(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024336
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】建築部材、及び建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
E04B1/80 100P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128370
(22)【出願日】2023-08-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2023年(令和5年)1月30日にhttps://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/info/news_release/topics_230130_02.pdfにて公開 2023年(令和5年)2月2日~3日に「docomo Open House‘23」にて公開(オンライン開催 2023年(令和5年)2月2日~28日にhttps://www.docomo.ne.jp/corporate/technology/rd/openhouse/openhouse2023/にて公開) 2023年(令和5年)4月29日~30日に「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」にて公開 2023年(令和5年)5月24日~26日に「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2023」にて公開 2023年(令和5年)6月28日~30日に「COMNEXT 第1回[次世代]通信技術&ソリューション展」にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭耶
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 将司
(72)【発明者】
【氏名】正木 京一
(72)【発明者】
【氏名】東 克紀
(72)【発明者】
【氏名】丸山 孝一
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇博
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DH01
2E001FA03
2E001FA32
2E001GA12
2E001HA33
2E001HD08
(57)【要約】
【課題】建物において、高い断熱性能を保ちながら高い電波透過性を実現する。
【解決手段】建物の一部として使用される建築部材であって、複数の電波透過部を備え、前記複数の電波透過部における各電波透過部は、断熱性及び電波透過性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の一部として使用される建築部材であって、
複数の電波透過部を備え、
前記複数の電波透過部における各電波透過部は、断熱性及び電波透過性を有する
建築部材。
【請求項2】
前記各電波透過部は、断熱性及び電波透過性を有する素材として、エアロゲル、グラスウール、発泡ポリエチレン、又は、スタイロフォームを有する
請求項1に記載の建築部材。
【請求項3】
前記建築部材は、前記建物における、外壁、内壁、屋根、床、窓、又は、扉として使用される
請求項1に記載の建築部材。
【請求項4】
前記建築部材はパネルであり、前記各電波透過部は、前記パネルに開けた穴に埋め込まれており、
前記各電波透過部は、2枚の板材の間に断熱性及び電波透過性を有する素材を挟んだ構造を有する
請求項1に記載の建築部材。
【請求項5】
前記建築部材はガラス窓であり、前記各電波透過部は、前記ガラス窓におけるガラスの表面の金属膜を切り取ってできた穴に、断熱性及び電波透過性を有する透明な素材が埋め込まれた構造を有する
請求項1に記載の建築部材。
【請求項6】
請求項1に記載の建築部材を用いて建設された建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における電波の透過性を向上させるための技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の断熱性能が向上している。例えば、住宅の断熱性能を高めるために、住宅の壁面あるいは屋根に高い断熱性能を有する断熱材が使用される。また、住宅の窓には、例えば高い断熱性能を有する複層ガラスが使用される。
【0003】
また、住宅において高い断熱性能を達成するために、断熱材を厚くしたり、金属皮膜付の断熱材を用いたりする場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような断熱材を使用することで、高い断熱性能を達成できる反面、屋内と屋外との間で無線通信用の電波が通りにくくなってしまうという課題がある。なお、このような課題は住宅に限らず、建物全般で生じ得る課題である。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、建物において、高い断熱性能を保ちながら高い電波透過性を実現するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術によれば、建物の一部として使用される建築部材であって、
複数の電波透過部を備え、
前記複数の電波透過部における各電波透過部は、断熱性及び電波透過性を有する
建築部材が提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、建物において、高い断熱性能を保ちながら高い電波透過性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】住宅を構成する建築部材(壁、屋根等)に、複数の電波透過部10が設けられた構成の例を示す図である。
【
図2】実施例1における住宅200の外観を示す図である。
【
図3】パネル100の構造を説明するための図である。
【
図4】パネル材質に対する電波透過特性の比較を示す図である。
【
図5】パネル材質に対する断熱性能の比較を示す図である。
【
図6】断熱材に対する断熱性能の比較を示す図である。
【
図7】実施例2における住宅200の外観を示す図である。
【
図8】ガラス窓110の構造を説明するための図である。
【
図9】ガラス窓110の構造を説明するための図である。
【
図10】ガラス等種別に対する電波透過特性の比較を示す図である。
【
図11】ガラス等種別に対する断熱性能の比較を示す図である。
【
図12】実施例3における住宅200の外観を示す図である。
【
図13】実施例4における住宅200の外観を示す図である。
【
図14】実施例5における住宅200の外観を示す図である。
【
図15】実施例6における住宅200の内部を示す図である。
【
図16】実施例7における住宅200の内部を示す図である。
【
図17】実施例8における住宅200の内部を示す図である。
【
図18】複数の実施例を組み合わせた住宅200の外観の例を示す図である
【
図19】実施例9におけるオフィスビル600の外観を示す図である。
【
図20】シミュレーション諸元を説明するための図である。
【
図21】シミュレーション諸元を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0011】
以下の実施の形態では、本発明に係る建築部材を住宅及びオフィスビルに適用する場合の例を説明するが、本発明に係る建築部材は、住宅及びオフィスビル以外の建物にも適用可能である。
【0012】
(実施の形態の概要)
住宅は、外壁、内壁、屋根、床、天井、窓、扉などの様々な建築部材により構成されている。
【0013】
本実施の形態では、住宅を構成する様々な建築部材のうちの特定の建築部材における一部に、電波を透過させる領域(電波透過領域)を複数個設け、各電波透過領域に、電波を透過させ、かつ、断熱性のある素材を含む電波透過部を配置する。後述する実施例では、電波透過部を「電波の窓」と呼んでいる。
【0014】
電波透過部を備える建築部材(面的な構造を有する部材)を正面から見た場合に見える電波透過部の形状は特定の形状に限定されず、矩形であってもよいし、円形であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。電波透過部に使用される素材は、例えば、エアロゲルである。
図1に、住宅を構成する建築部材(壁、屋根等)に、複数の電波透過部10が設けられた構成の例を示す。
【0015】
以下、より具体的な例として、実施例1~9を説明する。なお、実施例1~9における任意の複数の実施例は組み合わせて実施することが可能である。
【0016】
(実施例1)
まず、実施例1を説明する。
図2に、実施例1における住宅200の外観を示す。
図2に示すように、屋外に無線通信用の基地局装置300が設置されている。また、住宅200の屋内には、移動通信用の移動可能な移動端末が設置されているものとする。
【0017】
実施例1では、住宅200の壁を構成するパネル100に、矩形状(円形状でもよい)の電波の窓10が複数個備えられている。電波の窓10を通じて、屋外と屋内との間で電波が通り、基地局装置300と移動端末との間で良好に無線通信を行うことができる。
【0018】
図2の例では、住宅200の1階の壁を構成する1つのパネル100に複数の電波の窓10が設けられているが、当該壁における複数のパネル100に複数の電波の窓10が設けられていてもよい。
【0019】
図3に、パネル100の構造の例を示す。
図3に示すように、パネル100に複数の矩形状(円形状でもよい)の穴が分散して開けられており、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の電波の窓10が埋め込まれている。
【0020】
図3において、拡大図として示されているように、電波の窓10は、平行に配置された2枚の板材11と板材12との間に断熱素材13を挟み込んだ構造を有する。板材11、12は、例えば、アクリル板、ガラス板、あるいは、木材の板、等である。
【0021】
断熱素材13は、断熱性を有しかつ電波を透過する素材であり、例えば、エアロゲル、グラスウール、発泡ポリエチレン、スタイロフォーム(登録商標)等である。
【0022】
パネル100を用いて建設した住宅200内の移動端末は、パネル100における電波の窓10を介して、屋外の基地局装置300との間で無線通信用の電波の信号を送受信できる。そのため、パネル100を用いない場合に比べて、無線通信の電波品質を改善することができる。
【0023】
図4に、エアロゲル(A)と、住宅のパネルとして一般的に使用される材質との間の電波透過特性の比較を示す。
図4において、ロス測定値が大きいほど、電波透過性が低いことを示す。
図4における「(1)+(3)+(5)+(7)」と「(2)+(4)+(6)+(7)」はいずれも住宅のパネルとして一般的に使用される材質である。
図4に示すように、エアロゲルは、他に材質よりも電波を通し易い。
【0024】
図5に、エアロゲル(A)と、住宅のパネルとして一般的に使用される材質との間の断熱性能の比較を示す。
図5において、U値が小さいほど、断熱性が高いことを示す。
図5における「(1)+(3)+(5)+(7)」と「(2)+(4)+(6)+(7)」はいずれも住宅のパネルとして一般的に使用される材質である。
図5に示すように、エアロゲルは、断熱性が高い。
【0025】
図6に、エアロゲルと、住宅の断熱材として一般的に使用される材質(ネオマフォーム、ウレタンフォーム、グラスウール)との間の熱伝導率の比較を示す。
図6に示すように、エアロゲルは、他に断熱材と比較して熱伝導率が低い。
【0026】
(実施例2)
続いて実施例2を説明する。
図7に、実施例2における住宅200の外観を示す。実施例1と同様に、屋外に無線通信用の基地局装置300が設置されており、住宅200の屋内には、移動通信用の移動可能な移動端末が設置されているとする。
【0027】
実施例2では、住宅200に使用されるガラス窓として、電波の窓10を複数個配置したガラス窓110が使用される。住宅200において、当該ガラス窓110を1つだけ用いてもよいし、
図7に示すように、複数のガラス窓110を用いてもよい。実施例2では、電波の窓10は透明であり、電波の窓10を介して、屋外から屋内へ光を取り入れることができる。なお、本明細書における「透明」は、完全に透明である必要はない。
【0028】
図7の例では、2階建ての住宅200における1階の壁と2階の壁のそれぞれに複数のガラス窓110が備えられている。
【0029】
図8にガラス窓110の構造の例を示す(正面図)。
図8に示すように、ガラス窓110は、Low-Eガラスを用いた窓から作成されている。Low-Eガラスは、住宅あるいはオフィス等の断熱のために用いられるガラス材である。Low-Eガラスは、ガラスの表面にLow-E金属膜(例えば酸化錫や銀)をコーティングしたガラスである。
【0030】
図9は、ガラス窓110の断面の構造例を示す。
図9(a)は、Low-E金属膜を持つLow-Eガラス33と、通常のガラス34(FL部)で、乾燥空気を挟んだ構造を持つ複層ガラスからなるガラス窓110の断面を示す。Low-Eガラス33の薄いLow-E金属膜の一部を矩形状(円形状でもよい)に切り取り、Low-E金属膜を切り取ってできた穴に、当該穴と同一形状の板状の電波透過素材を埋め込む。電波透過素材を埋め込んだ部分が電波の窓10となる。なお、埋め込まれる前の電波透過素材についても、電波の窓10と呼んでもよい。電波透過素材は、断熱性を有し、かつ電波を透過する透明な素材であり、例えばエアロゲルである。
図8に示したようにLow-E金属膜を切り取った部分があり、そのうちの2つが
図9(a)において、22、23として示されている。また、
図9(a)の例では、Low-Eガラス33のLow-E金属膜を切り取った部分と通常のガラス34との間に電波透過素材(ここではエアロゲル)を配置している。
【0031】
図9(b)は、Low-E金属膜を持つLow-Eガラス35と、通常のガラス36と、Low-E金属膜を持つLow-Eガラス37を有するトリプルガラスからなるガラス窓110の断面を示す。Low-Eガラス35とガラス36との間にアルゴンガスが封入され、ガラス36とLow-Eガラス37との間にもアルゴンガスが封入されている。
【0032】
Low-Eガラス35の一部に、Low-E金属膜を切り取った部分があり、そのうちの2つが
図9(b)において、24、25として示されている。また、
図9(b)の例では、Low-Eガラス35のLow-E金属膜を切り取った部分とガラス36との間に電波透過素材(エアロゲル)が配置される。また、当該Low-E金属膜を切り取った部分と同じ位置において、Low-Eガラス37のLow-E金属膜を切り取った部分とガラス36との間に電波透過素材(エアロゲル)が配置される。
【0033】
ガラス窓110を用いて建設した住宅200内の移動端末は、ガラス窓110における電波の窓10を介して、屋外の基地局装置300との間で無線通信用の電波の信号を送受信できる。そのため、ガラス窓110を用いない場合に比べて、無線通信の電波品質を改善することができる。
【0034】
図10に、エアロゲル、Low-E複層ガラス、及びLow-Eトリプルガラスの間での電波透過特性の比較を示す。
図10において、ロス測定値が大きいほど、電波透過性が低いことを示す。
図10に示すように、エアロゲルは、Low-E複層ガラス、及びLow-Eトリプルガラスよりも電波を通し易い。
【0035】
図11に、エアロゲル、Low-E複層ガラス、及びLow-Eトリプルガラスの間での断熱性能の比較を示す。
図11に示すように、エアロゲルは、Low-Eトリプルガラスと同程度に高い断熱性能を有する。
【0036】
(実施例3)
続いて実施例3を説明する。
図12に、実施例3における住宅200の外観を示す。
図2に示すように、屋外に無線通信用の基地局装置400があり、住宅200の屋内には、移動通信用の移動可能な移動端末があるものとする。実施例3では、基地局装置400が上空にあることを想定している。
【0037】
実施例3では、住宅200の屋根40に複数の電波の窓10が分散して備えられている。なお、「屋根」は建築部材の一例である。建築部材としての「屋根」は、屋根全体である必要はなく、屋根全体のうちの一部であってもよい。
【0038】
より具体的には、
図12の例において、屋根40の空に対向する面において、矩形状(円形状でもよい)の穴が複数個設けられ、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の構造物である電波の窓10が埋め込まれている。
【0039】
電波の窓10は、断熱性を有しかつ電波を透過する透明な素材(エアロゲル等)を用いた板状の構造物である。実施例3の電波の窓10は、例えば、実施例1の
図3に示した電波の窓10と同様の構造を有していてもよい。
【0040】
また、実施例3の電波の窓10として、実施例1で説明したパネル100を使用してもよいし、実施例2で説明したガラス窓110を使用してもよい。
【0041】
電波の窓10を有する屋根40を用いて建設した住宅200内の移動端末は、電波の窓10を介して、屋外の基地局装置400との間で、無線通信用の電波の信号を送受信できる。そのため、電波の窓10を用いない場合に比べて、無線通信の電波品質を改善することができる。
【0042】
(実施例4)
続いて実施例4を説明する。
図13に、実施例4における住宅200の外観を示す。
図13に示すように、屋外に無線通信用の基地局装置300が設置されているものとし、住宅200の屋内には、移動通信用の移動可能な移動端末が設置されているとする。
【0043】
実施例4では、住宅200の扉50に複数の電波の窓10が分散して備えられている。より具体的には、扉50に矩形状(円形状でもよい)の穴が複数個設けられ、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の構造物である電波の窓10が埋め込まれている。
【0044】
電波の窓10は、断熱性を有しかつ電波を透過する透明な素材(エアロゲル等)を用いた板状の構造物である。実施例4の電波の窓10は、例えば、実施例1の
図3に示した電波の窓10と同様の構造を有していてもよい。
【0045】
また、扉50がガラス窓51(Low-Eガラスを使用しているとする)を有する場合において、ガラス窓51に複数の電波の窓10を分散して備えてもよい。
図13はこのケースを示している。
【0046】
この場合、より具体的には、ガラス窓51の表面における、上記電波の窓10の位置における金属膜を矩形状(円形状でもよい)に切り取り、切り取ってできた穴に、当該穴と同一の形状の構造物である電波の窓10が埋め込まれる。電波の窓10は、断熱性を有しかつ電波を透過する透明な素材(エアロゲル等)を用いた板状の構造物である。なお、ガラス窓51として、実施例2で説明したガラス窓110を使用してもよい。
【0047】
電波の窓10を有する扉50を用いて建設した住宅200内の移動端末は、電波の窓10を介して、屋外の基地局装置300との間で無線通信用の電波の信号を送受信できる。そのため、電波の窓10を用いない場合に比べて、無線通信の電波品質を改善することができる。
【0048】
(実施例5)
続いて実施例5を説明する。
図14に、実施例5における住宅200の外観を示す。
図14に示すように、屋外に無線通信用の基地局装置300が設置されているものとし、住宅200の屋内には、移動通信用の移動可能な移動端末が設置されているとする。
【0049】
実施例5では、住宅200の外壁60に複数の電波の窓10が分散して備えられている。なお、外壁は建築部材の例である。
【0050】
より具体的には、外壁60に矩形状(円形状でもよい)の穴が複数個設けられ、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の構造物である電波の窓10が埋め込まれている。
電波の窓10は、断熱性を有しかつ電波を透過する素材(エアロゲル等)を用いた板状の構造物である。また、実施例5の電波の窓10は、例えば、実施例1の
図3に示した電波の窓10と同じ構造を有していてもよい。
【0051】
電波の窓10を有する外壁60を用いて建設した住宅200内の移動端末は、電波の窓10を介して、屋外の基地局装置300との間で、無線通信用の電波の信号を送受信できる。そのため、電波の窓10を用いない場合に比べて、無線通信の電波品質を改善することができる。
【0052】
(実施例6)
続いて実施例6を説明する。
図15に、実施例6における住宅200の内部を示す。
図15は、住宅200の1階部分の内部(屋内)を斜め上から見た場合の図に相当する。
図15に示すように、屋外に無線通信用の基地局装置300が設置されており、住宅200の屋内には、部屋Aに無線通信用のアクセスポイント1が設置され、部屋Bに移動通信用の移動可能な移動端末2が設置されている。
【0053】
実施例6では、住宅200内の部屋Aと部屋Bの間を仕切る内壁70に複数の電波の窓10が分散して備えられている。なお、内壁は建築部材の例である。
【0054】
より具体的には、内壁70として、例えば実施例1(
図3)で説明したパネル100が使用される。すなわち、パネル100に複数の矩形状(円形状でもよい)の穴が分散して開けられており、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の電波の窓10が埋め込まれている。
【0055】
実施例1の
図3で説明したとおり、電波の窓10は、平行に配置された2枚の板材の間に断熱素材を挟み込んだ構造を有する。板材は、例えば、アクリル板、ガラス板、木材の板、等である。断熱素材は、断熱性を有しかつ電波を透過する素材であり、例えば、エアロゲル、グラスウール、発泡ポリエチレン、スタイロフォーム等である。
【0056】
1つ以上のパネル100を内壁70として用いて建設した住宅200内の部屋Bの移動端末2は、電波の窓10を介して、部屋Aにあるアクセスポイント1との間で無線通信用の電波の信号を送受信できる。よって、屋内の無線通信の電波品質を改善できる。
【0057】
また、移動端末2は電波の窓10を介して屋外の無線基地局300との間で無線通信することができる。よって、移動端末2と屋外の無線基地局300との間の無線通信の電波品質を改善できる。なお、実施例6に、実施例1~5のうちのいずれかを組み合わせることで、移動端末2は、屋外の無線基地局300との間でより良好に無線通信を行うことができる。
【0058】
(実施例7)
続いて実施例7を説明する。
図16に、実施例7における住宅200の内部を示す。
図16は、住宅200の1階部分と2階部分の内部(屋内)を斜め上から見た場合の図に相当する。
図16に示すように、屋外に無線通信用の基地局装置300が設置されており、住宅200の屋内には、2階の部屋Aに無線通信用のアクセスポイント1が設置され、部屋Aの下の階の部屋Bに移動通信用の移動可能な移動端末2が設置されている。
【0059】
実施例7では、住宅200内のフロアとフロアの間を仕切る床スラブ80に、複数の電波の窓10が分散して備えられている。なお、「床スラブ」を「床」と呼んでもよい。
【0060】
より具体的には、床スラブ80に矩形状(円形状でもよい)の穴が複数個設けられ、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の構造物である電波の窓10が埋め込まれている。
【0061】
電波の窓10は、断熱性を有しかつ電波を透過する素材(エアロゲル、グラスウール、発泡ポリエチレン、スタイロフォーム等)を用いた板状の構造物である。また、実施例7の電波の窓10は、例えば、実施例1の
図3に示した電波の窓10と同じ構造を有していてもよい。また、床スラブ80として、実施例1で説明したパネル100を使用してもよい。
【0062】
電波の窓10を有する床スラブ80を用いて建設した住宅200内の部屋Bの移動端末2は、床スラブ80における電波の窓10を介して、上の階の部屋Aにあるアクセスポイント1との間で無線通信用の電波の信号を送受信できる。よって、屋内の無線通信の電波品質を改善できる。
【0063】
また、移動端末2は電波の窓10を介して屋外の無線基地局300との間で無線通信することができる。よって、移動端末2と屋外の無線基地局300との間の無線通信の電波品質を改善できる。なお、実施例7に、実施例1~5のうちのいずれか、及び実施例6を組み合わせることで、移動端末2は、屋外の無線基地局300との間でより良好に無線通信を行うことができる。
【0064】
(実施例8)
続いて実施例8を説明する。
図17に、実施例8における住宅200の内部を示す。
図17は、住宅200の1階部分の内部(屋内)を斜め上から見た場合の図に相当する。
図17に示すように、屋外に無線通信用の基地局装置300が設置されており、住宅200の屋内には、部屋Aに無線通信用のアクセスポイント1が設置され、部屋Bに移動通信用の移動可能な移動端末2が設置されている。
【0065】
実施例8では、住宅200内の部屋Aと部屋Bの間を仕切る内壁70に、扉85が設置されている。扉85に複数の電波の窓10が備えられている。
【0066】
より具体的には、扉85に矩形状(円形状でもよい)の穴が複数個設けられ、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の構造物である電波の窓10が埋め込まれている。
【0067】
電波の窓10は、断熱性を有しかつ電波を透過する透明な素材(エアロゲル等)を用いた板状の構造物である。実施例8の電波の窓10は、例えば、実施例1の
図3に示した電波の窓10と同様の構造を有していてもよい。
【0068】
また、扉85がガラス窓(Low-Eガラスを使用しているとする)を有する場合において、ガラス窓に複数の電波の窓10を備えてもよい。
【0069】
この場合、より具体的には、ガラス窓の表面における、上記電波の窓10の位置における金属膜を矩形状(円形状でもよい)に切り取り、切り取ってできた穴に、当該穴と同一の形状の構造物である電波の窓10が埋め込まれる。電波の窓10は、断熱性を有しかつ電波を透過する透明な素材(エアロゲル等)を用いた板状の構造物である。この場合のガラス窓として、実施例2で説明したガラス窓110を使用してもよい。
【0070】
扉85を有する内壁70を用いて建設した住宅200内における部屋Bの移動端末2は、扉85における電波の窓10を介して、部屋Aにあるアクセスポイント1との間で無線通信用の電波の信号を送受信できる。よって、屋内の無線通信の電波品質を改善できる。
【0071】
また、移動端末2は電波の窓10を介して屋外の無線基地局300との間で無線通信することができる。よって、移動端末2と屋外の無線基地局300との間の無線通信の電波品質を改善できる。なお、実施例8に、実施例1~5のうちのいずれかを組み合わせることで、移動端末2は、屋外の無線基地局300との間でより良好に無線通信を行うことができる。
【0072】
なお、前述したとおり、複数の実施例を組み合わせてもよい。複数の実施例を組み合わせた場合における、住宅200の外観の例を
図18に示す。
【0073】
(実施例9)
次に実施例9を説明する。実施例9は、オフィスビルに関わる実施例である。
図19に、実施例9におけるオフィスビル600の外観を示す。オフィスビル600の最上階についてはその内部も示されている。
図19に示すように、最上階の部屋Aに、無線通信用の基地局装置500が設置されているものとし、屋外には、移動通信用の移動可能な移動端末2が設置されているとする。
【0074】
実施例9では、オフィスビル600の外壁90に複数の電波の窓10が備えられている。
【0075】
より具体的には、外壁90として、例えば実施例1(
図3)で説明したパネル100が使用される。すなわち、パネル100に複数の矩形状(円形状でもよい)の穴が分散して開けられており、それぞれの穴に、その穴と同一の形状の電波の窓10が埋め込まれている。
【0076】
実施例1の
図3で説明したとおり、電波の窓10は、平行に配置された2枚の板材の間に断熱素材を挟み込んだ構造を有する。板材は、例えば、アクリル板、ガラス板、木材の板、等である。断熱素材は、断熱性を有しかつ電波を透過する素材であり、例えば、エアロゲル、グラスウール、発泡ポリエチレン、スタイロフォーム等である。
【0077】
外壁90の電波の窓10を通じて、屋外と屋内との間で電波が通り、基地局装置500と移動端末2との間で無線通信を行うことができる。よって、電波の窓10を備えない場合と比較して、無線通信の電波品質を改善することができる。
【0078】
(実施の形態に係る技術の効果)
以上説明した技術により、建物において、高い断熱性能を保ちながら高い電波透過性を実現することができる。これにより、建物内での電波環境を改善することができる。
【0079】
<シミュレーションについて>
シミュレーションにより効果を確認したので、以下、当該シミュレーションについて説明する。本シミュレーションにおいて、屋外基地局から屋内への電波の到達経路をシミュレートし、住宅の壁面に電波の窓を設けたことによる宅内電波受信強度の改善効果を確認した。シミュレーション諸元は下記のとおりである。以下で説明する内容は、
図20、
図21にも示されている。
【0080】
本シミュレーションでは、1フロアの高さを2.4mとし、2フロアを有する家の1階内側の地上1.0m地点を受信点として電波伝搬解析を実施する。フロアとフロアの間と最上階の上のそれぞれに、厚さ0.5mの中間層を設ける。1階の外壁を高さ0.6mずつの区画に区切り、下からh1、h2、h3、h4と呼ぶこととする。
【0081】
h1に電波の窓を設置した場合(
図20)とh3に電波の窓を設置した場合(
図21)のそれぞれについて、屋内の受信電力値を計算する。0.6mの区画をさらに0.3mずつの層に分割し、地上側の一方を下層、もう一方を上層とする。電波の窓のサイズは0.1m四方の正方形とし、「層の高さ方向の中心、かつ、水平方向に0.5m離れた」位置に電波の窓を住宅の周囲に繰り返し配置する。上層と下層では電波の窓の位置を水平方向に0.25mずらした互い違いの配置を行う。
【0082】
マクロセルでの通信を想定したシミュレーションでは、住宅から100m離れた地点での高さ30mの送信点から700MHz/3.7GHzの電波を放射する。スモールセルでの通信を想定したシミュレーションでは、住宅から30m離れた地点での高さ10mの送信点から3.7GHz/28GHzの電波を放射する。
【0083】
図22~
図25にシミュレーション結果を示す。
図22は、マクロセルでの通信を想定した、700MHzの電波を用いた場合のシミュレーション結果を示す。
図23は、マクロセルでの通信を想定した、3.7GHzの電波を用いた場合のシミュレーション結果を示す。
図24は、スモールセルでの通信を想定した、3.7GHzの電波を用いた場合のシミュレーション結果を示す。
図25は、スモールセルでの通信を想定した、28GHzの電波を用いた場合のシミュレーション結果を示す。
【0084】
いずれのシミュレーション結果においても、グラフが右側にあるほうが、電波透過性が高いことを示している。いずれのシミュレーション結果においても、電波の窓がない場合と比較して、電波の窓を使用することで電波透過性が改善されている。特に、本シミュレーションでは、電波の窓h3による改善効果が大きくなっている。
【0085】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0086】
<付記>
(付記項1)
建物の一部として使用される建築部材であって、
複数の電波透過部を備え、
前記複数の電波透過部における各電波透過部は、断熱性及び電波透過性を有する
建築部材。
(付記項2)
前記各電波透過部は、断熱性及び電波透過性を有する素材として、エアロゲル、グラスウール、発泡ポリエチレン、又は、スタイロフォームを有する
付記項1に記載の建築部材。
(付記項3)
前記建築部材は、前記建物における、外壁、内壁、屋根、床、窓、又は、扉として使用される
付記項1又は2に記載の建築部材。
(付記項4)
前記建築部材はパネルであり、前記各電波透過部は、前記パネルに開けた穴に埋め込まれており、
前記各電波透過部は、2枚の板材の間に断熱性及び電波透過性を有する素材を挟んだ構造を有する
付記項1ないし3のうちいずれか1項に記載の建築部材。
(付記項5)
前記建築部材はガラス窓であり、前記各電波透過部は、前記ガラス窓におけるガラスの表面の金属膜を切り取ってできた穴に、断熱性及び電波透過性を有する透明な素材が埋め込まれた構造を有する
付記項1ないし4のうちいずれか1項に記載の建築部材。
(付記項6)
付記項1ないし5のうちいずれか1項に記載の建築部材を用いて建設された建物。
【0087】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 アクセスポイント
2 移動端末
10 電波の窓(電波透過部)
11、12 板材
13 断熱素材
31~37 ガラス
40 屋根
50、85 扉
60、90 外壁
70 内壁
80 床スラブ
100 パネル
51、110 ガラス窓
200 住宅
300、400、500 基地局装置
600 オフィスビル