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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024033
(43)【公開日】2025-02-19
(54)【発明の名称】抗TNFR2抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250212BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P29/00
A61P37/06
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 D
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024195220
(22)【出願日】2024-11-07
(62)【分割の表示】P 2022517200の分割
【原出願日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】62/901,364
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/985,509
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/047,824
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/058,016
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513056606
【氏名又は名称】アペクシジェン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エリン エル. フィルバート
(72)【発明者】
【氏名】スシュマ クリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン タン
(72)【発明者】
【氏名】レナ バハジャト
(72)【発明者】
【氏名】シャオドン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン アルヴァラード
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腫瘍性疾患、炎症性疾患および/または自己免疫疾患、ならびに他の治療または診断を含む、様々な治療または診断方法のいずれかで使用され得る、抗腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)抗体および関連する組成物を提供する。
【解決手段】TNFR2に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、特定の配列を有するVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに特定の配列を有するVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、
配列番号37~39にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに配列番号40~42にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域
を含む、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記VH領域が、配列番号115に記載される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記VL領域が、配列番号116に記載される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
配列番号115に記載されるVH領域、および配列番号116に記載されるVL領域を含む、請求項2または3に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ、配列番号115に記載される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域ならびに配列番号116に記載される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
ヒトTNFR2、可溶性ヒトTNFR2、および細胞発現ヒトTNFR2に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
成熟ヒトTNFR2配列(FLヒトTNFR2の残基23~461)によって定義されるR21、Y23、T27、S33、K34、T51、およびS55から選択される一つまたは複数の残基を含むか、またはREY、TAQMCCSK(配列番号328)、およびTVCDS(配列番号329)から選択される一つまたは複数の残基を含む、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、または五つのヒトTNFR2ペプチドエピトープに結合する、請求項6に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体がヒト化されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項9】
前記抗体が、scFv、ヒンジ領域を欠く一価抗体、ミニボディ、およびプロボディからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項10】
前記抗体が、FabまたはFab’フラグメントである、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項11】
前記抗体が、F(ab’) フラグメントである、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項12】
前記抗体が全抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項13】
ヒトIgG定常ドメインを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項14】
前記IgG定常ドメインが、IgG1 CH1ドメインを含む、請求項13に記載の単離された抗体。
【請求項15】
前記IgG定常ドメインが、IgG1 Fc領域、修飾されたFc領域、または一つまたは複数のアミノ酸置換で修飾された、修飾されたFc領域を含む、請求項13に記載の単離された抗体。
【請求項16】
約2nM以下のK でヒトTNFR2に結合する、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
約0.7nM以下のK でヒトTNFR2に結合するか、または約50pm以下のK で、初代T細胞もしくはTreg上のヒトTNFR2に結合する、請求項1~16のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
前記単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントが、
(a) TNFR2へのTNF-α結合を阻害する;
(b) TNFR2シグナル伝達を阻害する;
(c) TNFR2シグナル伝達を活性化する;
(d) TNFR2二量体化/三量体化を阻害する;
(e) ヒトTNFR2およびカニクイザルTNFR2に交差反応性に結合する;
(f) 抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)によって、腫瘍細胞、Treg、ならびに/またはマクロファージ、好中球、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を含む抑制性骨髄細胞の細胞殺傷/枯渇を増加させ/誘導する;
(g) マクロファージ介在性抗体依存性細胞貪食(ADCP)によって、腫瘍細胞、Treg、ならびに/またはマクロファージ、好中球、およびMDSCを含む抑制性骨髄細胞の細胞殺傷/枯渇を増加させ/誘導する;
(h) マクロファージ、好中球、およびMDSCを含む骨髄細胞によって免疫抑制を低減する;
(i) 炎症促進性M1マクロファージにMDSCおよび/またはM2マクロファージを変換する;
(j) エフェクターT細胞にTregを変換する;
(k) 高温腫瘍に冷たい腫瘍を変換する;
(l) Treg介在性免疫抑制を低減する;または
(m) (a)~(k)のいずれか一つまたは複数の組み合わせである、請求項1~17のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
TNFR1、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM、CD40、死受容体6(DR6)、および/またはオステオプロテジェリン(OPG)に実質的に結合しない、請求項1~18のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
TNFR2アンタゴニストである、請求項1~19のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項21】
TNFR2アゴニストである、請求項1~19のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項22】
二重特異性抗体または多特異性抗体である、請求項1~21のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項23に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
【請求項26】
生理的に許容可能な担体および治療上有効量の、請求項1~22のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む、組成物。
【請求項27】
異常なTNFR2発現と関連する癌を含む癌を有する患者を治療するための、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
TNFR2アンタゴニスト介在性免疫抑制と関連する癌を含む癌を有する患者を治療するための、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記抗体、またはその抗原結合フラグメントが、TNFR2アンタゴニストである、請求項27または28に記載の組成物。
【請求項30】
炎症性疾患および/または自己免疫疾患を有する患者を治療するための、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記疾患が、異常なTNFR2発現と関連し、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントが、TNFR2アゴニストである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記疾患が、TNFR2アゴニスト介在性免疫活性化と関連する、請求項30に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月17日に出願された米国仮特許出願第62/901,364号、2020年3月5日に出願された米国仮特許出願第62/985,509号、2020年7月2日に出願された米国仮特許出願第63/047,824号、および2020年7月29日に出願された米国仮特許出願第63/058,016号の35 U.S.C.第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、それぞれが、その全体が参照により取り込まれる。
【0002】
配列表に関する声明
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照することにより本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、APEX-025/04WO_ST25.txtである。このテキストファイルは約265KBで、2020年9月11日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0003】
本開示は、腫瘍性疾患、炎症性疾患および/または自己免疫疾患、ならびに他の治療または診断を含む、様々な治療または診断方法のいずれかで使用され得る、抗腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)抗体および関連する組成物に関する。
【0004】
関連技術の説明
TNF-αは、生理学的状態と病理学的状態の両方で重要な役割を果たす、必須の炎症性メディエーターである。TNF-αは、マクロファージおよび単球によって主に産生され、26kDaの膜結合三量体(mTNF-α)と17kDaの可溶性三量体(sTNF-α)の両方として存在することができる。TNF-αは、二つの受容体であるTNFR1(TNFRSF1A;55kDa)およびTNFR2(TNFRSF1B;75kDa)を介してその効果を発揮し、TNF-αは、4つの反復システインリッチモチーフを含有する類似の細胞外ドメインを有するが、別個のシグナル伝達経路を活性化する、異なる細胞内ドメインも有する。
【0005】
TNFR1は、偏在的に発現したタンパク質であり、mTNF-αとsTNF-αの両方が関与して、状況に応じて細胞生存/炎症またはアポトーシスをシグナル伝達することができる。対照的に、TNFR2発現は、活性化状態によって制御され、主にT細胞、ならびに単核および顆粒球性骨髄細胞を含む骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)としても知られる免疫抑制性骨髄細胞に限定される。単核骨髄細胞は、最後まで分化したマクロファージおよび樹状細胞(DC)、ならびに炎症性条件下で組織においてマクロファージおよびDCに分化する単球を含む。顆粒球性骨髄細胞は、最後まで分化した多形核好中球、好酸球、好塩基球、およびマスト細胞の集団を含む。TNFR2は、mTNF-αを介してのみ完全に関与することができる。TNFR1とは異なり、TNFR2は、その細胞質に死ドメインを含有せず、代わりに、TRAFおよびNFkB経路を介してシグナル伝達して、細胞生存および免疫抑制を制御することができる。mTNFはまた、受容体結合の際に発現される細胞内で逆シグナル伝達を示す。両方のTNFRは、TACE酵素によって切断され、細胞から受容体を除去することによって、またはsTNF-αのデコイとして作用することによって、細胞をTNF-αに脱感作させるように作用し得る、可溶性形態に変換され得る。
【0006】
TNFR2は、おそらく、高レベルのTNFR2を発現する制御性T細胞(Treg)に対するその効果を通して、免疫系の調節において重要な役割を果たす。マウスでは、TNFR2の欠失は、Tregの機能を低下させることによって自己免疫疾患および大腸炎を悪化させる。ヒトにおいて、TNFRSF1Bにおける既知の多型は、制御性T細胞において、TNFR2発現の減少またはTNFαへの結合の減少をもたらし、TNFR2介在性シグナル伝達を妨害する。これらの多型は、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、および潰瘍性大腸炎を含む自己免疫疾患と強く相関する。マウスとヒトの両方で、TNFR2は、腫瘍で見出されるものを含む、高度に抑制性のTregで発現されるが、エフェクターT細胞では強く発現されない。TNFR2発現は、多数の腫瘍型において抑制性腫瘍微小環境と強く相関する。また、卵巣癌において、TNFR2+TregがTME内のTエフェクター応答を障害し得ることが示された(Govindaraj C)。マウスモデルは、癌に対する免疫反応の妨害におけるTNFR2の役割についてのさらなる証拠を提供している。さらに、TNFR2は、腎臓癌、結腸癌、および卵巣癌を含む25種類より多い腫瘍タイプで同定されている。機能獲得性のTNFR2変異は、治療抵抗性である、稀な形態のCTCLを有するセザリー症候群患者に置いて生じる。
【0007】
したがって、当該技術分野において、TNFR2を有効に阻害するか、またはそうでなければ拮抗する治療抗体、ならびに癌および炎症性疾患を治療する関連する方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメント、ならびにその使用方法に関する。一態様は、ヒトTNFR2を含む、TNFR2に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
配列番号1~3にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに配列番号4~6にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域;
配列番号7~9にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号10~12にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号13~15にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号16~18にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号19~21にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号22~24にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号25~27にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号28~30にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号31~33にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号34~36にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号37~39にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号40~42にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号43~45にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号46~48にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号49~51にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号52~54にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号55~57にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号58~60にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号61~63にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号64~66にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号67~69にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号70~72にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号73~75にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号76~78にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号79~81にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号82~84にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号85~87にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号88~90にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号91~93にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号94~96にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;または
配列番号97~99にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号100~102にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
あるいは当該CDR領域にわたる最大1、2、3、4、5、6、7、もしくは8個の総アミノ酸置換を除く、(i)および(ii)の重鎖および軽鎖可変領域と同一の重鎖および軽鎖可変領域を含む、当該抗体、またはその抗原結合フラグメントのバリアントを含む、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。
一部の実施形態では、VH領域は、配列番号103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、および135から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VL領域は、配列番号104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、134、および136から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0009】
ある特定の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、
配列番号103に記載されるVH領域、および配列番号104に記載されるVL領域;
配列番号105に記載されるVH領域、および配列番号106に記載されるVL領域;
配列番号107に記載されるVH領域、および配列番号108に記載されるVL領域;
配列番号109に記載されるVH領域、および配列番号110に記載されるVL領域;
配列番号111に記載されるVH領域、および配列番号112に記載されるVL領域;
配列番号113に記載されるVH領域、および配列番号114に記載されるVL領域;
配列番号115に記載されるVH領域、および配列番号116に記載されるVL領域;
配列番号117に記載されるVH領域、および配列番号118に記載されるVL領域;
配列番号119に記載されるVH領域、および配列番号120に記載されるVL領域;
配列番号121に記載されるVH領域、および配列番号122に記載されるVL領域;
配列番号123に記載されるVH領域、および配列番号124に記載されるVL領域;
配列番号125に記載されるVH領域、および配列番号126に記載されるVL領域;
配列番号127に記載されるVH領域、および配列番号128に記載されるVL領域;
配列番号129に記載されるVH領域、および配列番号130に記載されるVL領域;
配列番号131に記載されるVH領域、および配列番号132に記載されるVL領域;
配列番号133に記載されるVH領域、および配列番号134に記載されるVL領域;または
配列番号135に記載されるVH領域、および配列番号136に記載されるVL領域を含む。
【0010】
一部の実施形態は、配列番号103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、および135から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域、ならびにそれぞれ、配列番号104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、134、および136から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0011】
一部の実施形態は、表R1における下線を付した配列から選択されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびにそれぞれ、表R2における下線を付した配列から選択されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0012】
一部の実施形態は、表R1から選択されるアミノ酸配列を含むVH領域、およびそれぞれ、表R2から選択されるアミノ酸配列を含むVL領域を含む、請求項6に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0013】
一部の実施形態は、例えば、REY、TAQMCCSK(配列番号328)、およびTVCDS(配列番号329)から選択される一つまたは複数の残基を含む、からなる、または本質的にからなるエピトープを含む、成熟ヒトTNFR2配列(FLヒトTNFR2の残基23~461)によって定義される、R21、Y23、T27、S33、K34、T51、およびS55から選択される一つまたは複数の残基を含む、からなる、または本質的にからなるエピトープでヒト腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む。一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号37~39にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに配列番号40~42にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域を含む。一部の実施形態では、VH領域は、配列番号115と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VL領域は、配列番号116と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、配列番号115に記載されるVH領域、および配列番号116に記載されるVL領域を含む。
【0014】
一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトTNFR2、例えば、可溶性および/または細胞発現ヒトTNFR2に結合する。
【0015】
一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、表T1から選択される少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、または五つのヒトTNFR2ペプチドエピトープに結合する。
【0016】
一部の実施形態では、抗体は、ヒト化されている。一部の実施形態では、抗体は、一本鎖抗体、scFv、ヒンジ領域を欠く一価抗体、ミニボディ、およびプロボディからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗体は、FabまたはFab’フラグメントである。一部の実施形態では、抗体は、F(ab’)フラグメントである。一部の実施形態では、抗体は、全抗体である。
【0017】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトIgG定常ドメインを含む。一部の実施形態では、IgG定常ドメインは、IgG1 CH1ドメインを含む。一部の実施形態では、IgG定常ドメインは、IgG1 Fc領域、任意選択で、一つまたは複数のアミノ酸置換によって任意選択で修飾された、修飾されたFc領域を含む。
【0018】
一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、約2nM以下のKでヒトTNFR2、例えば、表T1の少なくとも一つのペプチドエピトープに結合する。一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、約0.7nM以下のKでヒトTNFR2に結合するか、または約50pm以下のKで、初代T細胞、任意選択で、Treg上のヒトTNFR2に結合する。
【0019】
一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、以下の特徴:
(a) TNFR2へのTNF-α結合を阻害する;
(b) TNFR2シグナル伝達を阻害する;
(c) TNFR2シグナル伝達を活性化する;
(d) TNFR2三量体化を阻害する;
(e) ヒトTNFR2およびカニクイザルTNFR2に交差反応性に結合する;
(f) 抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)によって、腫瘍細胞、Treg、ならびに/または抑制性骨髄細胞(任意選択で、マクロファージ、好中球、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC))の細胞殺傷/枯渇を増加させ/誘導する;
(g) マクロファージ介在性抗体依存性細胞貪食(ADCP)によって、腫瘍細胞、Treg、ならびに/または抑制性骨髄細胞(任意選択で、マクロファージ、好中球、およびMDSC)の細胞殺傷/枯渇を増加させ/誘導する;
(h) 骨髄細胞(任意選択で、マクロファージ、好中球、およびMDSC)によって免疫抑制を低減する;
(i) 炎症促進性M1マクロファージにMDSCおよび/またはM2マクロファージを変換する;
(j) エフェクターT細胞にTregを変換する;
(k) 高温腫瘍に冷たい腫瘍を変換する;
(l) Treg介在性免疫抑制を低減する;または
(m) (a)~(k)のいずれか一つまたは複数の組み合わせ、のうちの一つまたは複数を有する。
【0020】
一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR1、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD40、死受容体6(DR6)、および/またはオステオプロテジェリン(OPG)に実質的に結合しない。一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2アンタゴニストである。一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2アゴニストである。一部の実施形態では、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントは、二重特異性または多特異性抗体である。
【0021】
ある特定の実施形態は、本明細書に記載される、単離された抗体、もしくはその抗原結合フラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド、単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター、またはベクターを含む単離された宿主細胞を含む。
【0022】
生理的に許容可能な担体および治療上有効量の、本明細書に記載される単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物もまた、含まれる。
【0023】
患者に本明細書に記載される組成物を投与し、これにより、癌を治療することを含む、癌、例えば、異常なTNFR2発現と関連する癌を有する患者を治療する方法もまた、含まれる。
【0024】
患者に本明細書に記載される組成物を投与し、これにより、癌を治療することを含む、癌、例えば、TNFR2アンタゴニスト介在性免疫抑制と関連する癌を有する患者を治療する方法もまた、含まれる。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2アンタゴニストである。
【0025】
患者に本明細書に記載される組成物を投与し、これにより、炎症を治療することを含む、炎症性疾患および/または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法もまた、含まれる。一部の実施形態では、炎症性疾患および/または自己免疫疾患は、異常なTNFR2発現と関連し、例えば、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2アゴニストである。一部の実施形態では、炎症性疾患および/または自己免疫疾患は、TNFR2アゴニスト介在性免疫活性化と関連する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、癌免疫療法における抗TNFR2抗体の活性についての提案された機序を説明する。
図2図2は、本明細書に記載される抗体免疫化およびスクリーニングスキームを説明する。
図3図3A~3Dは、ヒトキメラ抗体特徴決定の第一セットの結果を示す。図3A~3Bでは、ヒト(3A)またはカニクイザル(3B)TNFR2-Hisタグ付きタンパク質を、1μg/mLで96ウェルELISAプレート上にコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄し、1%BSAを使用してブロッキングした。抗体を室温(RT)で1時間加え、洗浄し、抗ヒトHRPを使用して検出した。アッセイを、TMB基質を使用して3~5分間発展させた。図3Cでは、ヒトTNFR2を発現するように操作したCHO細胞でFACS結合を行った。簡潔に述べると、抗体を、MACS緩衝液中200,000個の細胞と共に1時間インキュベートし、続いて、洗浄し、抗ヒトIgG BV421を使用して20分間検出した。試料を、CytoflexまたはMACSQuantフローサイトメーターを使用して分析した。図3Dでは、1μg/mL TNFR-Fcで、4℃で一晩プレートをコーティングすることによって、リガンドブロッキングELISAを行った。プレートを洗浄し、ブロッキングし、抗体をRTで1時間インキュベートした。抗体を洗浄し、100ng/mL TNF-aを加え、RTで1時間インキュベートした。マウス抗ヒトTNF-αおよび抗マウスIgG HRPで洗浄した後、TNF-αを検出した。アッセイを、TMB基質を5~7分間使用して発展させた。
図4図4A~4Dは、可溶性(4A)および細胞ベースのヒトTNFR2(4C)、カニクイザルTNFR2(4B)、ならびにELISAベースのTNF-αブロッキング(4D)への抗体結合を含む、ヒトキメラ抗体特徴決定の第2セットの結果を示す。上記の図3A~3Dに記載する通り、行った。
図5図5は、NFkB HEKレポーター株上のヒトキメラ抗体によるTNFRシグナル伝達を示す。PromegaのHEK TNFRレポーター細胞を、平底プレートにおいて1ウェル当たり50,000個の細胞で播種した。10μg/mL示した抗体または0.2ng/mL TNF-αを加え、細胞を37℃で20時間インキュベートした。上清と4:1の比でQuantiBlue試薬を10分間使用して、レポーター活性を検出した。プレートを、655nmでSpectroMaxにより読み取った。データは、シグナルレベルは低いながら、55F6は、いくらかのアゴニスト活性を有し、一方、他の抗体は、有意な活性を有さないことを示す。
図6-1】図6A~6Dは、可溶性(6A)および細胞ベースのヒトTNFR2(6C)、カニクイザルTNFR2(6B)、ならびにELISAベースのTNF-αブロッキング(6D)へのヒト化抗体結合を示す。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
図6-4】同上。
図7図7は、ヒト化候補を用いた細胞ベースのTNFαブロッキングアッセイを示す。TNFR2を過剰発現するCHO細胞を、1ウェル当たり100,000個の細胞で播種した。細胞を、示した抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、14ng/mLビオチン化TNFαを30分間加えた。TNFαを洗浄し、SA-PEで15分間検出した。細胞を、CytoflexまたはMACSQuantフローサイトメーターを使用して分析した。アッセイを2回繰り返した。
図8図8は、可溶性TNFR1結合アッセイを示す。TNFR1-Hisタグ付きタンパク質を、1μg/mLで4℃でELISAプレート上に一晩コーティングした。プレートを洗浄し、ブロッキングし、抗体を、示した濃度で、室温で1時間加えた。抗体を洗浄し、抗ヒトIgG HRPで1時間検出した。アッセイを、TMB基質を使用して10分間発展させた。
図9図9A~9Bは、レポーターアッセイによるTNFR2-CHO細胞のADCCを示す。PromegaのADCC Reporter Bioassay Coreキットを、製造元のプロトコールに従って使用した。簡単に述べると、TNFR2-CHO細胞25,000個を、アッセイ緩衝液中フラットウェルプレートに加えた。抗体を、示した濃度で加えた。エフェクター細胞75,000個を、ウェル毎に加えた(E:T=3:1)。プレートを、37℃で6時間インキュベートした。6時間後、プレートを室温made平衡化し、5分後にSpectroMAXプレートリーダーで測定したBio-Gloルシフェラーゼ基質を使用して、レポーター活性を検出した。図9Aは、RLU(誘導性bkgd)/RLU(アイソタイプ対照bkgd)として計算した、アイソタイプに対する倍率変化を示す。図9Bは、倍率変化ではなくRLUを示す。
図10-1】図10A~10Fは、Octet[ヒト化クローン25-71(A;Kon=3.58E+05 1/Ms;Koff=5.53E-04 1/s)および25-108(B;Kon=3.76E+05 1/Ms;Koff=2.33E-04 1/s)]によるTNFR2タンパク質への試験抗体の高親和性1価結合ならびにELISA(10C)によるヒトTNFR2タンパク質、ならびにELISA(10D)によるカニクイザルTNFR2タンパク質、細胞ベースのヒトTNFR2(10E)、活性化ヒトTreg(10F)への結合を示す。
図10-2】同上。
図11-1】図11A~11Eは、25-71および25-108が、TNFR1(11A)、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM;11B)、CD40(11C)、死受容体6(DR6;11D)、およびオステオプロテジェリン(OPG;11E)への結合の欠如によって示す通り、TNFR2に特異的であることを示す。
図11-2】同上。
図11-3】同上。
図12図12A~12Bは、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を介した25-71および25-108によるTNFR2発現細胞(12A、トランスフェクタント)およびTNFR2発現腫瘍細胞(12B、K562、ヒトAML細胞株)の細胞殺傷/枯渇を示す。
図13図13A~13Bは、ADCCを介した試験抗体によるTNFR2発現ヒトTregの細胞殺傷/枯渇を示す。
図14図14A~14Bは、マクロファージ介在性抗体依存性細胞貪食(ADCP)を介した5-71および25-108によるTNFR2発現腫瘍細胞の細胞殺傷を示す。
図15-1】図15A~15Cは、25-71および25-108が、2人の異なるドナー(15Bおよび15C)由来の骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)介在性免疫抑制を逆転させることができることを示す。パーセント抑制=T単独- [(T+MDSC)/T単独] ×100。
図15-2】同上。
図16図16は、抗体クローン25-71と全長ヒトTNFR2(配列番号327)の領域との間のエピトープ部位を示し、そのエピトープは、全長TNFR2の残基43、45、49、55、56、73、および77を含む。
図17図17A~17Jは、抗体クローン25-71とヒトTNFR2との間の相互作用を示す。TNFR2 PDB構造3ALQは、全長ヒトTNFR2配列の残基43~45(REY);残基49~56(TAQMCCSK;配列番号328);および残基73~77(TVCDS;配列番号329)に対応する、エピトープ部位上に灰色で着色する。正面図(A)、背面図(B)、側面図1(C)、側面図2(D)、および上面図(E)のリボン/表面描写;ならびに正面図(F);背面図(G)、側面図1(H)、側面図2(I)、および上面図(J)のリボン描写を示す。
図18-1】図18A~18Eは、クローン25-71が、エフェクターT細胞のTreg抑制を逆転することを示す。18Aにおいて、精製したTregは、抑制アッセイに加えたとき、TNFR2を発現する。18B~18Cにおいて、Tレスポンダー細胞(B)の%増殖またはパーセントTreg抑制(C)として、データをプロットする。図18D~18Eは、1:2のTresp:Treg比条件(D)およびIgG1対照(E)の例示的な増殖ヒストグラムを示す。
図18-2】同上。
図18-3】同上。
図19-1】図19A~19Cは、Colo205細胞を注射したメスヌードマウスにおけるクローン25-71の抗腫瘍効果(48%TGI)を示す。19Aは、治療プロトコールを概説し、19Bは、腫瘍体積に対する試験薬剤の効果を示し、19Cは、体重に対する効果を示す。
図19-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に特異的に結合する抗体、およびその抗原結合フラグメント、特に、特異的エピトープ特異性および機能特性を有する抗体に関する。一部の実施形態は、TNFR2に結合し、そのリガンドである腫瘍壊死因子-α(TNF-α)とのTNFR2結合を遮断し、誘導された下流の細胞シグナル伝達および生物学的効果を阻害する能力がある特異的なヒト化抗体およびそのフラグメントを包含する。ある特定の実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2アンタゴニストまたは阻害剤である。ある場合では、TNFR2のアンタゴニストは、例えば、腫瘍微小環境においてTNFR2の免疫抑制作用を遮断することによって免疫応答を増強する。本明細書に記載されるTNFR2アンタゴニスト抗体は、例えば、TNFR2発現癌を含む癌の治療および予防において有用である。
【0028】
一部の実施形態は、TNFR2活性またはその異常な発現と関連する疾患および障害の診断、評価、および治療のための、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントの使用に関する。対象抗体は、他の疾患の中でも癌の治療または予防において使用される。
【0029】
本開示の実施は、反対に具体的に示されない限り、当該分野の技術内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学および組み換えDNA技術の従来的な方法を利用し、その多くが、説明の目的で以下に記載される。このような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory
Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis (N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture (R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)および他の類似の参考文献を参照のこと。
【0030】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が、別途明確に指示しない限り、複数の参照物を含む。
【0031】
「約」とは、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して、最大20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%と同じ程度変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0032】
「アンタゴニスト」は、別の薬剤または分子の生理学的作用と干渉するか、またはそうでなければ低減する薬剤(例えば、抗体)を指す。ある場合では、アンタゴニストは、他の薬剤または分子に特異的に結合する。完全および部分的なアンタゴニストが含まれる。
【0033】
「アゴニスト」は、別の薬剤または分子の生理学的作用を増加させるか、または増強する薬剤(例えば、抗体)を指す。ある場合では、アゴニストは、他の薬剤または分子に特異的に結合する。完全および部分的なアゴニストが含まれる。
【0034】
本明細書全体を通して、文脈が別段必要としない限り、語句「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」または「含むこと」などのバリエーションは、指定される要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を含むことを暗示するが、他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を除外しないことを暗示することは、理解されるだろう。
【0035】
「からなる」とは、語句「からなる」に続くものを何であれ含み、それらに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙される要素が、必要とされるか、または必須であること、および他の要素が、存在し得ないことを示す。「本質的にからなる」とは、語句の後に列挙され、列挙される要素について本開示で特定される活性または作用と干渉せず、関与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。したがって、語句「本質的にからなる」は、列挙される要素が、必要とされるか、または必須であるが、他の要素は、それらが、列挙される要素の活性または作用に実質的に影響するかどうかに応じて、存在してもよいし、存在しなくてもよいことを示す。
【0036】
本明細書におけるそれぞれの実施形態は、別段明示的に示されない限り、必要な変更を加えて全ての他の実施形態に準用される。
【0037】
用語「調節すること」および「変化させること」は、典型的には、対照と比べて統計的に有意または生理学的に有意な量または程度で、「増加させること」、「増強すること」または「刺激すること」ならびに「減少すること」、「低減すること」または「阻害すること」を含む。「増加した」、「刺激された」または「増強した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100倍以上(例えば、500、1000倍)(全ての整数および間の範囲、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の、組成物なし(例えば、薬剤が存在しない)または対照組成物によって産生される量である増加を含み得る。「減少された」、「低減された」または「阻害された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、組成物なし(例えば、薬剤が存在しない)または対照組成物によって産生される量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少(全ての整数および間の範囲を含む)を含み得る。比較および「統計的に有意な」量の例が、本明細書に記載されている。
【0038】
「実質的に」または「本質的に」は、ある所定の数量のほぼ全てまたは完全、例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上を意味する。
【0039】
「統計的に有意」とは、結果が、偶然に生じたとは考えにくいことを意味する。統計的な有意性は、当該技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。一般的に使用される有意性の尺度は、帰無仮説が真である場合に観察される現象が生じる頻度または確率である、p値を含む。得られたp値が、有意なレベルよりも小さい場合、帰無仮説は棄却される。単純な場合では、有意なレベルは、0.05以下のp値で定義される。
【0040】
標準的な技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のため使用され得る。酵素反応および精製技術は、製造元の仕様に従って、または当該技術分野で一般的に達成されるか、もしくは本明細書に記載されるように行われ得る。これらおよび関連する技術および手法は、当該技術分野で周知であり、本明細書全体を通して引用され、考察される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載される従来の方法に従って一般的に行われ得る。特定の定義が提供されない限り、本明細書に記載の分子生物学、分析化学、合成有機化学、ならびに医療および医薬化学と関連して利用される命名法、ならびに実験手法および技術は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。標準的な技術は、組み換えテクノロジー、分子生物学的合成、微生物学的合成、化学合成、化学分析、医薬調製、製剤、および送達、ならびに患者の治療のため使用され得る。
【0041】
ある特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、相補性決定領域VCDR1、VCDR2、およびVCDR3配列を含む重鎖可変領域(V)配列、ならびに相補性決定領域VCDR1、VCDR2、およびVCDR3配列を含む軽鎖可変領域(V)配列により特徴付けられるか、または含む。例示的なVCDR1、VCDR2、VCDR3、VCDR1、VCDR2、およびVCDR3配列は、以下の表H1に提供される。
【表H1-1】

【表H1-2】

【表H1-3】
【0042】
したがって、ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2に結合し、
表H1から選択される相補性決定領域VCDR1、VCDR2、およびVCDR3配列を含む重鎖可変領域(V)配列;ならびに
表H1から選択される相補性決定領域VCDR1、VCDR2、およびVCDR3配列を含む軽鎖可変領域(V)配列を含み、
少なくとも一つのTNFR2ポリペプチドまたはエピトープ(例えば、表T1から選択される)に特異的に結合するそのバリアントを含む。
ある特定の実施形態では、CDR配列は、以下の通りである:
配列番号1~3にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに配列番号4~6にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域;
配列番号7~9にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号10~12にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号13~15にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号16~18にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号19~21にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号22~24にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号25~27にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号28~30にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号31~33にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号34~36にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号37~39にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号40~42にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号43~45にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号46~48にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号49~51にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号52~54にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号55~57にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号58~60にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号61~63にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号64~66にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号67~69にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号70~72にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号73~75にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号76~78にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号79~81にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号82~84にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号85~87にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号88~90にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号91~93にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号94~96にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;または
配列番号97~99にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号100~102にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域。
TNFR2に結合する親和性成熟バリアントを含む、そのバリアント、例えば、CDR領域、例えば、本明細書に記載される一つまたは複数のVCDR1、VCDR2、VCDR3、VCDR1、VCDR2、および/またはVCDR3配列に渡り1、2、3、4、5、6、7、または8のトータルの変更を有するバリアントもまた、含まれる。例示的な「変更」は、アミノ酸置換、付加、および欠失を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(V)配列、および軽鎖可変領域(V)配列によって特徴付けられるか、または含む。例示的なヒト化VおよびV配列が、以下の表H2において提供され、例示的なウサギV配列が、以下の表R1において提供され(VCDR1、VCDR2、およびVCDR3領域は、下線を付される)、例示的なウサギV配列は、以下の表R2において提供される(VCDR1、VCDR2、およびVCDR3領域は、下線を付される)。
【表H2-1】

【表H2-2】

【表H2-3】

【表R1-1】

【表R1-2】

【表R1-3】

【表R1-4】

【表R1-5】

【表R1-6】

【表R1-7】

【表R2-1】

【表R2-2】

【表R2-3】

【表R2-4】

【表R2-5】

【表R2-6】

【表R2-7】
【0044】
したがって、ある特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2に結合し、表H2から選択されるVHおよび対応するVL領域を含む。特定の実施形態では、VH領域は、配列番号103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、および135から選択される配列と少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VL領域は、配列番号104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、134、および136から選択される配列と少なくとも90%、95%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、
配列番号103に記載されるVH領域、および配列番号104に記載されるVL領域;
配列番号105に記載されるVH領域、および配列番号106に記載されるVL領域;
配列番号107に記載されるVH領域、および配列番号108に記載されるVL領域;
配列番号109に記載されるVH領域、および配列番号110に記載されるVL領域;
配列番号111に記載されるVH領域、および配列番号112に記載されるVL領域;
配列番号113に記載されるVH領域、および配列番号114に記載されるVL領域;
配列番号115に記載されるVH領域、および配列番号116に記載されるVL領域;
配列番号117に記載されるVH領域、および配列番号118に記載されるVL領域;
配列番号119に記載されるVH領域、および配列番号120に記載されるVL領域;
配列番号121に記載されるVH領域、および配列番号122に記載されるVL領域;
配列番号123に記載されるVH領域、および配列番号124に記載されるVL領域;
配列番号125に記載されるVH領域、および配列番号126に記載されるVL領域;
配列番号127に記載されるVH領域、および配列番号128に記載されるVL領域;
配列番号129に記載されるVH領域、および配列番号130に記載されるVL領域;
配列番号131に記載されるVH領域、および配列番号132に記載されるVL領域;
配列番号133に記載されるVH領域、および配列番号134に記載されるVL領域;または
配列番号135に記載されるVH領域、および配列番号136に記載されるVL領域を含む。
【0045】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合し、表R1における下線を付された配列から選択されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに表R2における下線を付された配列から選択されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む対応する(クローン名による)軽鎖可変(VL)領域を含む。一部の実施形態では、VH領域は、表R1から選択されるアミノ酸配列を含み、VL領域は、表R2から選択される対応する(クローン名による)アミノ酸配列を含む。
【0046】
一部の実施形態では、上述の通り、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)、例えば、可溶性または細胞発現TNFR2に結合する。特定の実施形態では、TNFR2は、ヒトTNFR2、またはそのペプチドエピトープである。ヒトTNFR2の例示的なペプチドエピトープが、以下の表T1において提供される。
【表T1】
【0047】
ある特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヒトTNFR2、例えば、表T1から選択される少なくとも一つのヒトTNFR2ペプチドエピトープ、例えば、表T1から選択される少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、または五つのペプチドエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、成熟ヒトTNFR2配列(FLヒトTNFR2の残基23~461)により定義される、R21、Y23、T27、S33、K34、T51、およびS55から選択される、一つまたは複数の残基を含む、からなる、または本質的にからなるペプチドエピトープで、ヒトTNFR2に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、REY、TAQMCCSK(配列番号328)、およびTVCDS(配列番号329)から選択される一つまたは複数の残基を含む、からなる、または本質的にからなるペプチドエピトープで、ヒトTNFR2に特異的に結合する。特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、約2nM以下のK、または約0.7nM以下のKでヒトTNFR2に結合する。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、カニクイザルTNFR2に結合し、例えば、これは、ヒトTNFR2およびカニクイザルTNFR2に交差反応性に結合する。
【0048】
一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2アンタゴニストである。例えば、一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2へのTNF-α結合を阻害するか、またはそうでなければ低減する。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2多量体化または三量体化を阻害するか、またはそうでなければ低減する。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、例えば、全身性または腫瘍微小環境においてT制御性細胞(Treg)のTNFR2介在性活性化を阻害するか、またはそうでなければ低減する。特定の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、TNFR2に結合し、TNFR2アンタゴニストであり、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)、例えば、ヒトTNFR1に実質的に結合しない。一部の実施形態では、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD40、死受容体6(DR6)、および/またはオステオプロテジェリン(OPG)に実質的に結合しない。
【0049】
一部の実施形態では、例えば、in vitroまたはin vivoで、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)による腫瘍細胞(例えば、TNFR2発現腫瘍細胞)、Treg、および/または骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の細胞殺傷/枯渇を、例えば、対照または参照と比べて、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%または少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%増加させる。一部の実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、マクロファージ介在性抗体依存性細胞貪食(ADCP)による腫瘍細胞(例えば、TNFR2発現腫瘍細胞)、Treg、および/またはMDSCの細胞殺傷/枯渇を、例えば、対照または参照と比べて、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%以上または少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%以上増加させる。一部の実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、MDSC介在性免疫抑制を、例えば、対照または参照と比べて、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%以上または少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%低減する。一部の実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、例えば、当該変換を、対照または参照と比べて、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%以上または少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%以上増加させることによって、MDSCおよび/もしくはM2マクロファージを炎症促進性M1マクロファージに変換し、ならびに/またはTregをエフェクターT細胞に変換する。一部の実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、「冷たい」腫瘍を「高温」腫瘍に変換する。「冷たい」腫瘍は、認識されていないか、または免疫系による強い応答を誘発していない腫瘍である。例えば、冷たい腫瘍の微小環境は、典型的には、低レベルまたは有意ではないレベルのCD4+またはCD8+T細胞を有し、代わりに、免疫抑制サイトカインを分泌して、CD4+またはCD8+T細胞の腫瘍微小環境への移動を妨げる、比較的高レベルの骨髄系由来サプレッサー細胞および/またはTregをしばしば有する。対照的に、「高温」腫瘍は、高レベルのCD4+またはCD8+T細胞を有し、これにより、炎症した腫瘍微小環境をもたらす腫瘍である。特定の実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、前述の特徴のいずれか一つまたは複数の組み合わせを有する。
【0050】
単に説明の目的で、抗体、またはその抗原結合フラグメントとTNFR2ポリペプチド間の結合相互作用は、ビアコアアッセイ(例えば、センサーチップに結合した、適切にタグ付された可溶性試薬を用いる)、細胞表面にTNFR2ポリペプチドを発現する細胞を用いたFACS分析(天然、または組み換えのいずれか)、イムノアッセイ、蛍光染色アッセイ、ELISAアッセイ、およびITC(Isothermal Titration Calorimetry)などのマイクロカロリメトリーアプローチを含む、様々な日常的な方法使用して、検出され、定量され得る。
【0051】
当該技術分野で周知のように、抗体は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも一つのエピトープ認識部位を通じて、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合する能力がある免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、そのフラグメント(例えば、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、一本鎖(scFv)、その合成バリアント、天然に存在するバリアント、抗体部分を含む、必要とされる特異性の抗原結合フラグメントとの融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要とされる特異性の抗原結合部位またはフラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された配置も包含する。遺伝子融合によって構築された、「二重特異性抗体」、多価または多特異的フラグメント(国際公開第94/13804号;P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448,1993)はまた、本明細書で企図される、特定の形態の抗体である。CH3ドメインに結合したscFvを含むミニボディもまた、本明細書に含まれる(S.Hu et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996)。例えば、Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546 (1989);Bird et al.,Science,242,423-426,1988;Huston et al.,PNAS USA,85,5879-5883,1988);PCT/US92/09965;WO94/13804;P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448,1993;Y.Reiter et al.,Nature Biotech,14,1239-1245,1996;S.Hu
et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996を参照のこと。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「抗原結合フラグメント」は、対象の抗原、特に、TNFR2に結合する免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の少なくとも一つのCDRを含有するポリペプチドフラグメントを指す。これに関して、本明細書に記載される抗体の抗原結合フラグメントは、TNFR2に結合する抗体由来の、本明細書に記載されるVHおよびVL配列の1、2、3、4、5、または全6つのCDRを含み得る。
【0053】
用語「抗原」は、抗体などの選択的結合剤が結合することができ、加えて、その抗原のエピトープに結合する能力がある抗体を産生するために動物において使用されることができる分子または分子の部分を指す。抗原は、一つまたは複数のエピトープを有してもよい。
【0054】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合する能力がある、任意の決定基、好ましくは、ポリペプチド決定基を含む。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。ある特定の実施形態では、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面分類を含み、ある特定の実施形態では、特定の三次元構造特徴、および/または特定の荷電特徴を有してもよい。ある実施形態では、抗体は、タンパク質および/または高分子の複合混合物におけるその標的抗原を優先的に認識するとき、抗原に特異的に結合するとされる。抗体は、平衡解離定数が≦10-7または10-8Mであるとき、抗原に特異的に結合するとされる。一部の実施形態では、平衡解離定数は、≦10-9Mまたは≦10-10Mであり得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体およびその抗原結合フラグメントは、それぞれ、重鎖と軽鎖フレームワーク領域(FR)セットとの間に介在する、重鎖および軽鎖CDRセットを含み、これが、CDRに支持をもたらし、互いに関連するCDRの空間的関係を定める。本明細書で使用される場合、用語「CDRセット」は、重鎖または軽鎖V領域の三つの超可変領域を指す。重鎖または軽鎖のN末端から進み、これらの領域は、それぞれ、「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」として示される。したがって、抗原結合部位は、重鎖および軽鎖V領域のそれぞれから設定されたCDRを含む、六つのCDRを含む。単一CDR(例えば、CDR1、CDR2、またはCDR3)を含むポリペプチドは、本明細書では「分子認識ユニット」と称される。多数の抗原と抗体の複合体の結晶解析により、CDRのアミノ酸残基が、結合した抗原と広範囲に接触し、ここで、最も広範囲の抗原接触は、重鎖CDR3とであることが示されている。したがって、分子認識ユニットは、抗原結合部位の特異性を主に担う。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「FRセット」は、重鎖または軽鎖V領域のCDRセットのCDRを枠組みする四つの隣接するアミノ酸配列を指す。一部のFR残基は、結合した抗原と接触し得るが、V領域を抗原結合部位、具体的には、CDRにすぐ隣接するFR残基にフォールディングするのを主に担う。FR内では、ある特定のアミノ残基およびある特定の構造特性は、非常に高度に保存される。これに関して、全てのV領域配列は、およそ90個のアミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含有する。V領域が結合部位にフォールディングされるとき、CDRは、抗原結合表面を形成する突き出たループモチーフとして提示される。一般的に、正確なCDRアミノ酸配列にかかわらず、ある特定の「正準」構造にフォールディングされたCDRループの形状に影響する、FRの保存された構造領域が存在することが認識されている。さらに、ある特定のFR残基は、抗体重鎖と軽鎖の相互作用を安定化する非共有結合ドメイン間接触に関与することが知られている。
【0057】
免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.US Department of Health and Human Services.1987、および現在、インターネット(immuno.bme.nwu.edu)で入手可能な、その更新版を参照することによって決定されてもよい。
【0058】
「モノクローナル抗体」は、均質な抗体集団を指し、モノクローナル抗体は、エピトープの選択的結合に関与するアミノ酸(天然に存在するおよび天然に存在しない)からなる。モノクローナル抗体は、高度に特異性であり、単一のエピトープに向けられている。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体および全長モノクローナル抗体だけでなく、そのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、一本鎖(scFv)、そのバリアント、抗原結合部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要とされる特異性およびエピトープに結合する能力の抗原結合フラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された配置を包含する。抗体の供給源または抗体の作製方法(例えば、ハイブリドーマ、ファージセレクション、組み換え発現、トランスジェニック動物などによる)に関して、限定されることは意図されていない。用語は、「抗体」の定義の下、本明細書に記載される免疫グロブリン全体ならびにフラグメントなどを含む。
【0059】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に切断して、いくつかのフラグメントを生じ、そのうちの二つ(F(ab)フラグメント)はそれぞれ、インタクトな抗原結合部位を含む共有結合ヘテロダイマーを含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断して、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)フラグメントを含むいくつかのフラグメントを提供することができる。本開示のある特定の実施形態による使用のためのFvフラグメントは、IgM、稀にIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の優先的なタンパク質分解切断によって産生され得る。しかしながら、Fvフラグメントは、当該技術分野で公知の組み換え技術を使用してより一般的に誘導される。Fvフラグメントは、天然の抗体分子の抗原認識および結合能力の大部分を保持している抗原結合部位を含む、非共有結合V::Vヘテロダイマーを含む。Inbar et al.(1972) Proc.Nat.Acad.Sci.USA 69:2659-2662;Hochman et al.(1976)Biochem 15:2706-2710;およびEhrlich
et al.(1980) Biochem 19:4091-4096を参照のこと。
【0060】
ある特定の実施形態では、一本鎖FvまたはscFv抗体が、企図される。例えば、カッパーボディ(Ill et al.,Prot.Eng.10:949-57(1997);ミニボディ(Martin et al.,EMBO J 13:5305-9 (1994);ディアボディ(Holliger et al.,PNAS 90:6444-8 (1993);またはジャヌシン(Traunecker et al.,EMBO J 10:3655-59(1991)およびTraunecker et al.,Int.J.Cancer Suppl.7:51-52(1992)は、所望の特異性を有する抗体の選択に関して、本出願の教示に従った標準的な分子生物学技術を使用して調製され得る。一部の実施形態では、本開示のリガンドを包含する二重特異性抗体またはキメラ抗体が、作製され得る。例えば、キメラ抗体は、異なる抗体由来のCDRおよびフレームワーク領域を含んでもよく、一方、ある結合ドメインを通じてTNFR2に、および第二の結合ドメインを通じて第二の分子に特異的に結合する二重特異性抗体が、生成されてもよい。これらの抗体は、組み換え分子生物学的技術を通じて産生されてもよく、または物理的に一緒にコンジュゲートされてもよい。
【0061】
一本鎖Fv(scFv)ポリペプチドは、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたVおよびVをコードする遺伝子を含む遺伝子融合物から発現される、共有結合したV::Vヘテロダイマーである。Huston et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85(16):5879-5883を参照のこと。抗体V領域から、抗原結合部位の構造と実質的に類似する三次元構造にフォールディングされるscFv分子に、天然で凝集されるが、化学的に分離された軽鎖および重鎖ポリペプチド鎖を変換するための化学構造をみつける多数の方法が記載されている。例えば、Hustonらの米国特許第5,091,513号および第5,132,405号;ならびにLadnerらの米国特許第4,946,778号を参照のこと。
【0062】
ある特定の実施形態は、「プロボディ」、または標的または疾患組織におけるタンパク分解切断によって活性化されるまで、結合部位がマスクされるか、またはそうでなければ不活性である抗体を含む。これらの実施形態および関連する実施形態の一部は、抗体の抗原結合部位を立体的に妨げ、一つまたは複数のタンパク質分解性に切断可能なリンカーを介して抗体に融合される、一つまたは複数のマスキング部分を含む(例えば、Polu and Lowman,Expert Opin.Biol.Ther.14:1049-1053,2014を参照のこと)。
【0063】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるTNFR2結合抗体は、二重特異性抗体の形態である。二重特異性抗体は、ポリペプチドの多量体であり、それぞれのポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第一のドメインおよび免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第二のドメインを含み、二つのドメインは、連結されている(例えば、ペプチドリンカーによって)が、互いに会合して、抗原結合部位を形成することができず、抗原結合部位は、多量体内のあるポリペプチドの第一のドメインの、多量体内の別のポリペプチドの第二のドメインとの会合によって形成される(国際公開第94/13804号)。
【0064】
抗体のdAbフラグメントは、VHドメインからなる(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546(1989))。
【0065】
二重特異性抗体または多特異性抗体が使用されるべき場合、これらは、様々な方法(Holliger,P.and Winter G.Current Opinion Biotechnol.4,446-449(1993))で製造され得る、例えば、化学的に調製されるか、またはハイブリッドハイブリドーマから調製され得る、従来の二重特異性抗体であってもよいか、または上述の任意の二重特異性抗体フラグメントのいずれかであってもよい。二重特異性抗体およびscFvは、可変ドメインのみを使用して、Fc領域なしで構築されることができ、これにより、抗イディオタイプ反応の効果を潜在的に低減する。
【0066】
二重特異性抗体は、E.coliにおいて容易に構築され、発現され得るので、二重特異性抗体全体とは対照的に、特に有用であり得る。適切な結合特異性の二重特異性抗体(および抗体フラグメントなどの多くの他のポリペプチド)は、ライブラリーからファージディスプレイ(国際公開第94/13804号)を使用して容易に選択することができる。二重特異性抗体の一方のアームが、例えば、抗原Xに対して向けられた特異性で一定に維持されるべき場合、次に、他のアームが変化しているライブラリーが作製され、適切な特異性の抗体が選択され得る。二特異性抗体全体は、ノブズ・イントゥ・ホールエンジニアリング(J.B.B.Ridgeway et al.,Protein Eng.,9,616-621,1996)によって作製されてもよい。
【0067】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、UniBody(登録商標)の形態で提供されてもよい。UniBody(登録商標)は、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体である(GenMab Utrecht、The Netherlandsを参照のこと;例えば、米国公開第20090226421号も参照のこと)。この独自の抗体テクノロジーは、現在の小さな抗体フォーマットよりも長い治療ウィンドウが予想される、安定的で小さな抗体フォーマットを作り出す。IgG4抗体は、不活性とみなされ、したがって、免疫系と相互作用しない。完全なヒトIgG4抗体を、抗体のヒンジ領域を除去することによって修飾して、対応するインタクトなIgG4(GenMab、Utrecht)と比べて別個の安定性特性を有する半分子フラグメントを得てもよい。IgG4分子を半減させることは、同族抗原(例えば、疾患標的)に結合することができるUniBody(登録商標)上に一つの領域のみを残し、したがって、UniBody(登録商標)は、標的細胞上の一つの部位のみに一価結合する。ある特定の癌細胞表面抗原については、この一価結合は、同じ抗原特異性を有する二価抗体を使用して見られるようには、癌細胞が成長するように刺激しない場合があり、それゆえ、UniBody(登録商標)テクノロジーは、従来の抗体を用いた治療に抵抗性であり得る一部のタイプの癌のための治療選択肢を提供し得る。小さなサイズのUniBody(登録商標)は、一部の形態の癌を治療するときに大きな利益となり得、より大きな固形腫瘍にわたる分子のより良好な分子を可能にし、有効性を潜在的に増加させることができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、Nanobody(登録商標)の形態を取ってもよい。ナノボディ(登録商標)は、単一遺伝子によってコードされ、ほぼ全ての原核生物宿主ならびに真核生物宿主、例えば、大腸菌(例えば、米国特許第6,765,087号を参照のこと)、カビ(例えば、アスペルギルスまたはトリコデルマ)および酵母(例えば、サッカロマイセス、クリベロマイセス、ハンゼヌラまたはピキア(例えば、米国特許第6,838,254号を参照のこと)において効率的に産生される。産生工程は、拡張可能であり、多キログラムのナノボディ(登録商標)が生産されている。ナノボディは、長い貯蔵期間を有するすぐに使用できる溶液として製剤化されてもよい。Nanoclone(登録商標)法(例えば、国際公開第06/079372号を参照のこと)は、B細胞の自動化ハイスループットセレクションに基づき、所望の標的に対するナノボディを生成するための独自の方法である。
【0069】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗TNFR2抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化されている。これは、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づき、非ヒト種由来の免疫グロブリンおよび分子の残りの免疫グロブリン構造に由来する抗原結合部位を有する、組み換え技術を使用して一般的に調製されるキメラ分子を指す。抗原結合部位は、定常ドメイン上に融合された完全な可変ドメイン、または可変ドメインの適切なフレームワーク領域に移植されたCDRのみのいずれかを含んでもよい。エピトープ結合部位は、野生型であってもよく、または一つまたは複数のアミノ酸置換によって修飾されてもよい。これにより、ヒト個体における免疫原としての定常領域は排除されるが、外来の可変領域に対する免疫反応の可能性は残る(LoBuglio,A.F.et al.,(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86:4220-4224;Queen et al.,PNAS(1988)86:10029-10033;Riechmann et al.,Nature(1988)332:323-327)。本明細書に開示される抗TNFR2抗体ヒト化の例示的な方法は、米国特許第7,462,697号に記載される方法を含む。ある特定の実施形態による例示的なヒト化抗体は、表H1および表H2において提供されるヒト化配列を含む。
【0070】
別のアプローチは、ヒト由来の定常領域を提供することだけでなく、可変領域を修飾して、ヒト形態に可能な限り近く再形成させることにも焦点を当てる。重鎖と軽鎖の両方の可変領域は、対象のエピトープに応答して変化し、結合能を決定する、三つの相補性決定領域(CDR)を含有し、所与の種において比較的保存され、CDRのためのスキャフォールドを推定的にもたらす四つのフレームワーク領域(FR)に隣接することが知られている。特定のエピトープに関して非ヒト抗体が調製されるとき、可変領域は、改変されるべきヒト抗体に存在するFR上に非ヒト抗体からもたらされる、CDRを移植することによって、「再形成」されるか、または「ヒト化」され得る。様々な抗体へのこのアプローチの適用は、Sato,K.,et al.,(1993)Cancer Res 53:851-856によって報告されている。Riechmann,L.,et al.,(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen,M.,et
al.,(1988) Science 239:1534-1536;Kettleborough,C.A.,et al.,(1991)Protein Engineering 4:773-3783;Maeda,H.,et al.,(1991)Human Antibodies Hybridoma 2:124-134;Gorman,S.D.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:4181-4185;Tempest,P.R.,et al.,(1991)Bio/Technology 9:266-271;Co,M.S.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:2869-2873;Carter,P.,et al.,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-4289;およびCo,M.S.et al.,(1992)J Immunol 148:1149-1154。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、全てのCDR配列(例えば、ウサギ抗体由来の六つのCDRすべてを含有するヒト化ウサギ抗体)を保存する。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、元の抗体に関して修飾される一つまたは複数のCDR(一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ)を有し、元の抗体由来の一つまたは複数のCDRから「もたらされる」一つまたは複数のCDRとも称される。
【0071】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、キメラ抗体であってもよい。これに関して、キメラ抗体は、異なる抗体の異種Fc部分に作動可能に連結された、またはそうでなければ融合された抗TNFR2抗体の抗原結合フラグメントからなる。ある特定の実施形態では、異種Fcドメインは、ヒト起源である。一部の実施形態では、異種Fcドメインは、IgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、ならびにIgMを含む、親抗体と異なるIgクラス由来であってもよい。さらなる実施形態では、異種Fcドメインは、異なるIgクラスの一つまたは複数由来のCH2およびCH3ドメインからなってもよい。ヒト化抗体に関して上述したように、ヒト化抗体の抗TNFR2抗原結合フラグメントは、本明細書に記載される抗体のCDRのうちの一つまたは複数のみ(例えば、本明細書に記載される抗体の1、2、3、4、5、もしくは6つのCDR)を含んでもよいか、または可変ドメイン全体(VL、VHもしくはその両方)を含んでもよい。
【0072】
ある特定の実施形態では、TNFR2結合抗体は、本明細書に記載される抗体のCDRのうちの一つまたは複数を含む。これに関して、抗体のVHCDR3のみの移送が、所望の特異的結合を依然として保持しながら、行われ得る一部の場合で示されている(Barbas et al.,PNAS(1995)92:2529-2533)。また、McLane et al.,PNAS(1995)92:5214-5218,Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.(1994)116:2161-2162を参照のこと。
【0073】
Marks et al.(Bio/Technology,1992,10:779-783)は、可変ドメイン範囲の5’末端に向けられた、または隣接するコンセンサスプライマーを、ヒトVH遺伝子の第三のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと合わせて使用して、CDR3を欠くVH可変ドメインのレパートリーをもたらす、抗体可変ドメインのレパートリーを作製する方法を記載する。Marksらは、どのように、このレパートリーが、特定の抗体のCDR3と組み合わされる火をさらに記載している。類似の技術を使用して、現在記載される抗体のCDR3由来配列は、CDR3を欠くVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルされてもよく、シャッフルされた完全VHまたはVLドメインを、同族VLまたはVHドメインと組み合わせて、TNFR2に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し得る。次いで、レパートリーは、適当な抗体またはその抗原結合フラグメントが選択され得るように、国際公開第92/01047号のファージディスプレイシステムなどの適当な宿主システムにおいて提示され得る。レパートリーは、少なくとも約10人の個々のメンバーからなってもよく、例えば、約10~10または1010人以上のメンバーなど、数桁上方からなってもよい。類似の混合またはコンビナトリアル技術も、Stemmer(Nature,1994,370:389-391)によって開示されており、彼は、β-ラクタマーゼ遺伝子に関連する技術を記載するが、アプローチは、抗体の生成に使用され得ることを観察している。
【0074】
さらなる代替法は、一つまたは複数の選択されたVHおよび/またはVL遺伝子のランダム変異誘発を使用して、本明細書に記載される一つまたは複数のCDR由来配列を担持する新規VHまたはVL領域を生成し、可変ドメイン全体に変異を生成することである。このような技術は、エラープローンPCRを使用している、Gram et al (1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:3576-3580)によって記載されている。使用され得る別の方法は、VHまたはVL遺伝子のCDR領域への変異誘発を指示することである。このような技術は、Barbasら(1994,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:3809-3813)およびSchierら(1996,J.Mol.Biol.263:551-567)によって開示されている。
【0075】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体の特定のVHおよび/またはVLを使用して、相補的可変ドメインのライブラリーをスクリーニングし、TNFR2に対する増加した親和性などの望ましい特性を有する抗体を同定し得る。このような方法は、例えば、Portolano et al.,J.Immunol.(1993) 150:880-887;Clarkson et al.,Nature (1991) 352:624-628において記載されている。
【0076】
他の方法をまた使用して、CDRを混合し、一致させて、TNFR2への結合などの所望の結合活性を有する抗体を同定してもよい。例えば、Klimka et al.,British Journal of Cancer (2000) 83:252-260は、マウスVHから保持されたCDR3およびFR4を有するマウスVLおよびヒトVHライブラリーを使用したスクリーニングプロセスを記載する。抗体を取得した後、VHをヒトVLライブラリーに対してスクリーニングして、抗原に結合した抗体を得た。Beiboer et al.,J.Mol.Biol.(2000) 296:833-849は、マウス重鎖全体およびヒト軽鎖ライブラリーを使用したスクリーニングプロセスを記載している。抗体が得られた後、一つのVLは、マウスのCDR3を保持したヒトVHライブラリーと組み合わされた。抗原を結合する能力がある抗体が、得られた。Rader et al.,PNAS (1998) 95:8910-8915は、上記のBeiboerらと同様のプロセスを記載している。
【0077】
これらのちょうど記載された技術は、それ自体、当該技術分野でそのように知られている。しかしながら、当業者は、当該技術分野において日常的な方法を使用して、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による抗体またはその抗原結合フラグメントを得るためのこのような技術を使用することができる。
【0078】
TNFR2抗原に特異的な抗体抗原結合ドメインを得る方法も、本明細書において開示され、方法は、本明細書に記載されるVHドメインのアミノ酸配列における一つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、置換または挿入の目的で、VHドメインのアミノ酸配列バリアントであるVHドメインを用意すること、任意選択で、このように用意したVHドメインを一つまたは複数のVLドメインと組み合わせること、およびVHドメインまたはVH/VL組み合わせもしくは複数の組み合わせを試験して、任意選択で、一つまたは複数の所望の特性を有する、特定の結合メンバーまたはTNFR2に特異的な抗体抗原結合ドメインを同定することを含む。VLドメインは、本明細書に実質的に記載されるアミノ酸配列を有してもよい。本明細書に開示されるVLドメインの一つまたは複数の配列バリアントが、一つまたは複数のVHドメインと組み合わされる、類似の方法が利用されてもよい。
【0079】
抗体またはポリペプチドに「特異的に結合する」または「優先的に結合する」(本明細書において互換的に使用される)エピトープは、当該技術分野でよく理解されている用語であり、このような特異的または優先的な結合を決定する方法も、当該技術分野で周知である。分子は、代替の細胞もしくは物質を用いて行うよりも、特定の細胞もしくは物質を用いてより頻繁に、より速く、より長く、および/またはより高い親和性で反応するか、あるいは会合する場合、「特異的結合」または「好ましい結合」を呈すると言われる。抗体が、他の物質に結合するよりも、より高い親和性、結合活性、より容易に、および/またはより長く結合する場合、抗体は、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、TNFR2エピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他のTNFR2エピトープまたは非TNFR2エピトープに結合するよりも、高い親和性、結合活性、より容易に、および/またはより長く、一つのTNFR2エピトープに結合する抗体である。また、この定義を読むことによって、例えば、第一の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第二の標的に特異的または優先的に結合する場合があるか、または結合しない場合があることも理解される。そのため、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも、排他的結合を必要としない(が、含むことはできる)。一般的に、必ずしもではないが、結合への言及は、優先結合を意味する。
【0080】
免疫学的結合は、一般に、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリン分子が特異的である抗原の間で、例えば、説明の目的かつ制限ではなく、例えば、静電的、イオン性、親水性および/または疎水性引力もしくは引力、立体力、水素結合、ファンデルワールス力、ならびに他の相互作用の結果として生じるタイプの非共有結合性相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度、または親和性は、相互作用の解離定数(K)に関して表現することができ、Kが小さいほど、より大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該技術分野で周知の方法を使用して定量化することができる。一つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度を測定することを含み、これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方向の速度に等しく影響を与える幾何学パラメーターに依存する。したがって、「オン速度定数」(Kon)と「オフ速度定数」(Koff)の両方が、濃度ならびに会合および解離の実際の速度の計算によって決定することができる。Koff/Konの比により、親和性と関連しない全てのパラメーターの取り消しを可能にし、したがって、解離定数Kと等しくなる。一般に、Davies et al.(1990) Annual Rev.Biochem.59:439-473を参照されたい。
【0081】
免疫学的に活性であるか、または「免疫学的に活性のままである」エピトープに関する用語「免疫学的に活性」は、異なる条件下で、例えば、エピトープが、還元および変性条件に供された後に、エピトープに結合する抗TNFR2抗体の能力を指す。
【0082】
一部の実施形態による抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)抗原に特異的に結合し、(ii)本明細書に開示されるVHおよび/もしくはVLドメインを含むか、または本明細書に開示されるVH CDR3、もしくはこれらのいずれかのバリアントを含む、本明細書に記載される任意の抗体と、TNFR2への結合について競合するものであってもよい。抗体間の競合を、例えば、ELISAを使用して、および/または特異的なレポーター分子を、他のタグを付けていない抗体の存在下で検出され得る一つの抗体にタグ付けすることによって、in vitroで容易にアッセイして、同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する特定の抗体の同定を可能にし得る。したがって、特異的な抗体またはTNFR2に結合する本明細書に記載される抗体と競合するヒト抗体抗原結合部位を含むその抗原結合フラグメントが、本明細書において提供される。
【0083】
これに関して、本明細書で使用される場合、用語「競合する」、「結合を阻害する」および「結合を遮断する」(例えば、リガンド(例えば、TNF-α)および/もしくはTNFR2に対するカウンター受容体の結合の阻害/遮断への言及、または抗TNFR2抗体のTNFR2への結合の阻害/遮断への言及)は、互換的に使用され、部分的と完全な阻害/遮断の両方を包含する。TNFR2に対するリガンドおよび/またはカウンター受容体の阻害/遮断は、好ましくは、リガンドおよび/またはカウンター受容体が、阻害または遮断することなくTNFR2に結合するときに生じる正常なレベルまたはタイプの細胞シグナル伝達を低減するか、または変化させる。阻害および遮断はまた、抗TNFR2抗体と接触していないリガンドと比較して、本明細書に開示される抗TNFR2抗体と接触したとき、リガンドおよび/またはカウンター受容体のTNFR2への結合の任意の測定可能な減少、例えば、TNFR2へのリガンド(例えば、TNF-α)および/またはカウンター受容体の遮断を、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%を含むことが意図される。
【0084】
免疫グロブリンの定常領域は、可変領域よりも配列の多様性が少なく、多数の天然のタンパク質を結合させて、重要な生化学的現象を惹起する役割を担っている。ヒトにおいて、IgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、ならびにIgMを含む、五つの異なるクラスの抗体が存在する。これらの抗体クラス間の区別する特性は、それらの定常領域であるが、微妙な差異が、V領域には存在してもよい。
【0085】
抗体のFc領域は、多数のFc受容体およびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と呼ばれる、一連の重要な機能を付与する。一実施形態では、抗TNFR2抗体は、Fc領域を含む。IgGについて、Fc領域は、IgドメインCH2およびCH3、ならびにCH2につながるN末端ヒンジを含む。IgGクラスのFc受容体の重要なファミリーは、Fcガンマ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫系の細胞アームとの間の通信を仲介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275-290)。ヒトでは、このタンパク質ファミリーは、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)、ならびにFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);ならびにアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)ならびにFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)を含む(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57-65)。これらの受容体は、典型的には、Fcへの結合を仲介する細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞内での何らかのシグナル伝達現象を仲介し得る細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびT細胞を含む様々な免疫細胞において発現される。Fc/FcγR複合体の形成は、これらのエフェクター細胞を結合した抗原の部位に動員し、これにより、典型的には、細胞内のシグナル伝達現象ならびに炎症メディエーターの放出、B細胞活性化、エンドサイトーシス、食作用、および細胞障害性の攻撃などの重要な続く免疫応答をもたらす。
【0086】
細胞傷害性エフェクター機能および食作用エフェクター機能を仲介する能力は、抗体が、標的細胞を破壊する可能性のある機序である。FcγRsを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞介在性反応は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739-766;Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275-290)。FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて、標的細胞の食作用を引き起こす、細胞介在性反応は、抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)と呼ばれる。全てのFcγRは、Cg2(CH2)ドメインのN末端およびその前のヒンジの、Fc上の同じ領域に結合する。この相互作用は、構造上十分に特徴付けられており(Sondermann et al.,2001,J Mol Biol 309:737-749)、ヒトFcγRIIIbの細胞外ドメインに結合したヒトFcのいくつかの構造が、解決されている(pdb受託コード1E4K)(Sondermann et al.,2000,Nature 406:267-273.) (pdb受託コード1IISおよび1IIX) (Radaev et al.,2001,J Biol Chem 276:16469-16477)。
【0087】
異なるIgGサブクラスは、FcγRについての、IgG1およびIgG3との異なる親和性、典型的には、IgG2およびIgG4より、実質的に良好な受容体への結合を有する(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57-65)。全てのFcγRは、なお異なる親和性で、IgG Fc上の同じ領域に結合し、より高い親和性の結合剤FcγRIは、IgG1について、10-8-1のKを有し、一方、低い親和性の受容体FcγRIIおよびFcγRIIIは、一般に、それぞれ、10-6および10-5で結合する。FcγRIIIaおよびFcγRIIIbの細胞外ドメインは、96%であるが、FcγRIIIbは、細胞内シグナル伝達ドメインを有さない。さらに、FcγRI、FcγRIIa/c、およびFcγRIIIaは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞内ドメインを有することによって特徴付けられる、免疫複合体により誘発される活性化の正の制御因子である一方、FcγRIIbは、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を有し、したがって、阻害性である。したがって、前者は、活性化受容体と呼ばれ、FcγRIIbは、阻害性受容体と呼ばれる。受容体はまた、異なる免疫細胞上の発現パターンおよびレベルにおいて異なる。さらに別のレベルの複雑さは、ヒトプロテオームにおける多数のFcγR多型の存在である。臨床的意義を有する特に関連する多型は、V158/F158 FcγRIIIaである。ヒトIgG1は、FV158アロタイプよりもV158アロタイプに、より高い親和性で結合する。この親和性の違い、ならびにおそらく、ADCCおよび/またはADCPに対するその効果は、抗CD20抗体リツキシマブ(IDEC Pharmaceuticals Corporationの登録商標である、Rituxan(登録商標))の有効性の有意な決定基であることが示されている。V158アロタイプを有する患者は、リツキシマブ治療に好ましく反応するが、より低い親和性F158アロタイプを有する患者は、あまり反応しない(Cartron et al.,2002,Blood 99:754-758)。ヒトのおよそ10~20%は、V158/V158ホモ接合性であり、45%が、V158/F158ヘテロ接合性であり、ヒトの35~45%が、F158/F158ホモ接合性である(Lehrnbecher et al.,1999,Blood 94:4220-4232;Cartron et al.,2002,Blood 99:754-758)。したがって、ヒトの80~90%は、乏しい応答者であり、すなわち、彼らは、F158 FcγRIIIaの少なくとも一つの対立遺伝子を有する。
【0088】
Fc領域はまた、補体カスケードの活性化にも関与する。古典的補体経路では、C1は、抗原との複合体を形成している、IgGまたはIgMのFcフラグメントにそのC1qサブユニットで結合する。ある特定の実施形態では、Fc領域に対する修飾は、補体システムを活性化する、本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体の能力を変化させる(増強するか、または減少するかのいずれか)修飾を含む(例えば、米国特許第7,740,847号を参照)。補体活性化を評価するために、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイが、行われてもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,202:163 (1996)を参照のこと)。
【0089】
したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、低減または増強したCDC、ADCC、もしくはADCP活性、あるいは特異的なFcγRについての増強した結合親和性、あるいは増加した血清半減期などの、変化した機能特性を有する修飾されたFc領域を有する抗TNFR2抗体を提供する。本明細書において企図される、他の修飾されたFc領域は、例えば、登録された米国特許第7,317,091号;第7,657,380号;第7,662,925号;第6,538,124号;第6,528,624号;第7,297,775号;第7,364,731号;米国公開第2009092599号;第20080131435号;第20080138344号;および国際公開第2006/105338号;第2004/063351号;第2006/088494号;第2007/024249号において記載されている。
【0090】
したがって、ある特定の実施形態では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。ある特定の実施形態では、融合は、ヒンジの少なくとも一部、C2、およびC3領域を含む、Ig重鎖定常ドメインとである。ある場合では、融合物の少なくとも一つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する、第一の重鎖定常領域(C1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物をコードするDNA、および所望される場合、免疫グロブリン軽鎖は、別個の発現ベクターに挿入され、適当な宿主細胞に同時遺伝子導入される。これは、構築物において使用される三つのポリペプチド鎖の不等比が、所望の二重特異性抗体の最適な収率をもたらすとき、実施形態における三つのポリペプチドフラグメントの相互割合を調節するためのより大きな柔軟性をもたらす。しかしながら、等しい比での少なくとも二つのポリペプチド鎖の発現が、高い収率をもたらすか、または比が、所望の鎖の組み合わせの収率に有意な効果を有さないとき、二つまたは三つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を単一の発現ベクターに挿入することが可能である。
【0091】
本開示の抗体(ならびにその抗原結合フラグメントおよびバリアント)はまた、例えば、精製または診断用途で使用するためのエピトープタグまたは標識を含むように修飾されてもよい。米国特許 第5,208,020号または欧州特許第0 425 235 B1号、およびChari et al.,Cancer Research 52:127-131 (1992)において開示されるものを含む、当該技術分野で公知の、抗体コンジュゲートを作成するための多くの結合基が、存在する。連結基は、上で特定された特許において開示されているジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基、またはエステラーゼ不安定基を含み、ジスルフィド基、およびチオエーテル基が好ましい。
【0092】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体は、コンジュゲートと本明細書で称される、別の薬剤または治療化合物にコンジュゲートされるか、または作動可能に連結されてもよい。薬剤または治療化合物は、ポリペプチド剤、ポリヌクレオチド剤、細胞障害性剤、化学療法剤、サイトカイン、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、毒素、ラジオアイソトープ、または他の治療活性剤であってもよい。化学療法剤、サイトカイン、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、および他の治療剤が、本明細書に記載されており、これらの前述の治療剤の全てが、抗体コンジュゲートとして使用され得る。このようなコンジュゲートを使用して、例えば、作用部位、例えば、TNFR2の発現によって特徴付けられる腫瘍または腫瘍微小環境に薬剤または化合物を標的化することができる。
【0093】
一部の実施形態では、抗体は、非限定的に、小分子毒素、ポリペプチド、核酸、ならびにそのフラグメントおよび/またはバリアントを含む、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性な毒素を含む、毒素とコンジュゲートされるか、または作動可能に連結される。小分子毒素は、サポリン(Kuroda K,et al.,The Prostate 70:1286-1294(2010);Lip,WL.et al.,2007 Molecular Pharmaceutics 4:241-251;Quadros EV.,et al.,2010 Mol Cancer Ther;9(11);3033-40;Polito L.,et al.2009 British Journal of Haematology,147,710-718)、カリチアマイシン、メイタンシン(米国第5,208,020号)、トリコテン、およびCC1065を含むが、これらに限定されない。毒素は、RNase、ゲロニン、エンジイン、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン、シュードモナス外毒素(PE40)、シゲラ毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)毒素、およびヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0094】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、一つまたは複数のメイタンシノイド分子にコンジュゲートされる。る。メイタンシノイドは、チューブリン重合作用を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初に、東アフリカの低木メイテンス・セラタ(Maytenus serrata)から単離された(米国特許第3,896,111号)。その後、ある特定の微生物も、メイタンシノールおよびC-3メイタンシノールエステル(米国特許第4,151,042号)などのメイタンシノイドを産生することが見出された。合成メイタンシノールならびにその誘導体および類似体は、例えば、米国特許第4,137,230号;第4,248,870号;第4,256,746号;第4,260,608号;第4,265,814号;第4,294,757号;第4,307,016号;第4,308,268号;第4,308,269号;第4,309,428号;第4,313,946号;第4,315,929号;第4,317,821号;第4,322,348号;第4,331,598号;第4,361,650号;第4,364,866号;第4,424,219号;第4,450,254号;第4,362,663号;および第4,371,533号において開示されている。メイタンシノイドを含有する免疫複合体およびその治療使用は、例えば、米国特許第5,208,020号、第5,416,064号および欧州特許第0425235B1号において開示されている。Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618-8623(1996)は、ヒト結腸直腸癌に対して向けられたモノクローナル抗体C242に連結されたメイタンシノイド指定DM1を含む免疫複合体を記載した。コンジュゲートは、培養された大腸癌細胞に対して高度に細胞傷害性であることが見出され、in vivo腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示した。
【0095】
抗体とメイタンシノイドのコンジュゲートは、抗体またはメイタンシノイド分子のいずれかの生物学的活性を著しく減少させることなく、抗体をメイタンシノイド分子に化学的に連結させることによって調製される。抗体分子当たり平均3~4個のコンジュゲートされたメイタンシノイド分子は、抗体の機能または溶解性に悪影響を及ぼすことなく、標的細胞の細胞傷害性の増強において有効性を示したが、毒素/抗体の一つの分子でさえ、ネイキッド抗体より細胞傷害性を増強すると予想される。メイタンシノイドは、当該技術分野で周知であり、公知の技術によって合成されるか、または天然の供給源から単離されてもよい。適当なメイタンシノイドは、例えば、米国特許第5,208,020号ならびに本明細書において上で言及された他の特許および非特許刊行物において開示されている。好ましいメイタンシノイドは、芳香環において、または様々なメイタンシノールエステルなどのメイタンシノール分子の他の位置で修飾されたメイタンシノールおよびメイタンシノール類似体である。
【0096】
対象の別のコンジュゲートは、一つまたは複数のカリチアマイシン分子にコンジュゲートされた抗体を含む。カリチアマイシンファミリーの抗生物質は、ピコモル以下の濃度で二本鎖DNA切断を生じることができる。カリチアマイシンの構造類似体もまた、使用され得る(Hinman et al.,1993,Cancer Research 53:3336-3342;Lode et al.,1998,Cancer Research 58:2925-2928)(米国特許第5,714,586号;米国特許第5,712,374号;米国特許第5,264,586号;米国特許第5,773,001号)。オーリスタチンE(AE)およびモノメチルオーリスタチンE(MMAE)などのドラスタチン10類似体は、本開示の抗体、またはそのバリアントのコンジュゲートととしての使用を見出し得る(Doronina et al.,2003,Nat Biotechnol 21(7):778-84;Francisco et al.,2003 Blood 102(4):1458-65)。有用な酵素的に活性な毒素は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、アロリテス・フォーディイ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲルリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテシンを含むが、これらに限定されない。例えば、PCT出願公開第93/21232号を参照のこと。本開示は、さらに、コンジュゲートまたは融合物が、本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体と、核酸分解活性を有する化合物、例えば、リボヌクレアーゼまたはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)などのDNAエンドヌクレアーゼとの間で形成される、実施形態を企図する。
【0097】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体を、ラジオアイソトープにコンジュゲートするか、または作動可能に連結して、放射性コンジュゲートを形成してもよい。様々な放射性同位元素が、放射性コンジュゲート抗体の製造に利用可能である。例としては、90Y、123I、125I、131I、186Re、188Re、211At、および212Biが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本明細書に記載される抗体は、ある特定の実施形態では、細胞毒素(例えば、細胞分裂停止もしくは細胞破壊剤)、治療剤または放射性活性剤(例えば、アルファ-エミッタ、ガンマ-エミッタなど)などの治療部分にコンジュゲートされてもよい。細胞毒素または細胞毒性剤は、細胞に有害な任意の薬剤を含む。例としては、パクリタキセル/パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにその類似体または相同体が挙げられる。一つの例示的な細胞毒素は、サポリン(Advanced Targeting Systems、San Diego、CAから入手可能)である。治療剤は、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブチル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン、ならびにアントラマイシン(AMC)、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含むが、これらに限定されない。
【0099】
さらに、TNFR2特異的抗体(抗原結合フラグメントなどの本明細書で提供されるその機能的フラグメントを含む)は、ある特定の実施形態では、放射性金属イオンをコンジュゲートするのに有用な放射性物質または大環状キレート剤などの治療部分にコンジュゲートされてもよい。ある特定の実施形態では、大環状キレート剤は、リンカー分子を介して抗体に結合され得る、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラ酢酸(DOTA)である。このようなリンカー分子は、当該技術分野において一般的に知られており、Denardo et al.,1998,Clin
Cancer Res.4:2483-90;Peterson et al.,1999,Bioconjug.Chem.10:553;およびZimmerman et
al.,1999,Nucl.Med.Biol.26:943-50において記載されている。
【0100】
一部の実施形態では、抗体は、腫瘍前標的化において利用するための「受容体」(例えば、ストレプトアビジン)にコンジュゲートされてもよく、抗体と受容体のコンジュゲートが、患者に投与され、続いて、清澄剤を使用して循環から結合していないコンジュゲートが除去され、次いで、細胞毒性剤(例えば、放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートされる「リガンド」(例えば、アビジン)が投与される。一部の実施形態では、抗体は、抗体依存性酵素介在性プロドラッグ療法(ADEPT)を利用するために、酵素にコンジュゲートされるか、または作動可能に連結される。ADEPTは、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、PCT公開第81/01145号を参照)を活性な抗癌薬剤に変換するプロドラッグ活性化酵素に、抗体をコンジュゲートするか、または連結させることによって、使用されてもよい。例えば、PCT公開第88/07378号および米国特許第4,975,278号を参照されたい。ADEPTに有用な免疫複合体の酵素成分は、それをより活性な細胞傷害形態に変換するための方法で、プロドラッグに作用することができる任意の酵素を含む。これらおよび関連する実施形態の方法において有用である酵素は、リン酸塩含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;硫酸塩含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;無毒性5-フルオロシトシンを抗癌薬剤である5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用である、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼならびにカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL)などのタンパク質分解酵素;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬剤に変換するのに有用なベータ-ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼなどの炭水化物切断酵素;ベータ-ラクタムで誘導体化された薬剤を遊離薬剤に変換するのに有用なベータラクタマーゼ;およびそれらのアミン窒素において、それぞれ、フェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基で誘導体化された薬剤を遊離薬剤に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼなどのペニシリンアミダーゼを含むが、これらに限定されない。あるいは、当該技術分野で「アブザイム」としても知られる、酵素活性を有する抗体を使用して、プロドラッグを遊離活性薬剤に変換してもよい(例えば、Massey,1987,Nature 328:457-458を参照)。抗体とアブザイムのコンジュゲートは、アブザイムの腫瘍細胞集団への送達のため調製することができる。
【0101】
免疫複合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタレルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの様々な二機能性タンパク質カップリング剤を使用して作製されてもよい。特定のカップリング剤は、ジスルフィド結合をもたらすためのN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(Carlsson et al.,Biochem.J.173:723-737[1978])およびN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペントエート(SPP)を含む。リンカーは、一つまたは複数の切断可能な要素の放出を促進する「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定リンカーが、使用されてもよい(Cancer Research 52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)。
【0102】
本開示の抗体(およびポリペプチド)の他の修飾も、本明細書で企図される。例えば、抗体は、様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーのうちの一つに連結されてもよい。抗体はまた、例えば、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル剤)において、またはマクロエマルジョンにおいて、コアセルベーション技術により、または界面重合作用(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセル剤およびポリ-(メチルメタシアレート)マイクロカプセル剤)により調製されたマイクロカプセル剤に封じ込められてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical
Sciences,16th edition,Oslo,A.,Ed.,(1980)において開示されている。
【0103】
本明細書で使用される場合、「担体」は、利用される投薬量および濃度でそれにさらされている細胞または哺乳動物に無毒性である薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤を含む。生理的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理的に許容可能な担体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/またはポリソルベート20(TWEEN(登録商標))ポリエチレングリコール(PEG)、およびポロクサマー(PLURONICS(登録商標))非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0104】
抗TNFR2抗体の所望の機能特性は、in vitroまたはin vivoモデルを使用する当業者に高知の様々な方法、親和性/結合アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴、競合阻害アッセイ);細胞傷害アッセイ、細胞生存率アッセイ、細胞増殖または分化アッセイ、癌細胞および/または腫瘍成長阻害を使用して評価されてもよい。他のアッセイは、本明細書に記載される抗体の、正常なTNFR2介在性応答を遮断する能力を検査し得る。本明細書に記載される抗体はまた、in vitroおよびin vivo有効性について検査されてもよい。このようなアッセイは、当業者に公知の十分に確立されたプロトコール(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NYを参照);Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren
Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NY)における現在のプロトコール;または市販されているキットを使用して行われてもよい。
【0105】
本開示は、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸、例えば、本明細書に記載されるCDRまたはVHもしくはVLドメインをコードする核酸をさらに提供する。核酸は、DNAおよびRNAを含む。これらおよび関連する実施形態は、本明細書に記載されるTNFR2に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源のポリヌクレオチド、またはそれらの幾つかの組み合わせを意味し、その起源により、単離されたポリヌクレオチドは、(1)単離されたポリヌクレオチドが、天然で見出されるポリヌクレオチドのすべてまたは一部と関連付けられず、(2)それが天然で連結されていないポリヌクレオチドに連結されるか、または(3)より大きな配列の一部として天然で生じない。
【0106】
用語「作動可能に連結された」は、用語が適用される要素が、それらが、適当な条件下で固有の機能を実行することを可能にする関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結された」転写制御配列は、タンパク質コード配列の発現が、制御配列の転写活性と互換性のある条件下で達成されるように、それらにライゲーションされる。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「制御配列」は、それらがライゲーションされるか、または作動可能に連結されるコード配列の発現、プロセシングまたは細胞内局在化に影響し得るポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物の転写制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み得る。他の特定の実施形態では、真核生物の転写制御配列は、転写因子、転写エンハンサー配列、転写終結配列およびポリアデニル化配列についての認識部位の一つまたは複数を含むプロモーターを含み得る。ある特定の実施形態では、「制御配列」は、リーダー配列および/または融合パートナー配列を含み得る。
【0108】
本明細書で言及される、用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖の核酸ポリマーを意味する。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾された形態であり得る。当該修飾は、ブロモウリジンなどの塩基修飾、アラビノシドおよび2’,3’-ジデオキシリボースなどのリボース修飾ならびにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデートおよびホスホロアミデートなどのヌクレオチド間結合修飾を含む。「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖および二本鎖形態のDNAを含む。
【0109】
用語「天然に存在するヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。用語「修飾されたヌクレオチド」は、修飾または置換された糖基等を有するヌクレオチドを含む。用語「オリゴヌクレオチド結合」は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、LaPlanche et al.,1986,Nucl.Acids Res.,14:9081;Stec et al.,1984,J.Am.Chem.Soc.,106:6077;Stein et al.,1988,Nucl.Acids Res.,16:3209;Zon et al.,1991,Anti-Cancer Drug Design,6:539;Zon et al.,1991,OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH,pp.87-108(F.Eckstein,Ed.),Oxford University Press,Oxford England;Stecらの米国特許第5,151,510;Uhlmann and Peyman,1990,Chemical Reviews,90:543を参照し、これらの開示は、任意の目的で参照により本明細書に取り込まれる。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの検出またはそのハイブリダイゼーションを可能にする検出可能な標識を含み得る。
【0110】
用語「ベクター」は、コード情報を宿主細胞に伝達するために使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指すために使用される。用語「発現ベクター」は、宿主細胞の形質転換に適当なベクターを指し、挿入された異種核酸配列の発現を指示し、および/または制御する核酸配列を含有する。発現は、イントロンが存在する場合、転写、翻訳、およびRNAスプライシングなどのプロセスを含むが、これらに限定されない。
【0111】
当業者によって理解されるように、ポリヌクレオチドは、ゲノム配列、ゲノム外配列およびプラスミドコード配列、ならびにタンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現するか、または発現するように適合され得るより小さな操作された遺伝子セグメントを含んでもよい。このようなセグメントは、当業者によって天然で単離されルカ、または合成的に修飾されてもよい。
【0112】
当業者によってまた認識されるように、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードもしくはアンチセンス)または二本鎖であってもよく、DNA(ゲノム、cDNAもしくは合成)またはRNA分子であってもよい。RNA分子は、イントロンを含有し、一対一でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子を含んでもよい。追加のコード配列または非コード配列は、本開示によるポリヌクレオチド内に存在してもよいが、しなくてもよく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持材料に連結されていてもよいが、されていなくてもよい。ポリヌクレオチドは、天然配列を含有してもよいか、またはこのような配列のバリアントもしくは誘導体をコードする配列を含有してもよい。
【0113】
したがって、これらおよび関連する実施形態によると、本開示はまた、本明細書に記載される抗TNFR2抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体をコードするポリヌクレオチド配列の一部または全て、およびこのようなポリヌクレオチドの相補鎖を含むポリヌクレオチドが、提供される。
【0114】
他の関連する実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、本明細書に記載される抗TNFR2抗体をコードするポリヌクレオチド配列と実質的な同一性を有し得る。例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される方法(例えば、以下で記載される、標準パラメーターを使用したBLAST解析)を使用して、本明細書に記載される抗体をコードする配列などの参照ポリヌクレオチド配列と比較される、少なくとも70%の配列同一性、好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を含むポリヌクレオチドであってもよい。当業者は、これらの値を適切に調整して、コドン縮退、アミノ酸類似性、リーディングフレームポジショニングなどを考慮することによって、二つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定することができることを認識するであろう。
【0115】
典型的には、ポリヌクレオチドバリアントは、好ましくは、バリアントポリヌクレオチドによりコードされる抗体の結合親和性が、本明細書に具体的に記載されるポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体と比べて実質的に減少しないように、一つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含有する。
【0116】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドフラグメントは、様々な長さの、本明細書に記載される抗体をコードする配列と同一、または相補的な配列の連続伸長物を含むか、または本質的にからなってもよい。例えば、本明細書において開示される抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、200、300、400、500または1000以上、ならびにその間の全ての間にある長さの連続するヌクレオチドの配列を含むか、または本質的にからなるポリヌクレオチドが、提供される。この文脈における「間にある長さ」は、200~500;500~1,000などの全ての整数を含む、50、51、52、53など;100、101、102、103など;150、151、152、153などの引用される値の間の任意の長さを意味することは、容易に理解される。本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列は、天然配列に見出されない追加のヌクレオチドによって、一端または両端で伸長されてもよい。この追加配列は、本明細書に記載される抗体をコードするポリヌクレオチドのいずれかの端、または本明細書に記載される抗体をコードするポリヌクレオチドの両端の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチドからなっていてもよい。
【0117】
一部の実施形態では、中程度から高度にストリンジェンシーな条件下で、本明細書に提供される抗体、もしくはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド、またはそのフラグメント、もしくはその相補配列にハイブリダイズする能力があるポリヌクレオチドが、提供される。ハイブリダイゼーション技術は、分子生物学の技術分野で周知である。説明の目的で、本明細書において提供されるポリヌクレオチドの、他のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを試験するのに適当な中程度にストリンジェントな条件は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液における前洗浄;50℃~60℃、5×SSC、一晩でのハイブリダイゼーション;続いて、0.1%SDSを含有する2×、0.5×および0.2×SSCそれぞれを用いた、65℃、20分間の2回の洗浄を含む。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩含有量および/またはハイブリダイゼーションが行われる温度を変化させることなどによって、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、容易に操作できることを理解するであろう。例えば、一部の実施形態では、適当な高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションの温度が、例えば、60℃~65℃または65℃~70℃まで上昇することを除き、上で記載されるものを含む。
【0118】
ある特定の実施形態では、上で記載されたポリヌクレオチド、例えば、ポリヌクレオチドバリアント、フラグメントおよびハイブリダイズする配列は、TNFR2、またはその抗原結合フラグメントに結合する抗体をコードする。ある特定の実施形態では、このようなポリヌクレオチドは、少なくとも約50%、少なくとも約70%、ある特定の実施形態では、少なくとも約90%でTNFR2に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、もしくはCDRならびに本明細書において具体的に記載される抗体配列をコードする。さらなる実施形態では、このようなポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗体より高い親和性でTNFR2に結合する、例えば、少なくとも約105%、106%、107%、108%、109%、または110%で定量的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、もしくはCDR、ならびに本明細書に具体的に記載される抗体配列をコードする。
【0119】
本明細書の他の箇所に記載されるように、代表的なポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるバリアントTNFR2特異的抗体、例えば、本明細書において提供される抗原結合フラグメントを有する抗体タンパク質)の三次元構造の決定は、選択された天然または非天然のアミノ酸を用いた一つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、欠失または挿入が、誘導された構造バリアントが、本開示の種の空間充填特性を保持しているかどうかを決定する目的のため、事実上モデル化され得るように、日常的な方法論を通じてなされ得る。例えば、親和性が、維持されるか、またはより良好な親和性が、達成されるように、抗体内での適切なアミノ酸置換(またはアミノ酸配列をコードする適切なポリヌクレオチド)を決定するための、様々なコンピュータプログラムが、当業者に知られている。
【0120】
本明細書に記載されるポリヌクレオチド、またはそのフラグメントは、コード配列自体の長さにかかわらず、それらの全体的な長さが、相当変動し得るように、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、マルチプルクローニングサイト、他のコードセグメントなどのような他のDNA配列と組み合わされてもよい。したがって、ほぼ任意の長さの核酸フラグメントが、利用されてもよく、全長は、意図される組み換えDNAプロトコールにおける調製および使用の容易さによって制限されることが好ましい。例えば、有用である、長さ、全長約10,000、約5000、約3000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100、約50塩基対など(全ての間にある長さを含む)を有する実例となるポリヌクレオチドセグメンが、企図される。
【0121】
ポリヌクレオチド配列を比較するとき、二つの配列におけるヌクレオチドの配列が、以下で記載されるように、最大の対応のため整列されるとき、同じである場合、二つの配列は、「同一」であると言われる。二つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性である局所領域を同定し、比較することによって行われる。本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20の連続する位置、通常は、30~約75、40~約50の連続する位置のセグメントを指し、配列は、二つの配列が最適に整列された後、同じ数の連続位置の参照配列と比較され得る。
【0122】
比較のための配列の最適なアライメントは、デフォルトパラメーターを使用したバイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR、Inc.、Madison、WI)のLasergene(登録商標)一式のMegalign(商標)プログラムを使用して、行われてもよい。このプログラムは、以下の参考文献:Dayhoff,M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345-358;Hein J.,Unified Approach to Alignment and Phylogenes,pp.626-645(1990);Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,CABIOS 5:151-153(1989);Myers,E.W.and Muller W.,CABIOS 4:11-17(1988);Robinson,E.D.,Comb.Theor 11:105(1971);Santou,N.Nes,M.,Mol.Biol.Evol.4:406-425(1987);Sneath,P.H.A.and
Sokal,R.R.,Numerical Taxonomy-the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA(1973);Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.,Proc.Natl.Acad.,Sci.USA 80:726-730(1983)に記載されるいくつかのアライメントスキームを具体化する。
【0123】
あるいは、比較のための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman,Add.APL.Math 2:482(1981),by the identity alignment algorithm of Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443 (1970)の局所同一性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性を調べる方法によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group(GCG)、575
Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ化実行によって、または検査によって行われてもよい 。
【0124】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適当なアルゴリズムの一例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschul
et al.,Nucl.Acids Res.25:3389-3402(1977)、およびAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410 (1990)において記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0を、例えば、本明細書に記載されるパラメーターと共に使用して、二つ以上のポリヌクレオチドの間のパーセント配列同一性を決定することができる。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に入手可能である。一つの実例となる例では、累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(一致残基の対についての報酬スコア;常に>0)およびN(不一致残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して計算することができる。それぞれの向きでのワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアが、その最大達成値から数量Xだけ減少するとき;累積スコアが、一つまたは複数の残基を負にスコア付けするアライメントの蓄積により、ゼロ以下になるとき;またはいずれかの配列の端に達するとき、停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のため)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、および予想(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)アライメント、(B)50、予想(E)10、M=5、N=-4および両方の鎖の比較を使用する。
【0125】
ある特定の実施形態では、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20位置の比較のウィンドウにわたり二つの最適にアライメントされた配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、二つの配列の最適なアライメントについての参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常、5~15パーセント、または10~12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、同一の核酸塩基が両方の配列において生じる数を決定して、一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を、参照配列における位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割ること、および結果を100で割って、配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0126】
遺伝子コードの縮退の結果として、本明細書に記載される抗体をコードする多くのヌクレオチド配列が存在することは、当業者によって理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドの一部は、TNFR2に結合する抗体をコードする天然またはオリジナルのポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列に対して最小の配列同一性を有する。それにもかかわらず、コドン使用の違いにより変動するポリヌクレオチドは、本開示によって明示的に企図される。ある特定の実施形態では、哺乳動物発現のためコドン最適化されている配列が、具体的に企図される。
【0127】
一部の実施形態では、部位特異的変異誘発などの変異誘発アプローチは、本明細書に記載される抗体のバリアントおよび/または誘導体の調製のため利用されてもよい。このアプローチにより、ポリペプチド配列における特定の修飾は、それらをコードする、根底にあるポリヌクレオチドの変異誘発を通じて行うことができる。これらの技術は、例えば、一つまたは複数のヌクレオチド配列変化をポリヌクレオチドに導入することによって、前述の検討事項の一つまたは複数を組み込んだ、配列バリアントを調製し、検査する直接アプローチをもたらす。
【0128】
部位特異的変異誘発により、所望の変異のDNA配列をコードする特定のオリゴヌクレオチド配列、ならびに横断する欠失接合部の両端で安定な二本鎖を形成するのに十分な寸法および複雑な配列のプライマー配列をもたらすための十分な数の隣接ヌクレオチドの使用を通じた変異体の産生を可能にする。変異を、選択したポリヌクレオチド配列において利用して、ポリヌクレオチド自体の特性を改良する、変化させる、減少する、修飾するか、もしくはそうでなければ変更してもよく、および/またはコードされるポリペプチドの特性、活性、組成、安定性、もしくは一次配列を変化させてもよい。
【0129】
ある特定の実施形態では、発明者らは、抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合親和性、または特定のFc領域の機能、または特定のFcγRのFc領域の親和性などの、コードされるポリペプチドの一つまたは複数の特性を変化させるための、本明細書において開示される抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列の変異誘発を企図する。部位特異的変異誘発の技術は、当該技術分野で周知であり、ポリペプチドとポリヌクレオチドの両方のバリアントを作製するために広く使用されている。例えば、部位特異的変異誘導は、DNA分子の特定の部分を変化させるためにしばしば使用される。このような実施形態では、変化している配列の接合部の両側に約5~約10残基を含む、典型的には、長さ約14~約25ヌクレオチドほどを含むプライマーが、利用されてもよい。
【0130】
当業者によって理解されるように、部位特異的変異誘発技術は、しばしば、一本鎖および二本鎖形態の両方に存在するファージベクターを利用している。部位特異的変異誘発に有用な典型的なベクターは、M13ファージなどのベクターを含む。これらのファージは、容易に市販で入手可能であり、それらの使用は、一般的に、当業者に周知である。二本鎖プラスミドはまた、プラスミドからファージに対象の遺伝子を移す工程を除く部位指定変異誘発において日常的に使用される。
【0131】
一般に、本明細書に従った部位特異的変異誘発は、まず一本鎖ベクターを得ること、またはその配列内に、所望のペプチドをコードするDNA配列を含む二本鎖ベクターの二本鎖の鎖を融解することによって行われる。所望の変異した配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーは、一般的に合成で調製される。次いで、このプライマーは、一本鎖ベクターとアニーリングされ、変異を有する鎖の合成を完了させるために、例えば、大腸菌ポリメラーゼI KlenowフラグメントなどのDNA重合酵素に供される。したがって、ヘテロ二本鎖が形成され、一つの鎖が、元の変異していない配列をコードし、第二の鎖が、所望の変異を有する。次いで、このヘテロ二本鎖ベクターを使用して、大腸菌細胞などの適切な細胞を形質転換し、変異した配列配置を有する組み換えベクターを含むクローンを選択する。
【0132】
部位指定変異誘発を使用して選択されたペプチドコードDNAセグメントの配列バリアントの調製は、潜在的に有用な種を産生する手段を提供し、ペプチドの配列バリアントおよびそれらをコードするDNA配列が、得られ得る他の方法が存在するので、制限することを意味するものではない。例えば、所望のペプチド配列をコードする組み換えベクターを、ヒドロキシルアミンなどの変異原性薬剤で処理して、配列バリアントを得てもよい。これらの方法およびプロトコールに関する具体的な詳細は、Maloy et al.,1994;Segal,1976;Prokop and Bajpai,1991;Kuby,1994;およびManiatis et al.,1982の教示において見られ、それぞれが、その目的のため、参照により本明細書に取り込まれる。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド指定変異誘発手法」は、鋳型依存性プロセスおよびベクター介在性増殖を指し、これは、その初期濃度と比べて、特定の核酸分子の濃度の増加、または増幅などの検出可能なシグナルの濃度の増加をもたらす。本明細書で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド指定変異誘発手法」は、プライマー分子の鋳型依存性伸長を伴うプロセスを指すことが意図される。鋳型依存性プロセスという用語は、RNAまたはDNA分子の核酸合成を指し、核酸の新たに合成された鎖の配列は、相補的塩基対形成の周知の規則(例えば、Watson,1987を参照)によって決定される。典型的には、ベクター仲介性方法論は、DNAまたはRNAベクターへの核酸フラグメントの導入、ベクターのクローン性増幅、および増幅された核酸フラグメントの回収を伴う。このような方法論の例は、米国特許第4,237,224号によって提供され、その全体が、参照により本明細書に具体的に取り込まれる。
【0134】
ポリペプチドバリアントの産生のための別のアプローチでは、米国特許第5,837,458号に記載される、再帰配列組み換えが、利用されてもよい。このアプローチでは、組み換えおよびスクリーニングまたはセレクションの反復サイクルを行い、例えば、増加した結合親和性を有する個々のポリヌクレオチドバリアントを「発展させる」。ある特定の実施形態はまた、本明細書に記載される少なくとも一つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写または発現カセットの形態の構築物を提供する。
【0135】
多くの実施形態では、対象のモノクローナル抗体をコードする核酸は、宿主細胞に直接導入され、細胞は、コードされる抗体の発現を誘導するのに十分な条件下でインキュベートされる。本開示の抗体は、本明細書において提供されるポリペプチドおよび核酸配列と組み合わせて、当業者に周知の標準技術を使用して調製される。ポリペプチド配列を使用して、それによって開示される特定の抗体をコードする適切な核酸配列を決定してもよい。核酸配列は、当業者に周知の標準的な方法に従って、様々な発現系に対する特定のコドン「優先」を反映するように最適化されてもよい。
【0136】
ある特定の関連する実施形態によれば、本明細書に記載される一つまたは複数の構築物を含む組み換え宿主細胞、任意の抗体、CDR、VHもしくはVLドメイン、またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸、およびコードされた産物の産生方法が提供され、方法は、それをコードする核酸からの発現を含む。発現は、核酸を含有する組み換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって好適に達成され得る。発現による産生後、抗体またはその抗原結合フラグメントは、任意の適当な技術を使用して単離され、および/または精製され、次いで、所望に応じて使用されてもよい。
【0137】
本明細書において提供され、核酸分子およびベクターをコードする抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、それらの天然の環境から、実質的に純粋もしくは均一な形態で、あるいは核酸の場合、所望の機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の起源である核酸もしくは遺伝子を含まず、または実質的に含まず、単離され、および/または精製されてもよい。核酸は、DNAまたはRNAを含んでもよく、完全または部分的に合成であってもよい。本明細書に記載されるヌクレオチド配列への言及は、特定の配列を有するDNA分子を包含し、文脈がそうでないことを要求しない限り、UがTに置き換えられている特定の配列を有するRNA分子を包含する。
【0138】
様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムが、周知である。適当な宿主細胞は、細菌、哺乳動物細胞、酵母およびバキュロウイルス系を含む。異種ポリペプチドの発現のため、当該技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウスメラノーマ細胞およびその他多数を含む。一般的な好ましい細菌宿主は、大腸菌である。
【0139】
大腸菌などの原核細胞における抗体および抗原結合フラグメントの発現は、当該技術分野で十分に確立されている。例えば、Pluckthun(Bio/Technology 9:545-551,1991)を参照のこと。培養中の真核生物の細胞における発現はまた、抗体またはその抗原結合フラグメントの産生のための選択肢として、当業者にも利用可能であり、最近の概説、例えば、Ref,M.E.(1993)Curr.Opinion Biotech.4:573-576;Trill J.J.et al.(1995)Curr.Opinion Biotech 6:553-560を参照のこと。
【0140】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および必要に応じて他の配列を含む、適当な制御配列を含有する適当なベクターが、選択するか、または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、またはファージミドであってもよい。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory
Manual:2nd edition,Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の解析における、核酸の操作についての多くの公知の技術およびプロトコールは、Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,1992における現在のプロトコールまたはその後の更新において詳細に記載されている。
【0141】
用語「宿主細胞」は、本明細書に記載される抗体のうちの一つまたは複数をコードする核酸配列が導入されている、または導入される能力があり、本明細書に記載される抗体をコードする遺伝子などの、対象の選択された遺伝子をさらに発現するか、または発現する能力がある細胞を指すために使用される。この用語は、子孫が、形態学的において、または元の親と遺伝的構成において同一であるかどうかに関わらず、選択された遺伝子が存在する限り、親細胞の子孫を含む。したがって、このような核酸を宿主細胞に導入することを含む方法もまた、企図される。導入は、任意の利用可能な技術を利用してもよい。真核生物の細胞について、適当な技術は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム介在性トランスフェクションおよびレトロウイルスもしくは他のウイルス、例えば、ワクシニアを含み、または昆虫細胞について、バキュロウイルスを含む。細菌細胞について、適当な技術は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを使用したトランスフェクションを含む。導入に続き、例えば、遺伝子発現の条件下で宿主細胞を培養することによって、核酸からの発現を引き起こすか、または可能にしてもよい。一部の実施形態では、核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込まれる。組み込みは、標準的な技術に従って、ゲノムとの組み換えを促進する配列を包含することによって促進され得る。
【0142】
本開示はまた、ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体などの特定のポリペプチドを発現するために、発現系において上で述べた構築物を使用することを含む方法を提供する。用語「形質導入」は、通常は、ファージによる、ある細菌から別の細菌への遺伝子の伝達を指すために使用される。「形質導入」はまた、レトロウイルスによる真核生物の細胞配列の獲得および伝達を指す。用語「トランスフェクション」は、細胞による外来または外因性DNAの取り込みを指すために使用され、外因性DNAが、細胞膜内に導入されたとき、細胞は、「遺伝子導入」されている。多数のトランスフェクション技術が、当該技術分野で周知であり、本明細書において開示されている。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52:456;Sambrook et al.,2001,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratories;Davis et al.,1986,BASIC METHODS
IN MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier;およびChu et
al.,1981,Gene 13:197を参照のこと。このような技術を使用して、一つまたは複数の外因性DNA部分を適当な宿主細胞に導入することができる。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語「形質転換」は、細胞の遺伝的特徴の変化を指し、細胞は、新しいDNAを含有するように修飾されたとき、形質転換されている。例えば、細胞は、形質転換され、それは、その天然の状態から遺伝子修飾されている。トランスフェクションまたは形質導入後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることによって細胞のものと再結合してもよく、または複製されることなくエピソーム要素として一過性に維持されてもよく、またはプラスミドとして独立して複製されてもよい。細胞は、DNAが、細胞の分裂を用いて複製されたとき、安定的に形質転換さレテいるとみなされる。核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などの生物学的材料に関連して使用されるときの用語「天然に存在する」または「天然」は、天然で見られるが、ヒトによって操作されていない物質を指す。同様に、本明細書で使用される場合、「天然に存在しない」または「非天然」は、天然で見られないか、またはヒトによって構造的に改変されているか、または合成されている物質を指す。
【0144】
用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」および「糖タンパク質」は、互換的に使用され、任意の特定の長さに限定されないアミノ酸のポリマーを意味する。この用語は、ミリストイル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化およびシグナル配列の付加または欠失などの修飾を除外しない。用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸の一つまたは複数の鎖を意味し、それぞれの鎖は、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸を含み、当該ポリペプチドまたはタンパク質は、天然のタンパク質、すなわち、天然で生じる細胞および特定の非組み換え細胞、または遺伝子操作された細胞もしくは組み換え細胞によって産生されるタンパク質の配列を有する、ペプチド結合によって一緒に非共有結合および/または共有結合された複数の鎖を含むことができ、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然の配列の一つまたは複数のアミノ酸からの欠失、付加、および/もしくは置換を有する分子を含む。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本開示のTNFR2に結合する抗体、または抗TNFR2抗体の一つまたは複数のアミノ酸からの欠失、付加、および/もしくは置換を有する配列を具体的に包含する。したがって、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸鎖の一つ(「モノマー」と称される)または複数(「多量体」と称される)を含み得る。
【0145】
本明細書で言及される、用語「単離されたタンパク質」は、対象タンパク質が、(1)典型的には、天然で見られる、少なくともいくつかの他のタンパク質を含まず、(2)同じ起源由来、例えば、同じ種由来の他のタンパク質を本質的に含まず、(3)異なる種由来の細胞によって発現され、(4)ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは天然でそれらが関連する他の物質の少なくとも約50パーセントから分離されており、(5)「単離されたタンパク質」が、天然で関連するタンパク質の部分と関連せず(共有結合もしくは非共有結合相互作用によって)、(6)それが天然で関連しないポリペプチドで作動可能に連結されており(共有結合もしくは非共有結合相互作用によって)、または(7)天然で生じないことを意味する。このような単離されたタンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNAもしくは他のRNAによってコードされ得るか、合成起源であってもよく、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。ある特定の実施形態では、単離されたタンパク質は、その使用(治療、診断、予防、研究またはその他)と干渉するであろう、その天然の環境において見られるタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の汚染物質を実質的に含まない。
【0146】
用語「ポリペプチドフラグメント」は、天然に存在するポリペプチドまたは組み換え産生されたポリペプチドのアミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失、および/もしくは内部欠失または置換を有する、モノマーまたは多量体であり得る、ポリペプチドを指す。ある特定の実施形態では、ポリペプチドフラグメントは、少なくとも5~約500アミノ酸長のアミノ酸鎖を含み得る。ある特定の実施形態では、フラグメントが、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸長であることが認めらるだろう。特に有用なポリペプチドフラグメントは、抗原結合ドメインまたは抗体のフラグメントを含む、機能ドメインを含む。抗TNFR2抗体の場合、有用なフラグメントは、CDR領域、特に、重鎖もしくは軽鎖のCDR3領域、重鎖もしくは軽鎖の可変領域、抗体鎖の部分または二つのCDRを含むただその可変領域などを含むが、これらに限定されない。
【0147】
ポリペプチドは、タンパク質の輸送を翻訳と同時または翻訳後に指示する、タンパク質のN末端にシグナル(またはリーダー)配列を含んでもよい。シグナルペプチドを含む、本明細書において提供される任意のポリペプチドアミノ酸配列もまた、このようなシグナルまたはリーダーペプチドを伴わない、本明細書に記載される任意の使用のために企図される。当業者によって認識されるように、シグナルペプチドは、通常、処理中に切断され、活性な抗体タンパク質に含まれない。ポリペプチドはまた、ポリペプチド(例えば、ポリ-His)の合成、精製もしくは同定の容易さのために、または固体支持体へのポリペプチドの結合を増強するために、リンカーまたは他の配列にインフレームで融合されてもよいか、またはそれにコンジュゲートされてもよい。
【0148】
ペプチドリンカー/スペーサー配をまた利用して、それぞれのポリペプチドが、所望されるなら、その二次および/または三次構造にフォールディングすることを確実にするのに十分な距離によって、複数のポリペプチド成分を分けてもよい。このようなペプチドリンカー配列は、当該技術分野で周知の標準的な技術を使用して、融合ポリペプチドに組み込むことができる。
【0149】
ある特定のペプチドスペーサー配列は、例えば、(1)可動性伸長立体構造を取り入れる能力、(2)第一および第二のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造を取り入れる能力、ならびに/または(3)ポリペプチド機能的エピトープと反応し得る疎水性もしくは荷電残基の欠如に基づき、選択されてもよい。
【0150】
一つの実例となる実施形態では、ペプチドスペーサー配列は、例えば、Gly、AsnおよびSer残基を含有する。ThrおよびAlaなどの他の中性に近いアミノ酸もまた、スペーサー配列に含まれてもよい。
【0151】
スペーサーとして有用に利用され得る他のアミノ酸配列は、Maratea et al.,Gene 40:39 46(1985);Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258 8262(1986);米国特許 第4,935,233号および米国特許 第4,751,180号において記載されるものを含む。
【0152】
他の実例となるスペーサーは、例えば、Glu-Gly-Lys-Ser-Ser-Gly-Ser-Gly-Ser-Glu-Ser-Lys-Val-Asp(配列番号324)(Chaudhary et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070)およびLys-Glu-Ser-Gly-Ser-Val-Ser-Ser-Glu-Gln-Leu-Ala-Gln-Phe-Arg-Ser-Leu-Asp(配列番号325)(Bird et al.,1988,Science 242:423-426)を含んでもよい。
【0153】
一部の実施形態では、第一および第二のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体的な干渉を防ぐために使用され得る非必須N末端アミノ酸領域を有するとき、スペーサー配列は、必要とされない。二つのコード配列は、スペーサーなしで直接、または例えば、1~3回繰り返される五量体Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号326)からなる可動性ポリリンカーを使用することによって融合することができる。このようなスペーサーは、VHとVLの間に挿入されることによって、一本鎖抗体(scFv)の構築において使用されている(Bird et al.,1988,Science 242:423-426;Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5979-5883)。
【0154】
ペプチドスペーサーは、ある特定の実施形態では、一本鎖抗体の可変領域を形成する二つのベータシート間の正しい相互作用を可能にするように設計される。
【0155】
ある特定の実施形態では、ペプチドスペーサーは、1~5つのアミノ酸、5~10つのアミノ酸、5~25つのアミノ酸、5~50つのアミノ酸、10~25つのアミノ酸、10~50つのアミノ酸、10~100つのアミノ酸、または任意の介在する範囲のアミノ酸である。一部の実施形態では、ペプチドスペーサーは、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50以上のアミノ酸長を含む。
【0156】
本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾が、企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改良することが望ましい場合がある。例えば、抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体もしくはその鎖をコードするポリヌクレオチドに適切なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、ならびに/または残基への挿入および/もしくは置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせは、最終の抗体に達するようになされ、ただし、最終の構築物は、所望の特徴(例えば、TNFR2への高い親和性の結合)を有する。アミノ酸変更はまた、グリコシル化部位の数または位置を変化させるなど、抗体の翻訳後プロセスを変化させてもよい。本開示のポリペプチドについて上で記載されたバリエーションおよび修飾のいずれかが、本開示の抗体に含まれていてもよい。
【0157】
本開示は、本明細書に開示される抗体のバリアントを提供する。ある特定の実施形態では、このようなバリアント抗体またはその抗原結合フラグメント、もしくはCDRは、TNFR2に、少なくとも約50%、少なくとも約70%、ある特定の実施形態では、少なくとも約90%結合し、ならびに本明細書に具体的に記載される抗体配列に結合する。さらなる実施形態では、このようなバリアント抗体またはその抗原結合フラグメント、もしくはCDRは、本明細書において記載される抗体より高い親和性でTNFR2に結合し、例えば、少なくとも約105%、106%、107%、108%、109%、または110%で定量的に結合し、ならびに本明細書において具体的に記載される抗体配列に結合する。
【0158】
代表的なポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるバリアントTNFR2特異的抗体、例えば、本明細書において提供される抗原結合フラグメントを有する抗体タンパク質)の三次元構造の決定は、選択された天然または非天然のアミノ酸を用いた一つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、欠失または挿入が、誘導された構造バリアントが、本開示の種の空間充填特性を保持しているかどうかを決定する目的のため、事実上モデル化され得るように、日常的な方法論を通じてなされ得る。例えば、Donate et al.,1994 Prot.Sci.3:2378;Bradley et al.,Science 309:1868-1871(2005);Schueler-Furman et al.,Science 310:638(2005);Dietz et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103:1244 (2006);Dodson et al.,Nature 450:176(2007);Qian et al.,Nature 450:259(2007);Raman et al.Science 327:1014-1018(2010)を参照のこと。本明細書において提供されるそのTNFR2特異的抗体抗原結合ドメインの合理的設計のためなど、これらおよび関連する実施形態のため使用され得るコンピューターアルゴリズムのいくつかの追加の非限定的な例は、3-D製図法および組み込みスクリプトを使用した大型生体分子系を表示し、アニメーション化し、解析するための分子可視化プログラムであるVMDを含む(ks.uiuc.edu/Research/vmd/のTheoretical and Computational Biophysics Group、University of Illinois at Urbana-Champagneについてのウェブサイトを参照のこと)。エネルギーを最小化した立体構造の空間充填モデル(ファンデルワールス範囲)から原子径を決定することを可能にする、多くの他のコンピュータプログラム:異なる化学基に対して高い親和性の領域を決定し、これにより、結合を増強しようとするGRID、数理的アライメントを計算するMonte Carlo検索、ならびに力場計算を評価し、解析するCHARMM(Brooks et al.(1983)J.Comput.Chem.4:187-217)およびAMBER(Weiner et al(1981)J.Comput.Chem.106:765)が、当該技術分野で公知であり、当業者にとって入手可能である(Eisenfield et al.(1991)Am.J.Physiol.261:C376-386;Lybrand(1991)J.Pharm.Belg.46:49-54;Froimowitz (1990)Biotechniques 8:640-644;Burbam
et al.(1990)Proteins 7:99-111;Pedersen(1985)Environ.Health Perspect.61:185-190;Kini et al.(1991)J.Biomol.Struct.Dyn.9:475-488も参照のこと)。Schroudinger(Munich、Germany)などの、様々な適切な計算コンピュータプログラムもまた市販されている。
【0159】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体およびそのヒト化バージョンは、ウサギモノクローナル抗体に由来し、特に、APXiMAB(商標)技術を使用して生成される。これらの抗体は、最小限の配列修飾を必要とし、これにより、突然変異系誘導(MLG)ヒト化テクノロジーを使用したヒト化後の機能特性の保持を促進するので、有利である(例えば、米国特許第7,462,697号を参照)。したがって、本開示の抗TNFR2抗体を作製するための実例となる方法は、例えば、米国特許第5,675,063号および第7,429,487号に記載されるAPXiMAB(商標)ウサギモノクローナル抗体テクノロジーを含む。これに関して、ある特定の実施形態では、本開示の抗TNFR2抗体は、ウサギにおいて産生される。特定の実施形態では、ウサギ脾臓細胞または末梢Bリンパ球と融合する能力がるウサギ由来不死化Bリンパ球を使用して、抗体を産生するハイブリッド細胞が生み出される。不死化Bリンパ球は、内因性免疫グロブリン重鎖を検出可能に発現せず、特定の実施形態では、変化した免疫グロブリン重鎖コード遺伝子を含有してもよい。
【0160】
組成物および使用方法
本開示は、TNFR2特異的抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む組成物、ならびに癌、炎症性疾患および自己免疫疾患、ならびに他の疾患の治療を含む、様々な治療環境におけるこのような組成物の投与を提供する。
【0161】
純粋な形態または適切な医薬組成物の、本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体の投与は、同様の有用性をもたらすための薬剤の許容される投与様式のいずれかを介して行うことができる。医薬組成物は、抗体または抗体含有組成物を適切な生理的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせることによって調製することができ、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、注射液、吸入薬、ゲル、ミクロスフェア、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体またはガス状形態の調製物に製剤化され得る。加えて、他の薬学的に有効な成分(本明細書の他の箇所に記載される他の抗癌剤を含む)ならびに/または塩、緩衝液および安定剤などの適当な賦形剤は、組成物内に存在してもよいが、必須ではない。投与は、経口、非経口、経鼻、静脈内、皮内、皮下または局所を含む、様々な異なる経路によって達成され得る。好ましい投与様式は、治療または予防されるべき状態の性質に依存する。投与後に、癌の進行および/または転移を低減し、阻害し、予防するか、または遅延させる量が、有効であるとみなされる。
【0162】
ある特定の実施形態では、投与される量は、腫瘍退縮をもたらすのに十分であり、これは、生存する腫瘍の量を統計上有意な減少、例えば、腫瘍質量の少なくとも50%の減少により、または変化した(例えば、統計上有意に減少した)スキャン寸法により示される。
【0163】
正確な投薬量および治療期間は、治療される疾患の機能であり、公知の試験プロトコールを使用して経験的に、または当該技術分野で公知のモデルシステムにおいて組成物を試験し、それから推定することによって、決定され得る。対照臨床試験がまた、行われてもよい。投薬量はまた、緩和されるべき状態の重症度によって変動し得る。医薬組成物は、一般的に、望ましくない副作用を最小にしながら、治療上有用な効果をもたらすように製剤化され、投与される。組成物は、1回投与されてもよいか、または時間間隔で投与されるべき多数のより小さな用量の数に分割されてもよい。任意の特定の対象のための特定の投与レジメンは、個々の必要に応じて経時的に調整され得る。
【0164】
TNFR2特異的抗体含有組成物は、単独で、または放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光線力学的治療などの他の公知の癌治療と組み合わせて投与されてもよい。組成物はまた、抗生物質と組み合わせて投与されてもよい。
【0165】
したがって、これらおよび関連する医薬組成物を投与する典型的な経路は、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、口腔、直腸、膣、硝子体内、および鼻腔内を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術を含む。ある特定の実施形態による医薬組成物は、その中に含有される有効成分が、患者への組成物の投与の際に生体利用可能となるように製剤される。対象または患者に投与される組成物は、一つまたは複数の投与単位の形態を取ってもよく、例えば、錠剤は、単一投与単位であってもよく、エアロゾル形態の本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体の容器は、複数の投与単位を保持してもよい。このような投薬形態を調製する実際の方法が、公知であるか、または当業者に明らかであろう;例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)を参照のこと。投与されるべき組成物は、いずれにしても、本明細書の教示に従って対象の疾患または状態の治療のため、治療上有効量の、本開示の抗体を含有する。
【0166】
医薬組成物は、固体または液体の形態であってもよい。一実施形態では、担体は、微粒子であり、ゆえに、組成物は、例えば、錠剤または粉末形態である。担体は、液体であってもよく、組成物は、例えば、経口油、注射用液体または例えば、吸入投与に有用であるエアロゾルである。経口投与を意図するとき、医薬組成物は、好ましくは、固体形態または液体形態のいずれかであり、半固体形態、半液体形態、懸濁液形態およびゲル形態は、本明細書において固体または液体のいずれかとみなされる形態に含まれる。
【0167】
経口投与のための固体組成物として、医薬組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、ピル、カプセル、チューインガム、ウエハなどに製剤化され得る。このような固体組成物は、典型的には、一つまたは複数の不活性な希釈剤または食用担体を含有する。加えて、以下のうちの一つまたは複数が存在してもよい:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチンなどの結合剤;デンプン、ラクトースまたはデキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、コーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテックスなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバーなどの香味剤;および着色剤。医薬組成物が、カプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態であるとき、それは、上記のタイプの材料に加えて、ポリエチレングリコールまたはオイルなどの液体担体を含有してもよい。
【0168】
医薬組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、乳液または懸濁液の形態であってもよい。液体は、二つの例として、経口投与または注射による送達のためのものであってもよい。経口投与が意図されるとき、ある特定の組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、保存剤、染料/着色剤およびフレーバー増強剤のうちの一つまたは複数を含有する。注射によって投与されることが意図される組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤および等張化剤のうちの一つまたは複数が、含まれてもよい。
【0169】
液体医薬組成物は、溶液、懸濁液または他の同様の形態であるかどうかに関わらず、以下のアジュバントのうちの一つまたは複数を含み得る:注射用水、生理食塩水溶液、好ましくは、生理学的生理食塩水、リンゲル溶液、等調の塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒体として働き得る合成モノまたはジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒などの無菌の希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧の調製のための薬剤。非経口調製物は、アンプル剤、使い捨てシリンジまたはガラスもしくはプラスチックで作られた複数回用量バイアルに封入することができる。生理食塩水は、例示的なアジュバントである。注射用医薬組成物は、好ましくは、無菌である。
【0170】
非経口投与または経口投与のいずれかを意図する液体医薬組成物は、適当な投薬量が得られるように、本明細書に開示されるTNFR2特異的抗体の量を含有するべきである。典型的には、この量は、組成物中の少なくとも0.01%抗体である。経口投与が意図されるとき、この量は、組成物の重量の0.1~約70%であるように変動され得る。ある特定の経口医薬組成物は、約4%~約75%抗体を含有する。ある特定の実施形態では、医薬組成物および調製物は、非経口投与単位が、希釈前に、0.01~10重量%抗体を含有するように、調製される。
【0171】
医薬組成物は、局所投与が意図されてもよく、この場合、担体は、好適には、溶液、乳液、軟膏またはゲル基材を含み得る。基材は、例えば、以下のうちの一つまたは複数を含んでもよい:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤および安定剤。増粘剤は、局所投与用の医薬組成物に存在してもよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオン導入装置を含み得る。医薬組成物は、例えば、直腸内で溶解し、薬剤を放出する、座薬の形態の、直腸投与が意図されてもよい。直腸投与用組成物は、適当な非刺激性賦形剤として油性基材を含有してもよい。このような基材は、ラノリン、ココアバターおよびポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0172】
医薬組成物は、固体または液体の投与単位である物理的形態を改変する、様々な物質を含んでもよい。例えば、組成物は、有効成分の周りにコーティングシェルを形成する物質を含んでもよい。コーティングシェルを形成する物質は、典型的には、不活性であり、例えば、糖、シェラック、および他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、有効成分は、ゼラチンカプセルに封入されてもよい。固体または液体形態の医薬組成物は、抗体に結合し、これにより、化合物の送達を支援する薬剤を含んでもよい。この能力で作用し得る適当な薬剤は、他のモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、一つまたは複数のタンパク質またはリポソームを含む。医薬組成物は、エアロゾルとして投与され得る投与単位から本質的になり得る。エアロゾルという用語は、コロイド状の性質のものから加圧パッケージからなるシステムまで、様々なシステムを示すために使用される。送達は、液化ガスもしくは圧縮ガスによって、または有効成分を分注する適当なポンプシステムによって行われ得る。エアロゾルは、有効成分を送達するために、単相、二相、または三相系で送達され得る。エアロゾルの送達は、キットを一緒になって形成し得る、必要な容器、活性化剤、弁、サブ容器などを含む。当業者は、過度の実験をすることなく、好ましいエアロゾルを決定し得る。
【0173】
医薬組成物は、医薬分野で周知の方法論によって調製されてもよい。例えば、注射により投与されることを意図された医薬組成物は、本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体ならびに任意選択で、塩、緩衝液および/または安定剤のうちの一つまたは複数を含む組成物を、溶液を形成するための無菌の蒸留水と組み合わせることによって調製することができる。界面活性剤を加えて、均一な溶液または懸濁液の形成が促進されてもよい。界面活性剤は、水性送達系における抗体の溶解または均一な懸濁を促進するために、抗体組成物と非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0174】
組成物は、利用される特定の化合物(例えば、TNFR2特異的抗体)の活性;化合物の代謝安定性および作用の長さ;患者の年齢、体重、健康全般、性別、および食事;投与様式および投与時間;排泄の割合;薬剤の組み合わせ;特定の障害または状態の重症度;ならびに治療を受けている対象を含む、様々な因子に依存して変動する、治療上有効量で投与され得る。一般的に、治療上有効な1日用量は、(70kgの哺乳動物について)約0.001mg/kg(すなわち、0.07mg)~約100mg/kg(すなわち、7.0g)であり、好ましくは、治療上有効な用量は、(70kgの哺乳動物について)約0.01mg/kg(すなわち、0.7mg)~約50mg/kg(すなわち、3.5g)であり、より好ましくは、治療上有効な用量は、(70kgの哺乳動物について)約1mg/kg(すなわち、70mg)~約25mg/kg(すなわち、1.75g)である。
【0175】
本開示のTNFR2特異的抗体を含む組成物は、一つまたは複数の他の治療剤の投与と同時、前、または後に投与されてもよい。このような併用療法は、抗体および一つまたは複数の追加の有効な薬剤を含有する、単一の医薬投与製剤の投与、ならびに本開示の抗体を含む組成物およびそれ自体別個の医薬投与製剤のそれぞれの有効な薬剤の投与を含み得る。例えば、本明細書に記載される抗体および他の有効な薬剤は、錠剤またはカプセルなどの単一の経口投与組成物で一緒に患者に投与されてもよいか、またはそれぞれの薬剤が、別個の経口投与製剤で投与されてもよい。同様に、本明細書に記載される抗体および他の有効な薬剤は、生理食塩水溶液または他の生理的に許容可能な溶液中などの単一の非経口投与組成物で一緒に患者に投与することができるか、またはそれぞれの薬剤は、別個の非経口投与製剤で投与することができる。別個の投与製剤が使用される場合、抗体および一つまたは複数の追加の有効な薬剤を含む組成物は、本質的に同時に、すなわち、同時に、または別々に差のある時間で、すなわち、順次および任意の順で投与することができ、併用療法は、これらのレジメンすべてを含むことは、理解される。
【0176】
したがって、ある特定の実施形態では、一つまたは複数の他の治療剤と組み合わせた本開示の抗TNFR2抗体組成物の投与がまた、企図される。このような治療剤は、関節リウマチ、炎症または癌などの、本明細書に記載される特定の疾患状態の標準治療として当該技術分野で許容され得る。企図される例示的な治療剤は、サイトカイン、成長因子、ステロイド、NSAID、DMD、抗炎症剤、化学療法剤、放射線治療剤、または他の有効な薬剤および補助剤を含む。
【0177】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される抗TNFR2抗体は、一つまたは複数の癌免疫療法剤と組み合わせて投与される。ある特定の場合では、免疫療法剤は、例えば、癌に関連する免疫応答または癌特異的免疫応答を増加させるか、または維持するために、対象の免疫応答を調節し、これにより、免疫細胞阻害の増加または癌細胞の低減をもたらす。例示的な免疫療法剤は、ポリペプチド、例えば、抗体およびその抗原結合フラグメント、リガンド、および小ペプチド、ならびにそれらの混合物を含む。また、免疫療法剤としては、小分子、細胞(例えば、T細胞などの免疫細胞)、様々な癌ワクチン、腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルス剤を含む、遺伝子療法または他のポリヌクレオチドベースの薬剤、および当該技術分野で公知の他のものが挙げられる。したがって、ある特定の実施形態では、癌免疫療法剤は、免疫チェックポイント調節剤、癌ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、サイトカイン、および細胞ベースの免疫療法剤のうちの一つまたは複数から選択される。
【0178】
ある特定の実施形態では、癌免疫療法剤は、免疫チェックポイント調節剤である。具体的な例としては、一つまたは複数の阻害性免疫チェックポイント分子の「アンタゴニスト」、および一つまたは複数の刺激性免疫チェックポイント分子の「アゴニスト」が挙げられる。一般的に、免疫チェックポイント分子は、シグナル(共刺激分子)を上向きにするか、またはシグナルを下向きにする、免疫系の要素であり、癌細胞が、免疫チェックポイント分子の天然の機能を妨害し得るので、その標的化は、癌における治療能力を有する(例えば、Sharma and Allison,Science.348:56-61,2015;Topalian et al.,Cancer Cell.27:450-461,2015;Pardoll,Nature Reviews Cancer.12:252-264,2012を参照のこと)。一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節剤(例えば、アンタゴニスト、アゴニスト)は、本明細書に記載される一つまたは複数の免疫チェックポイント分子に「結合する」か、または「特異的に結合する」。
【0179】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節剤は、一つまたは複数の阻害剤性免疫チェックポイント分子のアンタゴニストまたは阻害剤である。例示的な阻害性免疫チェックポイント分子は、プログラム死リガンド1(PD-L1)、プログラム死リガンド2(PD-L2)、プログラム死1(PD-1)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)、CD160、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、ならびにシグナル制御性タンパク質α(SIRPα)を含む。
【0180】
ある特定の実施形態では、薬剤は、PD-1(受容体)アンタゴニストまたは阻害剤であり、この標的化は、腫瘍環境中の免疫機能を回復させることが示されている(例えば、Phillips et al.,Int Immunol.27:39-46,2015を参照のこと)。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、T細胞およびプロB細胞上に発現される細胞表面受容体である。PD-1は、二つのリガンドであるPD-L1およびPD-L2と相互作用する。PD-1は、例えば、T細胞の活性化を低減するか、または妨げ、次に、自己免疫を低減し、自己寛容を促進する、阻害性免疫チェックポイント分子として機能する。PD-1の阻害効果は、リンパ節における抗原特異的T細胞におけるアポトーシスを促進する一方で、制御性T細胞(サプレッサーT細胞)におけるアポトーシスをまた低減する二重機序を通じて少なくとも部分的に達成される。PD-1アンタゴニストまたは阻害剤の一部の例は、PD-1に特異的に結合し、その免疫抑制活性、例えば、その下流シグナル伝達またはPD-L1とのその相互作用のうちの一つまたは複数を低減する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。PD-1アンタゴニストまたは阻害剤の具体例は、抗体ニボルマブ、ペムブロリズマブ、PDR001、MK-3475、AMP-224、AMP-514、およびピディリズマブ、ならびにその抗原結合フラグメントを含む(例えば、米国特許第8,008,449号;第8,993,731号;第9,073,994号;第9,084,776号;第9,102,727号;第9,102,728号;第9,181,342号;第9,217,034号;第9,387,247号;第9,492,539号;第9,492,540号;および米国出願第2012/0039906号;第2015/0203579号を参照のこと)。
【0181】
一部の実施形態では、薬剤は、PD-L1アンタゴニストまたは阻害剤である。上述のように、PD-L1は、PD-1受容体の天然リガンドの一つである。PD-L1アンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、PD-L1に特異的に結合し、その免疫抑制活性、例えば、PD-1受容体へのその結合のうちの一つまたは複数を低減する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。PD-L1アンタゴニストの具体例は、抗体アテゾリズマブ(MPDL3280A)、アベルマブ(MSB0010718C)、およびデュルバルマブ(MEDI4736)、ならびにその抗原結合フラグメントを含む(例えば、米国特許第9,102,725号;第9,393,301号;第9,402,899号;第9,439,962号を参照のこと)。
【0182】
一部の実施形態では、薬剤は、PD-L2アンタゴニストまたは阻害剤である。上述のように、PD-L2は、PD-1受容体の天然リガンドの一つである。PD-L2アンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、PD-L2に特異的に結合し、その免疫抑制活性、例えば、PD-1受容体へのその結合のうちの一つまたは複数を低減する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。
【0183】
ある特定の実施形態では、薬剤は、VISTAアンタゴニストまたは阻害剤である。VISTAは、およそ50kDaのサイズであり、免疫グロブリンスーパーファミリー(一つのIgVドメインを有する)およびB7ファミリーに属する。これは、白血球で主に発現し、その転写は、p53によって部分的に制御される。VISTAが、T細胞上のリガンドと受容体の両方として作用して、T細胞エフェクター機能を阻害し、末梢寛容を維持し得るという証拠が存在する。VISTAは、骨髄系由来サプレッサー細胞および制御性T細胞などの、腫瘍浸潤性リンパ球において高レベルで産生され、抗体でのその遮断は、メラノーマおよび扁平上皮癌のマウスモデルにおいて腫瘍成長の遅延をもたらす。例示的な抗VISTAアンタゴニスト抗体は、例えば、国際公開第2018/237287号に記載される抗体を含み、これは、参照によりその全体が取り込まれる。
【0184】
一部の実施形態では、薬剤は、CTLA-4アンタゴニストまたは阻害剤である。CD152(分化152のクラスター)としても知られる、CTLA4またはCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、例えば、これが、抗原提示細胞の表面上でCD80またはCD86に結合したとき、阻害シグナルをT細胞に伝達することによって、阻害性免疫チェックポイント分子として機能するタンパク質受容体である。CTLA-4アンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、CTLA-4に特異的に結合する抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。具体例としては、抗体イピリムマブおよびトレメリムマブ、ならびにその抗原結合フラグメントが挙げられる。イピリムマブの少なくとも一部の活性は、CTLA-4を発現する抑制因子Tregの抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)殺傷によって仲介されると考えられている。
【0185】
一部の実施形態では、薬剤は、IDOアンタゴニストもしくは阻害剤、またはTDOアンタゴニストもしくは阻害剤である。IDOおよびTDOは、免疫阻害特性を有するトリプトファン異化酵素である。例えば、IDOは、T細胞およびNK細胞を抑制し、Tregおよび骨髄系由来サプレッサー細胞を生成し、活性化し、腫瘍血管新生を促進することが知られている。IDOおよびTDOアンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、IDOまたはTDOに特異的に結合し(例えば、Platten et al.,Front
Immunol.5:673,2014を参照)、一つまたは複数の免疫抑制活性を低減するか、または阻害する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。IDOアンタゴニストまたは阻害剤の具体例は、インドキシモド(NLG-8189)、1-メチル-トリプトファン(1MT)、β-カルボリン(ノルハーマン;9H-ピリド[3,4-b]インドール)、ロスマリン酸、およびエパカドスタットを含む(例えば、Sheridan,Nature Biotechnology.33:321-322,2015を参照のこと)。TDOアンタゴニストまたは阻害剤の具体例は、680C91およびLM10を含む(例えば、Pilotte et al.,PNAS USA.109:2497-2502,2012を参照のこと)。
【0186】
一部の実施形態では、薬剤は、TIM-3アンタゴニストまたは阻害剤である。T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)は、活性化ヒトCD4+T細胞上で発現され、Th1およびTh17サイトカインを調節する。TIM-3はまた、そのリガンドであるガレクチン-9との相互作用の際に細胞死を引き起こすことによって、Th1/Tc1機能の負の調節因子としても作用する。TIM-3は、抑制性腫瘍微小環境に関与し、その過剰発現は、様々な癌における不良な予後と関連する(例えば、Li et al.,Acta Oncol.54:1706-13,2015を参照のこと)。TIM-3アンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、TIM-3に特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの一つまたは複数を低減するか、または阻害する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。
【0187】
一部の実施形態では、薬剤は、LAG-3アンタゴニストまたは阻害剤である。リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、および形質細胞様樹状細胞上で発現される。これは、T細胞の細胞増殖、活性化、およびホメオスタシスを、CTLA-4およびPD-1と同様の様式で負に調節し(例えば、Workman and Vignali.European Journal of Immun.33:970-9,2003;およびWorkman et al.,Journal of Immun.172:5450-5,2004を参照のこと)、Treg抑制機能において役割を果たすことが報告されている(例えば、Huang et al.,Immunity.21:503-13,2004を参照のこと)。LAG3はまた、CD8+T細胞を免疫寛容原性状態で維持し、PD-1と組み合わせて、CD8 T細胞枯渇を維持する。LAG-3アンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、LAG-3に特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの一つまたは複数を阻害する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。具体例としては、抗体BMS-986016、およびその抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0188】
一部の実施形態では、薬剤は、BTLAアンタゴニストまたは阻害剤である。BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA;CD272)発現は、T細胞の活性化中に誘導され、腫瘍壊死ファミリー受容体(TNF-R)およびB7細胞表面受容体ファミリーとの相互作用を介してT細胞を阻害する。BTLAは、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)としても知られる、腫瘍壊死因子(受容体)スーパーファミリーのメンバー14(TNFRSF14)のリガンドである。BTLA-HVEM複合体は、例えば、ヒトCD8+癌特異的T細胞の機能を阻害することによって、T細胞免疫応答を負に調節する(例えば、Derre et al.,J Clin Invest 120:157-67,2009を参照)。BTLAアンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、BTLA-4に特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの一つまたは複数を低減する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。
【0189】
一部の実施形態では、薬剤は、HVEMアンタゴニストまたは阻害剤であり、例えば、HVEMに特異的に結合し、BTLAまたはCD160とのその相互作用と干渉するアンタゴニストまたは阻害剤である。HVEMアンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、HVEMに特異的に結合し、任意選択で、HVEM/BTLAおよび/またはHVEM/CD160相互作用を低減し、これにより、HVEMの免疫抑制活性の一つまたは複数を低減する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。
【0190】
一部の実施形態では、薬剤は、CD160アンタゴニストまたは阻害剤であり、例えば、CD160に特異的に結合し、HVEMとのその相互作用と干渉するアンタゴニストまたは阻害剤である。CD160アンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、CD160に特異的に結合し、任意選択で、CD160/HVEM相互作用を低減し、これにより、免疫抑制活性の一つまたは複数を低減するか、または阻害する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む。
【0191】
一部の実施形態では、薬剤は、TIGITアンタゴニストまたは阻害剤である。T細胞IgおよびITIMドメイン(TIGIT)は、様々なリンパ球系細胞の表面で見られ、例えば、Tregを介して抗腫瘍免疫を抑制する、共阻害性受容体である(Kurtulus et al.,J Clin Invest.125:4053-4062,2015)。TIGITアンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、TIGITに特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの一つまたは複数を低減する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む(例えば、Johnston et al.,Cancer Cell.26:923-37,2014を参照のこと)。
【0192】
ある特定の実施形態では、薬剤は、SIRPαアンタゴニストまたは阻害剤である。SIRPαは、広く発現される膜貫通型タンパク質CD47と相互作用して、宿主細胞食作用などの自然免疫細胞のエフェクター機能を負に制御する、主に骨髄細胞によって発現される調節性膜糖タンパク質である。ある特定の癌細胞は、例えば、CD47を過剰発現することによって、阻害性SIRPα-CD47シグナル伝達経路を活性化し、これにより、マクロファージ介在性食作用を阻害する。SIRPα阻害剤は、単独で、および他の癌治療との相乗効果で、癌成長および転移を低減することが示されている(例えば、Yanagita,JCI Insight.2017 Jan 12;2(1):e89140を参照のこと)。SIRPαアンタゴニストまたは阻害剤の一般的な例は、SIRPαに特異的に結合し、SIRPα-CD47シグナル伝達と干渉する、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子を含む(Id.を参照)。
【0193】
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント調節剤は、一つまたは複数の刺激性免疫チェックポイント分子のアゴニストである。例示的な刺激性免疫チェックポイント分子は、CD40、OX40、グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、CD137(4-1BB)、CD27、CD28、CD226、およびヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)を含む。
【0194】
一部の実施形態では、薬剤は、CD40アゴニストである。CD40は、抗原提示細胞(APC)および一部の悪性腫瘍で発現される。そのリガンドは、CD40L(CD154)である。APCでは、ライゲーションは、共刺激性分子の上方制御をもたらし、これにより、抗腫瘍免疫応答におけるT細胞支援の必要性を潜在的にバイパスする。CD40アゴニスト療法は、APC成熟および腫瘍からリンパ節へのそれらの遊走において重要な役割を果たし、これにより、抗原提示の上昇およびT細胞活性化の増加をもたらす。抗CD40アゴニスト抗体は、動物モデルにおいて実質的な応答および持続的な抗癌免疫を生じ、これは、細胞傷害性T細胞によって少なくとも部分的に仲介される効果である(例えば、Johnson et al.Clin Cancer Res.21:1321-1328,2015;およびVonderheide and Glennie,Clin Cancer Res.19:1035-43,2013を参照のこと)。CD40アゴニストの一般的な例は、CD40に特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンドを含む。具体例としては、CP-870,893、ダセツズマブ、Chi Lob
7/4、ADC-1013、CD40L、rhCD40L、およびその抗原結合フラグメントが挙げられる。CD40アゴニストの具体例は、APX005(例えば、米国公開第2012/0301488号を参照のこと)およびAPX005M(例えば、米国公開第2014/0120103号を参照のこと)を含むが、これらに限定されない。
【0195】
一部の実施形態では、薬剤は、OX40アゴニストである。OX40(CD134)は、エフェクターおよびメモリーT細胞の拡大を促進し、T制御性細胞の分化および活性を抑制する(例えば、Croft et al.,Immunol Rev.229:173-91,2009を参照のこと)。そのリガンドは、OX40L(CD252)である。OX40シグナル伝達は、T細胞活性化と生存の両方に影響を与えるため、リンパ節における抗腫瘍免疫応答の開始、および腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答の維持において重要な役割を果たす。OX40アゴニストの一般的な例は、OX40に特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンドを含む。具体例としては、OX86、OX-40L、Fc-OX40L、GSK3174998、MEDI0562(ヒト化OX40アゴニスト)、MEDI6469(マウスOX40アゴニスト)、およびMEDI6383(OX40アゴニスト)、ならびにその抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0196】
一部の実施形態では、薬剤は、GITRアゴニストである。グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)は、T細胞拡大を増加させ、Tregの抑制性活性を阻害し、Tエフェクター細胞の生存を延長する。GITRアゴニストは、Treg系統の安定性の喪失を通して抗腫瘍応答を促進することが示されている(例えば、Schaer et al.,Cancer Immunol Res.1:320-31,2013を参照)。これらの多様な機序は、GITRが、リンパ節における免疫応答の開始および腫瘍組織における免疫応答の維持において重要な役割を果たすことを示す。そのリガンドは、GITRLである。GITRアゴニストの一般的な例は、GITRに特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンドを含む。具体例としては、INCAGN01876、DTA-1、MEDI1873、およびその抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0197】
一部の実施形態では、薬剤は、CD137アゴニストである。CD137(4-1BB)は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーであり、CD137の架橋結合は、T細胞増殖、IL-2分泌、生存、および細胞溶解活性を増強する。CD137仲介性シグナル伝達はまた、活性化誘導性細胞死からCD8+T細胞などのT細胞を保護する。CD137アゴニストの一般的な例は、CD137に特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンドを含む。具体例としては、CD137(または4-1BB)リガンド(例えば、Shao and Schwarz,J Leukoc Biol.89:21-9,2011を参照のこと)およびその抗原結合フラグメントを含む、抗体ウトミルマブが挙げられる。
【0198】
一部の実施形態では、薬剤は、CD27アゴニストである。CD27の刺激は、ナイーブT細胞の抗原特異的拡大を増加させ、T細胞メモリーおよびT細胞免疫の長期維持に関与する。そのリガンドは、CD70である。アゴニスト抗体を用いたヒトCD27の標的化は、T細胞活性化および抗腫瘍免疫を刺激する(例えば、Thomas et al.,Oncoimmunology.2014;3:e27255.doi:10.4161/onci.27255;およびHe et al .,J Immunol.191:4174-83,2013を参照)。CD27アゴニストの一般的な例は、CD27に特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンドを含む。具体例としては、CD70ならびにその抗原結合フラグメントを含む、抗体のワリルマブおよびCDX-1127(1F5)が挙げられる。
【0199】
一部の実施形態では、薬剤は、CD28アゴニストである。CD28は、恒常的に発現したCD4+T細胞、一部のCD8+T細胞である。そのリガンドは、CD80およびCD86を含み、その刺激は、T細胞拡大を増加させる。CD28アゴニストの一般的な例は、CD28に特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンドを含む。具体例としては、CD80、CD86、抗体TAB08、およびその抗原結合フラグメントが挙げられる。
【0200】
一部の実施形態では、薬剤は、CD226アゴニストである。CD226は、TIGITとリガンドを共有する刺激受容体であり、TIGITとは反対に、CD226の会合は、T細胞活性化を増強する(例えば、Kurtulus et al.,J Clin Invest.125:4053-4062,2015;Bottino et al.,J Exp Med.1984:557-567,2003;およびTahara-Hanaoka et al.,Int Immunol.16:533-538,2004を参照のこと)。CD226アゴニストの一般的な例は、CD226に特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンド(例えば、CD112、CD155)を含む。
【0201】
一部の実施形態では、薬剤は、HVEMアゴニストである。腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14(TNFRSF14)としても知られる、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)は、TNF受容体スーパーファミリーのヒト細胞表面受容体である。HVEMは、T細胞、APC、および他の免疫細胞を含む様々な細胞上で見られる。他の受容体とは異なり、HVEMは、静止T細胞上において高レベルで発現され、活性化の際に下方制御される。HVEMシグナル伝達は、T細胞活性化の早期段階およびリンパ節における腫瘍特異的リンパ球集団の拡大において重要な役割を果たすことが示されている。HVEMアゴニストの一般的な例は、HVEMに特異的に結合し、その免疫刺激性活性のうちの一つまたは複数を増加させる、抗体もしくは抗原結合フラグメントまたは小分子もしくはリガンドを含む。
【0202】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される抗TNFR2抗体は、一つまたは複数の二重特異性抗体または多特異性抗体と組み合わせて投与される。例えば、ある特定の二重特異性抗体または多特異性抗体は、(i)一つまたは複数の阻害性免疫チェックポイント分子に結合し、阻害することができ、(ii)一つまたは複数の刺激性免疫チェックポイント分子に結合し、刺激することができる。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体または多特異性抗体は、(i)PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、IDO、TDO、TIM-3、LAG-3、BTLA、CD160、および/またはTIGITの一つまたは複数に結合し、阻害し、また(ii)CD40、OX40グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、CD137(4-1BB)、CD27、CD28、CD226、および/またはヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)の一つまたは複数に結合し、刺激する。
【0203】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗TNFR2抗体は、一つまたは複数の癌ワクチンと組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、癌ワクチンは、オンコファージ、ヒトパピローマウイルスHPVワクチン、任意選択で、ガーダシルもしくはサーバリックス、肝炎Bワクチン、任意選択で、Engerix-B、Recombivax HB、もしくはTwinrix、およびシプロイセルT(Provenge)のうちの一つまたは複数から選択されるか、またはヒトHer2/neu、Her1/EGF受容体(EGFR)、Her3、A33抗原、B7H3、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23(IgE受容体)、MAGE-3、C242抗原、5T4、IL-6、IL-13、血管内皮増殖因子VEGF(例えば、VEGF-A)VEGFR-1、VEGFR-2、CD30、CD33、CD37、CD40、CD44、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CD152、CD200、CD221、CCR4、HLA-DR、CTLA-4、NPC-1C、テネイシン、ビメンチン、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、アルファ-フェトプロテイン、インスリン様成長因子1(IGF-1)、炭酸脱水酵素9(CA-IX)、癌胎児抗原(CEA)、グアニリルシクラーゼC、NY-ESO-1、p53、サバイビン、インテグリンαvβ3、インテグリンα5β1、葉酸受容体1、膜貫通型糖タンパク質NMB、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)、糖タンパク質75、TAG-72、MUC1、MUC16(もしくはCA-125)、ホスファチジルセリン、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、NR-LU-13抗原、TRAIL-R1、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10BもしくはTRAIL-R2)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、EGP40汎癌腫抗原、B細胞活性化因子(BAFF)、血小板由来成長因子受容体、糖タンパク質EpCAM(17-1A)、プログラム死1、タンパク質ジスルフィド異性化酵素(PDI)、再生肝のホスファターゼ3(PRL-3)、前立腺酸性ホスファターゼ、ルイスY抗原、GD2(神経外胚葉性起源の腫瘍上で発現したジシアロガングリオシド)、グリピカン3(GPC3)、およびメソテリンのうちの一つまたは複数から選択される癌抗原を含む。
【0204】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗TNFR2抗体は、一つまたは複数の腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて投与される。一部の実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、タリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)、コクサッキーウイルスA21(CAVATAK(商標))、オンコリン(H101)、ペラレオレプ(REOLYSIN(登録商標))、セネカバレーウイルス(NTX-010)、セネカウイルスSVV-001、ColoAd1、SEPREHVIR(HSV-1716)、CGTG-102(Ad5/3-D24-GMCSF)、GL-ONC1、MV-NIS、およびDNX-2401のうちの一つまたは複数から選択される。
【0205】
ある特定の実施形態では、癌免疫療法剤は、サイトカインである。例示的なサイトカインは、インターフェロン(IFN)-α、IL-2、IL-12、IL-7、IL-21、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。
【0206】
ある特定の実施形態では、癌免疫療法剤は、細胞ベースの免疫療法、例えば、T細胞ベースの養子免疫療法である。一部の実施形態では、細胞ベースの免疫療法は、癌抗原特異的T細胞、任意選択的で、ex vivo由来T細胞を含む。一部の実施形態では、癌抗原特異的T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)介在性T細胞、およびT細胞受容体(TCR)介在性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ならびにペプチド誘導性T細胞のうちの一つまたは複数から選択される。特定の実施形態では、CAR修飾T細胞は、CD-19に対して標的化される(例えば、Maude et al.,Blood.125:4017-4023,2015を参照のこと)。
【0207】
一部の実施形態では、本明細書において開示される抗TNFR2抗体は、養子免疫療法、例えば、自己免疫療法の一部として使用される。したがって、ある特定の実施形態は、それを必要とする患者において癌を治療する方法を含み、当該方法は、
【0208】
(a)ex vivoで誘導された免疫細胞を、本明細書に記載される、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントとインキュベートすること;および
【0209】
(b)自己免疫細胞を患者に投与することを含む。
【0210】
ある場合では、ex vivoで誘導された免疫細胞は、治療されるべき患者から得られた、自己細胞である。一部の実施形態では、自己免疫細胞は、リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、および/または樹状細胞(DC)を含む。一部の実施形態では、リンパ球は、T細胞、任意選択で、細胞傷害Tリンパ球(CTL)を含む。養子T細胞およびNK細胞免疫療法の説明については、例えば、June,J Clin
Invest.117:1466-1476,2007;Rosenberg and
Restifo,Science.348:62-68,2015;Cooley et al.,Biol.of Blood and Marrow Transplant.13:33-42,2007;およびLi and Sun,Chin J Cancer Res.30:173-196,2018を参照されたい。一部の実施形態では、T細胞は、本明細書に記載される少なくとも一つの「癌抗原」に対して向けられた、癌抗原特異的T細胞を含む。ある特定の実施形態では、抗TNFR2抗体、またはその抗原結合フラグメントは、養子で伝達される免疫細胞の有効性を増強する。
【0211】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される抗TNFR2抗体は、任意の数の化学療法剤と併せて投与されてもよい。化学療法剤の例としては、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾデパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレントリホスファオラミドおよびトリメチルオロメラミンを含む、エチレンイミンおよびメチルアメラミン;クロラムブチル、クロルナファジン、クロロホスファオミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスウレア;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシンs、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン;エリプチニウムアセテート;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2、2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(タクソール(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドキセタクエセル(タキソテール(登録商標)、Rhne-Poulenc Rorer、Antony、France);クロラムブチル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロミチン(DMFO);Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)などのレチノイン酸誘導体;ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体が、挙げられる。この定義において、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(ファルセトン)を含む、抗エストロゲンなどの、腫瘍へのホルモン作用を調節するか、または阻害するよう作用する、抗ホルモン剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体もまた、含まれる。
【0212】
様々な他の治療剤が、本明細書に記載される抗TNFR2抗体と共に使用されてもよい。一部の実施形態では、抗体は、抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤または薬剤は、ステロイドおよびグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミドおよびミコフェノレートを含む、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDS)を含むが、これらに限定されない。
【0213】
例示的なNSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセン ナトリウム、VIOXX(登録商標)(ロフェコキシブ)およびCELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)などのCox-2阻害剤、ならびにシアル酸付加物からなる群から選択される。例示的な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、オキシコドン、プロポルキシフェン塩酸塩のトラマドールからなる群から選択される。例示的なグルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、またはプレドニゾンからなる群から選択される。例示的な生物学的応答調節因子は、細胞表面マーカー(例えば、CD4、CD5など)に対して向けられた分子、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))およびインフリキシマブ(レミケード(登録商標))などのサイトカイン阻害剤、ケモカイン阻害剤ならびに接着分子阻害剤を含む。生物学的応答調節因子は、モノクローナル抗体ならびに組み換え形態の分子を含む。例示的なDMARDは、アザチオプリン、シクロホスファミド、サイクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)および筋肉内)ならびにミノサイクリンを含む。
【0214】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、サイトカインと併せて投与される。本明細書で使用される場合、「サイトカイン」とは、細胞間メディエーターとして別の細胞上に作用する一つの細胞集団によって放出されるタンパク質の総称を意味する。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および古典的ポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子アルファおよびベータ;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-ベータなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGF-アルファおよびTGF-ベータなどのトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子IおよびII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導性因子;インターフェロン-アルファ、ベータ、およびガンマなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF);および顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-15などのインターロイキン(IL)、TNF-アルファまたはTNF-ベータなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む、他のポリペプチド因子が、含まれる。本明細書で使用される場合、サイトカインという用語は、天然源または組み換え細胞培養由来のタンパク質、および天然の配列のサイトカインの生物学的に活性な均等物を含む。
【0215】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体を含む組成物は、非限定的に、癌、炎症性疾患、および自己免疫疾患を含む、本明細書に記載される疾患に罹患した個体に投与される。癌は、とりわけ、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、膵臓、結腸、胃腸、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣、子宮頸部、乳房、肺、上咽頭の癌腫、および悪性黒色腫を含むが、これらに限定されない。したがって、ある特定の実施形態は、本明細書に記載される組成物を患者に投与し、これにより、癌を治療することを含む、癌を有する患者を治療する方法を含む。一部の実施形態では、癌は、異常なTNFR2発現および/またはTNFR2アンタゴニスト介在性免疫抑制と関連する。ある特定の実施形態では、癌の治療において使用するための抗体は、TNFR2アンタゴニストである。
【0216】
一部の実施形態では、炎症性疾患または自己免疫疾患は、異常なTNFR2発現と関連する。一部の実施形態では、炎症性疾患または自己免疫疾患は、TNFR2アゴニスト介在性免疫活性化と関連する。例示的な自己免疫疾患は、関節炎(関節リウマチ、反応性関節炎を含む)、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬および炎症性腸疾患(IBD)、脳脊髄炎、ぶどう膜炎、重症筋無力症、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、アジソン病、セリアック病、慢性疲労性症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性脱毛症、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群、川崎病、甲状腺機能亢進症/グレーブス病、甲状腺機能低下症/橋本病、子宮内膜症、強皮症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ギランバレー症候群、ウェゲナー病、糸球体腎炎、再生不良性貧血(複数回輸血した再生不良性貧血患者を含む)、発作性夜間血色素尿症、骨髄異形成症候群、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、エヴァンズ症候群、第VIII因子インヒビター症候群、全身性脈管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎およびリウマチ熱、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性水疱性類天疱瘡、パーキンソン病、サルコイドーシス、白斑、原発性胆汁性肝硬変、ならびに自己免疫性心筋炎を含むが、これらに限定されない。
【0217】
例示的な炎症性疾患は、クローン病、大腸炎、皮膚炎、乾癬、憩室炎、肝炎、過敏性腸症候群(IBS)、エリテマトーデス、腎炎、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病、関節炎、関節リウマチ、喘息、ならびにアテローム性動脈硬化症および脈管炎などの様々な心血管疾患を含むが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、炎症性疾患は、関節リウマチ、糖尿病、痛風、クリオピリン関連周期性症候群、および慢性閉塞性肺障害からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療において使用するための抗体は、TNFR2アゴニストである。
【0218】
例えば、ある特定の実施形態は、それを必要とする患者に、治療上有効量の、アゴニスト抗TNFR2抗体を含む本明細書において開示される組成物を投与することによって、炎症性疾患を治療するか、または炎症性疾患の重症度を低減する方法を提供する。一部の実施形態は、それを必要とする患者に、治療上有効量の、アゴニスト抗TNFR2抗体を含む本明細書において開示される組成物を投与することによって、移植片対宿主病を治療するか、移植片対宿主病の重症度を低減するか、または移植片対宿主病を予防する方法を提供する。一部の実施形態は、それを必要とする患者に、治療上有効量の、アゴニスト抗TNFR2抗体を含む本明細書において開示される組成物を投与することによって、移植片拒絶を治療するか、移植片拒絶の重症度を低減するか、または移植片拒絶を予防する方法を提供する。
【0219】
ある特定の実施形態は、それを必要とする患者に、治療上有効量の、アゴニスト抗TNFR2抗体を含む本明細書において開示される組成物を投与することによって、感染症を治療するか、感染症の重症度を低減するか、または感染症を予防する方法を提供する。感染症は、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、任意選択で、酵母感染症、および原虫感染を含むが、これらに限定されない。
【0220】
ヒト疾患の治療のためのin vivo使用のため、本明細書に記載される抗体は、一般的に、投与前に、医薬組成物に取り込まれる。医薬組成物は、本明細書に記載される抗体のうちの一つまたは複数を、本明細書の他の箇所に記載される生理的に許容可能な担体または賦形剤と組み合わせて含む。医薬組成物を調製するために、有効量の一つまたは複数の化合物は、特定の投与様式に適当であることが当業者に公知の任意の医薬担体または賦形剤と混合される。医薬担体は、液体、半液体または固体であってもよい。非経口、皮内、皮下または局所適用のため使用される溶液または懸濁液は、例えば、無菌の希釈剤(例えば、水)、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗微生物剤(例えば、ベンジルアルコールおよびメチルパラベン);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸および亜硫酸ナトリウム)ならびにキレート剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA));緩衝液(例えば、酢酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩)を含んでもよい。静脈内投与される場合、適当な担体は、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびその混合物などの増粘剤および可溶化剤を含有する溶液を含む。
【0221】
本明細書に記載されるTNFR2特異的抗体を含む組成物は、時間放出製剤またはコーティングなどの、身体からの迅速な除去に対して抗体を保護する担体を用いて調製されてもよい。このような担体は、非限定的に、インプラントおよびマイクロカプセル送達システムなどの制御放出製剤、ならびにエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸および当業者に公知の他のものなどの生分解性の生体適合性ポリマーを含む。
【0222】
TNFR2に結合する抗体を用いた治療方法が、本明細書において提供される。一実施形態では、本開示の抗体は、例えば、存在するタンパク質の量、もしくは変異タンパク質の存在、または両方の変更(例えば、統計上有意な増加もしくは減少)に起因する、異常なTNFR2発現または活性によって特徴付けられる疾患および障害を含むことを、本開示の文脈において意味する、不適切な発現のTNFR2に関与する疾患を有する患者に投与される。過剰は、非限定的に、通常、検出可能であるものと比べて、TNFR2の分子レベルでの過剰発現、作用部位での長期もしくは蓄積した出現、または増加した(例えば、統計上有意な様式で)活性を含む、任意の原因に起因し得る。このようなTNFR2の過剰は、TNFR2シグナル伝達現象の正常な発現、出現、または活性と比べて測定することができ、当該測定は、本明細書に記載される抗体の開発および/または臨床試験において重要な役割を果たし得る。
【0223】
特に、本抗体は、TNFR2の発現または過剰発現と関連する癌を含む、様々な癌の治療に有用である。例えば、ある特定の実施形態は、癌患者に、治療上有効量の本明細書において開示されるTNFR2特異的抗体を投与することによって、非限定的に、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、膵臓、結腸、胃腸、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣、子宮頸部、乳房、肺、上咽頭の癌腫、および悪性黒色腫を含む、癌の治療方法を提供する。投与後に、統計上に有意な様式(すなわち、当業者に公知である適切な対照と比べて)で、癌の進行および/または転移を阻害するか、予防するか、または遅延させる量が、有効であるとみなされる。
【0224】
一部の実施形態は、癌患者に、治療上有効量の本明細書において開示されるTNFR2特異的抗体(例えば、投与後に、すなわち、当業者に公知である適切な対照と比べて、統計上有意な様式で、癌の転移を阻害するか、予防するか、または遅延させる量)を投与することによって、非限定的に、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、膵臓、結腸、胃腸、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣、子宮頸部、乳房、肺、上咽頭の癌腫、および悪性黒色腫を含む、癌の転移を低減するか、または予防する方法を提供する。
【0225】
一部の実施形態は、癌患者に、治療上有効量の本明細書において開示されるTNFR2特異的抗体を投与することによって、非限定的に、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、膵臓、結腸、胃腸、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣、子宮頸部、乳房、肺、上咽頭の癌腫、および悪性黒色腫を含む、癌の予防方法を提供する。
【0226】
一部の実施形態は、これらの疾患のうちの一つまたは複数に罹患している患者に、治療上有効量の本明細書において開示されるTNFR2特異的抗体を投与することによって、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、膵臓、結腸、胃腸、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣、子宮頸部、乳房、肺、上咽頭の癌腫、または悪性黒色腫を治療する、その進行を阻害する、または予防する方法を提供する。
【0227】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体を使用して、結合した抗原、例えば、立体構造エピトープの構造が決定され、次いで、その構造を使用して、例えば、化学モデリングおよびSAR法を通じて、この構造を有するか、または模倣する化合物が開発され得る。
【0228】
一部の実施形態は、一部、TNFR2を発現する細胞または組織の存在を検出するための診断用途に関する。したがって、本開示は、TNFR2を発現する細胞または組織の検出などの、試料中のTNFR2を検出する方法を提供する。このような方法は、非限定的に、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、インサイツハイブリダイゼーション(ISH)、ホールマウントインサイツハイブリダイゼーション(WISH)、蛍光DNAインサイツハイブリダイゼーション(FISH)、フローサイトメトリー、酵素免疫アッセイ(EIA)、および酵素結合免疫アッセイ(ELISA)を含む、様々な公知の検出フォーマットで適用することができる。
【0229】
ISHは、標識された相補的DNA鎖またはRNA鎖(すなわち、一次結合剤)を使用して、細胞もしくは組織(インサイツ)の部分もしくは切片において、または組織が十分に小さい場合、組織全体(ホールマウントISH)における特定のDNAまたはRNA配列を局在化させる、一種のハイブリダイゼーションである。当業者は、これが、一次結合剤として抗体を使用して組織切片においてタンパク質を局在化する、免疫組織化学とは別個であることを理解するであろう。DNA ISHを、ゲノムDNAで使用して、染色体の構造を決定することができる。蛍光DNA ISH(FISH)を、例えば、医療診断において使用して、染色体の完全性を評価することができる。RNA ISH(ハイブリダイゼーション免疫組織化学)を使用して、組織切片またはホールマウント内のmRNAおよび他の転写物が測定され、局在化される。
【0230】
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗体は、直接的または間接的に検出され得る検出可能な標識にコンジュゲートされる。これに関して、抗体「コンジュゲート」は、検出可能な標識に共有結合した抗TNFR2抗体を指す。本開示では、一本鎖可変フラグメント抗体またはエピトープタグ付き抗体などの、DNAプローブ、RNAプローブ、モノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント、およびその抗体誘導体は、検出可能な標識に共有結合されてもよい。「直接検出」では、一つの検出可能な抗体、すなわち、1次の検出可能な抗体のみが、使用される。したがって、直接検出は、検出可能な標識にコンジュゲートされた抗体が、それ自体、第二の抗体(二次抗体)を加える必要なく、検出され得ることを意味する。
【0231】
「検出可能な標識」は、試料中の標識の存在および/または濃度を示す、検出可能な(例えば、視覚的、電子的またはその他の)シグナルを生じ得る分子または物質である。抗体にコンジュゲートされたとき、検出可能な標識を使用して、特定の抗体が向けられる標的を位置決定し、および/または定量化することができる。これにより、試料中の標的の存在および/または濃度は、検出可能な標識によって生じるシグナルを検出することによって検出することができる。検出可能な標識は、直接的または間接的に検出することができ、異なる特異的抗体にコンジュゲートされたいくつかの異なる検出可能な標識を組み合わせて、一つまたは複数の標的を検出することができる。
【0232】
直接検出され得る検出可能な標識の例としては、蛍光染料および放射性物質および金属粒子が挙げられる。対照的に、間接検出は、一つまたは複数の追加の抗体、すなわち、一次抗体の適用後に二次抗体の適用を必要とする。したがって、検出は、二次抗体または結合剤の一次検出可能抗体への結合の検出によって行われる。二次結合剤または抗体の添加を必要とする一次の検出可能な結合剤または抗体の例としては、酵素検出可能な結合剤およびハプテン検出可能な結合剤または抗体が挙げられる。
【0233】
一部の実施形態では、検出可能な標識は、第一の結合剤を含む(例えば、ISH、WISH、またはFISHプロセスにおいて)核酸ポリマーにコンジュゲートされる。ある特定の実施形態では、検出可能な標識は、第一の結合剤を含む(例えば、IHCプロセスにおいて)抗体にコンジュゲートされる。
【0234】
本開示の方法で使用される抗体にコンジュゲートされ得る検出可能な標識の例としては、蛍光標識、酵素標識、ラジオアイソトープ、化学発光標識、電気化学発光標識、生体発光標識、ポリマー、ポリマー粒子、金属粒子、ハプテン、および染料が挙げられる。
【0235】
蛍光標識の例は、5-(および6)-カルボキシフルオレセイン、5-または6-カルボキシフルオレセイン、6-(フルオレセイン)-5-(および6)-カルボキサミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、ならびにCy2、Cy3、およびCy5などの色素、AMCAを含む置換されていてもよいクマリン、PerCP、R-フィコエリトリン(RPE)およびアロフィコエリトリン(APC)を含むフィコビリンタンパク質、テキサスレッド、プリンストンレッド、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびその類似体、ならびにR-フィコエリトリンまたはアロフィコエリトリンのコンジュゲート、コーティングされたCdSeナノ微結晶の様な半導体材料に基づく粒子などの無機蛍光標識を含む。
【0236】
ポリマー粒子標識の例は、ポリスチレンの微粒子もしくはラテックス粒子、蛍光色素と共に包埋することができるPMMAもしくはシリカ、または色素、酵素もしくは基質を含有するポリマーミセルまたはカプセル剤を含む。
【0237】
金属粒子標識の例は、金粒子および銀染色によって変換することができる、コーティングされた金粒子を含む。ハプテンの例は、DNP、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ビオチン、およびジゴキシゲニンを含む。酵素標識の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALPまたはAP)、β-ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、β-N-アセチルグルコサミミダーゼ、β-グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチン酸化酵素、ホタルルシフェラーゼおよびグルコース酸化酵素(GO)を含む。西洋ワサビペルオキシダーゼの一般的に使用される基質の例は、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、ニッケルエンハンスメントを有するジアミノベンジジン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、ベンジジン二塩酸塩(BDHC)、ハンケル-イエーツ試薬(HYR)、インドファンブルー(IB)、テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(CN)、アルファ-ナフトールピロリン(.アルファ.-NP)、o-ジアニシジン(OD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスホ-ヘート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2-(p-ヨードフェニル)-3-p-ニトロフェニル-5-フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシl-ベータ-D-ガラクトシド/フェロ-フェリシアニド(BCIG/FF)を含む。
【0238】
アルカリホスファターゼの一般的に使用される基質の例は、ナフトール-AS-B1-ホスフェート/ファーストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-ホスフェート/ファーストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-ホスフェート/-ファーストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-ホスフェート/ファーストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-ホスフェート/ニューフスチン(NABP/NF)、ブロモクロロインドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b--d-ガラクトピラノシド(BCIG)を含む。
【0239】
発光標識の例は、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2-ジオキセタンおよびピリドピリダジンを含む。電気化学発光標識の例は、ルテニウム誘導体を含む。放射性標識の例は、ヨウ化物、コバルト、セレン、トリチウム、炭素、硫黄および亜リン酸の放射性同位元素を含む。
【0240】
検出可能な標識は、本明細書に記載される抗体、または対象の生物学的マーカーに特異的に結合する他の分子、例えば、抗体、核酸プローブ、またはポリマーに連結されてもよい。さらに、当業者は、検出可能な標識はまた、第二、および/または第三、および/または第四、および/または第五の結合剤もしくは抗体などにコンジュゲートされ得ることを理解するであろう。さらに、当業者は、対象の生物学的マーカーを特徴付けるために使用されるそれぞれの結合剤または抗体が、シグナル増幅工程として作用し得ることを理解するであろう。生物学的マーカーは、例えば、光顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡を使用して視覚的に検出されてもよく、検出可能な物質は、例えば、色素、コロイド状金粒子、発光試薬である。生物学的マーカーに結合した視覚的に検出可能な物質もまた、分光光度計を使用して検出され得る。検出可能な物質が、放射性同位元素である場合、検出は、オートラジオグラフィーによって視覚的に、またはシンチレーションカウンターを使用した非視覚的であり得る。例えば、Larsson,1988,Immunocytochemistry:Theory and Practice,(CRC Press,Boca Raton,Fla.);Methods in Molecular Biology,vol.80 1998,John D.Pound(ed.)(Humana
Press,Totowa,N.J.)を参照のこと。
【0241】
本開示はさらに、試料中にTNFR2またはTNFR2を発現する細胞もしくは組織を検出するためのキットを提供し、キットは、本明細書に記載される少なくとも一つの抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞を含有する。ある特定の実施形態では、キットは、緩衝液、酵素、標識、基質、ビーズまたは本開示の抗体が結合する他の表面など、ならびに使用のための指示書を含んでもよい。
【実施例0242】
実施例1
免疫および一次スクリーニング
スクリーニング用の抗体を調製するために、4匹のニュージーランド白色ウサギを免疫し、その後、ヒト293-TNFR2過剰発現細胞またはヒトTNFR2-Fc融合タンパク質のいずれかでブーストした。すべてのウサギは、ヒトTNFR2に特異的な血清力価を有し、これを使用して、APXiMAB(商標)テクノロジーおよびB細胞培養法(RevMAb)による抗体を使用してハイブリドーマを生成した。一次スクリーニングの際、CHO-TNFR2過剰発現細胞に結合した460種の抗体を同定した。可能性のあるリード候補を同定するためのスクリーニングプロセスを、図2に示す。
【0243】
次いで、ハイブリドーマおよびB細胞培養物の上清を使用して、ELISAベースの受容体リガンド結合アッセイにおいて、可溶性TNFR2-His(Sino Biological;10417-H08H)へのTNF-αの結合を遮断し得る抗体をスクリーニングした。同定した460種の抗体のうち、173種は、最大結合の75%より高いTNFR2へのTNF-α結合の阻害を示した。
【0244】
110種の抗体を選択して、ヒトIgGキメラ段階に移行した。B細胞クローニングから進んだ110種の抗体のうち、28種のクローンは、増幅に失敗した。残りの82個のクローンの重鎖および軽鎖を増幅し、ヒトIgG1骨格に直接クローニングした。82種のキメラ抗体を発現し、細胞ベースのTNFR2への結合について陽性と試験した上清を、配列決定した。最初のスクリーニング漏斗を通過したハイブリドーマから同定した10種の抗体のすべてを、キメラ化し、配列決定し、さらに進めた。
【0245】
配列解析(特有性およびグリコシル化、脱アミノ化などの限定した可能性のある開発責任、ならびにCDR3長)を利用して、さらなる研究のためB細胞培養物から25種の抗体を選択した。10種のハイブリドーマクローンすべてを、配列解析とは独立して進めた。ハイブリドーマ由来のクローンのうち二つのセットは、アスタリスクまたはハッシュタグ(8G11.5=37D1.4および28B7.3=37H4.1)を含む概要の表(表E1)に示すのと同一の配列を有していた。組み換えキメラ抗体を発現させるために、重鎖(H)および軽鎖(L)プラスミドを、293細胞に共遺伝子導入し、7~10日後に上清を回収した。抗体を、タンパク質Aカラムを介して精製し、PBSに対して透析した。
【0246】
ヒトキメラ抗体のIn Vitro特徴決定 可溶性TNFR2および細胞発現ヒトTNFR2、可溶性カニクイザルおよびマウスTNFR2、ならびにELISAベースのTNF-α遮断への結合について、キメラ抗体をスクリーニングした。図3A~3Dのデータセットは、抗体の第一のセットを示し、図4A~4Dのデータセットは、抗体の第二のセットを示す。PLADまたはCRD1(aa17~54;TCRLREYYDQTAQMCCSKCSPGQHAKVFCTKTSDTVCD)、CRD2(aa58~93;DSTYTQLWNWVPECLSCGSRCSSDQVETQACTREQN)、CRD3(aa106~133;LSKQEGCRLCAPLRKCRPGFGVARPGTEおよびaa114~133;LCAPLRKCRPGFGVARPGTE)ならびにCRD4(ペプチド5;aa146~174;およびTFSNTTSSTDICRPHQICNVVAIPGNAS)ドメイン由来のペプチドを使用した予備エピトープ結合について、ペプチド結合ELISAにおいて、抗体をまたスクリーニングした(以下の表E1におけるデータ概要を参照のこと)。
【表E1-1】

【表E1-2】
【0247】
35種のうち15種の抗体を、ヒト化のため、結合親和性、カニクイザル交差反応性、遮断能、および広範なエピトープビンを捕捉する能力(表E1では太字で強調した)に基づき選択した。ヒト化した15のクローンのうち、三つのクローンは、ELISAによるTNF-α結合を遮断しなかったが、ペプチド5に結合し、TNFR2三量体化を遮断することによって細胞表面上のTNF-αを遮断するという仮説を立てた。同一の配列を有し、かつカニクイザルもしくはヒトのTNFR2に強く結合せず、またはTNF-α結合を遮断しないクローンを、選択解除した。
【0248】
抗体を、ヒトIgGフレームワーク上で独自の突然変異系統誘導(MLG)テクノロジーを使用してヒト化した。15種のうち1種の抗体は、ELISAで抗原への結合を失い、回収できなかった。他の14種の抗体を、可溶性ヒトTNFR1およびTNFR2結合、細胞ベースのTNFR2結合、カニクイザルTNFR2結合、ならびにELISAとFACSの両方によるTNF-α遮断についてスクリーニングした(図5~8を参照)。ペプチド5に結合し、キメラ段階でTNF-αを遮断しなかった抗体は、細胞ベースのELISAによりTNF-α結合を遮断せず、したがって、選択解除した。強い、細胞ベースのTNFR2結合を保持する抗体を、Promega ADCCジャーカットNFATレポーターキットを使用して、TNFR2過剰発現CHO細胞株のADCCについて試験した(図9A~9B)。ヒト化候補の特徴を、以下の表E2に示す。五つのリード候補(太字で強調表示した)は、望ましい基準を満たした。
【表E2-1】

【表E2-2】
【0249】
リード候補およびバックアップの選択 過剰発現細胞株上のADCCアッセイを、TNFRファミリーメンバー特異性、サイトカイン放出アッセイ、および発展性解析と共に完了して、CLDに進める2つのリード候補の選択を助けた。以下の表E3は、パーセントヒト化解析を示す。
【表E3】
【0250】
実施例2
クローンh600-25-71およびh600-25-108の結合および活性特徴
ヒト化クローンh600-25-71およびh600-25-108を、結合および活性特徴について試験した。TNFRファミリーメンバーへの結合を試験するために、標的タンパク質を、4℃で一晩、1μg/mLでELISAプレート上にコーティングした。プレートを洗浄し、ブロッキングし、抗体を、示した濃度で、室温で1時間加えた。それぞれのタンパク質についての正の対照抗体を、約1μg/mLで使用した。抗体を洗浄し、抗ヒトIgG HRPで1時間検出した。アッセイを、TMB基質を使用して10分間発展させた。細胞結合について、バフィーコートから精製したヒトCD4+T細胞を、平底プレートにおいて抗CD3/CD28と共に24時間培養した。細胞を回収し、生存率、CD4、CD25およびFOXP3について染色した。抗ヒトIgG APCを使用して、試験抗体染色を検出した。試験抗体の結合タイトレーションを、CD4+CD25hiFOXP3+制御性T細胞上で評価し、パーセント結合としてプロットした。
【0251】
図10A~10Fにおける結果は、25-71および25-108が、ヒトTNFR2タンパク質(10C)、カニクイザルTNFR2タンパク質(10D)、細胞発現ヒトTNFR2(10E)、および活性化ヒトTreg(10F)を含む、TNFR2に高い親和性で結合することを示す。図11A~11Eの結果は、25-71および25-108が、TNFR2に特異的であり、TNFR1、HVEM、CD40、DR6、またはOPGに結合しないことを示す。IgGアイソタイプ対照は、三角形で示し、正の対照は、アスタリスクで示す。
【0252】
抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を介してTNFR2発現細胞に対する抗体の効果を試験するために、上記のように、ADCCアッセイを行った。図12A~12Bに示すように、25-71および25-108は、腫瘍細胞(12B)を含む、TNFR2発現細胞に対してADCCを誘導した。
【0253】
regに対する抗体の効果を試験するために、白血球減少チャンバーからPBMCを単離した。2×10PBMCを、0.1μg/mL抗CD3(クローン:OKT3)で刺激し、加湿5%CO2インキュベーター中、96ウェル平底プレートにおいて、37℃で、16~24時間抗TNFR2抗体を用いて処理した。細胞を、完全RPMI(10%熱不活化FBS、1×ペニシリン-ストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム、1×MEM非必須アミノ酸、50mMβ-メルカプトエタノール)中で培養した。細胞を回収し、CD4 Tregを、フローサイトメトリーによりCD4+CD25hi FoxP3+として同定した。図13A~13Bに示すように、25-71および25-108は、ヒトPBMCからTregを枯渇させた。両方のグラフは、5人のドナーの平均を示し、それぞれの条件を、二重で行った。%枯渇=100×(枯渇なし-実験的)/(枯渇なし)、枯渇なしは、抗CD3のみで刺激したPBMCを指す。
【0254】
TNFR2発現腫瘍細胞のマクロファージ介在性抗体依存性細胞貪食(ADCP)に対する抗体の効果を試験するために(図14Aを参照)、ヒトCD14+単球を10μg/mL M-CSFと共に、5% CO2、37℃のインキュベーターにおいて6日間培養することによって、マクロファージを生成した。得られたマクロファージを、TNFR2過剰発現CHO細胞(標的)と共に、それぞれ、CellTrace CFSEおよびVioletで標識した。標的細胞を、抗TNFR2抗体またはアイソタイプ対照と共に、氷上で30分間インキュベートした。標識した細胞を、50,000個の標的細胞に対する100,000個のマクロファージの比で、低ヒトIgG血清を含むRPMIにおいて3時間共培養した。細胞を、Cytoflexフローサイトメーターを使用して分析した。図14Bに示すように、25-71および25-108は、TNFR2+細胞のマクロファージ介在性ADCPを誘導した。パーセント食作用を、次の通り:((%二重陽性細胞)/(標的細胞の合計%)×100)計算した。
【0255】
CD8 T細胞の骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)抑制に対する抗体の効果を試験するために、MDSCを、ヒトPBMCの786-O腫瘍細胞株との7日間の共培養によって生成した。CD33+MDSCを、マイクロビーズ(Miltenyi)を使用した正の選択によって単離した。自家CD8 T細胞を、細胞トレースバイオレットで標識し、CD3/CD28刺激で4:1の比でMDSCと3日間共培養した。3日後、細胞を、生存能色素で標識し、バイオレット色素希釈を使用して、CD8 T細胞増殖を測定した。図15Aにおける実験の概要を参照されたい。
【0256】
図15B~15Cに示すように、25-71および25-108は、CD8 T細胞のMDSC抑制を有意に低減した。パーセント抑制を、以下のように計算した:[T細胞単独-(T+MDSC)]/T単独×100。データを、平均±SEMとしてプロットする。IgG1アイソタイプを、黒色の棒を使用してプロットし、25-71は、灰色の棒であり、25-108は、塗りつぶしていない棒である。統計を、ANOVAならびに=P<0.01および**=P<0.001を使用して行った。
【0257】
制御性T細胞に対する抗体の効果をさらに試験するために、CD4 T細胞を、磁気ビーズ(Miltenyi)を使用した負の選択により、健康なヒトバフィーコートに由来するPBMCから単離した。CD25+Tregを、製造元のプロトコール(Miltenyi)に従って、CD25磁気ビーズを使用して枯渇させ、得られたCD4細胞(Tレスポンダー細胞)を、アッセイを設定するまで、凍結保存した。自己ドナー由来のTregを、製造元のプロトコールに従い単離し、Tregエクスパンダービーズ(DynaBeads)および100nMラパマイシンを使用して15日間拡大した。アッセイの設定の前日に、Tレスポンダー細胞を解凍し、一晩静置した。翌日、Tレスポンダー細胞を、Cell Trace Violetで標識し、Tregに、示した比で、丸底プレートにおいて10μg/mL25-71またはアイソタイプ対照と共に加えた。Treg検査用ビーズ(Miltenyi)を加え、アッセイを5日間インキュベートした。5日目に細胞を回収し、生存能色素で染色し、MACSQuantアナライザーで分析した。パーセントT細胞抑制を、(刺激したTレスポンダーのみの増殖-検査値の増殖)/(刺激したTレスポンダーのみ)として計算した。少なくとも4人のドナーに対して、実験を行った。図18A~18Eに示すように、クローン25-71は、エフェクターT細胞のTreg抑制を逆転する。
【0258】
前述の実験の結合親和性(KD)およびEC50値を、以下の表E4に要約する。
【表E4】
【0259】
マウスにおける抗体の効果を試験するために、メスのヌードマウスに、Colo205腫瘍細胞をSQ注射した。100mm3の腫瘍体積で、マウスを、図19Aに示すように処置した。対照と比ベて、有意な抗腫瘍効果(48%TGI)を、抗体25-71で観察した(図19Bを参照)。対照群と比べて、治療群において、体重の変化を観察しなかった(図19Cを参照)。
【0260】
実施例3
クローン25-71のエピトープ部位の同定
実験を行い、高分解能でTNFR2/25-71複合体のエピトープを決定した。
【0261】
まず、高質量MALDI分析を、TNFR2単独およびクローン25-71単独の試料について行い、完全性および凝集レベルを確認した。ナノモルの感度で最大2Mdaに検出を最適化するように設計した検出システムを備えた、HM4相互作用モジュール(CovalX)を装備したAutoflex II MALDI ToF質量分析計(Bruker)を使用して、測定を行った。TNFR2試料粉末を、蒸留水で溶解し、1mg/mlの濃度にし、TNFR2およびクローン25-71のそれぞれのタンパク質試料20μlを、ピペット操作して、最終体積10μlで8つの希釈液を調製した。次に、それぞれの希釈液1μlを、アセトニトリル/水(1:1、v/v)、0.1% TFA(K200 MALDIキット)において再結晶させたシナピン酸基質(10mg/ml)からなる基質1μlと混合した。混合後、それぞれの試料1μlを、MALDIプレート(SCOUT 384)にスポットした。室温での結晶化後、プレートを、MALDI質量分析計に導入し、高質量MALDIモードで直ちに分析した。
【0262】
架橋結合実験。架橋結合実験により、高質量MALDI質量分析による非共有結合性相互作用の直接分析が可能になる。非共有結合相互作用を含有するタンパク質試料を架橋結合している混合物と混合することにより(Bich et al.,Anal.Chem.82 (1),pp 172-179,2010)、高感度で非共有結合複合体を特異的に検出することが可能である。生成した共有結合により、相互作用する種が、試料調製プロセスおよびMALDIイオン化を生き延びることを可能になる。高質量検出システムにより、高質量範囲における相互作用の特徴付けが、可能となる。
【0263】
対照実験用に調製したそれぞれの混合物(9μl残す)を、K200 MALDI MS分析キット(CovalX)を使用して架橋結合させた。混合物9μl(1~1/128)を、K200安定化剤試薬(2mg/ml)1μlと混合し、室温でインキュベートした。インキュベーション時間(180分)後、対照実験と同様に、MALDI分析のため試料を調製した。標準窒素レーザーを用いてHM4相互作用モジュール(CovalX)を使用し、0~1500kDaの異なる質量範囲に焦点を合わせ、結晶化直後に高質量MALDI分析により試料を分析した。
【0264】
結果。高質量MALDI質量分析および化学架橋結合分析は、クローン25-71の非共有結合凝集体またはTNFR2の多量体を検出しなかった。
【0265】
次いで、HM4相互作用モジュール(CovalX)を備えたAutoflex II
MALDI ToF質量分析計(Bruker)を使用して、TNFR2/25-71の複合体を特徴付けた。TNFR2/25-71の混合物10μlを、1.25μM/0.5μMのそれぞれの濃度で調製した。混合物1μlを、アセトニトリル/水(1:1、v/v)、0.1% TFA(K200 MALDIキット)において再結晶させたシナピン酸基質(10mg/ml)からなる基質1μlと混合した。混合後、それぞれの試料1μlを、MALDIプレート(SCOUT 384)にスポットした。室温での結晶化後、プレートを、MALDI質量分析計に導入し、直ちに分析した。
【0266】
架橋結合実験。対照実験用に調製した混合物(9μl残す)を、K200 MALDI
MS分析キット(CovalX)を使用して架橋結合させた。混合物9μlを、K200安定化剤試薬(2mg/ml)1μlと混合し、室温でインキュベートした。インキュベーション時間(180分)後、対照実験と同様に、MALDI分析のため試料を調製した。試料を、結晶化直後に高質量MALDI分析により分析した。
【0267】
標準窒素レーザーを用いてHM4相互作用モジュール(CovalX)を使用し、0~1500kDaの異なる質量範囲に焦点を当てて、MALDI ToF MS分析を行った。
【0268】
結果。対照実験のため、TNFR2およびクローン25-71を、MH+=37.179kDaおよびMH+=147.708kDaで検出した。架橋結合後、MH+=189.401kDaおよびMH+=228.341kDaで、二つの追加ピークを検出した。複合トラッカーソフトウェアを使用して、対照スペクトルおよび架橋結合スペクトルを重ね合わせ、MH+=186.113kDaおよびMH+=224.384kDaを有する二つの非共有結合タンパク質複合体を検出した。
【0269】
エピトープ決定のため、まず、TNFR2をトリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ、およびサーモリシンタンパク質分解に供し、続いてnLC-LTQ-Orbitrap MS/MS分析を行った。ペプチドの複合マッピングにより、TNFR2配列の約94.57%の範囲を確認した(データは示していない)。
【0270】
高分解能でTNFR2/25-71複合体のエピトープを決定するために、複合体を、重水素化架橋リンカーと共にインキュベートし、トリプシン、キモトリプシン、Asp-N、エラスターゼ、およびサーモリシンによる多重酵素切断に供した。架橋結合したペプチドの濃縮後、試料を、高分解能質量分析(nLC-LTQ-Orbitrap MS)により分析し、生成されたデータを、XQuestおよびStavroxソフトウェアを使用して分析した。
【0271】
還元アルキル化。TNFR2/クローン25-71混合物20μLを、DSS d0/d12(2mg/mL;DMF)2μLと室温で180分間のインキュベーション時間混合した。インキュベーション後、二炭酸アンモニウム(20mM終濃度)1μLを加えることによって、反応を停止させ、その後、室温で1時間インキュベーションした。次いで、溶液を、HO 8M尿素懸濁(20μL)の前に、speedvacを使用して乾燥させた。混合後、DTT(500mM)2μlを、溶液に加えた。次いで、混合物を、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ヨードアセトアミド(1M)2μlを加え、その後、暗室において室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、タンパク分解性緩衝液80μlを加えた。トリプシン緩衝液は、50mM Ambic pH8.5、5%アセトニトリルを含有し、キモトリプシン緩衝液は、Tris HCl 100mM、CaCl2 10mM pH 7.8を含有し、ASP-N緩衝液は、リン酸塩緩衝液 50MM pH 7.8を含有し、エラスターゼ緩衝液は、Tris HCl 50mM pH 8.0を含有し、サーモリシン緩衝液は、Tris
HCl 50mM、CaCl2 0.5mM pH 9.0を含有していた。
【0272】
トリプシンタンパク質分解について、還元/アルキル化TNFR2/25-71混合物100μlを、1/100の比でトリプシン(Promega)0.5μlと混合し、タンパク分解性混合物を、37℃で一晩インキュベートした。キモトリプシンタンパク質分解について、還元/アルキル化TNFR2/25-71混合物100μlを、1/200の比でキモトリプシン(Promega)0.25μlと混合し、タンパク分解性混合物を、25℃で一晩インキュベートした。ASP-N質分解について、還元/アルキル化TNFR2/25-71混合物100μlを、1/200の比でASP-N(Promega)0.25μlと混合し、タンパク分解性混合物を、37℃で一晩インキュベートした。エラスターゼタンパク質分解について、還元/アルキル化TNFR2/25-71混合物100μlを、1/100の比でエラスターゼ(Promega)0.5μlと混合し、タンパク分解性混合物を、37℃で一晩インキュベートした。サーモリシンタンパク質分解について、還元/アルキル化TNFR2/25-71混合物100μlを、1/50の比でサーモリシン(Promega)1μlと混合し、タンパク分解性混合物を、70℃で一晩インキュベートした。消化後、1%ギ酸を、溶液に加えた。架橋結合したペプチドを、Xquestバージョン2.0およびStavrox 3.6ソフトウェアを使用して分析した。
【0273】
結果。重水素化d0d12とのTNFR2/25-71複合体のトリプシン、キモトリプシン、ASP-N、エラスターゼ、およびサーモリシンタンパク質分解後、nLC-orbitrap MS/MS分析は、TNFR2とクローン25-71との間で12の架橋結合したペプチドを検出した。化学架橋法、高質量MALDI質量分析法、およびnLC-Orbitrap質量分析を使用して、TNFR2と抗体25-71との間の分子界面を特徴付けた。この分析の結果を、図16および図17A~17Jにおいて説明し、これは、TNFR2/25-71相互作用が、全長ヒトTNFR2の以下の残基;R43、Y45、T49、S55、K56、T73、およびS77、または成熟ヒトTNFR2の以下の残基;R21、Y23、T27、S33、K34、T51、およびS55を含むことを示す。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、
配列番号1~3にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに配列番号4~6にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域;
配列番号7~9にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号10~12にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号13~15にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号16~18にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号19~21にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号22~24にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号25~27にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号28~30にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号31~33にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号34~36にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号37~39にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号40~42にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号43~45にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号46~48にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号49~51にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号52~54にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号55~57にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号58~60にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号61~63にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号64~66にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号67~69にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号70~72にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号73~75にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号76~78にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号79~81にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号82~84にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号85~87にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号88~90にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
配列番号91~93にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号94~96にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;または
配列番号97~99にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含むVH領域;ならびに配列番号100~102にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含むVL領域;
あるいは前記CDR領域にわたる最大1、2、3、4、5、6、7、もしくは8個の総アミノ酸置換を除く、(i)および(ii)の前記重鎖および軽鎖可変領域と同一の重鎖および軽鎖可変領域を含む、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントのバリアントを含む、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目2)
前記VH領域が、配列番号103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、および135から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目3)
前記VL領域が、配列番号104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、134、および136から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目4)
配列番号103に記載されるVH領域、および配列番号104に記載されるVL領域;
配列番号105に記載されるVH領域、および配列番号106に記載されるVL領域;
配列番号107に記載されるVH領域、および配列番号108に記載されるVL領域;
配列番号109に記載されるVH領域、および配列番号110に記載されるVL領域;
配列番号111に記載されるVH領域、および配列番号112に記載されるVL領域;
配列番号113に記載されるVH領域、および配列番号114に記載されるVL領域;
配列番号115に記載されるVH領域、および配列番号116に記載されるVL領域;
配列番号117に記載されるVH領域、および配列番号118に記載されるVL領域;
配列番号119に記載されるVH領域、および配列番号120に記載されるVL領域;
配列番号121に記載されるVH領域、および配列番号122に記載されるVL領域;
配列番号123に記載されるVH領域、および配列番号124に記載されるVL領域;
配列番号125に記載されるVH領域、および配列番号126に記載されるVL領域;
配列番号127に記載されるVH領域、および配列番号128に記載されるVL領域;
配列番号129に記載されるVH領域、および配列番号130に記載されるVL領域;
配列番号131に記載されるVH領域、および配列番号132に記載されるVL領域;
配列番号133に記載されるVH領域、および配列番号134に記載されるVL領域;または
配列番号135に記載されるVH領域、および配列番号136に記載されるVL領域を含む、項目2または3に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目5)
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ、配列番号103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、および135から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域ならびに配列番号104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、134、および136から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目6)
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ、表R1における下線を付した配列から選択されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに表R2における下線を付した配列から選択されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目7)
それぞれ、表R1から選択されるアミノ酸配列を含むVH領域、ならびに表R2から選択されるアミノ酸配列を含むVL領域を含む、項目6に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目8)
成熟ヒトTNFR2配列(FLヒトTNFR2の残基23~461)により定義される、R21、Y23、T27、S33、K34、T51、およびS55から選択される一つまたは複数の残基を含む、からなる、または本質的にからなるエピトープでヒト腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントであって、任意選択で、前記エピトープが、REY、TAQMCCSK(配列番号328)、およびTVCDS(配列番号329)から選択される一つまたは複数の残基を含む、からなる、または本質的にからなる、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目9)
配列番号37~39にそれぞれ記載されるVHCDR1、VHCDR2、およびVHCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域;ならびに配列番号40~42にそれぞれ記載されるVLCDR1、VLCDR2、およびVLCDR3領域を含む軽鎖可変(VL)領域を含む、項目8に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目10)
前記VH領域が、配列番号115と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目8または9に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目11)
前記VL領域が、配列番号116と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目8~10のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目12)
配列番号115に記載されるVH領域、および配列番号116に記載されるVL領域を含む、項目10または11に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目13)
ヒトTNFR2、任意選択で、可溶性TNFR2および細胞発現ヒトTNFR2に結合する、項目1~12のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目14)
表T1から選択される少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、または五つのヒトTNFR2ペプチドエピトープに結合する、項目13に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目15)
前記抗体がヒト化されている、項目1~14のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(項目16)
前記抗体が、一本鎖抗体、scFv、ヒンジ領域を欠く一価抗体、ミニボディ、およびプロボディからなる群から選択される、項目1~15のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(項目17)
前記抗体が、FabまたはFab’フラグメントである、項目1~15のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(項目18)
前記抗体が、F(ab’) フラグメントである、項目1~15のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(項目19)
前記抗体が全抗体である、項目1~15のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(項目20)
ヒトIgG定常ドメインを含む、項目1~19のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(項目21)
前記IgG定常ドメインが、IgG1 CH1ドメインを含む、項目20に記載の単離された抗体。
(項目22)
前記IgG定常ドメインが、IgG1 Fc領域、任意選択で、一つまたは複数のアミノ酸置換で修飾された、任意選択で、修飾されたFc領域を含む、項目20に記載の単離された抗体。
(項目23)
約2nM以下のK で、ヒトTNFR2、任意選択で、表T1の少なくとも一つのペプチドエピトープに結合する、項目1~22のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目24)
約0.7nM以下のK でヒトTNFR2に結合するか、または約50pm以下のK で、初代T細胞、任意選択で、T reg 上のヒトTNFR2に結合する、項目1~23のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目25)
前記単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントが、
(a) TNFR2へのTNF-α結合を阻害する;
(b) TNFR2シグナル伝達を阻害する;
(c) TNFR2シグナル伝達を活性化する;
(d) TNFR2二量体化/三量体化を阻害する;
(e) ヒトTNFR2およびカニクイザルTNFR2に交差反応性に結合する;
(f) 抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)によって、腫瘍細胞、T reg 、ならびに/または抑制性骨髄細胞(任意選択で、マクロファージ、好中球、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC))の細胞殺傷/枯渇を増加させ/誘導する;
(g) マクロファージ介在性抗体依存性細胞貪食(ADCP)によって、腫瘍細胞、T reg 、ならびに/または抑制性骨髄細胞(任意選択で、マクロファージ、好中球、およびMDSC)の細胞殺傷/枯渇を増加させ/誘導する;
(h) 骨髄細胞(任意選択で、マクロファージ、好中球、およびMDSC)によって免疫抑制を低減する;
(i) 炎症促進性M1マクロファージにMDSCおよび/またはM2マクロファージを変換する;
(j) エフェクターT細胞にT reg を変換する;
(k) 高温腫瘍に冷たい腫瘍を変換する;
(l) T reg 介在性免疫抑制を低減する;または
(m) (a)~(k)のいずれか一つまたは複数の組み合わせである、項目1~24のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目26)
TNFR1、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM、CD40、死受容体6(DR6)、および/またはオステオプロテジェリン(OPG)に実質的に結合しない、項目1~25のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目27)
TNFR2アンタゴニストである、項目1~26のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目28)
TNFR2アゴニストである、項目1~26のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目29)
二重特異性抗体または多特異性抗体である、項目1~28のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
(項目30)
項目1~29のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド、前記単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター、または前記ベクターを含む単離された宿主細胞。
(項目31)
生理的に許容可能な担体および治療上有効量の、項目1~29のいずれか一項に記載の単離された抗体、またはその抗原結合フラグメントを含む、組成物。
(項目32)
癌、任意選択で、異常なTNFR2発現と関連する癌を有する患者を治療する方法であって、前記患者に、項目31に記載の組成物を投与し、これにより、前記癌を治療することを含む、方法。
(項目33)
癌、任意選択で、TNFR2アンタゴニスト介在性免疫抑制と関連する癌を有する患者を治療する方法であって、前記患者に、項目31に記載の組成物を投与し、これにより、前記癌を治療することを含む、方法。
(項目34)
前記抗体、またはその抗原結合フラグメントが、TNFR2アンタゴニストである、項目32または33に記載の方法。
(項目35)
炎症性疾患および/または自己免疫疾患を有する患者を治療する方法であって、前記患者に、項目231に記載の組成物を投与し、これにより、炎症を治療することを含む、方法。
(項目36)
前記疾患が、異常なTNFR2発現と関連し、任意選択で、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントが、TNFR2アゴニストである、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記疾患が、TNFR2アゴニスト介在性免疫活性化と関連する、項目35に記載の方法。
図1
図2
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図6-1】
図6-2】
図6-3】
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【配列表】
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【外国語明細書】