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特開2025-2400コート部品およびコート部品の製造方法
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  • 特開-コート部品およびコート部品の製造方法 図1
  • 特開-コート部品およびコート部品の製造方法 図2
  • 特開-コート部品およびコート部品の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002400
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】コート部品およびコート部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/06 20060101AFI20241226BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241226BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241226BHJP
   C09D 123/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B05D3/06 Z
B05D7/00 H
B05D7/00 K
B05D7/24 302G
C09D123/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102564
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 道治
(72)【発明者】
【氏名】大島 康裕
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075BB41Z
4D075BB94Z
4D075CA18
4D075CA47
4D075CA48
4D075DB54
4D075DC21
4D075DC24
4D075EB13
4J038CB001
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】電子部品の耐熱性によることなくコーティングされたコート部品を製造する方法を提供する。
【解決手段】電子部品にコーティングを施したコート部品を製造する方法であって、シロキサンを含有する部材を備えた電子部品に対して、部材を覆うようにポリオレフィンを含有するコート剤を塗布する工程、およびコート剤を塗布した電子部品に特定波長の光を照射することによって、シロキサンとポリオレフィンとを酸素を介して化学的に結合させる工程、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品にコーティングを施したコート部品を製造する方法であって、
シロキサンを含有する部材を備えた電子部品に対して、前記部材を覆うようにポリオレフィンを含有するコート剤を塗布する工程、および
前記コート剤を塗布した前記電子部品に特定波長の光を照射することによって、前記シロキサンと前記ポリオレフィンとを酸素を介して化学的に結合させる工程、を含む、コート部品の製造方法。
【請求項2】
前記電子部品は、前記部材として前記シロキサンを含有する蛍光体を含む樹脂でチップを封止したLEDである、請求項1に記載のコート部品の製造方法。
【請求項3】
前記光源が発生する前記特定波長の光は、波長が380nm以下の非可視光である、請求項1または2に記載のコート部品の製造方法。
【請求項4】
前記コート剤は前記シロキサンを含まない、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコート部品の製造方法。
【請求項5】
電子部品にコーティングを施したコート部品であって、
前記電子部品が備えるシロキサンを含有する部材の前記シロキサンと、前記部材を覆うように塗布されたポリオレフィンを含有するコート剤の前記ポリオレフィンとが、酸素を介して化学的に結合している、コート部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品にコーティングを施したコート部品およびそのコート部品を製造する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、含硫黄ガス透過性の低い硬化性コーティングを施したコート部品の製造方法が、開示されている。この特許文献1に記載された製造方法では、まず、ポリオレフィンとシロキサンとを含む組成物を電子部品に塗布する。次に、組成物を塗布した後の電子部品を加熱することで、組成物を硬化反応させる。この硬化反応によって生成された反応生成物が電子部品の保護被膜となって、電子部品がコーティングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-082429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された製造方法では、ポリオレフィンとシロキサンとを含む組成物から反応生成物を生成する(コーティングとして付着させる)ためには、組成物を加熱する(焼き付け)工程が必要となる。このため、この製造方法では、電子部品の耐熱性によってはコーティングを施すことができないことがある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、電子部品の耐熱性によることなく、コーティングされたコート部品を製造する方法、およびそのコート部品を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、電子部品にコーティングを施したコート部品を製造する方法であって、シロキサンを含有する部材を備えた電子部品に対して、部材を覆うようにポリオレフィンを含有するコート剤を塗布する工程、およびコート剤を塗布した電子部品に向けて特定波長の光を照射することによって、シロキサンとポリオレフィンとを酸素を介して化学的に結合させる工程、を含む、コート部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電子部品の部材が含有するシロキサンとコート剤が含有するポリオレフィンとを酸素を介して化学的に結合させることによって、電子部品の耐熱性にかかわらず、コーティングされたコート部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るコート部品の製造方法の工程を説明するフローチャート
図2】コート部品の製造方法のイメージ図
図3】コート部品となった電子部品(LED)の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示によるコート部品の製造方法は、電子部品の部材に元々含まれているシロキサンと、電子部品に塗布したポリオレフィンを含有するコート剤とを、酸素を介して化学的に結合させる。これにより、シロキサンを含有しないコート剤を用いて、電子部品をコーティングすることができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、本開示の一実施形態に係るコート部品の製造方法の工程を説明するフローチャートである。図2は、図1に示した各工程における電子部品などの状態を説明するイメージ図である。
【0011】
本実施形態では、基板100(図2の(a))に実装された電子部品200に対してコーティング処理を施すことによって、電子部品200をコート部品化する例を説明する。なお、電子部品200を実装する基板100は、特に限定されない。
【0012】
(工程S11)
工程S11では、コート部品化したいコーティング処理の対象となる1つ以上の電子部品200を、基板100に実装する(図2の(b))。本実施形態における電子部品200は、シロキサンを含有する部材を備えた部品である。例えば図3に示すような、シロキサンを含有する蛍光体を含む樹脂(シリコーン)などの部材210でチップ220を封止した表面実装型LEDを、電子部品200として示すことができる。
【0013】
電子部品200の基板100への実装が完了すると、工程S12に処理が進む。
【0014】
(工程S12)
工程S12では、基板100に実装された電子部品200の表面を覆うように、コート剤300を基板100に塗布する(図2の(c))。本実施形態におけるコート剤300は、ポリオレフィンを含有するコーティング剤である。コート剤300が塗布された電子部品200の状態を、図3に示す。
【0015】
この工程S12が終了した段階では、電子部品200のシロキサンを含有する部材210(シリコーン)と、部材210の上から塗布されたポリオレフィンを含有するコート剤300との間には隙間があり、その隙間には酸素(空気)が存在している。このイメージを下記[化1]の構造式で表現する。
【0016】
【化1】
【0017】
コート剤300の基板100への塗布が完了すると、工程S13に処理が進む。
【0018】
(工程S13)
工程S13では、基板100に塗布されたコート剤300に向けて、光源400から特定波長の光を照射する(図2の(c))。本実施形態における光源400が発生する特定波長の光は、波長が380nm以下の非可視光である。一例として、ブラックライトを光源400として示すことができる。
【0019】
この特定波長の光をコート剤300に向けて照射すると、光エネルギーの光電効果によって酸素の二重結合が切断される。このイメージを下記[化2]の構造式で表現する。
【0020】
【化2】
【0021】
そして、この二重結合が切断された酸素は、シロキサンを含有する部材210(シリコーン)およびポリオレフィンを含有するコート剤300のそれぞれと単結合する。このイメージを下記[化3]の構造式で表現する。
【0022】
【化3】
【0023】
このように、光源400から特定波長の光をコート剤300に向けて照射することによって、部材210が含有するシロキサンとコート剤300が含有するポリオレフィンとが、酸素を介して化学的に結合(酸素結合)する。
【0024】
<作用・効果>
以上説明したように、本開示によれば、シロキサンを含有する部材210を備えた電子部品200に対して、部材210を覆うようにポリオレフィンを含有するコート剤300を塗布し、そのコート剤300を塗布した電子部品200に光源400から特定波長の光を照射することによって、シロキサンとポリオレフィンとを酸素を介して化学結合させることによって、電子部品200にコーティングを施したコート部品を製造する。この製造方法によって、電子部品200の耐熱性にかかわらず、コーティングされたコート部品を製造することができる。
【0025】
また、本開示のコート部品は、部材210と酸素結合されたコート剤300の被膜によって、電子部品200がコーティングされている。よって、LEDなどの電子部品200に用いられる銀が、含硫黄ガス(排気ガス、硫化水素など)によって腐食してしまうことを防止することができる。これにより、硫化腐食を原因とするLEDの光量低下や消灯の発生を抑制することができる。
【0026】
また、本開示のコート部品の製造方法によれば、ポリオレフィンのみを含有する(シロキサンは含有しない)コート剤300を電子部品200に塗布すればよいので、コーティングの厚みを薄くできるといったことが期待できる。
【0027】
さらに、本開示のコート部品の製造方法では、従来では必要であった基板100を加熱する工程(焼き付け工程)が不要となるため、製造設備の規模縮小、製造期間の短縮、製造コストの削減などの様々な効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本開示の技術は、電子部品の耐熱性にかかわらずコーティングされたコート部品を製造したい場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
100 基板
200 電子部品
210 部材
220 チップ
300 コート剤
400 光源
図1
図2
図3