(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023991
(43)【公開日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ノロウイルスS粒子ベースのワクチンならびにその作製および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/15 20060101AFI20250212BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250212BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250212BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20250212BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20250212BHJP
C07K 14/08 20060101ALI20250212BHJP
C07K 17/02 20060101ALI20250212BHJP
C07K 14/14 20060101ALI20250212BHJP
C07K 14/11 20060101ALI20250212BHJP
C07K 14/445 20060101ALI20250212BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61K39/15
A61P37/04 ZNA
A61P1/00
A61P31/14
C07K19/00
C07K14/08
C07K17/02
C07K14/14
C07K14/11
C07K14/445
C12N7/04
A61P37/04
A61K39/15 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024193314
(22)【出願日】2024-11-02
(62)【分割の表示】P 2019546799の分割
【原出願日】2018-03-15
(31)【優先権主張番号】62/477,481
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】タン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、シー、ジェイソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワクチン組成物、特に、抗原提示のための多価二十面体組成物を提供する。
【解決手段】S粒子を含む抗原提示のための多価二十面体組成物であって、前記S粒子が、a)ノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質と、b)前記ノロウイルスSドメインタンパク質に作動可能に連結されたリンカータンパク質ドメインと、c)前記リンカーに作動可能に連結された抗原タンパク質ドメインと、を含む組換え融合タンパク質を含む、多価二十面体組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S粒子を含む抗原提示のための多価二十面体組成物であって、前記S粒子が、
a)ノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質と、
b)前記ノロウイルスSドメインタンパク質に作動可能に連結されたリンカータンパク質ドメインと、
c)前記リンカーに作動可能に連結された抗原タンパク質ドメインと、を含む組換え融合タンパク質を含む、多価二十面体組成物。
【請求項2】
前記組成物が、二十面体対称構造を有する、請求項1に記載の多価二十面体組成物。
【請求項3】
前記組成物が、抗原提示のための60個の部位を含む、請求項1または2に記載の多価二十面体組成物。
【請求項4】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、前記NoV Sドメインタンパク質のプロテイナーゼ切断部位に変異を含み、前記変異が、前記部位をトリプシン切断に対して耐性を示す、請求項1~3のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項5】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、前記プロテイナーゼ切断部位に対する変異を含み、前記変異が、69位または70位にあり、前記変異が、前記部位をトリプシン切断に対して耐性を示す、請求項1~4のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項6】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、前記プロテイナーゼ切断部位に対する変異を含み、前記変異が、R69位で発生し、好ましくは前記変異が、前記プロテイナーゼ切断部位を破壊するのに十分なK以外の任意のアミノ酸であり、より好ましくは、前記変異が、R69Aである、請求項1~5のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項7】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、前記プロテイナーゼ切断部位に対する変異を含み、前記変異が、N70位で発生し、好ましくは前記変異が、前記プロテイナーゼ切断部位を破壊するのに十分なP以外の任意のアミノ酸である、請求項1~6のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項8】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、非天然ジスルフィド結合の結合部位を提供するのに十分な変異を含む、請求項1~7のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項9】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、前記多価二十面体S粒子の隣接するSドメインタンパク質間に、少なくとも1つの非天然ジスルフィド結合の結合部位、または少なくとも2つの非天然ジスルフィド結合の結合部位、または少なくとも3つの非天然ジスルフィド結合の結合部位を提供するのに十分なシステイン残基に立体的に互いに近い少なくとも2つのアミノ酸の変異を含む、請求項1~8のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項10】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、少なくとも1つの非天然ジスルフィド結合形成部位を提供するのに十分な変異を含み、前記変異が、V57C、Q58C、S136C、M140C、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項11】
前記ノロウイルスSドメインタンパク質が、カリシウイルスのものであり、前記カリシウイルスが、単一カプシドタンパク質を180コピー有することを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項12】
前記リンカーが、前記Sドメインタンパク質粒子と提示された抗原との間に空間および特定の柔軟性を提供するのに十分な長さのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の多価二十面体組成物。
【請求項13】
前記リンカーが、3~6個のアミノ酸を含む、請求項1~12のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項14】
前記抗原タンパク質ドメインが、8個のアミノ酸から最大約300個のアミノ酸までのサイズ、または8個のアミノ酸から最大約400個のアミノ酸までのサイズ、または8個のアミノ酸から最大約500個のアミノ酸までのサイズを有する抗原を含む、請求項1~13のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項15】
前記抗原タンパク質ドメインが、ロタウイルス(RV)抗原を含む、請求項1~14のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項16】
前記抗原タンパク質ドメインが、RVスパイクタンパク質抗原(VP8抗原)を含む、請求項1~15のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項17】
前記抗原タンパク質ドメインが、マラリア原虫Plasmodium falciparumのスポロゾイト表面タンパク質(CSP)のTSR抗原、A型インフルエンザウイルスのHA1タンパク質およびM2eエピトープの受容体結合ドメイン、E型肝炎のPドメイン抗原、アストロウイルスの表面スパイクタンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される抗原を含む、請求項1~16のいずれかに記載の多価二十面体組成物。
【請求項18】
組換え融合タンパク質であって、
a)好ましくはプロテアーゼ部位を破壊するための1つ以上の変異、より好ましくはプロテアーゼ部位を破壊し、かつ1つまたは2つまたは3つのシステイン残基を導入するための1つ以上の変異を有する、ノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質と、
b)前記ノロウイルスSドメインタンパク質に作動可能に連結されたリンカータンパク質ドメインと、
c)前記リンカーに作動可能に連結された抗原タンパク質ドメインと、を含む、組換え融合タンパク質。
【請求項19】
請求項1~17のいずれかに記載の多価二十面体構造を作製する方法であって、a)改変されたNoV Sドメインタンパク質を含む第1の領域を作製するステップであって、前記改変が、露出されたプロテアーゼ切断部位を破壊するのに十分な変異であって、前記変異がタンパク質分解を防止する変異、好ましくはR69A変異であり、Sドメイン間タンパク質ジスルフィド結合を形成するのに十分な前記ノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質中に1つ以上の変異を導入する変異、好ましくは、V57C、Q58C、S136CおよびM140C、ならびにそれらの組み合わせから選択される変異を含む、作製するステップと、b)リンカーおよび抗原を用いて、前記第1の領域を組換え発現するステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記組成物が、E.coliで産生される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫応答の誘発を、それを必要としている個体において行う方法であって、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップ、好ましくは、前記組成物を、2回以上、または3回以上、または4回以上投与するステップを含む、方法。
【請求項22】
請求項1~17のいずれかに記載の組成物の少なくとも1用量を含む容器。
【請求項23】
請求項22に記載の1つ以上の容器、送達装置、および前記組成物の投与のための説明書を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月28日に出願された米国仮出願第62/477,481号の優先権および利益を主張するものであり、上記出願の内容は、その全体および全ての目的のために組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与されるXJへのR21 AI092434-01A1およびR56 AI114831-01A1の下で、政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
RVは、主に乳児および幼児に重度の急性胃腸炎を引き起こし、毎年世界で5歳未満の小児に約20万人の死亡、230万人の入院、および2,400万人の外来患者をもたらす[25~27]。現在の2つのRVワクチン、RotaTeq(Merck)およびRotarix(GlaxoSmithKline,GSK)は、多くの先進国で重度のRV症例から子供を保護するのに効果的である[28、29]。しかしながら、RVのほとんどの感染症、罹患率、および死亡率が発生するアフリカならびにアジアのほとんどの発展途上国で、これらが満足のいく効果を示していないため[30~32]、RVワクチンは最も必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
ワクチン組成物、特に、抗原提示のための多価二十面体組成物が、本明細書に開示される。開示された組成物は、組換え融合タンパク質で構成されたS粒子を含み得る。組換え融合タンパク質は、ノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質、ノロウイルスSドメインタンパク質に作動可能に連結されたリンカータンパク質ドメイン、および該リンカーに作動可能に連結された抗原タンパク質ドメインを含み得る。開示された組成物は、提供するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本出願のファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を含むこの特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて、特許庁によって提供されるであろう。
【0006】
当業者は、以下に記載される図面が例示目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、本教示の範囲を多少なりとも限定することを意図するものではない。
【0007】
【
図1】粒子または複合体に低効率で集合された天然のノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質である。(A)トロンビン切断部位およびヒンジの位置を示す、GST-Sドメイン融合タンパク質の発現構築物の概略図である。(BおよびC)GST-S融合タンパク質(GST-S、約51kDa)のSDS-PAGE分析であり(B)、および遊離Sタンパク質(約25kDa)のSDS-PAGE分析である(C)。(D)集合したS粒子をほとんど示さない、Sタンパク質のEM顕微鏡写真(矢印)である。(E)サイズ排除カラム(Superdex 200)を介したSタンパク質のゲル濾過クロマトグラフィーの溶出曲線である。ゲル濾過カラムは、Gel Filtration Calibration Kitおよび精製された組換えNoV P粒子[21、22]、小P粒子[20]、およびPダイマー[11]によって較正された。青色デキストラン2000(約2000kDa、ボイド)、P粒子(約830kDa)、小P粒子(約420kDa)、Pダイマー(約69kDa)、およびアプロチニン(約6.5kDa)の溶出位置が示されている。(F)2つのピーク、ピーク1(画分#15および16)ならびにピーク2(画分#28および29)からのタンパク質のSDS-PAGE分析である。全てのSDS PAGEで、レーンMは、指定された分子量の染色済みタンパク質マーカーである。約42kDa、および約16kDaでの微量のSタンパク質バンドが、それぞれ(B)、(C)および(F)で見られた。
【
図2】Sドメインの露出したプロテアーゼ部位の特定である。(A)プロテアーゼで切断されたSタンパク質のN末端配列決定により、ペンタ残基配列であるNAPGEをもたらした。(B)Sドメイン配列は、同じプロテアーゼ残基配列NAPGE(下線部)を示し、プロテアーゼ切断部位(星印)を示している。C末端ヒンジ(下線部)、4残基リンカー(GGGG)、および末端融合Hisx6ペプチドが示されている。この組換えSドメインタンパク質の計算された分子量も示されている。(C)全てのGIIノロウイルスの表現間の配列アライメントにより、プロテアーゼ部位が高度に保存されていることが示された(強調表示された69位および70位)。(D)3回軸での異なる色のカートーン表現における部分的GII NoVシェル構造の精査により、R69(赤色)-N70(シアン色)によって形成された露出したプロテイナーゼ部位を球体表現で示す。左パネル:上面図、右パネル:側面図である。
【
図3】S
R69Aタンパク質およびS60粒子の産生および特性評価である。(A)ヒンジ、リンカー(GGGG)、およびHisx6ペプチド(Hとしてラベル付けされたオレンジ色のボール)を示すS
R69Aタンパク質の発現構築物の概略図である。その完全な配列を
図2Bに示す。(B)S
R69Aタンパク質(約25kDa)のSDS-PAGE分析である。レーン1~5は、TALON CellThru Resinからの溶出画分であった。レーンMは、指定された分子量の染色済みタンパク質マーカーを表している。(C)統一サイズの自己集合化S60粒子を示すS
R69Aタンパク質のEM顕微鏡写真である。(DおよびE)ゲル濾過クロマトグラフィーによるS
R69Aタンパク質の分析(D)であり、その後の溶出ピークのSDS PAGE分析(E)である。(D)サイズ排除カラム(Superdex 200、10/300 GL)を介したS
R69Aタンパク質のゲル濾過クロマトグラフィーの溶出曲線である。ゲル濾過カラムは、
図1Eで行われたように較正された。青色デキストラン2000(約2000kDa)、P粒子(約830kDa)、Pダイマー(約69kDa)、およびアプロチニン(約6.5kDa)の溶出位置は、(x)により、それぞれ1、2、3、および4で示されている。(E)ゲル濾過の3つの主要なピーク(D)のS
R69Aタンパク質のSDS-PAGE分析であり、ここで、レーンCは、サイズ排除カラムにロードされる前の対照S
R69Aタンパク質であり、レーンMは、指定された分子量の染色済みタンパク質マーカーであり、レーン8および9は、ピーク1の画分#8および9からのものであって、レーン16は、ピーク2の画分#16からのものであって、一方、レーン19は、ピーク3の画分#19からのものであった。(F)S
R69Aタンパク質のエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)分析である。ESI-MSは、80μMのS
R69Aタンパク質(モノマーに基づく)の酢酸アンモニウム水溶液(200mM、pH 6.8および25℃)の陽イオンモードで取得した。S
R69Aドメインモノマー(25.047kDa)とダイマー(50.095kDa)の両方が検出された。m/z約15,500を中心とする広範な特徴が観測された。質量分解能は電荷状態を確立するには不十分であったが、これらのイオンのMWは、報告されている大きなタンパク質複合体のm/z[61]に基づいて、およそ1.47MDaであると推定され、これは60価のS60粒子に相当する。
【
図4】60価のネコカリシウイルスVLPの既知の結晶構造(PDB#:4PB6)に基づくS60粒子の構造モデリングである。(A)S60粒子を示すEM顕微鏡写真である。(B~D)カートーン表現でのS
R69Aタンパク質モノマーの構造(オレンジ色)(B)と、表面表現での、5回軸(C)および2回軸(D)のそれぞれでのS60粒子の構造である。露出したC末端ヒンジ(表面表示)は、緑色で示されている。(E~G)ドット表現でのC末端融合リンカー(マゼンタ)およびHisx6ペプチド(空色)を伴うアートーン表現でのS
R69Aタンパク質モノマー(オレンジ)の構造(E)と、それぞれ5回軸(F)および2回軸(G)での得られたS60の表面表現での構造である。露出したC末端のヒンジ、リンカー、およびHisx6ペプチドがドット表示で示されている。
【
図5】S60-VP8キメラ粒子の特性評価である。(A)S
R69A-VP8キメラタンパク質の概略図である。ロタウイルスのVP8抗原(緑色)は、リンカー(HHHH)を介してヒンジに融合させた。Hisx6ペプチド(オレンジ)は、VP8抗原のC末端に融合させた。(B)S
R69A-VP8タンパク質(約45kDa)のSDS-PAGE分析である。(C)サイズ排除カラム(Superdex 200、10/300 GL)を介したS
R69A-VP8タンパク質のゲル濾過クロマトグラフィーである。カラムは、
図1Eで行われたように較正された。青色デキストラン2000(約2000kDa)、P粒子(約830kDa)、Pダイマー(約69kDa)、およびアプロチニン(約6.5kDa)の溶出位置は、それぞれ1、2、3、および4でラベル付けされた(x)で示されている。(D)ゲル濾過のピーク1(C)からのS60-VP8粒子のEM顕微鏡写真である。(F)S
R69A-VP8タンパク質のエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)分析である。ESI-MSは、80μMのS
R69A-VP8タンパク質(モノマーに基づく)の酢酸アンモニウム水溶液(200mM、pH 6.8および25℃)の陽イオンモードで取得した。S
R69A-VP8モノマー(44.950kDa)と分解産物(19.990kDa)の両方が検出された。m/z約23,700を中心とする広範な特徴が観測された。質量分解能は電荷状態を確立するには不十分であったが、これらのイオンのMWは、報告されている大きなタンパク質複合体のm/z[61]に基づいて、およそ3.4MDaであると推定され、これは60価のS
R69A-VP8粒子のMWに相当する。
【
図6】Sドメイン間ジスルフィド結合の導入によるS60-VP8粒子のさらなる安定化である。(AおよびB)GII.4シェル構造の構造解析である。(A)3回軸でのGIII.4 NoVの部分的シェル構造(W.J.、未公開データ)は、SドメインのV57とQ58とが、それぞれ、隣接するSドメインのM140'とS136'とに立体的に近いことを明らかにした。6つのSドメインは灰色のカートーン表現で示され、前述の4つのアミノ酸は異なる色の球体表現で示されている。(B)1つのSドメインのV57(赤)/Q58(シアン)と、距離5.7~5.9Åを有する隣接SドメインのS136'(緑)/M140'(オレンジ)の間の立体的関係の大写し図である。(C~E)S
R69A/V57C/M140C-VP8タンパク質の特性評価である。(配列番号31に示されるタンパク質配列。)(C)S
R69A/V57C/M140C-VP8タンパク質の発現構築物である。(D)S
R69A/V57C/M140C-VP8タンパク質のSDS PAGE分析である。レーン1、2、3、および4は、アフィニティカラムからの4つの溶出タンパク質画分である。15μlの各画分を各レーンにロードした。Mは、染色済みタンパク質マーカーである。(E)サイズ排除カラム(Superdex 200、10/300 GL)を介したS
R69A/V57C/M140C-VP8タンパク質のゲル濾過クロマトグラフィーの溶出曲線である。ゲル濾過カラムは、
図1Eで行われたように較正された。青色デキストラン2000(約2000kDa)、P粒子(約830kDa)、Pダイマー(約69kDa)、およびアプロチニン(約6.5kDa)の溶出位置は、それぞれ1、2、3、および4でラベル付けされた(x)で示されている。(F~J)S
R69A/V57C/Q58C/S136C-VP8タンパク質の特性評価である。(配列番号32に示されるタンパク質配列)(F)S
R69A/V57C/Q58C/S136C-VP8タンパク質の発現構築物である。(G)S
R69A/V57C/Q58C/S136C-VP8タンパク質のSDS PAGE分析である。レーン1、2、および3は、アフィニティカラムからの3つの溶出タンパク質画分である。10μlの各画分を各レーンにロードした。(H)サイズ排除カラム(Superdex 200、10/300 GL)を介したS
R69A/V57C/Q58C/S136C-VP8タンパク質のゲル濾過分析である。ゲル濾過カラムは、
図1Eで行われたように較正された。異なるMWを有する4つのタンパク質の溶出位置は、(E)で示されている。(I)ゲル濾過のピーク1(H)からのS60-VP8粒子のEM顕微鏡写真である。(J)ピーク1(画分#7~10)、ピーク2(画分#21)、およびピーク3(画分#23)のタンパク質のSDS PAGE分析である。レーンCは、カラムにロードする前の対照タンパク質である。
【
図7】S60-VP8粒子の構造である。(A~C)S60-VP8粒子の3次元構造を、cryoEM技術によって再構築した。(A)5回軸でのS60-VP8粒子の表面構造である。(BおよびC)外部および内部構造を示している、S60-VP8粒子の中央スライスのスライス構造(B)と、後半(C)のスライス構造である。内部のS60粒子(S)と突起VP8抗原が示されている。配色に基づく半径が示されている。「5」は5回軸を指示する。(D~F)S60-VP8粒子のcryoEM密度マップ(透明な灰色)への60価のFCVシェル構造(赤、カートーン表現)のフィッティングである。フィッティングの結果は、正面から見たS60-VP8粒子の前半(D)、中央スライス(E)、後半(F)を示す3つの透明なスライス図で示されている。(GおよびH)P[8]RVのVP8結晶構造(PDBコード:2DWR)の60コピーの、S60-VP8粒子cryoEM密度マップの突起領域へのフィッティングである。S60-VP8粒子のS60粒子領域内の適合FCVシェル結晶構造は、カートーン表現(赤)で示され、一方突起領域内の適合VP8結晶構造は、青色のカートーン表現で示されている。(I)上記のフィッティング結果に基づくS60-VP8粒子モデルである。内部のS60粒子は赤色のカートーン表現で示され、60個の突起VP8抗原は水色のドット表現で示されている。
【
図8】CsCl密度勾配遠心分離後にピークを形成したS60-VP8粒子である。S60-VP8粒子をCsCl密度勾配にロードした。超遠心分離後、分画された勾配のS60-VP8粒子を、それぞれP[8]RV VP8(A)およびGII.4 NoV VLP(B)に特異的な抗体によって検出した。どちらの場合でも、S60-VP8粒子の定義されたピークが勾配の中央で検出された。
【
図9】S60粒子提示VP8が、リガンド結合機能を保持することを示した。(A)グリカン結合アッセイは、S60-VP8粒子がH1およびLeb抗原を表す合成オリゴ糖に結合したが、Ley抗原を表すものには結合しないことを示した。VP8を含まないS60粒子は、3つの抗原のいずれにも結合しなかった。
【
図10】S60-VP8粒子が、提示されたRV VP8抗原に対する免疫原性を高めたことを示す。同じ用量/投与量のS60-VP8粒子、遊離VP8抗原、およびVP8を含まないS60粒子で、それぞれマウスを免疫化し(N=6)、続いてVP8特異的IgG応答(A)、ならびに得られたマウス血清のRV VP8-リガンド相互作用に対する50%ブロッキング力価(BT50)(B)およびRV感染に対する中和活性(C)の測定を行った。(A)S60-VP8粒子、遊離VP8抗原、およびS60粒子によってそれぞれ誘発されたVP8特異的IgG応答である。(B)それぞれ同じ3つの免疫原でのワクチン接種後のマウス血清によるRV VP8リガンド相互作用に対するBT50である。(C)それぞれ同じ3つの免疫原で免疫化した後のマウス血清による培養細胞のRV感染に対する中和活性である。データ群間の統計的差異は、星印で示されている(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
特に明記しない限り、用語は、関連技術分野の当業者による従来の用法に従って理解されるべきである。矛盾する場合は、定義を含む本書が優先する。好ましい方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書で開示される材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「and」、および「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」への言及には複数のそのような方法が含まれ、「用量」への言及には、1つ以上の用量および当業者に知られているその同等物への言及などが含まれる。
【0010】
用語「約」または「およそ」は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し、値の測定または決定方法、例えば測定システムの制限に部分的に依存するであろう。例えば、「約」は、当該技術分野の慣例により、1以内または1を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所定の値の最大20%、または最大10%、または最大5%、または最大1%の範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味することができる。本出願および特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合、特に明記しない限り、特定の値の許容誤差範囲内の「約」という用語を想定する必要がある。
【0011】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、所望の効果を示すのに十分な1つまたは複数の活性成分の量を意味する。これには、治療効果と予防効果の両方が含まれる。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、この用語はその成分のみを指す。組み合わせに適用される場合、この用語は、組み合わせて投与されるか、連続して投与されるか、または同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の合計量を指す。
【0012】
用語「個体」、「宿主」、「対象」、および「患者」は、治療、観察および/または実験の対象である動物を指すために交換可能に使用される。一般的に、この用語はヒト患者を指すが、方法および組成物は他の哺乳動物などの非ヒト対象にも等しく適用可能であり得る。いくつかの実施形態では、これらの用語はヒトを指す。さらなる実施形態では、この用語は子供を指してもよい。
【0013】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、以下で定義される「免疫原」および「免疫原性抗原」という用語と交換可能に使用され得る。技術的に言えば、抗原とは免疫応答の産物と結合することができる物質であるが、必ずしも免疫応答を誘発することはできず(つまり、全ての免疫原は抗原であるが、その逆は当てはまらない)、しかし、本発明の主題として本明細書で議論される抗原は、抗原と称される場合であっても、免疫原性抗原であると想定される。
【0014】
「融合タンパク質」という用語は、融合遺伝子の翻訳によって作成されたタンパク質を意味し、元のタンパク質のそれぞれに由来する機能特性を持つ単一のポリペプチドをもたらす。
【0015】
「免疫」という用語は、感染、疾患、または疾患を引き起こす原因となる生物による他の生物学的侵入を回避するのに十分な生物学的防御を有する状態を意味する。
【0016】
「免疫原性」という用語は、体液性および/または細胞性免疫応答を誘発する免疫原の能力を意味する。
【0017】
「免疫原」および「免疫原性抗原」という用語は、1つ以上の抗体の産生という形で適応免疫応答を誘導または誘発することができる特定の種類の抗原を意味する。
【0018】
「免疫原性応答」および「免疫応答」という用語は、免疫原に応答した生物の免疫系の反応性の変化を意味する。これは、抗体産生、細胞性免疫の誘導、補体活性化または後天性免疫の発達、または特定の疾患もしくは病原体に対する免疫寛容を伴い得る。
【0019】
「免疫化」および「ワクチン接種」という用語は、意図的な免疫応答の誘導を意味し、免疫系の自然な特異性、ならびにその誘導性の効果的な操作を伴う。免疫の背後にある原理は、病気を引き起こす生物に由来する抗原を導入することであり、それは免疫系を刺激してその生物に対する防御免疫を発達させるが、抗原自体はその生物の病原性効果を引き起こさない。
【0020】
「感染」という用語は、病原体による動物または植物の宿主組織への侵入、ならびに体内での病原体の増殖、病原体およびそれが産生する可能性のある毒素に対する身体の反応を意味する。
【0021】
「ノロウイルス」、「NoV」、「ノーウォーク様ウイルス」、または「NLV」という用語は、カリシウイルス科のノロウイルス属のウイルスを指し、ノーウォークウイルス(「NV」)、MOH、メキシコ、VA207、VA387、02-1419、C59、VA115、ハワイ、スノーマウンテン、ヒリントン、トロント、リーズ、アムステルダム、アイダホフォールズ、ローズデール、グリムスビー、サウサンプトン、デザートシールド、バーミンガム、およびホワイトリバーキャップが挙げられるが、これらに限定されない。NoVは、ヒトに急性胃腸炎を引き起こす。
【0022】
本明細書で使用される場合、文字「S」は、記載された粒子との関連で、例えばS69A/58C/140C-VP8で使用される場合、「Sドメイン」を意味し、これは69A/58C/140C変異を有するS-VP8タンパク質を意味する。他の態様では、使用される命名法は、例えば、「69A/58C/140C」が上付き文字として示されるSであり得る。
【0023】
「ワクチン」という用語は、特定の疾患に対する免疫を改善する生物学的製剤または組成物を意味する。ワクチンは、レシピエントに免疫応答を誘導するために意図的に投与される免疫原性抗原の例である。
【0024】
「多価ワクチン(multivalent vaccine」および「多価ワクチン(polyvalent vaccine)」という用語は、同じ微生物(NoVなど)の2つ以上の株、または2つ以上の異なる微生物に対して免疫化するように設計されたワクチンを意味する。
【0025】
ノロウイルス(NoV)は、カリシウイルス科のノロウイルス属のメンバーであり、重大な罹患率および死亡率を示すヒトの流行性急性胃腸炎を引き起こす[4、5]。構造的には、NoVビリオンは、単一の主要な構造タンパク質であるキャプシドタンパク質またはウイルスタンパク質1(VP1)で構成されるタンパク質キャプシドによってカプセル化されている。NoVキャプシドの結晶構造は、NoV VP1が2つの主要なドメイン、N末端シェル(S)およびC末端突起(P)ドメインを含み、短いヒンジで連結されていることを明らかにした[6]。Sドメインは、NoVビリオンの基本的な足場を支える内部の二十面体シェルを構築し、一方Pドメインは、NoVキャプシドを安定化させ、細胞表面グリカンを宿主付着因子または受容体[11~14]として認識するダイマー突起[7~10]を構成する。
【0026】
真核生物系を介した完全長NoV VP1のiインビトロ発現は、本物のウイルスキャプシ[6、15]と構造的および抗原的に類似した180価のウイルス様粒子(VLP)の自己形成をもたらし、一方E.coli系を介したPドメインの産生は、NoVキャプシドのものと構造的に区別できないPダイマーを形成した[7~11、16~19]。加えて、改変NoV Pドメインは、12価の小さなP粒子[20]、24価のP粒子[21、22]、および36価のP複合体[23]を含む、異なる高次の粒子または複合体に集合した。
【0027】
Pドメインとは異なり、Sドメインはあまり研究されていなかったが、「薄層」S粒子は、NoVキャプシドの180価のシェルとおそらくは同等である、バキュロウイルス/昆虫細胞系のSドメインの発現を通じて報告されている[11、24]。この研究では、出願人は、単純なE.coli系を介して、S60粒子と称される統一された60価のS粒子を産生する新しい技術を開発し、それらをロタウイルス(RV)およびその他の病原体に対するサブユニットワクチン開発のための抗原提示用の多機能性ワクチンプラットフォームとして適用した。
【0028】
RVは、主に乳児および幼児に重度の急性胃腸炎を引き起こし、毎年世界で5歳未満の小児に約20万人の死亡、230万人の入院、および2,400万人の外来患者をもたらす[25~27]。現在の2つのRVワクチン、RotaTeq(Merck)およびRotarix(GlaxoSmithKline,GSK)は、多くの先進国で重度のRV症例から子供を保護するのに効果的である[28、29]。しかしながら、RVのほとんどの感染症、罹患率、および死亡率が発生するアフリカならびにアジアのほとんどの発展途上国で、これらが満足のいく効果を示していないため[30~32]、RVワクチンは最も必要とされている。出願人の最近の研究は、発展途上国でのRVワクチンの低有効性が、中低所得国で優勢なRV Pタイプの変化に伴うワクチンのPタイプのミスマッチによる可能性があることを示唆した[33、34]。加えて、現在の弱毒生ワクチンはいずれも高価なままであり、経口投与後の腸内でのワクチンRVの複製は、ワクチン接種を受けた子供の腸重積症のリスク増加の原因となる可能性がある[35~41]。したがって、2つの現在のRV生ワクチンの前述の制限を克服できる新生代のRVワクチンが求められている。
【0029】
RVのPタイプは、RVビリオンのスパイクタンパク質を構成するウイルスタンパク質4(VP4)によって決定される。構造的に、各スパイクタンパク質には、VP5によって形成された柄部と、VP8によって構築された遠位頭部の2つの主要部分とを含有する[42]。VP5およびVP8は、トリプシンによるVP4の切断産物である。VP8は、組織血液型抗原(HBGA)を含む、細胞表面グリカンのグループであるRVホスト付着因子または受容体との相互作用に関与している[33、43~45]。以前の研究は、VP8抗原が、RV感染および培養細胞での複製を阻害し、免疫化マウスをRV感染から保護する中和抗体を誘発し[46、47]、したがって、VP8抗原が、RVに対する重要なワクチン標的である[46~49]ことを示した。
【0030】
しかしながら、RV VP8を含む多くの定義された中和抗原は、それらの低い価数の小さいサイズのため、非複製ワクチン開発の免疫原性が低いという一般的な問題に直面している。この問題は、抗原の免疫原性を高めるための大きな多価タンパク質プラットフォームへの融合または複合体化によって解決することができる。この研究では、出願人は、有効なワクチンプラットフォームとしてNoV S60粒子によって提示された後に、RV VP8抗原の免疫原性の大幅な増強を支援する確かな証拠を提供した。出願人のデータは、S60-VP8粒子が容易に生成され、安定で、提示されたRV VP8抗原に対して高度に免疫原性であり、したがってRV感染に対する有望なサブユニットワクチンであることを示している。
【0031】
ウイルスキャプシドタンパク質の同型相互作用は一般的であり、ウイルスキャプシドの自己形成を促進する。ノロウイルスキャプシドの内部シェルを自然に構築するノロウイルスシェル(S)ドメインのこのような相互作用を利用することにより、出願人は、単純なE.coli系を介した60価の二十面体S60粒子の生産方法を開発した。これは、Sドメインへのいくつかの改変、例えば、露出したプロテイナーゼ切断部位を破壊するR69A変異およびSドメイン間相互作用を強化するためのSドメイン間ジスルフィド結合を確立する三重システイン変異(V57C/Q58C/S136C)によって達成することができる。60個の露出したSドメインC末端を有する多価S60粒子は、ワクチン開発用に提示された抗原に対する免疫原性を改善するための抗原提示の理想的なプラットフォームをもたらす。これは、主要なRV中和抗原である60個のロタウイルス(RV)VP8タンパク質を提示するキメラS60粒子を構築することで証明された。これらのS60-VP8粒子は容易に産生され、提示されたVP8抗原に対して、マウスにおいて高いIgG応答を誘発した。S60-VP8粒子による免疫化後のマウス抗血清は、そのグリカンリガンドへのRV VP8結合に対する高い遮断と、培養細胞におけるRV感染に対する高い中和活性を示した。S60およびS60-VP8粒子の3次元構造を研究した。最後に、S60粒子は他の抗原も提示できるため、S60粒子は多機能性ワクチンプラットフォームであるという概念を裏付けている。
【0032】
本明細書では、特に改変ノロウイルスS粒子を使用して、多価ワクチン組成物を形成するために使用することができる方法および組成物を開示する。
【0033】
一態様では、抗原提示のための多価二十面体組成物が開示される。本組成物は、S粒子を含むことができ、このS粒子は、ノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質、ノロウイルスSドメインタンパク質に作動可能に連結されたリンカータンパク質ドメイン、およびリンカーに作動可能に連結された抗原タンパク質ドメインを含む組換え融合タンパク質を含み得る。
【0034】
本組成物は通常、二十面体対称構造を有している。一態様では、本組成物は、60個の抗原提示のための部位を含む。
【0035】
一態様では、ノロウイルスSドメインタンパク質は、カリシウイルスのものである。カリシウイルスは、単一のキャプシドタンパク質の180コピーを有することを特徴とし得る。
【0036】
一態様では、ノロウイルスSドメインタンパク質は、NoV Sドメインタンパク質のプロテイナーゼ切断部位に変異を含み、変異は、この部位をトリプシン切断に対して耐性を示す。変異がトリプシン切断部位を効果的に破壊することを条件に、部位に1つ以上の変異を行うことができる。このような効果を達成する部位への改変は、当業者によって容易に理解されるであろう。一態様では、変異は69位または70位にあってもよい。一態様では、変異はR69位で起こり得る。ある特定の態様では、変異は、プロテイナーゼ切断部位を破壊するのに十分なK(リジン)以外の任意のアミノ酸への変化であり得る。ある特定の態様では、変異はR69Aである。他の態様では、変異はN70位で起こってもよく、例えば、変異はプロテイナーゼ切断部位を破壊するのに十分なP(プロリン)以外の任意のアミノ酸にあり得る。
【0037】
一態様では、ノロウイルスSドメインタンパク質は、非天然ジスルフィド結合の結合部位を提供するのに十分な変異を含み得る。ノロウイルスSドメインタンパク質は、多価二十面体S粒子の隣接するSドメインタンパク質間に、少なくとも1つの非天然ジスルフィド結合の結合部位、または他の態様では、少なくとも2つの非天然ジスルフィド結合の結合部位、または少なくとも3つの非天然ジスルフィド結合の結合部位を提供するのに十分なシステイン残基に(立体的に互いに近い)少なくとも2つのアミノ酸の変異を含んでもよい。ある特定の態様では、変異は、V57C、Q58C、S136C、M140C、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0038】
一態様では、リンカーは、Sドメインタンパク質粒子と提示された抗原との間に空間および特定の柔軟性を提供するのに十分な長さのアミノ酸配列を含み得る。リンカーは通常、SドメインのC末端を提示された抗原に接続する、1~10個のアミノ酸単位、または3~6個のアミノ酸の短いペプチドである。リンカーは、S60粒子と提示された抗原との間に空間と一定の柔軟性を提供し、Sドメインと提示された抗原の独立した折り畳みを助ける。必要に応じて、より長いリンカーが使用されてもよい。リンカーのアミノ酸の長さは、タンパク質ドメインの柔軟性が請求された組成物を形成できるようにするのに十分でなければならない。
【0039】
開示された組成物は、抗原の提示に理想的に適している。好適な抗原は、当業者によって容易に決定され得る。例示的な抗原は、本明細書に開示されている。ある特定の態様では、抗原タンパク質ドメインは、免疫原性に加えてサイズによって選択されてもよく、8個のアミノ酸から最大約300個のアミノ酸まで、または8個のアミノ酸から最大約400個のアミノ酸まで、または8個のアミノ酸から最大約500個のアミノ酸までのサイズを有する抗原をコードすることができる。当業者によって容易に理解されるように、抗原のサイズは大きく変動する可能性があり、本組成物は、免疫応答を誘発するための様々な異なる抗原の提示に使用され得る。
【0040】
一態様では、多価二十面体組成物は、ロタウイルス(RV)抗原である抗原タンパク質ドメインを含み得る。一態様では、抗原タンパク質ドメインは、RVスパイクタンパク質抗原(VP8抗原)を含み得る。さらなる態様では、抗原は、マラリア原虫Plasmodium falciparumのスポロゾイト表面タンパク質(CSP)のTSR抗原、A型インフルエンザウイルスのHA1タンパク質およびM2eエピトープの受容体結合ドメイン、E型肝炎のPドメイン抗原、アストロウイルスの表面スパイクタンパク質、およびそれらの組み合わせを含むことができる。繰り返すが、このような抗原は単なる例示であり、このような列挙は特許請求の範囲を限定することを意図していない。例示的な配列としては、配列番号34および配列番号35のもの:ヒトロタウイルスVP8抗原、配列番号42および配列番号43:E型肝炎ウイルス(HEV)のPドメイン抗原、配列番号44および配列番号45:鳥類AstVの表面スパイクタンパク質抗原(例えば、(GenBank AC#:NP987088、残基423-630)を参照されたい)、配列番号46および配列番号47:A型インフルエンザウイルスのHA1抗原(H7)、配列番号48および配列番号49:Plasmodium falciparumのスポロゾイト表面タンパク質のTSR抗原、ならびに配列番号50および配列番号51:A型インフルエンザウイルスのM2Eエピトープが挙げられる。抗原ペプチドを生成するために使用される抗原配列は、結果として得られる抗原が、抗原を有する組成物を投与された個体において少なくとも部分的な免疫応答を誘発するという条件で、参照核酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有し得ることが理解されよう。
【0041】
組換え融合タンパク質は、開示されたワクチン組成物のサブユニットである。本明細書でさらに開示されるのは、多価二十面体組成物の基礎を形成し得る組換え融合タンパク質である。融合タンパク質は、上記のトリプシン部位および上記の付加されたシステイン部位への変異を有するノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質と、前述の変異を有する該ノロウイルスSドメインタンパク質に作動可能に連結されたリンカータンパク質ドメインと、リンカーに作動可能に連結された抗原タンパク質ドメインと、を含み得る。融合タンパク質の各部分の特徴は上記のとおりである。
【0042】
上記のS粒子に加えて、開示された組成物は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、安定化剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤ならびに抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などを含み得る1つ以上の薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。開示されたS粒子は、生理食塩水中に提供されてもよい。任意選択で、例えばゲンタマイシン、メルチオレートなどのような抗菌活性剤などの保護剤を含めることができる。組成物はさらに、例えば、糖類、トレハロース、マンニトール、サッカロースなどの安定剤を含んで、製品の貯蔵寿命を延長および/または維持してもよい。当業者であれば、本明細書の組成物が既知の注射可能な生理学的に許容できる滅菌溶液を組み込み得ることを理解するであろう。非経口注射または注入用のすぐに使用できる溶液を調製するために、例えば、生理食塩水または対応する血漿タンパク質溶液などの等張水溶液を容易に入手することができる。加えて、本発明の免疫原性組成物およびワクチン組成物は、希釈剤、等張剤、安定剤、またはアジュバントを含むことができる。希釈剤としては、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどを挙げることができる。等張剤としては、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、および乳糖を挙げることができる。安定剤としては、とりわけ、アルブミン、およびエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が挙げられる。好適なアジュバントは、当業者によって理解されるであろう。
【0043】
一態様では、本明細書で開示される免疫原性組成物の少なくとも1用量を含む容器が開示される。容器は、免疫原性組成物の1~250用量、または他の態様では、免疫原性組成物の1、10、25、50、100、150、200、または250用量を含んでもよい。一態様では、容器のそれぞれは、免疫原性組成物の2回以上の用量を含むことができ、さらに抗菌活性剤を含むことができる。これらの薬剤としては、例えば、ゲンタマイシンおよびメルチオレートなどの抗生物質を挙げることができる。
【0044】
さらなる態様は、キットに関する。キットは、上記の容器のいずれか、および上記の免疫原性組成物の送達に関する情報を含む取扱説明書を含んでもよい。例えば、少なくとも1用量の筋肉内適用に関する指示書は、本明細書に開示される抗原の感染に関連する臨床症状の重症度を軽減するために提供され得る。キットおよび/または組成物は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または不完全フロイントアジュバント(KLH/ICFA)などの免疫刺激剤をさらに含んでもよい。当業者に既知の他の免疫刺激剤も使用することができる。
【0045】
一態様では、開示された多価二十面体構造を作製する方法が開示されている。本方法は、a)改変されたNoV Sドメインタンパク質を含む第1の領域を作製するステップであって、該改変が、露出されたプロテアーゼ切断部位を破壊するのに十分な変異を含み(変異が、タンパク質分解、好ましくはR69A変異を防止し)、Sドメイン間タンパク質ジスルフィド結合を形成するのに十分なノロウイルス(NoV)Sドメインタンパク質中に1つ以上の変異、例えば、V57C、Q58C、S136C、およびM140C、ならびにそれらの組み合わせから選択される変異を導入する、第1の領域を作製するステップと、b)リンカーおよび抗原を用いて、改変されたNoV Sドメインタンパク質を有する第1の領域を組換え発現するステップと、を含む。ある特定の態様では、組成物はE.coli中で効果的に産生され得る。
【0046】
一態様では、免疫応答の誘発を、それを必要とする個体において行う方法が開示される。この態様では、本方法は、上記で開示されたワクチン組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含み得る。開示された組成物は、当該分野において既知の任意の方法に従って個体に投与され得、最適な投与(経路および量を含む)は過度の実験を必要としないことが容易に理解される。ワクチン組成物は、ワクチン組成物に組み込まれた抗原への将来の曝露を疑われる個体に予防的に投与され得る。ある特定の態様では、組成物を受け取った個体を感染から保護する、または感染に関連する臨床症状の重症度を低減または軽減する免疫応答を提供する方法が提供される。感染としては、例えば、マラリア、A型インフルエンザ、E型肝炎、およびアストロウイルス感染を挙げることができる。投薬レジメンは、組成物の単位剤形が異なる時間に投与される単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュール(例えば、追加投与を含む)であってもよい。本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物対象の単位用量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の効果を生じるのに十分な量の本明細書に開示される抗原組成物の所定量を含有し、この組成物は、薬学的に許容される賦形剤(例えば、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクル)と関連付けて提供される。ワクチンは、他の免疫調節剤と共に投与されてもよい。
【実施例0047】
本明細書に開示される本発明の実施形態をさらに説明するために、以下の非限定的な実施が提供される。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが見出されたアプローチを表し、したがって、その実施のためのモードの例を構成するとみなされ得ることを当業者は理解するべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0048】
生物工学による新しい生体材料の生成は、現代医学で急速に成長している分野である。典型的な例としては、ウイルスキャプシドタンパク質の自己形成機能を利用して構築された様々な多価タンパク質ナノ粒子および複合体が挙げられる[1~3]。ウイルスキャプシドタンパク質は、ウイルスのライフサイクル、特にウイルスの付着と侵入に必要な多くの基本的な機能に関与しているため、ヒトおよび動物への免疫化後にウイルス感染に対する中和抗体を誘発することができる。これは、ウイルスキャプシドタンパク質が対応するウイルス病原体に対する優れたワクチン標的であるという概念を裏付けている。実際、様々なキャプシドタンパク質粒子および複合体が開発され、非複製サブユニットワクチンとして使用され、毎年数百万人の命を奪う種々の感染症と戦っている[1~3]。感染性ビリオンの培養を必要とし、したがって特定の安全性の懸念に関連する従来の弱毒化生ワクチンおよび不活化ウイルスワクチンとは異なり、生物工学によるウイルスキャプシドタンパク質に由来する非複製サブユニットワクチンは感染性因子に関与しないため、従来のワクチンよりも安全でかつ製造コストが低い。したがって、非複製サブユニットワクチンは、革新的なワクチン戦略の新世代を表している。
【0049】
材料および方法
プラスミド構築物。1)グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)-タグ付きSドメインタンパク質の発現構築物。GII.4 NoV株VA387のヒンジコード配列を有するSドメイン(GenBank AC#:AY038600.3;残基1~221)を、pGEX-4T-1ベクター(GST Gene Fusion System、GE Healthcare Life Sciences)の複数のクローニング部位に、BamH1/Sal I部位を介して挿入した。得られたSドメインタンパク質は、間にトロンビン切断部位を有するN末端GSTを有していた。2)Hisx6融合SR69Aドメイン発現用のプラスミド構築物。R69A変異を有する同じNoV Sドメインヒンジコード配列を、pET-24bベクター(Novagen)の複数のクローニング部位に、BamH1/Not I部位を介して挿入した。得られたSドメインタンパク質は、C末端が融合したHisx6ペプチドを有していた。3)SR69A-VP8キメラタンパク質発現用のDNA構築物。WA株のVP8(GenBank AC#:VPXRWA)の64から231のアミノ酸配列に相当する、P[8]ヒトRV株BM14113のRV VP8コード配列を含むDNAフラグメントを、SR69Aドメインの末端-ヒンジにそれらの間にリンカー(4つのヒスチジン)を挟んだ状態で融合させた。RV株BM14113は、RV陽性の便試料から直接単離された[45]。Hisx6-ペプチドを精製目的でVP8抗原のC末端に付加した。4)SR69A/V57C/M140C-VP8、SR69A/V57C/Q58C/S136C-VP8、およびSR69A/V57C/Q58C/S136C/M140C-VP8キメラタンパク質の発現構築物。このDNA構築物は、SR69A-VP8キメラタンパク質の発現構築物に、他の2つ(V57C/M140C)、3つ(V57C/Q58C/S136C)、または4つ(V57C/Q58C/S136C/M140C)の変異を、部位特異的突然変異誘発によって導入することによって作製した。5)。SR69A/V57C/Q58C/S136C-mVP8キメラタンパク質発現用のプラスミド構築物。この構築物には、SR69A/V57C/Q58C/S136C-VP8構築物のようなDNA配列が含まれていたが、VP8コード配列が、ネズミRV EDIM(乳児マウスの流行性下痢)株のVP8をコードする配列に置き換えられた[50]。加えて、Plasmodium falciparum寄生体3D7株のスポロゾイト表面タンパク質(CSP)の表面TSR抗原(GenBank AC#:CAB38998、残基309~375)を含む、様々な病原体の抗原を提示する他のSR69AV57C/Q58C/S136Cベースのキメラ粒子用に構築されたDNA[51]、A型インフルエンザウイルスのM2eエピトープ[52、53]、およびE型肝炎ウイルスのPドメイン抗原[54~56] を、RV VP8コード配列が、対応する抗原をコードするものに置き換えられているSR69A V57C/Q58C/S136C-VP8キメラタンパク質を、出発構築物として用いて構築した。
【0050】
組換えタンパク質の産生および精製。組換えGST融合およびHstx6融合タンパク質を、以前に記載されているように(11、47、53、56)、E.coli(BL21、DE3)中で発現させた。得られた組換えタンパク質は、製造元の指示に従って、GSTタグ付きについては、Sepharose 4 Fast Flow精製樹脂(GE Healthcare Life Sciences)を用いて、およびHisx6-ペプチド融合タンパク質については、TALON CellThru Resin(ClonTech)を用いて精製した。GST融合タンパク質は依然として精製樹脂に結合していながら、トロンビン(GE Healthcare Life Sciences)の切断により、GSTを標的タンパク質から除去することができる。
【0051】
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)およびタンパク質の定量。精製タンパク質は、10%分離ゲルを使用したSDS-PAGEで分析した。タンパク質は、同じゲル上の標準として連続希釈ウシ血清アルブミン(BSA、Bio-Rad)を使用して、SDS-PAGEで定量した[46]。
【0052】
ゲル濾過クロマトグラフィー。これは、サイズ除外カラム(Superdex 200、10/300 GL、GE Healthcare Life Sciences)を使用して、AKTA Fast Performance Liquid Chromatography System(AKTA Pure 25L、GE Healthcare Life Sciences)により、以前に記載されたようにタンパク質およびタンパク質複合体のサイズ分布を分析するために実行した[11、53、57]。カラムを、以前に記載されたように、ゲル濾過校正キット(GE Healthcare Life Sciences)および精製されたNoV P粒子(約830kDa)[57]、小さなP粒子(約420kDa)[20]、およびPダイマー(約69kDa)[11]によって校正した[53、55]。溶出ピークのタンパク質をSDS-PAGEで分析した。
【0053】
塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心分離。0.5mLの樹脂精製S60-VP8粒子を、1.300g/mLの密度を有するCsCl溶液11mLと混合し、12mlのl遠心管に充填した。SW41Tiローターを使用してOptima L-90K超遠心分離機(Beckman Coulter)で288,000gにて45時間遠心分離した後、グラジエントを底部穿刺により各0.5mLの23画分に分画した。画分のCsCl密度を、屈折率に基づいて決定した。画分中のS60-VP8粒子をELISAで分析し、このELISAでは、個々の画分をPBSで20倍に希釈し、マイクロタイタープレートにコーティングした。コーティングされたタンパク質を、NoV VLP特異的抗体およびRV VP8特異的抗体によって検出した。
【0054】
電子顕微鏡法。1%モリブデン酸アンモニウムを染色溶液として使用して、粒子形成の電子顕微鏡(EM)検査用にタンパク質試料を調製した[22]。被検査物を、EM10 C2顕微鏡(Zeiss,Germany)下で、80kVにて、10,000倍から40,000倍の倍率で観察した。
【0055】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。全てのESI-MS測定は、ナノフローESI(nanoESI)ソースを備えたSynapt G2S四重極イオン移動度分離飛行時間(Q-IMS-TOF)質量分析計(Waters,Manchester,UK)を使用して陽イオンモードで実行した。各試料溶液を、200mMの酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.8、25℃)中で調製し、P-1000マイクロピペットプラー(Sutter Instruments,Novato,CA)を使用して約5μmに引き伸ばしたホウケイ酸キャピラリー(外径1.0mm、内径0.68mm)から生成したnanoESI先端部にロードした。 ESIを実行するために、プラチナワイヤをnanoESI先端部に挿入し、1.10kVの電圧を印加した。60℃のソース温度を使用した。コーン、トラップ、およびトランスファー電圧は、それぞれ50V、5V、および2Vであって、トラップガス流量は、60mL・分-1であって、他の全てのパラメーターを、デフォルト値に設定した。データの収集および処理は、Waters MassLynxソフトウェア(バージョン4.1)を使用して実行した。
【0056】
N末端アミノ酸配列。切断されたSドメインタンパク質を含有するSDS-PAGEゲルスライスを切り取り、アイオワ州立大学のタンパク質施設(http:/ /www.protein.iaState.edu/)において、Applied Biosystem,Inc.からの494 Procise Protein Sequencer/140C Analyzerによって、N末端アミノ酸配列決定を行った。
【0057】
マウスの免疫化。3~4週齢のBALB/cマウス(Harlan-Sprague-Dawley,Indianapolis,IN)を、以下の免疫原(10μg/マウス):1)S60-VP8キメラ粒子、2)遊離VP8タンパク質、3)VP8抗原を含まないS60粒子、および4)同量の希釈液(リン酸緩衝生理食塩水、PBS、pH7.4)で免疫化するために、4つの群(N=6)に分けた。免疫化を、Inject Alumアジュバント(Thermo Scientific、50μl/マウス)で2週間間隔で3回、筋肉内で行った。3回目の免疫化の2週間後に血液を採取し、標準プロトコルを使用して血液試料から血清を調製した。
【0058】
酵素イムノアッセイ(EIA)。以前に説明されているように、異なる免疫原で免疫化した後のマウス血清の抗体価を測定するために、EIAを実施した[46]。1μg/mLのゲル濾過精製遊離VP8抗原を、96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングし、連続希釈したマウス血清とインキュベートした[47]。結合した抗体を、ヤギ抗マウス二次抗体-HRPコンジュゲート(MP Biomedicals,Inc)によって検出した。抗体力価は、OD450=0.1のカットオフシグナル強度を有する限界希釈法によって定義された。
【0059】
HBGA結合アッセイ。合成オリゴ糖および唾液ベースのHBGA結合アッセイを実行して、VP8を提示するS60粒子のそれらのHBGAリガンドへの結合機能を測定した[45]。簡単に言うと、H1、Leb、およびLey抗原をそれぞれ表す合成オリゴ糖(2μg/mL)、またはH1および/もしくはLeb陽性またはH1およびLeb陰性である煮沸した唾液試料(1:1000希釈)を、96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングし、様々なS60-VP8粒子またはRV VP8を含まないS60粒子とともに、指示された濃度でインキュベートした。結合タンパク質を、モルモット抗VP8抗血清(S60-VP8粒子の場合)またはGII.4Nov VLPに対するモルモット過免疫血清(S60粒子の場合)、続いてHRP結合ヤギ抗モルモットIgG(ICN Pharmaceuticals)のインキュベーションによって測定した。
【0060】
RV VP8-HBGAリガンド付着に対する血清ブロッキング力価。これは、前述のように、代理中和アッセイとして実施した[47]。煮沸し、陽性H1およびLewis b(Leb)抗原である、P[8]RV[45、58]のリガンドで希釈した(1:1000)ヒト唾液試料を、マイクロタイタープレートにコーティングした。PP-VP8をコーティングされた唾液試料に添加する前に、様々な免疫原(S60-VP8粒子、遊離VP8抗原、S60粒子、PBS)で免疫化した後、625ng/mLのP粒子提示RV VP8(PP-VP8)[46]を免疫後血清とともに異なる希釈度でプレインキュベートした。50%ブロッキング力価(BT50)は、ブロックされていない陽性対照と比較して、PP-VP8粒子のHBGA/唾液試料への結合に対して少なくとも50%の低下を引き起こす最低血清希釈度として定義された。
【0061】
RV中和アッセイ:これは以前に記載されたように実施した[53]。簡単に言うと、MA104細胞を6ウェルプレートで培養し、組織培養に適応したRV Wa株(G1P[8])を力価約50PFU/ウェルで接種材料として使用した。トリプシン処理したWa RVを、指示された免疫原(上記参照)で1時間免疫化した後、マウス血清とインキュベートし、その後細胞に添加した。プレートに、トリプシン(Invitrogen)および0.8%アガロースを含む培地を重ねた。4日間のインキュベーション後、プラークを染色し、計数した。血清の中和率(%)を、未処理の対照ウェルの数に対する抗血清で処理したウェルのプラーク数の減少によって計算した。
【0062】
S60粒子の構造モデリング。Hisx6ペプチドを含むかまたは含まないS60粒子およびS60-VP8キメラ粒子の構造を、ソフトウェアPyMOL Molecular Graphics System、バージョン1.8.2.0(Schroinger,LLC)使用して、60価のネコカリシウイルス(FCV)VLP[59] の結晶構造(PDB#:4PB6)をテンプレートとして使用してモデル化した。全ての結晶構造ベースの画像は、このソフトウェアによって作成された。
【0063】
cryoEMによるS60-VP8キメラ粒子の構造再構築。これは、出願人の以前の研究[20、21、46]で説明されている同様のcryo-EMアプローチを使用して実行した。簡単に言うと、ゲル濾過精製したS60-VP8キメラ粒子のアリコート(3~4μL)を、Quantifoilグリッド上で瞬間凍結し、次いで、それを顕微鏡にロードした。低電子(e)線量画像(約20e/Å2)を、公称倍率×50,000、およびデフォーカス範囲2.0~4.0μmでCM200低温顕微鏡を使用してフィルムに記録させた。顕微鏡写真を、Nikon Super CoolScan 9000EDスキャナーを6.35μm/ピクセルのステップサイズで使用して、選択およびデジタル化した。スキャンされた画像をビニングし、2.49Å/ピクセルで画像の最終サンプリングをもたらした。S60-VP8キメラ粒子の画像を、EMANのボクサープログラムを使用して選択した。選択した画像を手動でフィルタリングして、偽陽性を除外した。EMANのctfitプログラムを使用して、同じ顕微鏡写真に由来する粒子画像のセットに関連付けられたコントラスト伝達関数(CTF)パラメーターを手動で決定した。粒子の初期モデルを、EMANのstartoctプログラムを使用して作成した。次いで、EMANの精製プログラムを使用して、未加工粒子の中心および方向を繰り返し決定し、収束するまでEMANのmake3dプログラムによって2D画像から3Dマップを再構築した。S60-VP8キメラ粒子の再構築中に、二十面体対称性を付与した。S60粒子モデル(上記参照)およびP[8]RV VP8(2DWR)のフィッティングを含むcryo-EMモデルの分析を、UCSF Chimeraソフトウェア(バージョン1.12:http://www.rbvi.ucsf.edu/chimera)を使用して実施した。
【0064】
統計的分析。データセット間の統計的差異を、対応のないノンパラメトリックt検定を使用して、ソフトウェアGraphPad Prism 6(GraphPad Software,Inc)によって計算した。P値は、有意差があるについては0.05(P<0.05)、非常に有意差があるについては0.01(P<0.01)、および極めて有意差があるについては0.001(P<0.001)に設定した。
【0065】
倫理的声明。この研究は、国立衛生研究所の実験動物の管理と使用に関するガイド(23a)の推奨事項に厳密に従って実施した。プロトコルは、シンシナティ小児病院研究財団(動物福祉保証番号A3108-01)の施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認された。
【0066】
【0067】
結果
天然NoV Sドメインの低粒子形成効率。出願人の研究は、発現ベクターpGEX-4T-1を使用したE.coli中でのGII.4 NoV(VA387)のヒンジを有する天然のSドメインの産生から開始し、約51kDaの分子量(MW)を有するGST-Sドメイン融合タンパク質をもたらした(
図1、AおよびB)。GSTがセファロースビーズに結合したままである間、GSTを含まない約25kDaの遊離Sドメインタンパク質(
図1C)を、トロンビン切断により得た。Sタンパク質のEM観察により、集合したS粒子と同等である可能性が最も高い、直径約20nmの薄い層のリング状構造がほとんどないことが明らかになった(
図1D)。S粒子形成効率を決定するために、Sドメインタンパク質のゲル濾過クロマトグラフィーを実施し、2つの広いピークが明らかになった(
図1E)。SDS PAGE(
図1F)に続いてNoV VLP過免疫血清[15]を使用したウェスタン分析(データ図示せず)およびN末端配列決定(
図2、以下を参照)により、両方のピークがSタンパク質であることを確認した。800kDaを超える高MWを有するピーク1は、自己集合化S粒子または複合体を表すはずであり、一方ピーク2は、Sドメインモノマー(約25kDa)および/またはダイマー(約50kDa)であるはずである。
【0068】
出願人はまた、GST-S融合タンパク質(
図1B、42kDa)および遊離Sタンパク質(
図1C、16kDa)とそれぞれ同時発生するより低いMWを有する微量のタンパク質バンドも観察し、これらの微量タンパク質バンドが、NoV VLP特異的抗体と反応し(データ図示せず)、Sドメイン配列を示したため、これらはSタンパク質のプロテイナーゼ切断型であるはずである(
図2、下記参照)。出願人はさらに、S粒子または複合体に集合したSドメインタンパク質が、ほとんどがより小さなSドメインタンパク質に消化されたことに留意した(
図1EおよびF、ピーク1、画分#15および#16)。対照的に、集合していないSタンパク質は無傷のままであり(
図1EおよびF、ピーク2、画分#28および#29)、集合したS粒子または複合体は、プロテイナーゼに対して感受性であったが、集合していないSタンパク質はそうではなかったことを示唆している。ピーク1が総Sタンパク質のごく一部(<25%)に過ぎないという事実から、出願人は、天然のNoV Sドメインタンパク質が低効率で粒子に集合したと結論付けた。
【0069】
Sタンパク質中の露出したプロテアーゼ切断部位の特定。上記の発見により、我々はプロテアーゼ切断部位を特定するよう促された。これは、約16kDaの2つの切断されたSタンパク質バンドのN末端配列決定により達成され(
図1、CおよびF)、同じ5残基のNAPGE配列をもたらした(
図2A)。このペンタ残基は、Sドメイン配列N70~E74と一致しており、切断部位がR69とN70との間にあり、これがトリプシトリプシン/クロストリパイナ認識部位であることを示している(
図2B)。NoV VP1配列の遺伝子解析により、このプロテアーゼ部位は、全てのGII NoVの間で高度に保存されていることを示した(
図2C)。GII NoVシェル構造の構造解析(Wen Jiang、未公開データ)は、このプロテアーゼ部位がシェル表面に露出していることを示した(
図2D)。
【0070】
高いS粒子形成効率のためのプロテアーゼ部位の破壊。上記のデータに基づいて、出願人はプロテイナーゼ切断部位を破壊するためにR69A変異を導入し、S
R69Aタンパク質をもたらした。さらに、出願人は、C末端に連結されたHisx6ペプチドを使用してGSTタグを置換し、単純化された精製手順のためのトロンビン切断ステップを回避した(
図3A)。出願人はまた、S粒子の抗原提示の概念を証明するために、Hisx6ペプチドに柔軟性を持たせるために、ヒンジとHisx6ペプチドの間に短いリンカー(GGGG)を挿入した。
【0071】
S
R69Aタンパク質(約25kDa)は、E.coli系で十分に産生され、Hisx6結合TALON CellThru Resinによって非常に高い収率(>40mg / 細菌培養1リットル細菌培養)かつ高い安定性で精製できた(
図3B)。EM観察は、約22nmの直径の自己集合化S粒子を表す、サイズが統一された多くのリング状構造を示した(
図3C)。ゲル濾過は、S粒子(>1mDa)、Sダイマー(約50kDa)、Sモノマー(約25kDa)をそれぞれ表すはずである1つの大きなピークと2つの小さなピーク(
図3、DおよびE)を、EM観察およびESI-MS分析(下記)によって支援された、それらのMWに基づいて、明らかにした。SDS-PAGEは、しばしば、NoV VLP特異的抗体と反応する、約50kDa(
図3、BおよびE)における小さなピークを明らかにしており、これは、SDS-PAGE分析において、これらが完全に変性されていないSドメインダイマーであることを示している。これは、ダイマー(ピーク2:#16))およびモノマー(ピーク3:#19)画分と比較して、ゲル濾過クロマトグラフィー(
図3、DおよびE)のS粒子画分(ピーク1:画分#8および#9)で特に明白であった。これらのデータは、S
R69Aタンパク質の大部分が統一されたS粒子に集合したことを示した。
【0072】
SR68Aタンパク質の60価のS60粒子への自己集合。次に、出願人はESI-MS分析を実行して、S
R69Aタンパク質の複雑さを決定し、3つのタンパク質形態:1)25.047kDaでのSモノマー、2)50.095kDaのSダイマー、および3)約1.47mDaでのS粒子を明らかにした(
図3F)。組換えSドメインタンパク質の計算されたMWは24585.89ダルトンであるため(
図2B)、観察された自己集合化S粒子はそれに応じてS60粒子と表記される60価でなければならない。約1.47mDaを超えるシグナルが観察されなかったという事実は、従来の180価のS粒子が集合しなかったことを示しており、EMで観察された統一粒子サイズと一致した(
図3C)。これらの60価のS60粒子は、cryoEM技術によるS60-VP8キメラ粒子の構造再構築によってさらに確認された(
図7、下記参照)。
【0073】
S60粒子の構造モデリング。60価のNoVカプシドまたはその内部シェルの詳細な構造は不明のままであるが、60価のネコカリシウイルス(FCV)VLPの結晶構造が報告されており[59]、S60粒子をモデル化して構造を理解する方法を提供している。S60粒子の構造モデルを、60価FCV VLP(PDB#:4PB6)の結晶構造をテンプレートとして使用して構築した(
図4、B~D)。モデル化されたS60粒子は、5回軸または2回軸でそれぞれ幾分五角形(
図4C)および六角形(
図4D)の形状を呈した。これらの五角形および六角形の形状は、EM顕微鏡写真のS60粒子間で容易に認識できる(
図4Aおよび
図3C)。加えて、S60粒子モデルは、S60-VP8粒子のcryoEM密度マップのS60粒子領域(
図7、D~F)に十分に適合し、60価のFCVシェルとNoV S60粒子との間の構造的な類似性を裏付けている。予想通り、60個のC末端ヒンジが各S60粒子の表面に露出しており(
図4、B~D))、S60粒子によって提示される外来抗原への優れた融合点を提供している。
【0074】
出願人はまた、S60粒子による抗原提示を模倣するために、C末端リンカー(GGGG)およびHisx6ペプチドを用いてS60粒子をモデル化した(
図4、E~G)。結果として得られたモデルは、60個のHisx6ペプチドが各S60粒子の表面上に提示されたことを示しており、C末端結合Hisx6ペプチドを有するS60粒子がHisx6結合樹脂によって効率的に精製されたという事実を裏付けている(
図3B)。したがって、他の病原体からの様々な抗原も、Sタンパク質の露出したC末端に融合することにより、S60粒子によって提示され得ると十分に考えられる。
【0075】
S60-VP8キメラ粒子の産生および特性評価。免疫原性を高める抗原提示のためのプラットフォームとしてのS60粒子の実現可能性を証明するために、出願人は、主要なRV中和抗原であるRV VP8タンパク質を提示するS60-VP8キメラ粒子を産生した。これは、リンカーを介してRV VP8タンパク質をS
R69Aタンパク質のC末端に融合させることにより達成した(
図5A)。Hisx6ペプチドを精製目的でVP8タンパク質のC末端に付加した。S
R69A-VP8キメラタンパク質(約45kDa)は、E.coli系で>30mg /1リットルの細菌培養物の高収量で良好に発現された(
図5B)。S
R69A-VP8タンパク質のゲル濾過分析は、分子量に基づいて、それぞれS
R69A-VP8粒子(ピーク1)、ダイマー(ピーク2)、およびモノマー(ピーク3)を表す可能性が最も高い、3つの典型的なピークを明らかにした(
図5C)。3つのピークの保持比較は、S
R69A-VP8タンパク質の約半分が粒子に自己集合化したことを示した(ピーク1対ピーク2およびピーク3)。
【0076】
ピーク1からのタンパク質のEM観察は、表面がVP8タンパク質を提示するために認識可能な突起を有する統一サイズの多くのS
R69A-VP8粒子(S60-VP8粒子と称される)が明らかにしており(
図5D)、これはS60粒子の比較的滑らかな表面とは異なる粗な表面をもたらす(
図3Cおよび4A)。ピーク1タンパク質のESI-MS分析は、分子量が約3.4mDaの予想される60価のS60-VP8粒子を明らかにした(
図5E)。これもまた、同じタンパク質の顕微鏡写真上のS60-VP8粒子の統一サイズと一致して、180価の粒子のシグナルは観察されなかった(
図5D)。しかしながら、ESI-MS分析は、S
R69A-VP8タンパク質のモノマー(44.950kDa)および19.90kDaの微量の分解産物を明らかにしており、S60-VP8粒子がモノマーに分解できることを示した。
【0077】
S60-VP8粒子のさらなる安定化。S
R69A-VP8タンパク質による比較的低い粒子形成効率は、S粒子内の隣接するSドメイン間の分子間相互作用を増加させることにより改善の余地があることを示した。GII.4シェル構造(W.J.、未公開データ)の精査により、SドメインのV57およびQ58はそれぞれ、隣接するSドメインのM140およびS136に立体的に近く、距離は5.7~5.9Åであることを示した(
図6、AおよびB)。これは、2つのペア残基が、Sドメイン間ジスルフィド結合を導入してS60-VP8粒子形成をさらに強化するのに適した位置であることを示唆した。
【0078】
S
R69A-VP8タンパク質のV57およびM140がシステインに変異した場合(
図6C)、S
69A/58C/140C-VP8タンパク質は、>50mg/細菌培養1リットルの非常に高い収量で良好に発現された(
図6D)。ゲル濾過分析は、タンパク質の大部分(約70%)がS60-VP8粒子に集合していることを示し(
図6E)、これはEM観察によって確認された(データ図示せず)。Sモノマーを表すピーク3は完全になくなっており、ジスルフィド結合の導入後のS間ドメイン相互作用の増加を裏付けていることが留意された。
【0079】
S
R69A-VP8タンパク質のV57、Q58、およびS136がシステインに変異した場合(
図6F)、S
69A/57C/58C/136C-VP8タンパク質は、>40mg/細菌培養1リットルの高い収量で産生され得る(
図6G)。ゲル濾過分析(
図6、HおよびJ)は、S
69A/57C/136C-VP8タンパク質の大部分(>90%)がEM観察によって確認されたS60-VP8粒子に自己集合したことを示した(
図6I)。注目すべきことに、Sダイマーとモノマーをそれぞれ表すピーク2と3の両方が消失し(
図6、HおよびJ)、Sドメイン間ジスルフィド結合の結果として、S60-VP8粒子形成効率が劇的に増加したという概念を裏付けている。出願人はまた、S
R69A-VP8タンパク質の4つ全てのV57、Q58、S136、およびM140に四重システイン変異を実施し、タンパク質収量およびS60-VP8粒子形成効率の結果は、S
69A/57C/58C/136C-VP8タンパク質のものと同様であって(データ図示せず)、四重システイン変異が非常に安定したS60-VP8粒子を産生するのに十分に良好であったことを示した。
【0080】
S60-VP8粒子の構造。出願人は、cryo-EM技術(材料および方法を参照)によりS60-VP8粒子の三次元(3-D)構造を14Åの解像度で構築し、60個のS-VP8タンパク質を含むT=1対称性を示した(
図7)。S60-VP8粒子の表面構造(
図7A)は、VP8抗原がS60-VP8粒子の表面上に提示され、内部S60粒子から延びる突起を形成した。S60-VP8粒子の中央スライス(
図7B)および後半のスライス構造(
図7C)は、外部VP8抗原(シアン色ならびに部分的な緑色)および内部S60粒子(赤色、黄色ならびに部分的な緑色)の構造を示した。二十面体S60粒子の5回軸を認識することができる(
図7C)。S60-VP8キメラ粒子の直径は、約28nmである。
【0081】
60価のFCVシェル(PDB#:4PB6)の結晶構造がS60-VP8粒子cryoEM密度マップのS60粒子部分に適合した場合、両方の構造が非常によく適合した(
図7、D~F)。S60-VP8粒子の前半(
図7D)、中央スライス(
図7E)、後半(
図7F)の適合FCVシェル構造を用いた透明なcryoEM密度マップは、FCVの60価のシェル構造とS60-VP8粒子のNoV S60粒子領域との間の優れた適合性を証明し、出願人のS60粒子(
図4)およびS60-VP8粒子の60価の二十面体構造を確認した。
【0082】
次に、出願人は、P[8]RV Wa株のVP8結晶構造(PDBコード:2DWR)の適合した60コピーを、S60-VP8粒子cryoEM密度マップの突起領域にフィッティングした(
図7、GおよびH)。適合したVP8結晶構造を有するS60-VP8粒子の前半(
図7G)および中央スライス(
図7H)の透明なcryoEM密度マップは、S60-VP8粒子の突起領域と60個のVP8構造との優れた適合性を示し、S60粒子の表面上のVP8抗原の構造と配向をさらに確認した。この適合結果に基づいて、出願人は、60価のFCVシェルの結晶構造およびP[8]RVの60個のVP8を使用して、S60-VP8粒子モデルを作成した(
図7I)。
【0083】
VP8を提示したS60粒子は、リガンド結合機能を保持している。出願人の以前の研究は、P[8]RVのVP8がH1抗原に結合したが、Ley抗原には結合しなかったことを示している[45]。唾液ベースの結合アッセイは、S60-VP8粒子がH1および/またはLeb抗原陽性の唾液試料に結合したが、H1およびLeb抗原に陰性の唾液試料には結合しなかったことを示した。これらのデータは、S60粒子を提示したVP8抗原がリガンド結合機能と正しく収められており、S60-VP8粒子がRVワクチン候補として有効であることを示している。
【0084】
S60粒子が提示されたVP8抗原に対する改善された免疫原性。S60-VP8粒子をマウスに免疫化し(N=6)、比較用の対照として遊離VP8抗原を使用してVP8特異的免疫応答を測定した。3回の免疫化の後、S60-VP8粒子による免疫化後のVP8特異的IgG応答は、遊離VP8によって誘導された応答よりも11.6倍高かった(P=0.0004)(
図10A)。陰性対照としてのS60粒子は、VP8特異的IgG応答を誘発しなかった。これらのデータは、S60粒子が提示されたRV VP8抗原の免疫原性を改善できることを示した。
【0085】
S60-VP8粒子誘発抗血清は、VP8リガンド結合に対する遮断を強化した。VP8のRVホストリガンドまたは受容体への結合は、RV感染の重要な段階である[43]。したがって、RV VP8タンパク質のHBGAへの結合に対するインビトロブロッキングアッセイは、代理RV中和アッセイとして開発された[47]。出願人は、以前に開発されたP-VP8粒子[47]およびRVリガンドとしてのLeb陽性唾液試料[45]を使用して、このようなブロッキングアッセイを実施した。出願人は、S60-VP8粒子で免疫化した後のマウス抗血清は、遊離VP8抗原で免疫化した後の抗血清のものよりも22.8倍高い50%ブロッキング力価(BT50)を示したことを見出し(P=0.0003)(
図10B)、S60粒子が提示されたRV VP8抗原の免疫原性を大幅に改善するという見解をさらに裏付けた。陰性対照として、VP8抗原を含まないS60粒子で免疫化した後のマウス血清は、このような遮断を明らかに示さなかった。
【0086】
S60-VP8粒子誘発抗血清は、RV感染に対する中和を強化しました。出願人はまた、従来の細胞培養に基づく中和アッセイを実施して、細胞培養に適応した(P[8])RV Wa株の感染に対するS60-VP8粒子誘発抗血清の中和活性を決定した。BT50(上記参照)と一致して、S60-VP8粒子での免疫化後のマウス抗血清は、3種類の異なる血清希釈(1:75、1:150、および1:300)で、遊離VP8抗原で免疫化された後の抗血清のものよりも著しく高い中和活性を示した(それぞれP=0.0003、P=0.0001、およびP=0.0016)(
図10C)。VP8抗原を含まないS60粒子で免疫化した後のマウス血清は、このような中和活性を明らかに示さなかった。これらのデータは、S60粒子が、提示されたRV VP8抗原の免疫原性を増加させるための有力なワクチンプラットフォームであり、S60-VP8粒子がRV感染に対する有望なワクチン候補であるという概念をさらに裏付けた。
【0087】
多機能ワクチンプラットフォームとしてのS60粒子。RV VP8抗原に加えて、出願人は、A型インフルエンザウイルスのM2eエピトープ、マラリア原虫Plasmodium falciparumのスポロゾイト表面タンパク質(CSP)のTSR抗原、およびE型肝炎ウイルスのPドメインを含むリンカーを介して、同じ露出SドメインC末端を介してS60粒子にいくつかの他のエピトープと抗原を融合することができた(表1)。したがって、人工的に開発されたS60粒子は、新規ワクチン開発のための多機能プラットフォームとして機能する。
【表1】
【0088】
1M2eエピトープは、A型インフルエンザウイルスのプロトン選択性イオンチャネルを形成するマトリックス-2(M2)タンパク質の外部ドメインである。2TSR/CSP抗原は、マラリア原虫Plasmodium falciparumの宿主細胞侵入において重要な役割を果たすスポロゾイト表面タンパク質(CSP)の主要な表面タンパク質のC末端抗原である。3完全RV VP8は、ヒトP[8]ロタウイルスのスパイクタンパク質の完全長VP8ドメインである。3ネズミRV VP8は、ネズミロタウイルスのスパイクタンパク質のコア部分である。4HEV Pドメインは、E型肝炎ウイルスキャプシドの突起ドメインである。
【0089】
考察
この研究では、出願人は、単純な細菌発現系を介して高効率で統一された60価のNoV S60粒子を産生するための新しい技術を開発した。これは、NoVキャプシドの内部シェルを自然に構築するNoV VP1 Sドメインのホモタイプの相互作用、ならびにSドメインタンパク質を安定化させ、Sドメイン間相互作用を強化するためのいくつかの改変を活用することによって達成された。具体的には、出願人は、R69A変異を導入して、そうでなければ、Sタンパク質の容易な分解をもたらす、天然のシェル上の露出したプロテアーゼ切断部位を破壊した。加えて、出願人は、三重(V57C/Q58C/S136'C)または四重(V57C/Q58C/S136'C/M140'C)ステイン変異を、2つの隣接するSドメイン間の立体的に近い残基の2つの対(V57/M140'およびQ58/S136'、
図6)に導入して、Sドメイン間ジスルフィド結合を確立して、天然のNoVシェルで示すものよりも強いSドメイン間相互作用を確立した。最終的に、生物工学によって作られたSドメインは、簡単なE.coli系によって高収率で容易に産生され、S60粒子の高効率での自己形成をもたらした。
【0090】
60個の柔軟に露出したSドメインC末端を有する自己集合化された多価S60粒子は、ワクチン開発用に提示された抗原に対する免疫原性を改善するための抗原提示の理想的なプラットフォームである。この考えは、主要なRV中和抗原である60個のRV VP8タンパク質を提示するキメラS60粒子を構築することにより、この研究で大部分が証明された。S60-VP8粒子は、高い安定性で簡単に産生することができる。これらは、提示されたVP8抗原に対するマウスで、遊離VP8タンパク質によって誘導されるものよりも有意に高いIgG応答を誘発した。S60-VP8粒子によるワクチン接種後のマウス抗血清は、そのグリカンリガンドへのRV VP8の結合に対して有意に強い遮断を示し、遊離VP8抗原による免疫化後の血清よりも、培養細胞におけるRV感染および複製に対する有意に高い中和活性を示した。S60-VP8粒子ワクチンの保護効果は、出願人の研究室でネズミRVチャレンジモデルを使用して決定されているが、この報告の提示データは、S60-VP8粒子がRV感染に対する有望なワクチン候補であり、したがってS60粒子が、新規ワクチン開発のための抗原提示のための優れたプラットフォームであるとの見解を強く裏付けた。
【0091】
天然のNoVキャプシドは、NoVの単一の主要な構造タンパク質である180個のVP1によって作製される。真核生物系を介したNoV VP1のインビトロ発現は、多くの場合、180価と60価のVLPの混合物をもたらし、2つのVLP形式は、人工変性および再生処置によって交換可能であった[60]。まだ完全には研究されていないが、バキュロウイルス/昆虫細胞系を介した短縮型Sドメインの以前の発現は、180価のS粒子を自己集合化するように思われた[11、24]。しかしながら、発現システムを介して統一された60価のNoV VLPまたはS粒子は、これまで産生されたことはない。したがって、単純なE.coli系を介した統一NoV S60粒子の出願人の産生技術は、生物工学の進歩を表している。統一されたS60粒子の自己形成は、大幅に改変されたSドメインと原核生物のE.coli発現系のユニークな畳み込みとの組み合わせ効果から生じ得る。ワクチンの複雑さとサイズのばらつきは、ワクチンの予防接種結果のばらつきにつながるため、ワクチン候補の均質な複雑さとサイズとは、品質管理のための重要な考慮事項である。
【0092】
人工的に導入された分子間ジスルフィド結合は、ウイルスタンパク質の粒子または複合体を安定化させる一般的なアプローチとして使用され得る。出願人の以前のNoV P粒子の構築中に、出願人は、システイン含有ペプチドをNoV Pドメインの末端に付加すると、P間ダイマージスルフィド結合を介してP粒子形成が促進かつ安定化することを見出した[20~23]。この現在の研究では、S60粒子は効率的に自己集合したが(
図3D)、VP8抗原の添加により、S60-VP8粒子の元のバージョンの形成効率は比較的低かった(
図5C)。注目すべきことに、S60-VP8粒子の自己形成効率は、Sドメイン間ジスルフィド結合を導入することにより大幅に向上した。これは、2つの基本的なステップで達成された。まず、出願人はGII.4 NoV(Wen Jiang、未公開データ)のシェル構造を分析して、2つの隣接するSドメイン間の2対の立体的に近い(5.7~5.9Å)残基(V57/M140'およびQ58/S136')を特定した(
図6、AおよびB)。次に、これらの残基のうちの2~4個を異なる組み合わせで同時にシステインに変異させ:1)V57C/M140'C、2)Q58C/S136'C、3)V57C/Q58C/S136'C、4)V57C/Q58C/S140'C、および5)V57C/Q58C/S136'C/S140'C、続いて、これらを産生して、得られたS60-VP8粒子の自己形成効率の測定を行った。
【0093】
これらの変異の中で、三重システイン変異(V57C/Q58C/S136'C)を伴うS60-VP8粒子は、S-VP8タンパク質がS60-VP8粒子に自己集合する95%を超える最高の粒子形成効率を示した(
図6、F~J)。変異したS-VP8タンパク質のダイマーおよびモノマー形態は完全になくなった(
図6Hを
図5Cおよび
図Eと比較して)。出願人はまた、四重システイン変異(V57C/Q58C/S136'C/S140'C)を伴うS60-VP8粒子は、三重システイン変異を伴うものとほぼ同じ高効率のS60-VP8粒子形成を示したことにも注目した(データ図示せず)。しかしながら、様々なシステイン変異の組み合わせの間でこれらの異なる結果の背後にある詳細な構造基盤またはメカニズムは、理解しにくいままである。これらの結果および出願人のP粒子に関する以前の研究[20~23]は、分子間ジスルフィド結合の導入が、ウイルスタンパク質粒子または複合体形成を促進かつ安定化する一般的なアプローチとして利用できることを示唆した。これらのデータにしたがって、R69AおよびV57C/Q58C/S136'C変異を有するS60-VP8粒子を使用して下流実験を行い、これと同時に、同じ変異を有する改変Sドメインを使用して下流実験を行い、他の抗原を提示するためのプラットフォームとしての安定したS60粒子を産生するために使用されることになる。
【0094】
この研究におけるS60粒子およびS60-VP8粒子は、SドメインまたはS-VP8タンパク質の露出したC末端に結合された小さなHisx6ペプチドを介して精製された。出願人のデータは、GSTタグがS60およびS60-VP8粒子の産生に適していないことを示し、なぜなら、これが大きく(220個の残基)、S60粒子の形成を妨害し、余分なトロンビン切断ステップによって除去される必要があり、精製手順を複雑にするためである。加えて、タグフリー精製法の可能性も試験した。出願人は、S60およびS60-VP8粒子の両方が、硫酸アンモニウムによって選択的に沈殿し、PBSおよび他の緩衝液で分解できることを発見した(データ図示せず)。最後に、出願人は、S60およびS60-VP8粒子がゲル濾過サイズ排除カラムおよび陰イオン交換クロマトグラフィーで単一ピークとして溶出されることを発見した(データ図示せず)。これらのデータは、総じて、S60およびS60-VP8粒子、および最も可能性の高い他のS60抗原キメラ粒子が、タグなしのアプローチで精製できることを示している。
【0095】
60個の自由に露出したC末端は、S60粒子が有用なワクチンプラットフォームであることを促進する別の特徴である。外来の抗原またはエピトープは、組換えDNA技術により柔軟なリンカーを介してSドメインの末端に簡単に融合することができる。この研究は、S60-Hisx6およびS60-VP8粒子の構造的安定性によって、ならびにそれらのTALON CellThru Resin(Hisx6)およびH1ならびにLebリガンド(RV VP8)への優れた結合能力によって示されるように、Hisx6ペプチドおよびRV VP8抗原がS60粒子によって十分に提示され得ることを明らかに示した。加えて、他のいくつかの試験された抗原またはエピトープが、S60粒子によって十分に提示され得るという事実は、S60粒子が多機能ワクチンプラットフォームであることを示している。
【0096】
S60粒子のモデリング、60価のFCV VLPPの結晶構造を使用したS60-Hisx6、およびcryoEM技術によるS60-VP8粒子の3次元構造の再構築は、S60粒子がどのようにHsix6ペプチドおよびRV VP8抗原を提示するかという構造的基盤に新しい洞察を提供する。S60粒子モデルの構造をS60粒子領域に適合させること、ならびにVP8抗原の60コピーをS60-VP8粒子のcryoEM密度マップの突起領域に適合させることは、S60粒子とそれらの提示される抗原の構造的関係をさらに明らかにするに違いない。これらの構造データは、S60粒子による他の外来抗原の将来の提示の設計および理解に役立つであろう。最後に、これらの構造研究はまた、S60粒子およびS60-VP8粒子の60価のT=1の二十面体対称性も確認した。
【0097】
要約すると、我々は、容易な産生、高い安定性、および高い免疫原性を特徴とし、抗原提示のための理想的なプラットフォームとして機能する、自己集合化多価タンパク質ナノ粒子を開発した。概念の証明として、VP8抗原を中和するRVの60コピーを提示するキメラS60粒子が構築された。出願人のデータは、高度に免疫原性のあるS60-VP8粒子が、RV感染に対する有望なワクチン候補であること、およびS60粒子が異なる病原体に対する新規ワクチン開発のための様々な抗原の免疫原性を高める多機能プラットフォームであることを示した。
【0098】
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【0159】
全てのパーセンテージおよび比率は、特に指定がない限り、重量で計算される。
【0160】
全てのパーセンテージおよび比率は、特に指定がない限り、総組成に基づいて計算される。
【0161】
本明細書全体で与えられる全ての最大数値限界には、あたかもそのような低い数値限界が本明細書で明示的に書かれているかのように、全ての低い数値限界が含まれることを理解されたい。本明細書全体で与えられる全ての最大数値限界には、あたかもそのような高い数値限界が本明細書で明示的に書かれているかのように、全ての高い数値限界が含まれるであろう。本明細書を通して与えられる全ての数値範囲は、そのようなより狭い数値範囲が全て本明細書で明示的に書かれているかのように、そのようなより広い数値範囲内に入るより狭い数値範囲を全て含むであろう。
【0162】
本明細書に開示される寸法および値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されると理解されるべきではない。代わりに、特に指定がない限り、このような各寸法は、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲の両方を意味することを意図している。例えば、「20mm」として開示されている寸法は、「約20mm」を意味することを意図している。
【0163】
任意の相互参照または関連する特許もしくは出願を含む、本明細書で引用される全ての文書は、明示的に除外ないしは別の方法で制限されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。文書の引用は、本明細書で開示もしくは請求された発明に関する先行技術であること、または単独で、または他の参考文献(単数または複数)との組み合わせで、このような発明を教示、示唆、または開示することを認めるものではない。さらに、この文書内の用語の意味または定義が参照により組み込まれた文書内の同じ用語の意味または定義と矛盾する限りにおいて、この文書でその用語に割り当てられた意味または定義が適用される。
【0164】
本発明の特定の実施形態を例示および説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく他の様々な変更および修正を行えることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更および修正を、添付の特許請求の範囲で網羅することを意図している。