(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024251
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】消毒用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/045 20060101AFI20250213BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20250213BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20250213BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250213BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250213BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250213BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20250213BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250213BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250213BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20250213BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20250213BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20250213BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
A61K31/045
A61Q19/10
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/37
A61P31/12
A61P31/04
A61K9/08
A61K47/32
A61K47/14
A01P3/00
A01N33/12 101
A01N25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210026
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 梓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】原 真佐夫
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊輔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD46
4C076EE12
4C076EE13
4C076FF70
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC231
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC692
4C083AD091
4C083AD092
4C083CC23
4C083CC24
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE10
4C083EE12
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA06
4C206NA08
4C206ZB33
4C206ZB35
4H011AA02
4H011AA04
4H011BB04
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA12
4H011DG01
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供し、さらに、手指等の皮膚に塗布した直後に、電子機器等のキーボードを使用する際において、電子機器の使用を円滑に行うことを提供できる消毒用組成物の提供を課題とする。
【解決手段】特定の構造を有する共重合体(P)、炭素数1~5の1価アルコールおよび脂肪酸トリグリセリドを含有する消毒用組成物は、塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供し、さらに、塗布直後に電子機器(特に、キーボード)を使用する際の使用感も円滑に行うことを提供できることを確認して、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)重量平均分子量1,000~1,000,000であり、下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(1)と、下記式(2)で表されるアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(2)を含み、該構成単位(1)と該構成単位(2)の含有量の比がモル比にて15:85~45:55である共重合体(P) 0.001質量%~10質量%と、
(2)炭素数1~5の1価アルコール 55質量%~90質量%と、及び
(3)脂肪酸トリグリセリド 0.001質量%~1質量%
を含む消毒用組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~22のアルキル基を示す。)
【請求項2】
炭素数1~5の1価アルコールが、エタノールおよびイソプロパノールからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の消毒用組成物。
【請求項3】
脂肪酸トリグリセリドが、トリイソオクタン酸グリセリンおよびトリカプリル酸グリセリンからなる群より選択される1種以上である、請求項1~2のいずれか1項に記載の消毒用組成物。
【請求項4】
さらに、有機酸を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の消毒用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒用組成物に関し、詳しくは、電子機器使用前の消毒用組成物、より詳しくは、皮膚に塗布した直後に電子機器(特に、キーボード)を円滑に用い得るための消毒用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病原性ウイルスや細菌類による感染症の拡大が懸念されており、各種感染防止関連製品の開発が行われている。消毒用組成物は、手指に塗布するだけで殺菌消毒できる利点を有し、広く普及されている。
消毒用組成物は、殺菌力を維持するとともに、速乾性やべたつきのなさといった使用感の改良を目的として、エタノール等の炭素数1~5の1価アルコールを高含有量で含有し、さらに、増粘剤の種類や、組成物のpHを特定領域に調整するといった工夫がなされている。たとえば、カルボキシビニルポリマーをアルカリ金属水酸化物で中和し、特定の分子量を有するポリエチレングリコールにより、組成物の白濁を防止したゲル状の手指殺菌剤が提案されている。(特許文献1)。
しかし、該消毒用組成物は、中性領域のpHではなく、炭素数1~5の1価アルコールを比較的多量に含有したりするために、医療関係者のように、消毒用組成物を使用する頻度が高い場合には、手荒れを生じるおそれがあった。
【0003】
手荒れ防止効果を消毒用組成物に付与するために、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の保湿剤を配合する(特許文献2)、水溶性多価アルコールと脂肪酸トリグリセリドを配合する(特許文献3)、MPC共重合体と無水マレイン酸含有重合体を配合する(特許文献4)など、さらなる工夫が知られている。
上記特許文献にて提案された工夫により、べたつきがなくかつしっとりとした使用感を付与できる消毒用組成物の提供が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-144146号公報
【特許文献2】特開2004-155712号公報
【特許文献3】特開2011-219410号公報
【特許文献4】特開2008-115125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しっとりとした使用感を付与した消毒用組成物を用いると、その使用直後に、電子カルテシステムなどの電子機器(キーボード)を使用する場合には、キーボードがべたつき、使用し難くなるといった問題があった。医療機関に勤務する医師や看護師等から、皮膚に塗布した直後にも、キーボードを円滑に使用できる消毒用組成物が強く要望されている。
そこで、本発明は、塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供し、さらに、手指等の皮膚に塗布した直後に、電子機器等のキーボードを使用する際において、電子機器の使用を円滑に行うことを提供できる消毒用組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、特定の構造を有する共重合体(P)、炭素数1~5の1価アルコールおよび脂肪酸トリグリセリドを含有する消毒用組成物は、塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供し、さらに、塗布直後に電子機器(特に、キーボード)を使用する際の使用感も円滑に行うことを提供できることを確認して、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下に関する。
1.(1)重量平均分子量1,000~1,000,000であり、下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(1)と、下記式(2)で表されるアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(2)を含み、該構成単位(1)と該構成単位(2)の含有量の比がモル比にて15:85~45:55である共重合体(P) 0.001質量%~10質量%と、
(2)炭素数1~5の1価アルコール 55質量%~90質量%と、及び
(3)脂肪酸トリグリセリド 0.001質量%~1質量%
を含む消毒用組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~22のアルキル基を示す。)
2.炭素数1~5の1価アルコールが、エタノールおよびイソプロパノールからなる群より選択される1種以上である、前項1に記載の消毒用組成物。
3.脂肪酸トリグリセリドが、トリイソオクタン酸グリセリンおよびトリカプリル酸グリセリンからなる群より選択される1種以上である、前項1~2のいずれか1項に記載の消毒用組成物。
4.さらに、有機酸を含有する、前項1~3のいずれか1項に記載の消毒用組成物。
【発明の効果】
【0008】
塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供し、さらに、塗布直後に電子機器(特に、キーボード)を使用する際の使用を円滑に行うことを提供できる消毒用組成物を提供することができる。
詳しくは、本発明の消毒用組成物を手指等に使用した使用者は、皮膚にべたつきがなくかつしっとりとした使用感を感じるとともに、さらに、塗布直後に電子機器(特に、キーボード)を使用する際には、電子機器の使用を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の本発明を詳細に説明する。
本発明の消毒用組成物は、以下を含む。
(1)重量平均分子量1,000~1,000,000であり、式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位(1)と、式(2)で表されるアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位(2)を含み、該構成単位(1)と該構成単位(2)の含有量の比がモル比にて15:85~45:55である共重合体(P) 0.001質量%~10質量%
(2)炭素数1~5の1価アルコール 55質量%~90質量%
(3)脂肪酸トリグリセリド 0.001質量%~1質量%
なお、本発明において「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタアクリル(メタクリル)を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタアクリロイル(メタクリロイル)を意味する。
また、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量や重量平均分子量の範囲)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組み合わせて「10~90」とすることができる。
【0010】
本発明の消毒用組成物に含有される共重合体(P)(MPC共重合体)は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)に基づく構成単位と、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位を含む共重合体である。
【0011】
MPCに基づく構成単位は、下記の式(1)で表される。
【0012】
【0013】
上記式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。
【0014】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位は、下記の式(2)で表される。
【化4】
【0015】
上記式(2)中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数4~22のアルキル基を示す。
【0016】
式(2)中、R3で示されるアルキル基は、炭素数4~22の直鎖または分岐のアルキル基であり、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコシル、ラウリル、トリデシル、ステアリル等が例示される。
【0017】
従って、式(2)で表されるアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ドコシル等に基づく構成単位が挙げられるが、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸ブチルである。
【0018】
共重合体(P)において、MPCに基づく構成単位とアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位の含有量の比([MPCに基づく構成単位]:[アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位])は、モル比にて15:85~45:55であり、好ましくは20:80~40:60であり、より好ましくは25:75~35:65である。
【0019】
共重合体(P)は、本発明の消毒用組成物の効果に影響与えない範囲で、MPCに基づく構成単位とアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位以外のその他の構成単位を含有させることができる。
例えば、スチレン系単量体、ビニルエーテル単量体、ビニルエステル単量体、親水性の水酸基含有(メタ)アクリレート、酸基含有単量体、窒素含有基含有単量体、アミノ基含有単量体、カチオン性基含有単量体に基づく構成単位等を例示することができる。
スチレン系単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンが挙げられる。
ビニルエーテル単量体としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルが挙げられる。
ビニルエステル単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルが挙げられる。
親水性の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
酸基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸が挙げられる。
窒素含有基含有単量体としては、アミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アミノ基含有単量体としては、アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
カチオン性基含有単量体としては、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0020】
本発明の消毒用組成物に含有される共重合体(P)の重量平均分子量は1,000~1,000,000であり、好ましくは、5,000~500,000であり、より好ましくは、10,000~150,000である。
共重合体(P)の重量平均分子量が1,000未満であると、皮膜性が低下し、使用時の円滑さの改善効果が望めない場合があり、重量平均分子量が1,000,000より大きいと、消毒用組成物の使用の円滑さを損なう場合がある。
なお、共重合体(P)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され、プルラン換算の分子量で示される。
【0021】
共重合体(P)の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
【0022】
共重合体(P)は、公知の製造方法により製造することができる。
たとえば、MPCおよびアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させて製造することができる。
各単量体の含有量比は、共重合体(P)中における各構成単位の含有量比に相当する比とすればよい。
共重合体(P)は、上記した重合方法により製造して用いることもできるが、水や多価アルコールの溶液もしくは分散液として市販されている製品を用いることもできる。
【0023】
本発明の消毒用組成物は、上記した共重合体(P)は1種を選択し、単独で含有してもよく、2種以上を選択し、組み合わせて含有してもよい。
本発明の消毒用組成物に含有させる共重合体(P)の形態としては、粉末等の固形状、溶液、分散液等の液状のいずれでもよい。
【0024】
本発明の消毒用組成物の共重合体(P)の含有量は、0.001質量%~10質量%の範囲で適宜選定することができ、使用の円滑さの観点から、0.005質量%~5質量%の範囲で選択することが好ましい。
本発明の消毒用組成物の共重合体(P)の含有量が0.001質量%未満であると、該消毒用組成物において使用の円滑さが十分でない場合があり、共重合体(P)の含有量が10質量%を超えると、逆に使用の円滑さを損なう場合がある。
【0025】
本発明の消毒用組成物に含有される炭素数1~5の1価アルコールは、通常炭素数が5以下であるアルコールであり、共重合体(P)や脂肪酸トリグリセリドを溶解させることができ、皮膚に対して使用可能なものであれば、特に制限なく用いることができる。さらに、炭素数が3以下である一価アルコールが好ましく、炭素数が2または3である一価アルコールがより好ましい。
本発明において好適に用いられる炭素数1~5の1価アルコールとしては、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられ、エタノールおよびイソプロパノールがより好適に用いられる。
本発明において、炭素数1~5の1価アルコールは1種を単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
本発明の消毒用組成物に炭素数1~5の1価アルコールを含有させると、消毒用組成物の界面張力が低下して、皮膚の凹凸部位に該組成物が広がりやすくなるため、皮膜形成時の均一性が向上し、皮膚に対して均一に塗布しやすくなり、使用の円滑さが良好となる。
本発明の消毒用組成物中の炭素数1~5の1価アルコールの含有量は、55質量%~90質量%であり、好ましくは60質量%~85質量%であり、より好ましくは65質量%~80質量%である。
炭素数1~5の1価アルコールの含有量が55質量%未満であると、殺菌力に劣る場合がある。一方、炭素数1~5の1価アルコールを、90質量%を超えて含有させても、含有量に見合う効果が得られない場合がある。
【0027】
本発明の消毒用組成物に含有される脂肪酸トリグリセリドとしては、25℃、1013.25hPaで液体のものが好ましい。脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸部分としては、炭素数6~18の直鎖脂肪酸又は分岐脂肪酸が好ましく、炭素数6~10のものがより好ましい。
具体的には、脂肪酸部分がカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、イソオクタン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等から選ばれる脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。これらのうち、特に脂肪酸部分がカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、イソオクタン酸であることが好ましく、イソオクタン酸であることがより好ましい。脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸部分は3つとも同じ脂肪酸を用いてもよく、又は複数の種類の脂肪酸を組み合わせて用いてもよい。かかる脂肪酸トリグリセリドの具体例としては、例えば、トリカプリル酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、ジカプリル酸モノカプリン酸グリセリン等が挙げられ、トリイソオクタン酸グリセリンおよびトリカプリル酸グリセリンがより好ましい。
本発明の消毒用組成物には、脂肪酸トリグリセリドは、1種を選択して単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明の消毒用組成物における脂肪酸トリグリセリドの含有量は、通常0.001質量%~1質量%であり、好ましくは0.01質量%~1質量%である。
脂肪酸トリグリセリドの含有量が0.001質量%未満では、乾いた後のしっとり感に劣る場合があり、1質量%を超えると、手指に擦り込む際にべたつきやぬめりが増大する恐れがある。
【0029】
本発明の消毒用組成物には、消毒効果の観点から必要に応じて、殺菌剤を含有させることができる。
本発明の消毒用組成物において、殺菌剤としては、病原性を有する微生物を死滅させ、または増殖を抑制し得る薬剤であり、皮膚の消毒に使用することができ、共重合体(P)および脂肪酸トリグリセリドの効果を阻害しないものであれば、特に制限されることなく用いることができる。
例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤;塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の両性界面活性剤;クロルヘキシジングルコン酸塩、塩酸クロルヘキシジン等のビグアナイド系化合物;ヨウ素イオン、ヨードホルム、ポビドンヨード等のハロゲン(ヨウ素)化合物;銀イオン等の銀系無機化合物;クレゾール、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール系化合物等が挙げられる。
殺菌活性と皮膚に対する低刺激性等の観点からは、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩等が好ましく用いられる。
本発明の消毒用組成物には、殺菌剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を選択し、組み合わせて用いてもよい。
本発明の消毒用組成物における殺菌剤の含有量は、殺菌剤の種類等により適宜設定され得るが、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.01質量%~0.05質量%である。
【0030】
本発明の消毒用組成物には、使用感向上の観点から必要に応じて、有機酸を含有させることができる。
本発明の消毒用組成物において、有機酸としては、しっとり感を向上させる薬剤であり、MPC共重合体および脂肪酸トリグリセリドの効果を阻害しないものであれば、特に制限されることなく用いることができ、クエン酸、リンゴ酸、乳酸等が挙げられる。
しっとり感と皮膚に対する低刺激性等の観点からは、乳酸等が好ましく用いられる。
本発明の消毒用組成物には、有機酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を選択し、組み合わせて用いてもよい。
本発明の消毒用組成物における有機酸の含有量は、有機酸の種類等により適宜設定され得るが、通常0.01質量%~10質量%であり、好ましくは1質量%~10質量%である。
【0031】
本発明の消毒用組成物は、通常水を基材として含有する。
本発明の消毒用組成物の調製に際し、上記した炭素数1~5の1価アルコールを、水との混合溶媒として用いることにより、皮膚に対するMPC共重合体および脂肪酸トリグリセリドの密着性を向上させることができる。密着性の向上の理由は、組成物の乾燥時において、炭素数1~5の1価アルコールと水の蒸散速度が異なることから、MPC共重合体および脂肪酸トリグリセリドの疎水性基を皮膚表面に効果的に配向させることができるためである。
本発明の消毒用組成に含まれる水としては、化粧品用または医薬品用等として一般的に用いられる水を用いることができ、イオン交換水、精製水、注射用水等を用いることが好ましい。
本発明の消毒用組成物の水の含有量は、10質量%~35質量%であり、好ましくは15質量%~30質量%である。
水の含有量が3質量%未満である場合、もしくは45質量%を超える場合には、殺菌力に劣る可能性があるため、好ましくない。
【0032】
本発明の消毒用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、湿潤剤を含有することができる。
湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、イソペンチルジオール等の二価アルコール;グリセリン;ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン縮合物;ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール等の糖アルコール等、ポリオール系化合物類が挙げられ、1種を単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
これら湿潤剤の中でも、皮膚への馴染みの良さから、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールおよびグリセリンがより好ましく用いられる。
本発明の消毒用組成物の湿潤剤の含有量は、本発明の効果を損なうことのない範囲で選択され、0.01質量%~10質量%とすることが好ましい。
【0033】
本発明の消毒用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、公知の消毒用組成物等である外用剤に一般的に使用される添加剤を含有させてもよい。
該添加剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、増粘剤、起泡剤、噴射剤、有機酸、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料、色素、色材等が挙げられる。これらの添加剤は、目的に応じて、1種または2種以上を選択し、含有させることができる。
【0034】
本発明の消毒用組成物は、常法に従って製造することができる。例えば、上記したMPC共重合体、炭素数1~5の1価アルコール、脂肪酸トリグリセリド等に、必要に応じて殺菌剤、水、湿潤剤や一般的な他の添加剤を加えて適宜混合し、均一とすることで製造することができる。
また、本発明の消毒用組成物は、例えば、医薬品や医薬部外品又はそれらの成分として用いることができる。
【0035】
本発明の消毒用組成物は、液状、ペースト状等の半固形状等の形態で提供され得る。
使用時の簡便さや安全性等の観点からは、本発明の消毒用組成物は、液状の形態とすることが好ましい、
本発明の消毒用組成物は、ポンプ容器もしくはスプレー容器に収容することができる。詳しくは、ディスペンサーポンプ付き容器に充填した液吐出型、スプレーポンプ付き容器に充填した噴霧型、フォーマーポンプ付き容器またはエアゾール容器に充填した泡吐出型、清拭ワイプに含浸させた含浸型等の製品とすることが好ましい。
本発明の消毒用組成物の使用例として、手指の消毒に用いる場合には、本発明の消毒用組成物を適量(1 mL~3 mL程度)取り、手に擦り込みながら塗布した後、乾燥させて使用することができる。
本発明の消毒用組成物を清拭ワイプに含浸させる場合には、清拭ワイプ100質量部に対して本発明の消毒用組成物を10質量部~400質量部程度含浸させ、該ワイプにて、皮膚や医療器具を清拭して使用することができる。
【0036】
本発明の消毒用組成物は、塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供し、さらに、塗布直後に電子機器を使用する際の使用感を円滑にすることを提供することができる。
詳しくは、本発明の消毒用組成物を手指等に使用した使用者は、皮膚にべたつきがなくかつしっとりとした使用感の感じである良好な感触とともに、該組成物に含有する脂肪酸トリグリセリドにより手荒れ等を防止することができ、さらに、塗布直後に電子機器(例えば、キーボード、タブレット端末、スマートフォン、医療機器)を使用する際には、電子機器の使用を円滑に行うことができる。
【実施例0037】
以下、実施例及び比較例により、本発明の消毒用組成物について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の消毒用組成物の各種評価、試験は以下の通りに実施した。
【0038】
[実施例1~10及び比較例1~6]
以下の表1に示す処方に従って、実施例1~10および比較例1~6の各消毒用組成物を下記の通り調製した。
MPC共重合体(1):MPC・メタクリル酸ブチル共重合体(MPCおよびメタクリル酸ブチルの共重合組成比[MPC/メタクリル酸ブチル](モル比)=30/70、重量平均分子量=100,000)
MPC共重合体(2):MPC・メタクリル酸ブチル共重合体(MPCおよびメタクリル酸ブチルの共重合組成比[MPC/メタクリル酸ブチル](モル比)=80/20、重量平均分子量=600,000)
トリイソオクタン酸グリセリン:日油株式会社製の「パナセート800B」
トリカプリル酸グリセリン:日油株式会社製の「パナセート810S」
グリセリンとして:濃グリセリン(「日局濃グリセリン-S」、日油株式会社製)
塩化ベンザルコニウム:日油株式会社製の「ニッサンカチオンM2-100」
エタノール、乳酸、水:外用剤の市販品
精製水10gにエタノールを加え、脂肪酸トリグリセリドを加え、次いで、MPC共重合体を添加し、必要に応じて、他成分を添加し、攪拌、混合して均一とした。合計量が100gとなるように精製水を添加し、実施例1~10および比較例1~6の各消毒用組成物を調製した。
【0039】
(GPC測定)
上記のMPC共重合体のGPC測定は以下の条件で実施した。
GPCシステム:EcoSECシステム(東ソー株式会社製)
カラム:Shodex OHpak SB-802.5HQ(昭和電工株式会社製)、及びSB-806HQ(昭和電工株式会社製)を直列に接続
展開溶媒:20mM りん酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)
検出器:示差屈折率検出器
分子量標準:EasiVial PEG/PEO(Agilent Technologies社製)
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
サンプル:得られた各MPC共重合体を終濃度0.1重量%となるよう展開溶媒で希釈
注入量:100μL
【0040】
上記実施例および比較例の各消毒用組成物について、塗布後の皮膚のべたつき感、塗布後の皮膚のしっとり感及び皮膚に塗布した直後にキーボードを使用した際の使用の円滑さを下記の通り評価した。
【0041】
(1)塗布後の皮膚のべたつき感(「乾いた後のべたつき」)の評価
実施例および比較例の各消毒用組成物を皮膚に塗布した後の皮膚のべたつき感については、25才~57才の男女パネラー30名による官能評価により評価した。
室温=25℃、相対湿度=60%の環境下で、各パネラーに消毒用組成物のそれぞれを3mL手に取らせ、手指に10回擦り込ませた後、手指のべたつき感を、下記評価基準により評価させた。パネラー30名の評価点の合計点を算出し、下記判定基準により、べたつき感の判定を行った。
<評価基準>
べたつき感がない:3点
ややべたつき感がない:2点
ややべたつき感がある:1点
べたつき感がある:0点
<判定基準>
61点~90点:++;塗布後の皮膚のべたつき感がない消毒用組成物である
31点~60点:+;塗布後の皮膚のべたつき感がややない消毒用組成物である
30点以下:×;塗布後の皮膚のべたつき感のある消毒用組成物である
【0042】
(2)塗布後の皮膚のしっとり感(「乾いた後のしっとり感」)の評価
実施例および比較例の各消毒用組成物を皮膚に塗布した後の皮膚のしっとり感については、25才~57才の男女パネラー30名による官能評価により評価した。
室温=25℃、相対湿度=60%の環境下で、各パネラーに消毒用組成物のそれぞれを3mL手に取らせ、手指に10回擦り込ませた後、手指のしっとり感を、下記評価基準により評価させた。パネラー30名の評価点の合計点を算出し、下記判定基準により、しっとり感の判定を行った。
<評価基準>
しっとり感がある:3点
ややしっとり感がある:2点
ややしっとり感がない:1点
しっとり感がない:0点
<判定基準>
61点~90点:++;塗布後の皮膚のしっとり感が十分ある消毒用組成物である
31点~60点:+;塗布後の皮膚のしっとり感がある消毒用組成物である
30点以下:×;塗布後の皮膚のしっとり感のない消毒用組成物である
【0043】
(3)皮膚に塗布した後にキーボードを使用する際の使用の円滑さ(「使用の円滑さ」)の評価
実施例および比較例の各消毒用組成物について、使用の円滑さは、25才~57才の男女パネラー30名による官能評価により評価した。
室温=25℃、相対湿度=60%の環境下で、各パネラーに消毒用組成物のそれぞれを3mL手に取らせ、手指に10回擦り込ませた後、直ちにキーボード(「TK-FCM064WH/RS」エレコム株式会社製)を使用させ、使用の円滑さを下記評価基準により評価させた。パネラー30名の評価点の合計点を算出し、下記判定基準により、使用の円滑さの判定を行った。
<評価基準>
キーボードの使用を円滑に行うことができる;3点
キーボードの使用をやや円滑に行うことができる;2点
キーボードの使用をやや円滑に行うことができない;1点
キーボードの使用を円滑に行うことができない;0点
<判定基準>
61点~90点:++;使用の円滑さに優れる消毒用組成物である
31点~60点:+;使用の円滑さにやや優れる消毒用組成物である
30点以下:×;使用の円滑さに欠ける消毒用組成物である
【0044】
塗布後の皮膚のべたつき感、塗布後の皮膚のしっとり感及び使用の円滑さについての評価結果を、表1に併せて示した。
【0045】
【0046】
表1に示されるように、本発明の実施例1~10の各消毒用組成物については、塗布後の皮膚は、べたつき感がややない若しくはないと評価され、しっとり感がある若しくは十分あると評価され、かつ使用の円滑さにやや優れる若しくは優れると評価された。
脂肪酸トリグリセリドを0.5質量%以上含有する実施例2、3、4、6、7、8、9および10の消毒用組成物は、塗布後の皮膚はしっとり感が十分あると評価された。
乳酸を含有する実施例4、8および9の消毒用組成物は、優れたしっとり感があると評価された。
比較例1、2の消毒用組成物は、脂肪酸トリグリセリドを含有しないので、使用の円滑さに欠けると評価された。
比較例3の消毒用組成物は、MPC共重合体を含有しないので、使用の円滑さに欠けると評価された。
比較例4の消毒用組成物は、脂肪酸トリグリセリドの代わりにグリセリンを含有しているので、塗布後の皮膚のべたつき感があり、使用の円滑さに欠けると評価された。
比較例5の消毒用組成物は、MPC共重合体中の構成単位(1)と構成単位(2)の含有量の比が適切でないため、無色澄明の液にはならず、評価に適さないことを確認した。
比較例6の消毒用組成物は、トリイソオクタン酸グリセリンの含有量が多いので、塗布後の皮膚のべたつき感があり、使用の円滑さに欠けると評価された。
【0047】
実施例および比較例の各消毒用組成物の上記評価結果より、本発明の消毒用組成物は、比較例の消毒用組成物に比べて、塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供することができ、さらに、電子機器の使用を円滑に行うことも提供できる。
本発明により、塗布後の皮膚のべたつきがなくかつしっとりとした使用感を提供することができ、さらに、電子機器の使用を円滑に行うことも提供できる消毒用組成物を提供することができる。