(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024351
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】スポット接合用電極及びスポット接合装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20250213BHJP
B23K 35/04 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B23K11/30
B23K35/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128393
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 優子
(72)【発明者】
【氏名】浅田 雄也
(57)【要約】
【課題】接合品質の低下を抑制することが可能なスポット溶接用電極及び抵抗スポット接合装置を提供すること。
【解決手段】スポット接合用電極100は、平坦な先端面111を有する電極体110と、前記電極体110の前記先端面111に接続された可撓性導体120と、を備える。前記可撓性導体120は、前記電極体110がワークW1,W2に押し付けられるときに前記先端面111と前記ワークW1,W2との隙間を埋めるように弾性変形可能である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット接合に用いられるスポット接合用電極であって、
平坦な先端面を有する電極体と、
前記電極体の前記先端面に接続された可撓性導体と、を備え、
前記可撓性導体は、前記電極体がワークに押し付けられるときに前記先端面と前記ワークとの隙間を埋めるように弾性変形可能である、スポット接合用電極。
【請求項2】
前記可撓性導体は、環状に形成されている、請求項1に記載のスポット接合用電極。
【請求項3】
前記可撓性導体は、
前記電極体が前記ワークに押し付けられるときに弾性変形する可撓部と、
前記可撓部から前記先端面に向けて凹んでおり、前記先端面に接合された接合部と、を有し、
前記先端面を前記ワークに押し付ける押付け方向における前記接合部の圧縮弾性率は、前記押付け方向における前記可撓部の圧縮弾性率よりも大きい、請求項1又は2に記載のスポット接合用電極。
【請求項4】
請求項2に記載のスポット接合用電極と、
ワークを加圧することが可能な加圧軸と、を備え、
前記スポット接合用電極における前記電極体は、円筒状に形成されており、
前記加圧軸は、前記電極体の内側に設けられている、スポット接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スポット接合用電極及びスポット接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2010-131666号公報には、スポット溶接用電極が開示されている。このスポット溶接用電極では、電極先端近傍の中央部に被溶接材に当接されない円筒状の中空部が設けられており、円筒状の中空部の周辺部のみが被溶接材に当接される構造を有している。スポット溶接用電極のうち被溶接材に当接する部位(円筒状の中空部の周辺部の先端部)は、平坦に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2010-131666号公報に記載されるような電極では、ワークに接触する部位が平坦に形成されているため、ワークの湾曲等に起因して電極とワークとの接触が不均一になると、接合品質が低下する。
【0005】
本開示の目的は、接合品質の低下を抑制することが可能なスポット溶接用電極及び抵抗スポット接合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従ったスポット接合用電極は、スポット接合に用いられるスポット接合用電極であって、平坦な先端面を有する電極体と、前記電極体の前記先端面に接続された可撓性導体と、を備え、前記可撓性導体は、前記電極体がワークに押し付けられるときに前記先端面と前記ワークとの隙間を埋めるように弾性変形可能である。
【0007】
また、本開示の一局面に従ったスポット接合装置は、前記スポット接合用電極と、ワークを加圧することが可能な加圧軸と、を備え、前記スポット接合用電極における前記電極体は、円筒状に形成されており、前記加圧軸は、前記電極体の内側に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、接合品質の低下を抑制することが可能なスポット溶接用電極及び抵抗スポット接合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態におけるスポット接合用電極の正面図である。
【
図4】
図2におけるIV-IV線での断面図である。
【
図5】電極体への接続前における可撓性導体の平面図である。
【
図6】電極体への接続後における可撓性導体の平面図である。
【
図7】電極体への接続前における可撓性導体の変形例の平面図である。
【
図8】電極体への接続後における可撓性導体の変形例の平面図である。
【
図9】電極体への接続前における可撓性導体の変形例の平面図である。
【
図10】電極体への接続後における可撓性導体の変形例の平面図である。
【
図11】スポット接合用電極の可撓性導体とワークとの接触例を概略的に示す図である。
【
図12】本開示の第2実施形態におけるスポット接合装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態におけるスポット接合用電極の正面図である。
図2は、スポット接合用電極の底面図である。
図3は、スポット接合用電極の斜視図である。
図4は、
図2におけるIV-IV線での断面図である。
【0012】
図1~
図4に示されるように、スポット接合用電極100は、電極体110と、可撓性導体120と、を備えている。
【0013】
電極体110は、例えば銅からなる。電極体110は、先端面111と、テーパ面112と、を有している。
【0014】
先端面111は、平坦に形成されている。本実施形態では、先端面111は、円形に形成されている。
【0015】
テーパ面112は、電極体110の径方向(
図1における左右方向)に先端面111から離間するにしたがって電極体110の軸方向(
図1における上下方向)に先端面111から離間するように傾斜するとともに、環状につながる形状を有している。
【0016】
可撓性導体120は、電極体110の先端面111に接続されている。可撓性導体120は、電極体110がワークW1,W2(
図11を参照)に押し付けられるときに先端面111とワークW1,W2との隙間を埋めるように弾性変形可能である。本実施形態では、可撓性導体120は、銅等のより線からなる。つまり、可撓性導体120は、空隙を含んでいる。
図2及び
図3に示されるように、可撓性導体120は、円環状に形成されている。ただし、可撓性導体120の形状は、円環状に限られない。
【0017】
図1~
図4に示されるように、可撓性導体120は、可撓部122と、接合部124と、を有している。
【0018】
可撓部122は、電極体110がワークW1,W2に押し付けられるときに弾性変形する。
【0019】
接合部124は、可撓部122から先端面111に向けて凹んでおり、先端面111に接合されている。先端面111をワークW1,W2に押し付ける押付け方向(
図1における下向き)における接合部124の圧縮弾性率は、押付け方向における可撓部122の圧縮弾性率よりも大きい。本実施形態では、接合部124は、超音波溶接によって先端面111に接続されている。
【0020】
図5は、電極体への接続前における可撓性導体の平面図である。
図6は、電極体への接続後における可撓性導体の平面図である。
図5及び
図6に示されるように、可撓性導体120は、2束以上のより線がねじられるとともに円環状に形成された後、超音波溶接によって先端面111に接合されている。ただし、
図7及び
図8に示されるように、1束のより線がリリヤン編みにされるとともに円環状に形成された後、超音波溶接によって先端面111に接合されてもよい。あるいは、
図9及び
図10に示されるように、3束のより線が三つ編みにされるとともに円環状に形成された後、超音波溶接によって先端面111に接合されてもよい。
【0021】
以上に説明したように、本実施形態におけるスポット接合用電極100では、
図11に示されるように、ワークW1,W2の表面が平坦ではない場合においても、電極体110の先端面111がワークW1,W2に押し付けられるときに、可撓性導体120における可撓部122が先端面111とワークW1,W2の表面との隙間を埋めるように弾性変形するため、可撓性導体120とワークW1,W2との接触が不均一になることに起因する接合品質の低下が抑制される。
【0022】
また、押付け方向における接合部124の圧縮弾性率が押付け方向における可撓部122の圧縮弾性率よりも大きいため、可撓部122及び接合部124の圧縮弾性率の差を利用することによって接合部124がワークW1,W2に接触したこと、すなわち、可撓部122の消耗を検知することが可能となる。
【0023】
例えば、接合部124がワークW1,W2に接触したことは、電極体110を予め設定された距離だけ押付け方向に移動させるのに必要な荷重が基準値を超えたか否かによって検知することが可能である。
【0024】
(第2実施形態)
次に、
図12~
図14を参照しながら、本開示の第2実施形態におけるスポット接合装置1について説明する。
図12は、本開示の第2実施形態におけるスポット接合装置の斜視図である。
図13は、スポット接合装置の底面図である。
図14は、
図13におけるXIV-XIV線での断面図である。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0025】
スポット接合装置1は、互いに重ね合わされた複数のワークW1,W2に通電することによって複数のワークW1,W2に軟化領域を形成しつつ、当該軟化領域を塑性変形させることによって複数のワークW1,W2同士を固相状態のまま接合する装置である。スポット接合装置1は、一対のスポット接合用電極100と、一対の加圧軸200と、を備えている。
【0026】
本実施形態におけるスポット接合用電極100の電極体110は、円筒状に形成されている。つまり、先端面111は、円環状に形成されている。
【0027】
一対の加圧軸200は、スポット接合時にワークW1,W2をその厚み方向における両側から加圧する。一対の加圧軸200は、図示略の駆動源(サーボプレス機等)によって駆動される。加圧軸200は、電極体110の内側に設けられている。加圧軸200は、円柱状に形成されている。加圧軸200の外周面と電極体110との間には、隙間が形成されている。加圧軸200は、ワークW1,W2が塑性変形するようにワークW1,W2を加圧可能である。加圧軸200は、例えばダングステンカーバイドからなる。
【0028】
一対のスポット接合用電極100は、ワークW1,W2のうち一対の加圧軸200により加圧される部位の周囲の部位に接触した状態でワークW1,W2に通電することが可能である。
【0029】
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0030】
[態様1]
スポット接合に用いられるスポット接合用電極であって、
平坦な先端面を有する電極体と、
前記電極体の前記先端面に接続された可撓性導体と、を備え、
前記可撓性導体は、前記電極体がワークに押し付けられるときに前記先端面と前記ワークとの隙間を埋めるように弾性変形可能である、スポット接合用電極。
【0031】
このスポット接合用電極では、ワークの表面が平坦ではない場合においても、電極体の先端面がワークに押し付けられるときに、可撓性導体が先端面とワークの表面との隙間を埋めるように弾性変形するため、可撓性導体とワークとの接触が不均一になることによって接合品質が低下することが抑制される。
【0032】
[態様2]
前記可撓性導体は、環状に形成されている、態様1に記載のスポット接合用電極。
【0033】
この態様では、ナゲットの径が大きく確保されるため、接合強度が高まる。
【0034】
[態様3]
前記可撓性導体は、
前記電極体が前記ワークに押し付けられるときに弾性変形する可撓部と、
前記可撓部から前記先端面に向けて凹んでおり、前記先端面に接合された接合部と、を有し、
前記先端面を前記ワークに押し付ける押付け方向における前記接合部の圧縮弾性率は、前記押付け方向における前記可撓部の圧縮弾性率よりも大きい、態様1又は2に記載のスポット接合用電極。
【0035】
この態様では、可撓部及び接合部の圧縮弾性率の差を利用することによって接合部がワークに接触したこと、すなわち、可撓部の消耗を検知することが可能となる。
【0036】
[態様4]
態様2に記載のスポット接合用電極と、
ワークを加圧することが可能な加圧軸と、を備え、
前記スポット接合用電極における前記電極体は、円筒状に形成されており、
前記加圧軸は、前記電極体の内側に設けられている、スポット接合装置。
【0037】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 スポット接合装置、100 スポット接合用電極、110 電極体、111 先端面、120 可撓性導体、122 可撓部、124 接合部、200 加圧軸、W1 第1ワーク、W2 第2ワーク。