(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024287
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】前方監視システム、前方監視装置、前方監視方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
B61L23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128289
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】安部 淳一
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM13
5H161NN10
5H161NN12
5H161PP06
5H161PP07
5H161PP11
(57)【要約】
【課題】軌道に沿って走行する移動体が走行中に当該軌道をリアルタイムに検出する場合において、移動体から見た軌道の検出可能な長さが変動したことに応じて監視領域を適切に設定する。
【解決手段】、前方監視システムは、軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、前記監視対象を監視する監視手段と、前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
を含む、
前方監視システム。
【請求項2】
前記監視対象決定手段は、前記移動体から前記最遠点までの間の前記軌道の長さが第1の長さよりも長い場合、前記移動体からの前記軌道の長さが前記第1の長さとなる地点を前記監視対象とする、
請求項1に記載の前方監視システム。
【請求項3】
前記移動体から前記最遠点までの間の前記軌道の長さが前記第1の長さよりも短い状態が継続した場合、警告処理を実行する警告処理実行手段を更に含む、
請求項2に記載の前方監視システム。
【請求項4】
前記移動体の走行速度に基づいて前記第1の長さを決定する長さ決定手段を更に含む、
請求項2又は3に記載の前方監視システム。
【請求項5】
前記軌道検出手段は、当該移動体の前方を第1の走査密度で走査した走査結果に基づいて前記軌道を検出し、
前記監視手段は、前記第1の走査密度よりも高い第2の走査密度で走査した走査結果に基づいて、前記監視対象を監視する、
請求項1に記載の前方監視システム。
【請求項6】
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
を含む、
前方監視装置。
【請求項7】
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出し、
検出した前記軌道の最遠点を監視対象に決定し、
前記監視対象を監視し、
監視結果に基づいて障害物を検出する、
前方監視方法。
【請求項8】
コンピュータを、
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方監視システム、前方監視装置、前方監視方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、列車の進行方向を監視し、障害物を検出する前方監視装置を開示している。具体的には、信号機や建物などの建造物、樹木や崖などの自然物、に代表される沿線地物を障害物として誤認識することがないように、ステレオカメラやLiDAR(Light Detection And Ranging)、RADAR(Radio Detection And Ranging)などで構成される監視部が監視する監視範囲を一時的に列車側に近づけることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、列車の走行中に線路をリアルタイムに検出する場合、様々な外乱により線路の検出可能な長さが変動する。例えば、豪雨や濃霧に代表される悪天候下では線路の検出可能な長さが極端に短くなる虞がある。
【0005】
本開示の目的は、軌道に沿って走行する移動体が走行中に当該軌道をリアルタイムに検出する場合において、移動体から見た軌道の検出可能な長さが変動したことに応じて監視領域を適切に設定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
を含む、
前方監視システムが提供される。
【0007】
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
を含む、
前方監視装置が提供される。
【0008】
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出し、
検出した前記軌道の最遠点を監視対象に決定し、
前記監視対象を監視し、
監視結果に基づいて障害物を検出する、
前方監視方法が提供される。
【0009】
コンピュータを、
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
軌道に沿って走行する移動体が走行中に当該軌道をリアルタイムに検出する場合において、移動体から見た軌道の検出可能な長さが変動したことに応じて監視領域を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】前方監視装置が備える処理回路をプロセッサ及びメモリで構成する場合を示す図である。
【
図6】前方監視装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の概要)
まず、本開示の概要を説明する。
図1は、前方監視システム100のブロック図である。
図1に示すように、前方監視システム100は、軌道検出手段101、監視対象決定手段102、監視手段103、障害物検出手段104を含む。
【0013】
軌道検出手段101は、軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する。
【0014】
監視対象決定手段102は、軌道検出手段101が検出した軌道の最遠点を監視対象とする。
【0015】
監視手段103は、監視対象を監視する。
【0016】
障害物検出手段104は、監視手段103による監視結果に基づいて障害物を検出する。
【0017】
以上の構成によれば、軌道に沿って走行する移動体が走行中に当該軌道をリアルタイムに検出する場合において、移動体から見た軌道の検出可能な長さが変動したことに応じて監視領域を適切に設定することが可能となる。
【0018】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態を説明する。
図2は、前方監視装置1のブロック図を示している。
図2に示すように、前方監視装置1は、列車2に搭載される。列車2は、線路3に沿って走行する。列車2は、線路3を走行する際に、前方監視装置1を用いて進行方向の線路3上に障害物があるか否か監視する。列車2は、移動体の一具体例である。線路3は、軌道の一具体例である。列車2は、前方監視装置1、列車制御装置4、出力装置5を含む。前方監視装置1は、列車制御装置4及び出力装置5に接続されている。前方監視装置1は、監視長さ決定部10、軌道検出部11、監視地点決定部12、監視部13、障害物検出部14、第1警告処理実行部15、第2警告処理実行部16を含む。
【0019】
列車制御装置4は、地上に設置された地上子、列車2に搭載された車上子を用いて列車2の位置を検出する。列車制御装置4は、列車2の車輪の回転数を積算することにより列車2の位置を検出してもよい。列車制御装置4は、列車2の走行速度を検出する。そして、列車制御装置4は、列車2の位置を示す列車位置情報と、列車2の走行速度を示す列車速度情報と、を前方監視装置1に出力する。
【0020】
出力装置5は、典型的には、モニタ又はスピーカにより構成されている。
【0021】
監視長さ決定部10は、列車制御装置4から出力された列車速度情報に基づいて監視長さを決定する。監視長さは、列車2から監視地点までの間の線路3の長さを意味する。監視地点は、線路3上に設定される地点である。監視地点は、線路3に沿って設定される地点である。監視長さは、第1の長さの一具体例である。監視長さ決定部10は、典型的には、列車2の速度が高いときは監視長さを長くし、列車2の速度が低いときは監視長さを短くする。具体的には、列車2の速度が毎時120キロメートルの場合、監視長さ決定部10は、監視長さを600メートルに決定する。同様に、列車2の速度が毎時60キロメートルの場合、監視長さ決定部10は、監視長さを200メートルに決定する。このように、監視長さ決定部10は、列車2の走行速度に基づいて監視長さを決定する。監視長さ決定部10は、列車2の速度に加えて、制動装置の制動性能、天候等に応じて監視長さを決定してもよい。
【0022】
軌道検出部11は、列車2の走行中に前方の線路3をリアルタイムに検出する。軌道検出部11は、列車2の走行中に列車2の前方をリアルタイムに検出する。軌道検出部11は、典型的には、列車2の走行中に取得した二次元画像又は列車2の走行中に取得した三次元点群に基づいて、列車2の走行中に前方の線路3をリアルタイムに検出する。
【0023】
軌道検出部11は、典型的には、LiDAR、RADAR、ステレオカメラ、又は、それらの組み合わせを用いて、三次元点群を生成し得る。これに代えて、軌道検出部11は、例えば10ミリ秒毎に撮像して得られた複数の二次元画像からSfM(Structure from Motion)により三次元点群を生成してもよい。軌道検出部11は、取得した三次元点群からセマンティックセグメンテーションなどによる物体認識により軌道部を検出し、検出した線路3の位置を示す線路位置情報を生成する。線路位置情報は、軌道検出部11が検出した線路3の緯度経度を示す情報である。線路位置情報は、典型的には、線路3に沿って定義された複数の地点のそれぞれの経度緯度情報を含む。複数の経度緯度情報により、線路3が通る複数の地点が特定され得る。軌道検出部11がLiDARを用いて線路3を検出する場合、軌道検出部11は、LiDARの走査密度を線路検出走査密度とする。線路検出走査密度は、第1の走査密度の一具体例である。走査密度は、LiDARから見た単位立方角あたりの測距点の数と定義し得る。また、走査密度は、LiDARが連続して取得した2つの測距点をLidarに結ぶ2つの線分の間の角度の逆数としても定義し得る。軌道検出部11は、線路3を検出する際のFoV(Field of View)を線路検出FoVとする。線路検出FoVは、第1のFoVの一具体例である。
【0024】
監視地点決定部12は、軌道検出部11が検出した線路3の最遠点を監視地点とする。監視地点は、監視対象の一具体例である。ここで、軌道検出部11が検出した線路3の長さとしての検出長さは、線路3の曲率半径により、及び、障害物、天候の外乱により、変動を繰り返すことになる。例えば、豪雨や濃霧が発生した場合、軌道検出部11が検出した線路3の長さは著しく短くなることが考えられる。検出長さは、列車2から、軌道検出部11が検出した線路3の最遠点までの間の線路3の長さである。
図3は、検出長さを縦軸とし時間を横軸とした検出長さの変動を示すグラフである。
図3に示すように、時刻t0から時刻t1までの間は、検出長さが監視長さの一例である600メートルよりも長い。一方、時刻t1以降では、検出長さが600メートルよりも短い。監視地点決定部12は、検出長さが監視長さよりも長い場合、列車2から見た線路3の長さが監視長さとなる地点を監視地点とする。これに対し、監視地点決定部12は、検出長さが監視長さよりも短い場合、軌道検出部11が検出した線路3の最遠点を監視地点とする。監視地点決定部12は、線路位置情報に基づいて監視地点の経度緯度を算出する。
【0025】
監視部13は、監視地点決定部12が決定した監視地点を監視する。監視部13は、典型的には、LiDARを用いて監視地点を監視する。このとき、監視部13は、LiDARの走査方向が監視地点を向くようにLiDARの走査方向を制御する。また、監視部13は、LiDARの走査密度を監視走査密度とする。監視走査密度は、線路検出走査密度よりも高い。監視走査密度は、第2の走査密度の一具体例である。監視部13は、監視地点を監視する際のFoVを監視FoVとする。監視FoVは、第2のFoVの一具体例である。監視FoVは、線路検出FoVよりも狭い。
【0026】
障害物検出部14は、監視部13による監視結果に基づいて障害物を検出する。具体的には、障害物検出部14は、監視部13が生成した三次元点群に基づいて線路3上の障害物を検出する。例えば、障害物検出部14は、列車2が通過する空間内に異物を検出した場合、当該異物を列車2の走行を妨げる障害物であるとして検出し得る。障害物としては、人や車両、置き石、落石、倒木が挙げられる。
【0027】
第1警告処理実行部15は、検出長さが監視長さよりも短い状態が継続した場合、警告処理を実行する。具体的には、第1警告処理実行部15は、検出長さが監視長さよりも短い状態が所定時間以上継続した場合、警告処理を実行する。所定時間とは、典型的には、数十秒から数分の間の任意の時間としてよい。例えば線路3の周辺に建造物が存在することで検出長さが短くなる場合は、検出長さが関し長さよりも短い状態が継続するのはせいぜい数秒である。このような場合でも都度警告処理を実行した場合、警告処理が幾度となく繰り返されることになり兼ねない。そこで、検出長さが監視長さよりも短い状態が所定時間以上継続した場合に限り警告処理を実行することで、不必要な警告処理が除外され、天候等によって検出長さが短くなった場合に限って警告処理を実行することができるようになる。
【0028】
出力装置5がモニタである場合、第1警告処理実行部15は、出力装置5に減速指示を示す警告画面を表示させる警告処理を実行する。出力装置5がスピーカである場合、第1警告処理実行部15は、出力装置5に減速指示を示すアラーム音を出力させる警告処理を実行する。第1警告処理実行部15が減速を指示することにより、列車2の制動距離が短くなるので、検出長さが短い場合でも列車2を適切に停止させることができる。なお、第1警告処理実行部15は、列車制御装置4に減速指令や停車指令を出力するようにしてもよい。
【0029】
第2警告処理実行部16は、障害物検出部14が障害物を検出した場合、警告処理を実行する。出力装置5がモニタである場合、第2警告処理実行部16は、出力装置5に前方に障害物の存在を示す警告画面を表示させる警告処理を実行する。出力装置5がスピーカである場合、第2警告処理実行部16は、出力装置5に前方に障害物の存在を示すアラーム音を出力させる警告処理を実行する。なお、第2警告処理実行部16は、列車制御装置4に減速指令や停車指令を出力するようにしてもよい。
【0030】
次に、
図4を参照して、前方監視装置1の動作を説明する。
【0031】
S100:
まず、軌道検出部11は、列車2の走行中に前方の線路3をリアルタイムに検出する。
【0032】
S110:
次に、監視長さ決定部10は、列車制御装置4から出力された列車速度情報に基づいて監視長さを決定する。
【0033】
S120:
次に、監視地点決定部12は、検出長さと監視長さに基づいて監視地点を決定する。
【0034】
S130:
次に、第1警告処理実行部15は、検出長さが監視長さよりも短い状態が継続したか否か判定する。
【0035】
S140:
ステップS130でYESの場合、第1警告処理実行部15は、減速を指示する警告処理を実行し、処理をステップS100に戻す。
【0036】
S150:
ステップS130でNOの場合、監視部13は、監視地点決定部12が決定した監視地点を監視する。
【0037】
S160:
次に、障害物検出部14は、監視部13による監視結果に基づいて障害物を検出する。
【0038】
S170:
ステップS160で障害物検出部14が障害物を検出した場合、第2警告処理実行部16は、前方に障害物の存在を示す警告処理を実行し、処理をステップS100に戻す。一方、ステップS160で障害物検出部14が障害物を検出しなかった場合、第2警告処理実行部16は、処理をステップS100に戻す。
【0039】
以上に、第1実施形態を説明した。上記第1実施形態は、以下の特徴を有する。
【0040】
前方監視装置1(前方監視システム)は、軌道検出部11(軌道検出)、監視地点決定部12(監視対象決定手段)、監視部13(監視手段)、障害物検出部14(障害物検出手段)を含む。軌道検出部11は、線路3(軌道)に沿って走行する列車2(移動体)に搭載され、当該列車2の走行中に前方の線路3をリアルタイムに検出する。監視地点決定部12は、軌道検出部11が検出した線路3の最遠点を監視地点(監視対象)とする。監視部13は、監視対象を監視する。障害物検出部14は、監視部13による監視結果に基づいて障害物を検出する。以上の構成によれば、線路3に沿って走行する列車2が走行中に当該線路3をリアルタイムに検出する場合において、列車2から見た線路3の検出可能な長さが変動したことに応じて監視領域を適切に設定することができる。
【0041】
また、監視地点決定部12は、列車2から最遠点までの間の軌道の長さである検出長さが監視長さ(第1の長さ)よりも長い場合、列車2からの線路3の長さが監視長さとなる地点を監視地点とする。以上の構成によれば、監視部13が生成する三次元点群の精度を担保することができる。
【0042】
また、前方監視装置1は、第1警告処理実行部15を含む。第1警告処理実行部15は、列車2から最遠点までの間の線路3の長さが監視長さよりも短い状態が継続した場合、警告処理を実行する。以上の構成によれば、天候等によって検出長さの回復が見込めない場合に適切な処理を実行することができる。
【0043】
また、前方監視装置1は、列車2の走行速度に基づいて監視長さを決定する監視長さ決定部10(長さ決定手段)を更に含む。以上の構成によれば、列車2の走行速度に基づいて適切な監視長さとすることができる。
【0044】
また、軌道検出部11は、当該列車2の前方を線路検出走査密度(第1の走査密度)で走査した走査結果に基づいて線路3を検出する。これに対し、監視部13は、線路検出走査密度よりも高い監視走査密度(第2の走査密度)で走査した走査結果に基づいて監視地点を監視する。以上の構成によれば、より広いFoVで線路3を検出すると共に、より高い確度で障害物を検出することができる。
【0045】
続いて、前方監視装置1のハードウェア構成について説明する。監視部13は前述のようにLiDARやRADAR、ステレオカメラなどのセンサである。監視長さ決定部10、軌道検出部11、監視地点決定部12、障害物検出部14、第1警告処理実行部15、第2警告処理実行部16は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0046】
図5は、前方監視装置1が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がプロセッサ1000およびメモリ1001で構成される場合、前方監視装置1の処理回路の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ1001に格納される。処理回路では、メモリ1001に記憶されたプログラムをプロセッサ1000が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路は、前方監視装置1の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ1001を備える。また、これらのプログラムは、前方監視装置1の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。
【0047】
ここで、プロセッサ1000は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリ1001には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0048】
図6は、前方監視装置1が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図である。処理回路が専用のハードウェアで構成される場合、
図6に示す処理回路1002は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。前方監視装置1の各機能を機能別に処理回路1002で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路1002で実現してもよい。
【0049】
なお、前方監視装置1の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0050】
以上、第1実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の第1実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0051】
各図面は、1又はそれ以上の実施形態を説明するための単なる例示である。各図面は、1つの特定の実施形態のみに関連付けられるのではなく、1又はそれ以上の他の実施形態に関連付けられてもよい。当業者であれば理解できるように、いずれか1つの図面を参照して説明される様々な特徴又はステップは、例えば明示的に図示または説明されていない実施形態を作り出すために、1又はそれ以上の他の図に示された特徴又はステップと組み合わせることができる。例示的な実施形態を説明するためにいずれか1つの図に示された特徴またはステップのすべてが必ずしも必須ではなく、一部の特徴またはステップが省略されてもよい。いずれかの図に記載されたステップの順序は、適宜変更されてもよい。
【0052】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
を含む、
前方監視システム。
(付記2)
前記監視対象決定手段は、前記移動体から前記最遠点までの間の前記軌道の長さが第1の長さよりも長い場合、前記移動体からの前記軌道の長さが前記第1の長さとなる地点を前記監視対象とする、
付記1に記載の前方監視システム。
(付記3)
前記移動体から前記最遠点までの間の前記軌道の長さが前記第1の長さよりも短い状態が継続した場合、警告処理を実行する警告処理実行手段を更に含む、
付記2に記載の前方監視システム。
(付記4)
前記移動体の走行速度に基づいて前記第1の長さを決定する長さ決定手段を更に含む、
付記2又は3に記載の前方監視システム。
(付記5)
前記軌道検出手段は、当該移動体の前方を第1の走査密度で走査した走査結果に基づいて前記軌道を検出し、
前記監視手段は、前記第1の走査密度よりも高い第2の走査密度で走査した走査結果に基づいて、前記監視対象を監視する、
付記1に記載の前方監視システム。
(付記6)
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
を含む、
前方監視装置。
(付記7)
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出し、
検出した前記軌道の最遠点を監視対象に決定し、
前記監視対象を監視し、
監視結果に基づいて障害物を検出する、
前方監視方法。
(付記8)
コンピュータを、
軌道に沿って走行する移動体に搭載され、当該移動体の走行中に前方の軌道をリアルタイムに検出する軌道検出手段と、
前記軌道検出手段が検出した前記軌道の最遠点を監視対象とする監視対象決定手段と、
前記監視対象を監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果に基づいて障害物を検出する障害物検出手段と、
として機能させるプログラム。
【0053】
付記1に従属する付記2~付記5に記載した要素(例えば構成及び機能)の一部または全ては、付記6、付記7、付記8に対しても付記2~付記5と同様の従属関係により従属し得る。任意の付記に記載された要素の一部または全ては、様々なハードウェア、ソフトウェア、ソフトウェアを記録するための記録手段、システム、及び方法に適用され得る。
【符号の説明】
【0054】
1 前方監視装置
2 列車
3 線路
4 列車制御装置
5 出力装置
10 監視長さ決定部
11 軌道検出部
12 監視地点決定部
13 監視部
14 障害物検出部
15 第1警告処理実行部
16 第2警告処理実行部