(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024374
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/20 20060101AFI20250213BHJP
H01H 51/24 20060101ALI20250213BHJP
H01H 50/16 20060101ALI20250213BHJP
H01H 50/42 20060101ALI20250213BHJP
H01F 7/122 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
H01H50/20 B
H01H51/24 J
H01H50/16 A
H01H50/42 A
H01F7/122 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128430
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】東風 彬生
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AB04
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】電磁接触器において、コイルの巻き付け量を維持しつつ径方向外側への大型化を抑制する。
【解決手段】電磁接触器11は、スプール22と、プランジャ23と、アーマチュア24と、永久磁石27と、ヨーク28と、を備えている。スプール22は、巻き軸31にコイル32が巻かれている。プランジャ23は、進退可能な状態で巻き軸31に挿通されている。アーマチュア24は、プランジャ23の一端に連結されている。永久磁石27は、巻き軸31の一端側に配置されている。ヨーク28は、永久磁石27の一端側に配置され、コイル32が非励磁のときにアーマチュア24を吸着する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き軸にコイルが巻かれたスプールと、
進退可能な状態で前記巻き軸に挿通されたプランジャと、
前記プランジャの一端に連結された第一のアーマチュアと、
前記巻き軸の一端側に配置された永久磁石と、
前記永久磁石の一端側に配置され、前記コイルが非励磁のときに前記第一のアーマチュアを吸着する第一のヨークと、を備えることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記プランジャの他端に連結された第二のアーマチュアと、
軸方向の一端側、径方向の外側、及び軸方向の他端側を閉塞し、前記コイルを励磁したときに前記第二のアーマチュア及び前記第一のアーマチュアを吸着する第二のヨークと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記スプール、前記プランジャ、前記第一のアーマチュア、前記永久磁石、前記第一のヨーク、及び前記第二のアーマチュア、及び前記第二のヨークによって電磁石部を構成し、
固定接触子に可動接触子を接触及び離間させる接点支えと、
奥行方向の奥に配置され、動作軸を奥行方向に直交させて前記電磁石部が収容された下部フレームと、
奥行方向の手前に配置され、動作軸を前記電磁石部の動作軸と平行にして前記接点支えが収容された上部フレームと、を備え、
前記第一のアーマチュアには、奥行方向の手前に向かって突出し、前記接点支えに駆動力を伝達するレバーが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記電磁石部は、前記第一のヨーク及び前記第二のヨークを介して、軸方向に対向する前記下部フレームの内周面によって位置決めされていることを特徴とする請求項3に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された電磁接触器は、プランジャを駆動して接点の開閉を行なうものであり、外ヨークとコイルとの間には、永久磁石及び内ヨークが設けられている。永久磁石及び内ヨークは、非励磁のときにアーマチュアを吸着して釈放状態を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外ヨークとコイルとの間に永久磁石及び内ヨークを設けた場合、コイルを巻き付けるスペースが制約されるため、コイルの巻き付け量が低下するか、又は径方向外側に大型化してしまう。
本発明の目的は、電磁接触器において、コイルの巻き付け量を維持しつつ径方向外側への大型化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器は、スプールと、プランジャと、第一のアーマチュアと、永久磁石と、第一のヨークと、を備えている。スプールは、巻き軸にコイルが巻かれている。プランジャは、進退可能な状態で巻き軸に挿通されている。第一のアーマチュアは、プランジャの一端に連結されている。永久磁石は、巻き軸の一端側に配置されている。第一のヨークは、永久磁石の一端側に配置され、コイルが非励磁のときに第一のアーマチュアを吸着する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、永久磁石と第一のヨークを巻き軸の一端側に配置しているため、コイルを巻き付けるスペースが制約されることはない。したがって、コイルの巻き付け量を維持しつつ、径方向外側への大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、電磁接触器11を示す図である。
図中の(a)は、電磁接触器11を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。図中の(b)は、電磁接触器11を、奥行方向の手前から見た状態を示している。電磁接触器11は、接点を密閉しない開放型で、下部フレーム12と、上部フレーム13と、を備えている。下部フレーム12は、奥行方向の奥に配置されている。上部フレーム13は、下部フレーム12における奥行方向の手前に嵌め合わされている。上部フレーム13には、奥行方向の手前に、消弧カバー14と、端子カバー15と、が嵌め合わされている。上部フレーム13には、縦方向の両側に、夫々、三つの主端子16と、補助端子17と、コイル端子18と、が設けられている。
【0010】
図2は、電磁接触器11を示す図である。
ここでは、電磁接触器11において、縦方向の中心を通り幅方向及び奥行方向に沿った断面を、縦方向の一方から見た状態を示している。下部フレーム12は、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の奥が閉塞され、奥行方向の手前が開放された箱状に形成されている。上部フレーム13は、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の奥が閉塞され、奥行方向の手前が開放された箱状に形成されている。電磁接触器11は、電磁石部21と、接点支え41と、を備えている。電磁石部21は、下部フレーム12に収容され、幅方向に沿って動作する動作軸A1を備えている。接点支え41は、上部フレーム13に収容され、幅方向に沿って動作する動作軸A2を備えている。動作軸A1及び動作軸A2は、平行であり、奥行方向に離れている。
【0011】
図3は、電磁石部21を示す図である。
ここでは、分解した電磁石部21を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。電磁石部21は、スプール22と、プランジャ23と、アーマチュア24(第一のアーマチュア)と、アーマチュア25(第二のアーマチュア)と、一対のヨーク26(第二のヨーク)と、一対の永久磁石27と、ヨーク28(第一のヨーク)と、を備えている。電磁石部21は、コイルに電流を流す向きが一定となる有極直流型である。
スプール22は、絶縁性を有する樹脂製であり、
図2に示すように、幅方向に延びる円筒状の巻き軸31にコイル32が巻かれている。コイル32は、一端が一方のコイル端子18に接続され、他端が他方のコイル端子18に接続されている。
【0012】
プランジャ23は、幅方向に延びる円柱状の可動鉄心であり、軸方向に進退可能な状態で巻き軸31の内側に挿入される。プランジャ23は、巻き軸31よりも長い。
アーマチュア24は、縦方向及び奥行方向に沿った板状の継鉄であり、プランジャ23の一端に連結される。アーマチュア24は、幅方向から見て略方形に形成され、奥行方向の手前に突出したレバー36が形成されている。レバー36は、
図2に示すように、上部フレーム13の底に形成された開口部から進入し、接点支え41に嵌まり合う。
アーマチュア25は、縦方向及び奥行方向に沿った板状の継鉄であり、プランジャ23の他端に連結される。アーマチュア25は、幅方向から見て略方形に形成されている。
【0013】
ヨーク26は、縦方向の外側及び幅方向の両側を覆い、奥行方向から見て縦方向の内側に向かって開いた略コ字状に形成された継鉄である。一対のヨーク26は、スプール22に対して縦方向の両側から嵌め合わされている。
永久磁石27は、奥行方向に沿って延びる柱状であり、アーマチュア24を挟んで縦方向の両側に一つずつ設けられている。
ヨーク28は、縦方向及び奥行方向に沿った板状の継鉄であり、アーマチュア24よりも幅方向の外側で永久磁石27に吸着されている。
【0014】
図4は、上部フレーム13を示す図である。
ここでは、上部フレーム13において、動作軸A2を通り縦方向及び幅方向に沿った断面を、奥行方向の手前から見た状態を示している。上部フレーム13には、縦方向の両側に、夫々、三つの主固定接触子42(固定接触子)と、補助固定接触子43と、が設けられている。主固定接触子42は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、主端子16の端子台と一体に成形されている。主固定接触子42には、縦方向における内側の端部で幅方向の他方を向いた端面に主固定接点が形成されている。補助固定接触子43は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、補助端子17の端子台と一体に成形されている。補助固定接触子43には、縦方向における内側の端部で幅方向の他方を向いた端面に補助固定接点が形成されている。
【0015】
接点支え41には、三つの主可動接触子44(可動接触子)と、補助可動接触子45と、が設けられている。主可動接触子44は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び奥行方向に沿った板状で、且つ奥行方向から見て幅方向の一方に凸となるハット状に成形されている。主可動接触子44には、両端側で幅方向の一方を向いた端面に、主固定接点に対向する主可動接点が形成されている。補助可動接触子45は、導電性を有する金属であり、縦方向に延び、縦方向及び奥行方向に沿った板状で、且つ奥行方向から見て幅方向の一方に凸となるハット状に成形されている。補助可動接触子45には、両端側で幅方向の一方を向いた端面に、補助固定接点に対向する補助可動接点が形成されている。主可動接触子44及び補助可動接触子45は、夫々、接触スプリング46によって幅方向の一方に付勢されている。接点支え41は、
図2に示すように、バックスプリング47によって幅方向の他方に付勢されている。接点支え41には、奥行方向の手前から蓋体48が嵌め合わされている。
【0016】
上記の構成により、コイル32に通電がない非励磁の状態では、
図2に示すように、永久磁石27の磁力とバックスプリング47の反発力によって、プランジャ23が幅方向の他方に変位した配置となる。永久磁石27の磁束は、永久磁石27、ヨーク28、アーマチュア24、プランジャ23における幅方向の他方側、及びヨーク26における幅方向の他方側を順に通過する。この閉ループとなる磁気回路によって、アーマチュア24がヨーク28に吸着される。こうして、プランジャ23が幅方向の他方へ変位しているときに、レバー36を介して接点支え41も幅方向の他方へ変位し、接点が開いた釈放状態となる。このとき、ヨーク26における幅方向の一方に対してアーマチュア25が離間し、ヨーク26における幅方向の他方に対してアーマチュア24が離間している。
【0017】
この状態から、コイル32に通電され励磁されると、コイル32の磁力によって、ヨーク26における幅方向の一方にアーマチュア25が吸着され、ヨーク26における幅方向の他方にアーマチュア24が吸着される。これにより、プランジャ23が永久磁石27の磁力とバックスプリング47の反発力に逆らって幅方向の一方に変位した配置となる。コイル32の磁束は、プランジャ23、アーマチュア24、ヨーク26、及びアーマチュア25を順に通過する。この閉ループとなる磁気回路によって、ヨーク26における幅方向の一方にアーマチュア25が吸着され、ヨーク26における幅方向の他方にアーマチュア24が吸着される。こうして、プランジャ23が幅方向の一方へ変位しているときに、レバー36を介して接点支え41も幅方向の一方へ変位し、接点が閉じた投入状態となる。このとき、ヨーク28に対してアーマチュア24が離間している。
【0018】
図5は、電磁接触器11を示す図である。
ここでは、分解した電磁接触器11を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。電磁接触器11を組み立てる場合、下部フレーム12に電磁石部21を収容し、下部フレーム12に上部フレーム13を嵌め合わせ、上部フレーム13に接点支え41を収容する。
図6は、下部フレーム12を示す図である。
ここでは、下部フレーム12を、奥行方向の手前から見た状態を示している。下部フレーム12には、幅方向における両側の内周面のうち縦方向の両側に、リブ51が形成されている。幅方向における一方のリブ51がヨーク26に接触し、幅方向における他方のリブ51がヨーク28に接触することで、電磁石部21における幅方向の位置決めがなされる。
【0019】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器11は、スプール22と、プランジャ23と、アーマチュア24と、永久磁石27と、ヨーク28と、を備えている。スプール22は、巻き軸31にコイル32が巻かれている。プランジャ23は、進退可能な状態で巻き軸31に挿通されている。アーマチュア24は、プランジャ23の一端に連結されている。永久磁石27は、巻き軸31の一端側に配置されている。ヨーク28は、永久磁石27の一端側に配置され、コイル32が非励磁のときにアーマチュア24を吸着する。このように、永久磁石27とヨーク28を巻き軸31の一端側に配置しているため、コイル32を巻き付けるスペースが制約されることはない。したがって、コイル32の巻き付け量を維持しつつ、径方向外側への大型化を抑制することができる。巻き軸31の一端側は、元々、アーマチュア24のストローク代として確保されており、そこに永久磁石27を配置しているため、電磁石部21が軸方向へ大型化することはない。また、非励磁のときにアーマチュア24をヨーク28に吸着させて、プランジャ23の位置を保持することができる。
【0020】
電磁接触器11は、アーマチュア25と、ヨーク26と、を備えている。アーマチュア25は、プランジャ23の他端に連結されている。ヨーク26は、軸方向の一端側、径方向の外側、及び軸方向の他端側を閉塞し、コイル32を励磁したときにアーマチュア25及びアーマチュア24を吸着する。すなわち、励磁されたときにアーマチュア25をヨーク26における幅方向の一方側に吸着させ、アーマチュア24をヨーク26における幅方向の他方側に吸着させる。これにより、励磁されたときのプランジャ23の位置を保持することができる。
【0021】
スプール22、プランジャ23、アーマチュア24、永久磁石27、ヨーク28、及びアーマチュア25、及びヨーク26によって電磁石部21を構成する。電磁接触器11は、接点支え41と、下部フレーム12と、上部フレーム13と、を備えている。接点支え41は、主固定接触子42に主可動接触子44を接触及び離間させる。下部フレーム12は、奥行方向の奥に配置され、動作軸A1を奥行方向に直交させて電磁石部21が収容されている。上部フレーム13は、奥行方向の手前に配置され、動作軸A2を電磁石部21の軸方向と平行にして接点支え41が収容されている。アーマチュア24には、奥行方向の手前に向かって突出し、接点支え41に駆動力を伝達するレバー36が形成されている。このように、電磁石部21の動作軸A1と接点支え41の動作軸A2とを同軸上に配置しないことで、奥行方向の小型化を図ることができる。
電磁石部21は、ヨーク28及びヨーク26を介して、軸方向に対向する下部フレーム12の内周面によって位置決めされている。これにより、樹脂成型品であるスプール22を介して位置決めする構成と比べて、プランジャ23のストローク量を安定させることができる。
【0022】
次に、比較例について説明する。
比較例は、永久磁石とヨークのレイアウトが異なることを除いては、前述した実施形態と同様の構成であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7は、比較例を示す図である。
比較例となる電磁石部61では、ヨーク26(外ヨーク)とコイル32との間に、永久磁石67及びヨーク68(内ヨーク)が設けられている。永久磁石67及びヨーク68は、非励磁のときにアーマチュア25を吸着して釈放状態を維持する。このように、ヨーク26とコイル32との間に、永久磁石67及びヨーク68を設けた場合、コイル32を巻き付けるスペースが制約されるため、コイル32の巻き付け量が低下するか、又は径方向外側に大型化してしまうという問題があった。
【0023】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0024】
11…電磁接触器、12…下部フレーム、13…上部フレーム、14…消弧カバー、15…端子カバー、16…主端子、17…補助端子、18…コイル端子、21…電磁石部、22…スプール、23…プランジャ、24…アーマチュア、25…アーマチュア、26…ヨーク、27…永久磁石、28…ヨーク、31…巻き軸、32…コイル、36…レバー、41…接点支え、42…主固定接触子、43…補助固定接触子、44…主可動接触子、45…補助可動接触子、46…接触スプリング、47…バックスプリング、48…蓋体、51…リブ、61…電磁石部、67…永久磁石、68…ヨーク