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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002384
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A01K89/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102533
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】落合 浩士
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BA03
2B108BA09
(57)【要約】
【課題】回転構造を低トルクで回転させることができ、且つ、防水性能の安定化を実現することができる魚釣用スピニングリールが、提供される。
【解決手段】魚釣用スピニングリール1は、リール本体3と、ロータ9と、第1防水部材25と、を備える。リール本体は3、本体部3a、および、カバー部3d、を有する。ロータは、ロータ本体9a、および、前壁9b、を有する。ロータ本体9aは、径方向においてカバー部3dよりも外側に配置される。ロータ本体9aは、本体部3aに対して回転可能に構成される。前壁9bは、ロータ本体9aに設けられる。前壁9bは、軸方向においてカバー部3dに対向して配置される。第1防水部材25は、カバー部3dの径方向内側においてカバー部3dに取り付けられる。第1防水部材25は、潤滑剤Gを保持する潤滑剤保持部25eを有する。第1防水部材25は、前壁9bに接触する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部、および、前記本体部に設けられる筒状部、を有するリール本体と、
径方向において前記筒状部よりも外側に配置されるロータ本体、および、前記ロータ本体に設けられ軸方向において前記筒状部に対向して配置される壁部、を有し、前記リール本体に対して回転可能に構成されるロータと、
前記筒状部より径方向内側に配置され、潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を有し、前記壁部に接触する防水部材と、
を備える魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記防水部材は、
第1凸部と、
前記第1凸部より径方向内側に設けられ、前記壁部に接触する第2凸部と、を有し、
前記潤滑剤保持部は、前記第1凸部と前記第2凸部との間に設けられる、
請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記第1凸部および前記第2凸部の少なくともいずれか一方は、前記壁部に向かって細くなるリップ形状である、
請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記壁部は、前記防水部材が接触するカラー部材、を有する、
請求項1又は2に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載される魚釣用スピニングリールは、リール本体と、ロータと、ピニオンギアと、防水部材と、を備えている。リール本体は、本体部、および、円筒部を有する。円筒部は本体部に設けられる。
【0003】
ロータは、ロータ本体、および、前壁を有する。ロータ本体は、径方向において円筒部よりも外側に配置される。前壁はロータ本体に設けられる。前壁は、軸方向において円筒部に対向して配置される壁部を有する。
【0004】
ピニオンギアは、ロータに係合しロータを回転させる。ピニオンギアは、スプール軸まわりに回転するようにリール本体に設けられる。ピニオンギアは、径方向においてリール本体の円筒部よりも内側に配置される。
【0005】
防水部材は、リール本体の円筒部より径方向内側において、リール本体の円筒部に取り付けられる。防水部材は、径方向において、リール本体の円筒部、および、ピニオンギアの間に配置される。
【0006】
防水部材の先端部は、環状に形成される。防水部材の先端部は、ピニオンギアの外周面に配置されるキャップ部材に、嵌入される。すなわち、防水部材の先端部は、キャップ部材の外周面に接触し、キャップ部材を径方向内側に押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-162761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の魚釣用スピニングリールでは、防水部材の先端部がキャップ部材の外周面に嵌入されるので、防水部材の先端部がキャップ部材を径方向内側に押圧し、キャップ部材がピニオンギアを径方向内側に押圧する。すなわち、防水部材は、キャップ部材を介して、ピニオンギアの回転を規制するおそれがある。
【0009】
また、環状の防水部材の中心がピニオンギアの回転中心に一致するように、防水部材をリール本体の円筒部に取り付けることが難しい。このため、防水部材の中心位置がズレた場合に、防水性能を十分に確保できないおそれがある。そのため、一般的には、防水性能を維持するために、組立時に防水部材の中心位置のズレを見越して、キャップ部材とピニオンギアとの当たり量を増やして余裕を持たせている。この場合、キャップ部材とピニオンギアとの接触(当たり量)が大きくなり、回転抵抗が大きくなるおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、回転構造を低トルクで回転させることができ、且つ、防水性能の安定化を実現することができる魚釣用スピニングリールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面に関して、魚釣用スピニングリールは、リール本体と、ロータと、防水部材と、を備える。リール本体は、本体部、および、本体部に設けられる筒状部、を有する。
【0012】
ロータは、リール本体に対して回転可能に構成される。ロータは、ロータ本体、および、壁部、を有する。ロータ本体は、径方向において筒状部よりも外側に配置される。壁部は、ロータ本体に設けられる。壁部は、軸方向において筒状部に対向して配置される。
【0013】
防水部材は、筒状部より径方向内側に配置される。防水部材は、潤滑剤を保持する潤滑剤保持部を有する。防水部材は、壁部に接触する。
【0014】
第1の側面に係る魚釣用スピニングリールでは、ロータの壁部は、軸方向において、リール本体の筒状部に対向して配置される。防水部材は、リール本体の筒状部より径方向内側に配置される。この状態において、防水部材は、ローラの壁部に接触する。
【0015】
このように、本魚釣用スピニングリールでは、防水部材をピニオンギアのような回転構造に嵌入する必要がないので、回転構造を低トルクで回転させることができる。また、本魚釣用スピニングリールでは、防水部材の中心をピニオンギアの回転中心に正確に一致させる必要がないので、防水性能の安定化を図ることができる。さらに、本魚釣用スピニングリールでは、防水部材の潤滑剤保持部によって、回転構造の低トルク化、および、防水性能の安定化を向上することができる。
【0016】
本発明の第2の側面に関して、第1の側面に係る魚釣用スピニングリールは、以下のように構成される。防水部材は、第1凸部と、第2凸部と、を有する。第2凸部は、第1凸部より径方向内側に設けられる。第2凸部は、壁部に接触する。潤滑剤保持部は、第1凸部と第2凸部との間に設けられる。
【0017】
第2の側面に係る魚釣用スピニングリールでは、潤滑剤保持部を第1凸部と第2凸部との間に設けることによって、潤滑剤を好適に保持することができる。
【0018】
本発明の第3の側面に関して、第2の側面に係る魚釣用スピニングリールは、以下のように構成される。第1凸部および第2凸部の少なくともいずれか一方は、壁部に向かって細くなるリップ形状である。
【0019】
第3の側面に係る魚釣用スピニングリールでは、第1凸部および第2凸部の少なくともいずれか一方がリップ形状であるので、ロータの壁部に対する防水部材の接触抵抗を低下させることができる。すなわち、回転構造を低トルクで回転させることができる。
【0020】
本発明の第4の側面に関して、第1から第3の側面のいずれか1つに係る魚釣用スピニングリールは、以下のように構成される。壁部は、防水部材が接触するカラー部材、を有する。
【0021】
第4の側面に係る魚釣用スピニングリールでは、防水部材が壁部のカラー部材に接触するので、ロータの壁部に対する防水部材の接触抵抗を低下させることができる。すなわち、回転構造を低トルクで回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態による魚釣用スピニングリールの側面図。
図2】魚釣用スピニングリールから側カバーを取り外した側面図。
図3】魚釣用スピニングリールの断面図。
図4】魚釣用スピニングリールの部分拡大断面図。
図5図4の部分拡大断面図。
図6】第1防水部材の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリール1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、魚釣用スピニングリール1は、リール本体3と、ロータ9と、第1防水部材25(図2を参照)と、を備える。
【0024】
詳細には、図1に示すように、魚釣用スピニングリール1は、リール本体3と、ハンドル5と、スプール7と、ロータ9と、を備える。図2に示すように、魚釣用スピニングリール1は、ハンドル軸11と、駆動ギア13と、スプール軸15と、オシレーティング機構17と、をさらに備える。なお、図2は、図1に示す側カバー3cが取り外された図である。
【0025】
図3に示すように、魚釣用スピニングリール1は、ピニオンギア19と、減速機構21と、をさらに備える。魚釣用スピニングリール1は、第1防水部材25と、位置決め部材29と、第2防水部材31と、をさらに備える。
【0026】
図1に示すように、リール本体3は、本体部3aと、本体ガード3bと、側カバー3cと、図3に示すカバー部3d(筒状部の一例)と、を有する。本体ガード3bは、本体部3aの後部に取り付けられる。側カバー3cは、本体部3aの側部に取り付けられる。本体部3a、および、側カバー3cの間には、後述する各種の機構を収容するための空間が、形成される。
【0027】
図3に示すように、カバー部3dは、本体部3aに設けられる。カバー部3dは、本体部3aの前部に固定される。カバー部3dは有底筒状に形成される。詳細には、図4に示すように、カバー部3dは、第1筒部3d1と、底部3d2と、を有する。第1筒部3d1は、筒状に形成される。
【0028】
図4に示すように、第1筒部3d1は、本体部3aの前部に配置される。第1筒部3d1は、ロータ9の第2筒部9a2より径方向内側に配置される。底部3d2は環状に形成される。底部3d2の内周部には、スプール軸15、および、ピニオンギア19が挿通される。底部3d2は、第1筒部3d1から径方向内側に延びる。底部3d2は、ねじ部材のような固定部材(図示しない)によって、本体部3aに固定される。
【0029】
図1に示すように、ハンドル5は、リール本体3に回転可能に支持される。本実施形態では、ハンドル5がリール本体3の左側に配置される場合の例が示される。ハンドル5はリール本体3の右側に配置されてもよい。ハンドル5は、図2に示すハンドル軸11に装着される。
【0030】
図2、および、図3に示すように、ハンドル軸11は、リール本体3に回転可能に支持される。駆動ギア13は、ハンドル軸11と一体的に回転可能なようにハンドル軸11に装着される。駆動ギア13は、ピニオンギア19に噛み合う。
【0031】
図1に示すスプール7には、釣り糸が巻き付けられる。スプール7は、図2に示すスプール軸15に連結される。具体的には、図3に示すように、スプール7は、ドラグ機構8を介して、スプール軸15に連結される。スプール7は、オシレーティング機構17によって、スプール軸15とともにリール本体3に対して前後方向に移動する。
【0032】
図2、および、図3に示すように、スプール軸15は、リール本体3に対して前後方向に移動可能に支持される。スプール軸15は、筒状のピニオンギア19の内周部に挿通される。スプール軸15は、オシレーティング機構17の作動によって、リール本体3に対して前後方向に往復移動する。
【0033】
図3に示すように、スプール軸15は、スプール軸心X1を有する。スプール軸心X1は、スプール7の回転中心軸心、ロータ9の回転中心軸心、および、ピニオンギア19と同心である。前後方向は、スプール軸心X1が延びる方向である。本実施形態では、前方は、釣糸が繰り出される方向、例えば、図1の左側である。後方は、前方の反対側、例えば、図1の右側である。軸方向は、スプール軸心X1が延びる方向である。径方向は、スプール軸心X1から離れる方向である。周方向、および、回転方向は、スプール軸心X1まわりの方向である。
【0034】
図2、および、図3に示すように、オシレーティング機構17は、ハンドル軸11の回転に連動してスプール軸15を前後方向に移動させる。オシレーティング機構17は、リール本体3の内部空間に配置される。オシレーティング機構17は、ウォームシャフト23と、スライダ24と、ウォームシャフトギア27と、を有する。
【0035】
図3に示すウォームシャフト23は、スプール軸15、および、スライダ24を前後方向に移動させるために回転する。ウォームシャフト23は、スプール軸15と平行に配置される。ウォームシャフト23は、リール本体3に回転可能に支持される。
【0036】
スライダ24は、スプール軸15に装着される。例えば、スライダ24は、スプール軸15の後端に固定される。スライダ24は、ウォームシャフト23の回転によって前後方向に移動する。ウォームシャフトギア27は、ウォームシャフト23の前部に配置される。ウォームシャフトギア27は、ウォームシャフト23に対して回転可能に支持される。
【0037】
図3に示すように、ピニオンギア19は筒状に形成される。ピニオンギア19は、リール本体3に回転可能に支持される。ピニオンギア19は、スプール軸15より径方向外側に配置される。ピニオンギア19は、スプール軸15に対して回転する。ピニオンギア19は、スプール軸心X1まわりに回転する。
【0038】
ピニオンギア19の前部の外周面は、非円形に形成される。詳細には、ピニオンギア19の前部の外周面は、一対の平行面、および、一対の円弧を含むオーバル形状に、形成される。ピニオンギア19の前部、例えば、オーバル形状の部分は、ピニオンギア19の前端から軸受22の前面までの部分である。
【0039】
図3に示すように、減速機構21は、ピニオンギア19、および、オシレーティング機構17の間に配置される。例えば、減速機構21は、ピニオンギア19、および、ウォームシャフトギア27の間に配置される。減速機構21は、複数のギアから構成される。減速機構21は、ピニオンギア19の回転を減速してオシレーティング機構17に伝達する。
【0040】
ハンドル5の回転操作によってハンドル軸11が回転すると、駆動ギア13が回転する。駆動ギア13の回転は、ピニオンギア19に伝達される。ピニオンギア19の回転は、減速機構21を介してウォームシャフトギア27に伝達される。ウォームシャフト23の回転によって、スライダ24、および、スプール軸15が前後方向に移動する。
【0041】
図1、および、図2に示すロータ9は、スプール7に釣り糸を巻き付けるために用いられる。ロータ9は、リール本体3に対して回転可能に構成される。詳細には、ロータ9は、リール本体3の前部に配置される。
【0042】
図3に示すように、ロータ9は、ピニオンギア19より径方向外側に配置される。ロータ9は、ピニオンギア19と一体的に回転するように、ピニオンギア19に連結される。ハンドル5の回転操作によってハンドル軸11が回転すると、駆動ギア13が回転する。駆動ギア13の回転は、ピニオンギア19に伝達される。ロータ9は、ピニオンギア19の回転に連動して回転する。
【0043】
図3、および、図4に示すように、ロータ9は、ロータ本体9aと、前壁9b(壁部の一例)と、リテーナ9cと、ロータナット9dと、を有する。ロータ本体9aは、径方向においてカバー部3dよりも外側に配置される。
【0044】
ロータ本体9aは、一対のアーム部9a1と、第2筒部9a2と、を有する。一対のアーム部9a1のそれぞれは、第2筒部9a2と一体的に形成され第2筒部9a2の後端部から前方に延びるアーム本体と、アーム本体の先端部に設けられるベールアームとから、構成される。
【0045】
図4に示すように、第2筒部9a2は、筒状に形成される。第2筒部9a2は、軸方向において、リール本体3の本体部3aの前部に対向して配置される。第2筒部9a2は、リール本体3のカバー部3dより径方向外側に配置される。詳細には、第2筒部9a2は、リール本体3のカバー部3dの第1筒部3d1より径方向外側に配置される。
【0046】
図4に示すように、前壁9bは、ロータ本体9aに設けられる。前壁9bは、軸方向において、カバー部3dに対向して配置される。詳細には、前壁9bは、壁本体9b1と、支持部9b2と、ロータカラー9b3と、を有する。壁本体9b1は、環状に形成される。壁本体9b1は、第2筒部9a2から径方向内側に延びる。壁本体9b1は、カバー部3dの底部3d2の前方に配置される。
【0047】
支持部9b2はロータカラー9b3を支持する。支持部9b2は、前壁9bの内周部から軸方向に突出する。詳細には、支持部9b2は、前壁9bの内周部から、リール本体3の本体部3aに向けて後方に突出する。支持部9b2は、ピニオンギア19の前部に配置される。支持部9b2は、非円形係合によって、ピニオンギア19の前部の外周面と係合する。
【0048】
ロータカラー9b3は、環状に形成される。ロータカラー9b3は、壁本体9b1の後面、支持部9b2の上面、および、支持部9b2の後面に沿って、周方向に延びる。ロータカラー9b3は、支持部9b2、および、一方向クラッチ26によって、挟持される。ロータカラー9b3は、金属によって形成されることが好ましい。ロータカラー9b3には、第1防水部材25が接触する。
【0049】
図4に示すように、リテーナ9cは、ねじ部材のような固定部材20によって、ロータ9の前壁9bに固定される。リテーナ9cは、ロータナット9dと一体的に回転するように、ロータナット9dを保持する。ロータナット9dは、ピニオンギア19に噛み合い、ピニオンギア19と一体的に回転する。これにより、ピニオンギア19が回転すると、ロータ本体9a、および、前壁9bは、リテーナ9c、および、ロータナット9dを介して、ピニオンギア19と一体的に回転する。
【0050】
図4に示すように、第1防水部材25は、前壁9b、例えば、ロータカラー9b3に接触する。第1防水部材25は、カバー部3dの径方向内側に配置される。詳細には、第1防水部材25は、カバー部3dの第1筒部3d1より径方向内側に配置される。第1防水部材25は、一方向クラッチ26を介して、カバー部3dの底部3d2、および、リール本体3の本体部3aの前部によって、挟持される。第1防水部材25は、合成樹脂によって形成されることが好ましい。
【0051】
一方向クラッチ26は、ロータ9の逆転を許可、または、ロータ9の逆転を禁止するために用いられる。一方向クラッチ26は、カバー部3dの第1筒部3d1、および、ピニオンギア19の径方向間に、配置される。一方向クラッチ26は、カバー部3dの底部3d2、および、本体部3aの前部の軸方向間に、配置される。一方向クラッチ26は、ねじ部材のような固定部材(図示しない)によって、本体部3aの前部に固定される。
【0052】
図5、および、図6に示すように、第1防水部材25は、第1部材本体25aと、被保持部25bと、第1凸部25cと、第2凸部25dと、潤滑剤保持部25eと、を有する。第1部材本体25aは、環状に形成される。被保持部25bは、第1部材本体25aの外周部を形成する。被保持部25bは、一方向クラッチ26、および、カバー部3dの底部3d2によって挟持される。詳細には、被保持部25bは、一方向クラッチ26のシールド部材26a、および、カバー部3dの底部3d2によって挟持される。
【0053】
第1凸部25cは、環状に形成される。第1凸部25cは、第1部材本体25aに設けられる。詳細には、第1凸部25cは、被保持部25bより径方向内側に設けられる。より詳細には、第1凸部25cは、被保持部25bより径方向内側において、第1部材本体25aから突出する。第1部材本体25aの先端部、および、前壁9bのロータカラー9b3の間には、隙間が形成されている。
【0054】
第2凸部25dは、環状に形成される。第2凸部25dは、第1部材本体25aに設けられる。詳細には、第2凸部25dは、第1凸部25cより径方向内側に設けられる。より詳細には、第2凸部25dは、第1凸部25cより径方向内側において、第1部材本体25aから突出する。第2凸部25dは、基端部から先端部に向けて細くなるリップ形状に形成される。第2凸部25dの先端部は、前壁9bのロータカラー9b3に接触する。
【0055】
本実施形態では、第2凸部25dの先端部だけが前壁9b(ロータカラー9b3)に接触する場合の例が示されているが、第2凸部25dの先端部、および、第1凸部25cの先端部の両方が前壁9b(ロータカラー9b3)に接触してもよい。また、第1凸部25cの先端部だけが、前壁9b(ロータカラー9b3)に接触してもよい。
【0056】
図5、および、図6に示すように、潤滑剤保持部25eは、潤滑剤Gを保持するように構成される。潤滑剤保持部25eは、第1凸部25cと第2凸部25dとの間に設けられる。詳細には、図6に示すように、潤滑剤保持部25eは、第1凸部25cの内周面25c1、第2凸部25dの外周面25d1、および、第1部材本体25aの外面25a1によって、形成される。
【0057】
この潤滑剤保持部25eの空間によって潤滑剤Gが保持される。潤滑剤Gはグリースを含む。潤滑剤Gは、潤滑剤保持部25eに保持された状態で、前壁9bのロータカラー9b3に接触することが好ましい。
【0058】
図4に示すように、位置決め部材29は、スプール7をスプール軸15に対して軸方向に位置決めするために用いられる。位置決め部材29は、スプール軸15の外周面に配置される。位置決め部材29は、環状に形成される。
【0059】
本実施形態では、スプール軸15の前部の外周面は、非円形に形成される。詳細には、スプール軸15の前部の外周面は、一対の平行面、および、一対の円弧を含むオーバル形状に、形成される。スプール軸15の前部、例えば、オーバル形状の部分は、スプール軸15の前端から、スプール7、および、ロータ9(リテーナ9c)の間の位置までの部分である。
【0060】
位置決め部材29は、環状に形成される。位置決め部材29の内周面は、非円形に係合される。詳細には、位置決め部材29の内周面は、一対の平行面、および、一対の円弧を含むオーバル形状に、形成される。位置決め部材29の内周面には、内周面に沿って延びる凹部29aが、形成される。
【0061】
位置決め部材29の内周面は、非円形係合によってスプール軸15の外周面に係合する。位置決め部材29は、スプール軸15の前部(オーバル形状の部分)の後端15aに配置される。スプール軸15の前部の後端15aは、スプール7、および、ロータ9(リテーナ9c)の間の位置において、環状の段差を形成する。このように、位置決め部材29をスプール軸15に配置することによって、位置決め部材29は、スプール軸15に対して回転不能、且つ、スプール軸15に対して後方に移動不能に係合する。
【0062】
図4に示すように、ドラグ機構8は、複数の摩擦部材8a,8b,8cを含む。複数の摩擦部材8a,8b,8cの内周面は、位置決め部材29と同様に、非円形係合によってスプール軸15の外周面に係合する。複数の摩擦部材8a,8b,8cは、スプール7、および、位置決め部材29の軸方向間に配置される。
【0063】
図4に示すように、第2防水部材31は、Oリングを含む。第2防水部材31は、スプール軸15の外周面、および、摩擦部材8cの後面に、接触する。第2防水部材31は、スプール軸15の外周面、および、位置決め部材29の径方向間に、配置される。詳細には、第2防水部材31は、スプール軸15の外周面、および、位置決め部材29の凹部29aの径方向間に、配置される。この状態において、第2防水部材31は、スプール軸15の外周面に接触する。
【0064】
第2防水部材31は、摩擦部材8cの後面、および、位置決め部材29の前面の軸方向間に、配置される。詳細には、第2防水部材31は、摩擦部材8cの後面、および、位置決め部材29の凹部29aの軸方向間に、配置される。この状態において、第2防水部材31は、摩擦部材8cの後面に接触する。
【0065】
上述した魚釣用スピニングリール1は、以下のような特徴を有する。魚釣用スピニングリール1では、第1防水部材25をピニオンギア19に嵌入する必要がないので、ピニオンギア19、および、ピニオンギア19に連動して動作する回転部材を、低トルクで回転させることができる。以下では、ピニオンギア19、および、ピニオンギア19に連動して動作する回転部材は、回転構造と記される。
【0066】
また、本魚釣用スピニングリール1では、第1防水部材25が、第1防水部材25の前方に配置される前壁9bに、接触する。すなわち、第1防水部材25の中心をピニオンギア19の回転中心X1に正確に一致させる必要がないので、防水性能の安定化を図ることができる。さらに、本魚釣用スピニングリール1では、第1防水部材25の潤滑剤保持部25eによって、回転構造の低トルク化、および、防水性能の安定化を向上することができる。
【0067】
魚釣用スピニングリール1では、潤滑剤保持部25eを第1凸部25cと第2凸部25dとの間に設けることによって、潤滑剤Gを好適に保持することができる。
【0068】
魚釣用スピニングリール1では、第1凸部25cおよび第2凸部25dの少なくともいずれか一方が前壁9bに向かって細くなるリップ形状であるので、ロータ9の前壁9bに対する第1防水部材25の接触抵抗を低下させることができる。すなわち、回転構造を低トルクで回転させることができる。
【0069】
魚釣用スピニングリール1では、第1防水部材25が前壁9bのロータカラー9b3に接触するので、ロータ9の前壁9bに対する第1防水部材25の接触抵抗を低下させることができる。すなわち、回転構造を低トルクで回転させることができる。
【0070】
魚釣用スピニングリール1では、第2防水部材31が、位置決め部材29の凹部29aに配置され、スプール軸15の外周面、および、摩擦部材8cの後面に、接触するので、位置決め部材29の後面からスプール7の内部への浸水を、防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、魚釣用スピニングリールに利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 魚釣用スピニングリール
3 リール本体
7 スプール
25 第1防水部材
31 第2防水部材
3a 本体部
3b 第1筒状部
9 ロータ
9a ロータ本体
9b 前壁
9b3 カラー部材
25e 潤滑剤保持部
25c 第1凸部
25d 第2凸部
G 潤滑剤
X1 スプール軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6