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  • 特開-湿度センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024371
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】湿度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
G01N27/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128425
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 樹史
(72)【発明者】
【氏名】海老原 由治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 遼平
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AB02
2G060AE19
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG11
2G060BA09
2G060HC24
2G060JA02
2G060KA04
(57)【要約】
【課題】感湿膜が劣化した状態を、湿度センサの出力値の変化として捉える。
【解決手段】この湿度センサは、第1素子121および第2素子122を備え、第1素子121は、第1電極101、第1電極101の上に形成された第1感湿膜102、および第1感湿膜102の上に形成された第2電極103aを備え、第2素子122は、第3電極103b、第3電極103bの上に形成された第2感湿膜104、および第2感湿膜104の上に形成された第4電極105を備える。第2感湿膜104は、第1感湿膜102より薄く形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、前記第1電極の上に形成された第1感湿膜、および前記第1感湿膜の上に形成された第2電極を備える第1素子と、
第3電極、前記第3電極の上に形成されて前記第1感湿膜より薄い第2感湿膜、および前記第2感湿膜の上に形成された第4電極を備える第2素子と、
前記第1素子の第1出力値と前記第2素子の第2出力値との差を求めるように構成された演算回路と、
前記第1出力値と前記第2出力値との差の絶対値が基準値を超えたことを検出すると劣化と判断するように構成された劣化判断回路と
を備える湿度センサ。
【請求項2】
請求項1記載の湿度センサにおいて、
前記第1素子の上に前記第2素子が積層され、前記第2電極と前記第3電極とが共通とされている湿度センサ。
【請求項3】
請求項2記載の湿度センサにおいて、
前記第1素子の平面視の面積は、前記第2素子の平面視の面積より小さい湿度センサ。
【請求項4】
請求項3記載の湿度センサにおいて、
前記第1電極は、前記第4電極の未形成領域に形成されている湿度センサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の湿度センサにおいて、
前記第1感湿膜と前記第2感湿膜とは、同一の材料から構成されている湿度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感湿膜を用いた湿度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空調制御では、温度制御に加えて湿度制御が重要となる。湿度制御においては、湿度センサが用いられる。例えば、感湿膜を2つの電極で挟んだ湿度センサが知られている(特許文献1)。湿度の変化により、感湿膜の静電容量値が変化するため、湿度と2つの電極間の静電容量値との対応関係により、測定された静電容量値から湿度を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-019964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高温高湿下や薬品雰囲気下においては、感湿膜が劣化していく。しかしながら、感湿膜が劣化した状態を、湿度センサの出力値の変化として捉えることが容易ではないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、感湿膜が劣化した状態を、湿度センサの出力値の変化として捉えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る湿度センサは、第1電極、第1電極の上に形成された第1感湿膜、および第1感湿膜の上に形成された第2電極を備える第1素子と、第3電極、第3電極の上に形成されて第1感湿膜より薄い第2感湿膜、および第2感湿膜の上に形成された第4電極を備える第2素子と、第1素子の第1出力値と第2素子の第2出力値との差を求めるように構成された演算回路と、第1出力値と第2出力値との差の絶対値が基準値を超えたことを検出すると劣化と判断するように構成された劣化判断回路とを備える。
【0007】
上記湿度センサの一構成例において、第1素子の上に第2素子が積層され、第2電極と第3電極とが共通とされている。
【0008】
上記湿度センサの一構成例において、第2素子の平面視の面積は、第1素子の平面視の面積より小さい。
【0009】
上記湿度センサの一構成例において、第1電極は、第4電極の未形成領域に形成されている。
【0010】
上記湿度センサの一構成例において、第1感湿膜と第2感湿膜とは、同一の材料から構成されている。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、各々の感湿膜の厚さが異なる第1素子と第2素子とを用いるので、感湿膜が劣化した状態を、湿度センサの出力値の変化として捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る湿度センサの構成を示す構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る他の湿度センサの一部構成を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る他の湿度センサの一部構成を示す断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る他の湿度センサの一部構成を示す断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る他の湿度センサの一部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る湿度センサについて図1を参照して説明する。この湿度センサは、第1素子121および第2素子122を備える。この例では、第1素子121の上に第2素子122が積層されている。
【0014】
第1素子121は、第1電極101、第1電極101の上に形成された第1感湿膜102、および第1感湿膜102の上に形成された第2電極103aを備える。第2素子122は、第3電極103b、第3電極103bの上に形成された第2感湿膜104、および第2感湿膜104の上に形成された第4電極105を備える。第2感湿膜104は、第1感湿膜102より薄く形成されている。従って、第2感湿膜104は、第1感湿膜102に比較して強度が低いものとなる。なお、第1感湿膜102と第2感湿膜104とは、同一の材料から構成することができる。
【0015】
第1感湿膜102、第2感湿膜104は、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、架橋PMMA、ポリイミド、ポリスルホン、およびポリエーテルスルホンなどの有機高分子樹脂材料から構成することができる。第1感湿膜102、第2感湿膜104は、例えば、厚さ1~10μmとすることができる。
【0016】
また、この湿度センサは、演算回路106、劣化判断回路107を備える。演算回路106は、第1素子121の第1出力値と第2素子122の第2出力値との差を求める。ところで、第2感湿膜104は、第1感湿膜102より薄いので、第2素子122の周囲湿度変化に対する応答時間は、第1素子121に比べて速い。このため、第1素子121と第2素子122のそれぞれの出力値(相対湿度)が安定したと判断される状態で、第1出力値と第2出力値との差を求める。
【0017】
例えば、人の出入りが少ない夜中など、測定空間の温度湿度が安定している状態で、第1出力値と第2出力値との差を求める。また、例えば5分おきに2時間測定して、第1出力値、第2出力値の偏差がある値以下となる状態を安定状態とし、この状態で、第1出力値と第2出力値との差を求める。
【0018】
なお、各素子は、2つの電極により測定される感湿膜の静電容量値と相対湿度の相関を示すテーブルを備え、この相関により得られる相対湿度を温度補正係数で補正した値を出力値として出力することができる。
【0019】
劣化判断回路107は、演算回路106が求めた第1出力値と第2出力値との差の絶対値が、設定されている基準値を超えたことを検出すると劣化と判断する。例えば、劣化判断回路107は、上述したような安定状態において演算回路106が求めた第1出力値と第2出力値との差と、出荷時に記録している第1出力値と第2出力値との差分を比較し、比較したデータが閾値以内か閾値以上かを確認することで劣化判断を実施することができる。
【0020】
劣化判断回路107は、判断結果を出力する。第1感湿膜102より薄い第2感湿膜104は、第1感湿膜102より早く劣化する。このため、第2感湿膜104が劣化した時点では、第1感湿膜102は劣化しておらず、第1出力値と第2出力値とが異なるものとなる。従って、第1出力値と第2出力値とが異なることが検出された時点で、第2感湿膜104の劣化が判断できる。このように、第2感湿膜104の劣化が判断された時点で、湿度センサの交換時期であるなどの対策をとることができる。
【0021】
なお、例えば、湿度制御に用いる相対湿度値は、第1出力値および第2出力値のいずれかを用いることができる。ここで、前述したように、第2素子122の周囲湿度変化に対する応答時間は、第1素子121に比べて速いものとなっている。従って、第2出力値を湿度制御に用いることで、制御の応答を早くすることが可能となる。劣化判断回路107により第2感湿膜104の劣化が判断されるまで、第2出力値を湿度制御に用いることができる。
【0022】
ところで、第1素子121の上に第2素子122が積層された構成において、図2に示すように、第2電極と第3電極とを共通とした共通電極103を用いることができる。この構成では、第1感湿膜102の上に共通電極103が形成され、共通電極103の上に第2感湿膜104が形成される。なお、図2では、演算回路、劣化判断回路を省略している。第1出力値は、第1電極101と共通電極103との間の静電容量値より求められ、第2出力値は、共通電極103と第4電極105との間の静電容量値より求められる。
【0023】
また、前述したように、第1感湿膜102より第2感湿膜104が薄い場合、第2素子122のベース容量が第1素子121より高くなる。なお、ベース容量は、相対湿度0%RHにおける感湿膜の静電容量値(pF)のことを示す。このベース容量値を第1感湿膜102と第2感湿膜104とで同じ値とするために、図3に示すように、第2素子122’(第4電極105)の平面視の面積を、第1素子121より小さくすることができる。なお、図3では、演算回路、劣化判断回路を省略している。
【0024】
また、図4に示すように、平面視で、第4電極105の未形成領域(第4電極105が形成されていない領域)に第1電極101aを形成することで、第4電極105と第1電極101aとによる寄生容量の発生を抑制することができる。なお、図4では、演算回路、劣化判断回路を省略している。
【0025】
また、図5に示すように、基板110の上に、第1素子121と第2素子122’とを並列に配置することができる。図5では、演算回路、劣化判断回路を省略している。なお、周辺回路などの素子周囲からの熱影響の回避、小型化などのためには、前述したように第1素子121と第2素子122とを積層した構造とすることが望ましい。
【0026】
なお、上述した演算回路106、劣化判断回路107は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と主記憶装置と外部記憶装置とネットワーク接続装置となどを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した各機能が実現されるようにすることができる。上記プログラムは、上述した機能をコンピュータが実行するためのプログラムである。ネットワーク接続装置は、ネットワークに接続する。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させることもできる。また、演算回路106、劣化判断回路107は、FPGA(field-programmable gate array)などのプログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)により構成することも可能である。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、各々の感湿膜の厚さが異なる第1素子と第2素子とを用いるので、感湿膜が劣化した状態を、湿度センサの出力値の変化として捉えることができるようになる。
【0028】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0029】
101…第1電極、102…第1感湿膜、103…共通電極、103a…第2電極、103b…第3電極、104…第2感湿膜、105…第4電極、106…演算回路、107…劣化判断回路、121…第1素子、122…第2素子。
図1
図2
図3
図4
図5