(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024098
(43)【公開日】2025-02-19
(54)【発明の名称】フレキシブル液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20250212BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20250212BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250212BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G02F1/1333 500
C08G73/10
G09F9/30 338
G09F9/30 308Z
G09F9/30 349B
G09F9/00 338
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024199187
(22)【出願日】2024-11-14
(62)【分割の表示】P 2020119918の分割
【原出願日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019146348
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏章
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ポリイミドが形成された基板を有するフレキシブル液晶表示装置において、レーザー剥離を用いることなく、プロセスコストの低減を図ると共に、液晶表示装置の機械強度を向上し、曲げ耐性を有する表示装置を実現することである。
【解決手段】薄膜トランジスタ(TFT)配線層(300)、液晶層(500)、カラーフィルター層(800)、透明ポリイミド層(200,900)及びガラス基板(100,1000)を含むフレキシブル液晶表示装置(1)であって、TFT配線層(300)又はカラーフィルター層(800)と、透明ポリイミド層(200,900)及びガラス基板(100,1000)の順序で積層された積層構造を有し、かつガラス基板(100,1000)の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置(1)が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
【請求項2】
前記ガラス基板の厚さが、10~50μmである、請求項1に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項3】
前記ガラス基板の厚さが、10~24μmである、請求項1又は2に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項4】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の化学的エッチング後の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
【請求項5】
前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板は、前記TFT配線層の支持体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項6】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
【請求項7】
前記ガラス基板の厚さが、10~50μmである、請求項6に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項8】
前記ガラス基板の厚さが、10~24μmである、請求項6又は7に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項9】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の化学的エッチング後の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
【請求項10】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造Iを有し、かつ
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造IIを有し、かつ
前記ガラス基板の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
【請求項11】
前記ガラス基板の厚さが、10~50μmである、請求項10に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項12】
前記ガラス基板の厚さが、10~24μmである、請求項10又は11に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項13】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造Iを有し、かつ
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造IIを有し、かつ
前記ガラス基板の化学的エッチング後の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
【請求項14】
前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板は、前記カラーフィルター層の支持体である、請求項6~13のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項15】
前記透明ポリイミド層に含まれるポリイミドが、ジアミンに由来する構成単位を有し、かつ前記ジアミンが、ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)から成る群から選択される少なくとも一つである、請求項1~14のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項16】
前記透明ポリイミド層に含まれるポリイミドが、酸無水物に由来する構成単位を有し、かつ前記酸無水物が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、及びビシクロヘキシル-3,3’,9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物(BPAF)から成る群から選択される少なくとも一つである、請求項1~15のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項17】
前記TFT配線層と前記カラーフィルター層の間に、前記液晶層がある、請求項1~16のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
【請求項18】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置の製造方法であって、以下の工程:
前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を形成する積層工程と、
前記積層構造において前記ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように前記ガラス基板をエッチングするエッチング工程と
を含む、フレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記エッチング工程では、前記ガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整する、請求項18に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【請求項20】
前記エッチング工程では、前記TFT配線層と前記透明ポリイミド層とをマスキングする、請求項18又は19に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【請求項21】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置の製造方法であって、以下の工程:
前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を形成する積層工程と、
前記積層構造において前記ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように前記ガラス基板をエッチングするエッチング工程と
を含む、フレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【請求項22】
前記エッチング工程では、前記ガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整する、請求項21に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【請求項23】
前記エッチング工程では、前記カラーフィルター層と前記透明ポリイミド層とをマスキングする、請求項21又は22に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【請求項24】
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置の製造方法であって、以下の工程:
前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造Iを形成する積層工程と、
前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造IIを形成する積層工程と、
前記TFT配線層と前記カラーフィルター層を、シール材を介して接合する工程と、
前記積層構造I及びIIにおいて前記ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように前記ガラス基板をエッチングするエッチング工程と
を含む、フレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【請求項25】
前記エッチング工程では、前記ガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整する、請求項24に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、より詳細にはフレキシブル液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表示装置は、フレキシブル性がなく、リジッドタイプのものであった。近年、フレキシブル性を有する表示装置が開発され、フレキシブル表示装置としては、有機発光素子を用いたもの(OLED)と、液晶素子を用いたもの(LCD)がある。
【0003】
フレキシブル性を発現するためには、表示装置の基板として、ガラスに代替して樹脂を用いたものが提案されている。ここで、基板を樹脂のみで形成するために、ガラス基板上にポリイミド層を形成し、その後ディスプレイ形成プロセスを経た後、ガラス基板側からレーザーを照射することで、ガラス基板からポリイミド層を剥離することが検討されている(特許文献1)。しかしながら、この場合、ポリイミド層の機械強度が不十分なため、剥離する際に表示装置が破壊される問題、及び表示装置の巻き上げと巻き戻しを繰り返すうちに、表示装置が破壊される問題があった。
【0004】
他方、リジッドタイプの表示装置では、ガラス基板をエッチング処理することで薄膜化を行なってきたが、この表示装置は、上述のとおり、フレキシブル性がないものであった(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007-512568号公報
【特許文献2】特開2018-16518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるようなレーザー剥離を用いた場合、非常に高価なプロセスコストが必要となる。また、一般に、有機発光表示装置の製造プロセスは、液晶表示装置の製造プロセスに比べて、コストが高額である。したがって、液晶表示装置の従来の製造プロセスを活用し、かつコストを抑えることが求められている。
【0007】
上記の要求に鑑みて、本発明は、ポリイミドが形成された基板を有するフレキシブル液晶表示装置において、レーザー剥離を用いることなく、プロセスコストの低減を図ると共に、液晶表示装置の機械強度を向上させ、かつ曲げ耐性を有する液晶表示装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フレキシブル液晶表示装置において、TFT配線層又はカラーフィルター層のためのガラス基板を維持し、かつ薄くすることによって、上記課題を解決することができることを見出して、本発明を完成させた。本発明の一態様を以下に例示する。
[1]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
[2]
前記ガラス基板の厚さが、10~50μmである、項目1に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[3]
前記ガラス基板の厚さが、10~24μmである、項目1又は2に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[4]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の化学的エッチング後の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
[5]
前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板は、前記TFT配線層の支持体である、項目1~4のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[6]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
[7]
前記ガラス基板の厚さが、10~50μmである、項目6に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[8]
前記ガラス基板の厚さが、10~24μmである、項目6又は7に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[9]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を有し、かつ
前記ガラス基板の化学的エッチング後の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
[10]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造Iを有し、かつ
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造IIを有し、かつ
前記ガラス基板の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
[11]
前記ガラス基板の厚さが、10~50μmである、項目10に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[12]
前記ガラス基板の厚さが、10~24μmである、項目10又は11に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[13]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置であって、
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造Iを有し、かつ
前記フレキシブル液晶表示装置が、前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造IIを有し、かつ
前記ガラス基板の化学的エッチング後の厚さが、10~70μmであるフレキシブル液晶表示装置。
[14]
前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板は、前記カラーフィルター層の支持体である、項目6~13のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[15]
前記透明ポリイミド層に含まれるポリイミドが、ジアミンに由来する構成単位を有し、かつ前記ジアミンが、ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)から成る群から選択される少なくとも一つである、項目1~14のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[16]
前記透明ポリイミド層に含まれるポリイミドが、酸無水物に由来する構成単位を有し、かつ前記酸無水物が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、及びビシクロヘキシル-3,3’,9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物(BPAF)から成る群から選択される少なくとも一つである、項目1~15のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[17]
前記TFT配線層と前記カラーフィルター層の間に、前記液晶層がある、項目1~16のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
[18]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置の製造方法であって、以下の工程:
前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を形成する積層工程と、
前記積層構造において前記ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように前記ガラス基板をエッチングするエッチング工程と
を含む、フレキシブル液晶表示装置の製造方法。
[19]
前記エッチング工程では、前記ガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整する、項目18に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
[20]
前記エッチング工程では、前記TFT配線層と前記透明ポリイミド層とをマスキングする、項目18又は19に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
[21]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置の製造方法であって、以下の工程:
前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造を形成する積層工程と、
前記積層構造において前記ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように前記ガラス基板をエッチングするエッチング工程と
を含む、フレキシブル液晶表示装置の製造方法。
[22]
前記エッチング工程では、前記ガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整する、項目21に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
[23]
前記エッチング工程では、前記カラーフィルター層と前記透明ポリイミド層とをマスキングする、項目21又は22に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
[24]
薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置の製造方法であって、以下の工程:
前記TFT配線層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造Iを形成する積層工程と、
前記カラーフィルター層、前記透明ポリイミド層及び前記ガラス基板の順序で積層された積層構造IIを形成する積層工程と、
前記TFT配線層と前記カラーフィルター層を、シール材を介して接合する工程と、
前記積層構造I及びIIにおいて前記ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように前記ガラス基板をエッチングするエッチング工程と
を含む、フレキシブル液晶表示装置の製造方法。
[25]
前記エッチング工程では、前記ガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整する、項目24に記載のフレキシブル液晶表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーザー剥離を用いることなく、プロセスコストの低減を図ると共に、液晶表示装置の機械強度を向上し、曲げ耐性を有するフレキシブル液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブル液晶表示装置の模式断面図である。
【
図2】TFT配線層、透明ポリイミド層、及びガラス基板(厚さ:300μm超)の順となる積層構造のエッチング工程前の模式断面図である。
【
図3】TFT配線層、透明ポリイミド層、及びガラス基板(厚さ:10~70μm)の順となる積層構造のエッチング工程後の模式断面図である。
【
図4】カラーフィルター層、透明ポリイミド層、及びガラス基板(厚さ:300μm超)の順となる積層構造のエッチング工程前の模式断面図である。
【
図5】カラーフィルター層、透明ポリイミド層、及びガラス基板(厚さ:10~70μm)の順となる積層構造のエッチング工程後の模式断面図である。
【
図6】第三実施形態に係るフレキシブル液晶表示装置の製造方法のフロー概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明に係る実施形態の詳細を説明する。
本発明に係るフレキシブル液晶表示装置は、薄膜トランジスタ(TFT)配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層、及び厚さが10~70μmのガラス基板を含み、かつ下記積層構造I及び/又は積層構造II;
I.TFT配線層、透明ポリイミド層及びガラス基板の順序で積層された積層構造;
II.カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板の順序で積層された積層構造;
を有する。本発明に係るフレキシブル液晶表示装置は、プロセスコストの低減と曲げ耐性を両立することができる。
【0012】
驚くべきことに、本発明によって、フレキシブル液晶表示装置は、有機発光表示装置(OLED)と比べて、有意にプロセスコストが低く、かつ敢えて薄いガラス基板を維持することがプロセスコストの低減と曲げ耐性の両立に寄与し得ることが見出された。このような観点から、ガラス基板の厚さは、10~70μmであり、好ましくは10~50μm、より好ましくは10~24μmであり、更に好ましくは10~20μmである。同様の観点から、透明ポリイミド層及びガラス基板は、TFT配線層の支持体としてTFT配線層基板を構成することが好ましく、かつ/又はカラーフィルター層の支持体としてカラーフィルター層基板を構成することが好ましい。
ここで、フレキシブル液晶表示装置の“フレキシブル”の意味は、液晶表示装置を破壊なく曲率半径150mm以下に折り曲げることが可能であり、好ましくは曲率半径3mmまで折り曲げられることであり、併せて柔軟性を有しているため、落下しても破壊され難いことを意味する。これは、従来のガラスのみを基板とするリジッドな液晶表示装置にはない特徴である。
また、本発明では、ディスプレイの製造工程の途中で、透明ポリイミド層及びガラス基板の積層体におけるガラス基板をエッチングして薄膜化することもできる。そのため、エッチングする前の工程では、厚いガラス基板を用いてディスプレイの製造を行うため、安定製造が可能であり、歩留まりが向上する利点もある。
【0013】
一実施形態では、積層構造I及び/又は積層構造IIに含まれるガラス基板は、プロセスコストの低減と曲げ耐性の両立という観点から、化学的エッチング後の厚さが、10~70μmであり、好ましくは10~50μm、より好ましくは10~24μmであり、より更に好ましくは10~20μmである。化学的エッチングされたガラス基板は、表面粗さ(Z)が0.1~1.0nm(AFMで測定)であることが好ましく、アルカリ溶出量が0超1.0mg以下(JIS R3502に準拠)であることが好ましく、マイクロスクラッチ(μm単位の寸法を有する異物)を含まないことが好ましく、かつ/又は平均粒径80nm以下のシリカ粒子を含まないことが好ましい。
【0014】
所望により、フレキシブル液晶表示装置は、例えば配向膜、シール材、偏光膜、平面電極などの追加の構成要素を含んでよく、また積層構造I及びII以外の積層構造を画定したり、追加で有したりすることができる。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るフレキシブル液晶表示装置の模式断面図である。フレキシブル液晶表示装置(1)において、液晶層(500)の側部は、シール材(600)によりシールされることによって、液晶表示ユニットが構成される。液晶表示ユニット一面には、TFT配線層(300)、透明ポリイミド層(200)及びガラス基板(100)の順序で積層された積層構造Iが、TFT配線層(300)とシール材(600)を接触させるように設けられている。液晶表示ユニット他面には、カラーフィルター層(800)、透明ポリイミド層(900)及びガラス基板(1000)の順序で積層された積層構造IIが、カラーフィルター層(800)とシール材(600)を接触させるように設けられている。液晶層(500)の上部及び下部には、配向膜(400,700)が接触するように設けられてもよい。
【0016】
TFT配線層(300)とカラーフィルター層(800)の間に液晶層(500)がある。ガラス基板(100)と透明ポリイミド層(200)は、TFT配線層基板として使用され、ガラス基板(100)とTFT配線層(300)の間に透明ポリイミド層(200)がある。ガラス基板(1000)と透明ポリイミド層(900)は、カラーフィルター層基板として使用され、ガラス基板(1000)とカラーフィルター層(800)の間には透明ポリイミド層(900)がある。フレキシブル液晶表示装置の各構成要素を以下に説明する。
【0017】
<液晶表示ユニット>
液晶表示ユニットには液晶が封入されている。液晶層は、液晶で構成されており、その周縁部はシール材でシールされる。所望により、液晶層の上部及び下部は、配向膜で覆われていてもよい。液晶表示ユニットは、気体又は液体などの異物が内部に侵入しないようにシールされることが好ましい。シール材及び配向膜は、例えば、既知の紫外線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂などから形成されることができ、その材料は、シール性、TFT配線層又はカラーフィルター層との接合などに応じて決定されることができる。
【0018】
<ガラス基板>
一実施形態では、少なくとも一対のガラス基板が、液晶表示ユニットを挟んで配置されている。一対のガラス基板は、フレキシブル液晶表示装置の製造プロセス及びコストの観点から、同一寸法を有することができる。ガラス基板材料は、例えば、無アルカリガラス基板などであることができる。所望により、ガラス基板は、例えば、疎水化、親水化、平滑化、粗面化、化学的エッチングなどの各種の処理に供されることができる。
【0019】
ガラス基板の厚さを10~70μmの範囲内に制御する手段としては、例えば、(i)予め厚さ10~70μmのガラス基板を用意しておいて使用すること、(ii)70μmを超える厚さ(例えば、厚さ300μm超)のガラス基板を用意しておいて製造プロセス中に化学的エッチングにより10~70μmの範囲内に調整することなどが挙げられる。中でも、上記(ii)は、ガラス基板の強度、フレキシブル液晶表示装置の曲げ耐性などの観点から好ましい。
【0020】
<TFT配線層>
TFT(thin-film-transistor)は薄膜トランジスタをスイッチング素子として使用する表示素子であり、液晶ディスプレイ又は薄型テレビに幅広く使用される。TFTは、基板上に形成され、従来のリジッドディスプレイの場合、基板として、ガラス基板を用いられてきた。近年、折り曲げ可能なディスプレイの検討に伴って、耐熱性ポリイミドの使用も検討されている。
【0021】
従来、TFT基板として透明ポリイミドを用いる場合、ガラス基板上に透明ポリイミド層を形成し、さらにTFT配線層を形成した後、レーザー剥離を行ない、ポリイミドをガラス基板から剥離することが検討されてきた。しかしながら、レーザー剥離のプロセスが非常に高価であること、剥離後のTFT配線層及びポリイミドの機械強度が不十分であるため、破れが発生し、製造工程の歩留まりが悪いこと等の問題が報告された。
【0022】
これらの問題への対策として、本発明は、TFT配線層の基板として、透明ポリイミド層及び厚さ10~70μmのガラス基板を用いて、プロセスの低コスト化/歩留まり向上、及び良好な機械特性を両立するものである。ここで、TFT配線層の基板としては、ガラス基板の厚さは、10~70μmであり、10~50μmが好ましく、20~50μmがより好ましい。
【0023】
<カラーフィルター層>
カラーフィルターは、画像又は映像の色を生み出すフィルターであり、その基板上に赤(R)、緑(G)及び青(B)の3色のカラーレジストで構成されるパターンが形成され、隣接し合うカラーレジスト同士の混色を防ぐため、ブラックマトリクス(BM)によって境界が格子状に区切られている。このカラーフィルターの基板としては、従来のリジッドディスプレイの場合、基板として、ガラス基板を用いられてきた。近年、折り曲げ可能なディスプレイが検討され、耐熱性があるポリイミドの使用も検討されている。
【0024】
カラーフィルターの基板としてポリイミドを用いる場合、ガラス基板上にポリイミドを形成し、さらにカラーフィルターを形成した後、レーザー剥離を行ない、ポリイミドをガラス基板から剥離することが検討されてきた。しかしながら、レーザー剥離のプロセスが非常に高価であること、剥離後のカラーフィルター層の機械強度が不十分であるため、破れが発生し、製造工程の歩留まりが悪いこと等の問題が報告された。
【0025】
これらの問題への対策として、本発明は、カラーフィルター層の基板として、透明ポリイミド層及び厚さ10~70μmのガラス基板を用いて、プロセスの低コスト化/歩留まり向上、及び良好な機械特性を両立するものである。ここで、カラーフィルター層の基板としては、ガラス基板の厚さは、10~70μmであり、10~50μmが好ましく、20~50μmがより好ましい。
【0026】
<透明ポリイミド層>
透明ポリイミド層は、ポリイミドを含有し、かつ可視光線に対して透明な層である。透明ポリイミド層は、フレキシブル液晶表示装置に使用される観点から、無色透明であることができる。具体的には、従来の褐色のポリイミド(例:カプトン等)にはない、可視光領域400nm~750nmにおける、70%以上(10μm厚換算)の光線透過率を本実施形態に係る透明ポリイミド層が有することができる。透明ポリイミド層に含まれるポリイミドは、ジアミン化合物と酸二無水物化合物を反応して得られるポリイミド前駆体を加熱することにより得られる樹脂であり、液晶表示装置のプロセスに求められる高耐熱性の特性を有している。
【0027】
ジアミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン(例えば4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンなど)、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)等が挙げられる。
【0028】
上記ジアミン化合物の中でも、ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、及びBAFLの少なくとも一つが好ましい。
【0029】
ポリイミド前駆体及びそれから得られるポリイミドは、下記一般式(1):
【化1】
{式中、R
1は、複数ある場合にはそれぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、R
2は、複数ある場合にはそれぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、そしてmは、1~200の整数を示す}
で表される構造単位を含んでよい。
【0030】
ポリイミド前駆体及びそれから得られるポリイミドは、一般式(1)の構造単位を分子中のいずれの部位に有してもよいが、シロキサンモノマーの種類、コストの観点、及び得られるポリイミド前駆体の分子量の観点から、一般式(1)の構造は、ケイ素含有化合物、例えばケイ素含有ジアミンに由来することが好ましい。ケイ素含有ジアミンとしては、例えば、下記式(2):
【化2】
{式中、P
5は、それぞれ独立に、二価の炭化水素基を示し、同一でも異なっていてもよく、P
3及びP
4は、それぞれ一般式(1)で定義されたR
1及びR
2と同じであり、かつlは、1~200の整数を表す。}
で表されるジアミノ(ポリ)シロキサンが好ましい。
【0031】
一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-1660B-3(数平均分子量4400)、X22-9409(数平均分子量1340))、両末端酸無水物変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-168-P5-B(数平均分子量4200))、両末端エポキシ変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-2000(数平均分子量1240))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X22-161A(数平均分子量1600)、X22-161B(数平均分子量3000)、KF8021(数平均分子量4400)、東レダウコーニング製:BY16-835U(数平均分子量900)チッソ社製:サイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))等が挙げられる。
【0032】
酸二無水物化合物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロヘキシル-3,3’,9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物(BPAF)等が挙げられる。
【0033】
上記酸二無水物化合物の中でも、BPDA、ODPA、CpODA、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6FDA、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、及びBPAFの少なくとも一つが好ましい。
【0034】
<フレキシブル液晶表示装置の製造方法>
本発明の別の態様は、TFT配線層、液晶層、カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板を含むフレキシブル液晶表示装置の製造方法である。フレキシブル液晶表示装置の製造方法には、特に言及しないのであれば、フレキシブル液晶表示装置について上記で説明された構成要素、原料及びプロセス条件を、単独で又は組み合わせて使用してよい。
【0035】
フレキシブル液晶表示装置の製造方法に係る第一実施形態は、以下の工程:
(A-I)TFT配線層、透明ポリイミド層及びガラス基板の順序で積層された積層構造Iを形成する積層工程と、
(B-I)積層構造Iにおいて、ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように、ガラス基板をエッチングするエッチング工程と、
を含む。
【0036】
第一実施形態では、工程(A-I)及び(B-I)によって、レーザー剥離を用いることなく、プロセスのコスト低減と歩留まり向上を図ると共に、フレキシブル液晶表示装置の曲げ耐性を確保し得る。また、工程(A-I)前又は工程(A-I)中、70μmを超える厚さ(例えば、厚さ300μm超)のガラス基板をTFT配線層のために用意しておいて、工程(B-I)では、化学的エッチングによりガラス基板の厚さを10~70μmの範囲内に調整するため、ガラス基板の強度とフレキシブル液晶表示装置の機械強度を向上させることができる。このような観点から、工程(B-I)ではガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整することが好ましく、10~24μmの範囲内に調整することがより好ましく、10~20μmの範囲内に調整することが更に好ましい。
【0037】
図2及び
図3を参照して、工程(A-I)及び(B-I)を説明する。
図2は、工程(B-I)より前に、例えば工程(A-I)中に、TFT配線層(300)、透明ポリイミド層(200)及び厚さ300μm超のガラス基板(100)を用いて形成された積層構造Iの模式断面図である。厚さ300μm超のガラス基板(100)上の透明ポリイミド層(200)の形成は、例えば、窒素雰囲気下、ポリイミド前駆体樹脂組成物の塗布又は噴霧(その後、加熱してポリイミド化)、及びガラス基板(100)と透明ポリイミド層(200)の接着などにより行われることができる。また、透明ポリイミド層(200)上のTFT配線層(300)の形成は、金属(例えばAlなど)スパッタリング、リソグラフィ・パターニング、化学蒸着などにより行われることができる。
【0038】
図3は、例えば工程(B-I)中又は工程(B-I)後、ガラス基板(100)の厚さが10~70μmの範囲内になるまでエッチングされた積層構造Iの模式断面図である。エッチングは、厚さ10μm以上のガラス基板(100)を残すという観点から、化学的エッチングが好ましく、フッ化水素酸溶液によるエッチングがより好ましい。また、プロセスコストの低減と曲げ耐性の両立という観点から、エッチング液は、平均粒径80nm以下のシリカ粒子を含まないことが好ましい。工程(B-I)では、積層構造IのTFT配線層(300)と透明ポリイミド層(200)とを例えばシール材などでマスキングして、露出したガラス基板(100)をエッチングすることが好ましい。
【0039】
フレキシブル液晶表示装置の製造方法に係る第二実施形態は、以下の工程:
(A-II)カラーフィルター層、透明ポリイミド層及びガラス基板の順序で積層された積層構造IIを形成する積層工程と、
(B-II)積層構造IIにおいて、ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように、ガラス基板をエッチングするエッチング工程と
を含む。
【0040】
第二実施形態では、工程(A-II)及び(B-II)によって、レーザー剥離を用いることなく、プロセスコストの低減を図ると共に、フレキシブル液晶表示装置の曲げ耐性を確保し得る。また、工程(A-II)前又は工程(A-II)中、70μmを超える厚さ(例えば、厚さ300μm超)のガラス基板をカラーフィルター層のために用意しておいて、工程(B-II)では、化学的エッチングによりガラス基板の厚さを10~70μmの範囲内に調整するため、ガラス基板の強度とフレキシブル液晶表示装置の機械強度を向上させることができる。このような観点から、工程(B-II)ではガラス基板の厚さを10~50μmの範囲内に調整することが好ましく、10~24μmの範囲内に調整することがより好ましく、10~20μmの範囲内に調整することが更に好ましい。
【0041】
図4及び
図5を参照して、工程(A-II)及び(B-II)を説明する。
図4は、工程(B-II)より前に、例えば工程(A-II)中に、カラーフィルター層(800)、透明ポリイミド層(900)及び厚さ300μm超のガラス基板(1000)を用いて形成された積層構造IIの模式断面図である。厚さ300μm超のガラス基板(1000)上の透明ポリイミド層(900)の形成は、例えば、窒素雰囲気下、ポリイミド前駆体樹脂組成物の塗布又は噴霧(その後、加熱してポリイミド化)、及びガラス基板(1000)と透明ポリイミド層(900)の接着などにより行われることができる。また、透明ポリイミド層(900)上のカラーフィルター層(800)の形成は、既知のカラーフィルター及びブラックマトリクス製法に従って行われることができる。
【0042】
図5は、例えば工程(B-II)中又は工程(B-II)後、ガラス基板(1000)の厚さが10~70μmの範囲内になるまでエッチングされた積層構造IIの模式断面図である。エッチングは、厚さ10μm以上のガラス基板(1000)を残すという観点から、化学的エッチングが好ましく、フッ化水素酸溶液によるエッチングがより好ましい。また、プロセスコストの低減と曲げ耐性の両立という観点から、エッチング液は、平均粒径80nm以下のシリカ粒子を含まないことが好ましい。工程(B-II)では、積層構造IIのカラーフィルター層(800)と透明ポリイミド層(900)とを例えばシール材などでマスキングして、露出したガラス基板(1000)をエッチングすることが好ましい。
【0043】
フレキシブル液晶表示装置の製造方法に係る第三実施形態は、液晶表示ユニットを提供し、上記で説明された工程(A-I)、(A-II)、(B-I)及び(B-II)の全てを行ない、かつ液晶表示ユニットと積層構造Iと積層構造IIとをシール材を介して接合して、積層構造IのTFT配線層と積層構造IIのカラーフィルター層の間に液晶を注入し、液晶層を形成するものである。
図6は、第三実施形態に係るフレキシブル液晶表示装置の製造方法のフロー概略図である。
また、上記で説明された工程(A-I)、(B-I)を行い、かつ液晶表示ユニットと積層構造Iと積層構造IIとをシール材を介して接合して、積層構造IのTFT配線層(300)と積層構造IIのカラーフィルター層(800)の間に液晶を注入し、液晶層(500)を形成することもできる(
図6a)。その後、下記工程;
(B-III)積層構造I及び積層構造IIにおいて、ガラス基板の厚さが10~70μmの範囲内になるように、ガラス基板をエッチングするエッチング工程を経て、積層構造I及び積層構造IIのガラス基板(100,1000)をエッチングすることで(
図6b)、上記同様のフレキブル液晶表示装置(1)を得ることができる。
【0044】
工程(B-I)、(B-II)、及び(B-III)におけるガラス基板を薄膜化する方法としては、化学的エッチングと物理的研磨があるが、研磨の場合にはマイクロスクラッチが発生する可能性があり、光学補償の観点から、化学的エッチングの方が好ましい。
【0045】
第一、第二及び第三実施形態に係る製造方法によって、
図1に示されるフレキシブル液晶表示装置(1)を得ることができる。
【実施例0046】
(透明ポリイミド前駆体の合成)
<合成例1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらN-メチルピロリドン(NMP)233gを加え、ジアミンとしてTFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)31.1g、ケイ素含有化合物としてX-22-1660B-3(両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル、数平均分子量4400、信越化学社製)13.20gを撹拌しながら加え、続いて酸二無水物としてBPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物)22.9g、PMDA(ピロメリット酸二無水物)10.9gを加えた。ここでは、酸二無水物:ジアミンのモル比は、100:99であった。次に、オイルバスを用いてフラスコを80℃に昇温し、3時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスAとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0047】
<合成例2>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらNMP(405g)を加え、ジアミンとしてTFMB(12.6g)、BAFL(1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン)20.5gを撹拌しながら加え、続いて酸二無水物としてCpODA(ルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物)38.4gを加えた。ここでは、酸二無水物:ジアミンのモル比は、100:98であった。次に、オイルバスを用いてフラスコを80℃に昇温し、3時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスBとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0048】
(試験サンプルの作製)
<実施例1>
縦300mm×横350mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(以下、「ガラス基板」又は単に「基板」ともいう)に、ガラス基板の端から5mm内側のエリアに、合成例1のポリイミド前駆体組成物(ワニスA)を、イミド化後の膜厚が10μmになるように塗布した。塗布にはスリットコーター(LC-R300G、SCREENファインテックソリューションズ製)を用いた。得られた塗膜付きガラス基板から、減圧乾燥機(東京応化工業製)で80℃、100Pa及び30分間の条件下で溶媒を除去した。得られたポリイミド前駆体組成物の塗膜を有するガラス基板を、オーブン(INH-9N1 光洋サーモシステム株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度300ppm以下)、400℃で1時間加熱して、ガラス基板上にポリイミド層を形成し、ポリイミド層が透明なことを目視で確認した。
【0049】
次に、ポリイミド層が形成されたガラス基板全体に、アルミニウムを100nmの厚さでスパッタリング法により成膜し、その後、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行い、アルミニウムパターンを形成した。続いて、基板全体に、CVD法によりSiN層を厚さ200nmで成膜した。
【0050】
その後、基板のSiN層が形成された方の表面及び基板側面に、アクリル系のシール材を塗布した。
【0051】
ガラス基板をエッチングするため、シール材が塗布された基板を濃度50wt%の高純度フッ化水素酸(ステラケミファ株式会社製)のエッチング漕に浸漬し、ガラス基板の膜厚が70μmになるまでエッチングを行い、超純水で洗浄を行った。ガラス基板の厚さは、基板を割断し、エポキシで包埋後、断面を光学顕微鏡で観察することにより評価した。
【0052】
その後、エッチングされたサンプルをアルカリ剥離液(TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム))に浸漬することでシール材を除去し、評価サンプルを得た。
【0053】
<実施例2~4、比較例1,2>
エッチング条件を調整することで、表1に記載のガラス基板の厚さにすること以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0054】
<実施例5~7、比較例4,5>
用いるワニスをワニスBに変更し、かつ表1に記載のガラス基板の厚さにすること以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0055】
<比較例3>
実施例1において、ガラス基板のエッチング行う前のサンプルを用いて、ポリイミドが形成されたガラス基板のガラス基板の方から、エキシマレーザー(波長308nm)を照射し、ガラス基板からポリイミドを剥離した(ガラス基板なし)。
【0056】
<比較例6>
縦300mm×横350mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(以下、「ガラス基板」又は単に「基板」ともいう)に、アルミニウムを100nmの厚さでスパッタリング法により成膜し、その後、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行い、アルミニウムパターンを形成した。続いて、基板全体に、CVD法によりSiN層を厚さ200nmで成膜し、PIフィルム無しの基板を作製した。
【0057】
その後、基板のSiN層が形成された方の表面及び基板側面に、アクリル系のシール材を塗布して積層体を得た。
【0058】
ガラス基板の薄膜化をエッチングに替えて研磨することにより行った。具体的には、前記積層体のシール材を塗布した側を研磨装置の研磨用ヘッドに固定し、研磨用ヘッドを回転するとともに、研磨パッドも回転することにより、研磨を行なった。研磨スラリーとして平均粒径80nm以下のコロイダルシリカを用いて、100g/cm2の圧力で研磨を行った。その後、上記の研磨パッドとスラリーを仕上げ用の研磨パッドとスラリーに変更して仕上げ研磨を行い、ガラス基板の厚さが24μmになるまでエッチングを行い、超純水で洗浄を行った。ガラス基板の厚さは、基板を割断し、エポキシで包埋した後、基板の断面を光学顕微鏡で観察することにより評価した。
【0059】
その後、積層体をアルカリ剥離液(TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム))に浸漬することでシール材を除去し、評価サンプルを得た。
【0060】
(アルミ表面光学顕微鏡観察)
実施例及び比較例で得られた基板のアルミ表面を、光学顕微鏡で観察した(以下「OM観察」ともいう)。観察結果を下記基準で評価した。
A(可): アルミ表面に侵食が観察されない。
B(不可): アルミ表面に侵食が観察される。
【0061】
侵食が観察されたのは、ガラス基板の厚さが5μm以下のサンプルであった。これは、ガラス基板に薄い箇所があり、そこでは、ポリイミドがフッ酸(HF)で侵食され、その後アルミニウムが侵食されたためと考えられる。
【0062】
(折り曲げ耐性評価)
実施例及び比較例で得られた基板の折り曲げ評価を行った。具体的には、基板にクラックが発生しない、最小の曲率半径の評価を行った。曲率半径を測定することで、折り曲げ耐性評価を下記基準で行った。
A(優): 曲率半径が30mm以下
B(良): 曲率半径が30mm超40mm以下
C(可): 曲率半径が40mm超50mm以下
D(不可): 曲率半径が50mm超
【0063】
曲率半径が大きいのは、ガラス基板の厚さが10μm以下のサンプルであった。これは、ガラス基板が厚いため、ガラスが割れたためと考えられる。
また、実施例7と比較例6の対比から、ガラス基板の厚さが同じ場合でも、ガラス基板のみでは折り曲げ耐性が無いが、ガラス基板とPIフィルムの複合材は、十分な折り曲げ耐性が確認された。
【0064】
(カール評価)
実施例及び比較例で得られた基板のカール評価を行った。具体的には、得られたサンプルを一昼夜23℃、50Rh%の恒温室に静置保存した。その後、平滑なガラス板の上にガラス基板側が下になるよう更に30分間で静置した。サンプルがガラス板から浮いている箇所の最大量をカール量として測定し、以下の基準で評価を行った。
A(可): カール量が15mm以下
B(不可): カール量が15mmを超える、または筒状である
【0065】
カール量が大きいのは、ガラス基板の厚さが5μm以下のサンプル、又はガラス基板無しのサンプルであった。ポリイミドと無機膜の吸水による伸びの違い等により、カールが発生したと思われる。
【0066】
ポリイミド前駆体のワニス種類、ガラス基板の厚さ、各種の評価結果について、下記表1に示す。
【0067】
【0068】
(フレキシブル液晶表示装置の製造)
上記実施例7(ガラス基板の厚さ:24μm)のサンプルを用いて、SiN膜上に100nmのPoly-Si層をCVDで形成した後、380℃でアニール処理を行った。さらに、TFT配線層の上に配向膜を形成した。続いて、液晶セルの境界にアクリル系のシール材を形成し、シール材で囲まれた領域に液晶を滴下することで、TFT基板を作製した。
【0069】
他方、別のガラス基板(厚さ:700μm)上に上記実施例と同様にポリイミド層を形成した後、ポリイミド層表面にブラックマトリクス及びカラーフィルターを形成した。その後、カラーフィルター上に配向膜を形成した。続いて、配向膜上に実施例7と同様にして、ガラス基板が厚さ24μmになるようにエッチングを行うことで、カラーフィルター基板を作製した。
【0070】
シール材を介して、上記TFT基板とカラーフィルター基板を接着し、フレキシブル液晶表示装置を製造した。なお、このフレキシブル液晶表示装置は、厚さ24μmのガラス基板とポリイミド層を基板とするTFT基板と、厚さ24μmのガラス基板とポリイミド層を基板とするカラーフィルター基板を備え、機械強度と曲げ耐性とカール性に優れる。
前記透明ポリイミド層に含まれるポリイミドが、ジアミンに由来する構成単位を有し、かつ前記ジアミンが、ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)から成る群から選択される少なくとも一つである、請求項1~9のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。
前記透明ポリイミド層に含まれるポリイミドが、酸無水物に由来する構成単位を有し、かつ前記酸無水物が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、及びビシクロヘキシル-3,3’,9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物(BPAF)から成る群から選択される少なくとも一つである、請求項1~11のいずれか一項に記載のフレキシブル液晶表示装置。