(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024301
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】フープガイド、及び金属帯コイルの結束方法
(51)【国際特許分類】
B21C 47/24 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
B21C47/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128321
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平野 孝史
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026AA02
4E026BA04
4E026CB02
4E026DB07
(57)【要約】
【課題】低コストで且つ簡単な方法で、コイルカーに設置されたフープガイドへのフープ通板を可能とする。
【解決手段】コイルカー3上の金属帯コイル10を、バンディングマシーン20の有するフープガイドと、上記コイルカー3に設けたフープガイドとを用いてフープ11で結束するために使用される、上記コイルカー3に設置されるフープガイドであって、上記フープ11が差し込まれる入口部1Aと、上記入口部1Aに連続する本体部1Bとを有し、上記入口部1Aの入口1Aaの開口の幅W1が、上記本体部1Bの開口の幅W2よりも広く、上記入口部1Aの開口の幅は、上記入口1Aaから上記本体部1Bに向けて連続して小さくなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルカー上の金属帯コイルを、バンディングマシーンの有するフープガイドと上記コイルカーに設けたフープガイドとを用いてフープで結束するために使用される、上記コイルカーに設置されるフープガイドであって、
上記フープが差し込まれる入口部と、上記入口部に連続する本体部とを有し、
上記入口部の入口の開口の幅が、上記本体部の開口の幅よりも広く、
上記入口部の開口の幅は、上記入口から上記本体部に向けて連続して小さくなっている、
フープガイド。
【請求項2】
上記入口の開口の幅は、上記本体部の開口の幅の1.2倍以上2倍以下である、
請求項1に記載したフープガイド。
【請求項3】
上記入口部の長さが、フープガイド全体の長さの20%以上40%以下である、
請求項1又は請求項2に記載のフープガイド。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のフープガイドを用いて、金属帯コイルを結束する、
金属帯コイルの結束方法。
【請求項5】
請求項3に記載のフープガイドを用いて、金属帯コイルを結束する、
金属帯コイルの結束方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルカーに設置されるフープガイドに関する技術、及びフープガイドを用いた金属帯コイルの結束方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
圧延により製造された金属帯は、巻き取られて金属帯コイルとなる。金属帯コイルを、本明細書では単にコイルとも記載する。巻き取られたコイルは、コイルカーの上に移載される。コイルを載せたコイルカーは、バンディングマシーンの位置まで移動して停止する。
【0003】
そして、コイルカーに乗っているコイルは、バンディングマシーンによってフープ結束される。このフープ結束は、コイルカーに設置されたフープガイドと、バンディングマシーンに設置された複数のフープガイドとを用いて実行される。このフープ結束の際には、コイルカーに設置されたフープガイドと、バンディングマシーンに設置された複数のフープガイドは、コイルカー上のコイルの周方向外方に位置し、且つ当該コイルの周方向外周に沿って並んだ状態となる。なお、コイルカーに設置されたフープガイドは、コイルの下方に位置する。そして、フープ結束の処理は、フープガイドの並びに沿ってフープを通板することで、フープをコイルの外周に沿ってフープを環状に配置する。その後、その環状のフープの径を縮径させることで、当該フープでコイルを締め付けて結束する。
【0004】
ここで、バンディングマシーンに対し、コイルカーの停止位置が目標位置から所定以上ずれてしまう場合がある。この場合、バンディングマシーンのフープガイドから、コイルカーのフープガイドにフープを通板する際に、フープの先端が、コイルカーのフープガイドの入口に突っかかり、フープの通板が出来ないおそれがある。フープの通板が出来ない場合、上記のフープ結束が達成できないことになる。
【0005】
従来、コイルカーが目標位置からずれて停止することで、コイルカーに設置されたフープガイドへのフープ通板不可を回避する技術として、特許文献1や特許文献2に記載の技術がある。
【0006】
特許文献1には、コイルカーの停止位置の精度を向上させることを目的として、前回の停止時の惰送距離情報を得て、停止惰送距離を補正する技術が記載されている。
特許文献2では、コイルを搬送するコイルカーの等加速度走行時にコイルカー駆動電動機の電流を検出し慣性モーメントに演算する。そして、この慣性モーメントを用いてコイルカーが停止位置に停止するような減速距離を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-188423号公報
【特許文献2】特開平5-27842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術では、コイルカーの停止位置の精度を向上させることで、コイルカーに設置されたフープガイドへのフープの通板を可能とする。このために、上記の従来技術では、コイルカーの惰走距離分を補正して減速・停止指令を求めている。
【0009】
しかし、コイルカーに載置されるコイルは、それぞれ重量が異なることが多い。このため、コイルカーの重量バランスが毎回異なり、惰走距離を精度良く計算し補正することは困難である。
また、コイルカー停止時の惰走距離を補正するためには、制御改造や惰走距離の検出装置の増設が必要であり、設備コストが増大するという課題がある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に着目したもので、低コストで且つ簡単な方法で、コイルカーに設置されたフープガイドへのフープ通板を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、コイルカーの停止位置の精度を向上させる代わりに、コイルカーに設置されたフープガイドの形状を変更だけで、コイルカーの停止位置がずれた場合でもフープ通板を可能とする方法を検討した。そして、本発明を成した。
【0012】
そして、課題解決のために、本発明の一態様は、コイルカー上の金属帯コイルを、バンディングマシーンの有するフープガイドと上記コイルカーに設けたフープガイドとを用いてフープで結束するために使用される、上記コイルカーに設置されるフープガイドであって、上記フープが差し込まれる入口部と、上記入口部に連続する本体部とを有し、上記入口部の入口の開口の幅が、上記本体部の開口の幅よりも広く、上記入口部の開口の幅は、上記入口から上記本体部に向けて連続して小さくなっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、フープガイドの入口を幅広としたことで、フープ結束のためのコイルカーの停止位置を精度良く制御しなくても、フープがフープガイドへ進入しやすくなる。
【0014】
更に、本発明の態様によれば、コイルカーの停止位置がずれても、入口部における幅方向のテーパー形状の部分で、進入したフープをフープガイド幅方向中央部側に誘導して通板可能となる。つまり、本発明の態様によれば、コイルカーの停止位置がずれても、フープを、より確実にフープガイドの幅方向中央側に配置可能となる。このように、コイルカーの停止位置がずれても、進入したフープが、フープガイドの幅方向中央部側に配置されることで、フープガイドの入口部を幅広としても、フープがフープガイドから抜き出し難くなることを防止する。
【0015】
また、本発明の態様によれば、コイルカー停止位置の精度を向上させるように制御することが必ずしも必要では無い。このため、そのための検出器増設や制御改造が不要となる。この結果、本発明の態様によれば、低コストかつ省力で対応できるという効果もある。なお、本発明は、コイルカーを目標位置に停止させる制御を有していても良いが、その制御を必要以上に高精度にする必要は無い。
そして、本発明の態様のフープガイドを用いることで、より精度良く金属帯コイルを結束することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係る、コイルを載せたコイルカーを説明する、コイルの軸方向から見た模式図である。
【
図2】コイルカーに設置したフープガイドを説明する上面図である。
【
図3】コイルカーに設置したフープガイドの側面図である。
【
図4】コイルカーに設置したフープガイドを入口側(上流側)から見た模式図である。
【
図6】コイル結束の際における、フープの通板を説明する図である。
【
図7】環状のフープを縮径して結束する動作例を説明する図である。
【
図8】コイルカーに設置したフープガイドに対する通板したフープを示す図である。(a)は、コイルカーに設置したフープガイド内にフープが配置された状態を示す図である。(b)は、コイルカーに設置したフープガイドからのフープの排出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
以下の説明では、コイルカーに設置したフープガイドを、可動フープガイドと記載する。また、バンディングマシーンが有するフープガイドを固定フープガイドと記載する。
【0018】
(構成)
<コイルカー3>
図1に示すコイルカー3は、上部位置に、コイル10を支持するためのサドル2と、可動フープガイド1とを備える。
ここで、本実施形態では、コイルカー3は、不図示のコンベアによってバンディングマシーンの設置位置に向けて移動するものとする。コイルカー3は、車輪駆動などの他の移動手段で移動可能な構成でも良い。
【0019】
<サドル2>
本実施形態では、コイルカー3は、
図1に示すように、載置するコイル10の軸方向からみて、左右一対のサドル2を有する。また、左右のサドル2はそれぞれ、載置するコイル10の軸方向に間隔を開けて2つずつ配置されている(
図5(b)参照)。これによって、本実施形態のコイルカー3は、4個のサドル2を有する。
【0020】
<可動フープガイド1>
可動フープガイド1は、
図1に示すように、載置するコイル10の軸方向からみて、左右一対のサドル2の間に位置する。ただし、可動フープガイド1は、
図5(b)に示すように、載置するコイル10の側方から見て、前後のサドル2の間の空間に位置する。
【0021】
可動フープガイド1は、
図2及び
図3に示すように、上面視で、フープ11の通板方向に延びる長尺の中空部材である。ただし、可動フープガイド1は、幅方向中央部に、可動フープガイド1の長手方向に延びるスリット1d(隙間)が形成されている。また、
図3に示すように、可動フープガイド1の上部の長手方向に沿った輪郭は、下側に凸の円弧形状に近似する形状となっている。
【0022】
本実施形態の可動フープガイド1は、
図4に示すように、底板部1aと、左右の側板部1bと、天板部1cとを備える。そして、その底板部1aと左右の側板部1bと天板部1cで囲まれる空間が、フープ11が通過する中空部分となる。
【0023】
底板部1aは、幅方向中央部で左右に分割されている。
また、天板部1cも幅方向中央部で左右に分割されて、長手方向に延びる上記スリット1dが形成されている。左右の天板部1cは、そのスリット1d(幅方向中央部)に向けてハの字形状となっている。すなわち、左右の天板部1cは、凸の山形形状に配置されて、スリット1dからフープ11が排出し易い形状となっている。
【0024】
本実施形態の可動フープガイド1は、
図2に示すように、長手方向に沿って、上流側の入口部1Aと、下流側の本体部1Bとからなる。本体部1Bは、入口部1Aの下流側に連続して形成されている。本体部1Bの開口の幅W2は、例えば、通板させるフープ11の幅の1.1倍以上1.5倍以下の幅とする。本体部1Bの開口の幅W2は、例えば、長手方向に沿って一定の幅とする。
【0025】
<入口部1A>
本実施形態の入口部1Aの開口断面は、上面視である
図2及び入口1Aaから見た
図3に示すように、本体部1Bの開口断面に比べ、開口の幅が大きく設定されている。そして、入口部1Aの開口断面は、フープ11が進入する入口1Aaから本体部1Bに向けて、開口の幅が連続して小さくなっていて、
図2に示すように、上面視で左右の側板部1bがテーパー状の配置となっている。以下、開口の幅は、開口幅とも記載する。
【0026】
入口部1Aの入口1Aaでの開口幅W1は、コイルカー3の停止位置ずれ量の許容量に基づき、可動フープガイド1の上流側に配置されている固定フープガイド20Aaを介して通板されてくるフープ11の先端部が、入口部1A内に進入可能な幅に設定すれば良い。
入口1Aaの開口幅W1は、例えば、本体部1Bの開口幅W2の1.2倍以上2倍以下とする。
【0027】
ここで、入口部1Aの入口1Aaの幅拡げ量が小さい場合、コイルカー3の停止位置ずれ量の許容値は小さくなり、コイルカー3に設置された可動フープガイドの入口でのフープ11の突っ掛かりを防止できない場合がある。これに対し、本実施形態では、入口部1Aの入口1Aaの開口幅W1を、本体部1Bの開口幅W2の1.2倍以上に広げることで、コイルカー3の停止位置ずれ量の許容値を従来よりも広げることが可能となる。この結果、本実施形態では、コイルカー3の停止位置の制御を高精度に実行する必要がない。
【0028】
一方、入口部1Aの入口1Aaの開口幅W1を大きくしすぎると、入口部1Aが、サドル2と干渉するおそれがある。このため、入口1Aaの開口幅W1の好適な上限値を、本体部1Bの開口幅W2の2倍とした。また、入口1Aaの開口幅W1を大きくしすぎると、入口部1Aが構成するテーパー部分の傾きの角度を、フープ11先端を本体部1Bに案内可能な傾きの範囲に設定するためには、入口部1Aの長さL1を必要以上に長く設定する必要がある。この観点からも、入口1Aaの開口幅W1は、本体部1Bの開口幅W2の2倍以下が好ましい。
【0029】
また、入口部1Aの長さL1は、例えば、可動フープガイド1全体の長さL2の20%以上40%以下である。
入口部1Aの長さL1は、可動フープガイド1全体の長さL2の50%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。すなわち、入口部1Aで幅方向中央部側に案内されたフープ11を、その幅方向位置で安定して通板させるには、本体部1Bの長さが、可動フープガイド1全体の長さL2の50%以上あることが好ましい。また、可動フープガイド1全体の長さL2に対する入口部1Aの長さL1の割合が40%以下であれば、フープ締付け時(結束時)に、可動フープガイド1のスリット1dが左右に開きやすくなる。
【0030】
一方、入口部1Aのテーパー部分によるフープ11の案内を考慮すると、フープガイド全体の長さL2に対する入口部1Aの長さL1の割合は、20%以上が好ましい。すなわち、フープガイド全体の長さL2に対する入口部1Aの長さL1の割合が20%以上であれば、進入するフープ11の先端部が入口部1Aの測板部のテーパー部分で突っかかり難くなる。
【0031】
ここで、
図2では、可動フープガイド1の長手方向に沿った、テーパー部分の輪郭が直線状に形成されて、開口幅が長手方向に沿って線形に変化する場合が図示されているが、これに限定されない。進入してくるフープ11の先端部を案内可能な側板部1bの輪郭形状であれば、上面視における、入口部1Aの長手方向に沿った輪郭は、曲線状になっていてもよい。
【0032】
<復元機構>
可動フープガイド1は、フープ11を排出する際に開いたスリット1dの幅を初期値に復帰される復元機構を備える。復元機構は、左右の下垂板7、土台4、及バネ6を備える。
【0033】
左右の下垂板7は、
図4に示すように、左右の底板部1aから下方(天板部1cから離れる方向)に延びる板材である。左右の下垂板7は、可動フープガイド1の幅方向で対向配置されている。
土台4は、左右の下垂板7の間に配置されて、コイルカー3に固定されている。
その土台4から、下垂板7に向けて突出し、下垂板7を貫通する棒体5を備える。棒体5の先端部は径が大きな大径部となっている。
【0034】
バネ6は、棒体5の大径部と下垂板7の外面との間で、棒体5と同軸に延びるコイルスプリングからなる。このバネ6は、棒体5の大径部に対し、下垂板7を初期位置に向けて付勢するバネ力が作用するように配置する。
【0035】
<バンディングマシーン20>
バンディングマシーン20は、
図6及び
図7に示すように、複数の固定フープガイド20Aが、結束するコイル10の周方向外方位置に設けられている。そして、複数の固定フープガイド20Aは、結束するコイル10の周方向外周に沿って環状に並ぶように配置されている。ただし、複数の固定フープガイド20Aの列は、可動フープガイド1が挿入される部分が空いた状態となっている。
【0036】
また、固定フープガイド20Aの列における、最上流の固定フープガイド20Aと最下流の固定フープガイド20Aとの間に、結束用のヘッド20Bが配置されている。
各固定フープガイド20Aは、固定フープガイド20Aの並び方向に長手方向を向けて配置された中空部材で、内径側(コイル10側)にフープ11を排出可能なスリットが形成されている。スリットは、固定フープガイド20Aの長手方向全長に延在して形成されている。
【0037】
可動フープガイド1が配置される位置よりも上流側に位置する固定フープガイド20Aの幅は、
図2に示すように、可動フープガイド1の本体部1Bと同等の幅に設定されている。一方、可動フープガイド1が配置される位置よりも下流側に位置する固定フープガイド20Aの幅は、
図2に示すように、可動フープガイド1の本体部1Bの幅よりも幅広に設定されている。
【0038】
可動フープガイド1よりも上流側の固定フープガイド20Aの幅を幅狭にすることで、コイル10の長手方向におけるフープ結束位置のずれを小さく抑える。また、可動フープガイド1よりも下流側の固定フープガイド20Aの幅を幅広とすることで、可動フープガイド1からのフープ11を確実に進入可能とする。なお、可動フープガイド1よりも上流側の固定フープガイド20Aの数の方が、可動フープガイド1よりも下流側の固定フープガイド20Aの数よりも多く設定されて、安定してフープ11を通板可能としている。
【0039】
(動作その他)
巻き取られたコイル10は、
図5(a)→(b)のように、リール21からコイルカー3のサドル2上に載置される。コイル10を載せたコイルカー3は、
図5(b)→(c)のように、バンディングマシーン20の位置まで移動し、目標位置若しくはその近傍で停止する。
【0040】
その後、コイル10の結束作業が実行される。コイル10の結束作業は、フープ11の通板工程と、フープ締付けの工程とによって行われる。このコイル10の結束作業は、バンディングマシーン20によって実行される。
【0041】
<フープ11の通板工程>
フープ11の通板工程は、コイル10の周方向外周に沿って、フープ11を環状に配置する工程である。次に、フープ11の通板工程の処理例を説明する。
まず、
図6に示すように、不図示の送り装置で、フープ11を、最上流の固定フープガイド20Aに送り込む。送り込まれたフープ11は、複数の固定フープガイド20A内を固定フープガイド20Aの並び方向に沿って通板する。固定フープガイド20Aの並び方向に沿って通板する途中で、
図2に示すように、固定フープガイド20Aaから可動フープガイド1にフープ11が通板され、その後、可動フープガイド1から固定フープガイド20Abにフープ11が通板される。
【0042】
<フープ締付けの工程>
フープ締付けの工程は、コイル10の周方向外周に沿って、環状に配置したフープ11の当該環状の径を縮径させることで、コイル10をフープ11で結束させる工程である。
【0043】
次に、フープ締付けの工程の処理例を説明する。
フープガイド内をフープガイド並び方向に、フープ11が環状に配置されたら、
図7に示すように、フープ11先端のグリッピング、フープ締付けの工程を実施して、フープ結束を行う。フープ11の引き締めの際、各フープガイド内のフープ11は、
図8(a)→(b)のように、コイル10側に移動して、各フープガイドの左右の天板部1cをコイル10側に押す。これによって、フープガイドの左右の天板部1cが左右に開くことで、スリット1dが左右に開いて、当該スリット1dからフープ11がコイル10側に抜け出される(排出される)。なお、スリット1dが左右に開いたフープガイドは、バネ6のバネ力によって初期位置に復帰する。
図8では、可動フープガイド1の本体部1Bの部分での状態を例に挙げて図示している。
【0044】
ここで、本実施形態では、コイル10の結束作業のためコイルカー3に設置された可動フープガイド1の入口1Aaの開口幅W1を拡げている。この結果、コイルカー3の停止位置が目標位置からずれて停止した場合でも、フープ11の通板工程において、固定フープガイド20Aaから可動フープガイド1にフープ11が通板しやすくなっている。この結果、コイルカー3の停止位置がずれても、コイル10の結束のために、フープ11をコイル10外周に沿って環状に配置可能となる。
【0045】
また本実施形態では、可動フープガイド1の入口部1Aの開口幅W1だけを幅広としているが、可動フープガイド1の開口幅を全長拡げない構成を採用する。また、入口部1Aの開口幅W1を長手方向にテーパー状の構造としている。
【0046】
このため、可動フープガイド1の入口部1Aに進入したフープ11は、入口部1Aの側板部1bのテーパー部分によって中央側に案内される。したがって、コイルカー3の停止位置のずれによって、フープ11の幅方向位置が、相対的に可動フープガイド1の幅方向の一方側にずれて当該可動フープガイド1内に進入しても、可動フープガイド1内を通過するフープ11の幅方向位置が、可動フープガイド1の幅方向中央側に誘導される。具体的には、可動フープガイド1内を通過するフープ11の幅方向位置が、本体部1Bの開口幅W1内に抑えられる。
【0047】
この結果、可動フープガイド1を通過したフープ11は、次の固定フープガイド20Abに確実に進入可能となっている。本実施形態では、
図2に示すように、次の固定フープガイド20Abの開口幅を幅広として、より確実に通板可能としている。
【0048】
またこのように、コイルカー3の停止位置がずれていても、可動フープガイド1内に位置するフープ11の幅方向位置は、本体部1Bの開口幅W2の範囲内に収まるように誘導される。この結果、フープ11の通板工程後の可動フープガイド1内のフープ11は、可動フープガイド1の幅方向中央寄りに確実に配置される。このため、フープ締付けの際に、幅広部分を有しない可動フープガイドと同等に、可動フープガイド1内のフープ11は、天板部1cのスリット1dから抜けることが確保されている。
【0049】
ここで、可動フープガイド1の開口幅を全長拡げた場合、次のような不具合が発生するおそれがある。すなわち、フープ11の通板工程において、コイルカー3の停止位置がずれた分だけ、フープ11は、可動フープガイド1内を幅方向一方にずれた状態でそのまま通板し、可動フープガイド1内に配置されることなる。そして、そのずれ量が、本体部1Bの開口幅W2よりも外方にずれた位置の場合、フープ締付け時に、可動フープガイド1の天板部1cのスリット1dが左右に開かず結束不可の状態となるおそれがある(
図9参照)。これに対し、本実施形態では、上述のとおり、可動フープガイド1の入口部1Aのみの幅を拡げることで、可動フープガイド1の入口1Aaでのフープ11の突っ掛かりを防止する。更に、入口部1A以外は従来と同じ幅とすることで、フープ締付け時に、コイル10側に引っ張られるフープ11によって、可動フープガイド1の天板部1cに対し左右に開く方向のモーメントが掛かる。この結果、可動フープガイド1からのフープ11抜出が確実に行われ、コイル10の結束が可能となる。
【0050】
ここで、可動フープガイド1は、
図8のように、サドル2の間に設置されている。このため、入口部1Aの開口幅を拡げすぎてしまうと、
図8(b)のようにフープ締付け時に可動フープガイド1が左右に開く際に、入口部1Aがサドル2と衝突してしまい、可動フープガイド1が十分に左右に開かずフープ11抜出不良となるおそれがある。このため、本実施形態では、入口部1Aの入口1Aaの開口幅W1を、本体部1Bの開口幅W1の2倍以下とした。すなわち、フープ11抜出時にフープガイドがサドル2と干渉しないように、入口部1Aの入口の開口幅W1の上限値を規定する必要がある。
【0051】
一方、入口部1Aの幅拡げ量が小さい場合、コイルカー3の停止位置ずれ量の許容値が小さくなる。本実施形態では、その入口部1Aの入口1Aaの開口幅W1を広げることで、コイルカー3の停止位置ずれ量の許容値を従来よりも大きく出来る。これによって、コイルカー3の停止制御を、先行文献のように高精度に制御する必要も無い。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、可動フープガイド1の入口1Aaを幅広としたことで、フープ結束のためのコイルカー3の停止位置が目標位置からずれた場合でも、可動フープガイド1へのフープ11の進入を可能とする。更に、本発明の態様によれば、入口部1Aのテーパー形状の側板部1bの部分で、進入したフープ11を可動フープガイド1の幅方向中央部側に案内する。この結果、より確実にフープ11が可動フープガイド1内の中央寄りを通板可能となる。
【0053】
このとき、進入したフープ11は、可動フープガイド1の幅方向中央部を通過することで、幅広部分を有しても、幅広部分を有しない可動フープガイド1と同等に、フープ11が可動フープガイド1から外れ易くなる。
【0054】
また、本実施形態によれば、コイルカー3の停止位置の精度を向上させるように制御することが必ずしも必要では無いため、そのための検出器増設や制御改造が不要となる。この結果、本発明の態様によれば、低コストかつ省力で対応できるという効果もある。
なお、本開示は、コイルカー3を目標位置に停止させる制御を有していても良いが、その制御を必要以上に高精度にする必要は無い。
【0055】
しかも、本実施形態によれば、可動フープガイド1の入口部1Aの形状を変更するだけの簡単な手段によって、コイルカー3の停止位置がずれた場合でも、フープ11通板を可能とすると共にフープ11での結束が可能とすることができる。
また以上のように、本実施形態によれば、コイルカー3に設置した可動フープガイド1と、バンディングマシーン20とによって、より確実にかつ精度良くコイル10を結束することが可能となる。
【0056】
(実施例)
可動フープガイドの入口部を幅広にしない比較例では、コイルカー3の停止位置のずれによる結束不良の発生率は0.72%、発生頻度は約1.1回/日であった。
【0057】
一方、本発明に基づき可動フープガイド1の入口1Aaの開口幅W1を、本体部1Bの開口幅W2の1.2倍に変更したところ、コイルカー3の停止の条件を変更しなくても、発生頻度が約1.1回/日から0.2回/日に減少した。
【0058】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)コイルカー上の金属帯コイルを、バンディングマシーンの有するフープガイドと上記コイルカーに設けたフープガイドとを用いてフープで結束するために使用される、上記コイルカーに設置されるフープガイドであって、
上記フープが差し込まれる入口部と、上記入口部に連続する本体部とを有し、
上記入口部の入口の開口の幅が、上記本体部の開口の幅よりも広く、
上記入口部の開口の幅は、上記入口から上記本体部に向けて連続して小さくなっている。
(2)上記入口の開口の幅は、上記本体部の開口の幅の1.2倍以上2倍以下である。
(3)上記入口部の長さが、フープガイド全体の長さの20%以上40%以下である。
(4)本開示のフープガイドを用いて、金属帯コイルを結束する、金属帯コイルの結束方法。
【符号の説明】
【0059】
1 可動フープガイド
1A 入口部
1Aa 入口
1B 本体部
1d スリット
2 サドル
3 コイルカー
10 コイル
11 フープ
20 バンディングマシーン
20A 固定フープガイド