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特開2025-23952液体タンパク質製剤を安定化するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023952
(43)【公開日】2025-02-19
(54)【発明の名称】液体タンパク質製剤を安定化するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20250212BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61K38/02
A61K9/08
A61K47/26
A61K9/10
A61K39/395 M
A61K39/395 A
A61K9/19
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024187611
(22)【出願日】2024-10-24
(62)【分割の表示】P 2021577359の分割
【原出願日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】62/868,615
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トムリンソン, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ザラガ, イシドロ アンヘロ エレアザール
(72)【発明者】
【氏名】デメーレ, バルテレミー ルク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリペプチド及び界面活性剤を含む安定な液体医薬製剤を提供する。
【解決手段】ポリペプチド及び界面活性剤を含む液体製剤であって、界面活性剤の少なくとも約70%(重量%)がイソソルビドポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステルである液体製剤である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド及び界面活性剤を含む液体製剤であって、前記界面活性剤の少なくとも約70%(重量%)がイソソルビドポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステルである、液体製剤。
【請求項2】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが約5~30POE単位を含む、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが約20POE単位を含む、請求項1又は2に記載の液体製剤。
【請求項4】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項5】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルがモノエステルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項6】
前記モノエステルが、イソソルビドPOEモノラウレート、イソソルビドPOEモノミリステート、イソソルビドPOEモノパルミテート、イソソルビドPOEモノステアレート及びイソソルビドPOEモノオエレートからなる群から選択される、請求項5に記載の液体製剤。
【請求項7】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルがモノエステル、ジエステル、又はそれらの混合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項8】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが式(I):
[式中
a及びbは独立して2~28の整数であり、ただし、a及びbの合計は5~30の整数であり;
及びRは、独立して、水素及び-C(O)R’’(式中、R’’は、置換されていてもよいC3-27アルキル又は置換されていてもよいC3-27アルケニルである)からなる群から選択され;
及びRは独立して水素である]
の化合物である、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項9】
a及びbの合計が9である、請求項8に記載の液体製剤。
【請求項10】
がHであり、Rが-C(O)R’’である、請求項8又は9に記載の液体製剤。
【請求項11】
が-C(O)R’’であり、RがHである、請求項8又は9に記載の液体製剤。
【請求項12】
及びRの両方が-C(O)R’’である、請求項8又は9に記載の液体製剤。
【請求項13】
R’’が非置換C3-27アルキルである、請求項8から12のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項14】
R’’が非置換C11アルキルである、請求項13に記載の液体製剤。
【請求項15】
R’’が非置換C3-27アルケニルである、請求項8から12のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項16】
R’’が非置換C17アルケニルである、請求項15に記載の液体製剤。
【請求項17】
前記界面活性剤の少なくとも約80%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステルである、請求項1から16のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項18】
前記界面活性剤がPOE脂肪酸エステルを更に含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項19】
前記界面活性剤が、POE脂肪酸エステルよりも多量のイソソルビドPOE脂肪酸エステルを含む、請求項18に記載の液体製剤。
【請求項20】
前記POE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む、請求項18又は19に記載の液体製剤。
【請求項21】
前記POE脂肪酸エステルが、POEモノラウレート、POEモノミリステート、POEモノパルミテート、POEモノステアレート及びPOEモノオエレートからなる群から選択される、請求項20に記載の液体製剤。
【請求項22】
前記界面活性剤の約20%(重量%)未満がPOE脂肪酸エステルである、請求項18から21のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項23】
前記界面活性剤が、前記液体製剤の約0.0005%~0.2%(w:v)である、請求項1から22のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項24】
前記界面活性剤がソルビタンPOE脂肪酸エステルを更に含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項25】
前記ポリペプチドがタンパク質である、請求項1から24のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項26】
前記タンパク質が抗体である、請求項25に記載の液体製剤。
【請求項27】
前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、及び抗体断片からなる群から選択される、請求項26に記載の液体製剤。
【請求項28】
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片からなる群から選択される、請求項27に記載の液体製剤。
【請求項29】
前記抗体の濃度が約0.1mg/mL~約300mg/mLである、請求項26から28のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項30】
前記抗体の濃度が約100mg/mL~約300mg/mLである、請求項29に記載の液体製剤。
【請求項31】
前記液体製剤が再構成凍結乾燥製剤である、請求項1から30のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項32】
前記液体製剤が、約0.001mg/mL~約0.5mg/mLのポリペプチド濃度に輸液で更に希釈される、請求項29又は30に記載の液体製剤。
【請求項33】
前記液体製剤が凝集体を実質的に含まない、請求項1から32のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項34】
前記液体製剤の遊離脂肪酸粒子形成が少ない、請求項1から32のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項35】
前記界面活性剤の少なくとも約80%(重量%)が、イソソルビドポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである、請求項18から34のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項36】
前記界面活性剤の少なくとも約90%(重量%)が、イソソルビドポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである、請求項18から35のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項37】
ポリペプチド及び界面活性剤を含む凍結乾燥製剤であって、前記界面活性剤の少なくとも約70%(重量%)がイソソルビドポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルあり、前記凍結乾燥製剤が、請求項18から36のいずれか一項に記載の液体製剤を凍結乾燥することによって調製される、凍結乾燥製剤。
【請求項38】
請求項1から36のいずれか一項に記載の液体製剤を封入する容器を含む、製造品。
【請求項39】
前記容器がIVバッグである、請求項38に記載の製造品。
【請求項40】
前記IVバッグが注射装置を含む、請求項39に記載の製造品。
【請求項41】
前記IVバッグが輸液を含む、請求項39又は40に記載の製造品。
【請求項42】
前記容器がバイアル又はプレフィルドシリンジである、請求項38に記載の製造品。
【請求項43】
希釈剤を封入する第2の容器を更に含む、請求項38に記載の製造品。
【請求項44】
請求項37に記載の凍結乾燥製剤を封入する容器を含む、製造品。
【請求項45】
希釈剤を封入する第2の容器を更に含む、請求項44に記載の製造品。
【請求項46】
ポリペプチド及び界面活性剤を水溶液に添加することを含む液体製剤の作製方法であって、前記界面活性剤の少なくとも70%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステルである、方法。
【請求項47】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが約5~30POE単位を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが約20POE単位を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルがモノエステルである、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記モノエステルが、イソソルビドPOEモノラウレート、イソソルビドPOEモノミリステート、イソソルビドPOEモノパルミテート、イソソルビドPOEモノステアレート及びイソソルビドPOEモノオエレートからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルがモノエステル、ジエステル、又はそれらの混合物である、請求項46から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルが式(I):
[式中
a及びbは独立して2~28の整数であり、ただし、a及びbの合計は5~30の整数であり;
及びRは、独立して、水素及び-C(O)R’’(式中、R’’は、置換されていてもよいC3-27アルキル又は置換されていてもよいC3-27アルケニルである)からなる群から選択され;
及びRは独立して水素である]
の化合物である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
a及びbの合計が9である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
がHであり、Rが-C(O)R’’である、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
が-C(O)R’’であり、RがHである、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項57】
及びRの両方が-C(O)R’’である、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項58】
R’’が非置換C3-27アルキルである、請求項53から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
R’’が非置換C11アルキルである、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
R’’が非置換C3-27アルケニルである、請求項53から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
R’’が非置換C17アルケニルである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記界面活性剤がPOE脂肪酸エステルを更に含む、請求項46から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記界面活性剤の少なくとも約80%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記界面活性剤の少なくとも約90%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである、請求項62又は63に記載の方法。
【請求項65】
前記界面活性剤が、POE脂肪酸エステルよりも多量のイソソルビドPOE脂肪酸エステルを含む、請求項62から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記POE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む、請求項62から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記POE脂肪酸エステルが、POEモノラウレート、POEモノミリステート、POEモノパルミテート、POEモノステアレート及びPOEモノオエレートからなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記界面活性剤の約20%(重量%)未満がPOE脂肪酸エステルである、請求項62から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記界面活性剤がソルビタンPOE脂肪酸エステルを更に含む、請求項46から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記界面活性剤が、前記液体製剤の約0.0005%~0.2%(w:v)である、請求項46から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記ポリペプチドがタンパク質である、請求項46から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記タンパク質が抗体である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、及び抗体断片からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片からなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記抗体の濃度が約0.1mg/mL~約300mg/mLである、請求項72から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記抗体の濃度が約100mg/mL~約300mg/mLである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記液体製剤が、約0.1mg/mL~約2mg/mLの濃度に輸液で更に希釈される、請求項75又は76に記載の方法。
【請求項78】
前記液体製剤を凍結乾燥して凍結乾燥製剤を作製することを更に含む、請求項46から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記液体製剤が凝集体を実質的に含まない、請求項46から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記液体製剤の遊離脂肪酸粒子形成が少ない、請求項46から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルがイソソルビドPOEモノラウレートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項82】
前記イソソルビドPOE脂肪酸エステルがイソソルビドPOEモノラウレートである、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年6月28日に出願された米国特許仮出願第62/868,615号に対する優先権利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ポリペプチド及び界面活性剤を含む安定な液体医薬製剤及びそれを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリソルベート(PS)は、生物医薬タンパク質製剤に一般的に使用される界面活性剤であり、化学的加水分解、酸化、及び酵素加水分解を含む様々な分解経路の影響を受けやすいことが示されている。PSの分解は、様々な過酸化物の生成につながる可能性があり、その後、長期保存中にタンパク質中のアミノ酸残基(例えば、メチオニン)を酸化する。Levine et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1996)93,15036-15040.これらのアミノ酸残基の酸化は、タンパク質の生物学的活性に潜在的に悪影響を及ぼし、それによってタンパク質製剤中のPSの保護効果を制限する。さらに、ポリソルベートは不均一混合物であるので、分解のパターンは、種々の経路間で著しく異なる場合がある。したがって、薬学的タンパク質製剤の開発において、界面活性剤のためのより効率的な賦形剤が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ポリペプチド及び界面活性剤を含む液体製剤であって、界面活性剤の少なくとも約70%(重量%)がイソソルビドポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステルである液体製剤を開示する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは約5~30POE単位を含む。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは約20POE単位を含む。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、イソソルビドPOEモノラウレート、イソソルビドPOEモノミリステート、イソソルビドPOEモノパルミテート、イソソルビドPOEモノステアレート及びイソソルビドPOEモノオエレートからなる群から選択される。
【0005】
いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、式(I):
[式中:
a及びbは独立して2~28の整数であり、ただし、a及びbの合計は5~30の整数であり;
及びRは、独立して、水素及び-C(O)R’’(式中、R’’は、置換されていてもよいC3-27アルキル又は置換されていてもよいC3-27アルケニルである)からなる群から選択され;
及びRは独立して素である]
の化合物である。
【0006】
いくつかの実施形態では、aとbの合計は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25である。いくつかの実施形態では、aとbの合計は9である。いくつかの実施形態では、aとbの合計は20である。いくつかの実施形態において、RはHであり、Rは-C(O)R’’である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-C(O)R’’である。いくつかの実施形態では、R及びRの両方が-C(O)R’’である。いくつかの実施形態では、R’’は、非置換C3-27アルキルである。いくつかの実施形態では、R’’は、非置換C11アルキルである。いくつかの実施形態では、R’’は、非置換C3-27アルケニルである。いくつかの実施形態において、R’’は、非置換C17アルケニルである。
【0007】
いくつかの実施形態では、界面活性剤はPOE脂肪酸エステルを更に含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも約80%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも約90%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、POE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む。いくつかの実施形態では、POE脂肪酸エステルは、POEモノラウレート、POEモノミリステート、POEモノパルミテート、POEモノステアレート及びPOEモノオエレートからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約20%未満がPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約10%未満がPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、液体製剤中の約0.0005%~0.2%(w:v)である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、POE脂肪酸エステルよりも多量のイソソルビドPOE脂肪酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はソルビタンPOE脂肪酸エステルを更に含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約10%未満、約8%未満、約5%未満、約3%未満又は約1%未満がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。
【0008】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドはタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、及び抗体断片からなる群から選択される抗体である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)及びFv断片からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗体の濃度は、約0.001mg/mL~約300mg/mLである。いくつかの実施形態では、液体製剤は再構成凍結乾燥製剤である。いくつかの実施形態では、液体製剤を輸液で約0.001mg/mL~約100mg/mLの濃度に更に希釈する。いくつかの実施形態では、液体製剤は凝集体を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、液体製剤は、遊離脂肪酸粒子形成が少ない。
【0009】
本明細書に記載の任意の液体製剤を封入する容器を含む製造品も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、容器はIVバッグである。いくつかの実施形態では、IVバッグは注射装置を含む。いくつかの実施形態では、IVバッグは輸液を含む。ポリペプチド及び界面活性剤を含む凍結乾燥製剤であって、界面活性剤の少なくとも約70%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである凍結乾燥製剤も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥製剤は、本明細書に開示される任意の液体製剤を凍結乾燥することによって調製される。
【0010】
ポリペプチド及び界面活性剤を水溶液に添加することを含む液体製剤の作製方法も本明細書で提供され、界面活性剤の少なくとも70%(重量%)はイソソルビドPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは約5~30POE単位を含む。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは約20POE単位を含む。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4ー28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、イソソルビドPOEモノラウレート、イソソルビドPOEモノミリステート、イソソルビドPOEモノパルミテート、イソソルビドPOEモノステアレート及びイソソルビドPOEモノオエレートからなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、式(I):
[式中:
a及びbは独立して2~28の整数であり、ただし、a及びbの合計は5~30の整数であり;
及びRは、独立して、水素及び-C(O)R’’(式中、R’’は、置換されていてもよいC3-27アルキル又は置換されていてもよいC3-27アルケニルである)からなる群から選択され;
及びRは独立して水素である]
の化合物である。
【0012】
いくつかの実施形態では、aとbの合計は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25である。いくつかの実施形態では、aとbの合計は9である。いくつかの実施形態では、aとbの合計は20である。いくつかの実施形態において、RはHであり、Rは-C(O)R’’である。いくつかの実施形態では、RはHであり、Rは-C(O)R’’である。いくつかの実施形態では、R及びRの両方が-C(O)R’’である。いくつかの実施形態では、R’’は、非置換C3-27アルキルである。いくつかの実施形態では、R’’は、非置換C11アルキルである。いくつかの実施形態では、R’’は、非置換C3-27アルケニルである。いくつかの実施形態において、R’’は、非置換C17アルケニルである。
【0013】
いくつかの実施形態では、界面活性剤はPOE脂肪酸エステルを更に含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも約80%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、上記方法は、POE脂肪酸エステルを添加することを更に含む。いくつかの実施形態では、POE脂肪酸エステルが、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から選択される脂肪酸鎖を含む。いくつかの実施形態では、POE脂肪酸エステルは、POEモノラウレート、POEモノミリステート、POEモノパルミテート、POEモノステアレート及びPOEモノオエレートからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約20%未満がPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約10%未満がPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、液体製剤中の約0.0005%~0.2%(w:v)である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、POE脂肪酸エステルよりも多量のイソソルビドPOE脂肪酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はソルビタンPOE脂肪酸エステルを更に含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約10%未満、約8%未満、約5%未満、約3%未満又は約1%未満がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。
【0014】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドはタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、及び抗体断片からなる群から選択される抗体である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)及びFv断片からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗体の濃度は、約0.1mg/mL~約300mg/mLである。いくつかの実施形態では、液体製剤は再構成凍結乾燥製剤である。いくつかの実施形態では、液体製剤を輸液で約0.1mg/mL~約2mg/mLの濃度に更に希釈する。いくつかの実施形態では、液体製剤を更に凍結乾燥して、凍結乾燥製剤を調製する。いくつかの実施形態では、液体製剤は凝集体を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、液体製剤は、遊離脂肪酸粒子形成が少ない。
【0015】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。本発明のこれら及び他の態様は、当業者に明らかであろう。本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1A及び図1Bは、ポリソルベート20画分(図1A)及びポリソルベート80画分(図1B)の純度及び同一性についてのUPLC分析を示す。
【0017】
図2図2A及び図2Bは、蛍光色素N-フェニルナフタレン-1-アミン(NPN)を使用したポリソルベート20画分(図2A)及びポリソルベート80画分(図2B)の臨界ミセル濃度(CMC)を示す。
【0018】
図3図3A及び図3Bは、ポリソルベート20画分(図3A)及びポリソルベート80画分(図3B)の経時的な表面張力を示す。
【0019】
図4図4A及び図4Bは、ポリソルベート20画(図4A)及びポリソルベート80画分(図4B)のミセル径を示し、各画分は1重量%の濃度を有する。
【0020】
図5図5は、様々な濃度のポリソルベート20画分を含有する抗体製剤の画像を示す。
【0021】
図6図6A及び図6Bは、様々な濃度のポリソルベート20画分を含有する抗体製剤の画像を示す。
【0022】
図7図7A及び図7Bは、様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmABCの抗体製剤に対するHIACの結果を示す。
【0023】
図8図8A及び図8Bは、様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤に対するHIACの結果を示す。
図9図9A及び図9Bは、様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤に対するHIACの結果を示す。
【0024】
図10図10A及び図10Bは、様々な時間にわたって40℃で保存した、様々な濃度のポリソルベート20画分を含有する抗体製剤の画像を示す。
【0025】
図11図11A及び図11Bは、示される40℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤に対するHIACの結果を示す。
【0026】
図12図12A及び図12Bは、40℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤のSEC-HPLCの結果を示す。
図13図13A及び図13Bは、40℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤のSEC-HPLCの結果を示す。
【0027】
図14図14は、40℃で保存したポリソルベート20画分を含有するmAbBの抗体製剤に対するIECの結果を示す。
【0028】
図15図15A及び図15Bは、様々な時間にわたって25℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有する抗体製剤の画像を示す。
【0029】
図16図16A及び図16Bは、25℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤に対するHIACの結果を示す。
【0030】
図17図17A及び図17Bは、25℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤のSEC-HPLCの結果を示す。
図18図18A及び図18Bは、25℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤のSEC-HPLCの結果を示す。
【0031】
図19図19は、25℃で保存したポリソルベート20画分を含有するmAbBの抗体製剤に対するIECの結果を示す。
【0032】
図20図20A及び図20Bは、様々な時間にわたって5℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有する抗体製剤の画像を示す。
【0033】
図21図21A及び図21Bは、5℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤に対するHIACの結果を示す。
【0034】
図22図22A及び図22Bは、5℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤のSEC-HPLCの結果を示す。
図23図23A、及び図23Bは、5℃で保存した様々な濃度のポリソルベート20画分を含有するmAbB及びmAbCの抗体製剤のSEC-HPLCの結果を示す。
【0035】
図24図24は、5℃で保存したポリソルベート20画分を含有するmAbBの抗体製剤に対するIECの結果を示す。
【0036】
図25図25は、2.5U/シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)由来のリパーゼ酵素(PCL)によるPS20及びF2a(それぞれpH=6.0の製剤緩衝液中)の強制分解からのHIACの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、ポリソルベートの特定の画分が薬学的タンパク質製剤において強い保護効果を提供するという発見に基づいている。具体的には、それらは、同じ保護効果に対してより少ない界面活性剤の使用を可能にし、それにより、ポリソルベートの分解から生じるタンパク質の生物学的活性に対する悪影響を最小限に抑える。一態様では、本開示は、ポリソルベートの1つ以上のかかる画分を含むタンパク質製剤を提供する。本明細書に記載のタンパク質製剤は、製剤中のタンパク質安定性の増加を実証した。本記載はまた、タンパク質製剤を作製するためのキット及び方法を提供する。
【0038】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての特許、出願、公開出願及び他の刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。この段落に記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、又は他の刊行物に記載された定義に反するか、あるいは矛盾する場合、この段落に記載された定義は、参照により本明細書に組み込まれる定義よりも優先する。
【0039】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明さる本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明される本開示の様々な特徴は、別個に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。特定の方法の工程、試薬、又は条件に関する実施形態の全ての組合せは、本開示によって具体的に包含され、あたかも各々及び全ての組合せが個別に明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0040】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0041】
本明細書における「約」値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする変形を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」に言及する記述には、「X」の記述が含まれる。
【0042】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される被験体に許容できないほどに有毒な追加の成分を含有しない調製物を指す。いくつかの実施形態では、その製剤は無菌である。
【0043】
「再構成」製剤は、タンパク質が再構成製剤中に分散されるように、凍結乾燥したタンパク質又は抗体製剤を希釈剤に溶解することによって調製されたものである。再構成製剤は、目的のタンパク質で治療される患者への投与(例えば、非経口投与)に適しており、本発明の特定の実施形態では、皮下投与に適したものであり得る。
【0044】
「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、本明細書では任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために使用される。ポリマーは、直鎖状でも分岐状でもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語はまた、自然に、又は介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、若しくは任意の他の操作又は修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。典型的には、本明細書で使用のタンパク質は、少なくとも約5~20kD、あるいは少なくとも約15~20kD、又は少なくとも約20kDの分子量を有する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1つ以上の類縁体を含有するタンパク質、並びに当該技術分野で既知の他の修飾もこの定義に含まれる。特定の実施形態では、本明細書における定義に包含されるポリペプチドの例としては、例えば、レニン等の哺乳類ポリペプチド;成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ-1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;レプチン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ又はヒト尿若しくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-アルファ及び-ベータ;腫瘍壊死因子受容体、例えば、細胞死受容体5及びCD120;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL);B細胞成熟抗原(BCMA);B-リンパ球刺激因子(BLyS);増殖誘導リガンド(APRIL);エンケファリナーゼ;RANTES(活性化時に調節され、T細胞が正常に発現及び分泌している);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、ベータラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA-4;インヒビン;アクチビン;血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF);血管内皮成長因子ファミリータンパク質(例えば、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGFD、及びPlGF);血小板由来成長因子(PDGF)ファミリータンパク質(例えば、PDGF-A、PDGF-B、PDGF-C、PDGF-D、及びそれらの二量体);線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリー、例えば、aFGF、bFGF、FGF4、及びFGF9;上皮成長因子(EGF);ホルモン又は成長因子受容体、例えば、VEGF受容体(複数可)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、及びVEGFR3)、上皮成長因子(EGF)受容体(複数可)(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3、及びErbB4 受容体)、血小板由来成長因子(PDGF)受容体(複数可)(例えば、PDGFR-α及びPDGFR-β)、並びに線維芽細胞増殖因子受容体(複数可);TIEリガンド(アンジオポイエチン、ANGPT1、ANGPT2)、アンジオポイエチン受容体、例えば、TIE1及びTIE2;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、若しくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、若しくはNT-6)、又は神経成長因子、例えば、NGF-b;トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含むTGF-アルファ及びTGF-ベータ;インスリン様成長因子I及びII(IGF-I及びIGF-II);des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CDS、CD19、及びCD20;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);ケモカイン、例えば、CXCL12及びCXCR4;インターフェロン(intelferon)、例えば、インターフェロン-アルファ、-ベータ、及び-ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSP、及びG-CSF;サイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10;ミッドカイン;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部分;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えば、CDlla、CDllb、CDllc、CD18、ICAM、VLA-4、及びVCAM;エフリン;Bv8;デルタ様リガンド4(DLL4);Del-1;BMP9;BMPlO;フォリスタチン;肝細胞成長因子(HGF)/散乱因子(SF);Alkl;Robo4;ESMl;パールカン;EGF様ドメインマルチプル7(EGFL7);CTGF及びそのファミリーのメンバー;トロンボスポンジン、例えば、トロンボスポンジン1及びトロンボスポンジン2;コラーゲン、例えば、コラーゲンIV及びコラーゲンXVIII;ニューロピリン、例えば、NRP1及びNRP2;プレイオトロフィン(PTN);プログラニュリン;プロリフェリン;Notchタンパク質、例えば、Notch1及びNotch4;セマフォリン、例えば、Sema3A、Sema3C、及びSema3F;腫瘍関連抗原、例えば、CA125(卵巣癌抗原)、又はHER2、HER3若しくはHER4の受容体;イムノアドヘシン;並びに上述のポリペプチドのいずれかの断片及び/又はバリアント、並びに例えば、上述のタンパク質のいずれかを含む1つ以上のタンパク質に結合する抗体断片を含む抗体が挙げられる。
【0045】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性を呈する限り抗体断片を包含する。
【0046】
「単離」抗体とは、その自然環境の成分から同定及び分離され、かつ/又は回収された抗体である。その自然環境の汚染物質成分は、抗体の試験的、診断的、又は治療的使用を妨害するであろう物質であり、そのようなものとしては酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニング・カップ・シークエネーターを使用して、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)例えば、クマシーブルー又は銀染色を使用して、還元又は非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツ抗体を含む。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0047】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から成る、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。また、各重鎖と軽鎖は、一定の間隔で鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を持ち、その後に複数の定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられる。
【0048】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において同義に使用され、以下に記載のように、その実質的にインタクトな形態の抗体を指し、抗体断片をさすものではない。これらの用語は、具体的には、Fe領域を含有する重鎖を含む抗体を指す。
【0049】
「抗体断片」は、任意に、その抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、自然に発生する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、該標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、in vivoでのその免疫原性を低減し、多特異性抗体等を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体製剤は、それらが典型的には他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないと解釈されるものではない。
【0051】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体にとしては、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的とする抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
【0052】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾を加えて、抗体の性能を更に洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fe)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFeの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、例えば、ones et al.,Nature321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);並びに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
【0053】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、及び/又は本明細書に開示されヒト抗体を作製するための技術のうちのいずれかを使用して作製された抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ等の当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mal.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mal.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
【0054】
「安定した」製剤とは、内部のタンパク質が保管時にその物理的安定性及び/若しくは化学的安定性並びに/又は生物学的活性を本質的に保持する製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、貯蔵時にその物理的及び化学的安定性、並びにその生物学的活性を本質的に保持する。保管期間は、一般に、製剤の意図される貯蔵寿命に基づいて選択される。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技法が当該技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。安定性は、選択された露光量及び/又は温度で選択された期間にわたって測定され得る。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濁度を測定することによって、及び/又は目視検査によって);ROS形成の評価(例えば、軽いストレスアッセイ又は2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)ストレスアッセイを使用することによって);タンパク質の特定のアミノ酸残基(例えば、モノクローナル抗体のTrp残基及び/又はMet残基)の酸化;陽イオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)又はキャピラリゾーン電気泳動を使用して電荷不均一性を評価することによって;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分析;還元抗体及びインタクト抗体を比較するためのSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えば、トリプシン又はLYS-C)分析;タンパク質の生物学的活性又は標的結合機能の評価(例えば、抗体の抗原結合機能);等を含む様々な異なる方法で定性的及び/又は定量的に評価することができる。不安定性は、凝集、脱アミド(例えば、Asn脱アミド化)、酸化(例えば、Met酸化及び/又はTrp酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域の断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン(複数可)、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化の違い、賦形剤の分解、微粒子(例えば、遊離脂肪酸粒子)の形成等のいずれか1つ以上を含み得る。
【0055】
タンパク質は、それが、色及び/若しくは透明度の目視検査時に、又はUV光散乱若しくはサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されたときに、凝集、沈殿、及び/又は変性の兆候をほとんど又は全く示さない場合、薬学的製剤中で「その物理的安定性を保持する」。
【0056】
タンパク質は、所与の時点での化学的安定性が、タンパク質が以下に定義されるその生物学的活性を依然として保持しているとみなされるようなものである場合、薬学的製剤中で「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、タンパク質の化学的に改変された形態を検出及び定量することによって評定され得る。化学的改変は、例えば、トリプシンペプチドマッピング、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)を使用して評価され得るタンパク質酸化を含み得る。他のタイプの化学的改変としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー又はicIEFによって評価され得るタンパク質の電荷改変が挙げられる。
【0057】
所与の時点でのタンパク質の生物学的活性が、例えばモノクローナル抗体の抗原結合アッセイで決定されるように、薬学的製剤が調製された時点で示された生物学的活性の約10%以内(アッセイの誤差内)である場合、タンパク質は薬学的製剤中で「その生物学的活性を保持する」。本明細書で使用される場合、タンパク質の「生物学的活性」とは、標的に結合するタンパク質の能力、例えば、抗原に結合するモノクローナル抗体の能力を指す。これは、in vitro又はin vivoで測定され得る生物学的応答を更に含み得る。かかる活性は、アンタゴニスト活性又はアゴニスト活性であり得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」、「PEG」、「ポリエチレンオキシド」、「PEO」、「ポリオキシエチレン」、及び「POE」という用語は互換的に使用され得、2つ以上のエチレンオキシドサブユニットで構成されるポリエーテル化合物を指す。「ポリエチレングリコール」は、エチレンオキシドオリゴマー(例えば、2~9個のエチレンオキシド単量体サブユニットを有する)又はエチレンオキシドポリマー(例えば、10以上の9つのエチレンオキシド単量体サブユニットを有する)から構成され得る。
【0059】
「脂肪酸」は、長鎖炭化水素側鎖(side group)を有するカルボン酸である。それらは、メチル基のアルコールへの酸化、アルデヒド、次いで酸の等価物によって炭化水素から誘導される有機一塩基酸で構成される。脂肪酸は、飽和又は不飽和のいずれかであり得る。不飽和脂肪酸の場合、それらはシス(Z)もしくはトランス(E)配置、又は両方の組合せを有することができる。
【0060】
「アルキル」は、指定の数の炭素原子、例えば、1~20個の炭素原子、又は1~8個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐の炭素鎖を包含する。例えば、C1-6アルキルは、1~6個の炭素原子の直鎖及び分岐鎖の両方のアルキルを包含する。特定の数の炭素を有するアルキル残基を挙げる場合、その数の炭素を有する全ての分枝鎖及び直鎖バージョンが包含されることが意図され、したがって、例えば、「プロピル」は、n-プロピル及びイソプロピルを含み、「ブチル」は、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル及びt-ブチルを含む。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル及び3-メチルペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。値の範囲が与えられる場合(例えば、C1-6アルキル)、その範囲内の各値並びに介在する全ての範囲が含まれる。例えば、「C1-6アルキル」は、C、C、C、C、C、C、C1-6、C2-6、C3-6、C4-6、C5-6、C1-5、C2-5、C3-5、C4-5、C1-4、C2-4、C3-4、C1-3、C2-3、及びC1-2アルキルが挙げられる。
【0061】
「アルケニル」は、指定の数の炭素原子(例えば、2~8個又は2~6個の炭素原子)及び少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和分枝又は直鎖アルキル基を指す。基は、二重結合(複数可)の周りにシス又はトランス配置(Z又はE配置)のいずれかであってもよい。アルケニル基としては、エテニル、プロペニル(例えば、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、プロパ-2-エン-2-イル)及びブテニル(例えば、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
「置換された」という用語は、特定の基又は部分が、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニルアルコキシ、アシルアミノ、アミノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、シアノ、アジド、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、チオール、チオアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アラルキル、アミノスルホニル、スルホニルアミノ、スルホニル、オキソ等の置換基を含むがこれらに限定されない1つ以上の置換基を持つこと意味する。「非置換の」という用語は、明記された基が置換基を担持しないことを意味する。「置換された」という用語が構造系を説明するために使用される場合、置換は、系上の任意の原子価許容位置で起こることを意味する。基又は部分が2つ以上の置換基を有する場合、置換基は互いに同じであっても異なっていてもよいことが理解される。いくつかの実施形態では、置換基又は部分は、1~5個の置換基を持つ。いくつかの実施形態では、置換基又は部分は、1つの置換基を持つ。いくつかの実施形態において、置換基又は部分は、2つの置換基を持つ。いくつかの実施形態において、置換基又は部分は、3つの置換基を持つ。いくつかの実施形態において、置換基又は部分は、4つの置換基を持つ。いくつかの実施形態において、置換基又は部分は、5つの置換基を持つ。
【0063】
「任意の」又は「任意に」とは、続いて記載される事象又は状況が生じてもよいこと、又は生じなくてもよいことを意味し、その記載は、その事象又は状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、「置換されていてもよいアルキル」は、本明細書で定義される「アルキル」及び「置換アルキル」の両方を包含する。1つ以上の置換基を含有する任意の基に関して、かかる基は、立体的に実際的でなく、合成的に実現不可能であり、及び/又は本質的に不安定である任意の置換又は置換パターンを導入することを意図しないことが当業者によって理解されよう。基又は部分が任意に置換されている場合、本開示は、その基又は部分が置換されている実施形態及びその基又は部分が非置換である実施形態の両方を含むことも理解されよう。
【0064】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、又は全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まないか、又は本質的に含まない。
【0065】
II.ポリペプチド製剤
ポリペプチド及び界面活性剤を含む製剤であって、界面活性剤がポリソルベートの1つ以上の成分を含む製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、製剤は液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は凍結乾燥製剤である。
界面活性剤
【0066】
バイオ医薬品製剤は、一般に、界面応力から活性医薬成分を保護するために界面活性剤と共に製剤化される。界面、特に空気-水との相互作用は、撹拌又は長期保存中に治療用タンパク質の凝集を引き起こすことが示されている。ポリソルベートは、バイオ医薬品のためのこれらのタイプの相互作用を防止するために一般的に使用される界面活性剤である。それらは、一般に、それらの高い表面活性、低い臨界ミセル濃度(CMC)及び低い毒性のために選択される。しかしながら、これらの界面活性剤は、関連化合物の不均一な混合物であり、これらは、組合せとして、バイオ医薬品製剤に必要とされる固有の特性をそれらに与える。
【0067】
ポリソルベート(PS)は、脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタンとして標準的に記載される乳化剤のクラスである。PSは、複数層の不均一性を有する関連化合物の混合物である。第1の層は、脂肪酸エステルのテイル長さである。USP及びEPの研究論文は、PS20に対するこれらのエステルの分布が、最大1%のカプロン酸(C)エステル、10%のカプリル酸(C)エステル、10%のカプリン酸(C10)エステル、7%のステアリン酸(C18)エステル、11%のモノ不飽和C18エステル、及び3%の二不飽和C18エステルを含む、40~60%のラウリン酸(C12)エステル、14~25%のミリスチン酸(C14)エステル、及び7~15%のパルミチン酸(C16)エステルとなるべきであると指示している。更なる不均一性は、POE鎖の長さ並びにジ-及びトリ-エステルの存在に由来する。さらに、ソルビトールからのソルビタンの合成中にイソソルビドも形成され、これは4つではなく2つのPOEアームを有するそれ自体の一連のPS20様化合物を生成することができる。下記の表1も参照されたい。様々な成分は、著しく異なる溶液及び界面特性を有することがわかっている。特に、イソソルビドPOE脂肪酸エステル成分は、ポリペプチドに対してより大きな保護特性を有する。したがって、(例えば、EP又はUSPの研究論文に記載されているように)ポリソルベートよりも高濃度のイソソルビドPOE脂肪酸エステル(例えば、少なくとも70%(重量%))を使用することにより、液体製剤中のポリペプチドにより大きな保護を提供しながら、より少量の界面活性剤の使用が可能になる。
【0068】
本明細書では、製剤中のポリペプチドを保護するのに有効なポリソルベートの特定の成分を有する界面活性剤を含むバイオ医薬品製剤が提供される。いくつかの実施形態では、これらの成分は、より少ない界面活性剤の使用を可能にするが、より高い安定性を提供する。いくつかの実施形態では、使用される界面活性剤の量が少ないと、遊離脂肪酸粒子の形成が少なくなる。いくつかの実施形態では、これらの成分は、遊離脂肪酸粒子に対するポリペプチドのより大きな保護を提供する。
【0069】
一態様では、界面活性剤はイソソルビドPOE脂肪酸エステルを含む。別の態様では、界面活性剤は、イソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、各イソソルビドPOE脂肪酸エステル及び各POE脂肪酸エステルは、独立して、約5~10POE単位、約10~15POE単位、約15~20POE単位、約20~25POE単位、約25~30POE単位、約15~30POE単位を有する。いくつかの実施形態では、各イソソルビドPOE脂肪酸エステル及び各POE脂肪酸エステルは、独立して、5POE単位、6POE単位、7POE単位、8POE単位、9POE単位、10POE単位、11POE単位、12POE単位、13POE単位、14POE単位、15POE単位、16POE単位、17POE単位、18POE単位、19POE単位、20POE単位、21POE単位、22POE単位、23POE単位、24POE単位、25POE単位、26POE単位、27POE単位、28POE単位、29POE単位、30POE単位、又はそれらの組合せを有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、独立して、約5~10POE単位、約10~15POE単位、約15~20POE単位、約20~25POE単位、約25~30POE単位、約15~30POE単位を有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、5POE単位、6POE単位、7POE単位、8POE単位、9POE単位、10POE単位、11POE単位、12POE単位、13POE単位、14POE単位、15POE単位、16POE単位、17POE単位、18POE単位、19POE単位、20POE単位、21POE単位、22POE単位、23POE単位、24POE単位、25POE単位、26POE単位、27POE単位、28POE単位、29POE単位、30POE単位、又はそれらの組合せを有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは約20POE単位を有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルの両方が約5~30POE単位を有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルの両方が約20POE単位を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、各イソソルビドPOE脂肪酸エステル及び各POE脂肪酸エステルは、独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、及び置換されていてもよいアルキニルからなる群から独立して選択される脂肪酸鎖を有する。いくつかの実施形態では、アルキルは直鎖状である。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、非置換C4-28アルキルである。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、アシル、ヒドロキシル、シクロアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、ニトロ、ハロ、チオール、チオアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル又はヘテロシクリルからなる群から選択される置換基で置換されたC4-28アルキルである。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、非置換C4-28アルケニルである。いくつかの実施形態では、アルケニルは、直鎖状又は分枝状である。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される化合物は、1つ以上の二重結合を有する。いくつかの実施形態では、各二重結合は、シス配置を有する。いくつかの実施形態では、各二重結合は、トランス配置を有する。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、アシル、ヒドロキシル、シクロアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、ニトロ、ハロ、チオール、チオアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル又はヘテロシクリルからなる群から選択される置換基で置換されたC4-28アルケニルである。
【0072】
いくつかの実施形態では、各イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、独立して、1、2、3、又は4つのPOEアームを有する。いくつかの実施形態では、各イソソルビドPOE脂肪酸エステルは2つのPOEアームを有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、以下の式(I):
[式中:
a及びbは独立して2~28の整数であり、但し、a及びbの合計は5~30の整数であり;
及びRは、独立して、水素及び-C(O)R’’(式中、R’’は、置換されていてもよいC3-27アルキル又は置換されていてもよいC3-27アルケニルである)からなる群から選択され;
及びRは独立して水素である]
の構造を有する。
【0074】
式(I)のいくつかの実施形態では、aとbの合計は、約5~10、約10~15、約15~20、約20~25、約25~30、又は約15~30である。式(I)のいくつかの態様では、aとbの合計は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30である。いくつかの実施形態では、aとbの合計は9である。いくつかの実施形態では、aとbの合計は20である。式(I)のいくつかの態様では、R及びRの少なくとも1つは水素ではない。式(I)のいくつかの実施形態では、RとRの両方が-C(O)R’’である。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、任意に置換されているC3-27アルキルである。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、非置換のC3-27アルキルである。式(I)のいくつかの実施形態では、C3-27アルキルは直鎖状である。式(I)のいくつかの態様では、C3-27アルキルは分岐鎖である。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、非置換のCアルキル、Cアルキル、Cアルキル、C11アルキル、C13アルキル、C15アルキル、C17アルキル、C19アルキル、C21アルキル、又はC23アルキルである。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、非置換の直鎖C11アルキルである。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、任意に置換されているC3-27アルケニルである。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、非置換のC3-27アルケニルである。式(I)のいくつかの実施形態では、C3-27アルケニルは直鎖状である。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、非置換のCアルケニル、Cアルケニル、Cアルケニル、C11アルケニル、C13アルケニル、C15アルケニル、C17アルケニル、C19アルケニル、C21アルケニル、又はC23アルケニルである。式(I)のいくつかの態様では、R’’は2つ以上の二重結合を有する。式(I)のいくつかの実施形態では、2つ以上の二重結合はシス配置を有する。式(I)のいくつかの実施形態では、2つ以上の二重結合はトランス配置を有する。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、シス配置を有する1つの二重結合を有する。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、トランス配置を有する1つの二重結合を有する。式(I)のいくつかの態様では、R’’は、-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CH(CHCH
-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH
-(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH(CHCH、及び
-(CH11CH=CH(CHCHからなる群から選択される。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、
-(CHCH=CH(CHCHであり、二重結合はシス配置を有する。式(I)のいくつかの態様では、R’’は-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCHであり、両方の二重結合はシス配置を有する。式(I)のいくつかの実施形態では、R’’は、
-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCHであり、両方の二重結合はトランス配置を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも70%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも80%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも90%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも95%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。
【0076】
いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びそれらの組合せから選択される。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルはモノエステルである。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸モノエステルは、イソソルビドPOEモノカプロエート、イソソルビドPOEモノカプリレート、イソソルビドPOEモノカプレート、イソソルビドPOEモノラウレート、イソソルビドPOEモノミリステート、イソソルビドPOEモノパルミテート、イソソルビドPOEモノパルミトレエート、イソソルビドPOEモノステアレート、イソソルビドPOEモノオレエート、イソソルビドPOEモノリノレエート、イソソルビドPOEモノリノレネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルはジエステルである。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸ジエステルは、イソソルビドPOEジカプロエート、イソソルビドPOEジカプリレート、イソソルビドPOEジカプレート、イソソルビドPOEジラウレート、イソソルビドPOEジミリステート、イソソルビドPOEジパルミテート、イソソルビドPOEジパルミトレエート、イソソルビドPOEジステアレート、イソソルビドPOEジレエート、イソソルビドPOEジリノレエート、イソソルビドPOEジリノレネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは式(I)の化合物である。
【0077】
いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルは同じ脂肪酸鎖を有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルは、異なる脂肪酸鎖を有する。いくつかの実施形態では、POE脂肪酸エステルは、POEモノカプロエート、POEモノカプリレート、POEモノカプレート、POEモノラウレート、POEモノミリステート、POEモノパルミテート、POEモノパルミトレエート、POEモノステアレート、POEモノオエレート、POEモノリノレエート、POEモノリノレネート、POEジカプロエート、POEジカプリレート、POEジカプレート、POEジラウレート、POEジミリステート、POEジパルミテート、POEジパルミトレエート、POEジステアレート、POEジオエレート、POEジリノレエート、POEジリノレネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノラウレート及びPOEモノラウレートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノパルミテート及びPOEモノパルミテートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノミリステート及びPOEモノミリステートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノオレエート及びPOEモノオレエートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノリノレエート及びPOEモノリノレエートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、POE脂肪酸エステルよりも多量のイソソルビドPOE脂肪酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約7.5%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.75%未満、約0.5%未満、又は約0.1%未満(重量%)がPOE脂肪酸エステルである。
【0078】
別の態様では、界面活性剤はソルビタンPOE脂肪酸エステルを更に含む。いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、独立して、約5~10POE単位、約10~15単位、約15~20POE単位、約20~25POE単位、約25~30POE単位、約15~30POE単位を有する。いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、独立して、5POE単位、6POE単位、7POE単位、8POE単位、9POE単位、10POE単位、11POE単位、12POE単位、13POE単位、14POE単位、15POE単位、16POE単位、17POE単位、18POE単位、19POE単位、20POE単位、21POE単位、22POE単位、23POE単位、24POE単位、25POE単位、26POE単位、27POE単位、28POE単位、29POE単位、30POE単位、又はそれらの組合せを有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、及び置換されていてもよいアルキニルからなる群から独立して選択される脂肪酸鎖を有する。いくつかの実施形態では、アルキルは直鎖状である。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、非置換C4-28アルキルである。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、アシル、ヒドロキシル、シクロアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、ニトロ、ハロ、チオール、チオアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル又はヘテロシクリルからなる群から選択される置換基で置換されたC4-28アルキルである。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、非置換C4-28アルケニルである。いくつかの実施形態では、アルケニルは、直鎖状又は分枝状である。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される化合物は、1つ以上の二重結合を有する。いくつかの実施形態では、各二重結合は、シス配置を有する。いくつかの実施形態では、各二重結合は、トランス配置を有する。いくつかの実施形態では、脂肪酸鎖は、アシル、ヒドロキシル、シクロアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、ニトロ、ハロ、チオール、チオアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル又はヘテロシクリルからなる群から選択される置換基で置換されたC4-28アルケニルである。
【0080】
いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、独立して、2、3、又は4つのPOEアームを有する。いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、4つのPOEアームを有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、以下の式(II):
[式中:
w、z、y、及びxは独立して2~24の整数であり、但し、w、z、y、及びxの合計は15~30の整数であり;
、R、R及びRは、独立して、水素及び-C(O)R’からなる群から選択され、R’は、置換されていてもよいC3-27アルキル又は置換されていてもよいC3-27アルケニルであり;
は、水素である]
の構造を有する。
【0082】
式(II)のいくつかの実施形態では、w、z、y及びxの合計は、約15~20、約20~25、約25~30又は約15~30である。式(II)のいくつかの実施形態では、w、z、y及びxの合計は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30である。式(II)のいくつかの実施形態では、R、R、R及びRの少なくとも1つは水素ではない。式(II)のいくつかの実施形態では、R、R、R及びRの少なくとも2つは水素ではない。式(II)のいくつかの実施形態では、R、R、R及びRは-C(O)R’である。いくつかの実施形態では、R、R及びRはHであり、Rは-C(O)R’である。いくつかの実施形態では、R及びRはHであり、R及びRは-C(O)R’である。いくつかの実施形態において、RはHであり、R、R及びRは-C(O)R’である。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、任意に置換されていたC3-27アルキルである。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、非置換のC3-27アルキルである。式(II)のいくつかの実施形態では、C3-27アルキルは直鎖状である。式(II)のいくつかの態様では、C3-27アルキルは分岐鎖である。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、非置換のCアルキル、Cアルキル、Cアルキル、C11アルキル、C13アルキル、C15アルキル、C17アルキル、C19アルキル、C21アルキル、又はC23アルキルである。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、非置換の直鎖C11アルキルである。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、任意に置換されていたC3-27アルケニルである。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、非置換のC3-27アルケニルである。式(II)のいくつかの実施形態では、C3-27アルケニルは直鎖状である。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、非置換のCアルケニル、Cアルケニル、Cアルケニル、C11アルケニル、C13アルケニル、C15アルケニル、C17アルケニル、C19アルケニル、C21アルケニル、又はC23アルケニルである。式(II)のいくつかの態様では、R’は2つ以上の二重結合を有する。式(II)のいくつかの実施形態では、2つ以上の二重結合はシス配置を有する。式(II)のいくつかの実施形態では、2つ以上の二重結合はトランス配置を有する。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、シス配置を有する1つの二重結合を有する。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、トランス配置を有する1つの二重結合を有する。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CH(CHCH
-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CH(CHCH
-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH
-(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH(CHCH、及び
-(CH11CH=CH(CHCHからなる群から選択される。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、
-(CHCH=CH(CHCHであり、二重結合はシス配置を有する。式(II)のいくつかの態様では、R’は-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCHであり、両方の二重結合はシス配置を有する。式(II)のいくつかの実施形態では、R’は、
-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCHであり、両方の二重結合はトランス配置を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、界面活性剤の約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも1%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも5%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも10%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも15%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。
【0084】
いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、独立して、モノエステル、ジエステル、トリエステル又はテトラエステルである。いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、ソルビタンPOEモノカプロエート、ソルビタンPOEモノカプリレート、ソルビタンPOEモノカプレート、ソルビタンPOEモノラウレート、ソルビタンPOEモノミリステート、ソルビタンPOEモノパルミテート、ソルビタンPOEモノパルミトレエート、ソルビタンPOEモノステアレート、ソルビタンPOEモノオエレート、ソルビタンPOEモノリノレエート、ソルビタンPOEモノリノレネート、ソルビタンPOEジカプロエート、ソルビタンPOEジカプリレート、ソルビタンPOEジカプレート、ソルビタンPOEジラウレート、ソルビタンPOEジミリステート、ソルビタンPOEジパルミテート、ソルビタンPOEジパルミトレエート、ソルビタンPOEジステアレート、ソルビタンPOEジオエレート、ソルビタンPOEジリノレエート、ソルビタンPOEジリノレネート、ソルビタンPOEトリカプロエート、ソルビタンPOEトリカプリレート、ソルビタンPOEトリカプレート、ソルビタンPOEトリラウレート、ソルビタンPOEトリミリステート、ソルビタンPOEトリパルミテート、ソルビタンPOEトリパルミトレート、ソルビタンPOEトリステアレート、ソルビタンPOEトリオエレート、ソルビタンPOEトリリノレエート、及びソルビタンPOEトリリノレネートからなる群から独立して選択される。いくつかの実施形態では、ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、式(II)の化合物である。
【0085】
別の態様では、本明細書に開示される界面活性剤は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、又は約0.1%(w:v)を超える臨界ミセル濃度(CMC)を有する。別の態様では、界面活性剤は、約20mN/m、約25mN/m、約30mN/m、約35mN/m、約40mN/m、約45mN/m、約50mN/m、約55mN/m、又は約60mN/m未満の表面張力を有する。
ポリペプチド
【0086】
本明細書の開示は、ポリペプチド及び界面活性剤を含む液体製剤に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の液体製剤中のポリペプチドは本質的に純粋である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の液体製剤中のポリペプチドは本質的に均質である(すなわち、混入タンパク質を含まない)。「本質的に純粋な」ポリペプチドは、組成物の総重量に基づいて、ポリペプチドの少なくとも約90重量%を含む組成物を意味する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、組成物の総重量に基づいて少なくとも95重量%である。「本質的に均質な」ポリペプチドは、組成物の総重量に基づいて、ポリペプチドの少なくとも約99重量%を含む組成物を意味する。
【0087】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは抗体である。本明細書の抗体は、目的の「抗原」に対するものである。いくつかの実施形態では、抗原は、生物学的に重要なタンパク質であり、疾患又は障害に罹患している哺乳動物への抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利益がもたらされ得る。いくつかの実施形態では、非タンパク質抗原(腫瘍関連糖脂質抗原等;例えば、米国特許第5,091,178号明細書を参照されたい)に対する抗体も企図される。抗原がタンパク質である場合、それは、膜貫通分子(例えば、受容体)又は成長因子等のリガンドであり得る。例示的な抗原としては、本明細書に記載の任意のタンパク質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示によって包含される抗体の分子標的としては、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20及びCD34等のCDポリペプチド;HER受容体ファミリーのメンバー、例えば、EGF受容体(HER1)、HER2、HER3又はHER4受容体;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10;LFA-1、Macl、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びav/b3インテグリン等の細胞接着分子(例えば、抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);成長因子、例えばVEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プログラム細胞死タンパク質1(PD-1);プログラム死リガンド1(PD-L1);ポリペプチドC等が挙げられる。任意に他の分子にコンジュゲートされた可溶性抗原又はその断片を、抗体を生成するための免疫原として使用することができる。受容体等の膜貫通分子に対しては、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が、免疫原として使用され得る。代替的に、膜貫通分子を発現する細胞が、免疫原として使用され得る。このような細胞は、自然源(例えば、がん細胞株)由来であり得るか、又は膜貫通分子を発現するように組換え技法によって形質転換された細胞であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、ポリ特異性抗体、キメラ抗体及びヘテロコンジュゲート抗体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片及び全抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)及びFv断片からなる群から選択される。
【0089】
製剤中のポリペプチドは、当該技術分野で公知の方法を使用して、例えばポリペプチドをコードする核酸を含有するベクターで形質転換又はトランスフェクトした細胞を培養することによって、又は合成技術(例えば、組換え技術及びペプチド合成又はこれらの技術の組合せ)によって調製され得るか、又はポリペプチドの内因性供給源から単離され得る。
【0090】
A.タンパク質調製
組換え手段による本開示の方法によって製剤化されるタンパク質の調製は、適切な宿主細胞を発現ベクター又はクローニングベクターでトランスフェクト又は形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された従来の栄養培地中で培養することによって達成され得る。培地、温度、及びpH等の培養条件は、当業者が過度の実験を行うことなく選択することができる。一般に、細胞培養物の生産性を最大化するための原理、プロトコル、及び実用的な技術は、Mammalian Cell Biotechnology:A Practical Approach,M.Butler,Ed.(IRL Press,1991)and Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Pressに見ることができる。トランスフェクションの方法は、当業者に公知であり、例えば、CaPO及びCaClトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション等が挙げられる。適切な技術は、上記のSambrook et al.にも記載されている。更なるトランスフェクション技術は、Shaw et al.,Gene23:315(1983);国際公開第89/05859号;Graham et al.,Virology52:456-457(1978)、及び米国特許第4,399,216号に記載されている。
【0091】
本方法による製剤化のための所望のタンパク質をコードする核酸は、クローニング又は発現のために複製可能なベクターに挿入され得る。適切なベクターは公的に入手可能であり、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子又はファージの形態をとることができる。適切な核酸配列は、様々な手順によってベクターに挿入され得る。一般に、DNAは、当該技術分野で公知の技術を用いて適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(複数可)に挿入される。ベクター成分としては、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子及びエンハンサ要素、プロモーター、並びに転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。これらの成分の1つ以上を含有する好適なベクターの構築は、当業者に公知である標準的なライゲーション技術を用いる。
【0092】
製剤化されるタンパク質の形態は、培養培地又は宿主細胞溶解物から回収され得る。膜に結合している場合、それは、好適な洗浄剤を使用して、又は酵素的切断によって膜から放出され得る。発現に使用される細胞はまた、凍結融解サイクリング、超音波処理、機械的破壊又は細胞溶解剤等の様々な物理的又は化学的手段によって破壊され得る。
【0093】
製剤化されるタンパク質の精製は、当該技術分野で公知の任意の適切な技術、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ又はカチオン交換樹脂(例えば、DEAE)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、IgG等の汚染物質を除去するためのプロテインAセファロースカラム(例えば、Sephadex(登録商標)G-75)を使用したゲル濾過、及びエピトープタグ付き形態に結合するための金属キレートカラム等によって行われ得る。
【0094】
B.抗体調製
本発明の特定の実施形態では、選択されるタンパク質は抗体である。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体及びヘテロコンジュゲート抗体を含む抗体の産生のための技術を以下に示す。
【0095】
1.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、一般に、関連する抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって、動物中で産生される。関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又はダイズトリプシンインヒビターにコンジュゲートさせることが有用であり得る。用いることができるアジュバントの例として、フロイント完全アジュバント、及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫プロトコルは、当業者であれば過度な実験を行うことなく選択することができる。
【0096】
1ヶ月後、動物を、複数の部位での皮下注射によって、フロイントの完全アジュバント中の元々の量の1/5~1/10のペプチド又はコンジュゲートで追加免疫する。7~14日後、動物から採血し、血清を抗体価についてアッセイする。力価がプラトー状態になるまで、動物を追加免疫する。いくつかの実施形態において、動物は、同じ抗原のコンジュゲートで追加免疫されるが、異なるタンパク質に複合され、かつ/又は異なる架橋試薬により複合される。コンジュゲートはまた、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバン(alum)等の凝集剤も免疫応答を増強するために、好適に使用される。
【0097】
2.モノクローナル抗体。
モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体の集団から得られ、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。
【0098】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製されてもよく、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製されてもよい。
【0099】
ハイブリドーマ法において、マウス、又はハムスター等の他の適切な宿主動物が、本明細書に上記されるように免疫化されて、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するか、又は産生することができるリンパ球が誘発される。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫してもよい。その後、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞に融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。
【0100】
免疫化剤は、典型的には、製剤化されるタンパク質を含む。一般に、ヒト起源の細胞が望まれる場合は末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、非ヒト哺乳動物源が望まれる場合は脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適切な融合剤を使用して、リンパ球を不死化細胞株と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する。Goding,Monoclonal antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986),pp.59-103。
【0101】
不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特にげっ歯類、ウシ及びヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウス骨髄腫細胞株が使用される。したがって、ハイブリドーマ細胞は、非融合の親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する1種以上の物質を任意に含有する適切な培地中で播種され、培養される。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)が含まれ、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
【0102】
好適な不死化骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を支持し、HAT培地等の培地に感受性があるものである。いくつかの実施形態では、骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫株、例えば、米国カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、並びに米国バージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionから入手可能なSP-2細胞(及びその誘導体、例えばX63-Ag8-653)である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor,J.lmmunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0103】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地は、抗原に対して指向されるモノクローナル抗体の産生に関してアッセイされる。いくつかの実施態様において、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、又は放射免疫測定法(RIA)若しくは酵素免疫測定法(ELISA)等のin vitroの結合試験によって決定される。
【0104】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、再び所望の抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。いくつかの態様では、モノクローナル抗体の結合親和性及び結合特異性は、免疫沈降によって、又はin vitro結合アッセイ(ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合アッセイ(ELISA)等)によって決定することができる。かかる技術及びアッセイは、当該技術分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャード解析により決定することができる。
【0105】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準の方法によって成長し得る(上述のGoding)。この目的のための好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてin vivoで増殖させてもよい。
【0106】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手技、例えば、タンパク質A-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又は親和性クロマトグラフィー等によって、培養培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0107】
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載されているもの、及び上記のものによって作製され得る。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定される。いくつかの実施態様において、ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの供給源として機能する。単離されると、DNAは発現ベクターに入れられてもよく、発現ベクターはその後、免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞等の宿主細胞にトランスフェクトされ、かかる組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体を合成する。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現に関する総説論文としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.5:256-262(1993)and Pliickthun,Immunol.Revs.130:151-188(1992)が挙げられる。
【0108】
更なる実施形態では、McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990)に記載されている技術を使用して生成された抗体ファージライブラリーから抗体を単離することができる。Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)and Marks et al.,J.Mal.Biol.,222:581-597(1991)には、ファージライブラリーを用いたマウス抗体及びヒト抗体のそれぞれの単離が記載されている。その後の刊行物は、非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略として、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/I’echnology,10:779-783(1992))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生、並びにコンビナトリアル感染及びin vivo組換えを記載している(Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.,21:2265-2266(1993))。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替手段である。
【0109】
DNAは、例えば相同マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部若しくは一部を共有結合することによっても修飾することができる。典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインの代わりに置換されるか、又はそれらは、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位、及び異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0110】
本明細書に記載のモノクローナル抗体は一価であってもよく、その調製は当該技術分野で周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖架橋を防ぐために、一般にFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基は、架橋を防ぐために、別のアミノ酸残基で置換されていてもよく、又は欠失されていてもよい。In vitro法はまた、一価抗体を調製するのにも適している。その断片、特にFab断片を産生するための抗体の消化は、当該技術分野で公知の日常的な技術を用いて達成することができる。
【0111】
キメラ抗体又はハイブリッド抗体はまた、架橋剤を含む合成タンパク質化学における公知の方法を使用してin vitroで調製され得る。例えば、ジスルフィド交換反応を使用して、又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築してもよい。この目的に適した試薬の例としては、イミノチオラート及びメチル-4-メルカプトブチリミデートが挙げられる。
【0112】
3.ヒト化抗体。
本発明の抗体は、ヒト化又はヒト抗体を更に含んでもよい。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)、又は抗体の他の抗原結合部分配列等)である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入された(imported)CDR又はフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最も有利には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むことになる。Jones et al.,Nature321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature332:323-329(1988)及びPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.2:593-596(1992)。
【0113】
非ヒト抗体のヒト化方法は、当該技術分野において周知である。概して、ヒト化抗体は、非ヒトである源からそれに導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。こうした非ヒトアミノ酸残基は、通常、「移入」残基と呼ばれ、典型的には「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的に、Winter及び同僚(Jones et al.,Nature321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science239:1534-1536(1988))の方法に従って、げっ歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって行われる。よって、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に少ないものが非ヒト種の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基そして場合により一部のFR残基が、齧歯類抗体中の類似部位からの残基で置換されているヒト抗体である。
【0114】
ヒト化抗体の作製に使用されるヒト可変ドメイン(重鎖及び軽鎖の両方)の選択は、抗原性を低減するのに非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、げっ歯類の抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメインの配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。その後、齧歯類の配列に最も近いヒト配列がヒト化抗体のヒトフレームワークとして認められる。Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mal.Biol.,196:901(1987)。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定の下位群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークがいくつかの異なるヒト化抗体に使用され得る。Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immnol.,151:2623(1993)。
【0115】
抗体は、抗原に対する高親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化されることが更に重要である。この目標を達成するために、いくつかの実施態様において、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列及び多様な概念的ヒト化産物の分析プロセスを経て調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図解及び表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原へ結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基をレシピエント配列及び移入配列から選択して組み合わせることができ、その結果、標的抗原(複数可)に対する親和性の向上等の所望の抗体特性が得られる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的かつ最も実質的に関与する。
【0116】
様々な形態のヒト化抗体が企図される。例えば、ヒト化抗体は、Fab等の抗体断片であってもよく、これは、免疫コンジュゲートを生成するために、1つ以上の細胞傷害剤(複数可)と任意にコンジュゲートされる。代替的に、ヒト化抗体は、インタクトIgGl抗体等のインタクト抗体であってもよい。
【0117】
4.ヒト抗体
ヒト化の代替策として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、免疫の際に、内因性免疫グロブリン産生なしでヒト抗体の完全なレパートリーを生成する能力があるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが現在可能になっている。例えば、キメラマウス及び生殖系列変異体マウスにおいて、抗体の重鎖接合領域(J)遺伝子のホモ接合型欠失は内因性抗体産生を完全に阻害することが記載されている。こうした生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの導入は、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生をもたらす。例えば、,Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immuno.,1:33(1993);米国特許第5,591,669号及び国際公開97/17852号を参照されたい。
【0118】
あるいは、ファージディスプレイ技術を使用して、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroでヒト抗体及び抗体フラグメントを産生することができる。McCafferty et al.,Nature348:552-553(1990);Hoogenboom及びWinter,J.Mal.Biol.227:381(1991)。この技術によると、抗体Vドメイン遺伝子は、M13又はfd等の糸状バクテリオファージの主要あるいは非主要なコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択は、その特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択にもつながる。このように、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣している。ファージディスプレイは、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Curr.Opin Struct.Biol.3:564-571(1993)において概説される様々なフォーマットで実施され得る。ファージディスプレイには、V遺伝子セグメントの複数の供給源を使用することができる。Clackson et al.,Nature352:624-628(1991)は、免疫されたマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模なランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多種多様なアレイを単離した。免疫されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築し、抗原の多種多様なアレイに対する抗体(自己抗原を含む)を、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991),or Griffith et al.,EMBO J.12:725-734(1993)により記載された技術に基本的に従って単離することができる。米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号も参照されたい。
【0119】
Cole et al.及びBoerner et al.の技術は、ヒトモノクローナル抗体(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)and Boerner et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991))の調製にも利用可能である。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されているマウスに導入することによって作製することができる。抗原刺激を受けたとき、ヒト抗体産生が観察され、これは、遺伝子再編成、アセンブリ及び抗体レパートリーを含む全ての点でヒトに見られるものに非常に類似している。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び以下の科学刊行物:Marks et al.,Bio/I’echnology10:779-783(1992);Lenberg et al.,Nature368:856-859(1994);Morrison,Nature368:812-13(1994),Fishwild et al.,Nature Biotechnology14:845-51(1996),Neuberger,Nature Biotechnology14:826(1996)and Lenberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)に記載されている。
【0120】
最後に、ヒト抗体はまた、活性化B細胞(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照されたい)によってin vitroで生成され得る。
【0121】
5.抗体断片
特定の状況では、全抗体ではなく抗体断片を使用することに利点がある。より小さい断片サイズは、迅速なクリアランスを可能にし、固形腫瘍へのアクセスの改善をもたらし得る。
【0122】
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されてきた。伝統的に、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解消化を介して誘導された(例えば、Morimoto et al.,J Biochem Biophys.Method.24:107-117(1992);and Brennan et al.,Science229:81(1985))。しかしながら、このような断片は現在、組換え宿主細胞により直接生産することができる。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は全て、大腸菌(E.coli)で発現されて分泌され得るため、これらの断片の容易な大量生成が可能になる。抗体断片は上記の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替として、Fab’-SH断片は、大腸菌(E.coli)から直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)断片を形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。in vivo半減期の増加に伴うFab及びF(ab’)は、米国特許第5,869,046号に記載されている。他の実施形態において、最適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号を参照されたい。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように、「直鎖抗体」であってもよい。かかる直鎖抗体断片は、単一特異的又は二重特異的であり得る。
【0123】
6.二重特異性抗体及び多重特異性抗体。
二重特異性抗体(BsAb)は、同じ又は別のタンパク質上のものを含む、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。あるいは、細胞防御機構を標的抗原発現細胞に集中させて局在化させるために、1つのアームを標的抗原に結合するように備えさせることができ、そして別のアームを白血球上のトリガー分子、例えばT細胞受容体分子(例えば、CD3)又はIgGのFc受容体(FcγR)、例えばFcγRl(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わせることができる。かかる抗体は、完全長抗体又は抗体フラグメント(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)に由来し得る。
【0124】
二重特異性抗体を使用して、標的抗原を発現する細胞に細胞毒性剤を局在化させることもできる。かかる抗体は、所望の抗原に結合する1つのアームと、細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン-a、ビンカアルコロイド、リシンA鎖、メトトレキサート又は放射性同位体ハプテン)に結合する別のアームとを有する。公知の二重特異性抗体の例としては、抗ErbB2/抗FcgRIII(国際公開第96/16673号)、抗ErbB2/抗FcgRI(米国特許第5,837,234号)、抗ErbB2/抗CD3(米国特許第5,821,337号)が挙げられる。
【0125】
二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野で公知である。全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づくものである。Millstein et al.,Nature,305:537-539(1983)。免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖はランダムに取り合わされるため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の混合物を生成する可能性があり、そのうち1つだけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常アフィニティークロマトグラフィー工程により行われるが、かなり面倒であり、生成物の収率は低い。同様の手順が、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0126】
異なるアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。いくつかの実施態様において、この融合は、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの間で行われる。いくつかの実施形態では、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物のうちの少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望により免疫グロブリン軽鎖とをコードしているDNAを別々の発現ベクター中に挿入し、好適な宿主生物の中にコトランスフェクトする。これにより、構築に使用する3つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合を調節する際に大きな柔軟性がもたらされる。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合、又はその比率に特に意味がない場合、2つ若しくは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0127】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにあるハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から構成される。このような非対称的構造により、不要な免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離が容易になることが見出された。これは、二重特異性分子の半分にのみ免疫グロブリン軽鎖が存在することで、分離が容易になるためである。このアプローチは、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体生成の更なる詳細については、例えばSuresh et al.,Methods in Enzymology121:210(1986)を参照されたい。
【0128】
国際公開第96/27011号又は米国特許第5,731,168号に記載の別のアプローチによると、一対の抗体分子間の界面を操作して、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にすることができる。いくつかの実施態様において、界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、大きな側鎖(複数可)と同じ又は類似のサイズを有する代償性「空洞」が第2の抗体分子の界面に創出される。これは、ヘテロ二量体の収率をホモ二量体等の他の不要な最終生成物よりも高める機構を提供する。
【0129】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術が文献に記載されている。例えば、化学結合を用いて二重特異性抗体を調製することができる。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、インタクトな抗体をタンパク質分解で切断してF(ab’)断片を生成する手順を記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。その後、生成されたFab’断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次いで、Fab’-TNB誘導体の1つをFab’-TNB誘導体に再変換して二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化用薬剤として使用され得る。
【0130】
Fab’断片を大腸菌(E.coli)から直接回収し、化学的に結合させて二重特異性抗体を形成してもよい。Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217-225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)分子の産生について記載している。各Fab’断片は、大腸菌(E.coli)から別個に分泌され、in vitroでの指向性化学的カップリングに供されて、二重特異性抗体を形成した。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合することができ、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性を誘発することもできた。
【0131】
組換え細胞培養から直接二価抗体断片を作製及び単離するための様々な技術も記載されている。例えば、二価ヘテロ二量体は、ロイシンジッパーを使用して製造されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。この抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、その後再酸化されて抗体ヘテロ二量体を形成した。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)によって記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性/二価抗体断片を作製するための代替機構を提供した。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって、軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、ある断片のV及びVドメインは、別の断片の相補的なV及びVドメインと対形成することを余儀なくされることにより、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(scFv)二量体の使用によって二重特異性/二価抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい。
【0132】
2を超える結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
【0133】
例示的な二重特異性抗体は、所与の分子上の2つの異なるエピトープに結合し得る。あるいは、抗タンパク質アームは、特定のタンパク質を発現する細胞に細胞防御機構を集中させるために、白血球上のトリガー分子、例えばT細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28又はB7)、又はIgGのFc受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わされ得る。二重特異性抗体はまた、特定のタンパク質を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化させるために使用され得る。かかる抗体は、EOTUBE、DPTA、DOTA又はTETA等の細胞傷害剤又は放射性核種キレート剤に結合するタンパク質結合アーム及びアームを有する。目的の別の二重特異性抗体は、目的のタンパク質に結合し、更に組織因子(TF)に結合する。
【0134】
製剤
ポリペプチド及び界面活性剤を含む液体製剤が本明細書で提供される。本明細書に記載の任意の界面活性剤を液体製剤に使用することができる。いくつかの実施形態では、液体製剤中の界面活性剤は、液体製剤の約0.0005%~0.2%、約0.0005%~0.001%、約0.001%~0.002%、約0.002%~0.003%、約0.003%~0.004%、約0.004%~0.005%、約0.005%~0.006%、約0.006%~0.007%、約0.007%~0.008%、約0.008%~0.009%、約0.009%~0.01%、約0.01%~0.015%、約0.015%~0.02%、約0.02%~0.025%、約0.025%~0.03%、約0.03%~0.035%、約0.035%~0.04%、約0.04%~0.045%、約0.045%~0.05%、約0.05%~0.055%、約0.055%~0.06%、約0.06%~0.065%、約0.065%~0.07%、約0.07%~0.075%、約0.075%~0.08%、約0.08%~0.085%、約0.085%~0.09%、約0.09%~0.095%、約0.095%~0.1%、約0.1%~0.11%、約0.11%~0.12%、約0.12%~0.13%、約0.13%~0.14%、約0.14%~0.15%、約0.15%~0.16%、約0.16%~0.17%、約0.17%~0.18%、約0.18%~0.19%、約0.19%~0.2%、約0.0005%~0.01%、約0.01%~0.02%、約0.02%~0.03%、約0.03%~0.04%、約0.04%~0.05%、約0.05%~0.06%、約0.06%~0.07%、約0.07%~0.08%、約0.08%~0.09%、約0.09%~0.1%、約0.1%~0.12%、約0.12%~0.14%、約0.14%~0.16%、約0.16%~0.18%、約0.18%~0.2%、又は約0.0005%~0.02%(w:v)の濃度を有する。
【0135】
いくつかの実施形態では、液体製剤中のイソソルビドPOE脂肪酸エステルは、液体製剤の約0.00035%~0.2%、約0.00035%~0.0005%、約0.0005%~0.001%、約0.001%~0.002%、約0.002%~0.003%、約0.003%~0.004%、約0.004%~0.005%、約0.005%~0.006%、約0.006%~0.007%、約0.007%~0.008%、約0.008%~0.009%、約0.009%~0.01%、約0.01%~0.015%、約0.015%~0.02%、約0.02%~0.025%、約0.025%~0.03%、約0.03%~0.035%、約0.035%~0.04%、約0.04%~0.045%、約0.045%~0.05%、約0.05%~0.055%、約0.055%~0.06%、約0.06%~0.065%、約0.065%~0.07%、約0.07%~0.075%、約0.075%~0.08%、約0.08%~0.085%、約0.085%~0.09%、約0.09%~0.095%、約0.095%~0.1%、約0.1%~0.11%、約0.11%~0.12%、約0.12%~0.13%、約0.13%~0.14%、約0.14%~0.15%、約0.15%~0.16%、約0.16%~0.17%、約0.17%~0.18%、約0.18%~0.19%、約0.19%~0.2%、約0.00035%~0.01%、約0.01%~0.02%、約0.02%~0.03%、約0.03%~0.04%、約0.04%~0.05%、約0.05%~0.06%、約0.06%~0.07%、約0.07%~0.08%、約0.08%~0.09%、約0.09%~0.1%、約0.1%~0.12%、約0.12%~0.14%、約0.14%~0.16%、約0.16%~0.18%、約0.18%~0.2%、又は約0.00035%~0.14%(w:v)の濃度を有する。
【0136】
液体製剤中のポリペプチドの濃度は、保存構成及び所望の投与経路(例えば、皮下、筋肉内又は硝子体内投与、静脈内注射又は点滴等)に基づいて変化し得る。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドは、約0.1mg/mL~300mg/mL、約0.1mg/mL~0.5mg/mL、約0.5mg/mL~1mg/mL、約1mg/mL~1.5mg/mL、約1.5mg/mL~2mg/mL、約2mg/mL~2.5mg/mL、約2.5mg/mL~3mg/mL、約3mg/mL~3.5mg/mL、約3.5mg/mL~4mg/mL、約4mg/mL~4.5mg/mL、約4.5mg/mL~5mg/mL、約0.1mg/mL~1mg/mL、約1mg/mL~2mg/mL、約2mg/mL~3mg/mL、約3mg/mL~4mg/mL、約4mg/mL~5mg/mL、約5mg/mL~10mg/mL、約10mg/mL~15mg/mL、約15mg/mL~20mg/mL、約20mg/mL~30mg/mL、約30mg/mL~40mg/mL、約40mg/mL~50mg/mL、約50mg/mL~100mg/mL、約100mg/mL~150mg/mL、約150mg/mL~200mg/mL、約200mg/mL~250mg/mL、約250mg/mL~300mg/mL、約0.1mg/mL~2mg/mL、約0.5mg/mL~2mg/mL、約50mg/mL~150mg/mL、約150mg/mL~200mg/mL、又は200mg/mL~300mg/mLの濃度を有する。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドの濃度は約0.5mg/mLである。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドは、約50mg/mL超、約150mg/mL超、約200mg/mL超、約250mg/mL超又は約300mg/mL超の濃度を有する。いくつかの実施形態では、液体製剤は、ポリペプチドの濃度を約1~5倍、約5~10倍、約10~15倍、約15~20倍、約20~30倍、約30~40倍、約40~50倍、約50~100倍、約100~150倍、約150~200倍、約200~300倍、約300~400倍、約400~500倍、約500~600倍、約600~700倍、約700~800倍、約800~900倍、約900~1000倍、約1000~1500倍、約1500~2000倍、約2000~2500倍、約2500~3000倍、又は約3000~5000倍減少させるために希釈され得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、液体製剤は、輸液で希釈される。いくつかの実施形態では、輸液としては、デキストロース含有溶液、乳酸リンゲル液、生理食塩水、半生理食塩水又は緩衝生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、生理食塩水(約0.9%(w:v))である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は等張性生理食塩水である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、リン酸緩衝生理食塩水又はクレブス-リンガー液を含むがこれらに限定されない緩衝生理食塩水である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、被験体由来の血液と等張であるか、又はほぼ等張である。生理食塩水は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、又は塩化カルシウム等の塩を含む。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、リン酸緩衝液(リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム等)、炭酸ナトリウム、又はHEPES等の1つ以上の緩衝液を含む。緩衝食塩水を使用する場合、特にその安定性がpH依存性である場合、pHはポリペプチドの治療有効性を最適化する範囲に維持される。
【0138】
A.凍結乾燥製剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の液体製剤は、再構成凍結乾燥製剤として調製されてもよい。本明細書に記載のポリペプチドを凍結乾燥し、次いで再構成して液体製剤を製造することができる。いくつかの実施形態では、上記の目的のタンパク質の調製後、「凍結乾燥前製剤」が作製される。いくつかの実施形態では、再構成製剤中のポリペプチド濃度は、予備凍結乾燥製剤中よりも高い。いくつかの実施形態では、再構成製剤中のポリペプチド濃度は、予備凍結乾燥製剤中よりも低い。予備凍結乾燥液体製剤及び再構成液体製剤中に存在するポリペプチドの濃度は、所望の用量体積、投与様式等を考慮して決定される。
【0139】
1.凍結乾燥製剤の調製。
凍結乾燥製剤を調製する場合、製剤化されるタンパク質は一般に溶液中に存在する。例えば、本発明の高イオン強度低粘度製剤において、タンパク質は、約4~8、好ましくは約5~7のpHのpH緩衝液中に存在し得る。緩衝液の濃度は、例えば、緩衝液及び製剤の(例えば、再構成された製剤の)所望の張度に応じて、約1mM~約20mM、あるいは約3mM~約15mMであり得る。例示的な緩衝液及び/又は塩は、薬学的に許容され得、適切な酸、塩基及びそれらの塩、例えば「薬学的に許容され得る」酸、塩基又は緩衝液の下で定義されるものから作製され得るものである。
【0140】
いくつかの実施形態では、凍結保護剤が予備凍結乾燥製剤に添加される。凍結乾燥前製剤中の凍結乾燥保護剤の量は、一般に、再構成時に得られる製剤が等張になるような量である。しかしながら、高張性再構成製剤も好適であり得る。さらに、凍結乾燥保護剤の量は、凍結乾燥時にタンパク質が許容できない量の分解/凝集が起こるほどに低すぎてはならない。しかしながら、凍結乾燥前製剤中の例示的な凍結乾燥保護剤濃度は、約10mM~約400mM、あるいは約30mM~約300mM、あるいは約50mM~約100mMである。例示的な凍結乾燥保護剤には、糖及び糖アルコール、例えばスクロース、マンノース、トレハロース、グルコース、ソルビトール、及びマンニトールが含まれる。しかしながら、特定の状況下では、ある特定の凍結乾燥保護剤も製剤の粘度の増加に寄与し得る。したがって、この効果を最小化又は中和する特定の凍結乾燥保護剤を選択するように注意すべきである。更なる凍結乾燥保護剤は、本明細書において「薬学的に許容され得る糖」とも呼ばれる「凍結乾燥保護剤」の定義の下で上に記載されている。
【0141】
凍結乾燥保護剤に対するタンパク質の比は、それぞれの特定のタンパク質又は抗体と凍結乾燥保護剤との組合せごとに異なり得る。選択されるタンパク質としての抗体及び高タンパク質濃度を有する等張性再構成製剤を生成するための凍結乾燥保護剤としての糖(例えば、スクロース又はトレハロース)の場合、抗体に対する凍結乾燥保護剤のモル比は、抗体1モルに対して約100~約1500モルの凍結乾燥保護剤、又は抗体1モルに対して約200~約1000モルの凍結乾燥保護剤、例えば抗体1モルに対して約200~約600モルの凍結乾燥保護剤であり得る。
【0142】
本明細書における製剤は、必要に応じて、治療される特定の適応症のための1つよりも多くのタンパク質、例えば、他のタンパク質に悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。例えば、所望の標的(例えば、受容体又は抗原)に結合する2種以上の抗体を単一の製剤で提供することが望ましい場合がある。このようなタンパク質は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0143】
in vivo投与に使用される製剤は、滅菌されなければならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。あるいは、混合物全体の無菌性は、例えば、タンパク質を除く成分を約120℃で約30分間オートクレーブすることによって達成され得る。
【0144】
タンパク質、任意要素の凍結保護剤及び他の任意要素の成分を一緒に混合した後、製剤を凍結乾燥する。この目的のために、Hull50(商標)(Hull、米国)又はGT20(商標)(Leybold-Heraeus、ドイツ)凍結乾燥機等の多くの異なる凍結乾燥機が利用可能である。凍結乾燥は、製剤を凍結し、続いて一次乾燥に適した温度で凍結物から氷を昇華させることによって達成される。この条件下では、生成物の温度は、共晶点又は製剤の崩壊温度より低い。典型的には、一次乾燥のための保存温度は、典型的には約50~250mTorrの範囲の適切な圧力で約-30~25℃の範囲である(但し、生成物が一次乾燥中に凍結したままであることを条件とする)。試料を保持する容器(例えば、ガラスバイアル)の製剤、サイズ及び種類、並びに液体の体積は、乾燥に必要な時間を主に決定し、これは数時間から数日(例えば、40~60時間)の範囲であり得る。任意に、生成物中の所望の残留水分レベルに応じて、二次乾燥段階を実施することもできる。二次乾燥が実施される温度は、主に容器の種類及びサイズ並びに用いられるタンパク質の種類に応じて、約0~40℃の範囲である。例えば、凍結乾燥の水除去段階全体にわたる保存温度は、約15~30℃(例えば、約20℃)であり得る。二次乾燥に必要な時間及び圧力は、例えば温度及び他のパラメータに依存して、適切な凍結乾燥ケーキを生成する時間及び圧力である。二次乾燥の時間は、生成物中の所望の残留水分レベルによって決定され、典型的には少なくとも約5時間(例えば、10~15時間)かかる。圧力は、一次乾燥工程中に用いられる圧力と同じであってもよい。凍結乾燥条件は、製剤及びバイアルサイズに応じて変えることができる。
【0145】
2.凍結乾燥製剤の再構成。
患者への投与前に、凍結乾燥製剤は、再構成製剤中のタンパク質濃度が少なくとも約50mg/mL、例えば約50mg/mL~約400mg/mL、あるいは約80mg/mL~約300mg/mL、あるいは約90mg/mL~約150mg/mLであるように、薬学的に許容され得る希釈剤で再構成される。再構成製剤中のそのような高いタンパク質濃度は、再構成製剤の皮下送達が意図される場合に特に有用であると考えられる。しかしながら、静脈内投与等の他の投与経路では、再構成製剤中のタンパク質のより低い濃度が望ましい場合がある(例えば、再構成製剤中の約0.1~2mg/mL、約2~10mg/mL、又は約10~50mg/mLのタンパク質)。ある特定の実施形態では、再構成製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前製剤中のタンパク質濃度よりも有意に高い。ある特定の実施形態では、再構成製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前製剤中のタンパク質濃度よりも有意に低い。
【0146】
再構成は、一般に、完全な水和を確実にするために約25℃の温度で行われるが、必要に応じて他の温度を用いてもよい。再構成に必要な時間は、例えば、希釈剤の種類、賦形剤(複数可)及びタンパク質の量に依存する。例示的な希釈剤には、滅菌水、注射用の静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌食塩水溶液、リンゲル液、又はデキストロース溶液が含まれる。希釈剤は、任意に保存剤を含有する。例示的な保存剤が上に記載されており、芳香族アルコール、例えばベンジル又はフェノールアルコールが好ましい保存剤である。用いられる保存剤の量は、タンパク質との適合性及び保存効力試験のために異なる保存剤濃度を評価することによって決定される。例えば、保存剤が芳香族アルコール(ベンジルアルコール等)である場合、約0.1~2.0%、又は約0.5~1.5%、又は約1.0~1.2%の量で存在することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、再構成された液体製剤を含むがこれに限定されない液体製剤は、凝集体を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、液体製剤(再構成された液体製剤が含まれるが、これに限定されない)は、遊離脂肪酸粒子形成が少ない。
【0148】
III.液体製剤の作製方法
また、ここでは、水溶液にポリペプチド及び界面活性剤を添加することを含む液体製剤を作製する方法も提供され、界面活性剤はポリソルベートの1つ以上の成分を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、界面活性剤はイソソルビドPOE脂肪酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はPOE脂肪酸エステルを更に含む。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルは、独立して、約5~30のPOE単位を有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルは、独立して、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から独立して選択される脂肪酸鎖を有する。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは式(I)の化合物である。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%(重量%)がイソソルビドPOE脂肪酸エステル及びPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、イソソルビドPOE脂肪酸エステルは、イソソルビドPOEモノカプロエート、イソソルビドPOEモノカプリレート、イソソルビドPOEモノカプレート、イソソルビドPOEモノラウレート、イソソルビドPOEモノミリステート、イソソルビドPOEモノパルミテート、イソソルビドPOEモノパルミトレエート、イソソルビドPOEモノステアレート、イソソルビドPOEモノオレエート、イソソルビドPOEモノリノレエート、イソソルビドPOEモノリノレネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、POE脂肪酸エステルは、POEモノカプロエート、POEモノカプリレート、POEモノカプレート、POEモノラウレート、POEモノミリステート、POEモノパルミテート、POEモノパルミトレエート、POEモノステアレート、POEモノオレエート、POEモノリノレエート、POEモノリノレネート、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノラウレート及びPOEモノラウレートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノパルミテート及びPOEモノパルミテートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノミリステート及びPOEモノミリステートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノオレエート及びPOEモノオエレートを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、イソソルビドPOEモノリノレエート及びPOEモノリノレエートを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、界面活性剤はソルビタンPOE脂肪酸エステルを更に含む。いくつかの実施形態では、ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、独立して、置換されていてもよいC4-28アルキル及び置換されていてもよいC4-28アルケニルからなる群から独立して選択される脂肪酸鎖を有する。いくつかの実施形態では、ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、式(II)の化合物である。いくつかの実施形態では、界面活性剤の約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも1%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも5%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも10%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。いくつかの実施形態では、界面活性剤の少なくとも15%(重量%)がソルビタンPOE脂肪酸エステルである。
【0151】
いくつかの実施形態では、各ソルビタンPOE脂肪酸エステルは、ソルビタンPOEモノカプロエート、ソルビタンPOEモノカプリレート、ソルビタンPOEモノカプレート、ソルビタンPOEモノラウレート、ソルビタンPOEモノミリステート、ソルビタンPOEモノパルミテート、ソルビタンPOEモノパルミトレエート、ソルビタンPOEモノステアレート、ソルビタンPOEモノオエレート、ソルビタンPOEモノリノレエート、ソルビタンPOEモノリノレネート、ソルビタンPOEジカプロエート、ソルビタンPOEジカプリレート、ソルビタンPOEジカプレート、ソルビタンPOEジラウレート、ソルビタンPOEジミリステート、ソルビタンPOEジパルミテート、ソルビタンPOEジパルミトレエート、ソルビタンPOEジステアレート、ソルビタンPOEジオエレート、ソルビタンPOEジリノレエート、ソルビタンPOEジリノレネート、ソルビタンPOEトリカプロエート、ソルビタンPOEトリカプリレート、ソルビタンPOEトリカプレート、ソルビタンPOEトリラウレート、ソルビタンPOEトリミリステート、ソルビタンPOEトリパルミテート、ソルビタンPOEトリパルミトレート、ソルビタンPOEトリステアレート、ソルビタンPOEトリオエレート、ソルビタンPOEトリリノレエート、及びソルビタンPOEトリリノレネートからなる群から独立して選択される。
【0152】
本明細書に記載の任意の界面活性剤を、液体製剤を作製する方法において使用することができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、液体製剤中の界面活性剤は、液体製剤の約0.0005%~0.2%、約0.0005%~0.001%、約0.001%~0.002%、約0.002%~0.003%、約0.003%~0.004%、約0.004%~0.005%、約0.005%~0.006%、約0.006%~0.007%、約0.007%~0.008%、約0.008%~0.009%、約0.009%~0.01%、約0.01%~0.015%、約0.015%~0.02%、約0.02%~0.025%、約0.025%~0.03%、約0.03%~0.035%、約0.035%~0.04%、約0.04%~0.045%、約0.045%~0.05%、約0.05%~0.055%、約0.055%~0.06%、約0.06%~0.065%、約0.065%~0.07%、約0.07%~0.075%、約0.075%~0.08%、約0.08%~0.085%、約0.085%~0.09%、約0.09%~0.095%、約0.095%~0.1%、約0.1%~0.11%、約0.11%~0.12%、約0.12%~0.13%、約0.13%~0.14%、約0.14%~0.15%、約0.15%~0.16%、約0.16%~0.17%、約0.17%~0.18%、約0.18%~0.19%、約0.19%~0.2%、約0.0005%~0.01%、約0.01%~0.02%、約0.02%~0.03%、約0.03%~0.04%、約0.04%~0.05%、約0.05%~0.06%、約0.06%~0.07%、約0.07%~0.08%、約0.08%~0.09%、約0.09%~0.1%、約0.1%~0.12%、約0.12%~0.14%、約0.14%~0.16%、約0.16%~0.18%、約0.18%~0.2%、又は約0.0005%~0.02%(w:v)の濃度を有する。
【0154】
液体製剤中のポリペプチドの濃度は、保存構成及び所望の投与経路(例えば、皮下、筋肉内又は硝子体内投与、静脈内注射又は点滴等)に基づいて変化し得る。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドは、約0.1mg/mL~300mg/mL、約0.1mg/mL~0.5mg/mL、約0.5mg/mL~1mg/mL、約1mg/mL~1.5mg/mL、約1.5mg/mL~2mg/mL、約2mg/mL~2.5mg/mL、約2.5mg/mL~3mg/mL、約3mg/mL~3.5mg/mL、約3.5mg/mL~4mg/mL、約4mg/mL~4.5mg/mL、約4.5mg/mL~5mg/mL、約0.1mg/mL~1mg/mL、約1mg/mL~2mg/mL、約2mg/mL~3mg/mL、約3mg/mL~4mg/mL、約4mg/mL~5mg/mL、約5mg/mL~10mg/mL、約10mg/mL~15mg/mL、約15mg/mL~20mg/mL、約20mg/mL~30mg/mL、約30mg/mL~40mg/mL、約40mg/mL~50mg/mL、約50mg/mL~100mg/mL、約100mg/mL~150mg/mL、約150mg/mL~200mg/mL、約200mg/mL~250mg/mL、約250mg/mL~300mg/mL、約0.1mg/mL~2mg/mL、約0.5mg/mL~2mg/mL、約50mg/mL~150mg、約150mg/mL~200mg/mL、又は200mg/mL~300mg/mLの濃度を有する。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドの濃度は約0.5mg/mLである。いくつかの実施形態では、液体製剤中のポリペプチドは、約50mg/mL超、約150mg/mL超、約200mg/mL超、約250mg/mL超又は約300mg/mL超の濃度を有する。
【0155】
いくつかの実施形態では、上記方法は、ポリペプチドの濃度を約1~5倍、約5~10倍、約10~15倍、約15~20倍、約20~30倍、約30~40倍、約40~50倍、約50~100倍、約100~150倍、約150~200倍、約200~300倍、約300~400倍、約400~500倍、約500~600倍、約600~700倍、約700~800倍、約800~900倍、約900~1000倍、約1000~1500倍、約1500~2000倍、約2000~2500倍、約2500~3000倍又は約3000~5000倍減少させるために液体製剤を希釈することを更に含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、液体製剤を輸液で希釈することを更に含む。いくつかの実施形態では、輸液としては、デキストロース含有溶液、乳酸リンゲル液、生理食塩水、又は緩衝生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、生理食塩水(約0.9%(w:v))である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は等張性生理食塩水である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、リン酸緩衝生理食塩水又はクレブス-リンガー液を含むがこれらに限定されない緩衝生理食塩水である。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、被験体由来の血液と等張であるか、又はほぼ等張である。生理食塩水は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、又は塩化カルシウム等の塩を含む。いくつかの実施形態では、生理食塩水は、リン酸緩衝液(リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム等)、炭酸ナトリウム、又はHEPES等の1つ以上の緩衝液を含む。緩衝食塩水を使用する場合、特にその安定性がpH依存性である場合、pHはポリペプチドの治療有効性を最適化する範囲に維持される。いくつかの実施形態では、液体製剤は、被験体への投与前に希釈される。
【0156】
液体製剤が凍結乾燥製剤を再構成することによって調製される場合、再構成は一般に、完全な水和を保証するために約25℃の温度で行われるが、所望に応じて他の温度を使用してもよい。再構成に必要な時間は、例えば、希釈剤の種類、賦形剤(複数可)及びポリペプチドの量に依存する。例示的な希釈剤には、滅菌水、注射用の静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌食塩水溶液、リンゲル液、又はデキストロース溶液が含まれる。希釈剤は、任意に保存剤を含有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、上記方法で使用されるポリペプチドは抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、ポリ特異性抗体、キメラ抗体又はヘテロコンジュゲート抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片及び全抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)及びFv断片からなる群から選択される。
【0158】
別の態様では、上記方法を使用して、本明細書に記載の任意の液体製剤を作製することができる。
【0159】
IV.製造品
ここでは、液体製剤を封入する容器を含む製造品が提供され、液体製剤はポリペプチド及び界面活性剤を含み、界面活性剤はポリソルベートの1つ以上の成分を含む。
【0160】
製造品は容器を含む。適切な容器としては、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(例えば、シングルチャンバーシリンジ又はデュアルチャンバーシリンジ)、試験管、及び静脈内治療(IV)バッグが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、IVバッグは輸液を含む。いくつかの実施形態では、輸液としては、デキストロース含有溶液、乳酸リンゲル液、生理食塩水、又は緩衝生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。容器は、ガラス、金属合金(例えば、ステンレス鋼)、又はプラスチック等の様々な材料から形成されてもよい。液体製剤を保持する容器上にあるか又はそれに付随するラベルは、再構成及び/又は使用のための指示を示し得る。いくつかの実施形態では、ラベルは、製剤が皮下投与に有用であるか、又は皮下投与を意図していることを更に示し得る。いくつかの実施形態では、標識は、製剤が静脈内投与(例えば、ボーラスとして、又は一定期間にわたる連続注入によって、筋肉内、腹腔内、脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、又は髄腔内投与によって)に有用であるか又は意図されていることを更に示し得る。いくつかの実施形態では、ラベルは、形成が硝子体内投与に有用であるか、又は硝子体内投与を意図していることを更に示し得る。製剤を保持する容器は、液体製剤の反復投与(例えば、2~6回の投与)を可能にする多用途バイアルであり得る。いくつかの実施形態では、製造品は、約0.1mg/mL~約300mg/mLの濃度のポリペプチドを含む。製造品は、適切な希釈剤(例えば、水、製剤緩衝液、界面活性剤溶液及び輸液、例えばデキストロース含有溶液、生理食塩水、乳酸加リンゲル液及びBWFI)を含む第2の容器を更に含んでもよい。希釈剤と液体製剤とを混合すると、希釈製剤中の最終タンパク質濃度は一般に少なくとも0.001mg/mLになる。いくつかの実施形態では、希釈剤を凍結乾燥製剤と混合して再構成液体製剤を形成する。いくつかの実施形態では、再構成された液体製剤を含む液体製剤中の最終タンパク質濃度は、約0.5mg/mL~約2mg/mLである。製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、及び使用に関する指示を有する添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの態様では、製造品は、静脈内投与のためのシリンジ若しくは機器、及び/又は投与のための凍結乾燥組成物を調製するための滅菌緩衝液を含有する。
【0161】
別の態様では、製造品は、本明細書に記載の任意の液体製剤を含有し得る。別の態様では、製造品は、本明細書に記載の任意の作製方法に従って調製される液体製剤を含有し得る。
【0162】
V.液体製剤を使用する医薬品及び治療方法
有効量の本明細書に記載の液体製剤を、それを必要とする被験体に投与することを含む、対象の疾患又は障害を治療する方法も本明細書で提供される。液体製剤中のポリペプチドによる治療を必要とする患者を治療するための医薬の調製における本明細書に記載の液体製剤の使用も本明細書で提供される。液体製剤中のポリペプチドによる治療を必要とする被験体の疾患又は障害を治療するための本明細書に記載の液体製剤も提供される。有効量の液体製剤を患者に投与することを含む、患者を治療するための本明細書に記載の液体製剤も提供される。
【0163】
製剤中の抗体がHER2に結合する場合、懸濁製剤を使用して癌を治療することができる。癌は、一般に、本明細書のHER2抗体が癌細胞に結合することができるように、HER2発現細胞を含む。したがって、この実施形態における本発明は、対象におけるHER2発現癌を治療する方法であって、癌を治療するのに有効な量でHER2抗体薬学製剤を被験体に投与することを含む方法に関する。HER2抗体(例えば、トラスツズマブ又はペルツズマブ)で本明細書において治療される例示的な癌は、HER2陽性乳癌又は胃癌である。
【0164】
製剤中の抗体がCD20等のB細胞表面マーカーに結合する場合、製剤は、NHL若しくはCLL等のB細胞悪性腫瘍、又は自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ又は血管炎)を治療するために使用され得る。
【0165】
製剤中の抗体がVEGF(例えば、ベバシズマブ)に結合する場合、製剤は、血管新生を阻害するため、癌(例えば、結腸直腸、非小細胞肺(NSCL)、神経膠芽腫、乳癌及び腎細胞癌)を治療するため、又は加齢黄斑変性症(AMD)若しくは黄斑浮腫を治療するために使用され得る。
【0166】
適応症が癌である場合、患者は、懸濁製剤と化学療法剤との組合せで治療され得る。併用投与は、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する共投与又は同時投与、及びいずれかの順での連続投与を含み、両方(又は全て)の活性薬剤がそれらの生物学的活性を同時にもたらす期間が存在する。したがって、化学療法剤は、組成物の投与の前又はそれに続いて投与され得る。この実施形態では、化学療法剤の少なくとも1回の投与と製剤の少なくとも1回の投与との間のタイミングは、およそ1ヶ月以下、又はおよそ2週間以下である。あるいは、化学療法剤及び製剤は、単一の製剤又は別個の製剤で患者に同時に投与される。
【0167】
懸濁製剤による治療は、疾患又は障害の徴候又は症状の改善をもたらすであろう。さらに、化学療法剤と抗体製剤との組合せによる治療は、患者に対して相乗的な、又は相加的な治療上の利益をもたらし得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される液体製剤は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される液体製剤は、投与が少なくとも約30分又はそれを超えて行われるように制御された投与速度で静脈内注射によって投与される。投与される投与スケジュール及び実際の投与量は、感染の性質及び重症度、患者の年齢、体重及び全般的な健康状態、並びに治療される疾患又は障害等の要因に応じて異なり得、医療従事者にとって確認可能である。液体製剤は、一度に、又は一連の治療にわたって被験体に好適に投与される。疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kg~50mg/kg(例えば、0.1~20mg/kg)の抗体は、例えば、1回以上の別個の投与によるかどうかにかかわらず、患者への投与のための初期候補投与量である。抗体の投与量は、一般に、約0.05mg/kg~約l0mg/kgである。したがって、化学療法剤が投与される場合、通常、既知の投薬量で投与されるか、又は薬物の複合作用若しくは化学療法剤の投与に起因する負の副作用のために、任意に低減される。
【実施例0169】
以下の実施例は、発明を例示するために供与されるのであって、限定するものではない。当業者は、以下の手順が当業者に公知の方法を使用して修正され得ることを認識するであろう。
【0170】
材料:
モノクローナル抗体A~Dは、Genentech,Inc.(米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)によって製造された。約99%のラウリン酸エステルを含有するポリソルベート20は、BASF SE(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)によって合成された。約98%のオレイン酸エステルを含有するポリソルベート80 HX2超純度グレードは、NOF America Corp.(カリフォルニア州アーバイン)によって合成された。全てのポリソルベートサンプルは、使用しない場合、2~8℃で窒素オーバーレイを用いて保存した。アセトニトリル及びメタノール(HPLCグレード)を、Avantor Performance Materials,Inc.(ニュージャージー州ピリプスブルク)から購入した。
【0171】
実施例1 ポリソルベート分画及び分析
ポリソルベート分画
ポリソルベート(PS)の分画を、Gilson PLC-2050 Prep HPLCシステムを使用して行った。全てのPSサンプルについて、2グラムのポリソルベート20(PS20)又はポリソルベート80(PS80)を8mLの>18MΩcm水に溶解し、Waters X-Bridge BEH C4カラム(30×100mm)に注入した。次いで、>18MΩ・cmの水(移動相A)及びアセトニトリル(移動相B)の勾配を用いて試料を分画した。勾配条件は以下の通りであった:0.0~3.0分、5%B;3.0~20.0分、5~100%B;20.0~27.0分、100%B;27~27.1分、100~5%B;27.1~30.0分、5%B。流速は40mL/分であり、総運転時間は30分であった。25mLの画分を実行中に回収した。次いで、これらの画分を、後続の段落に記載される帯電エアロゾル検出を伴う逆相超高速液体クロマトグラフィー法(RP-UHPLC-CAD)を使用して分析した。分析後、画分をプールし、ロータリーエバポレーターを用いて乾燥させた。
【0172】
ポリソルベート画分純度分析
Thermo Corona Ultra CAD検出器を備えたWaters Acquity UPLC H-Classシステムを使用して、分画PS試料をプール及び純度について評価した。使用したカラムは、Waters Acquity BEH C8カラム(2.1×50mm、120Å、及び粒径2.5μm)であった。勾配は以下の通りであった:0.0~0.5分、5%B;0.5~5.0分、5~100%B;5.0~6.0分、100%B;6.0~6.1分、100~5%B;6.1~8.0分、5%B。CADを、10Hzでのデータ収集及び30℃でのネブライザー温度で行った。
【0173】
結果
PS20及びPS80の画分を精製し、ロータリーエバポレーターで乾燥させた。RP-UHPLC-CADによって決定されるそれらの相対純度を以下の表1に示す。3つの画分を精製し、各PSタイプから分析した。PS20の場合、これらの画分は以下の通りであった:POE-ソルビタンモノラウレート(「画分1又はF1a」)、POE-イソソルビドモノラウレート及びPOEモノラウレート(N約10)(「画分2又はF2a」)、及びPOE-ソルビタンジラウレート(「画分3又はF3a」)。PS80の場合、画分は以下の通りであった:POE-ソルビタンモノオレエート(「画分1又はF1b」)、POE-イソソルビドモノオレエート及びPOEモノオレエート(N約10)(「画分2又はF2b」)、及びPOE-ソルビタンジオレエート(「画分3又はF3b」)。各画分の同一性をLC-MS分析により確認した。逆相UHPLC-CAD分析により、ポリソルベートエステル画分の最も疎水性の高いものはF3であり、次いでF2、次いでF1が最も疎水性が低いことが確認された(図1A及び1B)。
【表1】
【0174】
実施例2 臨界ミセル濃度(CMC)決定
精製PS画分を、蛍光色素N-フェニルナフタレン-1-アミン(NPN)を使用して、それらの臨界ミセル濃度(CMC)について評価した。このアッセイを、0.15M塩化ナトリウム、0.05M TRIS、5%ACN、5μM N-フェニル-1-ナフチルアミン及び15ppm Brij35で構成される希釈剤にpH8.0で2倍連続希釈を行うことによって実施した。350nmで励起し、420nmで発光するMolecular Devices Spectramax M5蛍光プレートリーダーでサンプルを直ちに分析した。
【0175】
PS20の場合、CMCの増加の順序は、疎水性の順序と一致して、F3a>F2a>F1aであった。CMCは広く分離されており、F1aについては約0.1重量%、F2aについては約0.015重量%、F3aについては約0.001重量%であり、これはベースラインからのおよそ500蛍光単位の変化に対応する(図2A)。対照的に、PS80エステルCMCは同様の順序を有していたが、値の範囲ははるかに狭く、わずか0.001~0.003重量%に及んだ(図2B)。
【0176】
実施例3 分画PSサンプルの表面活性
PSの精製画分の表面活性を、粗面化白金Wilhemyプレートを使用してKruess(ドイツ国ハンブルグ)K100 Force Tensiometerを使用して決定した。蒸発を防ぐため、70%超の相対湿度で室温(20~25℃)でサンプルを測定した。試験前に、PS20の精製画分をそれぞれ精製水に0.2mg/mLまで溶解した。気泡を導入しないように特に注意して、3ミリリットルのサンプルをサンプルホルダーに入れた。各サンプルの表面張力の変化を、60分で平衡になるまで、毎秒一回測定した。PS80分析についても同じ手順に従った。
【0177】
表面張力の結果は、平衡時に、0.02重量%の同じ濃度では、PS20 F3a及びF2a画分は、疎水性の低いF1a画分よりも表面張力を低下させるのに顕著に有効であることを示した(図3A)。PS80 F1b~F3b画分についても同様の傾向が見られる(図3B)。興味深いことに、PS20画分F3aの表面張力はF2aとほぼ同じであり、PS80画分F3bの表面張力もF2bと同様である。さらに、全てのエステル画分を含有する未分画PS20は、F3a又はF2a画分よりも表面張力を更に低下させた(図3A)。対照的に、未分画PS80は、そのF1b画分とF3b画分との間の表面張力を示した(図3B)。
【0178】
実施例4 ミセル径の動的光散乱
Malvern(マサチューセッツ州ウェストボロー)Zetasizer Nano instrumentで動的光散乱(DLS)を行った。測定を、各画分のCMCを超えるように、各画分サンプルを水中で10mg/mLの最終濃度に希釈することによって行った。
【0179】
動的光散乱(DLS)を使用し、また研究した全てのエステル画分のCMCをはるかに超える1重量%の画分濃度を使用して、ミセル半径又は流体力学半径(R)を得た。PS 20については、未分画PS20のRは約4nmであり、F2a及びF3a画分は約3.9nmであった。F1aモノエステルのRは、3.5 nm付近とやや小さい(図4A)。PS80の場合、ミセル径は、Rが4.5nm付近で類似しているF2b画分及びF3b画分と比較して、未分画PS80サンプル(R約4.8nm)についても同様に少し大きくなった。F1 aと同様に、F1bのRはPS80サンプルセットで最も小さいが、R約4.3nmではそれほど大きくない(図4B)。
【0180】
実施例5 撹拌保護研究
撹拌研究を使用して表面誘起凝集を防止する能力について、精製画分を試験した。mAbAを0.9%生理食塩水で0.5mg/mLに希釈し、これは10mLのPETGバイアルにおいてPS20画分(F1a、F2a及びF3a 0.0001%~0.01%、w:v)のそれぞれを様々な量で含んだ。これらのバイアルをオービタルシェーカー上で180RPMにて周囲温度で2時間撹拌した。撹拌後、倍率10倍及び回転のBosch APKシステムを用いて試料を観察した。
【0181】
撹拌研究中、F2aは、撹拌時に目に見える粒子形成から保護するために最低濃度を必要とし、F1aが最も必要とすることが観察された。F3a及び全ラウレートPS20は、同様の結果をもたらした(図5)。F2aは、より高いCMC及びF3a及び全てのラウレートPS20に匹敵する平衡表面張力の影響を有したが、撹拌応力及び粒子形成に対してmAbを最も保護した。
【0182】
実施例6 IVバッグ撹拌モデル研究
撹拌研究を使用して表面誘起凝集を防止する能力について、精製画分を試験した。mAbB及びmAbCを0.9%生理食塩水の緩衝液で0.5 mg/mLに希釈し、これは5mLのPETGバイアルにおいてPS20画分(F1a、F2a及びF3a 0.0001%~0.01%、w/v)のそれぞれを様々な量で含んだ。これらのサンプルをオービタルシェーカー上で180RPMにて周囲温度で2時間撹拌した。撹拌後、倍率10倍及び回転のBosch APKシステムを用いて試料を観察した。試料をHIAC(高精度流体粒子計数)に供して製剤中のSVP(サブビジブル粒子)を定量し、SEC-HPLC(サイズ排除高速液体クロマトグラフィー)に供して製剤中のHMWF(高分子量画分)及び活性抗体の濃度を定量した。SEC及びIECは、バイナリポンプ及びダイオードアレイ検出器を備えたAgilent 1260 HPLCで行った。サブビジブル粒子測定は、Royco製のHIAC 9703+Pharmaceutical Particle Counterで行った。
【0183】
観察結果は、試験した全ての画分がmAbB(図6A)及びmAbC(図6B)を保護することを示唆した。mAb B(図7A)及びmAbC(図7B)についてのHIACの結果は、全ての画分がサブビジブル粒子の数を減少させることができることを示し、より低いレベルの凝集を示した。F2aは、凝集レベルを低下させる点でHP又は全てのラウレートPS20と同程度に良好又はより良好である。SEC-HPLCアッセイの結果は、撹拌中に全ての画分が%HMWFを低下させ(図8A及び図8B)、mAbB(図8A及び図9A)とmAbC(図8B及び図9B)の両方の抗体製剤の可溶性画分図9A及び図9B)をより良好に保存したことを示した。F2aは、より低い界面活性剤濃度(図8A図8B図9A、及び図9B)で特に効果的である。全ての界面活性剤がタンパク質の分解の緩和に成功した。
【0184】
実施例7 安定性研究
製剤の長期安定性を、タンパク質mAbC及びmAbD(それぞれ30mg/mL)を含むPS20及びF2a(それぞれ0.02% w/v)の製剤について試験した。製剤を5℃、25℃、及び40℃で保存し、様々な間隔で目視検査(APK)、HIAC、及びSEC-HPLCに供した。PS20及びF2aの製剤も5℃、25℃及び40℃でIECに供した。
【0185】
40℃で保存した製剤の目視検査により、両方の界面活性剤が、mAb C(図10A)及びmAbD(図10B)の両方の製剤における粒子形成の制限に40℃で最大1ヶ月間有効であることが示された。
【0186】
40℃で保存した製剤についてのHIACの結果は、両方の界面活性剤が、最大一ヶ月間保存した場合でさえ、40℃でmAbC(図11A)及びmAbD(図11B)の両方の製剤中におけるサブビジブル粒子の形成を制限するのに有効であることを示した。
【0187】
40℃で保存した製剤のSEC-HPLC結果は、両方の界面活性剤がmAbC(図12A)とmAbD(図12B)の両方の製剤における凝集の制限に有効であることを示した。SECの結果はまた、両方の界面活性剤が、mAbC(図13A)及びmAbD(図13B)の両方の製剤中の活性抗体の濃度を40℃で最大1ヶ月間維持するのに有効であることを示した。
【0188】
40℃で保存した製剤のIECデータは、両方の界面活性剤がmAbCの分解を制限し、40℃で1ヶ月間(図14)同様の有効性を示すことを示した。
【0189】
25℃で保存した製剤の目視検査データは、両方の界面活性剤がmAbC(図15A)及びmAbD(図15B)の製剤において最大3ヶ月間凝集を制限するのに有効であることを示した。
【0190】
25℃で保存した製剤についてのHIACの結果は、両方の界面活性剤が、最大3ヶ月間保存した場合でさえ、25℃でmAbC(図16A)及びmAbD(図16B)の両方の製剤中におけるサブビジブル粒子の形成を制限するのに有効であることを示した。
【0191】
25℃で保存した製剤のSEC-HPLC結果は、両方の界面活性剤が(図17A)及びmAbD(図17B)の両方の製剤における凝集の制限に有効であることを示した。SECの結果はまた、両方の界面活性剤が、mAbC(図18A)及びmAbD(図18B)の両方の製剤中の活性抗体の濃度を25℃で最大3ヶ月間維持するのに有効であることを示した。
【0192】
25℃で保存した製剤のIECデータは、両方の界面活性剤が25℃で3ヶ月間(図19)同様の有効性でmAbCの分解を制限することを示した。
【0193】
5℃で保存した製剤の目視検査データは、両方の界面活性剤がmAbC(図20A)及びmAbD(図20B)の製剤において最大3ヶ月間凝集を防止するのに有効であることを示した。
【0194】
5℃で保存した製剤についてのHIACの結果は、両方の界面活性剤が、最大3ヶ月間保存した場合でさえ、5℃でmAbC(図21A)及びmAbD(図21B)の両方の製剤中におけるサブビジブル粒子の形成を制限するのに有効であることを示した。
【0195】
5℃で保存した製剤のSEC-HPLC結果は、両方の界面活性剤がmAbC(図22A)とmAbD(図22B)の両方の製剤における凝集の制限に有効であることを示した。SECの結果はまた、両方の界面活性剤が、mAbC(図23A)及びmAbD(図23B)の両方の製剤中の活性抗体の濃度を5℃で最大3ヶ月間維持するのに有効であることを示した。
【0196】
5℃で保存した製剤のIECデータは、両方の界面活性剤が5℃で3ヶ月間(図24)同様の有効性でmAbCの分解を制限することを示した。
【0197】
実施例8 強制分解研究
PS20及びF2a(それぞれpH=6.0の製剤緩衝液中)をシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)(PCL)由来のリパーゼ酵素により2.5U/mLの濃度で強制分解に供した。得られた混合物をHIACに供して、サブビジブル(sub-visible)粒子及びインタクト界面活性剤の割合を定量した。結果は、F2aが、酵素によるより多くの分解にもかかわらず、より少ないSVPを産生したことを示した(図25)。
【0198】
概要
F2aは、一般的に使用される界面活性剤賦形剤であるPS20と比較した場合、バイオ医薬品に対してより保護的であることが示されている。この界面活性剤は、PS20及びPS80のような従来のポリソルベートの優れた代替物となり得る魅力的な特性を有する。
【0199】
撹拌ストレス研究では、APKを使用して試験した場合、F2aがmAbAの粒子形成からより保護的であることがわかった。別の研究では、F2aは、APKによる粒子試験、HIACによるサブビジブル粒子数、SEC-HPLCによる%HMWF、及びSEC-HPLCによって試験した可溶性抗体の濃度に基づいて、mAbB及びCに対し、F2aとHP PS20との間の撹拌ストレスからの同様の保護を示した。
【0200】
安定性研究において、F2aは、2つのmAbであるmAbC及びmAbDについて、APK及びHIACによる粒子形成の防止においてHP PS20と同様に有効であることが観察された。F2aはまた、5℃、25℃及び40℃での貯蔵に対しmAbC及びmAbDの両方についてSEC-HPLCによるHMWFの防止に関しHP PS20と同様の保護を有していた。
【0201】
強制分解研究では、F2aは、サブビジブル及び可視脂肪酸粒子を形成する前に、HP PS20よりも酵素的に分解され得ることが示された。これは、この種の脂肪酸関連粒子形成を受けにくい界面活性剤としてのF2aに利点をもたらす。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2024-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド及び界面活性剤を含む液体製剤であって、前記界面活性剤の少なくとも約70%(重量%)がイソソルビドポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステルである、液体製剤。
【外国語明細書】