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特開2025-2425クロストーク測定方法、クロストーク測定装置、光損失測定方法、及び光損失測定装置。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002425
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】クロストーク測定方法、クロストーク測定装置、光損失測定方法、及び光損失測定装置。
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20241226BHJP
   G02B 6/02 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
G01M11/02 J
G02B6/02 461
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102597
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】則田 直人
(72)【発明者】
【氏名】中川 茉優
【テーマコード(参考)】
2G086
2H250
【Fターム(参考)】
2G086BB01
2G086BB04
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250AC62
2H250AC64
2H250AC83
2H250AC94
2H250AC95
(57)【要約】      (修正有)
【課題】OTDRを用いてクロストークを測定し得るクロストーク測定方法、クロストーク測定装置、及びOTDRを用いてクロストークの影響が抑制された光導波路の光の損失を測定し得る光損失測定方法、及び光損失測定装置を提供する。
【解決手段】クロストーク測定方法は、第1入射光を第1光導波路の一端から入射させると概ね同時に第2入射光を第2光導波路の一端から入射させ、第1光導波路の一端17から出射する出射光のパワーをOTDR20で測定する第1測定ステップと、第1入射光を第1光導波路の一端17から入射させると共に、第2光導波路にOTDR20からの光を非入射とし、第1光導波路の一端17から出射する出射光のパワーをOTDR20で測定する第2測定ステップと、第1測定ステップ及び第2測定ステップで測定された出射光のパワーを用いて第1光導波路のクロストークを求める処理ステップと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスのクロストーク測定方法であって、
OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)から出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光に対する所定のパワー比率である第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光のパワーを前記OTDRで測定する第1測定ステップと、
前記OTDRから出射する光を第1入射光として前記第1光導波路の前記一端から入射させると共に、前記第2光導波路に前記OTDRからの光を非入射とし、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光のパワーを前記OTDRで測定する第2測定ステップと、
前記第1測定ステップで測定された前記出射光のパワーと、前記第2測定ステップで測定された前記出射光のパワーと、を用いて前記第1光導波路のクロストークを求める処理ステップと、
を備える
ことを特徴とするクロストーク測定方法。
【請求項2】
前記第1測定ステップにおける前記第1入射光のパワーと前記第2入射光のパワーとは互いに概ね等しい
ことを特徴とする請求項1に記載のクロストーク測定方法。
【請求項3】
前記所定のパワー比率は、0.5以上2以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のクロストーク測定方法。
【請求項4】
前記第1測定ステップにおける前記第1入射光のパワーは、前記第2測定ステップにおける前記第1入射光のパワーの0.5倍以上2倍以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のクロストーク測定方法。
【請求項5】
前記光デバイスは、前記第1光導波路及び前記第2光導波路以外の少なくとも1つの第3光導波路を有し、前記第1測定ステップでは、前記OTDRから出射する前記光を前記第1入射光及び前記第2入射光の他に、前記第3光導波路の数と同数であり前記第1入射光に対する所定のパワー比率である第3入射光に分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の前記一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第3入射光をそれぞれの前記第3光導波路の一端側から入射させる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のクロストーク測定方法。
【請求項6】
互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスのクロストーク測定装置であって、
OTDRと、
前記OTDRと前記光デバイスとに光学的に接続され、前記OTDRから出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光に対する所定のパワー比率である第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光を前記OTDRに伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDRに伝搬することを抑制する第1測定状態と、前記OTDRから出射する光を第1入射光として前記第1光導波路の前記一端から入射させると共に、前記第2光導波路に前記OTDRからの光を非入射とさせ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光を前記OTDRに伝搬する第2測定状態と、に切り替え可能な光分離入出射部と、
前記第1測定状態において前記OTDRが測定する前記出射光のパワーと、前記第2測定状態において前記OTDRが測定する前記出射光のパワーと、を用いて前記第1光導波路のクロストークを求める処理部と、
を備える
ことを特徴とするクロストーク測定装置。
【請求項7】
前記光分離入出射部は、
前記OTDRから出射する光を前記第1入射光とそれぞれの前記第2入射光とに分離する分離部と、
前記分離部と前記第1光導波路とを光学的に接続し、前記第1入射光を前記第1光導波路に向けて伝搬すると共に前記出射光を前記OTDRに向けて伝搬する第1光接続部と、
前記第1測定状態において前記分離部とそれぞれの前記第2光導波路とを光学的に接続し、前記第2測定状態において前記分離部とそれぞれの前記第2光導波路とを光学的に非接続とする光スイッチ、及び、前記第1測定状態において前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路に向けて伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDR側に伝搬することを抑制する光学部品を有する第2光接続部と、
を備え、
前記分離部から前記第1光接続部を介して前記第1光導波路の前記一端まで光路長と、前記分離部から前記第2光接続部を介して前記第2光導波路の前記一端まで光路長と、は概ね等しい
ことを特徴とする請求項6に記載のクロストーク測定装置。
【請求項8】
前記第1光接続部は、前記第1光接続部と前記第2光接続部とに等しいパワーの光が入射する場合に前記光学部品及び前記光スイッチでの光の損失と概ね等しい光の損失を生じさせる損失部を有する
ことを特徴とする請求項7に記載のクロストーク測定装置。
【請求項9】
互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスにおける前記第1光導波路での光の損失を測定する光損失測定方法であって、
OTDRから出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光のパワーと概ね等しいパワーの第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光のパワーを前記OTDRで測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定された前記出射光のパワーを用いて前記第1光導波路での光の損失を求める処理ステップと、
を備える
ことを特徴とする光損失測定方法。
【請求項10】
前記光デバイスは、前記第1光導波路及び前記第2光導波路以外の少なくとも1つの第3光導波路を有し、前記測定ステップでは、前記OTDRから出射する前記光を前記第1入射光及び前記第2入射光の他に、前記第3光導波路の数と同数であり前記第1入射光のパワーと概ね等しいパワーの第3入射光に分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の前記一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第3入射光をそれぞれの前記第3光導波路の一端側から入射させる
ことを特徴とする請求項9に記載の光損失測定方法。
【請求項11】
互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスにおける前記第1光導波路での光の損失を測定する光損失測定装置であって、
OTDRと、
前記OTDRと前記光デバイスとに光学的に接続され、前記OTDRから出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光と概ね等しいパワーの第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光を前記OTDRに伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDRに伝搬することを抑制する光分離入出射部と、
前記OTDRが測定する前記出射光のパワーを用いて前記第1光導波路での光の損失と求める処理部と、
を備える
ことを特徴とする光損失測定装置。
【請求項12】
前記光分離入出射部は、
前記OTDRから出射する光を前記第1入射光とそれぞれの前記第2入射光とに分離する分離部と、
前記分離部と前記第1光導波路とを光学的に接続し、前記第1入射光を前記第1光導波路に向けて伝搬すると共に前記出射光を前記OTDRに向けて伝搬する第1光接続部と、
前記分離部とそれぞれの前記第2光導波路とに光学的に接続され、前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路に伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDR側に伝搬することを抑制する光学部品を有する第2光接続部と、
を備え、
前記分離部から前記第1光接続部を介して前記第1光導波路の前記一端まで光路長と、前記分離部から前記第2光接続部を介して前記第2光導波路の前記一端まで光路長と、は概ね等しい
ことを特徴とする請求項11に記載の光損失測定装置。
【請求項13】
前記第1光接続部は、前記第1光接続部と前記第2光接続部とに等しいパワーの光が入射する場合に前記光学部品での光の損失と概ね等しい光の損失を生じさせる損失部を有する
ことを特徴とする請求項12に記載の光損失測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロストーク測定方法、クロストーク測定装置、光損失測定方法、及び光損失測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増大を受け、光ファイバの伝送容量の拡大が求められている。マルチコアファイバは、空間利用効率を高めることが可能で、限られたスペースで大容量の情報伝送が可能であるため注目されている。しかし、1つの光ファイバに複数のコアが配置されているため、シングルコアファイバに比べ、特性を評価することが大変である。そこで、効率よくマルチコアファイバを評価する技術が求められている。特に、クロストークの測定はマルチコアファイバでは重要な測定項目であり、シングルコアファイバの測定項目にはないため、新に測定機器等を準備する必要がある。
【0003】
クロストーク測定方法として、下記非特許文献に記載の方法が知られている。下記非特許文献1には、PM(Power Meter)法が示されている。PM法は、マルチコアファイバの所定のコアの一端から光を当該コアに光を入射させ、このコアとクロストークするコアの他端から出射する光のパワーを測定する方法である。下記非特許文献2,3には、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)法が記載されている。OTDR法では、多チャンネルOTDRを用いて、所定のコアに光を入射させ、当該光の後方散乱光が他のコアにクロストークする光を検出して、クロストークの測定を行っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】[1] K. Takenaga, Y. Arakawa, S. Tanigawa, N. Guan, S. Matsuo, K. Saitoh and M. Koshiba, “An Investigation on Crosstalk in Multi-Core Fibers by Introducing Random Fluctuation along Longitudinal Direction,” IEICE TRAN. COMMUN., Vol.E94-B, No.2, 2011.
【非特許文献2】[2] M. Ohashi, K. Kawazu, A. Nakamura, and Y. Miyoshi, “Simple backscattered power technique for measuring crosstalk of multi-core fibers,” OptoElectronics and Communications Conference, Busan, South Korea, P1-25, 2012, DOI: https://doi.org/10.1109/OECC.2012.6276724
【非特許文献3】[3] M. Nakazawa, M. Yoshida, and T. Hirooka, “Nondestructive measurement of mode couplings along a multi-core fiber using a synchronous multi-channel OTDR,” Optics Express, vol. 20, Issue 11, pp. 12530-12540, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PM法では、マルチコアファイバの一端から光を入射させて、他端から出射する光を受光する必要がある。これに対して、OTDR法では、マルチコアファイバの一端から光を入射させ、当該一端から出射する光を受光する。このため、OTDRを用いてクロストークを測定したいとのニーズがある。しかし、非特許文献2,3に記載のクロストーク測定方法では、クロストークした後の光の後方散乱光を測定するため、測定する光のパワーが小さく、クロストークの測定がしづらい懸念がある。クロストークの少ないマルチコアファイバでは、更にクロストークの測定が困難である。しかし、上記のように、OTDRを用いてクロストークの測定を行いたいというニーズがある。このようなニーズは、マルチコアファイバのみならず、クロストークが生じ得る複数の光導波路を有する光デバイスに対しても生じ得る。
【0006】
また、マルチコアファイバのコアを伝搬する光のクロストークの影響が抑制された損失を測定したいとのニーズがある。この場合においても、OTDRを用いて当該損失の測定を行いたいというニーズがある。しかし、マルチコアファイバでは、特定のコアの光の損失を測定しようとする場合、レイリー散乱等の当該コアに起因する光の損失と、当該コアと他のコアとのクロストークに起因する損失とが合わさり、当該コアに起因する光の損失をOTDRで測定することが困難である。マルチコアファイバのみならず、クロストークが生じ得る複数の光導波路を有する光デバイスでは、このような測定が困難である。
【0007】
そこで、本発明は、OTDRを用いてクロストークを測定し得るクロストーク測定方法、クロストーク測定装置、及びOTDRを用いてクロストークの影響が抑制された光導波路の光の損失を測定し得る光損失測定方法、光損失測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の態様1は、互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスのクロストーク測定方法であって、OTDRから出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光に対する所定のパワー比率である第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光のパワーを前記OTDRで測定する第1測定ステップと、前記OTDRから出射する光を第1入射光として前記第1光導波路の前記一端から入射させると共に、前記第2光導波路に前記OTDRからの光を非入射とし、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光のパワーを前記OTDRで測定する第2測定ステップと、前記第1測定ステップで測定された前記出射光のパワーと、前記第2測定ステップで測定された前記出射光のパワーと、を用いて前記第1光導波路のクロストークを求める処理ステップと、を備えることを特徴とするクロストーク測定方法である。
【0009】
第1測定ステップでは、第1光導波路を伝搬する第1入射光が第2光導波路にクロストークすると共に、第2光導波路を伝搬する第2入射光が第1光導波路にクロストークする。一方、第2測定ステップでは、第1光導波路を伝搬する第1入射光が第2光導波路にクロストークするが、第2光導波路を第2入射光が伝搬しないため、第2入射光は、第1光導波路にクロストークしない。従って、第1測定ステップにおいて第1光導波路を伝搬する光のパワーと、第2測定ステップにおいて第1光導波路を伝搬する光のパワーとは、第2光導波路から第1光導波路にクロストークする光のパワーの分だけ異なる。従って、第1測定ステップにおける第1光導波路からの出射光のパワーと、第2測定ステップにおける第1光導波路からの出射光のパワーとは、第2光導波路から第1光導波路にクロストークする光のうちレイリー散乱等で第1光導波路の一端に伝搬する光のパワーだけ異なる。また、第1入射光が第2光導波路にクロストークする光のパワーと第2入射光が第1光導波路にクロストークする光のパワーとの比率は、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとの比率に基づく。従って、上記のように第1測定ステップで測定された出射光のパワーと、第2測定ステップで測定された出射光のパワーと、を用いることで、第1光導波路のクロストークを求めることができる。このように本態様のクロストーク測定方法によれば、OTDRを用いてクロストークを測定し得る。なお、第1ステップが第2ステップよりも先であってもよく、第2ステップが第1ステップよりも先であってもよい。また、第1測定ステップにおける第1入射光と第2測定ステップにおける第1入射光とは、異なるパワーであってもよい。
【0010】
また、本発明の態様2は、前記第1測定ステップにおける前記第1入射光のパワーと前記第2入射光のパワーとは互いに概ね等しいことを特徴とする態様1のクロストーク測定方法である。
【0011】
この場合、第1測定ステップにおいて、第1入射光が第2光導波路にクロストークする光のパワーと、第2入射光が第1光導波路にクロストークする光のパワーとが概ね等しい。従って、第1光導波路のクロストークを求めるための計算を簡易にすることができ、容易にクロストークを求めることができる。
【0012】
また、本発明の態様3は前記所定のパワー比率は、0.5以上2以下であることを特徴とする態様1のクロストーク測定方法である。
【0013】
第1入射光のパワーに対する第2入射光のパワーが0.5以上2以下であれば、上記の第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとが互いに概ね等しい場合の簡易な計算を用いても、十分に許容可能な誤差でクロストークを求めることができる。
【0014】
また、本発明の態様4は、前記第1測定ステップにおける前記第1入射光のパワーと、前記第2測定ステップにおける前記第1入射光のパワーとが、0.5倍以上2倍以下であることを特徴とする態様1から3のいずれかのクロストーク測定方法である。
【0015】
単位長さあたりのクロストークは、第1測定ステップで得られたOTDR波形の傾きと、第2測定ステップで得られたOTDR波形の傾きとの差から求めることが出来る。従って、第1測定ステップにおける第1入射光と第2測定ステップにおける第1入射光とは、異なるパワーであってもよいが、第1測定ステップにおける第1入射光のパワーと第2測定ステップにおける第1入射光のパワーとが0.5倍以上2倍以下であれば、それぞれのパワーの比がこの範囲から外れる場合と比べてOTDR波形を比較がしやすいため好ましい。
【0016】
また、本発明の態様5は、前記光デバイスは、前記第1光導波路及び前記第2光導波路以外の少なくとも1つの第3光導波路を有し、前記第1測定ステップでは、前記OTDRから出射する前記光を前記第1入射光及び前記第2入射光の他に、前記第3光導波路の数と同数であり前記第1入射光に対する所定のパワー比率である第3入射光に分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の前記一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第3入射光をそれぞれの前記第3光導波路の一端側から入射させることを特徴とする態様1から4のいずれかのクロストーク測定方法である。
【0017】
第1光導波路と第3光導波路とのクロストークは、第1光導波路と第2光導波路とのクロストークよりも小さい。このため、第1測定ステップにおいて第3光導波路に光を非入射としても、第1光導波路のクロストークを十分に許容可能な誤差で測定することができる。態様5では、前記第1入射光に対する所定のパワー比率である第3入射光を第3光導波路に入射することで、第1光導波路と第3光導波路とのクロストークの少なくとも一部を打ち消すことができる。このため、この構成によれば、第1光導波路のクロストークをより正確に求めることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明の態様6は、互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスのクロストーク測定装置であって、OTDRと、前記OTDRと前記光デバイスとに光学的に接続され、前記OTDRから出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光に対する所定のパワー比率である第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光を前記OTDRに伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDRに伝搬することを抑制する第1測定状態と、前記OTDRから出射する光を第1入射光として前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第2光導波路に前記OTDRからの光を非入射とさせ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光を前記OTDRに伝搬する第2測定状態と、に切り替え可能な光分離入出射部と、前記第1測定状態において前記OTDRが測定する前記出射光のパワーと、前記第2測定状態において前記OTDRが測定する前記出射光のパワーと、を用いて前記第1光導波路のクロストークを求める処理部と、を備えることを特徴とするクロストーク測定装置である。
【0019】
第1測定状態では、第1光導波路を伝搬する第1入射光が第2光導波路にクロストークすると共に、第2光導波路を伝搬する第2入射光が第1光導波路にクロストークする。一方、第2測定状態では、第1光導波路を伝搬する第1入射光が第2光導波路にクロストークするが、第2光導波路を第2入射光が伝搬しないため、第2入射光は、第1光導波路にクロストークしない。従って、処理部が、上記のクロストーク測定方法と同様にして、第1測定状態で測定された出射光のパワーと、第2測定状態で測定された出射光のパワーと、を用いることで、OTDRを用いて、第1光導波路のクロストークを求めることができる。
【0020】
また、本発明の態様7は、前記光分離入出射部が、前記OTDRから出射する光を前記第1入射光とそれぞれの前記第2入射光とに分離する分離部と、前記分離部と前記第1光導波路とを光学的に接続し、前記第1入射光を前記第1光導波路に向けて伝搬すると共に前記出射光を前記OTDRに向けて伝搬する第1光接続部と、前記第1測定状態において前記分離部とそれぞれの前記第2光導波路とを光学的に接続し、前記第2測定状態において前記分離部とそれぞれの前記第2光導波路とを光学的に非接続とする光スイッチ、及び、前記第1測定状態において前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路に向けて伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDR側に伝搬することを抑制する光学部品を有する第2光接続部と、を備え、前記分離部から前記第1光接続部を介して前記第1光導波路の前記一端まで光路長と、前記分離部から前記第2光接続部を介して前記第2光導波路の前記一端まで光路長と、は概ね等しいことを特徴とする態様6のクロストーク測定装置である。
【0021】
また、本発明の態様8は、前記第1光接続部が、前記第1光接続部と前記第2光接続部とに等しいパワーの光が入射する場合に前記光学部品及び前記光スイッチでの光の損失と概ね等しい光の損失を生じさせる損失部を有することを特徴とする態様7のクロストーク測定装置である。
【0022】
第1光接続部が上記損失部を有することで、第1光導波路に入射する第1入射光のパワーと第2光導波路に入射する第2入射光のパワーとの比率が、光学部品及び光スイッチでの光の損失によって所定のパワー比率から変動することを抑制し得る。
【0023】
また、上記課題を解決するため、本発明の態様9は、互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスにおける前記第1光導波路での光の損失を測定する光損失測定方法であって、OTDRから出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光のパワーと概ね等しいパワーの第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光のパワーを前記OTDRで測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定された前記出射光のパワーを用いて前記第1光導波路での光の損失を求める処理ステップと、を備えることを特徴とする光損失測定方法である。
【0024】
この光損失測定方法では、第1光導波路に入射する第1入射光のパワーと第2光導波路に入射する第2入射光のパワーとが概ね等しい。従って、測定ステップにおいて、第1入射光が第2光導波路にクロストークする光のパワーと、第2入射光が第1光導波路にクロストークする光のパワーとが概ね等しい。このため、OTDRで測定される出射光のパワーは、クロストークが概ね生じない状態で第1入射光が第1光導波路を伝搬する場合のレイリー散乱等による第1入射光の損失が反映される。このため、処理ステップにより、第1入射光のクロストークの影響が抑制された損失を求め得る。従って、本態様の光損失測定方法によれば、OTDRを用いて、クロストークの影響が抑制された第1光導波路の損失を測定し得る。
【0025】
また、本発明の態様10は、前記光デバイスは、前記第1光導波路及び前記第2光導波路以外の少なくとも1つの第3光導波路を有し、前記測定ステップでは、前記OTDRから出射する前記光を前記第1入射光及び前記第2入射光の他に、前記第3光導波路の数と同数であり前記第1入射光のパワーと概ね等しいパワーの第3入射光に分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の前記一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第3入射光をそれぞれの前記第3光導波路の一端側から入射させることを特徴とする態様9の光損失測定方法である。
【0026】
第1光導波路と第3光導波路とのクロストークは、第1光導波路と第2光導波路とのクロストークよりも小さい。このため、測定ステップにおいて第3光導波路に光を非入射としても、クロストークの影響が抑制された第1光導波路の損失を十分に許容可能な誤差で測定することができる。しかし、前記第1入射光と概ね等しいパワーの第3入射光を第3光導波路に入射することで、第1光導波路と第3光導波路とのクロストークを概ね打ち消すことができる。このため、この構成によれば、クロストークの影響が抑制された第1光導波路の損失をより正確に測定し得る。
【0027】
また、上記課題を解決するため、本発明の態様11は、互いに並列される第1光導波路及び前記第1光導波路に最短で隣接する少なくとも1つの第2光導波路を含む複数の光導波路を有する光デバイスにおける前記第1光導波路での光の損失を測定する光損失測定装置であって、OTDRと、前記OTDRと前記光デバイスとに光学的に接続され、前記OTDRから出射する光を第1入射光と前記第2光導波路の数と同数であり前記第1入射光と概ね等しいパワーの第2入射光とに分離し、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させると共に、前記第1入射光を前記第1光導波路の一端から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路の一端から入射させ、前記第1光導波路の前記一端から出射する出射光を前記OTDRに伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDRに伝搬することを抑制する光分離入出射部と、前記OTDRが測定する前記出射光のパワーを用いて前記第1光導波路での光の損失と求める処理部と、を備えることを特徴とする光損失測定装置である。
【0028】
この光損失測定装置では、光分離入出射部から第1光導波路に入射する第1入射光のパワーと第2光導波路に入射する第2入射光のパワーとが概ね等しい。上記の光損失測定方法と同様にして、OTDRで測定される出射光のパワーは、クロストークが概ね生じない状態で第1入射光が第1光導波路を伝搬する場合におけるレイリー散乱等による第1入射光の損失が反映される。このため、処理部により、第1光導波路のクロストークの影響が抑制された第1入射光の損失を求め得る。従って、本態様の光損失測定装置によれば、OTDRを用いて、第1光導波路のクロストークの影響が抑制された損失を測定し得る。
【0029】
また、本発明の態様12は、前記光分離入出射部は、前記OTDRから出射する光を前記第1入射光とそれぞれの第2入射光とに分離する分離部と、前記分離部と前記第1光導波路とを光学的に接続し、前記第1入射光を前記第1光導波路に向けて伝搬すると共に前記出射光を前記OTDRに向けて伝搬する第1光接続部と、前記分離部とそれぞれの前記第2光導波路とに光学的に接続され、前記第2入射光をそれぞれの前記第2光導波路に伝搬すると共に前記第2光導波路の前記一端から出射する光を前記OTDR側に伝搬することを抑制する光学部品を有する第2光接続部と、を備え、前記分離部から前記第1光接続部を介して前記第1光導波路の前記一端まで光路長と、前記分離部から前記第2光接続部を介して前記第2光導波路の前記一端まで光路長と、は概ね等しいことを特徴とする態様11の光損失測定装置である。
【0030】
また、本発明の態様13は、前記第1光接続部が、前記第1光接続部と前記第2光接続部とに等しいパワーの光が入射する場合に前記光学部品での光の損失と概ね等しい光の損失を生じさせる損失部を有することを特徴とする態様12の光損失測定装置である。
【0031】
第1光接続部が上記損失部を有することで、第1光導波路に入射する第1入射光のパワーと第2光導波路に入射する第2入射光のパワーとが、光学部品での光の損失によって互いに概ね等しいパワーから変動することを抑制し得る。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、OTDRを用いてクロストークを測定し得るクロストーク測定方法、クロストーク測定装置、及びOTDRを用いてクロストークの影響が抑制された光導波路の光の損失を測定し得る光損失測定方法、及び光損失測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図2】第1実施形態におけるクロストーク測定装置を示す図である。
図3】第1実施形態におけるクロストーク測定方法の手順を示すフローチャートである。
図4】第1測定ステップにおけるマルチコアファイバでのクロストークの様子を示す図である。
図5】第2測定ステップにおけるマルチコアファイバでのクロストークの様子を示す図である。
図6】OTDRでの測定結果を示す図である。
図7】第1実施形態によるクロストークの測定結果とPM法によるクロストークの測定結果とを示す図である。
図8】第1実施形態の変形例に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図9】第1実施形態の変形例におけるクロストーク測定装置を示す図である。
図10】第2実施形態における光損失測定装置を示す図である。
図11】第2実施形態における光損失測定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るクロストーク測定方法、クロストーク測定装置、光損失測定方法、及び光損失測定装置を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。マルチコアファイバ10は、光の伝搬が可能な複数のコア11,12と、それぞれのコア11,12の外周面を囲うクラッド15と、を有する。クラッド15は、コア11の外周面とコア12の外周面とを囲うコア11及びコア12の共通のクラッドであるため、共通クラッドと呼ばれる場合がある。なお、クラッド15の外周面が樹脂から成る被覆層で囲われてもよい。コア11に隣接するコアはコア12のみである。従って、コア12はコア11に最短で隣接するコアである。マルチコアファイバ10の長さは、コア11とコア12とで測定可能なクロストークが生じる長さであり、例えば、数百m以上である。
【0036】
それぞれのコア11,12は、一端及び他端を有しており、マルチコアファイバ10の長手方向に沿って、互いに並列している。コア11,12の屈折率は、クラッド15の屈折率よりも高く、それぞれのコア11,12は光の伝搬が可能である。このため、コア11は第1光導波路であり、コア12は第2光導波路であるため、マルチコアファイバ10は、互いに並列される複数の光導波路を有する光デバイスである。コア11とコア12とは、螺旋状に形成されて並列していてもよく、コア11,12が直線状に形成されて、並列していてもよい。
【0037】
本実施形態では、コア11,12はゲルマニウム(Ge)等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成り、クラッド15は何ら添加物の無いシリカガラスから成る。なお、例えば、コア11,12は何ら添加物の無いシリカガラスから成り、クラッド15はフッ素(F)等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成ってもよく、コア11,12は屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成り、クラッド15は屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成っていてもよい。また、屈折率が高くなるドーパント及び屈折率が低くなるドーパントは特に制限されるものではない。
【0038】
次に、本実施形態の光デバイスにおけるクロストーク測定装置について説明する。図2は、本実施形態におけるクロストーク測定装置を示す図である。図2に示すように本実施形態のクロストーク測定装置1は、OTDR20と、処理部25と、光分離入出射部30と、を主な構成として備え、マルチコアファイバ10におけるクロストークを測定する。マルチコアファイバ10は、一端17及び他端を有する。なお、以下の説明において、一端17及び他端をコア11,12の一端17及び他端としても説明する場合がある。
【0039】
OTDR20は、光ファイバ等に接続されて用いられ、パルス状の光を出射し、当該光ファイバから入射する光のパワーの測定、及びパルス状の光を出射してから測定される光が入射するまでの時間の測定を行うことができ、光ファイバ等の伝送損失や曲げ損失、接続損失等といった光の損失測定、光ファイバ等の断線箇所の検出、光の反射量等を測定することができる機器である。本実施形態では、OTDR20に光ファイバ21が接続されている。
【0040】
処理部25は、OTDRに電気的に接続されており、OTDR20が受光する光のパワーに係るデータが処理部25に出力される。処理部25は、OTDR20が測定する光のパワーを用いて、クロストークを求める演算装置である。処理部25は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、処理部25は、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。処理部25は、OTDR20から光のパワーに係るデータが入力すると、このデータに基づいて、後述のように、コア11のクロストークを求めて、求めたクロストークに係るデータを出力する。なお、処理部25とOTDR20とが1つの筐体内に入れられ、部品の一部が共用されてもよい。
【0041】
光分離入出射部30は、分離部31と、第1光接続部311と、第2光接続部322と、を主な構成として備える。
【0042】
分離部31は、光ファイバ21に接続され、OTDR20から出射する光は分離部31に入射する。分離部31は、OTDR20から出射する光を複数の光に分離する。本実施形態では、マルチコアファイバ10が2つのコア11,12を有するため、分離部31は、OTDR20から出射する光を第1入射光と第2入射光とに分離する。分離部31としては、並列する2つの光ファイバのコアを光学的に結合させる光カプラを挙げることができる。本実施形態では、光ファイバ21から入射する光を互いに概ね等しいパワーの2つの第1入射光と第2入射光とに分離する。このような光カプラは3dBカプラと称される場合がある。分離部31は、光ファイバ35,36に接続されており、分離された第1入射光は光ファイバ35に入射され、分離された第2入射光は光ファイバ36に入射される。
【0043】
第1光接続部311は、損失部32と、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39の一部と、を主な構成として備え、第2光接続部322は、光学部品33と、光スイッチ34と、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39の他の一部と、を主な構成として備える。
【0044】
損失部32は、分離部31に接続されている光ファイバ35の一部の区間が所定の直径で曲げられることで成る。当該区間において、光ファイバ35を伝搬する光の一部は、コアから漏洩して損失する。
【0045】
光学部品33は、光ファイバ36と光ファイバ37とに接続されている。光学部品33は、光ファイバ36から入射する光を光ファイバ37に出射し、光ファイバ37から入射する光が光ファイバ36に伝搬することを抑制する。光学部品33としては、アイソレータやサーキュレータ等を挙げることができる。光学部品33がアイソレータの場合、アイソレータの順方向は、光ファイバ36側から光ファイバ37側への方向である。この場合、アイソレータは、光ファイバ36側からの光を光ファイバ37側に透過させ、光ファイバ37側から光ファイバ36側への光のパワーを減衰させる。なお、アイソレータは、光ファイバ37側から光ファイバ36側への光を遮断するものでもよい。光学部品33がサーキュレータの場合、サーキュレータは、例えば、光ファイバ36に接続される第1ポートと、光ファイバ37に接続され第1ポートに入射する光を出射する第2ポートと、第2ポートに入射する光を出射する第3ポートと、を含む。この場合、第3ポートには、反射光が第1ポートに伝搬することを抑制するために、無反射終端が設けられた光ファイバが接続されることが好ましい。
【0046】
光スイッチ34は、光ファイバ37と光ファイバ38とに接続されている。光スイッチ34は、光ファイバ37と光ファイバ38とを光学的に接続する状態と、光ファイバ37と光ファイバ38とを光学的に非接続とする状態とに切り替え可能である。光スイッチ34としては、機械型の光スイッチや電子型の光スイッチを挙げることができる。機械型の光スイッチとしては、プリズム、ミラー、或いは光ファイバを機械的に移動する構成の光スイッチを挙げることができる。ミラーとしてMEMSミラーを挙げることができる。電子型の光スイッチとしては、電気光学効果、磁気光学効果、音響光学効果、熱光学効果、或いは半導体ゲートを利用する構成の光スイッチを挙げることができる。また、光ファイバ37と光ファイバ38を単心コネクタで接続または融着接続する構成も、光スイッチ34とすることができる。
【0047】
なお、光学部品33と光スイッチ34とを光が透過する場合に、当該光はある程度損失する。このため、第1光接続部311と第2光接続部322とに等しいパワーの光が入射する場合に、損失部32で損失する光のパワーは、光学部品33及び光スイッチ34で損失する光のパワーと概ね等しいことが、第1光接続部311で損失する光のパワーと第2光接続部322で損失する光のパワーとが異なることを抑制し得るため好ましい。
【0048】
光ファイバ35及び光ファイバ38は、それぞれファン・イン-ファン・アウトデバイス39に接続されている。ファン・イン-ファン・アウトデバイス39は、マルチコアファイバ10の一端17においてコア11,12と個別に光学的に接続可能な不図示の複数の光導波路と、それぞれの光導波路に個別に光学的に接続されているコアを含む一対の光ファイバと、を有する。この一対の光ファイバが光ファイバ35,36に接続されている。なお、光ファイバ35,36がこの一対の光ファイバであってもよい。ファン・イン-ファン・アウトデバイス39は、光ファイバ35のコアとコア11とを光学的に接続し、光ファイバ38のコアとコア12とを光学的に接続している。
【0049】
なお、分離部31から第1光接続部311を介してコア11の一端17まで光路長と、分離部31から第2光接続部322を介してコア12の一端17まで光路長とは概ね等しい。光路長が概ね等しいとは、光路長の差がOTDR20から出射する光のパルス幅以下の状態である。光路長の差は、当該パルス幅の1/2以下であることが好ましく、当該パルス幅の1/3以下がより好ましく、当該パルス幅の1/5以下であることが更に好ましく、これら光路長が互いに等しいことが最も好ましい。
【0050】
次に、本実施形態の光デバイスにおけるクロストーク測定方法について説明する。図3は、本実施形態におけるクロストーク測定方法の手順を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態のクロストーク測定方法は、第1測定ステップS11と、第2測定ステップS12と、処理ステップS13と、を備える。
【0051】
(第1測定ステップS11)
本ステップは、OTDR20から出射する光を第1入射光と第2入射光とに分離し、第1入射光を第1光導波路であるコア11の一端から入射させると共に、第1入射光をコア11の一端17から入射させるタイミングと概ね同じタイミングで第2入射光をそれぞれのコア12の一端17から入射させ、コア11の一端17から出射する出射光のパワーをOTDR20で測定するステップである。
【0052】
本ステップに先立ち、光スイッチ34を光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとを光学的に接続する状態とする。こうして、光分離入出射部30は、第1測定状態となる。
【0053】
本実施形態では、上記の通りコア12は1つである。このため、分離部31では、光ファイバ21から入射する光を2つの光に分離し一方を第1入射光として光ファイバ35に出射し、他方を第2入射光として光ファイバ36に出射する。つまり、本実施形態では、分離部31は、入射する光を第1入射光と、コア12と同数の第2入射光とに分離する。本実施形態では、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとは互いに概ね等しい。
【0054】
光ファイバ35に入射する第1入射光は、損失部32で光の一部を漏洩して、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39に入射する。上記のように、本ステップでは、光スイッチ34は、光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとを光学的に接続している。このため、光ファイバ36に入射する第2入射光は、光学部品33及び光スイッチ34を介して光ファイバ38からファン・イン-ファン・アウトデバイス39に入射する。損失部32で損失する第1入射光のパワーは、光学部品33及び光スイッチ34で損失する第2入射光のパワーと概ね等しい。このため、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39に入射する第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとは概ね等しい。
【0055】
ファン・イン-ファン・アウトデバイス39に入射する第1入射光は、第1光導波路であるコア11に一端17から入射してコア11を伝搬する。ファン・イン-ファン・アウトデバイス39に入射する第2入射光は、第2光導波路であるコア12に一端17から入射してコア12を伝搬する。なお、上記のように、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39に入射する第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとは概ね等しいため、コア11に入射する第1入射光のパワーとコア12に入射する第2入射光のパワーとは概ね等しい。また、上記のように分離部31から第1光接続部311を介してコア11の一端17まで光路長と、分離部31から第2光接続部322を介してコア12の一端17まで光路長とは概ね等しい。このため、第1入射光がコア11の一端17から入射するタイミングと、第2入射光がコア12の一端17から入射するタイミングは、概ね同じである。
【0056】
図4は、本ステップにおけるマルチコアファイバ10でのクロストークの様子を示す図である。図4に示すように、第1入射光の一部がコア11からコア12にクロストークし、第2入射光の一部がコア12からコア11にクロストークする。図4では、コア11からコア12にクロストークする光をCL12で示し、コア12からコア11にクロストークする光をCL21で示している。本実施形態では、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとが概ね等しいため、コア11からコア12にクロストークする光CL12のパワーと、コア12からコア11にクロストークする光CL21のパワーとは、互いに概ね等しい。従って、第1入射光のクロストークによる光の損失は抑制される。また、第1入射光は、レイリー散乱等でパワーを損失しながらコア11を伝搬し、第2入射光は、レイリー散乱等でパワーを損失しながらコア12を伝搬する。
【0057】
レイリー散乱等でコア11を一端17側に戻る光は、コア11の一端17からファン・イン-ファン・アウトデバイス39を介して光ファイバ35に入射し、光ファイバ35から分離部31及び光ファイバ21を介してOTDR20に入射する。一方、レイリー散乱等でコア12を一端17側に戻る光は、コア12の一端17からファン・イン-ファン・アウトデバイス39を介して光ファイバ38に入射し、光ファイバ38から光スイッチ34及び光ファイバ37を介して光学部品33に入射する。しかし、光学部品33は、光ファイバ36から入射する光を光ファイバ37に伝搬するが、光ファイバ37から入射する光の光ファイバ36への伝搬を抑制するため、OTDR20には、コア11から戻る光が入射し、コア12から戻る光のOTDR20への入射は抑制される。
【0058】
従って、OTDR20では、コア11の一端17から出射し、OTDR20に入射する光のパワーが測定される。OTDR20は、測定された光のパワーに係る情報を処理部25に出力する。
【0059】
(第2測定ステップS12)
本ステップは、OTDR20から出射する光を第1入射光としてコア11の一端17から入射させると共に、コア12にOTDR20からの光を非入射とし、コア11の一端17から出射する出射光のパワーをOTDR20で測定するステップである。
【0060】
本ステップに先立ち、光スイッチ34を光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとが光学的に非接続である状態とする。こうして、光分離入出射部30は、第2測定状態となる。
【0061】
本実施形態では、第1測定ステップS11でOTDR20から出射した光と等しいパワーの光をOTDR20から出射させる。第1測定ステップS11と本ステップとでは、分離部31は変化しないため、本実施形態の本ステップでは、第1測定ステップS11で分離部31から出射する第1入射光のパワーと等しいパワーの第1入射光が分離部31から光ファイバ35に出射する。また、第1測定ステップS11で分離部31から出射する第2入射光のパワーと等しいパワーの第2入射光が分離部31から光ファイバ36に出射する。
【0062】
光ファイバ35に入射する第1入射光は、第1測定ステップS11のときと同様にして、損失部32で光の一部を漏洩して、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39を介して、コア11に一端17から入射する。また、上記のように、本ステップでは、光スイッチ34は、光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとを光学的に非接続としている。このため、光ファイバ36に入射する第2入射光は、光学部品33、光ファイバ37を介して、光スイッチ34に入射するが、光ファイバ38へは伝搬しない。このため、本ステップでは、OTDR20からの光の一部である第2入射光はコア12に非入射である。コア11に入射する第1入射光は、コア11を伝搬する。
【0063】
図5は、本ステップにおけるマルチコアファイバ10でのクロストークの様子を示す図である。図4では、コア11からコア12にクロストークする光をCL12で示している。図5に示すように、第1入射光の一部がコア11からコア12にクロストークするが、コア12には第2入射光が入射しないため、コア12からコア11には第2入射光の一部がクロストークしない。また、第1測定ステップS11と同様にして、第1入射光は、レイリー散乱等でパワーを損失しながらコア11を伝搬する。
【0064】
レイリー散乱等でコア11を一端側に戻る光は、第1測定ステップS11と同様にして、コア11からファン・イン-ファン・アウトデバイス39、光ファイバ35、分離部31、及び光ファイバ21を介してOTDRに入射する。一方、コア12の一端17からは光が殆ど出射しない。コア12の一端17から光が出射する場合であっても、当該光は光スイッチ34およびアイソレータなどの光学部品33により、光ファイバ36に伝搬しない。
【0065】
OTDR20では、コア11の一端17から出射し、OTDR20に入射する光のパワーが測定される。OTDR20は、測定された光のパワーに係る情報を処理部25に出力する。
【0066】
図6は、OTDR20での測定結果を示す図である。本測定は、波長1625nmでパルス幅500nsの光を用い、平均化時間60秒で行った。図6において、直線状ではない実線は第1測定ステップS11においてOTDR20での測定結果を示し、破線は第2測定ステップS12においてOTDR20での測定結果を示し、点線は、第1測定ステップS11でのOTDR20での測定結果と、第2測定ステップS12でのOTDR20での測定結果との差を示す。
【0067】
図6において、上記実線の傾きは、第1測定ステップS11において、コア11の単位長さ当たりの光の損失が反映されている。ここで言う傾きは、例えば、実線を平均化して直線化した場合の当該直線の傾きである。上記のように第1測定ステップS11では、コア11を伝搬する第1入射光がコア12にクロストークすると共に、コア12を伝搬する第2入射光がコア11にクロストークする。このため、第1入射光のクロストークによる光の損失は抑制される。従って、実線の傾きには、コア11のクロストークの影響が抑制された単位長さ当たりの損失が反映されている。
【0068】
なお、コア11に入射する第1入射光のパワーとコア12に入射する第2入射光のパワーとが10%異なっていても、コア11における第1入射光の損失は、0.001dB/km程度しか変わらない。これは、光の損失の測定結果として十分に許容できる範囲である。従って、本明細書では、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとが互いに概ね等しい場合には、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとが10%以下で異なる場合が含まれる。ただし、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとは、5%以下で異なることが好ましく、2%以下で異なることがより好ましく、等しいことがさらに好ましい。
【0069】
図6において、破線の傾きは、第2測定ステップS12において、コア11の単位長さ当たりの光の損失が反映されている。ここで言う傾きは、例えば、破線を平均化して直線化した場合の当該直線の傾きである。上記のように第2測定ステップS12では、コア11を伝搬する第1入射光がコア12にクロストークするが、コア12には第2入射光が入射しないため、コア12からコア11へのクロストークは起こらない。このため、第1入射光はクロストークにより光が損失する。従って、破線の傾きには、コア11のクロストークの影響が抑制された場合の単位長さ当たりの損失と、クロストークによる単位長さ当たりの損失との合計が反映されている。なお、図6における距離1.7km近傍及び3.7km近傍では、OTDR20が測定する光のパワーが大きく変化しており、この部分は、マルチコアファイバ10の端部に相当する。従って、上記実線及び破線において、このような特異点での測定結果は利用しない。
【0070】
図6において、第1測定ステップでのOTDR20の測定結果と、第2測定ステップでのOTDR20の測定結果との差を示す点線の傾きが直線状の実線で示されている。この直線の傾きには、コア11の単位長さ当たりクロストークが反映されている。従って、この直線からコア11のクロストークを求めてもよい。ただし、下記の様に数式を用いた次の処理ステップS13のように処理を行うことが好ましい。
【0071】
(処理ステップS13)
本ステップは、第1測定ステップS11においてOTDR20が測定するコア11から出射する出射光のパワーと、第2測定ステップS12においてOTDR20が測定するコア11から出射する出射光のパワーと、を用いてクロストークを求めるステップである。
【0072】
2つのコアを有するマルチコアファイバの光の結合パワー理論から、コア11,12を伝搬する光のパワーは、次の式(1)、式(2)で示される微分方程式で表すことができる。
zは、コア11,12の一端17からの距離であり、P(z),P(z)は、一端17からzの地点におけるコア11,12を伝搬するそれぞれの光のパワーである。α,αは、コア11,12での損失係数であり、h12,h21は、コア11とコア12とのコア間結合定数であり、h12=h21=hと書ける。P’(z)は、dP(z)/dzであり、P’(z)は、dP(z)/dzである。また、一般的に、マルチコアファイバでは、各コアの損失係数は概ね等しく、また、結合定数への影響も無視し得るため、α=α=αとみなせる。
【0073】
このため、上記式(1)、式(2)は、下記式(3)、式(4)で示される微分方程式となる。
【0074】
式(3)、式(4)の一般解は、定数C,Cを用いて、下記式(5)、式(6)で書くことができる。
【0075】
第1測定ステップS11では、コア11に入射する第1入射光のパワーと、コア12に入射する第2入射光のパワーとが、概ね等しい。そこで、コア11,12の一端17から入射する第1入射光、第2入射光のパワーをPとすると、P(0)=P(0)=Pである。このとき、C=P、C=0となり、式(5)、式(6)は、下記式(7)となる。
【0076】
また、第2測定ステップS12では、コア11に一端17から入射する第1入射光のパワーは、第1測定ステップS11でコア11に一端17から入射する第1入射光のパワーに等しくPである。また、コア12に一端17から入射する第2入射光のパワーは0である。従って、P(0)=P、P(0)=0である。このとき、C=C=(1/2)Pとなり、式(5)、式(6)は、下記式(8)、式(9)となる。
【0077】
ここで、第1測定ステップS11においてコア11,12を伝搬する光のパワーをそれぞれP1,a(z),P2,a(z)とし、第2測定ステップS12においてコア11,12を伝搬する光のパワーをそれぞれP1,b(z),P2,b(z)とする。この場合、式(7)のP(z),P(z)は、P1,a(z),P2,a(z)となり、式(8)、式(9)のP(z),P(z)をP1,b(z),P2,b(z)となる。このとき、式(9)は、式(10)となる。
【0078】
ここでマルチコアファイバ10の長さをLとすると、z=Lとして、コア11のクロストークX(L)は、P2,b(L)/P1,b(L)で表すことができるため、クロストークX(L)は、下記式(11)で示される。なお、OTDR20で測定される、コア11、コア12のパワーは、各式のパワーにレイリー散乱する確率である後方散乱係数、レイリー散乱した光が一端方向に向かって伝搬する割合である捕獲率を掛けた値になるが、コア11、12にほぼ共通であり、分母分子でキャンセルされるため、本計算式ではこれらを記載していない。
【0079】
1,b(L)/P1,a(L)は、第2測定ステップS12でOTDR20が測定する光のパワーを第1測定ステップS11でOTDR20が測定する光のパワーで除した値に置き換えることができる。従って、処理部25は、第2測定ステップS12でOTDR20が測定する光のパワーを第1測定ステップS11でOTDR20が測定する光のパワーで除した値をP1,b(L)/P1,a(L)として、式(11)からコア11のクロストークを求める。
【0080】
こうして、コア11のクロストークがOTDR20を用いて測定される。
【0081】
次に、上記測定の精度について検証する。
【0082】
まず、コア11での光の損失の測定の精度について説明する。上記のように図6の実線の傾きは、第1測定ステップS11におけるコア11の単位長さ当たりの光の損失が反映され、破線の傾きは、第2測定ステップS12におけるコア11の単位長さ当たりの光の損失が反映されている。そこで、図6の測定をしたときと同様の条件で、OTDR20が測定する出射光のパワーに基づいて、第1測定ステップS11、第2測定ステップS12におけるコア11の光の損失を波長1625nm及び1650nmで測定した。また、それぞれの波長において、コア11の損失をカットバック法により測定した。その結果を下記表1に示す。
【0083】
表1のカットバック法は、クロストークの影響が抑制されたコア11の光の損失を測定できるように受光する他端でコア11、コア12両方の光を受光する方法である。表1に示すように、第1測定ステップS11により測定したコア11の光の損失は、カットバック法により測定したコア11の光の損失を概ね一致する結果となった。
【0084】
次に、コア11のクロストークの測定の精度について説明する。図6の測定をしたときと同様の条件で、本実施形態のクロストークの測定方法に沿って、コア11のクロストークを波長1625nm及び1650nmで測定した。また、同様の波長で、コア11のクロストークをPM法で測定した。その結果を図7に示す。図7において、△は、本実施形態による測定結果であり、〇は、PM法による測定結果を示す。図7に示すように、本実施形態により測定したコア11のクロストークと、PM法により測定したコア11のクロストークとは、概ね一致した。
【0085】
上記実施形態では、分離部31は、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとが等しくなるようにOTDR20からの光を2つに分離した。このため、クロストークX(z)は、上記式(11)で示された。次に、分離部31が、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとが所定のパワー比率となるようにOTDR20からの光を2つに分離する場合について考察する。この場合、分離部31が、OTDR20からの光を所定のパワー比率となるように第1入射光と第2入射光とに分離する。
【0086】
分離部31から出射する第1入射光と第2入射光の所定のパワー比率を1:ηとする。コア11の一端17から入射する第1入射光のパワーを上記と同様にP(0)=Pとすると、コア12の一端17から入射する第2入射光のパワーはP(0)=ηPとなる。このとき、定数C,Cは、C={(1+η)/2}P、C={(1-η)/2}Pとなる。このため、式(5)、式(6)は、下記式(12)、式(13)となる。
【0087】
この場合、式(11)のP1,b(L)/P1,a(L)は、次の式(14)となる。
【0088】
hLが1より十分に小さい場合、tanh(hL)≒hLである。このため、式(11)は、次の式(15)となる。
【0089】
上記のように、P1,b(z)/P1,a(z)は、第2測定ステップS12でOTDR20が測定する光のパワーを第1測定ステップS11でOTDR20が測定する光のパワーで除した値に置き換えることができる。従って、本例の場合、処理部25は、第2測定ステップS12でOTDR20が測定する光のパワーを第1測定ステップS11でOTDR20が測定する光のパワーで除した値をP1,b(z)/P1,a(z)として、式(15)からコア11のクロストークを求める。
【0090】
こうして、分離部31で、第1入射光と第2入射光が所定のパワー比率1:ηとされる場合のコア11のクロストークが、OTDR20を用いて測定される。
【0091】
ところで、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとが概ね等しい場合と、第1入射光のパワーと第2入射光のパワー比率が1:0.5の場合とで、式(11)により求められるコア11のクロストークは、3dB程度の差しかない。この差は、PM法などの測定方法におけるクロストーク測定のばらつきと同程度であり、クロストークの測定結果として許容できる範囲である。従って、第1入射光のパワーと第2入射光の所定のパワー比率が0.5:1から1:0.5であれば、すなわち所定のパワー比率が0.5以上2以下であれば、式(11)を用いても許容し得る誤差内でコア11のクロストークを測定し得る。
【0092】
なお、第1測定ステップS11が第2測定ステップS12よりも先であってもよく、第2測定ステップS12が第1測定ステップS11よりも先であってもよい。
【0093】
以上説明したように、本実施形態のクロストーク測定方法は、OTDR20から出射する光を第1入射光と第2入射光とに分離し、第1入射光をコア11の一端17から入射させると共に第2入射光をコア12の一端17から入射させ、コア11の一端17から出射する出射光のパワーをOTDR20で測定する第1測定ステップS11と、OTDR20から出射する光を第1測定ステップS11でコア11に入射させる第1入射光のパワーと概ね等しいパワーの第1入射光としてコア11の一端17から入射させると共に、コア12にOTDR20からの光を非入射とし、コア11の一端17から出射する出射光のパワーをOTDR20で測定する第2測定ステップS12と、第1測定ステップS11で測定された出射光のパワーと、第2測定ステップS12で測定された出射光のパワーと、を用いてコア11のクロストークを求める処理ステップS13と、を備える。
【0094】
このようなクロストーク測定方法及びクロストーク測定装置によれば、第1測定ステップS11では、コア11を伝搬する第1入射光がコア12にクロストークすると共に、コア12を伝搬する第2入射光がコア11にクロストークする。一方、第2測定ステップS12では、コア11を伝搬する第1入射光がコア12にクロストークするが、第2入射光は、コア11にクロストークしない。従って、第1測定ステップS11においてコア11を伝搬する光のパワーと、第2測定ステップにおいてコア11を伝搬する光のパワーとは、コア12から第1光導波路にクロストークする光のパワーの分だけ異なる。従って、第1測定ステップS11におけるコア11からの出射光のパワーと、第2測定ステップS12におけるコア11からの出射光のパワーとは、コア12からコア11にクロストークする光のうちレイリー散乱等でコア11の一端17に伝搬する光のパワーだけ異なる。また、第1入射光がコア12にクロストークする光のパワーと第2入射光がコア11にクロストークする光のパワーとの比率は、第1入射光のパワーと第2入射光のパワーとの比率に基づく。従って、上記のように第1測定ステップS11で測定された出射光のパワーと、第2測定ステップS12で測定された出射光のパワーと、を用いることで、OTDR20法を用いて、コア11のクロストークを求めることができる。
【0095】
また、本実施形態のクロストーク測定装置1は、OTDR20と、OTDR20とマルチコアファイバ10とに光学的に接続され、OTDR20から出射する光を第1入射光と第2入射光とに分離し、第1入射光をコア11の一端17から入射させると共に第2入射光をコア12の一端17から入射させ、コア11の一端17から出射する出射光をOTDR20に伝搬すると共にコア12の一端17から出射する光をOTDRに伝搬することを抑制する第1測定状態と、OTDR20から出射する光を第1測定状態でコア11に入射させる第1入射光のパワーと概ね等しいパワーの第1入射光としてコア11の一端17から入射させると共に、コア12にOTDR20からの光を非入射とさせ、コア11の一端17から出射する出射光をOTDR20に伝搬する第2測定状態と、に切り替え可能な光分離入出射部30と、第1測定状態においてOTDR20が測定する出射光のパワーと、第2測定状態においてOTDR20が測定する出射光のパワーと、を用いてコア11のクロストークを求める処理部25と、を備える。
【0096】
処理部25が、上記のクロストーク測定方法と同様にして、第1測定状態で測定された出射光のパワーと、第2測定状態で測定された出射光のパワーと、を用いることで、OTDRを用いて、コア11のクロストークを求めることができる。
【0097】
なお、本実施形態では、第1測定ステップS11における第1入射光のパワーと、第2測定ステップS12における第1入射光のパワーとが互いに等しい前提で説明をした。しかし、第1測定ステップS11における第1入射光のパワーと、第2測定ステップS12における第1入射光のパワーとが互いに異なってもよい。この場合、例えば、コア11の単位長さあたりのクロストークは、第1測定ステップS11においてOTDR20が測定する光のパワーの傾きと、第2測定ステップS12においてOTDR20が測定する光のパワーの傾きと、の差から求めることが出来る。このように、OTDR20が測定する光のパワーの傾きからコア11のクロストークを求めることができるため、第2測定ステップS12においてコア11に入射する光のパワーは、任意のパワーであってもよい。ただし、第1測定ステップS11における第1入射光のパワーが第2測定ステップS12における第1入射光のパワーの0.1以上10倍以下であることが好ましく、さらに、0.5倍以上2倍以下であることが、それぞれのステップにおいてOTDR20から出力する波形を比較がしやすいためより好ましく、上記実施形態のようにそれぞれのステップにおける第1光入射光のパワーが互いに等しいことがより好ましい。
【0098】
(変形例)
次に本実施形態の変形例について、図8図9を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0099】
図8は、本変形例に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。図8に示すように、本変形例のマルチコアファイバ10は、コア11~14を有する点において、上記実施形態のマルチコアファイバ10と異なる。それぞれのコア11~14は、クラッド15の中心を中心とする円周上に等間隔で配置されている。このため、それぞれのコア11~14は、正方形の頂点上に位置している。コア11にはコア12,13が最短で隣接する。コア12,13は、第1光導波路であるコア11に最短で隣接する第2光導波路であり、コア14は、第1光導波路であるコア11に最短で隣接する第2光導波路以外の第3光導波路である。コア13,14の構成は、コア11,12の構成と同様である。なお、コア11とコア12とのコア間距離と、コア11とコア13とのコア間距離とが厳密に一致しなくてもよい。例えば、コア11とコア12とのコア間距離と、コア11とコア13とのコア間距離とが、コア11の直径分程度異なっていても、コア12,13は、それぞれコア11に最短で隣接するコアである。
【0100】
図9は、本変形例におけるクロストーク測定装置を示す図である。本変形例のクロストーク測定装置1は、光分離入出射部30が、第2光接続部322と同様の構成の第2光接続部323及び第3光接続部334を備える点において、上記実施形態のクロストーク測定装置1と主に異なる。
【0101】
本変形例では、分離部31に第2光接続部323、及び第3光接続部334の光ファイバ36が更に接続されている。分離部31は、OTDR20から光ファイバ21を介して入射する光を第1入射光と、2つの第2入射光と、1つの第3入射光とに分離する。本変形例では、第1入射光、第2入射光、及び第3入射光のパワーは互いに等しい。分離部31は、上記実施形態と同様にして、光ファイバ35に入射し、一方の第2入射光を第2光接続部322の光ファイバ36に入射させる。また、分離部31は、他方の第2入射光を第2光接続部323の光ファイバ36に入射させ、第3光接続部334の光ファイバ36に入射させる。
【0102】
また、本変形例のファン・イン-ファン・アウトデバイス39は、マルチコアファイバ10の一端17においてコア11~14と個別に光学的に接続可能な不図示の複数の光導波路と、それぞれの光導波路に個別に光学的に接続されているコアを含む4つの光ファイバと、を有する。この4つの光ファイバが光ファイバ35と、第2光接続部322,323の光ファイバ38及び第3光接続部334の光ファイバ38に接続されている。なお、光ファイバ35及びそれぞれの光ファイバ38が上記4つの光ファイバであってもよい。ファン・イン-ファン・アウトデバイス39は、上記実施形態と同様に、光ファイバ35のコアとコア11とを光学的に接続し、第2光接続部322の光ファイバ38のコアとコア12とを光学的に接続している。更に、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39は、第2光接続部323の光ファイバ38のコアとコア13とを光学的に接続し、第3光接続部334の光ファイバ38のコアとコア14とを光学的に接続している。
【0103】
また、分離部31から第1光接続部311を介してコア11の一端17まで光路長と、分離部31から第2光接続部322を介してコア12の一端17まで光路長と、分離部31から第2光接続部323を介してコア13の一端17まで光路長と、分離部31から第3光接続部334を介してコア14の一端17まで光路長と、は概ね等しい。
【0104】
本変形例では、第1測定ステップS11に先立ち、第2光接続部322,323及び第3光接続部334のそれぞれの光スイッチ34を光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとを光学的に接続する状態とする。こうして、光分離入出射部30は、第1測定状態となる。
【0105】
第1測定ステップでは、OTDR20から出射する光が、分離部31で、互いに等しいパワーの第1入射光と、一対の第2入射光と、第3入射光とに分離され、上記実施形態と同様にして、第1入射光がコア11に入射し、一方の第2入射光がコア12に入射する。また、他方の第2入射光は、第2光接続部323からファン・イン-ファン・アウトデバイス39を介してコア13に入射し、第3入射光は、第3光接続部334からファン・イン-ファン・アウトデバイス39を介してコア14に入射する。なお、コア11~14に入射する第1~第3入射光のパワーは互いに概ね等しい。また、第1入射光がコア11の一端17から入射するタイミングと、第2入射光がコア12の一端17から入射するタイミングと、第2入射光がコア13の一端17から入射するタイミングと、第3入射光がコア14の一端17から入射するタイミングとは、概ね同じである。
【0106】
本変形例の本ステップでは、第1入射光の一部がコア11からコア12~14にクロストークし、それぞれの第2入射光の一部、第3入射光の一部がコア12~14からコア11にクロストークする。本変形例では、第1入射光のパワーとそれぞれの第2入射光のパワー及び第3入射光のパワーとが概ね等しいため、コア11からコア12~14にクロストークする光のパワーと、コア12~14からコア11にクロストークする光のパワーとは、互いに概ね等しい。従って、上記実施形態と同様に第1入射光のクロストークによる光の損失は抑制される。コア11を一端17側に戻る光は、第1実施形態と同様にして、OTDRに入射する。一方、上記実施形態と同様にして、コア12~14から戻る光のOTDR20への入射は抑制される。従って、OTDR20では、コア11の一端17から出射し、OTDR20に入射する光のパワーが測定され、測定された光のパワーに係る情報が処理部25に出力される。
【0107】
また、本変形例では、第2測定ステップS12に先立ち、第2光接続部322,323及び第3光接続部334のそれぞれの光スイッチ34を光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとが光学的に非接続である状態とする。こうして、光分離入出射部30は、第2測定状態となる。
【0108】
このため、本変形例では、上記実施形態との第2測定ステップS12と同様にしてコア11に第1入射光が入射し、コア12~コア14には光が入射しない。このため、第1入射光の一部がコア11からコア12~14にクロストークするが、コア12~14からコア11には光がクロストークしない。コア11を一端側に戻る光は、上記実施形態と同様にして、OTDR20に入射し、OTDR20からは測定された光のパワーに係る情報が処理部25に出力される。
【0109】
本変形例においても、処理ステップS13において、処理部25は、式(11)を4コアマルチコアファイバように変形した式を用いて、コア11のクロストークを求める。
【0110】
こうして、本変形例のように、コアが2つの場合以外であっても、コア11のクロストークがOTDR20を用いて測定される。
【0111】
なお、コア11からコア14へのクロストークは、コア11からコア11に最短で隣接するコア12,13へのクロストークと比べて、非常に小さい。従って、コア14へ第3入射光を入射せずとも、コア11のクロストークはOTDR20を用いて測定することができる。但し、コア14に第3入射光を入射させた方が、測定誤差を小さくしてコア11のクロストークを測定し得るため好ましい。
【0112】
また、コア11に入射する第1入射光とコア12,13に入射する第2入射光とが所定のパワー比率1:ηとされる場合、処理部25は、4コアマルチコアファイバの場合に適応する式等を用いて、クロストークを求めることができる。
【0113】
また、本実施形態及び変形例では、第3光導波路であるコア14に第1入射光と概ね等しいパワーである第3入射光を入射させた。しかし、コア11に入射する第1入射光とコア14に入射する第3入射光とが所定のパワー比率であってもよい。この場合、第3入射光のパワーが第2入射光のパワーと異なってもよい。
【0114】
また、変形例においても、第1測定ステップS11が第2測定ステップS12よりも先であってもよく、第2測定ステップS12が第1測定ステップS11よりも先であってもよい。
【0115】
また、上記実施形態、変形例において、処理ステップS13では、第1測定ステップS11で測定された出射光のパワーと、第2測定ステップS12で測定された出射光のパワーと、を用いる限りにおいて、他の数式や他のアルゴリズムで、コア11のクロストークを求めてもよい。例えば、図6の実線の傾きと破線の傾きとから、コア11のクロストークを求めてもよい。
【0116】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図10図11を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態は、光損失測定方法及び光損失測定装置に関する。
【0117】
本実施形態では、図1のマルチコアファイバ10のコア11におけるクロストークによる影響が抑制された光の損失を測定する。
【0118】
図10は、本実施形態の光損失測定装置を示す図である。図10に示すように、本実施形態の光損失測定装置2は、光分離入出射部30が光スイッチを備えない点において、実施形態1のクロストーク測定装置1と異なる。従って、光学部品33に光ファイバ38が接続されている。なお、図2の光スイッチ34が光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとを光学的に接続させる状態、すなわち第1実施形態の第1計測状態であれば、光分離入出射部30が光スイッチを備えていても、光損失測定装置2とし得る。
【0119】
次に、本実施形態のマルチコアファイバ10の光損失測定方法について説明する。図11は、本実施形態における光損失測定方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態の光損失測定方法は、測定ステップS21と、処理ステップS22とを備える。
【0120】
(測定ステップS21)
本実施形態の測定ステップS21は、OTDR20から出射する光を第1入射光と第2入射光とに分離し、第1入射光をコア11の一端17から入射させると共に第2入射光をコア12の一端17から入射させ、コア11の一端17から出射する出射光のパワーをOTDR20で測定するステップである。従って、本実施形態の測定ステップS21は、第1実施形態の第1測定ステップS11と概ね同様である。但し、本実施形態では、光分離入出射部30が光スイッチを備えないため、本実施形態の測定ステップS21は、第1実施形態の第1測定ステップS11と、光スイッチに係る手順を備えない点において異なる。従って、本ステップでは、図6の実線で示す測定結果が求められる。
【0121】
(処理ステップS22)
本実施形態の処理ステップS22は、測定ステップS21で測定された出射光のパワーを用いてコア11での光の損失を求めるステップである。本ステップでは、例えば、図6の実線で示す測定結果の傾きからコア11の単位長さ当たりの光の損失を求める。このようにコア11における第1入射光の損失を求めることで、クロストークの影響が抑制された損失を測定することができる。本実施形態で求めたコア11における光の損失の精度は、第1実施形態において表1を用いて説明した通り、カットバック法と用いてコア11での光の損失を測定する場合と概ね一致する。
【0122】
こうして、OTDRを用いてクロストークの影響が抑制されたコア11の光の損失が測定される。
【0123】
なお、第1実施形態の変形例のように、マルチコアファイバ10がコア11~14を有する場合、図9に示すクロストーク測定装置1から光スイッチ34を無くし、光学部品33に光ファイバ38が接続された状態をするか、光スイッチ34を全て光ファイバ37のコアと光ファイバ38のコアとを光学的に接続させる状態とするかにより、光損失測定装置とすることができる。この場合、第1実施形態の変形例における第1測定ステップS11と同様にして、コア11~14に光を入射させて、コア11の一端17から出射する光のパワーをOTDR20で測定する。この測定結果を用いて、コア11での光の損失を求める。
【0124】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
例えば、マルチコアファイバ10のコアの配置や数は、上記実施形態と異なってもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、導波路が並列される光デバイスとして、マルチコアファイバを例に説明したが、本発明の光デバイスは、導波路間にクロストークが生じる限りにおいてマルチコアファイバに限定されない。例えば、複数の光ファイバが配列して配置される光ファイバケーブルや、複数の光ファイバが平面状に配列して配置される光ファイバテープや、複数の光ファイバ裸線が1つの被覆層内に配置されるマルチエレメントファイバや、伝送システム全体の導波路におけるクロストーク測定に適用し得る。従って、互いに並列する導波路間の距離が一定でなくてもよい。
【0127】
また、上記実施形態の第1測定ステップS11、第2測定ステップS12、及び測定ステップS21の少なくとも1つにおいて、OTDR20により、マルチコアファイバ10等の光デバイスにおける反射強度、及び断線の少なくとも1つを更に測定してもよい。
【0128】
また、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39の形態は特に限定されない。また、クロストーク測定装置1は、ファン・イン-ファン・アウトデバイス39を備えなくてもよい。この場合、例えば、マルチコアファイバ10のコア11と光ファイバ35とを直接接続し、マルチコアファイバ10のコア12と光ファイバ38とを直接接続する。
【0129】
また、上記実施形態および変形例では、分離部31は、OTDR20から入射する光を分離部31に接続される光ファイバ35,36と同数の光に分離した。しかし、分離部31は、OTDR20から入射する光を光ファイバ35,36と同数の光の他に光を分離して出射してもよい。ただし、OTDR20からの光を有効に利用する観点から、分離部31は、OTDR20から入射する光を光ファイバ35,36と同数の光に分離することが好ましい。
【0130】
また、上記実施形態において、光学部品33と光スイッチ34との位置が入れかわってもよい。
【0131】
また、損失部32は、必須ではない。ただし、第1光接続部311と第2光接続部322とで、光の損失を合わせる場合には、第1光接続部311に損失部21が設けられることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上説明したように、本発明によれば、OTDRを用いてクロストークを測定し得るクロストーク測定方法、クロストーク測定装置、及びOTDRを用いてクロストークの影響が抑制された光導波路の光の損失を測定し得る光損失測定方法、光損失測定装置が提供され、光ファイバ通信等の分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0133】
1・・・クロストーク測定装置
10・・・マルチコアファイバ(光デバイス)
11・・・コア(第1光導波路)
12・・・コア(第2光導波路)
13・・・コア(第2光導波路)
14・・・コア(第3光導波路)
20・・・OTDR
25・・・処理部
30・・・光分離入出射部
31・・・分離部
32・・・損失部
33・・・光学部品
34・・・光スイッチ
39・・・ファン・イン-ファン・アウトデバイス
S11・・・第1測定ステップ
S12・・・第2測定ステップ
S13・・・処理ステップ
S21・・・測定ステップ
S22・・・処理ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11