材料は、それぞれ独立して当分野でのすべての利用可能な金属電極から選ばれる。例として、第1電極71の材料は銀電極である。例として、第2電極72の材料はニッケルとアルミニウムを含む。
【0058】
いくつかの実施例において、第2表面に第3不動態化層61を製造する工程をさらに含む。
【0059】
いくつかの実施例において、第3不動態化層61の表面に第4不動態化層62を製造する工程をさらに含む。
【0060】
図7は、図6に示す構造を基に第3不動態化層61及び第4不動態化層62を製造する構造概略図である。図7に示すように、第3不動態化層61は半導体基板10の第2表面に設けられ、第4不動態化層62は第3不動態化層61の半導体基板10から離れる表面に設けられる。
【0061】
以下は、具体的な実施例である。
実施例1
【0062】
次に、図1乃至図8を参照し、太陽電池の製造方法は下記の工程である。
【0063】
(1)70℃で、水酸化カリウム溶液と過酸化水素溶液との混合溶液を用いて半導体基板10に対して時間が約90秒である洗浄を行って、シリコンウェーハ表面の不純物を除去する。
【0064】
(2)78℃で、水酸化カリウム溶液と添加剤を用いてシリコンウェーハの前面に対して約450秒のチェーンテクスチャー加工を行い、シリコンウェーハの正表面にピラミッドパターンのテクスチャーを光閉じ込め構造として形成する。
【0065】
(3)120~130℃の条件で、ALD機器を用いて、VTIP及び脱イオン水を前駆体及び酸化剤として採用し、160~240回のサイクルを行い、厚さ20~30nmの酸化バナジウムフィルムを正孔輸送層21として製造する。
【0066】
(4)190~210℃で、ALD機器を用いて、トリメチルアルミニウム(TMA)及び脱イオン水を前駆体及び酸化剤として採用し、450~550回のサイクルを行い、厚さ45~55nmの酸化アルミニウムフィルムを第1不動態化層22として製造する。
【0067】
(5)感光性ポリイミドを用いてパターン化マスク層の製造を行い、光化学反応により、第1マスク層31及び第2マスク層32をそれぞれ取得し、ドライエッチングによって第2マスク層32の覆う正孔輸送層21及び第1不動態化層22を除去する。
【0068】
(6)第1マスク層31を除去する。
【0069】
(7)100~160℃で、ALD機器を用いて、チタンテトライソプロポキシド及び脱イオン水を前駆体及び酸化剤として採用し、225~275回のサイクルを行い、厚さ22.5~27.5nmの酸化チタンフィルムを電子輸送層40として製造する。
【0070】
(8)シラン及びメタンをシリコンソース及び炭素源とし、Hをキャリアガスとし、積層厚さが20nmである炭化ケイ素フィルムを第2不動態化層50とする。
【0071】
(9)工程(4)及び工程(8)と同一の条件を用いてシリコンウェーハの前面に酸化アルミニウムフィルムを第3不動態化層61とし、炭化ケイ素フィルムを第4不動態化層62として製造する。
【0072】
(10)380~420℃で10分間アニーリングし、表面不動態化を活性化する。
【0073】
(11)銀の第1電極71及びニッケルアルミニウムの第2電極72をそれぞれ製造する。
実施例2
【0074】
本実施例において、太陽電池の製造方法は、実施例1とほぼ同じであるが、相違は、下記の通りである。
【0075】
工程(3)では、400℃の条件で、プラズマ強化化学蒸着機器を用いて、VTIP及びNOを前駆体及び酸化剤として用い、厚さ20~30nmの酸化バナジウムフィルムを正孔輸送層21として製造する。
【0076】
工程(7)では、400℃で、ALD機器を用いて、プラズマ強化化学蒸着機器を用い、チタンテトライソプロポキシド及びNOを前駆体及び酸化剤として用い、厚さ22.5~27.5nmの酸化チタンフィルムを電子輸送層40として製造する。
比較例1
【0077】
(1)70℃で、水酸化カリウム溶液と過酸化水素溶液との混合溶液を用いて半導体基板10に対して時間が約90秒である洗浄を行って、シリコンウェーハ表面の不純物を除去する。
【0078】
(2)78℃で、水酸化カリウム溶液と添加剤を用いてシリコンウェーハの前面に対して約450秒のチェーンテクスチャー加工を行い、シリコンウェーハの正表面にピラミッドパターンのテクスチャーを光閉じ込め構造として形成する。
【0079】
(3)600℃で、シリコンウェーハの背面に低圧化学蒸着により一層の真性アモルファスシリコン層を蒸着する。
【0080】
(4)1000℃で、ボロン拡散を行い、P型ポリシリコンをPエリアとして形成し、即ち正孔輸送層21となる。
【0081】
(5)感光性ポリイミドを用いてパターン化マスク層の製造を行い、光化学反応により、第1マスク層31及び第2マスク層32をそれぞれ取得し、ドライエッチングによって第2マスク層32の覆う正孔輸送層21を除去する。
【0082】
(6)第1マスク層31を除去する。
【0083】
(7)900℃でリン拡散を行い、N型ポリシリコンをNエリアとして形成し、即ち電子輸送層40となる。
【0084】
(8)シラン及びメタンをシリコンソース及び炭素源とし、Hをキャリアガスとし、積層厚さが20nmである炭化ケイ素フィルムを第2不動態化層50とする。
【0085】
(9)実施例1において工程(4)及び工程(8)と同一の条件を用いてシリコンウェーハの前面に酸化アルミニウムフィルムを第3不動態化層61とし、炭化ケイ素フィルムを第4不動態化層62として製造する。
【0086】
(10)38~420℃で10分間アニーリングし、表面不動態化を活性化する。
【0087】
(11)銀の第1電極71及びニッケルアルミニウムの第2電極72をそれぞれ製造する。
【0088】
実施例1、2及び比較例1で製造された太陽電池に対してそれぞれ性能試験を行い、開回路電圧Uoc、短絡電流Isc、フィルファクターFF及び変換効率Etaを含めて、試験結果を下記の表1に示す。
【0089】
これによってわかるように、実施例1及び2における太陽電池の光電変換効率及び開回路電圧は、比較例1よりも高い。同時に、実施例1及び2の収率も比較例1よりも高く、高温プロセスがシリコンウェーハの反りに影響するので、比較例1における収率が低いことが表される。更には、実施例2において、太陽電池は、実施例1よりも、開回路電圧が比較的小さく、プラズマ強化化学蒸着で成長したフィルムは密度が足りないため、不働態化の効果は、実施例1において原子層蒸着で製造されたフィルムほど、よくない。
【0090】
上記前述した実施例の各技術的特徴は任意の組み合わせを行うことができ、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴のすべての可能な組み合わせについて説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、いずれも本明細書に記載の範囲であると考えられるべきである。
【0091】
上記した実施例は本発明のいくつかの実施形態のみを示し、その説明は具体的で詳細であるが、これによって本発明の特許範囲を限定するものと理解すべきではない。指摘すべきこととして、当業者にとって、本出願の思想から逸脱することなく、さらにいくつかの変形及び改良を行うことができ、これらはいずれも本出願の保護範囲に属する。したがって、本出願の特許の保護範囲は添付する特許請求の範囲を基準とするべきであり、明細書及び図面は請求項の内容を説明するために用いられる。
【符号の説明】
【0092】
10、半導体基板
21、正孔輸送層
22、第1不動態化層
31、第1マスク層
32、第2マスク層
40、電子輸送層
50、第2不動態化層
61、第3不動態化層
62、第4不動態化層
71、第1電極
72、第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-11-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板と、
前記第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層及び電子輸送層であって、前記正孔輸送層の材料が酸化バナジウムを含み、前記電子輸送層の材料が酸化チタンを含む正孔輸送層及び電子輸送層と、
前記正孔輸送層の前記半導体基板から離れる表面に位置している第1不動態化層と、
材料が前記第1不動態化層の材料と異なり、前記第1不動態化層の前記半導体基板から離れる表面と、前記電子輸送層の前記半導体基板から離れる表面と、前記第1表面とを覆う第2不動態化層と、
前記第1不動態化層を覆う、前記第2不動態化層の前記半導体基板から離れる表面に位置して、前記正孔輸送層と接触しない第1電極と、
前記電子輸送層を覆う、前記第2不動態化層の前記半導体基板から離れる表面に位置して、前記電子輸送層と接触しない第2電極と、を備える
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記正孔輸送層の厚さは20~30nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記電子輸送層の厚さは45~55nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1不動態化層の材料は酸化アルミニウムを含み、
且つ/或いは、前記第2不動態化層の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸窒化ケイ素の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第2表面はスエードである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第2表面には第3不動態化層が設けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第3不動態化層の前記半導体基板から離れる表面には第4不動態化層がさらに設けられ、前記第4不動態化層及び前記第3不動態化層は材料が異なる
ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
対向して設けられる第1表面及び第2表面を有する半導体基板を提供する工程と、
前記第1表面に間隔をあけて設けられる正孔輸送層及び電子輸送層を製造する工程であって、前記正孔輸送層の材料が酸化バナジウムを含み、前記電子輸送層の材料が酸化チタンを含む工程と、
前記正孔輸送層の前記半導体基板から離れる表面に位置している第1不動態化層を製造する工程と、
前記第1不動態化層の前記半導体基板から離れる表面と、前記電子輸送層の前記半導体基板から離れる表面と、前記第1表面とを覆う第2不動態化層を製造する工程と、
第1電極及び第2電極を製造する工程であって、前記第1電極が、前記第1不動態化層を覆う、前記第2不動態化層の前記半導体基板から離れる表面に位置して、前記正孔輸送層と接触せず、前記第2電極が、前記電子輸送層を覆う、前記第2不動態化層の前記半導体基板から離れる表面に位置して、前記電子輸送層と接触しない工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記正孔輸送層を製造する工程は、
原子層を用いて120~130℃で蒸着してバナジウム源及び第1酸化剤により前記正孔輸送層を製造し、あるいは、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でバナジウム源及び第2酸化剤により前記正孔輸送層を製造する工程を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記電子輸送層を製造する工程は、具体的に、
原子層蒸着を用いて100~160℃でチタン源及び第1酸化剤により前記電子輸送層を製造し、あるいは、プラズマ強化化学蒸着を用いて380~420℃でチタン源及び第2酸化剤により前記電子輸送層を製造する工程を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池の製造方法。