(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002383
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インク組成物、人工皮革、およびインクジェット印刷方法。
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20241226BHJP
C08G 75/045 20160101ALI20241226BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241226BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241226BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C09D11/38
C08G75/045
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 110
B41J2/01 127
B41J2/01 501
D06N3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102531
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇二
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4F055
4J030
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FB01
2C056FC01
2C056HA44
2H186AB11
2H186AB61
2H186BA08
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2H186FB46
4F055AA01
4F055BA02
4F055CA15
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4F055EA24
4F055FA08
4F055FA10
4F055FA15
4F055HA18
4J030BA03
4J030BA04
4J030BA44
4J030BB06
4J030BB07
4J030BC32
4J030BC43
4J030BF10
4J030BG01
4J039AD21
4J039BC54
4J039BE22
4J039BE27
4J039EA04
4J039EA46
4J039FA07
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】チオール-エン反応を利用した活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、人工皮革等の柔軟な素材に対して十分な強度の塗膜を形成でき、かつインクジェット印刷が可能な活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供する。
【解決手段】多官能チオール化合物(A)、二官能モノマー(B)、ラジカル環化重合性モノマー(C)、ならびに光重合開始剤(D)を含有し、前記チオール化合物(A)の25℃における粘度が、40mPa・s~3000mPa・sであり、前記二官能モノマー(B)が、ビニル基を含む2個の反応性基を有し、かつ前記反応性基の少なくとも1個は、アクリル基であり、前記二官能モノマー(B)のホモポリマーのガラス転移温度が65℃~150℃である、活性エネルギー線硬化型インク組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能チオール化合物(A)、二官能モノマー(B)、ラジカル環化重合性モノマー(C)、および光重合開始剤(D)を含有し、
前記チオール化合物(A)の25℃における粘度が、40mPa・s~3000mPa・sであり、
前記二官能モノマー(B)が、ビニル基を含む反応性基を2個有し、かつ前記反応性基の少なくとも1個は、アクリル基であり、
前記二官能モノマー(B)のホモポリマーのガラス転移温度が65℃~150℃である、活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項2】
前記ラジカル環化重合性モノマー(C)が、α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートであり、前記ラジカル環化重合性モノマー(C)の25℃における粘度が、5.0mPa・s以下である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項3】
前記ラジカル環化重合性モノマー(C)が、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチルである、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項4】
前記二官能モノマー(B)が、ネオペンチルグリコールジアクリレート、またはノナンジオールジアクリレートである、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項5】
前記多官能チオール化合物(A)が、二官能から四官能のチオール化合物であり、かつ
前記多官能チオール化合物(A)の25℃における粘度が、40mPa・s~500mPa・sである、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項6】
活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれるメルカプト基の総量(モル)に対する活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる二重結合の総量(モル)の比が、0.8~1.5であり、前記二官能モノマー(B)に対する前記ラジカル環化重合性モノマー(C)のモル比が、0.7~1.5である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項7】
インクジェットインクである、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項8】
人工皮革のオーバープリントワニスである、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜を備える、人工皮革。
【請求項10】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を、インクジェット方式で基材に塗布して、前記活性エネルギー線硬化型インク組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に活性エネルギー線を照射して、硬化させる工程と、
を包含するインクジェット印刷方法。
【請求項11】
前記基材が、人工皮革である、請求項10に記載のインクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インク組成物に関する。本発明はまた、当該活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜を備える人工皮革に関する。本発明はさらに、活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いたインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式による印刷方法は、簡便に印刷を行うことができ、オンデマンド印刷にも適していることから、広く普及しており、紙以外の基材(例えば、人工皮革)への印刷に対しても採用されている。人工皮革は、低吸収性/非吸収性基材であるため、人工皮革に対するインクジェット印刷には、活性エネルギー線硬化型インク組成物が適している。
【0003】
活性エネルギー線硬化型インク組成物は、典型的には、(メタ)アクリレート化合物のラジカル重合を利用している。しかしながら、当該ラジカル重合は、短時間でインク塗膜の硬化を可能にする一方で、反応率が低く、酸素阻害の影響を受けるというデメリットがある。一方で、チオール-エン反応を利用した活性エネルギー線硬化型インク組成物が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-218447号公報
【特許文献2】特開2012-167246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人工皮革は、柔軟性のある基材である。チオール-エン反応を利用した活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜は、硫黄原子を含むため、曲げ耐性が高い。そのため、活性エネルギー線硬化型インク組成物は、人工皮革のような柔軟な基材への印刷に適していると考えられる。そこで、本発明者は、チオール-エン反応を利用した活性エネルギー線硬化型インク組成物の人工皮革へのインクジェット印刷への適用について鋭意検討を行った。その結果、チオール-エン反応を利用した活性エネルギー線硬化型インク組成物については、インクジェット方式で吐出可能な粘度の活性エネルギー線硬化型インク組成物を調製することが難しく、また十分な強度の硬化塗膜を形成することも難しいという課題があることを見出した。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、本発明は、チオール-エン反応を利用した活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、人工皮革等の柔軟な素材に対して十分な強度の塗膜を形成でき、かつインクジェット印刷が可能な活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物は、多官能チオール化合物(A)、二官能モノマー(B)、ラジカル環化重合性モノマー(C)、および光重合開始剤(D)を含有する。前記チオール化合物(A)の25℃における粘度は、40mPa・s~3000mPa・sである。前記二官能モノマー(B)は、ビニル基を含む反応性基を2個有し、かつ前記反応性基の少なくとも1個は、アクリル基である。前記二官能モノマー(B)のホモポリマーのガラス転移温度は、65℃~150℃である。
【0008】
別の側面から、本発明に係る人工皮革は、上記の活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜を備える。
【0009】
別の側面から、本発明に係るインクジェット印刷方法は、上記の活性エネルギー線硬化型インク組成物を、インクジェット方式で基材に塗布して、前記活性エネルギー線硬化型インク組成物の塗膜を形成する工程と、前記塗膜に活性エネルギー線を照射して、硬化させる工程と、を包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チオール-エン反応を利用した活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、人工皮革等の柔軟な素材に対して十分な強度の塗膜を形成でき、かつインクジェット印刷が可能な活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物は、多官能チオール化合物(A)、二官能モノマー(B)、ラジカル環化重合性モノマー(C)、および光重合開始剤(D)を含有する。当該チオール化合物(A)の25℃における粘度は、40mPa・s~3000mPa・sである。当該二官能モノマー(B)は、ビニル基を含む反応性基を2個有し、かつ当該反応性基の少なくとも1個はアクリル基である。当該二官能モノマー(B)のホモポリマーのガラス転移温度は、65℃~150℃である。なお、本明細書において「A~B」で示される数値範囲には、AおよびBが含まれる。
【0012】
〔多官能チオール化合物(A)〕
多官能チオール化合物(A)は、チオール-エン反応のためのチオール成分である。多官能チオール化合物(A)が、メルカプト基(-SH基)を2個以上有することにより、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化性を高めることができ、また活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜の強度を高めることができる。多官能チオール化合物(A)が有するメルカプト基の数は、好ましくは2個~6個であり、より好ましくは2個~3個であり、さらに好ましくは3個である。すなわち、多官能チオール化合物(A)は、好ましくは二官能から六官能であり、より好ましくは二官能から三官能であり、さらに好ましくは三官能である。
【0013】
多官能チオール化合物(A)の25℃における粘度は、40mPa・s~3000mPa・sである。このような粘度の多官能チオール化合物(A)を用いることにより、活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を、インクジェット印刷に適した粘度に調整することができる。多官能チオール化合物(A)の25℃における粘度は、好ましくは40mPa・s~1,000mPa・sであり、より好ましくは40mPa・s~600mPa・sであり、さらに好ましくは40mPa・s~200mPa・sである。なお、多官能チオール化合物(A)の25℃における粘度は、コーンプレートを備える回転粘度計(すなわち、E型粘度計)を用いて測定することができる。
【0014】
多官能チオール化合物(A)が、二官能から四官能のチオール化合物であり、かつ多官能チオール化合物(A)の25℃における粘度が、40mPa・s~500mPa・sであることが特に好ましい。
【0015】
多官能チオール化合物(A)の種類は、上記の粘度を満たす多官能チオール化合物を特に制限なく用いることができる。多官能チオール化合物(A)の例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「TMMP」として入手可能、25℃における粘度:約150mPa・s)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)(レゾナック社製「カレンズMT(登録商標)TPMB」として入手可能)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「PEMP」として入手可能、25℃における粘度:約500mPa・s)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(レゾナック社製「カレンズMT(登録商標)PE1」として入手可能)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「EGMP-4」として入手可能、25℃における粘度:約50mPa・s)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「BDMP」として入手可能)、トリメチロールプロパンジプロパンチオール(SC有機化学社製「Multhiol Y-2」として入手可能、25℃における粘度:約60mPa・s)、ペンタエリスリトールトリプロパンチオール(SC有機化学社製「Multhiol Y-3」として入手可能、25℃における粘度:約150mPa・s)、ペンタエリスリトールテトラプロパンチオール(SC有機化学社製「Multhiol Y-4」として入手可能、25℃における粘度:約100mPa・s)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「DPMP」として入手可能。25℃における粘度:約2200~3000mPa・s)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(レゾナック社製「カレンズMT(登録商標)BD1」として入手可能)等が挙げられる。
【0016】
なかでも、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンジプロパンチオール、ペンタエリスリトールトリプロパンチオールが好ましく、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)がより好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0017】
多官能チオール化合物(A)の含有量は、活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれるメルカプト基の総量(モル)と、活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる二重結合の総量(モル)とを考慮して適宜設定すればよい。活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれるメルカプト基の総量(モル)に対する、活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる二重結合の総量(モル)の比〔すなわち、活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる二重結合の総量(モル)/活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれるメルカプト基の総量(モル)で表される比〕は、好ましくは0.5~2.0であり、より好ましくは0.8~1.5であり、さらに好ましくは1.0~1.4であり、特に好ましくは1.1~1.3である。
【0018】
本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物においては、チオール-エン反応と重合反応とが競合するが、チオール-エン反応の方が、非常に優位に起こる。チオール-エン反応をより優位に起こさせる観点および得られる硬化塗膜の曲げ耐性の観点から、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物中の多官能チオール化合物(A)の含有量は、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは42質量%以上である。一方、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度等の観点から、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物中の多官能チオール化合物(A)の含有量は、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0019】
〔二官能モノマー(B)〕
二官能モノマー(B)は、チオール-エン反応のためのエン成分である。二官能モノマー(B)は、ビニル基を含有する2個の反応性基を有する。この反応性基の例としては、アクリル基、ビニルエーテル基、アリル基、アリルエーテル基等が挙げられる。二官能モノマー(B)において、少なくとも1個の反応性基がアクリル基である。これにより、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化性を高めることができ、また活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜の強度を高めることができる。
【0020】
加えて、二官能モノマー(B)のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、65℃~150℃である。Tgは、ポリマーを加熱した場合に(すなわち、ポリマーに熱エネルギーを与えた場合に)、分子内のセグメント間の相互作用が弱まって分子内のセグメントがミクロブラウン運動を開始する温度である。よって、二官能モノマーのホモポリマーの分子内のセグメント(特に、二官能モノマーの2個の反応性基の間のセグメント)の相互作用の強さの指標となる。二官能モノマー(B)が、上記範囲のTgを有することにより、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化性を高めることができ、また活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜の強度を高めることができる。なお、二官能モノマー(B)のホモポリマーのTgは、示差走査熱量(DSC)測定を行うことで求めることができる。
【0021】
二官能モノマー(B)の例としては、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPDA、ホモポリマーのTg:117℃)、ノナンジオールジアクリレート(NDDA、ホモポリマーのTg:68℃)、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA、ホモポリマーのTg:91℃)などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。なお、VEEAは、2個の反応性基の反応性が異なるために、重合方法によってホモポリマーのTgが異なることが知られているが、ここでは、2個反応性基が共に重合反応するよう、UVラジカル重合およびUVカチオン重合を行って得られるホモポリマーのTgを採用している。
【0022】
二官能モノマー(B)のホモポリマーのTgは、好ましくは66℃以上であり、より好ましくは67℃以上である。二官能モノマー(B)のホモポリマーのTgは、好ましくは140℃以下であり、より好ましくは135℃以下であり、さらに好ましくは130℃以下であり、特に好ましくは120℃以下である。
【0023】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物の保存安定性の観点から、二官能モノマー(B)の2個の反応性基は、共にアクリル基であることが好ましい。二官能モノマー(B)としては、NPDA、およびNDDAが特に好ましい。
【0024】
二官能モノマー(B)の25℃における粘度は、好ましくは15mPa・s以下であり、より好ましくは10mPa・s以下である。なお、二官能モノマー(B)の25℃における粘度は、E型粘度計を用いて測定することができる。
【0025】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれるメルカプト基の総量(モル)に対する活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる二重結合の総量(モル)の比が、0.8~1.5であり、かつ二官能モノマー(B)に対するラジカル環化重合性モノマー(C)のモル比が、0.7~1.5であることが特に好ましい。
【0026】
活性エネルギー線硬化型インク組成物中の、二官能モノマー(B)の含有量は、好ましくは15質量%~40質量%であり、より好ましくは20質量%~38質量%である。
【0027】
〔ラジカル環化重合性モノマー(C)〕
環化重合は、適切な位置に2個のラジカル重合性基を含む単量体が重合する場合に、分子間の反応と分子内の反応が交互に起こることで、重合体の主鎖中に環を形成しながら重合体を生成する反応である。よって、ラジカル環化重合性モノマー(C)は、2個のラジカル重合性基を有しており、チオール-エン反応のためのエン成分である。
【0028】
多官能チオール化合物(A)は高粘度である一方で、ラジカル環化重合性モノマー(C)は非常に低粘度であるため(例えば、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチルの25℃における粘度は1.57mPa・s)、活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を、インクジェット印刷に適するように大幅に低減させる役割も有する。また、ラジカル環化重合性モノマー(C)のホモポリマーは、重合の際の環化によって環構造を有するため、Tgが高く(例えば、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチルのホモポリマーのTgは84℃)、このことが活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜の強度向上に寄与する。
【0029】
ラジカル環化重合性モノマーの例としては、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA)、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシエチルアクリル酸メチルなどのα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。なかでも、AOMAが好ましい。
【0030】
ラジカル環化重合性モノマー(C)のホモポリマーのTgは、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは好ましくは60℃~200℃であり、さらに好ましくは80℃~180℃である。なお、ラジカル環化重合性モノマー(C)のホモポリマーのTgは、DSC測定により求めることができる。
【0031】
ラジカル環化重合性モノマー(C)の25℃における粘度は、好ましくは5.0mPa・s以下であり、より好ましくは3.0mPa・s以下であり、さらに好ましくは2.0mPa・s以下である。なお、ラジカル環化重合性モノマー(C)の25℃における粘度は、E型粘度計を用いて測定することができる。
【0032】
ラジカル環化重合性モノマー(C)が、α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートであり、かつラジカル環化重合性モノマー(C)の25℃における粘度が、5.0mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0033】
二官能モノマー(B)とラジカル環化重合性モノマー(C)の使用割合に関し、二官能モノマー(B)に対するラジカル環化重合性モノマー(C)のモル比が高い方が、耐擦過性が高くなる。よって、二官能モノマー(B)に対するラジカル環化重合性モノマー(C)のモル比は、好ましくは0.5~3.0であり、より好ましくは0.8~2.0であり、さらに好ましくは1.0~1.5である。
【0034】
活性エネルギー線硬化型インク組成物中の、ラジカル環化重合性モノマー(C)の含有量は、好ましくは10質量%~35質量%であり、より好ましくは12質量%~30質量%である。
【0035】
〔光重合開始剤(D)〕
光重合開始剤(D)は、活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生させて重合を開始する成分である。しかしながら、本発明では、活性エネルギー線の照射によって光重合開始剤(D)が発生させたラジカルを、チオール-エン反応に利用する。当該活性エネルギー線は、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線などであり、好ましくは紫外線である。光重合開始剤(D)は、分子内結合開裂型および分子内水素引き抜き型のいずれであってもよく、分子内開裂型が好ましい。
【0036】
光重合開始剤(D)としては、活性エネルギー線硬化型インク組成物に用いられる公知のものを用いてよく、その例としては、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤等が挙げられる。
【0037】
硬化性が特に高くなることから、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤が好ましく、その例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート等が挙げられる。なかでも、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。光重合開始剤(D)は1種単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0038】
活性エネルギー線硬化型インク組成物中の光重合開始剤(D)の含有量は、光重合開始剤(D)の種類によって適宜決定してよい。活性エネルギー線硬化型インク組成物中の光重合開始剤(D)の含有量は、例えば、0.1質量%~15質量%であり、好ましくは0.5質量%~10質量%であり、より好ましくは1.0質量%~5.0質量%である。
【0039】
〔任意成分〕
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内で、上記以外の成分(以下、「任意成分」ともいう)を含有することができる。
【0040】
任意成分の例としては、紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール(BTZ)系紫外線吸収剤(例、Chitech社製「CHIGUARD5530」、リャンロンジャパン社製「RIASORB UV-928」など)、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外吸収剤紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0041】
任意成分の例としては、光安定剤が挙げられる。本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物の特性に対する悪影響が非常に小さいことから、光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤(例、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネートなど)が好ましい。
【0042】
任意成分の例としては、表面調整剤が挙げられる。本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物の特性に対する悪影響が非常に小さいことから、表面調整剤としては、ポリエーテル系表面調整剤、またはポリシロキサン系表面調整剤が好ましい。
【0043】
任意成分の例としては、重合禁止剤が挙げられる。重合禁止剤としては、活性エネルギー線硬化型インク組成物に用いられる公知のものを使用することができる。二官能モノマー(B)が、反応性基としてビニルエーテル基を有する場合には、ニトロソ系重合禁止剤(例、n-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩など)の使用が有利である。
【0044】
任意成分の例としては、色材が挙げられる。よって、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、色材を含まないクリアインクとして使用することができるが、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、色材を含んでいてもよい。当該色材は、顔料または染料であってよい。顔料は、無機顔料と有機顔料のいずれであってよい。顔料および染料は、活性エネルギー線硬化型インク組成物に用いられる公知のものを用いてよい。色材は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
その他の任意成分としては、有機溶媒、酸化防止剤、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0046】
〔活性エネルギー線硬化型インク組成物の特性〕
活性エネルギー線硬化型インク組成物が、インクジェット印刷可能であるためには、25℃におけるその粘度が20mPa・s以下である必要がある。そのため、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、25℃において、20mPa・s以下の粘度を有し得るものであり、さらに18mPa・s以下、さらには16mPa・s以下の粘度を有し得る。本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物の25℃における粘度は、5mPa・s以上であってよい。したがって、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、インクジェット印刷が可能であり、インクジェットインクとして好適に用いることができる。また、インクジェット印刷以外の印刷方法に使用することもできる。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物の25℃の粘度は、E型粘度計を用いて測定することができる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物によれば、人工皮革等の柔軟な素材に対して、十分な強度の硬化塗膜を形成することができる。この高強度の硬化塗膜は、耐擦過性を有する。よって、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物によれば、人工皮革等の柔軟な素材に耐擦過性を付与することができる。なお、人工皮革は、ナイロン、ポリエステル等のマイクロファイバから構成される不織布に合成樹脂(例、ウレタン樹脂等)を含侵させた素材、および当該不織布に合成樹脂を含浸させたものを基材とし、当該基材の表面に合成樹脂(例、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等)を塗布した素材である。
【0048】
人工皮革以外の柔軟な素材の例としては、天然繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等から構成される織布または編布を基材とし、当該基材の表面に合成樹脂を塗布した合成皮革;天然皮革の製造過程で生じる裁断端切れを粉砕しシート状に固めて表面コーティング加工をした再生皮革;ポリウレタンシート;ポリ塩化ビニルシートなどが挙げられる。
【0049】
〔活性エネルギー線硬化型インク組成物の用途〕
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜を、人工皮革等の基材に形成することにより、耐擦過性を付与することができる。よって、本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物は、オーバープリントワニス(OPV)に好適であり、人工皮革のOPVに特に好適である。本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物をOPVとして用いる場合、本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物は、色材を含有しないクリアインクであってよい。
【0050】
あるいは、本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク組成物に色材を含有させて、または含有させずに、人工皮革等の加飾用途に用いることもできる。
【0051】
別の側面から、本発明は、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜を備える、人工皮革である。活性エネルギー線硬化型インク組成物は、オーバープリントワニスであることが好ましい。
【0052】
また別の側面から、本発明は、上記の活性エネルギー線硬化型インク組成物を、インクジェット方式で基材に塗布して、活性エネルギー線硬化型インク組成物の塗膜を形成する工程(以下、「塗布工程」ともいう)と、当該塗膜に活性エネルギー線を照射して、硬化させる工程(以下、「照射工程」ともいう)と、を包含するインクジェット印刷方法である。
【0053】
塗布工程について説明する。基材の好適な例としては、人工皮革が挙げられるが、基材はこれに限られない。基材は、人工皮革と同程度に柔軟な基材であってよく、合成皮革、再生皮革、ポリウレタンシート、ポリ塩化ビニルシートであってよい。
【0054】
活性エネルギー線硬化型インク組成物は、多官能チオール化合物(A)を用いながらも、インクジェット印刷に適した粘度を有している。よって、塗布工程は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。具体的に例えば、公知のインクジェット記録装置に、活性エネルギー線硬化型インク組成物を装填する。当該インクジェット記録装置のインクジェットヘッドから、微細な液滴状に活性エネルギー線硬化型インク組成物を基材の表面に吐出することにより、塗布を行う。これにより、基材上に活性エネルギー線硬化型インク組成物の塗膜を形成することができる。なお、塗布の前に、活性エネルギー線硬化型インク組成物または基材を予備加熱してもよい。
【0055】
次に照射工程について説明する。照射工程で用いられる活性エネルギー線は、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線などであり、好ましくは紫外線である。紫外線は、波長10nm~400nmのエネルギー線であり、紫外線は、好ましくは波長が315nm~400nmのUV-Aである。よって、活性エネルギー線硬化型インク組成物の光重合開始剤(D)には、この波長において重合を開始する光重合開始剤を適宜選択することが好ましい。
【0056】
塗膜への活性エネルギー線の照射は、公知方法により行うことができる。具体的には、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化に用いられる、公知の活性エネルギー線照射器を用いて行うことができる。活性エネルギー線の照射量は、従来と同様に、光重合開始剤(D)の種類と量に応じて適宜決定してよい。
【0057】
これにより、基材上に、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化塗膜を形成することができる。これにより、基材に、耐擦過性や加飾を付与することができる。活性エネルギー線硬化型インク組成物は、OPVとして使用することが好適である。
【実施例0058】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1~3および比較例1~16>
〔活性エネルギー線硬化型インクの作製〕
多官能チオール化合物として、三官能チオールである、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製「TMMP」)を用意した。比較例1~3では、TMMPと表1に示す二官能モノマーとを、2:3のモル比で混合した。比較例4では、TMMPと表1に示す単官能モノマーとを、1:3のモル比で混合した。実施例1~3と、比較例5~16では、TMMPを、表1に示す二官能モノマーおよび単官能モノマーと、1:1:1のモル比で混合した(すなわち、混合物においてメルカプト基と反応性基のモル数が同じになるように混合した)。以上のようにして、モノマー混合物を得た。
【0060】
モノマー混合物100質量部に対して、重合開始剤としてBASF社製「イルガキュア(登録商標)819」(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)2質量部を添加し、さらにそこへ表面調整剤としてBYK社製「BYK-UV3510」を0.2質量%添加し、均一に混合して、各実施例および各比較例の活性エネルギー線硬化型インクを得た。
【0061】
〔活性エネルギー線硬化型インクの粘度測定〕
活性エネルギー線硬化型インクの粘度を、東機産業社製E型粘度計「TVE-25L」を用いて、25℃、コーンプレート角度1°34’の条件で測定した。結果を表1に示す。なお、25℃における粘度が20mPa・s以下であれば、インクジェット印刷可能であるため、粘度が20mPa・s以下の場合は「〇」とし、粘度が20mPa・sを超える場合は「×」とした。なお、「〇」の場合、25℃における粘度が低いほど、インクジェット印刷が容易となる。
【0062】
〔活性エネルギー線硬化型インクの評価〕
基材として、帝人社製人工皮革コードレ(登録商標)(白)を用意した。当該基材に、バーコーターを用いて、上記作製した活性エネルギー線硬化型インクを30μmのウェット厚みで塗布した。次いで、波長385nmのUV-LEDランプを用いて2J/sの紫外光を1秒間照射することで、活性エネルギー線硬化型インクを反応させた。紫外光照射後の塗膜の状態を、以下の基準で評価した。
(硬化性)
〇:指で塗膜を触ったときに、塗膜が変形しない
△:指で塗膜を触ったときに、塗膜の一部が変形する
×:塗膜が硬化していない
(タック)
〇:指で塗膜を触ったときに、指への付着感がない
△:指で塗膜を触ったときに、指への付着感があるが、離した際に塗膜が指に付着しない
×:指に塗膜が付着する
【0063】
塗膜が硬化しているものに関しては、サクラクレパス社製インク用消しゴム512を、塗膜上で10往復させた後、塗膜の状態を観察し、塗膜の強度を以下の基準で評価した。
(塗膜強度)
〇:塗膜が破壊されず、擦り傷もほとんどない
△:塗膜が破壊され、擦り傷が多く発生する
×:塗膜が破壊される
【0064】
【0065】
〔二官能モノマー略号〕
NDDA:ノナンジオールジアクリレート(ホモポリマーのTg:68℃)
NPDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート(ホモポリマーのTg:117℃)
TMPDA:トリメチロールプロパンジアリルエーテル
NDDM:ノナンジオールジメタクリレート
ODE:1,7-オクタジエン
VEEA:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(ホモポリマーのTg:91℃)
HDDA:ヘキサンジオールジアクリレート(ホモポリマーのTg:63℃)
DAP:ジアリルフタレート
DAE:ジアリルエーテル
【0066】
〔単官能モノマー略号〕
AOMA:α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル
PEA:フェノキシエチルアクリレート
THFA:テトラヒドロフルリルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
BZA:ベンジルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
NVC:N-ビニルカプロラクタム
※なお、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチルは、重合性基を2個有しているが、1個が分子内の環化反応で消費されるため、ここでは、単官能モノマーに分類している。
【0067】
実施例1~3および比較例1~3の比較より、単官能モノマーを使用しない場合には、インクの粘度を低減することが難しいことがわかる。実施例1~3および比較例4の比較より、二官能モノマーを使用しない場合には、インクの硬化性が不十分となることがわかる。実施例1~3および比較例10~16の比較より、単官能モノマーとしてAOMAを用いる場合には、インク粘度を顕著に低減でき、インクの硬化塗膜の強度も向上できることがわかる。比較例13では、インクの粘度をインクジェット印刷可能な粘度まで低減できたが、インクが硬化しなかった。このことより、単官能モノマーとしてAOMAを用いる場合には、インク粘度低減効果と硬化性向上効果とが顕著に得られることがわかる。さらに実施例1~3および比較例7~9の比較より、二官能性モノマーの種類によっては、インクの十分な硬化性と、十分な強度の硬化塗膜が得られないことがわかる。特に、実施例1~3と比較例7との比較より、二官能モノマーの2個の重合性基(反応性基)の間のセグメントが、インクの硬化性と硬化塗膜の強度に寄与していると言え、二官能モノマーのTgが、65℃~150℃であるとインクの十分な硬化性と、十分な強度のインクの硬化塗膜が得られると言える。
【0068】
よって、以上のことから、本発明によれば、人工皮革等の柔軟な素材に対して十分な強度の塗膜を形成でき、かつインクジェット印刷が可能な活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供できることがわかる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、インクジェットインクとして好適に用いることができ、人工皮革のオーバープリントワニス用途をはじめ、種々の用途に用いることができる。