IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤーマン株式会社の特許一覧

特開2025-23877肌処理装置、肌処理装置を作動させる作動方法、肌処理方法、プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023877
(43)【公開日】2025-02-18
(54)【発明の名称】肌処理装置、肌処理装置を作動させる作動方法、肌処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/30 20060101AFI20250210BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20250210BHJP
   A61N 1/20 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
A61N1/30
A61N1/36
A61N1/20
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068132
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2023565604の分割
【原出願日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2022088774
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023016572
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 謙太朗
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053HH02
4C053JJ04
4C053JJ21
4C053JJ32
4C053JJ40
(57)【要約】
【課題】 対象物の肌への浸透が促進される態様で肌処理装置を制御可能とする。
【解決手段】 人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で人の肌を処理する肌処理装置を作動させる作動方法、人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で人の肌を処理する肌処理装置、又は、人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で人の肌を処理するプログラムが開示される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、前記対象物が付与された肌に、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で肌処理装置を作動させる作動方法。
【請求項2】
前記対象物に、前記第1態様に加えて、プラスの直流刺激、及び900kHz以上の交流刺激のうちの少なくともいずれか一方に適用させる第2態様で前記肌処理装置を作動させる請求項1に記載の作動方法。
【請求項3】
前記対象物は、第1の対象物として、低分子、水溶性、プラスに帯電しやすい性質の有効成分を含む請求項1に記載の作動方法。
【請求項4】
前記対象物は、第2の対象物として、低分子、水溶性、マイナスに帯電しやすい性質の有効成分を含む請求項1に記載の作動方法。
【請求項5】
前記対象物は、第3の対象物として、低分子、水溶性、水溶液中でほとんど帯電しない性質又は両性電解質の有効成分を含む請求項1に記載の作動方法。
【請求項6】
前記対象物は、第4の対象物として、脂質及び油溶性の有効成分を含む請求項1に記載の作動方法。
【請求項7】
前記対象物は、第5の対象物として、高分子の有効成分を含む請求項1に記載の作動方法。
【請求項8】
前記対象物は、第1の対象物として、トラネキサム酸セチル塩酸塩、トラネキサム酸誘導体、ナイアシンアミド、塩酸ピリドキシン及びその誘導体、ベンザルコニウムクロリド、パルミトイルトリペプチド-5、アセチルヘキサペプチド-8、ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド、アラントイン、アルジオキサ、カルニチンHCl、塩基性アミノ酸であるリジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、オルニチン等、エルゴチオネインのうちの少なくともいずれか1つの成分を含む請求項1に記載の作動方法。
【請求項9】
前記対象物は、第2の対象物として、アスコルビン酸、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、アデノシン一リン酸二ナトリウムの他、L-アスコルビン酸 2-グルコシド、リン酸L-アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、L-アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naなどアスコルビン酸及びその誘導体、dl-αートコフェリルリン酸ナトリウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、サリチル酸とそのナトリウム塩、乳酸ナトリウム、L-ないしDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、L-グルタミン酸ナトリウムやL-アスパラギン酸ナトリウム、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウムやグリチルリチン酸アンモニウムなどグリチルリチン酸及びその塩、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、のうちの、少なくともいずれか1つの成分を含む請求項1に記載の作動方法。
【請求項10】
人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、前記対象物が付与された肌に、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で人の肌を処理する肌処理装置。
【請求項11】
人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、前記対象物が付与された肌に、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で人の肌を処理する肌処理方法。
【請求項12】
人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、前記対象物が付与された肌に、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で肌処理装置に人の肌を処理させるプログラム。
【請求項13】
人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、前記対象物の特性に対応づけて、前記対象物が付与された肌に、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で肌処理装置に人の肌を処理させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肌処理装置、肌処理装置を作動させる作動方法、肌処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
使用する化粧品配合成分に関する情報の入手を容易とし、使用者の要求に合った化粧品の選択、化粧品レシピの作成を可能とする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2001-357140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、化粧品等に含まれる各種成分を対象物として、当該対象物の肌への浸透が促進される態様で肌処理装置を制御できない。
【0005】
そこで、本開示は、対象物の肌への浸透が促進される態様で肌処理装置を制御可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、人の皮膚に付与可能な対象物が浸透するように、前記対象物が付与された肌に、10kHz以上かつ500kHz未満の交流刺激を適用させる第1態様で肌処理装置を作動させる作動方法が開示される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、対象物の肌への浸透が促進される態様で肌処理装置を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例に係る情報処理システムの構成概要を示す図である。
図2】情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】一例による美容デバイスの外観を示す図である。
図4】一例による美容デバイスに備わる制御系の概略的な構成図である。
図5】本実施例に係る情報処理装置の記憶部に記憶されるデータであって、制御情報に関連するデータの一例を説明する説明図である。
図6図5の繰り返し情報の説明図である。
図7】一の出力モードの出力波形の例を示す図である。
図7A図7に示す出力モードM1の出力波形に代えて利用されてもよい他の出力波形を示す図である。
図7B図7に示す出力モードM1の出力波形に代えて利用されてもよい他の出力波形を示す図である。
図7C図7に示す出力モードM1の出力波形に代えて利用されてもよい他の出力波形を示す図である。
図7D図7CのQ6部の拡大図である。
図8】他の出力モードの出力波形の例を示す図である。
図9】更なる他の出力モードの出力波形の例を示す図である。
図10】更なる他の出力モードの出力波形の例を示す図である。
図11】更なる他の出力モードの出力波形の例を示す図である。
図12】具体的な対象物ごとの制御情報の一例を示す表図である。
図13】情報処理システムの動作例を概略的に示すタイミングチャートである。
図14図5に示したデータ(制御情報に関連するデータ)に代えて利用できる他の実施例によるデータを示す図である。
図15図14に示した例に関連した制御情報の具体的な例の説明図である。
図16】特定の対象物“リン酸アスコルビルマグネシウム”に関して特定の出力波形を適用した場合の試験結果を示す図である。
図16A】特定の対象物“リン酸アスコルビルマグネシウム”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17】特定の対象物“ナイアシンアミド(ビタミンB3)”に関して特定の出力波形を適用した場合の試験結果を示す図である。
図17A】特定の対象物“トラネキサム酸”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17B】特定の対象物“ナイアシンアミド”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17C】特定の対象物“コウジ酸”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17D】特定の対象物“アルブチン”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17E】特定の対象物“フェニルエチルレゾルシノール”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17F】特定の対象物“加水分解コラーゲン”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17G】特定の対象物“コラーゲンペプチド”に関する他の試験結果を示す表図である。
図17H】特定の対象物“酢酸トコフェロール”に関する他の試験結果を示す表図である。
図18】複数の制御情報が同時に利用される際の制御態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本実施例について説明する。以下に示す実施例中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
本実施例に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施例において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現され得るソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含み得る。また、本実施例においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
また、本明細書において、用語「対応付け」とは、直接的な対応付けのみならず、間接的な対応付けをも含む。例えば、要素Aに要素Bが対応付けられている状態は、要素Aに要素Bが対応付けられている状態のみならず、要素Aに要素Cが対応付けられかつ要素Cに要素Bが対応付けられている状態をも含む概念である。
【0014】
図1は、本実施例に係る情報処理システム1の構成概要を示す図である。
【0015】
情報処理システム1は、ユーザ端末2と、情報処理装置3と、美容デバイス4とを備え、これらが電気通信回線を通じて通信可能に構成される。換言すると、情報処理装置3は、ユーザ端末2及び美容デバイス4とネットワークを介して通信可能に構成される。ここで、情報処理システム1に例示されるシステムとは、1つ又はそれ以上の装置又は構成要素からなるものである。
【0016】
ユーザ端末2は、通信部と、記憶部と、制御部と、表示部と、入力部と、撮像部とを有し、これらの構成要素がユーザ端末2の内部において通信バスを介して電気的に接続されている。通信部、記憶部及び制御部の説明は、情報処理装置3における通信部31、記憶部32及び制御部33と略同様のため、省略する。
【0017】
表示部は、例えば、ユーザ端末2の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。このような表示部は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、ユーザ端末2の種類に応じて使い分けて実施されることが好ましい。ここでは、表示部は、ユーザ端末2の筐体に含まれるものとして説明する。
【0018】
入力部は、ユーザ端末2の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、入力部は、表示部と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTYキーボード等を採用してもよい。すなわち、入力部が、ユーザによってなされた操作入力を受け付ける。当該入力が、命令信号として、通信バスを介して制御部に転送され、制御部が、必要に応じて、所定の制御や演算を実行し得る。
【0019】
撮像部は、外界の情報を撮像可能に構成される、いわゆるビジョンセンサ(カメラ)である。撮像部は、撮影対象を撮影することで画像データを生成するように構成される。撮像部は、後述の情報処理装置3における通信部31とネットワークを介して接続され、撮像した画像データを情報処理装置3に転送可能に構成される。
【0020】
図2は、情報処理装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置3は、例えばサーバコンピュータの形態であってよい。情報処理装置3は、複数のサーバコンピュータにより実現されてもよい。
【0021】
情報処理装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33とを備え、これらの構成要素が、情報処理装置3の内部において、通信バス30を介して電気的に接続されている。
【0022】
通信部31は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、通信部31は、これら複数の通信手段の集合として実施されることがより好ましい。すなわち、情報処理装置3は、通信部31を介して、ユーザ端末2及び美容デバイス4とネットワークを介して、種々の情報を通信する。
【0023】
記憶部32は、任意の記憶媒体により形成されてよく、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。記憶部32は、例えば、制御部33によって実行される情報処理装置3に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施され得る。また、記憶部32は、これらの組み合わせであってもよい。特に、記憶部32は、制御部33によって実行される情報処理装置3に係る種々のプログラム等を記憶している。なお、記憶部32は、情報処理装置3に内蔵されている必要はなく、情報処理装置3の外部に設けられてもよい。この場合、記憶部32は、情報処理装置3によりネットワークを介してアクセス可能な記憶装置により実現されてもよい。
【0024】
制御部33は、情報処理装置3に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部33は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部33は、記憶部32に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置3に係る種々の機能を実現する。すなわち、情報処理装置3に係る種々の機能は、記憶部32に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部33によって具体的に実現されることで、実現される。なお、制御部33は、単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部33を有するように実施されてもよい。また、制御部33は、複数の制御部の組み合わせであってもよい。
【0025】
図3は、一例による美容デバイス4の外観を示す図である。美容デバイス4は、動作部4aと、グリップ部4bとを備える。
【0026】
美容デバイス4は、動作部4aとその支持体であるグリップ部4bとで構成される。動作部4aは、ユーザの皮膚に接触して動作するように構成され、グリップ部4bの長手方向の一方の端部に設けられている。動作部4aを接触させる皮膚とは、例えば、上半身の皮膚を含むものである。ここで上半身は、顔周辺と、首周辺と、胸元周辺とのうち少なくとも一つを含む。すなわち、上半身のうち、デコルテよりも上部の皮膚をいう。例えば、顔、顎、頸部、鎖骨部分、胸元、頭部等をいう。なお、必ずしも前述した部位に限らず、後頚部、腹部、背部、腰、腕を含んでもよく、臀部、脚等の下半身を含んでもよい。
【0027】
動作部4aには、複数の電極が設けられてもよい。この場合、複数の電極のうちの、任意又は所定の1つ以上の対の電極を介して各種出力波形を肌に付与することができる。図3に示す例では、一例として、複数の電極40は、円弧上に配置されている。なお、電極40の配置や数は、任意であり、少なくとも2つ以上の電極が配置されている構成であればよい。また、イオン導入等の特定処理においてはグリップ部4bに配置されうる手元電極(図示せず)が利用されてもよい。
【0028】
グリップ部4bは、ユーザによって把握される棒状の部分である。グリップ部4bには、美容デバイス4の動作開始若しくは終了の際、又は動作モードを変更する際に、ユーザによって操作される操作ボタン4cが備え付けられてもよい。
【0029】
(制御系)
図4は、一例による美容デバイス4に備わる制御系100の概略的な構成図である。
【0030】
図4に示す例では、制御系100は、制御装置110と、電気回路部200とを含み、電気回路部200は、駆動回路部120と、出力波形発生部130と、切替回路部140とを含む。
【0031】
制御装置110は、コンピュータを含み、例えばマイクロコンピュータにより形成されてよい。なお、制御装置110は、電源150からの電力に基づいて動作してよい。
【0032】
制御装置110は、制御情報に基づいて、複数の電極40から制御情報に対応する出力波形が生成されるように、駆動回路部120、出力波形発生部130、及び切替回路部140を制御する。
【0033】
制御情報は、複数の電極40を介した出力の出力波形を特徴付ける任意の情報である。また、制御情報は、制御装置110が複数の電極40を介して所期の出力波形を出力するために用いる任意の情報であり、任意の段階で用いられる情報を含んでもよい。例えば、制御情報は、後述する制御信号CT1、CT2や、駆動回路部120から出力波形発生部130への信号自体であってもよいし、これらの信号を生成するための各種情報であってもよい。制御情報の一例は、後述する。
【0034】
図4に示す例では、駆動回路部120は、複数の電極40を介して各種出力波形を発生する。図4には、制御信号CT1、CT2の一部の波形が模式的に示されている。この場合、制御信号CT1、CT2は、それぞれ別々の制御ラインL1、L2を介して駆動回路部120に付与されてよい。制御信号CT1、CT2の周波数(デューティー比)は、後述する制御情報(第2パラメータの値)に応じて決まってよい。
【0035】
駆動回路部120は、後述する複数のスイッチング素子Trを駆動するドライバを含む。駆動回路部120は、それぞれ、制御装置110からの制御信号CT1、CT2に応じて出力波形発生部130のスイッチング素子Trをオン/オフさせるための駆動信号を生成し、生成した駆動信号を、対応するスイッチング素子Trに与える。
【0036】
出力波形発生部130は、それぞれ、直流電源である電源150に基づいて、出力波形を生成する。出力波形発生部130は、対のスイッチング素子Trと、トランス135とを含む。
【0037】
対のスイッチング素子Trは、例えばトランジスタ等のスイッチング素子であり、一方は、トランス135の端子Taに接続され、他方は、トランス135の端子Tbに接続される。トランス135は、センタータップに係る端子Tcに電源150が接続される。トランス135は、所定周波数に適合された周波数仕様である。例えば、トランス135の誘起電圧Eを、E=√2・π・f・n・φmとした場合、周波数fは、所定周波数と略等しくなるように設定されてもよい。なお、この場合、nは、巻数であり、φmは、磁束である。なお、トランス135は、周辺回路の設定乗数やフェライトコア(トランス135の内部部品)の材質や密着度を変えるなどの設定(調整)に基づいて、所定周波数に適合されてよい。所定周波数は、好ましくは高周波に対応する周波数である。なお、本明細書において、特に言及しない限り、高周波とは、10kHzよりも大きい周波数帯を指し、低周波とは、10kHz以下の周波数帯を指す。
【0038】
切替回路部140は、出力波形発生部130の出力端子(すなわちトランス135の出力端子)Td、Teの接続先を、複数の電極40内で切り替えることで、出力波形を生成する電極の対を複数の電極40内で制御する。この場合、切替回路部140は、後述する制御情報に基づいて、出力波形を生成する電極の対が変化するように制御してよい。
【0039】
なお、図4に示した制御系100は、あくまで一例であり、利用する制御情報の種類(2種類以上の場合も含む)に応じて、適宜、変更されてよい。例えば、切替回路部140において、出力波形発生部130の出力端子(すなわちトランス135の出力端子)Td、Teの接続先が、他の電極(図示せず)を含んでよく、この場合、出力波形を発生する対の電極は、時分割により切り替えられてもよい。あるいは、2系統以上の駆動回路部120や出力波形発生部130が設けられてもよい。また、対の電極の切り替えが不要な構成の場合、切替回路部140は省略されてもよい。また、PWM信号は、発振器を利用して駆動回路部120に直接的(制御装置110を介さずに)印加されてもよい。
【0040】
次に、図5以降を参照して、情報処理システム1の更なる詳細を説明する。
【0041】
図5は、本実施例に係る情報処理装置3の記憶部32に記憶されるデータであって、制御情報に関連するデータの一例を説明する説明図である。図6は、図5の繰り返し情報の説明図である。図5(後出の図12等も同様)において、「***」は、なんらかの情報が格納されている状態を示し、「・・・」は、同様の情報の格納の繰り返し状態を示す。
【0042】
図5に示す例では、記憶部32には、制御情報に関連するデータとして、対象物と制御情報とを対応付ける対応付けデータ500と、制御情報データ510とを含む。なお、対応付けデータ500及び制御情報データ510の分け方は、説明の都合上であり、実際には、同様のデータが、実質的に同様の他の態様に管理されてもよい。例えば、対応付けデータ500及び制御情報データ510は、統合されてもよい。
【0043】
対応付けデータ500では、対象物IDごとに、対象物名、制御情報IDが対応付けられる。対象物IDは、対象物ごとに付与される識別子である。対象物は、人の皮膚に付与可能な物質であり、典型的には、美容効果などの各種効果を期待できる物質である。対象物は、例えば、化粧品等に含まれる各種成分であってよい。あるいは、対象物は、皮膚外用剤に含まれる各種成分であってもよい。なお、皮膚外用剤は、医薬品、及び医薬部外品など物質担体の使用目的は任意である。また、対象物は、医薬部外品において肝臓で代謝され効果効能が発揮しきれなかった医薬品の経皮吸収の促進にも効果がある物質を含んでよい。また、さらに経皮吸収させる外用剤の使用目的は任意であり、鎮痛剤、消炎剤、美白剤、湿潤剤、抗しわ剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗ウイルス薬をはじめとして外用剤の経皮吸収目的を問わない。
【0044】
対象物名は、対象物の物質名である。なお、物質名は、正式名称であってもよいし、略称等であってもよい。また、対象物名の情報は、制御に直接的に使用されないため、省略されてもよい。
【0045】
制御情報IDは、制御情報ごとに付与される識別子である。なお、制御情報の一単位は、制御情報IDごとであってよい。
【0046】
制御情報データ510は、上位データ511と、下位データ512とを含む。なお、上位データ511及び下位データ512の分け方は、説明の都合上であり、実際には、同様のデータが、実質的に同様の他の態様に管理されてもよい。例えば、上位データ511及び下位データ512は、統合されてもよい。
【0047】
上位データ511では、制御情報IDごとに、モード構成情報、実行時間比、基準実行時間、及び繰り返し情報、が対応付けられている。
【0048】
モード構成情報は、複数の出力モードを、どのような順番で実行するかを示す情報である。なお、本実施例では、一の制御情報IDに対応付けられるモード構成情報は、2つ以上の出力モードを含むが、変形例では、1つだけの出力モードを含むモード構成情報が対応付けられる制御情報IDが存在してもよい。
【0049】
例えば、図5に示す例では、制御情報ID“001”に対応付けられているモード構成情報は、後述する出力モードM3、出力モードM4、及び出力モードM2を、この順で実行することを示す。
【0050】
実行時間比は、モード構成情報で示される各出力モードの実行時間の、互いに対する比を表す。ここでは、最初に実行される出力モードの実行時間を基準値“1”とした場合の、他の出力モードの実行時間の比が規定される。なお、他の実施例では、各出力モードの実行時間の比に代えて、実行時間自体の情報が利用されてもよい。
【0051】
例えば、図5に示す例では、制御情報ID“001”に対応付けられている実行時間比は、後述する出力モードM3の実行時間を基準値“1”としたとき、出力モードM4の実行時間が同じ“1”であり、出力モードM2の実行時間が“1.2”であることを、示す。
【0052】
基準実行時間は、基準値に係る実行時間を示す。例えば、図5に示す例では、実行時間は、20ミリ秒であり、この場合、出力モードM3の実行時間は、20ミリ秒であり、出力モードM4の実行時間が同じ20ミリ秒であり、出力モードM2の実行時間が24ミリ秒である。
【0053】
繰り返し情報は、モード構成情報で示される各出力モードが繰り返し(周期的に)実行されるか否かを示す。ここでは、一例として、“1”は、繰り返し実行されることを表し、“0”は、繰り返し実行されないことを表す。なお、繰り返し実行される場合は、繰り返し回数や繰り返し態様(例えばインターバルの有無やその長さ等)が規定されてもよい。
【0054】
例えば、図5に示す例では、制御情報ID“001”に対応付けられている繰り返し情報は、“1”であり、従って、図6に示すように、出力モードM3、出力モードM4、及び出力モードM2が、この順に、複数回、繰り返し実行される。
【0055】
下位データ512では、出力モードごとに、対応する出力モードに係る出力波形を出力するための制御パラメータが対応付けられる。制御パラメータは、任意であるが、本実施例では、一例として、出力波形が交流波形か直流波形かを表す第1パラメータと、周波数に関する第2パラメータと、振幅(強度)に関する第3パラメータとを含む。ここでは、一例として、第1パラメータの値は、“1”が交流波形を表し、“0”が直流波形かつ極性が正であること、を表し、“2”が直流波形かつ極性が負であること、を表す。なお、出力波形が直流波形であるとき、第2パラメータの値は、パルス波の発生の周波数を表してよい。また、出力の強度がユーザにより調整可能な構成の場合、第3パラメータの値は、デフォルト値として機能してよい。なお、第3パラメータは、出力レベルを示す電圧やデューティに関連したパラメータであってよい。
【0056】
例えば、図5に示す例では、出力モードM1は、第1パラメータの値が“1”であり、出力波形が交流波形であることを表す。また、出力モードM1は、第2パラメータの値が“α1(実際には特定の数値)”であり、交流波形の周波数がα1[Hz]であることを表す。また、出力モードM1は、第3パラメータの値が“β1(実際には特定の数値)”であり、交流波形の振幅がβ1[V]であることを表す。
【0057】
このようにして本実施例によれば、対象物IDごとに、制御情報が対応付けられる。従って、対象物IDごとの対象物の特性に好適な出力波形を生成できる制御情報を対応付けることができる。
【0058】
特に本実施例によれば、各対象物に対応付けられる制御情報は、2つ以上の出力モードによる出力波形の出力(美容デバイス4の対の電極40を介した出力)を規定する。すなわち、制御情報は、美容デバイス4に時系列で連続して実行される処理であって、特性が異なる出力波形による処理(2種類以上の所定処理)を表す。これにより、対象物のそれぞれに好適な処理をきめ細かに実現できる。
【0059】
次に、図7から図11を参照して、特性が異なる出力波形のいくつかの例とともに、制御情報について更に説明する。
【0060】
図7は、出力モードM1の出力波形の例を示す図である。図7では、横軸に時間を取り、縦軸に電圧値を取ったときの、出力モードM1の出力波形(時系列波形)が示されている。なお、図7において、ΔT1は、出力波形の一周期を表し、上述した第2パラメータの値(=α1)に応じて決まる。
【0061】
出力モードM1の出力波形は、交流波形であり、かつ、半周期(ΔT/2)の間に複数のピーク電圧値を有する。この場合、複数のピーク電圧値は、第1ピーク電圧値Vp1と、1つ以上の第2ピーク電圧値Vp2とを含む。第2ピーク電圧値Vp2は、半周期あたり、好ましくは5回から25回の範囲内で発生し、より好ましくは10回から20回の範囲内で発生する。
【0062】
第1ピーク電圧値Vp1は、半周期の最初に現れるピーク電圧値であり、第2ピーク電圧値Vp2は、第1ピーク電圧値Vp1よりも後に現れ、かつ、第1ピーク電圧値Vp1よりも大きさが小さい。第2ピーク電圧値Vp2は、図7に示すように、徐々に小さくなる態様で複数発生してもよい。第2ピーク電圧値Vp2は、好ましくは、第1ピーク電圧値Vp1の大きさの半分よりも小さい。
【0063】
なお、図7に示すような出力波形は、第2パラメータの値(=α1)を、上述した所定周波数よりも有意に低く設定することで形成できる。本実施例では、上述した所定周波数は、900kHz以上(例えば1MHz)であり、この場合、第2パラメータの値(=α1)は、好ましくは、10kHzから500kHzの間である。
【0064】
図7Aから図7Cは、図7に示す出力モードM1の出力波形に代えて利用されてもよい他の出力波形を示す図である。図7Dは、図7CのQ6部の拡大図である。図7A及び図7Cに示す例は、図7に示した出力波形に対して、第2ピーク電圧値Vp2が存在しない点が主に異なる。この場合、半周期分の出力波形の電圧値は、第1ピーク電圧値Vp1から略一定値(略一定の電圧値)を保つ態様で変化する。この場合、略一定値は、第2ピーク電圧値Vp2と同様のレベルであってもよい。あるいは、略一定値は、図7Cに示すように、第2ピーク電圧値Vp2よりもわずかに小さいレベルであってよい。この場合、第1ピーク電圧値Vp1に係るピーク波形で、エレクトロポレーションのような効果があり、その後の電気刺激(略一定値の区間)で、浸透を促す効果が期待できる。なお、略一定値とは、図7Dに示すような比較的小さい鋸状の波形で生じる誤差を許容する概念であり、例えば一定値に対する誤差が10%以内を許容する概念である。なお、図7Dにおいて、BVp1は、第1ピーク電圧値Vp1の大きさ(振幅)を表し、δは、略一定値の変動幅を表している。なお、図7Dは、図7Cの略一定値を説明する図であるが、図7Aに対しても同様である。
【0065】
図7Bに示す例は、図7に示した出力波形に対して、第1ピーク電圧値Vp1が半周期の最初に現れずに途中から現れる点が主に異なる。この場合、図7Bに示すように、第2ピーク電圧値Vp2が半周期の最初に現れてよい。なお、図7Bに示す例では、第1ピーク電圧値Vp1が半周期の中間付近で現れるが、中間付近よりも有意に後(例えば最後)に(又は有意に前に)現れてもよい。これは、図7A及び図7Cに示した出力波形についても同様である。すなわち、図7A及び図7Cに示した出力波形においても、第1ピーク電圧値Vp1は、必ずしも半周期の最初に現れる必要はなく、半周期の途中又は最後に現れてもよい。
【0066】
なお、図7から図7Cに示すような各種波形は、正負で実質的に対称な波形であってよいが、正側又は負側において僅かなオフセットを有してもよい。
【0067】
ここで、図7から図7Cに示すような各種波形において、第1ピーク電圧値Vp1の持続時間(ΔTVp1)は、好ましくは、半周期(=ΔT/2)に対して、又は、半周期(=ΔT/2)内の残りの時間(=ΔT/2-ΔTVp1)に対して、1/5以下である。すなわち、ΔTVp1≦1/5×(ΔT/2-ΔTVp1)である。例えば、図7に示す例では、第1ピーク電圧値Vp1の持続時間(ΔTVp1)は、好ましくは、第2ピーク電圧値Vp2の持続時間(=ΔTVp2=ΔT/2-ΔTVp1)に対して、1/5以下である。また、図7Bに示す例では、第1ピーク電圧値Vp1の持続時間(ΔTVp1)は、好ましくは、2つの第2ピーク電圧値Vp2の持続時間の合計(=2×ΔTVp2=ΔT/2-ΔTVp1)に対して、1/5以下である。なお、これらの場合、第1ピーク電圧値Vp1の持続時間(ΔTVp1)は、第1ピーク電圧値Vp1の大きさの80%以上が維持される期間として測定されてよい。
【0068】
図8は、出力モードM2の出力波形の例を示す図である。図8では、横軸に時間を取り、縦軸に電圧値を取ったときの、出力モードM2の出力波形(時系列波形)が示されている。なお、図8において、ΔT2は、出力波形の一周期を表し、上述した第2パラメータの値(=α2)に応じて決まる。
【0069】
出力モードM2では、一の持続時間内に、少なくとも2回以上周期的に変化する連続波形を発生する。本実施例では、出力モードM2の出力波形は、パルス状の直流波形である。このような出力波形は、極性が正であるので、正イオンを反発させることができる。従って、出力モードM2は、正に帯電している対象物(電荷がプラスの対象物)に好適である。なお、Repulsionの値が“2”である他の出力モードは、図9に示すような極性が反転した波形であってよい。このような出力モードは、負に帯電している対象物(電荷がマイナスの対象物)に好適である。
【0070】
出力モードM2の出力波形の周波数(第2パラメータの値α2)は、一の持続時間内に少なくとも2つ以上のパルス状の直流波形が発生するように定められる。
【0071】
出力モードM2の出力波形は、振幅が同じ複数のパルス状の直流波形からなってもよいが、他の出力モードの出力波形は、振幅(電圧値の大きさ)が他よりも有意に大きい1つ以上の特定のパルスを含んでよい。例えば、図10には、一の持続時間内に、特定のパルスPL2が1つだけ含まれる他の出力モードの出力波形の例が示されている。特定のパルスは、パルス刺激により皮膚に一過性の孔を発生させること(エレクトロポレーション)で、帯電を有する対象物(電荷がプラスやマイナスの対象物)の、肌への浸透効果を高める機能を有する。この場合、特定のパルスは、出力モードM2の出力波形のうちの、特定のパルス以外のパルス(以下、区別のため、「メソポレーション用パルス」と称する)に対して、振幅のみならず、周波数も異なってもよい。従って、メソポレーション用パルスを含む出力モードに係る制御情報は、特定のパルスに係る第2パラメータや第3パラメータの各値を含んでよい。例えば、メソポレーション用パルスに対しては、第2パラメータの値(=α2)が1.5kHzから10kHzの間で設定されてよく、第3パラメータの値は、ピーク電圧値が10V未満となるように設定されてよい。これに対して、特定のパルスについては、第2パラメータの値が2Hz~10Hzの間で設定されてよく、第3パラメータの値は、ピーク電圧値が10V以上となるように設定されてよい。なお、特定のパルスの極性は、メソポレーション用パルスの極性と同じであってよい。
【0072】
なお、直流刺激に係る出力波形は、上述したパルス状の直流波形に限られず、例えば、他の出力モードとして、比較的長い持続時間の一定値の直流波形を出力するモードが設定されてもよい。
【0073】
ところで、高電圧を印加してイオンで有効成分(対象物)を深層部へと押し込む作用(メソポレーション)を有するメソポレーション用パルスの機能を高めるためには、パルス刺激により皮膚に一過性の孔を発生させる機能を有する特定のパルスの印加直後にメソポレーション用パルスを印加することが有用となりうる。これは、一過性の孔がすぐにふさがってしまう傾向があるためである。
【0074】
従って、図10に示すような出力波形は、特定のパルスの印加直後にメソポレーション用パルスが発生するので、出力モードM2のメソポレーション用パルスだけでは肌の深層部に押し込まれ難い対象物に好適となる。また、後述するように図7(及び図7Aから図7C)に示した出力波形も、対象物に応じて同様又はそれ以上の効果があることがわかっている(図16及び図17を参照して後述)。
【0075】
図11は、出力モードM3の出力波形の例を示す図である。図11では、横軸に時間を取り、縦軸に電圧値を取ったときの、出力モードM3の出力波形(時系列波形)が示されている。なお、図11において、ΔT3は、出力波形の一周期を表し、上述した第2パラメータの値(=α3)に応じて決まる。
【0076】
ここで、図11に示すような出力波形は、出力モードM3に係る第2パラメータの値(=α3)を、上述した所定周波数と略一致させることで形成できる。例えば、所定周波数が900kHz付近である場合、第2パラメータの値(=α3)を900kHz付近に設定することで、正弦波に近い交流波形を実現でき、加温効果を高めることができる。従って、この場合、出力モードM3は、肌の加温により効果(対象物に係る効果)が高くなる対象物に好適となる。また、この場合、出力モードM1に係る第2パラメータの値(=α1)は、10kHzから500kHzの間で設定されてよい。
【0077】
このようにして、多様な出力モードの出力波形は、多様な組み合わせで連続的に肌に印加することができる。従って、対象物ごとに、多様な出力波形(出力モード)の、多様な組み合わせのうちの、最適な一の組み合わせを対応付けることができる。
【0078】
この場合、例えば試験や経験等を踏まえ、対象物ごとの最適な組み合わせを見出してもよい。この際、対象物の各種特性ないし性質等は、例えば、(1)溶媒への対象物の溶けやすさに関する性質、(2)帯電に係る特性、及び、(3)分子量又はその属性、のうちの少なくともいずれかに基づいて設定されてよい。
【0079】
例えば(1)については、対応する対象物の、特定溶媒(例えば水や油)への溶けやすさ(溶け難さも同義)に関する性質(例えば、水溶性であるか脂溶性であるかという性質や、皮膚外用剤を使用する温度と溶液のpH(Potential Hydrogen)において水溶性であるか、脂溶性(油溶性)であるか、あるいは、両親媒性であるかという性質)とを、含んでよい。また、(2)については、例えば荷電数として、2,1,0,-1、や、これに代えて又は加えて、帯電の正負や、荷電を有しない区分(解離(帯電)しないないしは両性電解質)に係る特性を含んでよい。また、水溶液中での解離態様とその酸又は塩基の強度に係る特性を含んでよい。また、(3)については、分子量自体であってもよいし、低分子か高分子かなどの区分(属性)を示す情報を含んでよい。
【0080】
例えば、一の対象物に対して、上述した第1パラメータの値のうちの、極性に係る値(すなわち“0”又は“2”)は、当該一の対象物の帯電に係る特性を考慮して設定されてもよい。この場合、正に帯電する対象物に対しては、負の極性の直流波形(すなわち第1パラメータの値“2”)が設定されてもよい。また、負に帯電する対象物に対しては、正の極性の直流波形(すなわち第1パラメータの値“0”)が設定されてもよい。また、当該一の対象物に対して、第2パラメータ及び第3パラメータの各値は、溶媒への対象物の溶けやすさに関する性質、及び、分子量又はその属性、のうちの少なくともいずれか一方に基づいて設定されてもよい。例えば、高分子の対象物に対しては、第2パラメータの値が30kHzから70kHzの間に設定されてもよい。この場合、浸透に有効な出力波形として、筋収縮の大きい出力波形を実現しやすくなる。また、低分子の対象物に対しては、第2パラメータの値が70kHzから200kHzの間に設定されてもよい。この場合、浸透に有効な出力波形として、筋収縮は小さいが温感(加温効果による温感)との併用効果がある出力波形を実現しやすくなる。
【0081】
より具体的には、例えば図12に示すような態様で制御情報が設定されてもよい。図12には、一例として、6つの成分(対象物)としてナイアシンアミド、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びレチノールに対応する制御情報が示されている。図12には、上側の表1200には、6つの対象物の各種特性と制御情報の一部(図5に示した上位データ511に対応するデータの一部)が示されている。例えば、ナイアシンアミドについては、モード構成情報“M10+M20+M30”が対応付けられている。モード構成情報“M10+M20+M30”とは、出力モードM10、出力モードM20、及び出力モードM30を、この順(又は他の順でも良い)で実行することを表し、他も同様である。図12の下側の表1202には、制御情報の一部(図5に示した下位データ512に対応するデータの一部)が示されている。なお、図12に示す第2パラメータの数値はあくまで一例であり、試験(例えば、図16から図17Hを参照して後述する試験結果)等に応じて適合されてよい。
【0082】
図12に示す例では、出力モードM20、M21、M30は、同じ交流波形であっても、周波数が異なることで、互いに異なる効果を期待できる処理となる。例えば、出力モードM21は、上述したように、比較的大きい筋収縮に起因した比較的高い浸透効果を期待でき、筋収縮は小さいが温感(加温効果による温感)との併用効果を期待できる。また、出力モードM30は、第2パラメータの値に示すように、出力波形の周波数が比較的高くなり、高い加温効果を期待できる。
【0083】
次に、図13を参照して、上述した情報処理システム1の動作例について説明する。
【0084】
図13は、情報処理システム1の動作例を概略的に示すタイミングチャートである。
【0085】
まず、ユーザは、自身の美容デバイス4の電源をオンし、ユーザ端末2との接続を確立する(ステップS1300)。なお、ユーザは、美容デバイス4の初期設定として、ユーザ端末2との間のペアリング等を実行済であってよい。
【0086】
ついで、ユーザ端末2は、ユーザの肌に付与された1つ以上の対象物を特定又は推定する(ステップS1302)。例えば、ユーザは、今回自身の肌に付与する化粧品を特定できる情報を、ユーザ端末2に入力する。この場合、ユーザ端末2は、ユーザ入力に基づいて、1つ以上の対象物を特定又は推定できる。なお、使用する化粧品が毎回同じである(前回と同じである)場合は、入力は省略されてもよいし、あるいは、前回と同じ旨の入力を行うこととしてもよい。また、美容デバイス4は、動作部4aに測定部(図示せず)を備えてもよく、この場合、ユーザ端末2は、美容デバイス4から取得可能な測定結果に基づいて、化粧品に含まれる対象物を特定できる。ユーザ端末2は、対象物を特定すると、特定結果を情報処理装置3に送信する(ステップS1304)。なお、変形例では、ユーザ端末2に代えて、美容デバイス4が特定結果を直接的に情報処理装置3に送信してもよい。
【0087】
情報処理装置3の制御部33は、ユーザ端末2から対象物の特定結果を取得すると(ステップS1306)、当該対象物に対応する制御情報を記憶部32から抽出する。例えば、制御部33は、対象物に対応する対象物IDに基づいて、当該対象物IDに対応付けられている制御情報IDを特定し、特定した制御情報IDに基づいて、対応する制御情報を抽出する(ステップS1308)。そして、制御部33は、抽出した制御情報をユーザ端末2に送信する(ステップS1310)。このようにして、制御部33は、要求元であるユーザ端末2から対象物の特定結果を取得すると(ステップS1306)、当該対象物に対応する制御情報を当該ユーザ端末2に送信する。
【0088】
ユーザ端末2は、情報処理装置3から制御情報を取得すると(ステップS1312)、美容デバイス4に送信する(ステップS1314)。
【0089】
美容デバイス4は、制御情報を取得すると、当該制御情報に基づいて動作する(ステップS1316)。例えば、上述した図4に示す例では、制御装置110は、当該制御情報に応じた制御信号CT1等を生成することで、複数の電極40を介して、当該制御情報に応じた出力波形をユーザの肌に印加する。なお、美容デバイス4は、当該制御情報に応じた出力波形を発生させる前に、適宜、前処理を実行してもよい。この場合、前処理についても制御情報で規定されてもよい。これは、前処理に限られず、後処理や中間的な処理(例えば繰り返しのインターバルの間に実行されてもよい処理)についても同様である。
【0090】
このようにして図13に示す例によれば、制御部33は、要求元であるユーザ端末2から対象物の特定結果を取得すると(ステップS1306)、当該対象物に対応する制御情報に基づいて、ユーザ端末2を介して美容デバイス4を制御する(ステップS1310からステップS1316)。なお、変形例では、制御部33は、要求元であるユーザ端末2から対象物の特定結果を取得すると(ステップS1306)、当該対象物に対応する制御情報に基づいて、ユーザ端末2を介さずに美容デバイス4を直接的に制御してもよい。
【0091】
次に、図14以降を参照して、他の実施例について説明する。
【0092】
図14は、図5に示したデータ(制御情報に関連するデータ)に代えて利用できる他の実施例によるデータを示す図である。
【0093】
図14に示す例では、対象物グループIDごとに、特性、対象物ID、対象物名、及び制御情報IDが対応付けられる。
【0094】
対象物グループIDは、複数の対象物を複数のグループに分けた際に、各グループに付与される識別子である。複数の対象物は、好ましくは、共通の特性を有する複数の対象物同士を含む態様でグループ化される。この場合、共通の特性は、上述した(1)溶媒への対象物の溶けやすさに関する性質、(2)帯電に係る特性、及び、(3)分子量又はその属性、のうちの少なくともいずれかに係る特性であってよい。
【0095】
対象物グループIDに対応付けられる特性は、対応する対象物グループIDに係るグループに属する各対象物が共通に有する特性であってよい。図14に示す例では、対象物グループIDに対応付けられる特性は、(1)溶媒への対象物の溶けやすさに関する性質が、“水溶性”であり、(2)帯電に係る特性が“正帯電”であり、(3)分子量又はその属性が“低分子”である。
【0096】
ところで、化粧品等の商品には、一の商品に複数の対象物が含まれている場合がある。この場合、一の商品に係る複数の対象物をユーザが肌に付与して美容デバイス4を利用する場合、美容デバイス4の制御に用いる制御情報は、当該複数の対象物のうちの、少なくとも1つの対象物に係る制御情報であってよい。例えば、複数の対象物の一部に制御情報が対応付けられている場合、当該一部に対応付けられている制御情報が利用されてもよい。また、複数の対象物のうちの、含有量が最も多い対象物(成分表の先頭側に列挙されている対象物)に対応付けられている制御情報が利用されてもよい。
【0097】
あるいは、一の商品に複数の対象物が含まれている場合や、異なる対象物を含む複数の商品が利用される場合、複数の制御情報が同時に利用されてもよい。すなわち、複数の制御情報に基づいて、美容デバイス4を介して複数の制御情報のそれぞれに係る複数の出力波形の出力がユーザの肌に印加されてもよい。
【0098】
図15は、図14に示した例に関連した制御情報の具体的な例の説明図である。図15に示す例では、図14に示した例と同様、制御情報は、対象物群ごとに対応付けられている。なお、図15では、制御情報は、各出力モードを示す名称で示されている。この場合、「MSMP」は、図7(又は図7Aから図7Cの出力波形に係る出力モード)に示した出力モードM1に対応し、「RF」は、図12に示した出力モードM30に対応し、「repulsion(+)」は、図12に示した出力モードM10に対応し、「一定電圧(+)」は、正側の一定電圧の直流波形に対応し、「repulsion(-)」は、図12に示した出力モードM11に対応し、「一定電圧(-)」は、負側の一定電圧の直流波形に対応する。また、「repulsion(+又は-)」は、上述した「repulsion(+)」及び「repulsion(-)」のいずれか一方又はこれらの組み合わせを含んでよい。同様に、「一定電圧(+又は-)」は、上述した「一定電圧(+)」及び「一定電圧(-)」のいずれか一方又はこれらの組み合わせを含んでよい。また、「RF強」は、図12に示した出力モードM30に対して、第3パラメータの値が大きい出力モードに対応してよい。また、「EMS(高周波)」は、図12に示した出力モードM20又はM21に対応してよい。
【0099】
ここで、図15に示す対象物群に関して、浸透に適する皮膚外用剤の有用成分のいくつかの例を列挙する。
【0100】
弱酸性域~中性域付近のpHにおいて
<水溶液中でプラスに帯電、またはプラスに帯電傾向、または両性電解質の化合物群>
プラスに帯電、またはプラスに帯電する傾向のある化合物としては、美白効果が知られている成分であるトラネキサム酸、トラネキサム酸セチル塩酸塩などトラネキサム酸誘導体やナイアシンアミドが挙げられるが、これらに限られない。また、にきびや肌荒れに有効とされる塩酸ピリドキシン及びその誘導体、殺菌及び消毒に使われるベンザルコニウムクロリド、更には、しわ改善に効果があるとされ等電点がアルカリ側にあるペプチド類、例としてパルミトイルトリペプチド-5、アセチルヘキサペプチド-8、ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドなどのペプチド及びその誘導体が挙げられる。さらに、アラントイン、アルジオキサ、カルニチンHCl、塩基性アミノ酸であるリジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、オルニチン等、更にはエルゴチオネイン、保湿剤として尿素等も一例として挙げられるが、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHで+に帯電ないしは分極する官能基を持つ物質(帯電量は微小でもカチオン性であればよい)であればよく、これら化合物群に限らない。
また、酸性から弱アルカリ性で+に帯電ないしは分極する官能基を持つ両性電解質としては、美白効果を示すとされるトラネキサム酸や、グリシン、プロリン、アラニン、セリン、アセチルヒドロキシプロリン、εーアミノカプロン酸、γ-アミノ酪酸のような中性アミノ酸類及びその誘導体、トリメチルグリシンなどが挙げられる。
<水溶液中でマイナスに帯電している、またはマイナスに帯電傾向の化合物群>
美白剤として有効性が認められている4-メトキシサリチル酸カリウム塩、アデノシン一リン酸二ナトリウムの他、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸2-グルコシド、リン酸L-アスコルビルナトリウム、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、L-アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naなどアスコルビン酸及びその誘導体、dl-αートコフェリルリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、パラフェノールスルホン酸亜鉛、サリチル酸とそのナトリウム塩など、更には乳酸ナトリウム、L-ないしDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、L-グルタミン酸ナトリウムやL-アスパラギン酸ナトリウムなど酸性アミノ酸が挙げられる。また、炎症を鎮める効果があるとされるグリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウムやグリチルリチン酸アンモニウムなどグリチルリチン酸及びその塩、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa等、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHで-に帯電ないしは分極している官能基を持つ物質(帯電量は微小でもアニオン性であればよい)であればよく、上記に限らない。
<水溶液中でほとんど帯電しない化合物>
美白効果があるとされるコウジ酸、アルブチン、ハイドロキノン、4- (1-フェニルエチル)-1,3-ベンゼンジオール、4-n-ブチルレゾルシノール、5,5’-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール、エラグ酸、3-O-エチルアスコルビン酸、3-グリセリルアスコルビン酸、ビスグリセリルアスコルビン酸、ヘキシル3-グリセリルアスコルビン酸、ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸、3-ラウリルグリセリルアスコルビン酸などアスコルビン酸誘導体、D-パントテニルアルコール、コレカルシフェロール、3-o-シメン-5-オール(イソプロピルメチルフェノール)、やキシロース、ソルビトール、マンニトールなどの糖類やブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリンなどのポリオール類、ヒノキチオールなどのテルペン類等が挙げられる。また、難溶性物質であるフラーレン、オリザノール、セラミドEOP、セラミドEOS、セラミドNG、カプロオイルスフィンゴシン、セラミドNP、N-ステアロイルフィトスフィンゴシン、N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、セラミドAG、セラミドAP、ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン、セラミド6II、フィトスフィンゴシンもリポソームに内包される、されないにかかわらず、有用成分として挙げられる。さらには有用性を発揮する植物、動物から得られるエキス類、幹細胞などの培養液、培養上清液も挙げられる。
【0101】
また、その他水溶性、ないしは水溶性溶媒との共存で溶解する美容成分として、さらには、水相でミセルとして溶解する美容成分として、フラボノイドとしてはイソフラボン、カンゾウ根エキス、カンゾウフラボノイド、甘草フラボノイドなどが挙げられるがこの限りではない。エキス類としてはカモミラET、クララ根エキス、センブリエキス、ニンジン及びその根のエキス、ダイズエキス及びダイズ種子エキス、チャ葉エキス、ガラクトミセス培養液、ライスパワーNo.11(米エキスNo.11)、アスタキサンチン液や紅藻類のエキス、プラセンタエキス及びプラセンタエキス(1)~(5)、水溶性及び加水分解プラセンタエキスなどが挙げられる。
<脂質及び油溶性物質>
スクワラン、リノール酸、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、水添レチノール、リノール酸レチノールなどレチノール及びその誘導体、ニコチン酸トコフェロール、dl-α-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、天然ビタミンE、酢酸DL-α-トコフェロールなどトコフェロールとその誘導体、グリチルレチン酸ステアリル、エストラジオール、エチニルエストラジオール、アスタキサンチン、コメ胚芽油、スフィンゴミエリンなどのリン脂質、合成、植物性を含むスクワラン、グアイアズレン及びグアイアズレンスルホン酸エステル、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビルなどアスコルビン酸の脂肪酸エステル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、油溶性プラセンタなどが挙げられる。
<比較的分子量の高い化合物及び高分子化合物>
ヒト遺伝子組換オリゴペプチド-1、パルミトイルヘキサペプチド-4を含むパルミトイルヘキサペプチド類、パルミトイルペンタペプチド類、加水分解コラーゲン及びその誘導体、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸Na、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムなどヒアルロン酸及びその誘導体、シロキクラゲ多糖体、アルカリゲネス産生多糖体、ポリクオタニウム類が挙げられる。
【0102】
次に、図16から図17Hを参照して、特定のいくつかの対象物に関する試験結果について説明する。
【0103】
図16は、特定の対象物“リン酸アスコルビルマグネシウム”に関して特定の出力波形を適用した場合の試験結果を示す図である。具体的には、図16は、各種出力波形による有効成分の浸透効果を比較する図である。図16には、縦軸に、角層内吸収量(図16では「角層中の浸透量 相対値」と表記)を取り、横軸に、各種試験条件C1からC5が対応付けられ、試験条件C1からC5のそれぞれにおける角層内吸収量が示されている。なお、縦軸の角層内吸収量は、試験条件C1を基準とした相対値で示されている(以下、図17等も同様)。試験条件C1は、美容デバイス4から出力波形を発生させない条件(以下、「出力不使用条件」とも称する)に対応する。また、試験条件C2からC5は、美容デバイス4を使用する条件であり、試験条件C2は、出力モードM3による出力波形(図11参照)だけが付与される条件に対応し、試験条件C3は、出力モードM2による出力波形(図8に示す正側の出力波形)だけが付与される条件に対応し、試験条件C4は、他の出力モードによる出力波形(図9に示す負側の出力波形)だけが付与される条件に対応する。また、試験条件C5は、図7に示すような出力モードM1の出力波形だけが付与される条件に対応する。
【0104】
本試験は、以下のとおりの手順で実行された。
1)まず、皮膚恒常性の確認として、前腕部を洗浄後、15分、馴化し、適用部位(5箇所)の水分蒸発量を計測した上で、数値の大きな変動や傷がないことを確認した。
2)次いで、以下のとおり、美顔器処理から定量計測を行った。
2-1:前腕部に試料を滴下する。
2-2:2-1の処理後、試料の上から1.5分間、毎秒1回転のスピードで円を描くような動作で使用する。なお、出力不使用条件では、電源をオフした状態の美容デバイス4(すなわち出力波形が一切生成されていない状態の美容デバイス4)を用いて同様の動作を実現する。
2-3:2-2の処理後、いずれもコットンで残存試料を拭き取り、50%のエタノール溶液を浸したコットンで皮膚表面を拭き取り、洗浄を行う。
2-4:2-3の処理後、適用部位の角層を粘着テープ(商品名「D-Squame(登録商標」で商業的に入手可能な角質チェッカー)にて剥離し、角層2-10層目のそれぞれに含有するVCPMg(リン酸L-アスコルビルマグネシウム)量を定量する。
【0105】
なお、本試験では、美容デバイス4の電気的な影響を考慮し、試験条件C1から実行された。
【0106】
図16に示すように、リン酸アスコルビルマグネシウムを角質内に浸透させるには、図7に示した出力モードM1の出力波形が、他のモードの出力波形よりも有利であることがわかった。
【0107】
このような試験から、リン酸アスコルビルマグネシウム又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で-に帯電している化合物群>に列挙された物質)が対象物である場合、出力モードM1を含むモード構成情報を有する制御情報が好適であることが分かる。このようにして、成分ごとに試験を行うことで、どの制御情報が有効かを判断でき、有効な制御情報に係る制御情報IDを対象物に対応付けることができる。
【0108】
図16Aは、特定の対象物“リン酸アスコルビルマグネシウム”に関する他の試験結果を示す表図である。
【0109】
図16Aでは、出力不使用条件である試験条件C1での試験結果を基準として、各種試験条件C24からC31での各試験結果が評価されている。試験結果は、角層内吸収量で評価されており、角層の1層目と、2層目から5層目の合計値と、6層目からから10層目の合計値と、2層目から10層目の合計値と、がそれぞれ測定されている。
【0110】
試験結果は、試験グループG161からG165に分けて比較されている。試験グループG161、G163からG165では、溶液のpH=7.5、濃度=1.0%、使用時間=90秒とした。試験グループG161、G163からG165は、N数が異なり、それぞれ、N数=4、N数=10、N数=3、及びN数=14である。試験グループG162では、溶液のpH=7.5、濃度=1.0%、使用時間=60秒とし、N数=10である。
【0111】
試験グループG161において、試験条件C24に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激、かつ、電流値が比較的高く設定されている。試験条件C25に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激、かつ、電流値が比較的低く(具体的には試験条件C24の半分)設定されている。試験条件C26に係る出力波形は、周波数50kHzの交流刺激であり、試験条件C27に係る出力波形は、周波数156kHzの交流刺激である。試験グループG161の試験結果からは、リン酸アスコルビルマグネシウム又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で-に帯電している化合物群>に列挙された物質)に対しては、特に周波数70kHzや周波数156kHzのような周波数帯で効果的であることが分かる。また、70kHz同士(C24,C25)の電流量で比較すると電流が高いC24が高いほうがより浸透量が多いことが分かる。また、周波数(C25,C26,C27)で比較すると50kHz(C26)の低い周波数の方がより浸透量が多いことが分かる。なお、周波数70kHzや周波数156kHzの交流刺激の波形は、図7に示した形態(出力モードM1に係る波形)であるが、図7Aから図7Cの形態の波形であっても同様に得られることが期待できる。
【0112】
試験グループG162において、試験条件C28に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激であり、試験条件C29に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激とマイナスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=10kHz)の組み合わせである。試験グループG162の試験結果からは、リン酸アスコルビルマグネシウム又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で-に帯電している化合物群>に列挙された物質)に対しては、これらの出力波形が効果的であることが分かる。
【0113】
試験グループG163における試験条件C30に係る出力波形は、マイナスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=1.5kHz)である。また、試験グループG164における試験条件C31に係る出力波形は、20Vの矩形型のパルス波(パルス幅=120usec)のエレクトロポレーションである。また、試験グループG165における試験条件C33に係る出力波形は、マイナスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=10kHz)である。これらから、マイナスの直流刺激においては、周波数が高い方が、効果的であることが分かる。
【0114】
このような試験から、リン酸アスコルビルマグネシウム又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で-に帯電している化合物群>に列挙された物質)が対象物である場合、図12を参照して上述した出力モードM20及び出力モードM21のような出力波形も、リン酸アスコルビルマグネシウム又はこれと実質的に同様の性質を有する物質を、効果的に肌に浸透させることができることが分かる。従って、例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム又はこれと実質的に同様の性質を有する物質に対しては、出力モードM20及び出力モードM21のうちの少なくともいずれかを含むモード構成情報を有する制御情報が対応付けられてもよい。このようにして、成分ごとに試験を行うことで、どの制御情報が有効かを判断でき、有効な制御情報に係る制御情報IDを対象物に対応付けることができる。
【0115】
また、リン酸アスコルビルマグネシウム又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、低分子、水溶性、マイナスに帯電しやすい性質の物質)に対応付けられる制御情報は、以下の特徴を有してよい。すなわち、第2パラメータの値(=α1)は、例えば、図7(又は図7Aから図7Cの出力波形に係る出力モード)に示した出力モードM1に関して、10kHzから500kHzの周波数が好ましい。そして、より好ましくは、50kHzから160kHzであり、最も好ましくは、70kHz付近である。また、他の出力波形と組み合わせる場合は、所定期間内に10kHzから500kHz(好ましくは10kHz~200kHz)を40%以上適用することが望ましい。この際、10kHzから500kHz(好ましくは10kHz~200kHz)は、好ましくは、1秒以上の連続印加される。これは、1秒未満の印加を断続的に繰返して行う場合でも効果が確認できるが、合計時間が同じでも1秒以上連続した印加の方が高い効果が得られたためである。
【0116】
図17は、特定の対象物“ナイアシンアミド(ビタミンB3)”に関して特定の出力波形を適用した場合の試験結果を示す図である。図17において、試験条件C1からC5は、図16を参照して上述したとおりである。試験条件C6は、エレクトロポレーションに対応する。図17では、試料が異なるだけであるが、ナイアシンアミドの場合、上述した試験手順の2-2における時間は、60秒とした。
【0117】
図17に示すように、ナイアシンアミドを角質内に浸透させるには、図7に示した出力モードM1の出力波形が、他のモードの出力波形よりも有利であることがわかった。これは、図7に示した出力モードM1の出力波形は、エレクトロポレーションや高周波(例えば、出力モードM3による出力波形(図11参照))そのものだけよりエレクトロポレーションと高周波の要素をもつためであると予想される。
【0118】
このような試験から、ナイアシンアミド又はこれらと実質的に同様の性質を有する物質が対象物である場合、出力モードM1を含むモード構成情報を有する制御情報が好適であることが分かる。このようにして、成分ごとに試験を行うことで、どの制御情報が有効かを判断でき、有効な制御情報に係る制御情報IDを対象物に対応付けることができる。
【0119】
図17Aは、特定の対象物“トラネキサム酸”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Aは、上述した図16Aと同じ態様の試験結果である。
【0120】
試験結果は、試験グループG171、G172、G173に分けて比較されている。試験グループG171及びG172では、溶液のpH=7.5、濃度=2.0%、使用時間=60秒とした。試験グループG171、G172は、N数が異なり、それぞれ、N数=10及びN数=3である。また、試験グループG173では、溶液のpH=7.6、濃度=2.0%、使用時間=180秒とし、N数=3である。
【0121】
試験グループG171において、試験条件C45に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激であり、試験条件C46に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激とプラスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=10kHz)の組み合わせである。試験グループG171の試験結果からは、トラネキサム酸又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で+に帯電している化合物群>に列挙された物質)に対しては、これらの出力波形が効果的であることが分かる。なお、周波数130kHzの交流刺激の波形は、図7に示した形態(出力モードM1に係る波形)であるが、図7Aから図7Cの形態の波形であっても同様に得られることが期待できる。
【0122】
試験グループG172において、試験条件C47に係る出力波形は、周波数1MHzの交流刺激であり、試験条件C48に係る出力波形は、プラスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=10kHz)であり、試験条件C49に係る出力波形は、マイナスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=10kHz)であり、試験条件C50に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激である。試験条件C51に係る出力波形は、20Vのエレクトロポレーションである。
【0123】
試験グループG173において、試験条件C55に係る出力波形は、周波数180kHzの交流刺激であり、試験条件C56に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激である。
【0124】
このような試験から上述した出力モードM20のような出力波形、及び、出力モードM20のような出力波形とプラスの直流刺激の出力波形の組み合わせが、トラネキサム酸又はこれと実質的に同様の性質を有する物質を、効果的に肌に浸透させることができることが分かる。従って、例えば、トラネキサム酸又はこれと実質的に同様の性質を有する物質に対しては、出力モードM20、及び、出力モードM20のような出力波形とプラスの直流刺激の出力波形の組み合わせ、のうちの少なくともいずれか一方を含むモード構成情報を有する制御情報が対応付けられてもよい。このようにして、成分ごとに試験を行うことで、どの制御情報が有効かを判断でき、有効な制御情報に係る制御情報IDを対象物に対応付けることができる。
【0125】
また、試験グループG173の結果から、図15において、トラネキサム酸又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば低分子、水溶性、プラスに帯電しやすい性質の物質)に対応付けられる制御情報は、以下の特徴を有してよい。すなわち、第2パラメータの値(=α1)は、例えば、図7(又は図7Aから図7Cの出力波形に係る出力モード)に示した出力モードM1に関して、10kHzから500kHzの周波数が好ましい。そして、より好ましくは、10kHzから200kHzであり、更により好ましくは、50kHzから180kHzであり、最も好ましくは、130kHz付近である。また、組み合わせる場合は、所定期間内に10kHzから500kHz(好ましくは10kHz~200kHz)を40%以上適用することが望ましい。この際、10kHzから500kHz(好ましくは10kHz~200kHz)は、好ましくは、1秒以上の連続印加される。これは、1秒未満の印加を断続的に繰返して行う場合と、1秒以上連続して印加した場合とでは、合計時間が同じでも1秒以上連続した印加の方が高い効果が得られたためである。
【0126】
図17Bは、特定の対象物“ナイアシンアミド”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Bは、上述した図16Aと同じ態様の試験結果である。
【0127】
試験結果は、試験グループG181からG185に分けて比較されている。試験グループG181からG185では、溶液のpH=7.6、濃度=2.0%、使用時間=60秒とした。試験グループG181からG185のうち、試験グループG184だけN数=6で異なり、他はすべてN数=4である。
【0128】
試験グループG181において、試験条件C64に係る出力波形は、周波数1MHzの交流刺激であり、試験条件C65に係る出力波形は、20Vのエレクトロポレーションである。試験グループG181の試験結果からは、ナイアシンアミド又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で+に帯電している化合物群>に列挙された物質)に対しては、周波数1MHzの交流刺激が効果的であることが分かる。
【0129】
また、試験グループG182における試験条件C66に係る出力波形は、マイナスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=10kHz)であり、試験グループG183における試験条件C68に係る出力波形は、プラスの直流刺激(第2パラメータに係る周波数=10kHz)である。
【0130】
また、試験グループG184において、試験条件C69に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激であり、試験条件C70に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激である。試験グループG184の試験結果からは、ナイアシンアミド又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で+に帯電している化合物群>に列挙された物質)に対しては、周波数130kHzの交流刺激が効果的であることが分かる。なお、周波数130kHzの交流刺激の波形は、図7に示した形態(出力モードM1に係る波形)であるが、図7Aから図7Cの形態の波形であっても同様に得られることが期待できる。
【0131】
また、試験グループG185において、試験条件C72に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激かつ波形が矩形波であり、試験条件C73に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激かつ波形が図7に示した形態(出力モードM1に係る波形)である。試験グループG185の試験結果からは、ナイアシンアミド又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で+に帯電している化合物群>に列挙された物質)に対しては、周波数130kHzの交流刺激が波形に関係なく効果的であることがわかり、特に、図7に示した形態の波形が有効であることも分かる。なお、試験条件C73に係る効果は、図7Aから図7Cの形態の波形であっても同様に得られることが期待できる。
【0132】
このような試験から、ナイアシンアミド又はこれと実質的に同様の性質を有する物質(例えば、上述した、弱酸性~弱アルカリ性付近のpHにおいて<水溶液中で+に帯電している化合物群>に列挙された物質)が対象物である場合、特に、図12を参照して上述した出力モードM20及びM30のような出力波形が、ナイアシンアミド又はこれと実質的に同様の性質を有する物質を、効果的に肌に浸透させることができることが分かる。従って、例えば、ナイアシンアミド又はこれと実質的に同様の性質を有する物質に対しては、出力モードM20及びM30の少なくともいずれか一方を含むモード構成情報を有する制御情報が対応付けられてもよい。このようにして、成分ごとに試験を行うことで、どの制御情報が有効かを判断でき、有効な制御情報に係る制御情報IDを対象物に対応付けることができる。
【0133】
図17Cは、特定の対象物“コウジ酸”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Cは、上述した図16Aと同じ態様の試験を、物質をコウジ酸に変えて行った際の結果である。
【0134】
溶液のpH=6.5、濃度=1.0%、使用時間=60秒とし、N数=3である。試験条件C80に係る出力波形は、周波数1kHzの交流刺激であり、試験条件C81に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激であり、試験条件C82に係る出力波形は、周波数10Hzの交流刺激であり、試験条件C83に係る出力波形は、周波数90kHzの交流刺激である。
【0135】
このような試験から、コウジ酸又はこれと類似する性質を有する物質(例えば、低分子、水溶性、水溶液中でほとんど帯電しない性質)に対しても、高周波帯以外でも浸透効果が確認できた。
【0136】
従って、コウジ酸又はこれと類似する性質を有する物質(例えば低分子、水溶性、水溶液中でほとんど帯電しない性質を有する物質)に対応付けられる制御情報は、以下の特徴を有してよい。第2パラメータの値(=α1)は、例えば、図7(又は図7Aから図7Cの出力波形に係る出力モード)に示した出力モードM1に関して、200kHz以下の交流刺激が好適で、好ましくは10Hz~130kHzが好ましい。
【0137】
図17Dは、特定の対象物“アルブチン”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Dは、上述した図16Aと同じ態様の試験を、物質をアルブチンに変えて行った際の結果である。
【0138】
試験条件C100に係る出力波形は、周波数1Mhzの交流刺激であり、試験条件C101に係る出力波形は、プラスの直流刺激であり、試験条件C102に係る出力波形は、マイナスの直流刺激である。また、試験条件C103に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激であり、試験条件C104に係る出力波形は、周波数10Hzの交流刺激である。
【0139】
このような試験から、アルブチンの場合、試験条件C1に比べて、試験条件C100や試験条件C101において良好な浸透効果が確認できた。また、試験条件C102のようなマイナスの直流刺激より200kHz以下の交流刺激により良好な浸透効果が得られることが確認できた。
【0140】
図17Eは、特定の対象物“フェニルエチルレゾルシノール”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Eは、上述した図16Aと同じ態様の試験を、物質をフェニルエチルレゾルシノールに変えて行った際の結果である。
【0141】
試験条件C110に係る出力波形は、周波数130kHzの交流刺激であり、試験条件C111に係る出力波形は、周波数1kHzの交流刺激であり、試験条件C112に係る出力波形は、周波数10Hzの交流刺激である。試験条件C113に係る出力波形は、周波数40kHzの交流刺激である。
【0142】
このような試験から、フェニルエチルレゾルシノールの場合、アルブチンの場合と同様に200kHz以下の交流刺激により良好な浸透効果が得られることが確認できた。
【0143】
図17Fは、特定の対象物“加水分解コラーゲン”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Fは、上述した図16Aと同じ態様の試験を、物質を加水分解コラーゲンに変えて行った際の結果である。だだし、本試験では、上述した2-4については、2-3の処理後、適用部位の角層を粘着テープ(商品名「D-Squame(登録商標」で商業的に入手可能な角質チェッカー)にて剥離し、角層1-10層目に含有する加水分解コラーゲンの量を定量した。
【0144】
溶液のpH=6.3、濃度=10.0%、使用時間=300秒とし、N数=2である。試験条件C90に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激であり、試験条件C91に係る出力波形は、周波数30kHzの交流刺激と周波数70kHzの交流刺激との切り替えを伴う組み合わせ(すなわち交互の印加)である。
【0145】
このような試験から、加水分解コラーゲン又はこれと類似する性質を有する物質(例えば、高分子化合物)に対しても、高周波帯以外でも浸透効果が確認できた。
【0146】
従って、加水分解コラーゲン又はこれと類似する性質を有する物質(例えば、高分子化合物)に対応付けられる制御情報は、以下の特徴を有してよい。第2パラメータの値(=α1)は、例えば、図7(又は図7Aから図7Cの出力波形に係る出力モード)に示した出力モードM1に関して、30kHz~100kHzが好ましく、さらに好ましくは、70kHz付近である。また、30~100kHz交流刺激と直流刺激と所定期間内に適用させることも好ましい。また、30~100kHzの異なる周波数帯を所定期間内に組み合わせて適用させることも好ましい。
【0147】
図17Gは、特定の対象物“コラーゲンペプチド”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Gは、上述した図17Fと同じ態様の試験を、物質をコラーゲンペプチドに変えて行った際の結果である。
【0148】
試験条件C130に係る出力波形は、周波数1Mhzの交流刺激であり、試験条件C131に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激であり、試験条件C132に係る出力波形は、3MHzの交流刺激と70kHzの交流刺激の切り替えを伴う組み合わせ(すなわち交互の印加)である。また、試験条件C133に係る出力波形は、周波数70kHzの交流刺激であり、試験条件C134に係る出力波形は、30kHzの交流刺激と70kHzの交流刺激との切り替えを伴う組み合わせ(すなわち交互の印加)である。試験条件C131と試験条件C133の違いは、前者が使用時間=90秒、N数=3であるのに対して、後者が使用時間=300秒、N数=2である。なお、試験条件C130から試験条件C132は、使用時間=90秒、N数=3であり、試験条件C134は、使用時間=300秒、N数=2である。
【0149】
コラーゲンペプチドについて、図17Gに示すように、試験条件C1に比べて、試験条件C130のみ、試験条件C131、C133のような100kHz以下の交流刺激(例えば70kHzの交流刺激)のみ、試験条件C132のような100kHz以下の交流刺激と高周波(例えば3Mhz)の組合せ、試験条件C134のような100kHz以下の交流刺激と100kHz以下の別の交流刺激の組合せ(例えば30kHzと70kHz)が好適であることがわかった。また、100kHz以下の交流刺激、及び、高周波(例えば3MHz)の交流刺激と100kHz以下の交流刺激の組合せによる刺激が好適であることがわかった。
【0150】
なお、脂質及び油溶性物質に対しても、高周波帯以外で浸透効果を期待できる。この場合、第2パラメータの値(=α1)は、例えば、図7(又は図7Aから図7Cの出力波形に係る出力モード)に示した出力モードM1に関して、156kHz以上が好ましい。この場合、温め効果があると拡散作用があり、浸透効果が良好となる。
【0151】
図17Hは、特定の対象物“酢酸トコフェロール”に関する他の試験結果を示す表図である。図17Hは、上述した図16Aと同じ態様の試験を、物質を酢酸トコフェロールに変えて行った際の結果である。
【0152】
試験条件C120に係る出力波形は、周波数1Mhzの交流刺激であり、試験条件C121に係る出力波形は、周波数190kHzの交流刺激である。
【0153】
このような試験から、酢酸トコフェロールの場合、試験条件C1に比べて、190kHzの交流刺激や1Mhzの交流刺激が好適であることがわかった。
【0154】
図18は、複数の制御情報が同時に利用される際の制御態様の説明図である。図18に示す例では、モード構成情報“M3+M4+M2”が対応付けられている制御情報と、モード構成情報“M3+M2+M4”が対応付けられている制御情報とが同時に利用されている。なお、モード構成情報“M3+M4+M2”とは、出力モードM3、出力モードM4、及び出力モードM2を、この順(又は他の順でも良い、以下同様)で実行することを表し、モード構成情報“M3+M2+M4”とは、出力モードM3、出力モードM2、及び出力モードM4を、この順で実行することを表すものとする。この場合、図18に模式的に示すように、モード構成情報“M3+M4+M2”が対応付けられている制御情報に基づく処理(図18の区間PT1参照)と、モード構成情報“M3+M2+M4”が対応付けられている処理(図18の区間PT2参照)とが、交互に繰り返し実行されてよい。
【0155】
このようして、複数の有効成分(対象物)を含む化粧品等を利用する場合も、複数の制御情報IDに対応付けられている各制御情報に基づく制御(処理)を交互に繰り返し実行できる。
【0156】
なお、複数の有効成分(対象物)を含む化粧品等を利用する場合、複数の対象物間の配合割合が制御に反映されてもよい。例えば、図18に示す例において、モード構成情報“M3+M4+M2”が対応付けられている制御情報に係る対象物が、モード構成情報“M3+M2+M4”が対応付けられている制御情報に係る対象物よりも配合割合が有意に高い場合、モード構成情報“M3+M4+M2”が対応付けられている制御情報に基づく処理が、モード構成情報“M3+M2+M4”が対応付けられている処理よりも、優先的に(例えば、繰り返し回数が多くなる態様や、基準実行時間が長くなる態様で)実行されてもよい。
【0157】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0158】
例えば、上述した実施例では、美容デバイス4は、ユーザ端末2及び情報処理装置3と連携することで、多様な対象物に応じた制御情報を出力可能であるが、これに限られない。例えば、美容デバイス4は、特定の1つ以上の対象物に応じた制御情報に基づき動作する専用デバイスであってもよい。この場合、美容デバイス4は、特定の1つ以上の対象物とセット販売等されてもよい。あるいは、美容デバイス4が多様な対象物に応じた制御情報を取得可能である場合でも、美容デバイス4は、デフォルト設定として、特定の1つ以上の対象物に応じた制御情報に基づき動作するように設定されてもよい。この場合も、美容デバイス4は、特定の1つ以上の対象物とセット販売等されてもよい。
【0159】
また、美容デバイス4は、特定の1つ以上の対象物に応じた制御情報に基づき動作する専用デバイスであるような変形例では、上述した実施例による情報処理システム1の構成要素として、ユーザ端末2及び情報処理装置3は省略されてもよい。
【0160】
また、上述した実施例では、多様な制御情報のそれぞれに1つ以上の対象物が対応付けられているが、制御情報の種類は1つだけでもよい。この場合、当該一の制御情報は、特定の1つ以上の対象物とともに利用されるのが好適であるが、互いに対応付けられる必要はない。同様に、上述した実施例では、多様な対象物のそれぞれに制御情報が対応付けられているが、対象物の種類は1つだけでもよい。この場合、当該対象物は、専用の制御情報とともに利用されるのが好適であるが、互いに対応付けられる必要はない。
【0161】
また、上述した実施例では、一の対象物に一の制御情報が対応付けられているが、一の対象物に複数の制御情報が対応付けられてもよい。
【0162】
また、上述した実施例において、制御情報を形成する下位データ512(図5参照)は、第1パラメータから第3パラメータの各値を含むが、第1パラメータから第3パラメータの各値の一部が省略されてもよい。また、第4パラメータとして、出力波形を発生させる対の電極の変化パターンを規定するパラメータを含んでよい。このような第4パラメータは、複数の電極40が多様に配置されている電極構成の場合に好適である。また、第5パラメータとして、出力波形が減衰波形となるか否かを規定するパラメータを含んでもよい。
【0163】
また、上述した実施例において、制御情報は、美容デバイス4の型式やタイプごとに設定されてもよい。この場合、各種の美容デバイス4の特徴に制御情報を適合できる。
【0164】
また、上述した実施例では、一の対象物に対応付けられる制御情報は、当該一の対象物の各種特性ないし性質等、例えば、(1)溶媒への対象物の溶けやすさに関する性質、(2)帯電に係る特性、及び、(3)分子量又はその属性のうちの、少なくともいずれか1つに基づいて設定される場合があるが、これに限られない。例えば、一の対象物に対応付けられる制御情報は、これらのうちの少なくともいずれか1つに加えて、化粧品全体の「pH値」や、「基剤」、「配合割合」、「有効性」等をも考慮して設定されてもよい。
【0165】
また、上述した実施例では、制御情報に基づいて美容デバイス4で実行される処理は、電気的な出力波形に基づくが、これに限られない。例えば電気的な出力波形に代えて又は加えて、ヒータ等による熱を用いる方法、LED(Light Emitting Diode)光やIPL(Intense Pulsed Light)のような光を用いる方法、超音波を用いる方法、磁気的方法、電磁波を用いる方法、及びプラズマを用いる方法のうちのいずれか1つ以上が利用されてもよい。この場合、電極40が利用されない処理が実現されてもよい。
【0166】
また、上述した実施例において、一の対象物に対応付けられる制御情報は、利用する側のユーザに関する情報に基づいて、補正等されてもよい。例えば、制御情報は、ユーザの属性(例えば性別や年齢、人種等)、ユーザの悩み情報、肌質などアンケート情報、美容デバイス4の使用状況等に基づいて、補正されてもよい。
【0167】
また、上述した実施例において、一の対象物に対応付けられる制御情報は、利用時の外部環境(例えば紫外線の強さや、湿度等)に応じて、補正されてもよい。これは、利用時の外部環境に応じて最も効果的な制御情報に差異が生じうるためである。
【0168】
また、上述した実施例において、一の対象物に対応付けられる制御情報は、美容デバイス4の種類ごとに設定されてもよい。この場合、情報処理装置3は、制御情報の要求元のユーザが所有する美容デバイス4の種類に応じた制御情報を抽出してよい。
【0169】
また、上述した実施例では、一の対象物に対応付けられる制御情報は、主に、当該対象物の、人の皮膚への浸透が効果的に実現されるように適合されるが、これに限られない。例えば、電気施術においては、浸透以外に電気そのものの効果が出やすい対象物が存在することがわかってきている。すなわち、浸透以外にも、単純に電気の働きかけで、肌が活性化されて、肌のハリや弾力が出る場合があり、その際に利用するのが好適な対象物もある。また、LEDや電磁波なども対象物の浸透を促す効果よりは、細胞の活性化や血行促進、殺菌などの効果の方が有意であり、その際に利用するのが好適な対象物もある。具体的には、クエン酸を含む対象物は、電気が流れやすかったり、ゲル状のものよりサラサラしている溶媒の方が熱の伝わりが速かったりといった具合に、対象物の性質によって体感や、電気刺激の伝わりも変わりうる。そこで、浸透を目的としていない対象物については、その性質やテクスチャー等も考慮して、人の皮膚への浸透方法以外の制御情報が対応付けられてもよい。この場合、例えば、電気の流れやすい対象物に対しては、電気刺激に係る処理(例えば高周波筋電気刺激用の出力波形)を実現するための制御情報が対応付けられ、熱の伝わりやすい成分(基剤としての成分を含む)を含む対象物に対しては、加温に係る処理方法(例えばラジオ波による加温用の出力波形)を実現するための制御情報が対応付けられてもよい。
【0170】
なお、以上の各実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0171】
[付記1]
人の皮膚に付与可能な対象物に対応付けられた制御情報に基づいて、人の肌を処理する肌処理装置を作動させる作動方法。
【0172】
[付記2]
前記制御情報は、前記肌処理装置に時系列で連続して実行させる異なる2種類以上の所定処理を表す、付記1に記載の作動方法。
【0173】
[付記3]
前記2種類以上の所定処理は、特性が互いに異なる出力波形の出力を、前記肌処理装置に備わる対の電極を介して人の肌に印加することを含む、付記2に記載の作動方法。
【0174】
[付記4]
前記2種類以上の所定処理は、前記出力波形が交流波形である第1種類の所定処理と、前記出力波形がパルス状の直流波形である第2種類の所定処理とを含む、付記3に記載の作動方法。
【0175】
[付記5]
前記2種類以上の所定処理は、前記出力波形が交流波形である第3種類の所定処理であって、前記第1種類の所定処理に対して前記交流波形の振幅及び周波数のうちの少なくともいずれか一方が異なる第3種類の所定処理を更に含む、付記4に記載の作動方法。
【0176】
[付記6]
前記交流波形の振幅及び周波数のうちの少なくともいずれか一方は、溶媒への前記対象物の溶けやすさに関する性質と、前記対象物の分子量又はその属性とのうちの、少なくともいずれか1つに基づいて設定される、付記4又は5に記載の作動方法。
【0177】
[付記7]
前記直流波形の正負の極性は、帯電に係る前記対象物の特性に基づいて設定される、付記4から6のうちのいずれか1項に記載の作動方法。
【0178】
[付記8]
前記制御情報は、前記2種類以上の所定処理のそれぞれの実行時間又はそれらの比を更に表す、付記2から7のうちのいずれか1項に記載の作動方法。
【0179】
[付記9]
前記制御情報は、溶媒への溶けやすさに関する性質と、帯電に係る特性と、分子量又はその属性とのうちの、少なくともいずれか1つが共通である1つ以上の前記対象物ごとに、対応付けられている、付記1から8のうちのいずれか1項に記載の作動方法。
【0180】
[付記10]
人の皮膚に付与可能な対象物に対応付けられた制御情報に基づいて、人の肌を処理する肌処理装置。
【0181】
[付記11]
肌処理装置のコンピュータにより実行されるプログラムであって、
人の皮膚に付与可能な対象物に対応付けられた制御情報に基づいて、前記肌処理装置に人の肌を処理させるプログラム。
【0182】
[付記12]
人の皮膚に付与可能な対象物に対応付けられた制御情報に基づいて、人の肌を処理する肌処理装置を制御する処理部を備え、
前記制御情報は、前記肌処理装置に時系列で連続して実行させる異なる2種類以上の所定処理を表す、情報処理システム。
【0183】
[付記13]
異なる複数の前記対象物のそれぞれに対応付けられた2種類以上の前記制御情報を記憶する記憶部と
ユーザの肌に付与された1つ以上の前記対象物を特定又は推定する対象物情報取得部とを更に備え、
前記処理部は、前記対象物情報取得部により特定又は推定された1つ以上の前記対象物に対応付けられた前記制御情報を前記記憶部から取得し、取得した前記制御情報に基づいて、前記肌処理装置を制御する、付記12に記載の情報処理システム。
【0184】
[付記14]
前記処理部は、2種類以上の前記制御情報を取得した場合、第1種類の前記制御情報に基づく前記2種類以上の所定処理と、第2種類の前記制御情報に基づく前記2種類以上の所定処理とを、前記肌処理装置を介して時系列で連続して実行する、付記12又は13に記載の情報処理システム。
【0185】
[付記15]
人の肌を処理する肌処理装置を制御するための制御情報を記憶する記憶装置であって、
前記制御情報は、人の皮膚に付与可能な対象物に対応付けられ、異なる2種類以上の所定処理を時系列で連続して前記肌処理装置に実行させるための情報を含む、記憶装置。
【0186】
[付記16]
複数の前記対象物のそれぞれに対応付けられた前記制御情報を記憶する、付記15に記載の記憶装置。
【0187】
[付記17]
付記15又は16に記載の記憶装置と、
1つ以上の前記対象物を特定可能な情報を要求元から取得した場合に、取得した前記情報の1つ以上の前記対象物に係る前記制御情報を抽出し、抽出した前記制御情報に前記要求元に送信する処理装置とを含む、データ管理装置。
【0188】
[付記18]
人の皮膚に付与可能な対象物に対応付けて生成された制御情報に基づいて、人の肌を処理する肌処理装置を制御する処理部を備え、
前記制御情報は、前記肌処理装置に時系列で連続して実行させる異なる2種類以上の所定処理を表す、情報処理システム。
【符号の説明】
【0189】
1 情報処理システム
2 ユーザ端末
3 情報処理装置
4 美容デバイス
4a 動作部
4b グリップ部
4c 操作ボタン
30 通信バス
31 通信部
32 記憶部
33 制御部
40 電極
100 制御系
110 制御装置
120 駆動回路部
130 出力波形発生部
135 トランス
140 切替回路部
150 電源
200 電気回路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図16A
図17
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図17G
図17H
図18