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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023986
(43)【公開日】2025-02-19
(54)【発明の名称】免疫細胞増殖を促進する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20250212BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250212BHJP
   C07K 14/55 20060101ALN20250212BHJP
   C07K 14/525 20060101ALN20250212BHJP
   C07K 14/57 20060101ALN20250212BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20250212BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20250212BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250212BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20250212BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20250212BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/0783
C07K14/55
C07K14/525
C07K14/57
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K16/28
C12N15/867 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024193020
(22)【出願日】2024-11-01
(62)【分割の表示】P 2020550874の分割
【原出願日】2019-03-25
(31)【優先権主張番号】201810251875.7
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520358863
【氏名又は名称】オリセル セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン ユングオ
(72)【発明者】
【氏名】グオ ハオ
(72)【発明者】
【氏名】フー シャオウェン
(72)【発明者】
【氏名】マー ハイリー
(72)【発明者】
【氏名】リー フェイジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン フワジン
(72)【発明者】
【氏名】イン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ファンフォン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】免疫細胞増殖を促進する方法を提供する。
【解決手段】方法は、免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質、またはその断片の発現量を高めるステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、
免疫細胞増殖を促進する方法。
【請求項2】
免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることによって、前記免疫細胞のメモリー免疫細胞への分化を促進するステップを含む、
メモリー免疫細胞産生を促進する方法。
【請求項3】
前記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることによって、前記免疫細胞の分化型免疫細胞への分化を抑制するステップを含む、
免疫細胞分化を抑制する方法。
【請求項4】
前記分化型免疫細胞は、制御性T細胞(Treg)を含有する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、
免疫細胞によるサイトカインの放出を増加させる方法。
【請求項6】
前記サイトカインは、インターロイキン、インターフェロンおよび/または腫瘍壊死因
子を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サイトカインは、IL-2、IL4、IL6、IL7、IL10、IL21、TNF-αおよび/またはIFNγ
を含む、
請求項5~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、
免疫細胞の腫瘍に対する殺傷能を増加する方法。
【請求項9】
腫瘍にかかりやすい被験者に、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が高められた免疫細胞を投与することを含む、
被験者における腫瘍の再発を予防する方法。
【請求項10】
被験者に、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が高められた免疫細胞を投与するステップを含む、
必要のある被験者における腫瘍を治療する方法。
【請求項11】
前記腫瘍は、肝癌、肺癌、白血病および中皮腫から選ばれる、
請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、インビトロもしくはエクスビボ方法である、
請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫細胞は、リンパ細胞を包含する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫細胞は、T細胞を包含する、
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記T細胞は、メモリー幹細胞様T細胞(TSCM)および/またはセントラル記憶T細胞(TCM)を包含する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記TSCMは、CCR7+および/またはCD62L+である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記TSCMは、さらに、CD45RA+あるいはCD45RA-、CD45RO+あるいはCD45RO-、CD27+、CD28+、CD127+、CD122+、CD3+、CD4+およびCD8+の群から選ばれる1種類または多種類の特性
を有する、
請求項15~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)あるいはT細胞受容体(TCR)を発現する遺
伝子改変された免疫細胞を含有する、
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたT細胞を含有する、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記CARは、シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインを含む細胞内領域を含有する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD3δシグナル伝達ドメインおよびCD3εシグナル伝達ドメインの群から選ばれる部分を含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列またはそれと少
なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項20~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記シグナル伝達ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:17で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記共刺激ドメインは、CD27共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメインおよび4-1BB共刺激
ドメインの群から選ばれる部分を含む、
請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記共刺激ドメインは、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:16のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記共刺激ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:15のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有す
る、
請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記CARは、ヒンジ領域を含む、
請求項18~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒンジ領域は、IgG4のヒンジ領域、IgG1のヒンジ領域およびCD8のヒンジ領域の群
から選ばれる部分を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒンジ領域は、SEQ ID NO: 31で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項27~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒンジ領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 32で表される核酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記CARは、膜貫通領域を含む、
請求項18~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記膜貫通領域は、CD8膜貫通領域、CD28膜貫通領域および/またはCD24膜貫通領域の群から選ばれる部分を含む、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記膜貫通領域は、SEQ ID NO: 33で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項31~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記膜貫通領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 34で表される核酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記CARは、標的指向部分を含む、
請求項18~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記標的指向部分は、ScFvを含有する、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記標的指向部分は、腫瘍抗原に特異的に結合および/または認識する、
請求項35~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記標的指向部分は、Bリンパ細胞表面抗原、TNFファミリーメンバー、HERファミリー
メンバーおよびGPCファミリーメンバーの群から選ばれるターゲットに特異的に結合およ
び/または認識する、
請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記標的指向部分は、CD19、BCMA、HER2、MesothelinおよびGPC3の群から選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識する、
請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 46で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 47で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 48で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、CD19に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 43で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 44で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 45で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 49で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 54で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 55で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 56で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、BCMAに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 58で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 51で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 52で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 53で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項44~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 57で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 70で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO:71で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ
ID NO: 72で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、HER2に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 74で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 67で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 68で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 69で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項48~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 73で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 62で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 63で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 64で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、Mesothelinに特異的に結合
および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 66で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 59で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 60で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 61で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項52~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 65で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 38で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 39で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 40で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、GPC3に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 42で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 35で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 36で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 37で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項56~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 41で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 2、4、6、8および10のいずれかで表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項35~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記標的指向部分をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7および9のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項35~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記方法は、さらに、末梢血単核細胞PBMC、CD3+Tリンパ細胞、CD8+Tリンパ細胞、CD4+Tリンパ細胞あるいは制御性T細胞を分離することによって得るステップを含む、
請求項1~61に記載の方法。
【請求項63】
前記方法は、さらに、分離された前記PBMCに、1種類または多種類のT細胞刺激因子を加えることを含む、
請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記T細胞刺激因子は、Bリンパ細胞表面抗原抗体、TNF抗体、細胞内ポリエステルおよ
び抗生物質の群から選ばれる、
請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記T細胞刺激因子は、CD3抗体、CD28抗体、4-1BB抗体、CD80抗体、CD86抗体、PHA、PMAおよびイオノマイシンの群から選ばれる、
請求項63~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記T細胞刺激因子は、1~10000ng/mL濃度の CD3抗体を含む、
請求項63~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記T細胞刺激因子は、1~10000ng/mL濃度のCD28抗体を含む、
請求項63~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記方法は、さらに、分離された前記PBMCに1種類または多種類のサイトカイン剤を入
れることを含む、
請求項63~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記サイトカイン剤は、インターロイキンを含有する、
請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記インターロイキンは、IL2、IL21、IL7およびIL15の群から選ばれる1種類または多
種類を含有する、
請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記インターロイキンは、0.1~10000U/mL濃度のIL2を含有する、
請求項69~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記インターロイキンは、0.01~1000ng/mL濃度のIL21を含有する、
請求項69~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記インターロイキンは、0.01~1000ng/mL濃度のIL7を含有する、
請求項69~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記インターロイキンは、0.01~1000ng/mL濃度のIL15を含有する、
請求項69~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能性断片の群から選ばれる1種類または多種
類を含有する、
請求項1~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、ヒト由来である、
請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記機能性断片は、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質活性を持つ前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の断片またはその短縮型を含む、
請求項75~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6並びにその短縮型、および/または低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5並びにその短縮型を含む、
請求項1~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、前記低密度リポタンパ
ク質受容体関連タンパク質6の細胞内領域を含み、および/または、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク
質5を有する細胞内領域を含む、
請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、前記低密度リポタンパ
ク質受容体関連タンパク質6の膜貫通領域並びに前記低密度リポタンパク質受容体関連タ
ンパク質6のLDLRドメインを含み、および/または、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の膜貫通領域並びに前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5のLDLRドメインを含む、
請求項78~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、2
4、26および28のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項1~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 21、23、25および27のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なく
とも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項1~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
遺伝子改変により、免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高める、
遺伝子改変された免疫細胞。
【請求項84】
前記遺伝子改変された免疫細胞は、リンパ細胞を含む、
請求項83に記載の免疫細胞。
【請求項85】
前記遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたT細胞を含む、
請求項83~84のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項86】
前記遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたメモリー幹細胞様T細胞(TSCM)
および/または遺伝子改変されたセントラル記憶T細胞(TCM)を含む、
請求項83~85のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項87】
前記TSCMは、CCR7+および/またはCD62L+である、
請求項86に記載の免疫細胞。
【請求項88】
前記TSCMは、さらに、CD45RA+またはCD45RA-、CD45RO+またはCD45RO-、CD27+、CD28+、CD127+、CD122+、CD3+、CD4+およびCD8+の群から選ばれる1種類または多種類の特性を有
する、
請求項86~87のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項89】
前記遺伝子改変された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR
)を発現する、
請求項83~88のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項90】
前記CARは、シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインからなる細胞内ドメインを含有する、
請求項89に記載の免疫細胞。
【請求項91】
前記シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD3δシグナル伝達ドメインおよびCD3εシグナル伝達ドメインの群から選ばれる部分を含む、
請求項90に記載の免疫細胞。
【請求項92】
前記シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を含有する、
請求項90~91のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項93】
前記シグナル伝達ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:17で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項90~92のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項94】
前記共刺激ドメインは、CD27共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメインおよび4-1BB共刺激
ドメインの群から選ばれる部分を含む、
請求項90~93のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項95】
前記共刺激ドメインは、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:16のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項90~94のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項96】
前記共刺激ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:15のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有す
る、
請求項90~95のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項97】
前記CARは、ヒンジ領域を含む、
請求項89~96のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項98】
前記ヒンジ領域は、IgG4のヒンジ領域、IgG1のヒンジ領域およびCD8のヒンジ領域の群
から選ばれる部分を含む、
請求項97に記載の免疫細胞。
【請求項99】
前記ヒンジ領域は、SEQ ID NO: 31で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項97~98のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項100】
前記ヒンジ領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 32で表される核酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項97~99のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項101】
前記CARは、膜貫通領域を含む、
請求項98~100のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項102】
前記膜貫通領域は、CD8膜貫通領域、CD28膜貫通領域および/またはCD24膜貫通領域の群から選ばれる部分を含む、
請求項101に記載の免疫細胞。
【請求項103】
前記膜貫通領域は、SEQ ID NO: 33で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項101~102のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項104】
前記膜貫通領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 34で表される核酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項101~103のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項105】
前記CARは、標的指向部分を含む、
請求項89~104のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項106】
前記標的指向部分は、ScFvを含有する、
請求項105に記載の免疫細胞。
【請求項107】
前記標的指向部分は、腫瘍抗原に特異的に結合および/または認識する、
請求項105~106のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項108】
前記標的指向部分は、Bリンパ細胞表面抗原、TNFファミリーメンバー、HERファミリー
メンバーおよびGPCファミリーメンバーの群から選ばれるターゲットに特異的に結合およ
び/または認識する、
請求項105~107のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項109】
前記標的指向部分は、CD19、BCMA、HER2、MesothelinおよびGPC3の群から選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識する、
請求項105~108のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項110】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 46で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 47で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 48で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、CD19に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項105~109のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項111】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項110に記載の免疫細胞。
【請求項112】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 43で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 44で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 45で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項110~111のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項113】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 49で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項112に記載の免疫細胞。
【請求項114】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 54で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 55で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 56で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、BCMAに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項105~109のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項115】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 58で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項114に記載の免疫細胞。
【請求項116】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 51で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 52で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 53で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項114~115のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項117】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 57で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項116に記載の免疫細胞。
【請求項118】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 70で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO:71で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 72で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、HER2に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項105~109のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項119】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 74で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項118に記載の免疫細胞。
【請求項120】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 67で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 68で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 69で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項118~119のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項121】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 73で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項120に記載の免疫細胞。
【請求項122】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 62で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO:63で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 64で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、Mesothelinに特異的に結合
および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項105~109のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項123】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 66で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項122に記載の免疫細胞。
【請求項124】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 59で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 60で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 61で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項122~123のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項125】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 65で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも8
0%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項124に記載の免疫細胞。
【請求項126】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 38で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 39で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 40で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、GPC3に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である、
請求項105~109のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項127】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 42で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項126に記載の免疫細胞。
【請求項128】
前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 35で表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 36で
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するHCDR2と、SEQ ID NO: 37で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む、
請求項126~127のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項129】
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 41で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項128に記載の免疫細胞。
【請求項130】
前記標的指向部分は、SEQ ID NO: 2、4、6、8および10のいずれかで表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項105~129のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項131】
前記標的指向部分をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7および9のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項105~130のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項132】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能性断片の群から選ばれる1種類または多種類を含有する、
請求項83~131のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項133】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、ヒト由来である、
請求項83~132のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項134】
前記機能性断片は、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質活性を有する前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の断片またはその短縮型を含む、
請求項132~133のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項135】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6並びにその短縮型、および/または低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5並びにその短縮型を含む、
請求項83~134のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項136】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、前記低密度リポタンパ
ク質受容体関連タンパク質6の細胞内領域を含有し、および/または、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパ
ク質5の細胞内領域を含有する、
請求項135に記載の免疫細胞。
【請求項137】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、前記低密度リポタンパ
ク質受容体関連タンパク質6の膜貫通領域および前記低密度リポタンパク質受容体関連タ
ンパク質6のLDLRドメインを含み、および/または、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の膜貫通領域および前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5のLDLRドメインを含む、
請求項135~136のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項138】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、24、26および28のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項83~137のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項139】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 21、23、25および27のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なく
とも80%の相同性を有する核酸配列を含有する、
請求項83~138のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項140】
請求項83~139のいずれか1項に記載の遺伝子改変された免疫細胞を含む、
組成物。
【請求項141】
さらに、任意選択で薬学的に許容可能な担体を含む、
請求項140に記載の組成物。
【請求項142】
腫瘍の治療および/または予防のための医薬品の調製における請求項83~139のいずれか1項に記載の遺伝子改変された免疫細胞および/または請求項140~141のいずれか1項に記
載の組成物の用途。
【請求項143】
前記腫瘍は、肝癌、肺癌、白血病および中皮腫から選ばれる、
請求項142に記載の用途。
【請求項144】
免疫細胞増殖促進、メモリー免疫細胞産生増加、免疫細胞分化抑制、免疫細胞によるサイトカイン放出増加および/または免疫細胞による腫瘍殺傷能増大に用いられる薬剤の調
製における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高める試薬の用途。
【請求項145】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、24、26および28のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項144に記載の用途。
【請求項146】
前記遺伝子改変された免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、
請求項83~139のいずれか1項に記載の遺伝子改変された免疫細胞を調製する方法。
【請求項147】
前記遺伝子改変された免疫細胞に、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるベクターを導入するステップを含む、
請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびトランスポゾンプラスミドの群から選ばれる、
請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、24、26および28のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する、
請求項146~148のいずれか1項に記載の方法。
【請求項150】
前記遺伝子改変された免疫細胞は、リンパ細胞を含む、
請求項146~149のいずれか1項に記載の方法。
【請求項151】
前記遺伝子改変された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する、
請求項146~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項152】
前記遺伝子改変された免疫細胞に対して、分離および分離された前記遺伝子改変された免疫細胞にT細胞培地を投与することを含む活性化を行うことを含む、
請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記T細胞培地は、DMEM培地、1640培地、MEM培地およびX-VIVO培地の群から選ばれる1
種類または多種類を含有する、
請求項152に記載の方法。
【請求項154】
前記遺伝子改変された免疫細胞に、T細胞刺激因子を投与することをさらに含む、
請求項151~153のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、免疫細胞増殖を促進する方法に関するものである。特に、本願は、該免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることができる方法である。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体T細胞免疫療法(CAR-T、Chimeric Antigen Receptor T-Cell Immunotherapy)は、キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor, CAR)を発現させると共に、腫瘍細胞表面抗原の抗体を認識するように、遺伝子工学手段によりT細胞を改変することによって、T細胞の腫瘍に対する特異的殺傷を増強する。CARは、一般的に、腫瘍関連抗原(Tumor associated antigen, TAA)を特異的認識する一本鎖可変領域ドメイン(Single chain variable fragment, scFv)、ヒンジ領域、膜貫通領域および細胞内シグナル伝達領域を含む。
【0003】
近年、CAR-T免疫療法は、急性白血病および非ホジキンリンパ腫の治療に明らかな有効
性が示されているが、CARを発現する免疫細胞の増殖能力に、限界がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は、遺伝子改変された免疫細胞、及び免疫細胞増殖を促進する方法を提供する。本願に係る方法は、該免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることができる。本願に係る方法は、さらに、メモリー免疫細胞の産生を促進することができる。本願に係る方法は、さらに、免疫細胞分化を抑制することができる。本願に係る方法は、さらに、免疫細胞によるサイトカインの放出を増加させることができる。本願に係る方法は、さらに、免疫細胞の腫瘍に対する殺傷能を増加することができる。なお、本願に係る方法は、被験者における腫瘍の再発を予防することができる。本願は、さらに、必要のある被験者における腫瘍を治療する方法を提供する。本願は、さらに、前述した遺伝子改変された免疫細胞を含む組成物、並びに医薬品の調製における前述した遺伝子改変された免疫細胞および前述した組成物の用途を提供する。本願は、さらに、前述した遺伝子改変された免疫細胞を調製する方法を提供する。
【0005】
一方で、本願は、前述した免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む免疫細胞増殖を促進する方法を提供する。
【0006】
一方で、本願は、免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることによって、前述した免疫細胞のメモリー免疫細胞への分化を促進するステップを含むメモリー免疫細胞産生を促進する方法を提供する。
【0007】
一方で、本願は、前述した免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることによって、前述した免疫細胞の分化型免疫細胞への分化を抑制するステップを含む免疫細胞分化を抑制する方法を提供する。
【0008】
一方で、本願は、前述した免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む免疫細胞によるサイトカインの放出を増加させる方法を提供する。
【0009】
ある実施形態において、前述したサイトカインは、インターロイキン、インターフェロ
ンおよび/または腫瘍壊死因子を含む。ある実施形態において、前述したサイトカインは、IL-2、IL4、IL6、IL7、IL10、IL12、TNF-αおよび/またはIFNγを含む。
【0010】
一方で、本願は、前述した免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む免疫細胞の腫瘍に対する殺傷能を増加する方法を提供する。
【0011】
一方で、本願は、腫瘍にかかりやすい被験者に、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が高められた免疫細胞を投与することを含む被験者における腫瘍の再発を予防する方法を提供する。
【0012】
一方で、本願は、被験者に、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が高められた免疫細胞を投与するステップを含む必要のある被験者における腫瘍を治療する方法を提供する。
【0013】
ある実施形態において、前述した腫瘍は、肝癌、肺癌、白血病および中皮腫から選ばれる。
【0014】
ある実施形態において、前述した方法は、インビボ方法およびインビトロ方法を含む。
【0015】
ある実施形態において、前述した免疫細胞はリンパ細胞を包含する。ある実施形態において、前述した免疫細胞はT細胞を包含する。ある実施形態において、前述したT細胞は、メモリー幹細胞様T細胞(TSCM)および/またはセントラル記憶T細胞(TCM)を包含する。ある実施形態において、前述したTSCMはCCR7+および/またはCD62L+である。ある実施形態において、前述したTSCMは、さらに、CD45RA+またはCD45RA-、CD45RO+またはCD45RO-、CD27+、CD28+、CD127+、CD122+、CD3+、CD4+およびCD8+の群から選ばれる1種類または多種
類の特性を有する。
【0016】
ある実施形態において、前述した免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を発現する遺伝子改変された免疫細胞を含有する。ある実施形態において、
前述した遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたT細胞を含有する。
【0017】
ある実施形態において、前述したCARは、シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインを含む細胞内ドメインを含有する。
【0018】
ある実施形態において、前述したシグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイ
ン、CD3δシグナル伝達ドメインおよびCD3εシグナル伝達ドメインの群から選ばれる部分を含む。ある実施形態において、前述したシグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 18で表
されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有す
る。ある実施形態において、前述したシグナル伝達ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:17で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する。
【0019】
ある実施形態において、前述した共刺激ドメインは、CD27共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインの群から選ばれる部分を含む。ある実施形態におい
て、前述した共刺激ドメインは、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:16のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。あ
る実施形態において、前述した共刺激ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:15のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を
有する核酸配列を含有する。
【0020】
ある実施形態において、前述したCARは、ヒンジ領域を含む。ある実施形態において、前述したヒンジ領域は、IgG4のヒンジ領域、IgG1のヒンジ領域およびCD8のヒンジ領域の群から選ばれる部分を含む。ある実施形態において、前述したヒンジ領域は、SEQ ID NO: 31で表されるアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述したヒンジ領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 32で表されるヌクレオチド配列を含有する。
【0021】
ある実施形態において、前述したCARは膜貫通領域を含む。ある実施形態において、前述した膜貫通領域は、CD8膜貫通領域、CD28膜貫通領域およびCD24膜貫通領域の群から選ばれる部分を含む。ある実施形態において、前述した膜貫通領域は、SEQ ID NO: 33で表されるアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した膜貫通領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 34で表されるヌクレオチド配列を含有する。
【0022】
ある実施形態において、前述したCARは標的指向部分を含む。ある実施形態において、前述した標的指向部分はScFvを含有する。
【0023】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、腫瘍抗原に特異的に結合および/ま
たは認識する。ある実施形態において、前述した標的指向部分は、Bリンパ細胞表面抗原
、TNFファミリーメンバー、HERファミリーメンバーおよびGPCファミリーメンバーの群か
ら選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識する。ある実施形態において、
前述した標的指向部分は、CD19、BCMA、HER2、MesothelinおよびGPC3の群から選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識する。
【0024】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 46で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 47で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 48で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、CD19に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 43で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 44で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 45で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 49で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0025】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 54で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 55で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 56で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、BCMAに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 58で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 51で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 52で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 53で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 57で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0026】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 70で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO:71で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸
配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 72で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、HER2に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 74で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 67で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 68で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 69で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 73で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0027】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 62で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 63表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 64で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、Mesothelinに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 66で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 59で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 60で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 61で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 65で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0028】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 38で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 39で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 40で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、GPC3に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 42で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 35で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 36で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 37で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 41で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0029】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 2、4、6、8および10の
いずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸
配列を含有する。ある実施形態において、前述した標的指向部分をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7および9のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0030】
ある実施形態において、前述した方法は、さらに、末梢血単核細胞PBMC、CD3+Tリンパ
細胞、CD8+Tリンパ細胞、CD4+Tリンパ細胞あるいは制御性T細胞を分離することによって
得るステップを含む。
【0031】
ある実施形態において、前述した方法は、さらに、分離された前述したPBMCに、1種類
または多種類のT細胞刺激因子を加えることを含む。ある実施形態において、前述したT細胞刺激因子は、Bリンパ細胞表面抗原抗体、TNF抗体、細胞内ポリエステルおよび抗生物質の群から選ばれる。ある実施形態において、前述したT細胞刺激因子は、CD3抗体、CD28抗体、4-1BB抗体、CD80抗体、CD86抗体、PHA、PMAおよびイオノマイシンの群から選ばれる
【0032】
ある実施形態において、前述したT細胞刺激因子は、1~10000ng/mL濃度のCD3抗体を含
む。ある実施形態において、前述したT細胞刺激因子は、1~10000ng/mL濃度のCD28抗体を含む。
【0033】
ある実施形態において、前述した方法は、さらに、分離された前述したPBMCに1種類ま
たは多種類のサイトカイン剤を入れることを含む。
【0034】
ある実施形態において、前述したサイトカイン剤はインターロイキンを含有する。
【0035】
ある実施形態において、前述したインターロイキンは、IL2、IL21、IL7およびIL15の群から選ばれる1種類または多種類を含有する。ある実施形態において、前述したインター
ロイキンは、0.1~10000U/mL濃度のIL2を含有する。ある実施形態において、前述したイ
ンターロイキンは、0.01~1000ng/mL濃度のIL21を含有する。ある実施形態において、前
述したインターロイキンは、0.01~1000ng/mL濃度のIL7を含有する。ある実施形態において、前述したインターロイキンは、0.01~1000ng/mL濃度のIL15を含有する。
【0036】
ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能性断片の群から選ばれる1種
類または多種類を含有する。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、ヒト由来である。
【0037】
ある実施形態において、前述した機能性断片は、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質活性を持つ前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の断片またはその短縮型を含む。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6並びにその短縮型、およ
び/または低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5並びにその短縮型を含む。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、前
述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の細胞内領域を含み、および/または
、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前述した低密度リ
ポタンパク質受容体関連タンパク質5を有する細胞内領域を含む。ある実施形態において
、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、前述した低密度リ
ポタンパク質受容体関連タンパク質6の膜貫通領域並びに前述した低密度リポタンパク質
受容体関連タンパク質6のLDLRドメインを含み、および/または、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タ
ンパク質5を有する膜貫通領域並びに前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク
質5のLDLRドメインを含む。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容
体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、24、26および28のいずれかで表さ
れるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する
。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 21、23、25および27のいずれかで表される
核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0038】
一方で、本願は、遺伝子改変により、免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高める遺伝子改変された免疫細胞を提供する。
【0039】
ある実施形態において、前述した遺伝子改変された免疫細胞は、リンパ細胞を含む。ある実施形態において、前述した遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたT細胞を
含む。ある実施形態において、前述した遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたメモリー幹細胞様T細胞(TSCM)および/または遺伝子改変されたセントラル記憶T細胞(TCM)を含む。ある実施形態において、前述したTSCMはCCR7+および/またはCD62L+である。ある実施形態において、前述したTSCMは、さらに、CD45RA+またはCD45RA-、CD45RO+またはCD45RO-、CD27+、CD28+、CD127+、CD122+、CD3+、CD4+およびCD8+の群から選ばれる1種類または多種類の特性を有する。
【0040】
ある実施形態において、前述した免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を発現する遺伝子改変された免疫細胞を含む。
【0041】
ある実施形態において、前述したCARは、シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインからなる細胞内ドメインを含む。ある実施形態において、前述したシグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD3δシグナル伝達ドメインおよびCD3εシグナ
ル伝達ドメインの群から選ばれる部分を含む。ある実施形態において、前述したシグナル伝達ドメインはSEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列を含有する。ある実施形態におい
て、前述したシグナル伝達ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:17で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する。
【0042】
ある実施形態において、前述した共刺激ドメインは、CD27共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインの群から選ばれる部分を含む。ある実施形態におい
て、前述した共刺激ドメインは、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:16のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。あ
る実施形態において、前述した共刺激ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:15のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を
有する核酸配列を含有する。
【0043】
ある実施形態において、前述したCARは、ヒンジ領域を含む。ある実施形態において、前述したヒンジ領域は、IgG4のヒンジ領域、IgG1のヒンジ領域およびCD8のヒンジ領域の群から選ばれる部分を含む。ある実施形態において、前述したヒンジ領域は、SEQ ID NO: 31で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述したヒンジ領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 32で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0044】
ある実施形態において、前述したCARは膜貫通領域を含む。ある実施形態において、前述した膜貫通領域は、CD8膜貫通領域、CD28膜貫通領域およびCD24膜貫通領域の群から選ばれる部分を含む。ある実施形態において、前述した膜貫通領域は、SEQ ID NO: 33で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した膜貫通領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 34で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する。
【0045】
ある実施形態において、前述したCARは標的指向部分を含む。ある実施形態において、前述した標的指向部分はScFvを含有する。ある実施形態において、前述した標的指向部分は、腫瘍抗原に特異的に結合および/または認識する。ある実施形態において、前述した標的指向部分は、Bリンパ細胞表面抗原、TNFファミリーメンバー、HERファミリーメンバーおよびGPCファミリーメンバーの群から選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識する。ある実施形態において、前述した標的指向部分は、CD19、BCMA、HER2、MesothelinおよびGPC3の群から選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識する。
【0046】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 46で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 47で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 48で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、CD19に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 43で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 44で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 45で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 49で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0047】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 54で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 55で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 56で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、BCMAに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 58で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 51で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 52で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 53で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 57で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0048】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 70で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO:71で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸
配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 72で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、HER2に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 74で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 67で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 68で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 69で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 73で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0049】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 62で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO:63で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸
配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 64で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、Mesothelinに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 66で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 59で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 60で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 61で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 65で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0050】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 38で表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 39で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 40で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、GPC3に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。ある実施形態において、前述した軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 42で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形態において、前述した抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 35で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 36で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 37で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域を含む。ある実施形態において、前述した重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 41で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0051】
ある実施形態において、前述した標的指向部分は、SEQ ID NO: 2、4、6、8および10の
いずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸
配列を含有する。ある実施形態において、前述した標的指向部分をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7および9のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する。
【0052】
ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能性断片の群から選ばれる1種
類または多種類を含有する。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、ヒト由来である。
【0053】
ある実施形態において、前述した機能性断片は、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質活性を有する前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の断片またはその短縮型を含む。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6並びにその短縮型、お
よび/または低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5並びにその短縮型を含む。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、
前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の細胞内領域を含み、および/または、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前述した低密度
リポタンパク質受容体関連タンパク質5の細胞内領域を含む。ある実施形態において、前
述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、前述した低密度リポタ
ンパク質受容体関連タンパク質6の膜貫通領域および前述した低密度リポタンパク質受容
体関連タンパク質6のLDLRドメインを含み、および/または、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパ
ク質5の膜貫通領域および前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5のLDLRドメインを含む。ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、24、26および28のいずれかで表されるアミノ酸
配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。ある実施形
態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 21、23、25および27のいずれかで表される核酸配列また
はそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する。
【0054】
一方で、本願は、前述した遺伝子改変された免疫細胞を含む組成物を提供する。
【0055】
ある実施形態において、前述した組成物は、さらに、任意選択で薬学的に許容可能な担体を含む。
【0056】
一方で、本願は、腫瘍の治療および/または予防のための医薬品の調製における前述し
た遺伝子改変された細胞および/または前述した組成物の用途を提供する。
【0057】
ある実施形態において、前述した腫瘍は、肝癌、肺癌、白血病および中皮腫から選ばれる。
【0058】
一方で、本願は、前述した遺伝子改変された免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む前述した組成物を調製する方法を提供する。
【0059】
ある実施形態において、前述した方法は、前述した遺伝子改変された免疫細胞に前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるベクターを導入するステップを含む。ある実施形態において、前述したベクターは、レトロウイル
スベクター、レンチウイルスベクターおよびトランスポゾンプラスミドの群から選ばれる。
【0060】
ある実施形態において、前述した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、24、26および28のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそ
れと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0061】
ある実施形態において、前述した遺伝子改変された免疫細胞は、リンパ細胞を含む。ある実施形態において、前述した遺伝子改変された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)
を発現する。ある実施形態において、前述した方法は、前述した遺伝子改変された免疫細胞に対して、分離および分離された前述した遺伝子改変された免疫細胞にT細胞培地を投
与することを含む活性化を行うステップを含む。
【0062】
ある実施形態において、前述したT細胞培地は、DMEM培地、1640培地、MEM培地およびX-VIVO培地の群から選ばれる1種類または多種類を含有する。
【0063】
ある実施形態において、前述した方法は、さらに、前述した遺伝子改変された免疫細胞に、T細胞刺激因子を投与することを含む。
【0064】
当該分野における当業者は、以降の詳細な記載からの本開示のその他の側面や利点の把握が容易であろう。以下の詳細な記載では、本開示の例としての実施形態しか表現して記載していない。当該分野における当業者にとって、本開示の詳細によって、本発明に係る趣旨や範囲を逸脱しない限り、公開されている具体的な実施形態を変更しても良い。それに応じて、本発明において、図面や明細書の記載があくまでも例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本発明に係る具体的な特徴は、添付の請求項のように示されたものである。本発明に係る特徴やメリットは、以下詳しく記載されている例示的実施形態や図面を参照することによって、より確実的に把握されるだろう。図面に関しては、以下のように概略的に説明する。
【0066】
図1は、本発明に係るレンチウイルスにおける前述したCARの構成模式図を示す。
【0067】
図2は、本発明に係る遺伝子改変された免疫細胞によりメモリー免疫細胞産生を促進し
た結果を示す。
【0068】
図3は、本発明に係る遺伝子改変された免疫細胞により免疫細胞分化を抑制した結果を
示す。
【0069】
図4は、本発明に係る免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質ま
たはその断片が本発明に係る免疫細胞増殖を促進した結果を示す。
【0070】
図5A~5Bは、本発明に係る遺伝子改変された免疫細胞によりサイトカインの放出を増加した結果を示す。
【0071】
図6は、本発明に係る遺伝子改変された免疫細胞による抗腫瘍の効果を示す。
【0072】
図7は、本発明に係る遺伝子改変された免疫細胞により腫瘍の再発を予防した効果を示
す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本願発明の実施形態を、所定の具体的な実施例によって説明するが、当業者が、本明細書に公開された内容により、本願発明のその他のメリットや効果を容易に把握することができる。
【0074】
本発明において、免疫細胞という用語は、通常、免疫応答に関与することまたは免疫応答に関する細胞を意味する。上記免疫細胞は、リンパ細胞および各種のファーゴサイトを含んで良い。上記免疫細胞は、天然的なものおよび遺伝子改変されたものも含んで良い。本発明において、上記した遺伝子改変された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発
現することができる。ここで、上記リンパ細胞は、Tリンパ細胞およびBリンパ細胞を含んで良い。本発明において、上記免疫細胞はT細胞を含有して良い。
【0075】
本発明において、メモリー免疫細胞という用語は、通常、免疫記憶を持つ免疫細胞を指す。上記の免疫記憶は、ある抗原に対して特異的認識及び応答した場合、再び同じ抗原に遭遇した際に、迅速で効果的な免疫応答が発揮されるものという。本発明において、上記メモリー免疫細胞は、記憶T細胞を含有しても良い。上記記憶T細胞は、メモリー幹細胞様T細胞(TSCM)およびセントラル記憶T細胞(TCM)に分けることができる。
【0076】
本発明において、分化型免疫細胞という用語は、通常、ある程度の分化度を持つ免疫細胞を意味する。例えば、上記の分化型免疫細胞は、ある程度の分化度を持つT細胞であっ
て良い。本発明において、上記の分化型免疫細胞は、上記免疫細胞を培養によってある程度分化することにより得られる。例えば、上記の分化型免疫細胞が、制御性T細胞(Treg
)を含んで良い。
【0077】
本発明において、制御性T細胞”(regulatory T cell、Treg)という用語は、通常、生体免疫反応を負に制御するリンパ細胞の一種を指す。上記制御性T細胞の分子標識は、転
写因子Foxp3+またはCD127-であって良い。本発明において、上記制御性T細胞は、天然存
在と誘導産生に分けられて良い。ここで、天然存在のものがCD4+CD25+細胞であり、誘導
産生によるものがTR1細胞およびTH3細胞である。
【0078】
本発明において、腫瘍にかかりやすい被験者という用語は、通常、一般被験者よりも、腫瘍に罹患する確率が上回るものを指す。例えば、上記腫瘍にかかりやすい被験者は、腫瘍に罹ったが治癒されても、転移、再発のようなリスクが存在するものであって良い。上記腫瘍にかかりやすい被験者は、腫瘍に罹患する危険因子と診断されるものであっても良い。例えば、上記の危険因子が、腫瘍との相関を証明される遺伝子変異(欠失、付加あるいは置換を有する)を幾つか含んで良い。本発明において、上記腫瘍にかかりやすい被験者は、長期に発癌環境に接しているものであっても良い。例えば、上記の発癌環境は、強放射線、高濃度の発癌環境物質を含んで良い。
【0079】
本発明において、遺伝子改変という用語は、通常、遺伝子構造レベルで発生した修飾または改変を意味する。例えば、上記遺伝子改変は、遺伝子レベル、転写レベルおよび/ま
たは翻訳レベルの改変であって良い。又、例えば、上記の遺伝子改変は、生体(その組織、細胞、DNA、mRNA、もしくはタンパク質またはその断片など)における遺伝子特性のいずれの改変を含んで良い。上記の遺伝子改変は、上記の生体に所定のタンパク質またはその断片を発現させることができることを含んで良い。例えば、上記の遺伝子改変は、上記生体に上記所定のタンパク質またはその断片を発現することができるベクターを備えらせることを含んで良い。
【0080】
本発明において、Tリンパ細胞とも称するT細胞という用語は、主に細胞媒介免疫に役割
を果たす白細胞のサブタイプの一種である。T細胞は、細胞表面に存在するT細胞受容体によって、その他のリンパ細胞、例えばB細胞およびナチュラルキラー細胞と区分されてい
る。本発明において、上記T細胞は、メモリー幹細胞様T細胞(TSCM)およびセントラル記憶T細胞(TCM)を有して良い。
【0081】
本発明において、メモリー幹細胞様T細胞(T memory stem cells, TSCM)という用語は、通常、記憶T細胞の分化初期階段にあり、幹細胞の特徴を持ち、強い多分化能を有する細胞を指す。TSCM細胞は、抗原による刺激に対して応答すると、セントラル記憶T細胞(central memory T cells, TCM)と、エフェクター記憶T細胞(effector memory T cells, TEM)と、およびエフェクター性T細胞(effector T cells, TEF)とに分化するようになる。
【0082】
本発明において、セントラル記憶T細胞”(central memory T cells, TCM)という用語は、通常、未感作T細胞(Naive T Cell)を抗原によって活性化してから産生される長期
記憶を持つT細胞を指す。上記のTCMのバイオマーカーは、CD62L+およびCD45RO+を有して
よい。上記のセントラル記憶T細胞は、リンパの遮蔽によって、リンパ節に戻る同時に、
抗原に活性化された状態にある。
【0083】
本発明において、通常TCRとも称するT細胞受容体という用語は、通常、T細胞による抗
原ペプチド-MHC分子の特異的認識および結合を行う分子構造を指す。上記のT細胞受容体
は、CD3分子との複合体としてT細胞の表面に存在し得る。上記TCRは、ジスルフィド結合
を介して超易変αサブユニットおよびβサブユニットより構成されることが多く、γおよびδペプチド鎖より構成されることが少ない細胞膜上に固着したヘテロ二量体である。上記TCRは、ポリペプチド/MHC複合体を認識することを担う可変領域、および細胞膜に対し
て近位にあり、膜貫通領域と細胞内の末端が連結されている定常領域を含んで良い。
【0084】
本発明において、通常CARとも称するキメラ抗原受容体という用語は、通常、抗原に結
合しうる細胞外ドメイン、および少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質を指す。本願において、上記したCARは、シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインを含む細胞内ドメインを含んで良い。本発明において、CARは、1つの群のポリペプチドが、同一ポリペプチド鎖(例えば、キメラ融合タンパク質を含む)に位置することができるが、例えば、異なるポリペプチド鎖に位置するなど、お互いに連続しなくても良い。本発明において、誘導に関与するシグナルは、CD3およびζ鎖を経由して、T細胞の細胞質に伝達される。本発明において、細胞内ドメインは、第1レベルシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-zeta(ζ)の主要シグナルドメイン)を1つ含んで良い。1つの局面において、細胞質シグナルドメインは、少なくとも1種類の共刺激分子から誘導される共刺激ドメインを1種類または多種類含んで良い。例えば、上記の共刺激ドメインは、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27、ICOSおよび/またはCD28でありうる。本発明において、CARは、例えば、アミノ末端(N-ter)に任意選択のリーダー配列を含有するキメラ融合タンパク質を有して良い。ここで、上記したリーダー配列は、必要に応じて、細胞プロセッシングにおいて抗原結合ドメイン(例えば、ScFv)を切断し、CARを細胞膜に位置合わせる。
【0085】
本発明において、シグナル伝達ドメインという用語は、通常、細胞の内部にあるシグナル伝達可能なのドメインを指す。本発明において、上記細胞内シグナル伝達ドメインは、シグナルを細胞内に伝達することができる。例えば、上記した細胞内シグナル伝達ドメインは、上記のキメラ抗原受容体における細胞内シグナル伝達ドメインになる。本発明において、上記シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δおよびCD3εシグナル伝達ドメインの
群から選ばれる部分を含む。
【0086】
本発明において、共刺激ドメインという用語は、通常、細胞内シグナル伝達ドメインと連結し、シグナルを転送する機能を果たす、CARにおいて細胞膜を越えるドメインである
。本発明において、上記共刺激ドメインは、CD27、CD28および4-1BB共刺激ドメインの群
から選ばれる部分を含む。
【0087】
本発明において、ヒンジ領域という用語は、通常、抗原結合ドメインと免疫細胞Fc受容体(FcR)結合ドメインとの間の連結領域を指す。例えば、上記ヒンジ領域は、免疫グロ
ブリンにおける重鎖CHlとCH2機能ドメインの間の領域であって良い。本発明において、上記したヒンジ領域は、scFvとT細胞膜との間にある1本の領域であって良い。上記したヒンジ領域は、IgG1もしくはIgG4由来であってよく、IgDもしくはCD8由来であって良い。本発明において、ヒンジ領域は、IgG4のヒンジ領域、IgG1のヒンジ領域およびCD8のヒンジ領
域の群から選ばれる部分を含む。
【0088】
本発明において、膜貫通領域という用語は、通常、主にCD3ζ、CD4、CD8、CD28などを
含有し、CAR構造をT細胞膜上にアンカーすることができる二量体膜タンパク質より構成され、細胞外抗原結合ドメインと細胞内シグナルドメインを連結するものを意味する。膜貫通領域に対する異なる設計によって、導入されたCAR遺伝子の発現に影響を与えることが
できる。本発明において、上記膜貫通領域は、CD8膜貫通領域、CD28膜貫通領域およびCD24膜貫通領域の群から選ばれる部分を含む。
【0089】
本発明において、一本鎖抗体(ScFv)という用語は、通常、上記重鎖可変領域と上記軽鎖可変領域がリンカーにより連結される抗体を指す。本発明において、上記リンカーは、連結ペプチドでありうる。
【0090】
本発明において、腫瘍抗原という用語は、通常、宿主に免疫応答を惹起できる能力があり得る、腫瘍細胞内にまたは腫瘍細胞により産生されている抗原物質を指す。例えば、腫瘍抗原は、腫瘍細胞の一部を構成しており、腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ細胞を誘導す
るタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはその断片でありうる。幾つかの実施形態において、腫瘍抗原という用語は、さらに、癌細胞上で排他的、優先的または差別的に発現し、および/または癌細胞に関する生物分子(例えば、タンパク質、炭水化物、糖タンパ
ク質等)であって良く、癌の優先的または特異的なターゲットを提供する。例えば、優先的な発現は、生体における全てのその他の細胞に比べて、従来の優先的発現、または生体における所定の領域の優先的発現(例えば、所定の器官や組織内)であって良い。本発明において、上記の腫瘍抗原は、Bリンパ細胞表面抗原、TNFファミリーメンバー、HERファ
ミリーメンバーおよびGPCファミリーメンバーであって良い。
【0091】
本発明において、Bリンパ細胞表面抗原という用語は、通常、Bリンパ細胞が、異なる階段に産生し、Bリンパ細胞表面にある抗原を意味する。例えば、上記Bリンパ細胞表面抗原は、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD38、CD39およびCD40を含んで良い。本発明において、Bリンパ細胞表面抗原は、CD19を含んで良い。
【0092】
本発明において、CD19という用語は、通常、白血病前駆細胞で測定可能な抗原決定基である分化群19タンパク質であって良い。ヒトCD19は、UniProt/Swiss-Protアクセッション番号がP15391であり、ヒトCD19をコードするヌクレオチド配列は、GenBankアクセッショ
ン番号がNM_001178098である。本発明において、CD19は、さらに、突然変異を含むタンパク質またはその機能性断片、例えば全長の野生型CD19の点変異、断片、挿入、欠失およびスプライス変異体を有して良い。
【0093】
本発明において、TNFファミリーメンバーという用語は、通常、TNF(腫瘍壊死因子Tumor Necrosis Factor)ファミリーに属するメンバーを指す。TNFファミリーメンバーは、CD40LG(TNFSF5)、CD70(TNFSF7)、EDA、FASLG(TNFSF6)、LTA(TNFSF1)、LTB(TNFSF3)、TNFSF4(OX40L)、TNFSF8(CD153)、TNFSF9(4-1BB)、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(RANKL)、TNFSF12(TWEAK)、TNFSF13、TNFSF13B、TNFSF14、TNFSF15、TNFSF17(BCMA)およびTNFSF18を含有して良い。本発明において、上記のTNFファミリーメンバーは、BCMAおよび4-1BBを含有して良い。
【0094】
本発明において、BCMAという用語は、通常、B細胞成熟抗原(B Cell Maturation Antigen、BCMA、CD269)を指す。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)および増殖誘導リガンド(APRIL)に結合可能な腫瘍壊死因子受容体(TNF)スーパーファミリーのメンバーである。BCMAは、多発性骨髄腫患者における形質細胞の表面でよく見られる。ヒトBCMAは、GenBankアクセッション番号がBAB60895.1である。
【0095】
4-1BBまたはTNFRS9とも称されるCD137タンパク質という用語は、通常、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRS)の膜貫通タンパク質の一つであり、活性化誘導される
共刺激分子である免疫応答の重要な調節剤である。今までの研究によると、CD137作動性
モノクロナール抗体が、多くのモデルに、共刺激分子発現を増加させると共に、細胞溶解性Tリンパ細胞応答を顕著に高め、抗腫瘍効果を発揮する(Vinay, Dass S., and Byoung S. Kwon. "4-1BB (CD137), an inducible costimulatory receptor, as a specific target for cancer therapy." BMB reports 47.3 (2014): 122を参照する)。ヒトCD137はGenBankアクセッション番号がNP_001552.2である。
【0096】
本発明において、HERファミリーメンバーという用語は、通常、HER(ヒト表皮増殖因子human epidermal growth factor receptor)ファミリーに属するメンバーを指す。HERフ
ァミリーメンバーは、EGFR(ErbB-1)、HER2/c-neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)およびHer4(ErbB-4)を含んで良い。本発明において、上記HERファミリーメンバーはHER2を含んで良い。
【0097】
本発明において、HER2という用語は、通常、HERファミリーメンバーに属するヒトHER2
タンパク質を指す。例えば、Semba et al., PNAS(USA)82:6497-6501(1985)およびYamamoto et al., Nature 319:230-234(1986)を参照する。ヒトHER2は、GenBankアクセッション番号がXP_024306409.1を有して良い。
【0098】
本発明において、GPCファミリーメンバーという用語は、通常、哺乳動物にそれぞれGPC1~GPC6と称される6種類のglypicanが存在することが同定されるホスファチジルイノシトールタンパク質糖鎖(glypican)を指す。ヒト肝細胞癌、卵巣癌、中皮腫、膵臓癌、神経膠腫および乳癌を含む癌症において、glypicansの異常発現がある。本発明において、上記GPCファミリーメンバーは、GPC3を含んで良い。
【0099】
本発明において、GPC3という用語は、通常、肝癌の初期マーカーであり、ホスファチジルイノシトールタンパク質糖鎖3(NCBIデータベース遺伝子ID:2719)によりコードされ
るタンパク質を指す。GPC3は、肝細胞癌で高度に発現され、初期肝細胞癌患者における組織で測定可能である。ヒトGPC3は、GenBankアクセッション番号がAAB87062.1であって良
い。
【0100】
本発明において、Mesothelin(メソテリンであり、またはMSLNと略す)という用語は、通常、一般的に胸膜、腹膜および心膜裏地の中皮細胞に存在する腫瘍分化抗原を指す。悪性中皮腫、膵臓癌、卵巣癌および肺腺癌を含む癌症において高度に発現される。ヒトMesothelinは、GenBankアクセッション番号がAAH09272.1であって良い。
【0101】
本発明において、末梢血単核細胞という用語は、通常、末梢血に単一核を有する細胞(
Peripheral blood mononuclear cell, PBMC)を指す。上記末梢血単核細胞は、リンパ細
胞および単核細胞を含んで良い。本発明において、上記末梢血単核細胞は、Ficoll-hypaque(グルカン-ウログラフィン)密度勾配遠心分離法を利用して、血液における各成分の比重の違いにより分離される。
【0102】
本発明において、T細胞活性化因子という用語は、通常、T細胞の活性化および増殖を促進する物質を指す。本発明において、上記T細胞活性化因子は、Bリンパ細胞表面抗原抗体、TNF抗体、細胞内ポリエステルおよび/または抗生物質を含んで良い。本発明において、上記T細胞刺激因子は、CD3抗体、CD28抗体、4-1BB抗体、CD80抗体、CD86抗体、PHA、PMAおよびイオノマイシンの群から選ばれて良い。
【0103】
本発明において、Bリンパ細胞表面抗原抗体という用語は、通常、Bリンパ細胞表面抗原に特異的に結合する抗体を指す。本発明において、Bリンパ細胞表面抗原抗体は、CD3抗体、CD28抗体、CD80抗体およびCD86抗体を含んで良い。
【0104】
本発明において、TNF抗体という用語は、通常、TNFファミリーメンバーに特異的に結合する抗体を指す。本発明において、上記TNF抗体は、4-1BB抗体を含んで良い。
【0105】
本発明において、細胞内ポリエステルという用語は、通常、微生物合成されており細胞内に封入体として存在する天然高分子生体材料を指す。細胞内ポリエステルは、優れた生物学的特性を具備する。本発明において、細胞内ポリエステルは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含んで良い。
【0106】
本発明において、抗生物質という用語は、通常、その他の生細胞の発育機能や有用効能を阻害する、微生物あるいは動植物により産生された抗病原体またはその他の活性代謝生成物。本発明において、上記抗生物質は、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、アンフ
ェニコール系、マクロライド系、ポリペプチド系、ニトロイミダゾール系およびテトラサイクリン系を含んで良い。例えば、上記抗生物質は、イオノマイシンを含んで良い。
【0107】
本発明において、PHAという用語は、通常、多種類の細菌によって合成される細胞内ポ
リエステルに属するものであり、生体内において細胞質内の不連続的封入体として存在するポリヒドロキシアルカノエートを指す。PHAは、合成プラスチックのような物理化学的
特性、および生分解性、生体適合性、光学活性、圧電効果、気体遮断性等を有して良い。
【0108】
本発明において、PMAという用語は、通常、ホルボールミリステートアセテート(Phorbol-12-myristate-13-acetate)を指す。
【0109】
本発明において、CD3抗体という用語は、通常、CD3に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を指す。CD3は、T細胞活化シグナルを伝えるT細胞膜における重要な分化抗
原であって良い。上記CD3抗体は、huOKT3g1またはHuM291であって良い。
【0110】
本発明において、CD28抗体という用語は、通常、CD28に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を指す。ヒトCD28は、2q33にあり、リガンドが共にB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)を含むB7ファミリーであるCTLA4とは似通ったエクソンおよびイントロンを含有する。
【0111】
本発明において、サイトカインという用語は、通常、免疫細胞(例えば単核、マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞等)およびある非免疫細胞(内皮細胞、表皮細胞、線維芽細胞等)が刺激によって合成、分泌した幅広い生物活性を有する小分子タンパク質を指す。上記サイトカインは、先天免疫および適応免疫、血液生成、細胞増殖、APSC多能性細胞および損傷組織修復などを制御する多種多様な機能を有して良い。本発明において、上記サイトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子スーパーファミリー、コロニー刺激因子、走化因子および増殖因子を含んで良い。例えば、上記サイトカインは、インターロイキンであって良い。
【0112】
本発明において、インターロイキンという用語は、通常、Tおよび/またはBリンパ細胞
および/または造血細胞の発育および分化を促進することができる分泌タンパク質または
シグナル分子を指す。インターロイキンは、補助CD4Tリンパ細胞、および単核細胞、マクロファージおよび内皮細胞によって合成される。本発明において、インターロイキンという用語は、基本的に野生型インターロイキンに対応する生物活性(例えば、生物活性の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%までを有する野生型インターロイキンに対応する生物活性)を保持
する全長インターロイキンあるいは断片(例えば短縮型)またはその変異体を含んで良い。本明細書に用いられるインターロイキンは、あらゆる哺乳動物種由来であって良い。ある実施形態において、インターロイキンは、ヒト、馬、牛、マウス、豚、ウサギ、猫、犬、ラット、ヤギ、羊および非人類霊長類動物から選ばれる種由来である。ある実施形態において、インターロイキンが突然変異型である。例えば、本発明において、上記サイトカインは、IL2、IL21、IL7およびIL15の群から選ばれる1種類または多種類を含んで良い。
【0113】
本発明において、IL2という用語は、通常、T細胞増殖因子、TCGFを指す。T細胞によっ
て産生され、自己分泌および傍分泌様式で、T細胞の活性化、サイトカイン産生の促進、NK細胞増殖の刺激、LAK細胞産生の誘導、B細胞増殖および抗体分泌の促進、また、マクロ
ファージの活性化を引き起こすように振る舞う。
【0114】
本発明において、IL21という用語は、IL-2、IL-4、IL-15空間構造と相同なものであり
、通常、骨髄NK細胞の増殖および分化を促進し、抗CD40抗体と統合的にB細胞増殖を、抗CD3抗体と統合的にT細胞増殖を刺激する。
【0115】
本発明において、IL7という用語は、通常、遺伝子が第8染色体にある、骨髄間質細胞によって分泌される糖タンパク質を指す。IL7の標的指向細胞は、特に、ヒトやマウス骨髄
由来のB前駆細胞、胸腺細胞および末梢成熟T細胞の増殖を促進することができる、リンパ細胞である。高濃度の場合、IL-7は、マクロファージの細胞傷害活性を強め、単核細胞からのサイトカイン分泌を誘導することができる。
【0116】
本発明において、IL15という用語は、通常、活性単核-マクロファージ、表皮細胞およ
び線維芽細胞などの多種類の細胞によって産生し、IL2と似通った点が多いものを指す。IL15は、IL2ファミリーメンバーに属し、Bcl-1ファミリーメンバー(例えばBcl-2およびBcl-XL)の発現を変えることによって、TおよびNK細胞の活性化および増殖を制御することができ、また、B細胞増殖を誘導することができる。
【0117】
本発明において、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(Low density lipoprotein receptor-related protein, LRP)という用語は、通常、839個のアミノ酸(21個のアミノ酸シグナルペプチドを除去した)を含有する内在タンパク質を指す。LDL(Low density lipoprotein)粒子の外部リン脂質層に埋め込まれており、コレステロールリッチなLDLのエンドサイトーシスを媒介することができるエンドサイトーシス受容体に属し、低密度リポタンパク質受容体(Low density lipoprotein receptor, LDLR)遺伝子ファミリーの一員である。上記LRPは、気管支表皮細胞、副腎ならびに皮質組織において最顕著に発現する。本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12またはその短縮型の群から選ばれる1種類または多種類を含んで良い。
【0118】
本発明において、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP-6)および低密度タンパク質受容体関連タンパク質5(LRP-5)という用語は、通常、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)ファミリーにおける唯一の亜群を指す。ヒトLRP-6は、UniProtアクセッション番号がO75581である。ヒトLRP-5は、UniProtアクセッション番号がO75197である。
【0119】
本発明において、短縮型(Truncated protein)という用語は、通常、短縮したタンパ
ク質を指す。上記の短縮型は、タンパク質加水分解または構造遺伝子操作によって、タンパク質におけるN-またはC-末端部分を取り除くことによって得られる。または、上記の短縮型は、ナンセンス突然変異により構造遺伝子に終止コドンが生じることによって、翻訳を繰り上げて停止する。
【0120】
本発明において、細胞内領域という用語は、通常、タンパク質が細胞膜に位置するドメインを指す。本発明において、上記細胞内領域は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質細胞膜におけるドメインを意味することができる。本発明において、上記細胞内領域に、SEQ NO.24に記載の24~243番目の配列またはそれと少なくとも80%の相同性を
有するアミノ酸配列を有して良く、または、SEQ NO.28に記載の24~231番目の配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を有して良い。
【0121】
本発明において、膜貫通領域という用語は、通常、タンパク質において細胞膜を跨ぐドメインを指す。本発明において、上記膜貫通領域は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質が細胞膜を跨ぐドメインでありうる。上記膜貫通領域は、23個の疎水性アミノ酸より構成される。該ドメインは、LDLRが細胞膜に結合するため、アンカーの機能を提供する。本発明において、上記膜貫通領域は、SEQ NO.24に記載の1~23番目の配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列、もしくは、SEQ NO.28に記載の1~23番目の配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含んで良い。
【0122】
本発明において、LDLRドメインという用語は、通常、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質が膜貫通領域以外のNセグメントに近接するドメインを指す。該ドメイン
は、Wntシグナルを強める機能を具備する。本発明において、上記LDLRドメインは、SEQ NO.22に記載の5~119位またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列、ある
いはSEQ NO.26に記載の4~119番目の配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を有して良い。
【0123】
本発明において、内部リボソーム進入部位(Internal ribosome entry site、IRES)とも称するリボソームホッピングサイトという用語は、通常、mRNA配列中央に位置し、翻訳開始に用いられる1つのセグメントのヌクレオチド配列を指す。上記リボソームホッピン
グサイトは、キャップ非依存的な翻訳の開始を可能にする。IRESの位置は通常5’UTRである。本発明において、上記リボソームホッピングサイトは、SEQ NO.29に記載の1~578番
目の配列を有してよい。
【0124】
本発明において、2A配列という用語は、通常、1つのセグメントのプロテアーゼ非依存
的に自己切断型アミノ酸配列を指す。上記2A配列は、2種類のタンパク質の転写合成に寄
与する。本発明において、上記2A配列は、SEQ NO.75に記載の1~54番目の配列を含んで良い。
【0125】
本発明において、薬学的に許容可能な担体という用語は、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水ポリマー、アミノ酸、糖、キレート剤、対イオン、金属複合体及び/又は非イオン界面活性剤などを含んでよい。
【0126】
本発明において、レトロウイルスベクターという用語は、通常、感染細胞にDNA相補鎖
を逆転写合成し、このDNA一本鎖を鋳型とし2本目のDNA鎖を合成し、細胞ゲノムDNAに組み込ませるRNAウイルスを指す。上記レトロウイルスベクターは、宿主細胞の酵素によりRNA合成タンパク質を自己転写・複製し、ウイルスをパッケージングして、細胞内から放出させ、感染性ウイルスとする。上記レトロウイルスは、導入効率が高く、遺伝子のトランスフェクション率を向上させることができる。
【0127】
本発明において、レンチウイルスベクターという用語は、HIV-1(ヒト免疫不全I 型ウ
イルス)に基づき発展してきた遺伝子治療ベクターである。上記レンチウイルスベクターは、共に分裂細胞および非分裂細胞を感染させる能力がある。ノイロン細胞、肝細胞などを含むほぼすべての哺乳動物細胞を効果的に感染させることができ、且つ感染効率が高い。レンチウイルスは、外来遺伝子を宿主の染色体に組み込むことによって、持続発現を達成する。
【0128】
本発明において、トランスポゾンプラスミドという用語は、通常、染色体DNAにある自
律複製・転移可能な基本単位である。上記トランスポゾンプラスミドは、開裂、再組み込みなどの一連のプロセスによって、ゲノムの一か所からもう一か所へ“跳び込む”。
【0129】
本発明において、腫瘍という用語は、通常、生体において、局所の組織におけるある細胞が、各種の発癌因子作用下で、遺伝子レベルでその増殖の正常制御を失うことで、クローン性異常に増殖することによって作製された新作物(neogrowth)であり、このような新作物が、占拠性ブロックが多いため、新生物(neoplasm)とも称される。本発明において、上記腫瘍は、固形腫瘍および非固形腫瘍を含んで良い。本発明において、上記腫瘍は、肝癌、肺癌、白血病および中皮腫を含んで良い。
【0130】
本発明において、顕著に増加という用語は、通常、レベル(例えばタンパク質発現量、細胞数)の増加、P<0.05、P<0.04、P<0.03、P<0.02、P<0.01、P<0.005またはP<0.001を指す。又、例えば、上記の顕著に増加というのは、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上
、20%またはそれ以上、30%またはそれ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上増えることを意味する。
【0131】
本発明において、基本的に未増加という用語は、通常、レベル(例えばタンパク質発現量、細胞数)が以前と比べて、一致するか、または、3%またはそれ以下、2%またはそれ以下、1%またはそれ以下、0.5%またはそれ以下、0.4%またはそれ以下、0.3%またはそれ以下、0.2%またはそれ以下、0.1%またはそれ以下増えることを意味する。
【0132】
本発明において、約という用語は、通常、所定の数値の0.5%-10%以上または以下の範囲、例えば所定の数値の0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%以上または以下の範囲に変動することを意味する。
【0133】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能性断片の群から選ばれる1種類または多
種類を含んで良い。
【0134】
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、哺乳動物由来でありうる。例えば、ヒト、マカク、ラットおよびマウス由来でありうる。
【0135】
本発明において、上記機能性断片は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質活性を有する上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の断片またはその短縮型を含んで良い。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6およびその短縮型、および/または、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5およびその短縮型を含んで良い。
【0136】
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、上記
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の細胞内領域を含んで良く、および/または、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の細胞内領域を含んで良い。又、例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の短縮型は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6の膜貫通領域および上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6のLDLRドメインを含んで良く、および/または、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の短縮型は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5の膜貫通領域および上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5のLDLRドメインを含んで良い。
【0137】
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO: 22、24、26および28のいずれかで表されるアミノ酸配列またはそれと少なく
とも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0138】
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 21、23、25および27のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有する。
【0139】
遺伝子改変された免疫細胞
本発明は、上記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高める遺伝子改変された免疫細胞を提供する。
【0140】
本発明において、上記遺伝子改変された免疫細胞は、リンパ細胞を含んで良い。本発明において、上記遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたT細胞を含んでいる。本
発明において、上記遺伝子改変された免疫細胞は、遺伝子改変されたメモリー幹細胞様T
細胞(TSCM)および/または遺伝子改変されたセントラル記憶T細胞(TCM)を含んでいる
。本発明において、上記TSCMは、CCR7+および/またはCD62L+を含有する。本発明において、上記TSCMは、さらに、CD45RA+またはCD45RA-、CD45RO+またはCD45RO-、CD27+、CD28+、CD127+、CD122+、CD3+、CD4+およびCD8+の群から選ばれる1種類または多種類の特性を含む。
【0141】
本発明において、上記免疫細胞は、遺伝子改変された免疫細胞を含んで良く、且つ、上記遺伝子改変された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。
【0142】
本発明において、上記CARは、細胞内ドメインを含んで良く、上記細胞内ドメインは、
シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインを含んで良い。
【0143】
例えば、上記シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、CD3δシグナル伝達ドメインおよびCD3εシグナル伝達ドメインの群から選ばれる部分を含んで良い。例え
ば、上記シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 18で表されるアミノ酸配列またはそれと
少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有してよく、上記シグナル伝達ドメイ
ンをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:17で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有して良い。
【0144】
例えば、上記共刺激ドメインは、CD27共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインの群から選ばれる部分を含んで良い。例えば、上記共刺激ドメインは、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:16のいずれかで表されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良く、上記共刺激ドメインをコードする核酸分子は、SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:15のいずれかで表される核酸配列、またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有して良い。
【0145】
本発明において、上記CARは、ヒンジ領域を含んで良い。例えば、上記ヒンジ領域は、IgG4のヒンジ領域、IgG1のヒンジ領域およびCD8のヒンジ領域の群から選ばれる部分を含んで良い。例えば、上記ヒンジ領域は、SEQ ID NO: 31で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良く、上記ヒンジ領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 32で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有して良い。
【0146】
本発明において、上記CARは、膜貫通領域を含んで良い。例えば、上記膜貫通領域は、CD8膜貫通領域、CD28膜貫通領域およびCD24膜貫通領域の群から選ばれる部分を含んで良い。例えば、上記膜貫通領域は、SEQ ID NO: 33で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良く、上記膜貫通領域をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 34で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有して良い。
【0147】
本発明において、上記CARは、標的指向部分を含んで良い。本発明において、上記標的
指向部分は、抗体または抗原結合断片を含んで良い。上記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、FvおよびScFv断片の群から選ばれて良い。例えば、上記標的指向部分は、ScFvであって良い。
【0148】
本発明において、上記標的指向部分は、腫瘍抗原に特異的に結合および/または認識す
ることができる。例えば、上記標的指向部分は、Bリンパ細胞表面抗原、TNFファミリーメンバー、HERファミリーメンバーおよびGPCファミリーメンバーの群から選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識することができる。又、例えば、上記標的指向部分
は、CD19、BCMA、HER2、MesothelinおよびGPC3の群から選ばれるターゲットに特異的に結合および/または認識することができる。
【0149】
本発明において、上記標的指向部分は、CD19に特異的に結合および/または認識する抗
体またはその抗原結合断片であって良い。上記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 46で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 47で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR2と、SEQ ID NO: 48で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含んで良い。上記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 50で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。本発明において、上記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 43で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 44で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 45で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3とを含む重鎖可変領域を含んで良い。上記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 49で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。
【0150】
本発明において、上記標的指向部分は、SEQ ID NO: 54で表されるアミノ酸配列または
それと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 55
で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含
有するLCDR2と、SEQ ID NO: 56で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相
同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、BCMAに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。上記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 58で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。本発明において、上記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 51で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 52で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 53で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3とを含む重鎖可変領域を含んで良い。上記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 57で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。
【0151】
本発明において、上記標的指向部分は、SEQ ID NO: 70で表されるアミノ酸配列または
それと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO:71で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
するLCDR2と、SEQ ID NO: 72で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同
性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、HER2に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。上記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 74で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。本発明において、上記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 67で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 68で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 69で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3とを含む重鎖可変領域を含んで良い。上記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 73で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。
【0152】
本発明において、上記標的指向部分は、SEQ ID NO: 62で表されるアミノ酸配列または
それと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 63
で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含
有するLCDR2と、SEQ ID NO: 64で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相
同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、Mesothelinに特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。上記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 66で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。上記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 59で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 60で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 61で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3とを含む重鎖可変領域を含んで良い。上記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 65で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。
【0153】
本発明において、上記標的指向部分は、SEQ ID NO: 38で表されるアミノ酸配列または
それと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR1と、SEQ ID NO: 39
で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含
有するLCDR2と、SEQ ID NO: 40で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相
同性を有するアミノ酸配列を含有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、GPC3に特異的に結合および/または認識する抗体またはその抗原結合断片である。上記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 42で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。本発明において、上記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 35で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR1と、SEQ ID NO: 36で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR2と、SEQ ID NO: 37で表され
るアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有するHCDR3とを含む重鎖可変領域を含んで良い。上記重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 41で表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有して良い。
【0154】
本発明において、上記標的指向部分は、SEQ ID NO: 2、4、6、8および10のいずれかで
表されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含有
して良い。本発明において、上記標的指向部分をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 1、3、5、7および9のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有
する核酸配列を含有して良い。
【0155】
本発明において、CDRのアミノ酸位置のエンタルピーは、Kabatに従って算出される。
【0156】
本発明に係るタンパク質、ポリペプチド、アミノ酸配列および/または核酸配列は、少
なくとも、該上記タンパク質またはポリペプチドとは同一または同様の機能を備える変異体または相同物、および/または、該上記タンパク質またはポリペプチドとは同一または
同様の機能を備える変異体または相同物をコードする核酸配列といった範囲を含むことも理解すべきである。
【0157】
本発明において、上記変異体は、上記タンパク質および/または上記ポリペプチド(例
えば、GPC3タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片、または、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片)のアミノ酸配列に1つまたは複数のア
ミノ酸が置換、欠失または付加されているタンパク質またはポリペプチドであって良い。例えば、上記機能性変異体は、既に、少なくとも1個、例えば1~30個、1~20個または1~10個、又、例えば1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸に置換、欠失および/または挿入されることによってアミノ酸変化を含むタンパク質またはポリペプチドを含有して良い。上記機能性変異体は、基本的に、変化(例えば置換、欠失または付加)する前の上記タンパク質または上記ポリペプチドの生物学的特性を保持することができる。例えば、上記機能性変異体は、変化する前の上記タンパク質または上記ポリペプチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%の生物活性(例えば抗原結合能、または、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の生物的機能)を保持することができる。例えば、上記置換が、保存的置換であって良い。
【0158】
本発明において、上記相同物は、上記タンパク質および/または上記ポリペプチド(例
えば、GPC3タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片、または、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片)のアミノ酸配列と少なくとも約85%(
例えば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%
、約98%、約99%またはこれ以上)配列相同性を有するタンパク質またはポリペプチドであって良い。
【0159】
本発明において、上記相同性とは、通常、2個または複数の配列との間の同一性、類似
性または相関性を指す。「配列相同性パーセント」は、2本の整列しようとする配列を比
較ウインドウにわたって比較することにより、2本の配列において同一の核酸塩基(例え
ば、A、T、C、G、I)或いは同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が存在する位置の数を勘定して、マッチする位置の数を算出し、マッチする位置の数を比較ウインドウにおける位置総数(即ち、ウインドウの大きさ)で除算し、結果に100を乗算して、配列相同性パーセントを得る。配列相同性パーセントを特定するための整列は、当該技術分野における周知の様々な手段、例えば、公開されているコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNやMegalign(DNASTAR)ソフトウェアに従って実現される。当該技術分野における当業者は、比較している全長配列範囲や、対象配列領域における最大整列を達成するに必要な任意のアルゴリズムを含めて、配列整列のための適切なパラメータを決定可能である。上記相同性は、FASTAおよびBLASTアルゴリズムで測定することもできる。FASTAアルゴリズムは、W.R.PearsonおよびD.J.Lipmanの“生物学的配列比較のために改善されたツール”、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)、85:2444-2448、1988、およびD.J.LipmanおよびW.R.Pearsonの“タンパク質同一性の高速高感度な検索”、Science、227:1435-1441、1989に記載されている。BLASTアルゴリズムは、S.Altschul、W.Gish、W.Miller、E.W.MyersおよびD.Lipmanの“基本的な局所的整列(alignment)検索ツール”、分子生物学誌、215:403-410、1990に記載されている。
【0160】
本発明において、上記CARは、N端からC端にかけて、上記標的指向部分、上記ヒンジ領
域、上記膜貫通領域、上記共刺激ドメインおよび上記シグナル伝達ドメインを順次に含有して良い。
【0161】
本発明において、上記CARをコードするポリヌクレオチド分子は、5’端から3’端にか
けて、上記標的指向部分をコードするヌクレオチド配列、上記ヒンジ領域をコードするヌクレオチド配列、上記膜貫通領域をコードするヌクレオチド配列、上記膜貫通領域をコードするヌクレオチド配列、上記共刺激ドメインをコードするヌクレオチド配列、および上記シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチド配列を順次に含有して良い。
【0162】
本発明において、上記CARをコードするポリヌクレオチド分子は、さらに、リーダー配
列を含有して良い。例えば、上記リーダー配列をコードする核酸分子は、SEQ ID NO: 30
で表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有して良
い。上記リーダー配列をコードする核酸分子は、上記標的指向部分をコードするヌクレオチド配列の5’端に位置して良い。
【0163】
本発明において、上記遺伝子改変された免疫細胞は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片を発現することができる。例えば、上記遺伝子改変された免疫細胞は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片を発現することができるベクターを有して良い。上記ベクターには、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードするヌクレオチド分子を含んで良い。例えば、上記ポリヌクレオチド分子は、SEQ ID NO: 21、23、25および27のいずれかで表される核
酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有して良い。又、例え
ば、上記ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよび/または
トランスポゾンプラスミドから選ばれて良い。
【0164】
本発明において、上記遺伝子改変された免疫細胞は、上記キメラ抗原受容体(CAR)を
発現することができる。例えば、上記遺伝子改変された免疫細胞は、上記キメラ抗原受容体(CAR)を発現することができるベクターを含んで良い。上記ベクターには、上記キメ
ラ抗原受容体(CAR)をコードするクレオチド分子を含んで良い。又、例えば、上記ベク
ターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよび/またはトランスポゾ
ンプラスミドの群から選ばれて良い。
【0165】
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片を発現することができる上記ベクターと、上記キメラ抗原受容体(CAR)を発現することがで
きる上記ベクターは、同一のベクターであって良いし、異なるベクターであっても良く、該1個または複数のベクターは、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質または
その断片および上記キメラ抗原受容体(CAR)を発現することができ、上記遺伝子改変さ
れた免疫細胞に、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片および上記キメラ抗原受容体(CAR)をともに持たせれば良い。
【0166】
例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片を発現することができる上記ベクターと、上記キメラ抗原受容体(CAR)を発現することができる上記
ベクターは、同一のベクターであって良い。該ベクターにおいて、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする上記ヌクレオチド分子、および上記キメラ抗原受容体(CAR)をコードする上記ヌクレオチド分子は、同一の発現カセット
に位置して良い。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする上記ヌクレオチド分子は、上記キメラ抗原受容体(CAR)をコードする上
記ヌクレオチド分子の3’端に位置して良い。
【0167】
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする上記ヌクレオチド分子は、上記キメラ抗原受容体(CAR)をコードする上記ヌクレオチド分子と直接または間接に連結されて良い。例えば、上記した間接連結は、配列を連結することによって行ってもよい。上記連結配列における5’端は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする上記ヌクレオチド分子の3’端に連結されてよく、かつ、上記連結配列における3’端は、上記キメラ抗原受容体(CAR)をコードする上記ヌクレオチド分子の5’端に連結されてよい。本発明において、上記連結配列は、SEQ ID NO: 19および29のいずれかで表される核酸配列またはそれと少なくとも80%の相同性を有する核酸配列を含有して良い。
【0168】
本発明において、上記遺伝子改変された免疫細胞が発現して得られる上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片と上記キメラ抗原受容体(CAR)は、2つの独立したタンパク質であっても良い。即ち、この2つのものは、連結関係が一切なしで、
いかなる形態のダイ(ポリ)マーまたはタンパク質複合体を形成する。しかし、上記遺伝子改変された免疫細胞が発現して得られる上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片と上記キメラ抗原受容体(CAR)は、お互いに連結したものであっても
良い。例えば、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片と上記キメラ抗原受容体が、この2種類の翻訳により形成されたタンパク質が切断しきれなく、複
合体を形成した場合もある。
【0169】
調製方法
本発明は、上記遺伝子改変された免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを備える、上記遺伝子改変された免疫細胞を調製する方法を提供する。
【0170】
本発明は、さらに、上記遺伝子改変された免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを備える、上記組成物を調製する方法を提供する。
【0171】
本発明において、上記方法は、さらに、末梢血単核細胞PBMC、CD3+Tリンパ細胞、CD8+Tリンパ細胞、CD4+Tリンパ細胞または制御性T細胞を分離することによって得るステップを備えて良い。
【0172】
本発明において、上記方法は、前記遺伝子改変された免疫細胞に対して、分離および分離された前記遺伝子改変された免疫細胞にT細胞培地を投与することを含む活性化を行うステップを備えて良い。
【0173】
本発明において、上記T細胞培地は、DMEM培地、1640培地、MEM培地およびX-VIVO培地の群の1種類または多種類から選ばれて良い。
【0174】
本発明において、上記方法は、さらに、分離された上記末梢血単核細胞PBMCに1種類ま
たは多種類のT細胞刺激因子を加えるステップを備えて良い。
【0175】
例えば、上記T細胞刺激因子は、Bリンパ細胞表面抗原抗体、TNF抗体、細胞内ポリエス
テルおよび抗生物質の群から選ばれて良い。又、例えば、上記T細胞刺激因子は、CD3抗体、CD28抗体、4-1BB抗体、CD80抗体、CD86抗体、PHA、PMAおよびイオノマイシンの群から選ばれて良い。
【0176】
本発明において、上記T細胞刺激因子は、濃度が1~10000ng/mLでありうる CD3抗体を含んで良い。例えば、上記CD3抗体は、濃度が、1~9000ng/mL、1~5000ng/mL、1~4000ng/mL、1~3000ng/mL、1~1000ng/mL、1~500ng/mL、1~400ng/mL、1~300ng/mL、1~200ng/mL、1~100ng/mL、1~50ng/mL、1~40ng/mL、1~30ng/mL、1~20ng/mL、1~10ng/mLまたは1~5ng/mLであって良い。本発明において、上記T細胞刺激因子は、濃度が1~10000ng/mLでありうる CD28抗体を含んで良い。例えば、上記CD28抗体は、濃度が、1~9000ng/mL、1~5000ng/mL、1~4000ng/mL、1~3000ng/mL、1~1000ng/mL、1~500ng/mL、1~400ng/mL、1~300ng/mL、1~200ng/mL、1~100ng/mL、1~50ng/mL、1~40ng/mL、1~30ng/mL、1~20ng/mL、1~10ng/mLまたは1~5ng/mLであって良い。
【0177】
本発明において、上記方法は、さらに、分離された上記PBMCに1種類または多種類のサ
イトカイン剤を入れることを含んで良い。本発明において、上記サイトカイン剤は、インターロイキンを含んで良い。例えば、上記インターロイキンは、IL2、IL21、IL7およびIL15の群から選ばれる1種類または多種類を含んで良い。
【0178】
本発明において、上記インターロイキンは、濃度が0.1~10000U/mLでありうるIL2を含
有して良い。例えば、上記IL2は、濃度が0.1~8000U/mL、0.1~6000U/mL、0.1~4000U/mL、0.1~2000U/mL、5~2000U/mL、5~1900U/mL、5~1800U/mL、5~1700U/mL、5~1600U/mL、5~1500U/mL、5~1400U/mL、5~1300U/mL、5~1200U/mL、5~1100U/mL、5~1000U/mL、5~900U/mL、5~800U/mL、5~700U/mL、5~600U/mL、5~500U/mL、5~400U/mL、5~300U/mL、5~200U/mL、5~500U/mL、5~400U/mL、5~300U/mL、5~200U/mL、5~100U/mL、5~50U/mL、5~40U/mL、5~30U/mL、5~20U/mLまたは5~10U/mLであって良い。
【0179】
本発明において、上記インターロイキンは、濃度が0.01~1000ng/mLでありうるIL21を
含有して良い。例えば、上記IL21は、濃度が、0.01~800ng/mL、0.01~600ng/mL、0.01~400ng/mL、0.01~200ng/mL、0.01~100ng/mL、0.1~100ng/mL、0.1~90ng/mL、0.1~80ng/mL、0.1~70ng/mL、0.1~60ng/mL、0.1~50ng/mL、0.1~40ng/mL、0.1~30ng/mL、0.1~20ng/mL、0.1~10ng/mLまたは0.1~5ng/mLであって良い。
【0180】
本発明において、上記インターロイキンは、濃度が0.01~1000ng/mLでありうるIL7を含有して良い。例えば、上記IL7は、濃度が、0.01~800ng/mL、0.01~600ng/mL、0.01~400ng/mL、0.01~200ng/mL、0.01~100ng/mL、0.1~100ng/mL、0.1~90ng/mL、0.1~80ng/mL、0.1~70ng/mL、0.1~60ng/mL、0.1~50ng/mL、0.1~40ng/mL、0.1~30ng/mL、0.1~20ng/mL、0.1~10ng/mLまたは0.1~5ng/mLであって良い。
【0181】
本発明において、上記インターロイキンは、濃度が0.01~1000ng/mLでありうるIL15を
含有して良い。例えば、上記IL15は、濃度が、0.01~800ng/mL、0.01~600ng/mL、0.01~400ng/mL、0.01~200ng/mL、0.01~100ng/mL、0.1~100ng/mL、0.1~90ng/mL、0.1~80ng/mL、0.1~70ng/mL、0.1~60ng/mL、0.1~50ng/mL、0.1~40ng/mL、0.1~30ng/mL、0.1~20ng/mL、0.1~10ng/mLまたは0.1~5ng/mLであって良い。
【0182】
免疫細胞増殖促進、メモリー免疫細胞産生促進、免疫細胞分化抑制、サイトカイン放出増強および腫瘍殺傷能増大
一方で、本発明は、免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、免疫細胞増殖を促進する方法を提供する。
【0183】
一方で、本発明は、上記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることによって、上記免疫細胞のメモリー免疫細胞への分化を促進するステップを含む、メモリー免疫細胞産生を促進する方法を提供する。
【0184】
一方で、本発明は、上記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めることによって、上記免疫細胞の分化型免疫細胞への分化を抑制するステップを含む、免疫細胞分化を抑制する方法を提供する。
【0185】
一方で、本発明は、上記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、免疫細胞によるサイトカインの放出を増強させる方法を提供する。
【0186】
本発明において、上記サイトカインは、インターロイキン、インターフェロンおよび/
または腫瘍壊死因子を含有して良い。本発明において、上記サイトカインは、IL-2、IL4
、IL6、IL7、IL10、IL21、TNF-αおよび/またはIFNγを含有して良い。
【0187】
一方で、本発明は、上記免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、免疫細胞の腫瘍に対する殺傷能を増大させる方法を提供する。
【0188】
一方で、本発明は、腫瘍にかかりやすい被験者に、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が高められた免疫細胞を投与するステップを含む、被験者における腫瘍再発を予防する方法を提供する。
【0189】
一方で、本発明は、上記被験者に、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が高められた免疫細胞を投与するステップを含む、必要のある被験者における腫瘍を治療する方法を提供する。
【0190】
本発明において、上記腫瘍は、肝癌、肺癌、白血病および中皮腫から選ばれて良い。本発明において、上記方法は、インビボ方法およびインビトロ方法を含んで良い。
【0191】
本発明において、前述した発現量を高めるとは、上記免疫細胞における上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を、対照免疫細胞の発現量よりも顕著に(例えば、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、30%ま
たはそれ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上)高めることであって良く、但し、上記対照免疫細胞が、そのうちの上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が基本的に高められていない対応する免疫細胞である。
【0192】
本発明において、前述したメモリー免疫細胞産生を促進するとは、上記免疫細胞により産生されたメモリー免疫細胞の数を、対照免疫細胞により産生されたメモリー免疫細胞の数よりも顕著に(例えば、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、30%またはそれ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%
またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上)高めることであって良く、但し、上記対照免疫細胞が、そのうちの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が基本的に高められていない対応する免疫細胞である。
【0193】
本発明において、前述した免疫細胞分化を抑制するとは、上記免疫細胞により産生された分化型免疫細胞の数を、対照免疫細胞により産生されたメモリー免疫細胞の数よりも顕著に(例えば、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、30%または
それ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上)下げることであって良く、但し、上記対照免疫細胞が、そのうちの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が基本的に高められていない対応する免疫細胞である。
【0194】
本発明において、前述した免疫細胞によるサイトカインの放出を増強させるとは、上記免疫細胞により放出されたサイトカインの数を、対照免疫細胞により放出されたサイトカインの数よりも顕著に(例えば、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、30%またはそれ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上)高めることであって良く、但し、上記対照免疫細胞が、そのうちの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が基本的に高められていない対応する免疫細胞である。
【0195】
本発明において、前述した免疫細胞の腫瘍に対する殺傷能を増大させるとは、上記免疫細胞の腫瘍に対する殺傷能を、対照免疫細胞の腫瘍に対する殺傷能よりも顕著に(例えば、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、30%またはそれ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上)向上することであって良く、但し、上記対照免疫細胞が、そのうちの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が基本的に高められていない対応する免疫細胞である。
【0196】
本発明において、前述した被験者における腫瘍の再発を予防するとは、上記免疫細胞によって被験者における腫瘍の再発を予防する能力を、対照免疫細胞によって被験者における腫瘍の再発を予防する能力よりも顕著に(例えば、5%またはそれ以上、10%またはそれ
以上、20%またはそれ以上、30%またはそれ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上)高めることであって良く、但し、上記対照免疫細胞が、そのうちの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量が基本的に高められていない対応する免疫細胞である。
【0197】
本発明において、前述した必要のある被験者における腫瘍を治療するとは、上記免疫細胞による腫瘍の治療効果を、対照免疫細胞による腫瘍の治療効果よりも顕著に(例えば、5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、30%またはそれ以上、40%またはそれ以上、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、80%またはそれ以上、90%またはそれ以上、100%またはそれ以上)高めることであって良く、但し、
上記対照免疫細胞が、そのうちの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその
断片の発現量が基本的に高められていない対応する免疫細胞である。
【0198】
例えば、上記対応する免疫細胞は、リンパ細胞を含有して良い。本発明において、上記対応する免疫細胞は、T細胞を含有して良い。本発明において、上記T細胞は、メモリー幹細胞様T細胞(TSCM)および/またはセントラル記憶T細胞(TCM)を含有して良い。本発明において、上記TSCMは、CCR7+および/またはCD62L+であって良い。本発明において、上記TSCMは、さらに、CD45RA+またはCD45RA-、CD45RO+またはCD45RO-、CD27+、CD28+、CD127+、CD122+、CD3+、CD4+およびCD8+の群から選ばれる1種類または多種類の特性を有して良
い。本発明において、上記対応する免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺
伝子改変された免疫細胞を含有して良い。本発明において、上記対応する免疫細胞は、遺伝子改変されたT細胞を含有して良い。
【0199】
本発明において、上記対応する免疫細胞において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の含有量が、ただ、正常個体における上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量に過ぎないか、または、正常個体における上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の含有量よりも基本的に高められていない発現量である。例えば、上記した基本的に高められていないとは、多くとも4.5%、多くとも4%、多くとも3%、多くとも2%、多くとも1%、多くとも0.5%、多くとも0.3%、多くとも0.1%、多くとも0.01%、またはそれ以下を指す。本発明において、上
記対応する免疫細胞は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードするヌクレオチド分子を有するベクターを含まなくても良く、および/または、
上記対応する免疫細胞は、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードするヌクレオチド分子を含まなくても良い。
【0200】
本発明において、上記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片、および/または上記サイトカインの発現量を測定する方法は、定量PCR、western blotおよび免疫組織化学法を含んで良い。
【0201】
本発明において、上記メモリー免疫細胞および/または上記分化型免疫細胞を測定する
方法は、フローサイトメトリー、免疫蛍光抗体法、電磁ビーズ分離法、ELISA、ELISPOTおよび定量PCRを含んで良い。
【0202】
本発明において、腫瘍治療効果の評価には、腫瘍容積、全生存期間(OS)、完全寛解期(DOR)、病状安定期間、無病生存期間(DFS)、無増悪生存期間(PFS)、病勢制御率(DCR)、客観的奏効率(ORR)および/または臨床的有用度の群から選ばれる指標を使用することができる。
【0203】
本発明において、被験者腫瘍再発の予防効果の評価には、腫瘍マーカー(例えば、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的遺伝子およびがん抑制遺伝子)の発現レベル、組織学的検出結果(例えば、上皮過形成、ポリープの消失度合い)、画像所見(例えば、マンモグラフィーテスト結果)および/または血清マーカー(例えば血清遊離DNA、メチル化DNA)の発現レベルの群から選ばれる指標を使用することができる。
【0204】
組成物およびその用途
本発明は、上記遺伝子改変された免疫細胞を含む組成物を提供する。
【0205】
本発明において、上記組成物は、さらに、任意選択で薬学的に許容可能な担体を含んで良い。上記薬学的に許容可能な担体は、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水ポリマー、アミノ酸、糖、キレート剤、対イオン、金属複合体及び/又は非イオン界面活性剤などを含んで良い。
【0206】
本発明において、上記組成物は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位におけるin situ投与、吸入、直腸投与、膣内投与、経皮投与又は皮下ストレージによる投与の
ために調製されることができる。
【0207】
上記医薬組成物は、腫瘍成長の抑制に用いられる。例えば、本発明の医薬組成物は、疾患の発展や進行を抑制または遅延したり、腫瘍の大きさを低減したり(ひいては、基本的に腫瘍を消去)、及び/又は、疾患状態を低減及び/又は安定させることができる。
【0208】
本発明に係る組成物は、治療有効量の上記抗体またはその抗原結合断片を含んで良い。上記治療有効量は、進行リスクがある被験者の病気(例えば癌)及び/又はその何れの合
併症を予防及び/又は治療(少なくとも一部治療)するための用量である。
【0209】
本発明は、腫瘍を治療および/または予防するための医薬品の調製における上記遺伝子
改変された細胞および/または上記組成物の用途を提供する。
【0210】
本発明において、上記腫瘍は、肝癌、肺癌、白血病および中皮腫から選ばれてよい。
【0211】
以下の実施例は、いかなる理論にもよらず、本発明の要件、方法やシステムの作用形態を釈明することに過ぎなく、本願発明の範囲を制限するものではない。
【0212】
実施例
実施例1 レンチウイルスベクターの構築
上記CAR-Tは、標的指向GPC3、CD19、Mesothelin(MSLN)、HER2、BCMAを例として、CAR構造を含む断片を人工合成して、レンチウイルスベクター(LV100A、System Biosciences会社)に構築し、そして、この明細書の記載にしたがって、トランスフェクションによってレンチウイルスを(図1に示したように)作製することにより、それぞれGPC3-41BB、GPC3-41BB-L6、GPC3-41BB-TL6、GPC3-CD28、GPC3-CD28-L6、GPC3-CD28-TL6、GPC3-41BB-L5、GPC3-41BB-TL5、BCMA-41BB、BCMA-41BB-L6、BCMA-41BB-TL6、CD19-41BB、CD19-41BB-L6、CD19-41BB-TL6、MSLN-41BB、MSLN-41BB-L6、MSLN-41BB-TL6、HER2-41BB、HER2-41BB-L6およびHER2-41BB-TL6レンチウイルスを得た。
【0213】
GPC3-41BBは、リーダー配列、GPC3 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zetaを、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15およびSEQ ID NO.17に示された通りである。
【0214】
GPC3-41BB-L6は、リーダー配列、GPC3 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zeta、2A、L6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構
築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.21に示された通り
である。
【0215】
GPC3-41BB-TL6は、リーダー配列、GPC3 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB
、CD3zeta、2A、TL6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.23に示された通
りである。
【0216】
GPC3-41BB-L5は、リーダー配列、GPC3 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、
CD3zeta、2A、L5を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構
築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.25に示された通り
である。
【0217】
GPC3-41BB-TL5は、リーダー配列、GPC3 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB
、CD3zeta、2A、TL5を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.27に示された通
りである。
【0218】
GPC3-CD28は、リーダー配列、GPC3 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、CD28、CD3zetaを、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.13およびSEQ ID NO.17に示された通りである。
【0219】
GPC3-CD28-L6は、リーダー配列、GPC3 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、CD28、CD3zeta、2A、L6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構
築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.21に示された通り
である。
【0220】
GPC3-CD28-TL6は、リーダー配列、GPC3ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、CD28、CD3zeta、2A、TL6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.23に示された通り
である。
【0221】
BCMA-41BBは、リーダー配列、BCMAScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zetaを、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15およびSEQ ID NO.17に示された通りである。
【0222】
BCMA -41BB-L6は、リーダー配列、BCMAScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zeta、2A、L6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構
築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.21に示された通り
である。
【0223】
BCMA -41BB-TL6は、リーダー配列、BCMAScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB
、CD3zeta、2A、TL6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.23に示された通
りである。
【0224】
CD19-41BBは、リーダー配列、CD19ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zetaを、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15およびSEQ ID NO.17に示された通りである。
【0225】
CD19-41BB-L6は、リーダー配列、CD19ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zeta、2A、L6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.21に示された通りである。
【0226】
CD19-41BB-TL6は、リーダー配列、CD19ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zeta、2A、TL6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.23に示された通り
である。
【0227】
MSLN -41BBは、リーダー配列、MSLNScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zetaを、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15およびSEQ ID NO.17に示された通りである。
【0228】
MSLN -41BB-L6は、リーダー配列、MSLNScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zeta、2A、L6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構
築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.21に示された通り
である。
【0229】
MSLN -41BB-TL6は、リーダー配列、MSLNScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB
、CD3zeta、2A、TL6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.23に示された通
りである。
【0230】
HER2-41BBは、リーダー配列、HER2ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zetaを、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15およびSEQ ID NO.17に示された通りである。
【0231】
HER2-41BB-L6は、リーダー配列、HER2ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB、CD3zeta、2A、L6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.21に示された通りである。
【0232】
HER2-41BB-TL6は、リーダー配列、HER2 ScFv、CD8ヒンジ領域および膜貫通領域、41BB
、CD3zeta、2A、TL6を、5’端から3’端にかけて順次にスプライシングすることによって構築されてなる。そのヌクレオチド配列が、それぞれSEQ ID NO.30、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19およびSEQ ID NO.23に示された通
りである。
【0233】
実施例2 レンチウイルス感染T細胞
ficoll分離液を用いて新鮮なヒト末梢血より、1×107より大きい末梢血単核リンパ細胞(PBMC)を分離採取した。PBSで、最終濃度が1μg/mlになるように、抗ヒトCD3および抗
ヒトCD28抗体を希釈した。そして、細胞培養皿へ希釈された抗体混合液を加え、そして、
細胞培養皿に均一に敷き広げ、室温で2時間インキュベートした。2時間後、PBSで抗体混
合液を1回洗浄した。そして、分離されたPBMCを、その最終濃度が1×106個細胞/mlになるように、Xvivo15培地、5%FBS、200U/mlIL2TまたはXvivo15培地、5%FBS、20ng/ml IL21、10ng/ml IL7を含有するリンパ細胞培養液で再懸濁させ、抗体混合液を入れた培養皿に加え、37℃、5% CO2で24時間培養することによって、T細胞を活性化した。
【0234】
一定量のT細胞培養液を取り、1mg/mlの最終濃度のsynperonic F108に入れて均一に混合し、水浴で37℃に加熱し、非感染性の試薬を配合した。その後、実験に必要な細胞培養皿を用意した。まず、1mg/mlの 抗ヒトCD3抗体および0.5mg/mlの抗ヒトCD28抗体を取り、先にPBS緩衝液によって1:1000の容積比で希釈して均一に混合し、そして、retronectin(1mg/ml)試薬によって1:40の容積比で希釈して均一に混合し、そして細胞培養皿に均一に敷き広げ、室温で2時間インキュベートした。2時間後、PBSで洗浄し、細胞培養皿の用意が完了した。
【0235】
配合された感染試薬で、活性化されたT細胞を希釈し、MOI=3の割合でそれぞれ実施例1
に調製された各レンチウイルスを入れて均一に混合した。その後、上記細胞培養皿に均一に敷き広げ、レンチウイルス感染を行うことにより、それぞれGPC3-41BB、GPC3-41BB-L6
、GPC3-41BB-TL6、GPC3-CD28、GPC3-CD28-L6、GPC3-CD28-TL6、GPC3-41BB-L5、GPC3-41BB-TL5、BCMA-41BB、BCMA-41BB-L6、BCMA-41BB-TL6、CD19-41BB、CD19-41BB-L6、CD19-41BB-TL6、MSLN-41BB、MSLN-41BB-L6、MSLN-41BB-TL6、HER2-41BB、HER2-41BB-L6およびHER2-41BB-TL6を発現するT細胞を得た。感染後の細胞密度を1×106個細胞/mlに維持するように、これらの細胞密度を監視した。14日後、細胞数が10~100倍に増殖した。
【0236】
実施例3 LRP6、LRP6短縮型、LRP5またはLRP5短縮型による記憶T細胞形成の促進
37℃、5%CO2の細胞培養インキュベーターにおいて、インビトロで実施例2で得られたそれぞれGPC3-41BB、GPC3-41BB-L6、GPC3-41BB-TL6、GPC3-CD28、GPC3-CD28-L6、GPC3-CD28-TL6、GPC3-41BB-L5、GPC3-41BB-TL5、BCMA-41BB、BCMA-41BB-L6、BCMA-41BB-TL6、CD19-41BB、CD19-41BB-L6、CD19-41BB-TL6、MSLN-41BB、MSLN-41BB-L6、MSLN-41BB-TL6、HER2-41BB、HER2-41BB-L6およびHER2-41BB-TL6を発現するT細胞を、合計9日間または13日間培養した。
【0237】
BDフローサイトメトリーで、T細胞におけるCD3、CD8、CD45RO、CD45RA、CD62L、CCR7、CD95、CD122、CD127、CD27、CD28タンパク質の発現様子を測定した。ここで、測定されたタンパク質発現結果として、図2に示された通りであった。
【0238】
これらの結果から、GPC3-41BB-L6またはGPC3-41BB-TL6を発現するT細胞において、細胞総数中でメモリー幹細胞様T細胞(TSCM)およびセントラル記憶T細胞(TCM)が占める割
合がともに対照群よりも明らかに高く、GPC3-CD28-L6またはGPC3-CD28-TL6を発現するT細胞において、細胞総数中でTSCMおよびTCMが占める割合がともに対照群よりも明らかに高
く、GPC3-41BB-L5またはGPC3-41BB-TL5を発現するT細胞において、細胞総数中でTSCMおよびTCMが占める割合がともに対照群よりも明らかに高く、BCMA-41BB-L6またはBCMA-41BB-TL6を発現するT細胞において、細胞総数中でTSCMおよびTCMが占める割合がともに対照群よりも明らかに高く、CD19-41BB-L6またはCD19-41BB-TL6を発現するT細胞において、細胞総数中でTSCMおよびTCMが占める割合がともに対照群よりも明らかに高く、MSLN-41BB-L6またはMSLN-41BB-TL6を発現するT細胞において、細胞総数中でTSCMおよびTCMが占める割合がともに対照群よりも明らかに高く、HER2-41BB-L6またはHER2-41BB-TL6を発現するT細胞において、細胞総数中でTSCMおよびTCMが占める割合もともに対照群よりも明らかに高いことが分かった。
【0239】
実施例4 LRP6またはその短縮型抑制Treg細胞の分化
37℃、5%CO2の細胞培養インキュベーターにおいて、インビトロで実施例2で得られたそれぞれGPC3-41BBおよびGPC3-41BB-L6を発現するT細胞を、合計9日間または12日間培養し
た。BDフローサイトメトリーで、T細胞におけるCD3、CD4、CD25、CD127、FoxP3タンパク
質の発現様子を測定して、測定されたタンパク質発現結果として、図3に示された通りで
あった。結果によれば、GPC3-41BB-L6を発現するT細胞において、CD4+ T細胞中で制御性T細胞(Treg)が占める割合が対照群のGPC3-41BBを発現するT細胞よりも明らかに低いと示した。
【0240】
実施例5 LRP6、LRP6短縮型、LRP5またはLRP5短縮型による腫瘍抗原誘導の特異的CAR-T
細胞増殖の促進
実施例2で得られたGPC3-41BB、GPC3-41BB-L6またはGPC3-41BB-TL6を発現するT細胞と、照射Huh7またはHepG2細胞(Chinese Academy of Sciences (Shanghai, China)細胞バンクより購入)とを、1:1の細胞数割合でXvivo15培地により、5日にもう一度補足照射を行うHuh7またはHepG2を、毎回トリパンブルー染色でカウントするように3回刺激するように共
培養し、GPC3-41BB、GPC3-41BB-L5またはGPC3-41BB-TL5を発現するT細胞と、照射Huh7ま
たはHepG2細胞(Chinese Academy of Sciences (Shanghai, China)細胞バンクより購入)とを、1:1の細胞数割合でXvivo15培地により、5日にもう一度補足照射を行うHuh7またはHepG2を、毎回トリパンブルー染色でカウントするように3回刺激するように共培養し、HER2-41BB、HER2-41BB-L6またはHER2-41BB-TL6を発現するT細胞と、照射SKOV3細胞(Chinese Academy of Sciences (Shanghai, China)細胞バンクより購入)とを、1:1の細胞数割合でXvivo15培地により、5日にもう一度補足照射を行うSKOV3を、毎回トリパンブルー染色でカウントするように3回刺激するように共培養したところ、各群の細胞増殖様子が、図4に示された通りであった。これらの結果から、GPC3-41BB-L6またはGPC3-41BB-TL6を発現するT細胞の増殖倍数が、対照群(GPC3-41BBを発現するT細胞)よりも、GPC3-41BB-L5またはGPC3-41BB-TL5のT細胞を発現する増殖倍数が、対照群よりも、HER2-41BB-L6またはHER2-41BB-TL6を発現するT細胞の増殖倍数も、対照群(HER2-41BBを発現するT細胞)よりも、明らかに高いと分かった。
【0241】
実施例6 LRP6またはその短縮型によるCAR-T細胞インビボ増殖およびサイトカイン放出
の促進
NSGマウス(Beijing baiaosaitu gene Biotechnology会社より購入)に対して、Huh7細胞を(1×107個/匹)皮下接種し、14日後、マウス腫瘍容積が約100mm3として計測された
。この時、マウスを、6匹を1群として4群に分け、それぞれがT細胞群、GPC3-41BB群、GPC3-41BB-L6群およびGPC3-41BB-TL6群であった。そして、それぞれの尾静脈より細胞を(即ち、1群ずつ改変されていないT細胞、GPC3-41BBを発現するT細胞、GPC3-41BB-L6を発現するT細胞、およびGPC3-41BB-TL6を発現するT細胞をそれぞれ注射し、用量が3×106個/匹であった)注射し、8日目に、マウスの尾から50μ採血した。BDフローサイトメトリーによって、1群ずつヒトCD8、CD4タンパク質の発現を測定した。結果として、図5Aに示された通りであった。図5Aの結果から、GPC3-41BB-L6またはGPC3-41BB-TL6群において細胞総数中でCD8、CD4タンパク質を発現する細胞が占める割合が、その他の対照群よりも明らかに高いと分かった。
【0242】
NSGマウス(Beijing baiaosaitu gene Biotechnology会社より購入)に対して、Huh7細胞を(1×107個/匹)皮下接種し、14日後、マウス腫瘍容積が約100mm3として計測された
。この時、マウスを、6匹を1群として5群に分け、それぞれがT細胞群、GPC3-41BB群およ
びGPC3-41BB-L6群であった。そして、それぞれの尾静脈よりT細胞群に対してT細胞を(即ち、1群ずつ改変されていないT細胞を注射し、用量が2×106個/匹であった)、GPC3-41BB群に対してGPC3-41BBを発現するT細胞を(用量が8×105個/匹であった)、GPC3-41BB-L6
群に対してGPC3-41BB-L6を発現するT細胞を(用量が3×105個/匹、8×105個/匹または2×106個/匹であった)注射し、8日目に、マウスの尾から50μl採血した。BDフローサイトメ
トリーによって、1群ずつヒトIL-2、IL4、IL6、IL10、TNF-αおよびIFNγサイトカインの発現を測定した。結果として、図5Bに示された通りであった。図5Bの結果から、GPC3-41BB-L6群においてIFNγサイトカインの発現が、その他の対照群よりも明らかに高いと分かった。
【0243】
実施例7 LRP6またはその短縮型によるCAR-T細胞抗腫瘍効果の増強
NSGマウス(Beijing baiaosaitu gene Biotechnology会社より購入)に対して、Huh7細胞を(用量が1×107個/匹であった)皮下接種し、14日後、マウス腫瘍容積が約100mm3
して計測された。この時、マウスを、8匹を1群として4群に分け、それぞれがT細胞群、GPC3-41BB群およびGPC3-41BB-L6群であった。そして、それぞれの尾静脈よりT細胞群に対してT細胞を(即ち、1群ずつ改変されていないT細胞を注射し、用量が8×105個/匹であった)、GPC3-41BB群に対してGPC3-41BBを発現するT細胞を(用量が8×105個/匹であった)、GPC3-41BB-L6群に対してGPC3-41BB-L6を発現するT細胞を(用量が3×105個/匹または8×105個/匹であった)注射した。
【0244】
毎週の月曜日および木曜日に、それぞれ腫瘍容積サイズを計測し、マウス死亡状況を記録した。結果として、図6に示された通りであった。これらの結果から、GPC3-41BB-L6群
において抗腫瘍効果およびマウス生存率が、ともにその他の対照群よりも、約3倍高いと
分かった。
【0245】
実施例8 LRP6またはその短縮型促進CAR-T細胞在インビボ長期存活且予防腫瘍再発
NSGマウス(Beijing baiaosaitu gene Biotechnology会社より購入)に対して、Huh7細胞を(用量が1×107個/匹であった)皮下接種し、14日後、マウス腫瘍容積が約100mm3
して計測された。この時、マウスを、9匹を1群として3群に分け、それぞれがT細胞群、GPC3-41BB群およびGPC3-41BB-L6群であった。そして、それぞれの尾静脈よりT細胞群に対してT細胞を(用量が2×106個/匹であった)、GPC3-41BB群に対してGPC3-41BBを発現するT細胞を(用量が2×106個/匹であった)、GPC3-41BB-L6群に対してGPC3-41BB-L6を発現す
るT細胞を(用量が2×106個/匹であった)注射した。
【0246】
腫瘍が完全に消失してから85日後、NSGマウスに対して、再度Huh7細胞を(用量が3×107個/匹であった)皮下接種した。99日目に、マウスの尾から50μl採血し、BDフローサイトメトリーによって1群ずつヒトCD8、CD4およびCD3タンパク質の発現を測定し、120日目に、マウスの骨髄を取り出し、BDフローサイトメトリーによって1群ずつヒトCD8、CD4およびCD3タンパク質の発現を測定した。
【0247】
結果として、図7に示された通りであった。結果的に、GPC3-41BB-L6群については、末
梢血における細胞総数中でCD8またはCD4タンパク質を発現する細胞が占める割合、および骨髄における細胞総数中でCD3タンパク質を発現する細胞が占める割合が、ともにGPC3-41BB群よりも遥かに超え、また、GPC3-41BB-L6群のマウスが、再度腫瘍細胞が接種されても、腫瘍を形成することができなかった。これは、LRP6またはその短縮型がインビボにおけるCAR-T細胞の長期存活を促進すると共に、腫瘍再発予防の利点を持つことを示している。
【0248】
以上、解釈又は例示による詳しい説明を記載したが、添付の請求項の範囲を限定するわけではない。当業者にとっては、これまで本明細書に記載の実施形態に、多様な変更などがあることが明らかであり、且つ、添付の請求項および該当する実施形態の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2025023986000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の発現量を高めるステップを含む、
免疫細胞増殖を促進する方法。
【外国語明細書】