(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024381
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】粉砕材混合材料の成形支援方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20250213BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/76
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128448
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小塚 誠
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA50
4F206AP10
4F206AR20
4F206JA07
4F206JE16
4F206JF01
4F206JF21
4F206JF46
4F206JF51
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN03
4F206JP13
4F206JP14
(57)【要約】
【課題】 実際の成形品における正確性及び有効性の高い粉砕材の混合比率を容易に得、粉砕材が多過ぎて品質を保障できない虞れが生じる弊害や粉砕材が少過ぎて粉砕材を十分に再利用できない不具合などを排除する。
【解決手段】 バージン材Rvのみによる所定の可塑化終了位置Xeまでのバージン材可塑化時間Tvと,粉砕材Rsのみによる可塑化条件における所定の可塑化終了位置Xeまでの粉砕材可塑化時間Tsを計測し、基本時間データDoとして登録処理するとともに、粉砕材混合材料Rmによる成形品の生産時に所定のショットにおける可塑化終了位置Xeまでの粉砕材混合材料可塑化時間Tmを計測して実測時間データDpを取得し、バージン材可塑化時間Tv,粉砕材可塑化時間Ts及び粉砕材混合材料可塑化時間Tmに基づいて、粉砕材混合材料Rmにおける粉砕材比率Pxを求めて出力処理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バージン材と粉砕材を所定の比率により混合した粉砕材混合材料を可塑化して射出成形を行う射出成形機の粉砕材混合材料の成形支援方法であって、予め、粉砕材混合材料に使用するバージン材のみによる所定の可塑化条件における所定の可塑化終了位置までのバージン材可塑化時間と,前記粉砕材混合材料に使用する粉砕材のみによる前記可塑化条件における所定の可塑化終了位置までの粉砕材可塑化時間を計測し、基本時間データとして登録処理するとともに、粉砕材混合材料による成形品の生産時に、所定のショットにおける可塑化終了位置までの粉砕材混合材料可塑化時間を計測して実測時間データを取得し、前記バージン材可塑化時間,前記粉砕材可塑化時間及び粉砕材混合材料可塑化時間に基づいて、前記粉砕材混合材料における粉砕材比率を求めて出力処理することを特徴とする粉砕材混合材料の成形支援方法。
【請求項2】
前記粉砕材比率は、当該粉砕材比率をPm〔wt%〕,前記粉砕材混合材料可塑化時間をTm〔秒〕,前記バージン材可塑化時間をTv〔秒〕,前記粉砕材可塑化時間をTs〔秒〕としたとき、次の演算式により求めることを特徴とする請求項1記載の粉砕材混合材料の成形支援方法。
Pm=[(Tm-Tv)/(Ts-Tv)]×100〔wt%〕
【請求項3】
前記粉砕材比率は、各ショット毎又は所定間隔置きのショット毎に求めて出力処理することを特徴とする請求項1記載の粉砕材混合材料の成形支援方法。
【請求項4】
前記粉砕材比率は、前記粉砕材混合材料可塑化時間を求めた後、成形品に反映されるまでの遅延時間を、少なくともスクリュの容量を含めて算出し、この遅延時間に基づいて、前記粉砕材比率と当該成形品を紐付けることを特徴とする請求項1記載の粉砕材混合材料の成形支援方法。
【請求項5】
前記粉砕材比率に対して上限値及び/又は下限値を設定し、上限値以下及び/又は下限値以上の成形品を良品として判定する良否判定処理を行うことを特徴とする請求項1記載の粉砕材混合材料の成形支援方法。
【請求項6】
バージン材と粉砕材を所定の比率により混合した粉砕材混合材料を可塑化して射出成形を行う射出成形機の粉砕材混合材料の成形支援装置であって、所定の可塑化条件を設定する可塑化条件設定機能部と、粉砕材混合材料に使用するバージン材のみによる前記可塑化条件による所定の可塑化終了位置までのバージン材可塑化時間,及び前記粉砕材混合材料に使用する粉砕材のみによる前記可塑化条件による所定の可塑化終了位置までの粉砕材可塑化時間を計測し、基本時間データとして登録処理する基本時間データ取得機能部と、粉砕材混合材料による成形品の生産時に所定のショットにおける可塑化終了位置までの粉砕材混合材料可塑化時間を計測し、実測時間データとして取得する実測時間データ取得機能部と、前記バージン材可塑化時間,前記粉砕材可塑化時間及び粉砕材混合材料可塑化時間に基づいて、粉砕材混合材料における粉砕材比率を求める粉砕材比率演算機能部と、得られた粉砕材比率を出力処理する出力処理機能部とを有する成形機コントローラを備えることを特徴とする粉砕材混合材料の成形支援装置。
【請求項7】
前記可塑化条件設定機能部は、スクリュの回転数,スクリュに対する背圧,加熱筒の設定温度,スクリュの可塑化終了位置,の一又は二以上の設定項目を含むことを特徴とする請求項6記載の粉砕材混合材料の成形支援装置。
【請求項8】
前記成形機コントローラは、前記粉砕材比率演算機能部により得られた粉砕材比率に対して、上限値及び/又は下限値を設定し、上限値以下及び/又は下限値以上の成形品を良品として判定する良否判定処理機能部を備えることを特徴とする請求項6記載の粉砕材混合材料の成形支援装置。
【請求項9】
前記成形機コントローラは、前記出力処理機能部として、前記粉砕材比率を、数値表示及び/又はグラフィック表示するディスプレイを備えることを特徴とする請求項6記載の粉砕材混合材料の成形支援装置。
【請求項10】
前記成形機コントローラは、上限値を越え,及び/又は下限値未満の成形品を不適切成形品に判定し、ディスプレイによりアラーム表示を含む所定の出力処理を行う前記出力処理機能部を備えることを特徴とする請求項8記載の粉砕材混合材料の成形支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バージン材と粉砕材を所定の比率で混合した粉砕材混合材料を可塑化して射出成形を行う射出成形機における粉砕材混合材料の成形支援方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機を使用する生産工場等では、成形用の樹脂材料としてバージン材のみではなく、成形後に発生するスプール・ランナー及び成形不良品等の不要成形物を再利用する場合も多い。この場合、これらの不要成形物を細かく粉砕した粉砕材を製作し、この粉砕材を所定の比率でバージン材(ペレット)に混合することにより、粉砕材混合材料として使用する。
【0003】
従来、このような粉砕材混合材料を利用して成形を行う成形手段としては、特許文献1に記載されるプラスチック成形機構及び特許文献2に記載されるスプール・ランナーの再利用機能を備えた樹脂成形装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載のプラスチック成形機構は、粗砕材と原料との混合を安定的かつ効率的に実施する回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構の提供を目的としたものであり、具体的には、成形金型から取り出された回収成形物を取出装置の材料落下口上方へ直接搬送する搬送手段と、材料落下口上部に固着した原料送り量調整手段の上面に配設され、搬送された回収成形物を粗砕する粗砕手段と、粗砕手段で粗砕された回収成形物を材料落下口へ落下させる貫通穴を有するとともに、原料をその送り量を調整しつつ貫通穴へ搬送して回収成形物及び原料を混合する原料送り量調整手段とを備えて構成したものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の樹脂成形装置は、成形機にスプール・ランナーの粉砕材を輸送するための大掛かりな装置を別途設けるような必要を無くし、樹脂成形装置全体の構成の簡素化、及び品種替えに際しての清掃の容易化を図ることを目的としたものであり、具体的には、成形機の樹脂成形位置からスプール・ランナーを取り出すための取出手段と、この取出手段によって取り出されたスプール・ランナーを粉砕するための粉砕機とを備えた樹脂成形装置であって、粉砕機は、取出手段から供給されたスプール・ランナーを粉砕して得られる粉砕材を成形機内へ供給するようにその粉砕材排出口が成形機に接続して設けられたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-125818号公報
【特許文献2】特開平7-304038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した粉砕材混合材料を使用する従来の成形手段は、次のような課題も存在した。
【0008】
即ち、使用する粉砕材は、個々の粒形状や大きさが一定ではなく、ランダムな形態になるため、バージン材と混合した場合、その混合比率にバラツキを生じやすい。具体的には、重量比率で、バージン材(ペレット)を70〔wt%〕、粉砕材を30〔wt%〕の割合で混合しても成形品は必ずしも70:30の比率で混合しているわけではなく、バラツキを生じやすい。
【0009】
この場合、粉砕材が、例えば、30〔wt%〕以内であれば、強度等を含む品質に問題がないことを確認している場合、バラツキにより、30〔wt%〕を越えた成形品が存在すれば、不適切成形品となる虞れがあり、品質を保障できなくなることも考えられるため、混合時の比率ではなく、実際の成形品における混合比率が重要となる。
【0010】
しかし、実際の成形品における混合比率は、溶融状態で混合するため、混合比率を確認することは容易でなく、結局、粉砕材が多すぎた場合、品質を保障できない虞れがあるとともに、逆に、粉砕材が少すぎた場合、粉砕材の有効利用(再利用)が図れないこととなり、従来より、実際の成形品における混合比率を確認するための有効性及び正確性の高い取得手段が要請されていた。
【0011】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した粉砕材混合材料Rmの成形支援方法及び装置1の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る粉砕材混合材料Rmの成形支援方法は、バージン材Rvと粉砕材Rsを所定の比率(Px)により混合した粉砕材混合材料Rmを可塑化して射出成形を行うに際し、予め、粉砕材混合材料Rmに使用するバージン材Rvのみによる所定の可塑化条件における所定の可塑化終了位置Xeまでのバージン材可塑化時間Tvと,粉砕材混合材料Rmに使用する粉砕材Rsのみによる可塑化条件における所定の可塑化終了位置Xeまでの粉砕材可塑化時間Tsを計測し、基本時間データDoとして登録処理するとともに、粉砕材混合材料Rmによる成形品の生産時に、所定のショットにおける可塑化終了位置Xeまでの粉砕材混合材料可塑化時間Tmを計測して実測時間データDpを取得し、バージン材可塑化時間Tv,粉砕材可塑化時間Ts及び粉砕材混合材料可塑化時間Tmに基づいて、粉砕材混合材料Rmにおける粉砕材の比率Pxを求めて出力処理することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る粉砕材混合材料Rmの成形支援装置1は、バージン材Rvと粉砕材Rsを所定の比率(Px)により混合した粉砕材混合材料Rmを可塑化して射出成形を行う射出成形機Mにおける成形支援装置を構成するに際して、所定の可塑化条件を設定する可塑化条件設定機能部Fsと、粉砕材混合材料Rmに使用するバージン材Rvのみによる可塑化条件による所定の可塑化終了位置Xeまでのバージン材可塑化時間Tv,及び粉砕材混合材料Rmに使用する粉砕材Rsのみによる可塑化条件による所定の可塑化終了位置Xeまでの粉砕材可塑化時間Tsを計測し、基本時間データDoとして登録処理する基本時間データ取得機能部Foと、粉砕材混合材料Rmによる成形品の生産時に所定のショットにおける可塑化終了位置Xeまでの粉砕材混合材料可塑化時間Tmを計測し、実測時間データDpとして取得する実測時間データ取得機能部Fpと、バージン材可塑化時間Tv,粉砕材可塑化時間Ts及び粉砕材混合材料可塑化時間Tmに基づいて、粉砕材混合材料Rmにおける粉砕材比率Pxを求める粉砕材比率演算機能部Faと、得られた粉砕材比率Pxを出力処理する出力処理機能部Feとを有する成形機コントローラ2を備えることを特徴とする。
【0014】
一方、本発明は、発明の好適な態様により、成形支援方法の実施に際し、粉砕材比率Pxは、当該粉砕材比率をPx〔wt%〕,粉砕材混合材料可塑化時間をTm〔秒〕,バージン材可塑化時間をTv〔秒〕,粉砕材可塑化時間をTs〔秒〕としたとき、Px=[(Tv-Tv)/(Ts-Tv)]×100〔wt%〕(〔演算式1〕)により求めることができる。また、粉砕材比率Pxは、各ショット毎又は所定間隔置きのショット毎に求めて出力処理することができるとともに、粉砕材比率Pxは、粉砕材混合材料可塑化時間Tmを求めた後、成形品に反映されるまでの遅延時間Tdを、少なくともスクリュ3の容量を含めて算出し、この遅延時間Tdに基づいて、粉砕材比率Pxと当該成形品を紐付けることもできる。さらに、粉砕材比率Pxに対して上限値Pxu及び/又は下限値Pxdを設定し、上限値Pxu以下及び/又は下限値Pxd以上の成形品を良品として判定する良否判定処理を行うことができる。
【0015】
他方、成形支援装置1の実施に際しては、可塑化条件設定機能部Fsは、スクリュ3の回転数,スクリュに対する背圧,加熱筒の設定温度,スクリュの可塑化終了位置Xe,の一又は二以上の設定項目を含ませることができる。また、成形機コントローラ2は、粉砕材比率演算機能部Faにより得られた粉砕材比率Pxに対して、上限値Pxu及び/又は下限値Pxdを設定し、上限値Pxu以下及び/又は下限値Pxd以上の成形品を良品として判定する良否判定処理機能部Fjを設けることができる。さらに、成形機コントローラ2は、出力処理機能部Feとして、粉砕材比率Pxを、数値表示及び/又はグラフィック表示するディスプレイ2dを設けることができるとともに、成形機コントローラ2は、上限値Pxuを越え,及び/又は下限値Pxd未満の成形品を不適切成形品に判定し、ディスプレイ2dによりアラーム表示を含む所定の出力処理を行う出力処理機能部Feを設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明に係る粉砕材混合材料Rmの成形支援方法及び装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0017】
(1) バージン材Rvのみによる所定の可塑化終了位置Xeまでのバージン材可塑化時間Tvと,粉砕材Rsのみによる可塑化条件における所定の可塑化終了位置Xeまでの粉砕材可塑化時間Tsを計測し、基本時間データDoとして登録処理するとともに、粉砕材混合材料Rmによる成形品の生産時に所定のショットにおける可塑化終了位置Xeまでの粉砕材混合材料可塑化時間Tmを計測して実測時間データDpを取得し、バージン材可塑化時間Tv,粉砕材可塑化時間Ts及び粉砕材混合材料可塑化時間Tmに基づいて、粉砕材混合材料Rmにおける粉砕材比率Pxを求めて出力処理するため、実際の成形品における、正確性及び有効性の高い粉砕材Rsの混合比率Pxを容易に得ることができる。これにより、例えば、粉砕材Rsが多過ぎて品質を保障できない虞れが生じる弊害,或いは粉砕材Rsが少過ぎて粉砕材Rsを十分に再利用できない不具合などを排除することができる。
【0018】
(2) 好適な態様により、成形支援方法により粉砕材比率Pxを求めるに際し、当該粉砕材比率をPx〔wt%〕,粉砕材混合材料可塑化時間をTm〔秒〕,バージン材可塑化時間をTv〔秒〕,粉砕材可塑化時間をTs〔秒〕としたとき、Px=[(Tv-Tv)/(Ts-Tv)]×100〔wt%〕により求めるようにすれば、比較的簡易な演算式の利用により求めることができるため、的確な粉砕材比率Pxを、迅速かつ容易に得ることができる。
【0019】
(3) 好適な態様により、粉砕材比率Pxを求めるに際し、各ショット毎又は所定間隔置きのショット毎に求めることにより出力処理すれば、任意のショット又はショット間隔により粉砕材比率Pxを求めることができるため、例えば、バラツキの大きい粉砕材Rsのときはショット毎に求め、バラツキの小さい粉砕材Rsのときは複数のショット毎に求めるなど、目的に応じた取得が可能となり、柔軟性及び利便性に優れる。
【0020】
(4) 好適な態様により、粉砕材比率Pxを求めるに際し、粉砕材混合材料可塑化時間Tmを求めた後、成形品に反映されるまでの遅延時間Tdを、少なくともスクリュ3の容量を含めて算出し、この遅延時間Tdに基づいて、粉砕材比率Pxと当該成形品を紐付けるようにすれば、粉砕材比率Pxとこれに基づく成形品を一致させることができるため、粉砕材比率Pxに対する正確性及び信頼性をより高めることができる。
【0021】
(5) 好適な態様により、成形機コントローラ2に、粉砕材比率演算機能部Faにより得られた粉砕材比率Pxに対して、上限値Pxu及び/又は下限値Pxdを設定し、上限値Pxu以下及び/又は下限値Pxd以上の成形品を良品として判定する良否判定処理機能部Fjを設ければ、成形品に対する良否判定を容易かつ的確に行うことができるため、成形品に対する品質確保と信頼性確保を一段と高めることができる。
【0022】
(6) 好適な態様により、可塑化条件設定機能部Fsを構成するに際し、スクリュ3の回転数,スクリュ3に対する背圧,加熱筒の設定温度,スクリュ3の可塑化終了位置Xe,の一又は二以上の設定項目を含ませれば、実際の生産工程と同水準の可塑化条件を設定可能になるため、合理的で信頼性の高い粉砕材比率Pxを得ることができる。
【0023】
(7) 好適な態様により、出力処理機能部Feを構成するに際し、粉砕材比率Pxを数値表示及び/又はグラフィック表示するディスプレイ2dを設ければ、オペレータは視覚的手段により粉砕材比率Pxを容易に確認できるため、粉砕材比率Pxの実際の状況を迅速かつ確実に確認することができる。
【0024】
(8) 好適な態様により、成形機コントローラ2を構成するに際し、上限値Pxuを越え,及び/又は下限値Pxd未満の成形品を不適切成形品として判定し、ディスプレイ2dによりアラーム表示を含む所定の出力処理を行う出力処理機能部Feを設ければ、不適切成形品が発生したことを容易かつ確実に知ることができるため、該当する成形品の廃棄や可塑化条件の変更などの、必要なエラー対応処理を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る粉砕材混合材料の成形支援方法の基本時間データの取得処理手順を示すフローチャート、
【
図2】同成形支援方法の生産時における実測時間データの取得処理手順を示すフローチャート、
【
図3】同成形支援方法を実施できる射出成形機の機械的構造を示す構成図、
【
図4】同成形支援方法を実施できる射出成形機における処理系(制御系)のブロック系統図、
【
図5】同成形支援方法に使用する粉砕材比率対平均可塑化時間特性図、
【
図6】同成形支援方法を実施した際のショット番号に対する粉砕材比率演算値を示す変動図、
【
図7】本発明の好適実施形態に係る粉砕材混合材料の成形支援装置に備えるディスプレイの表示例を示す画面図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る粉砕材混合材料の成形支援方法を利用できる射出成形機Mの概要について、
図3-
図4を参照して説明する。
【0028】
図3は、射出成形機M、特に、型締装置を省略した射出装置Miを示す。射出装置Miにおいて、6は加熱筒であり、この加熱筒6の前端部にはヘッド部6sを介してノズル6nを備える。ノズル6nは加熱筒6内部の溶融樹脂を仮想線で示す金型Cに対して射出する機能を有する。
【0029】
一方、加熱筒6の後端付近の上部にはホッパー6hを備える。このホッパー6hの下端開口は、加熱筒6に貫通形成した材料落下口6dを通して加熱筒6の内部に連通する。これにより、ホッパー6h内の粉砕材混合材料Rmは、材料落下口6dを通して加熱筒6の内部に供給される。粉砕材混合材料Rmは、バージン材Rvと粉砕材Rsを所定の比率Pxにより混合した混合樹脂材料である。
【0030】
なお、
図3中、7hは、ホッパー6hの外周面に付設して、ホッパー6hの内部に収容した樹脂材料Rmを加熱するヒータ、8jは、材料落下口6dの周囲における加熱筒6に形成したウォータージャケットをそれぞれ示す。ヒータ7hは、温調ドライバ8dにおける給電回路8eに接続するとともに、ウォータージャケット8jは、温調ドライバ8dにおける温調水循環回路8wに接続する。温調水循環回路8wは、温調された水媒体(温水又は冷却水)をウォータージャケット8jに循環させることにより、材料落下口6dを通過する樹脂材料Rmを温調(加熱又は冷却)することができる。さらに、給電回路8e及び温調水循環回路8wはコントローラ本体20にそれぞれ接続する。これにより、コントローラ本体20から温調ドライバ8dには、給電回路8e及び温調水循環回路8wに対する制御指令が付与される。
【0031】
また、加熱筒6の内部にはスクリュ3を回動自在及び進退自在に装填する。なお、スクリュ表面には、耐久性等を考慮した所定の表面素材(金属)によるコーティング処理が施されている。スクリュ3は、前側から後側に、メターリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを有する。一方、スクリュ3の後端部は、スクリュ駆動部13に結合する。スクリュ駆動部13は、スクリュ3を回転させるスクリュ回転機構13r及びスクリュ3を前進及び後退させるスクリュ進退機構13mを備える。スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mの駆動方式は、例示の場合、電動モータを用いた電気方式を示しているが、油圧回路を用いた油圧方式であってもよく、その駆動方式は問わない。そして、スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mは給電ドライバ13dに接続するとともに、この給電ドライバ13dはコントローラ本体20に接続する。これにより、コントローラ本体20から給電ドライバ13dに、スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mに対する制御指令が付与される。また、スクリュ3の速度及び位置等の物理量は、図示を省略した速度センサ及び位置センサ等により検出され、この検出信号は給電ドライバ13dに付与される。
【0032】
さらに、加熱筒6は、前側から後側に、加熱筒前部6f,加熱筒中部6m,加熱筒後部6rを有し、各部6f,6m,6rの外周面には、前部加熱部7f,中部加熱部7m,後部加熱部7rをそれぞれ付設する。同様に、ヘッド部6sの外周面には、ヘッド加熱部7sを付設するとともに、ノズル6nの外周面には、ノズル加熱部7nを付設する。これらの各加熱部7f,7m,7r,7s,7nはバンドヒータ等により構成できる。したがって、ノズル加熱部7n,ヘッド加熱部7s,前部加熱部7f,中部加熱部7m,後部加熱部7rは、加熱群部7(
図4)を構成する。そして、この加熱群部7はヒータドライバ7dに接続するとともに、ヒータドライバ7dはコントローラ本体20に接続する。これにより、コントローラ本体20からヒータドライバ7dに、各加熱部7f,7m,7r,7s,7nに対する制御指令が付与され、また、加熱温度は、図示を省略した温度センサ(熱電対等)により検出され、この検出信号はヒータドライバ7dに付与される。
【0033】
一方、
図4には、射出成形機Mの全体制御を司る成形機コントローラ2を示す。成形機コントローラ2は、CPU及び内部メモリ20m等のハードウェアを内蔵したコンピュータ機能を有する上述したコントローラ本体20を備えるとともに、コントローラ本体20には、ディスプレイ2dを接続する。ディスプレイ2dは、必要な情報表示を行う表示部2ddを備えるとともに、タッチパネル2dtが付設され、このタッチパネル2dtを用いて、入力,設定,選択等の各種入力操作を行うことができる。また、コントローラ本体20には、各種アクチュエータを駆動(作動)するドライバ群24を接続する。このドライバ群24には、
図3に示した前述の給電回路8e及び温調水循環回路8wを含む温調ドライバ8d,給電ドライバ13d及びヒータドライバ7dが含まれる。
【0034】
したがって、成形機コントローラ2は、HMI制御系及びPLC制御系を包含し、内部メモリ20mには、PLCプログラム及びHMIプログラムを格納する。PLCプログラムにより、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等が実行されるとともに、HMIプログラムにより、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等が実行される。なお、その他、内部メモリ20mには、流動解析処理プログラムを格納するとともに、粉砕材処理プログラムPiを格納する。
【0035】
また、コントローラ本体20に付属する内部メモリ20mには、本発明に関連して本実施形態に係る成形支援方法を実現するアプリケーションプログラム、即ち、粉砕材支援処理プログラムPiを格納するとともに、流動解析処理プログラムPsを格納する。なお、流動解析処理プログラムPsは、既に本出願人が提案した射出成形機の成形支援装置(特開2020-1183号公報,特願2021-121959号参照)を利用することができる。即ち、推定処理機能により樹脂材料に係る溶融状態の的確な情報(データ)を数値的に推定することができる。
【0036】
これにより、成形機コントローラ2は、成形支援装置1に係わる主要な機能部となる、所定の可塑化条件を設定する可塑化条件設定機能部Fsと、粉砕材混合材料Rmに使用するバージン材Rvのみによる可塑化条件による所定の可塑化終了位置Xeまでのバージン材可塑化時間Tv,及び粉砕材混合材料Rmに使用する粉砕材Rsのみによる可塑化条件による所定の可塑化終了位置Xeまでの粉砕材可塑化時間Tsを計測し、基本時間データDoとして登録処理する基本時間データ取得機能部Foと、粉砕材混合材料Rmによる成形品の生産時に所定のショットにおける可塑化終了位置Xeまでの粉砕材混合材料可塑化時間Tmを計測し、実測時間データDpとして取得する実測時間データ取得機能部Fpと、バージン材可塑化時間Tv,粉砕材可塑化時間Ts及び粉砕材混合材料可塑化時間Tmに基づいて、粉砕材混合材料Rmにおける粉砕材比率Pxを求める粉砕材比率演算機能部Faと、得られた粉砕材比率Pxを出力処理する出力処理機能部Feとを備え、上述した粉砕材支援処理プログラムPiに基づいて本実施形態に係る粉砕材混合材料Rmの成形支援方法が実行される。
【0037】
次に、本実施形態に係る同成形支援方法(成形支援装置1)の原理について、
図4-
図7を参照して説明する。
【0038】
通常、射出成形機Mを使用する生産工場等においては、成形後に、スプール・ランナー及び成形不良品等の不要成形物が発生するため、特に、成形品に対する機械的強度や品質等がさほど要求されない場合、成形用の樹脂材料として、ペレット等のバージン材のみならず、上述した不要成形物を再利用する場合も少なくない。
【0039】
不要成形物の再利用時には、細かく粉砕して粉砕材を得、この粉砕材を所定の比率でバージン材に混合し、粉砕材混合材料として使用する。粉砕材は、一般に、不要成形物を粉砕機により粉砕して使用するが、得られる粉砕材Rsの形状や大きさはランダムになる。この結果、可塑化時に、加熱筒6内における溶融樹脂に空隙が発生し、樹脂の溶融不足や溶融状態にバラツキが発生するなどにより、成形品質の低下、更には成形不良の増加を招きやすく、安定した成形及び生産を行うことは容易でない難点があった。
【0040】
具体的には、生産時に、成形条件として、予め、粉砕材比率Pxを30〔wt%〕(粉砕材:30〔wt%〕,バージン材:70〔wt%〕)に設定しても、実際の成形品における粉砕材Rsの含有量にはバラツキを生じ、この結果、例えば、粉砕材Rsが多過ぎて品質を保障できない,或いは粉砕材Rsが少過ぎて粉砕材Rsを十分に再利用できない,などの不具合を招く難点があった。
【0041】
このため、本発明では、粉砕材Rsの性質として、可塑化時に加熱筒6内で発生する樹脂の空隙或いは加熱筒6及びスクリュ3に対する挙動により可塑化時間に影響を与える可能性があること、即ち、粉砕材Rsが多いほど可塑化時間が長くなり、粉砕材Rsが少ないほど可塑化時間が短くなる可能性に着目し、その検証を行った。
【0042】
図5は、粉砕材比率Px、即ち、バージン材Rv〔wt%〕に対する粉砕材Rs〔wt%〕の混合比率を変更したときの平均可塑化時間〔秒〕の特性を示す。具体的には、バージン材Rvを100〔wt%〕と粉砕材Rsを0〔wt%〕の粉砕材混合材料Rm1,バージン材Rvを70〔wt%〕と粉砕材Rsを30〔wt%〕の粉砕材混合材料Rm2,バージン材Rvを30〔wt%〕と粉砕材Rsを70〔wt%〕の粉砕材混合材料Rm3,バージン材Rvを0〔wt%〕と粉砕材Rsを100〔wt%〕の粉砕材混合材料Rm4,の各平均可塑化時間〔秒〕を実測した結果を示している。
【0043】
図5から明らかなように、粉砕材比率(混合比率)Pxと平均可塑化時間〔秒〕は明確な相関性を有していることを確認でき、可塑化時間は、粉砕材の量に対してほぼ一次関数的に変化する。即ち、可塑化時間を実測すれば、実測時間に対応する粉砕材比率Pxを推定することができる。
【0044】
このため、推定式(演算式)として、粉砕材比率をPx〔wt%〕,粉砕材混合材料可塑化時間をTm〔秒〕,バージン材可塑化時間をTv〔秒〕,粉砕材可塑化時間をTs〔秒〕としたとき、
Px=[(Tv-Tv)/(Ts-Tv)]×100〔wt%〕
により求めるようにした。この演算式による演算処理は、粉砕材比率演算機能部Faにより実行することができる。このように、粉砕材比率Pxは、比較的簡易な演算式の利用により求めることができるため、的確な粉砕材比率Pxを、迅速かつ容易に得ることができる。
【0045】
図6は、ショット番号に対する粉砕材比率演算値の変動グラフを示す。なお、
図6は、ショット毎に求めた変動グラフを示したが、実際の生産時においては、所定間隔置きのショット毎に求めてもよい。このように、粉砕材比率Pxは、任意のショット又はショット間隔により粉砕材比率Pxを求めることができるため、例えば、バラツキの大きい粉砕材Rsのときはショット毎に求め、バラツキの小さい粉砕材Rsのときは複数のショット毎に求めるなど、目的に応じた取得が可能となり、柔軟性及び利便性に優れる。
図6は、粉砕材比率Px(設定比率)として、30〔wt%〕,70〔wt%〕に設定した二種類の粉砕材混合材料Rmを使用した。
図6から明らかなように、ショット毎にバラツキが発生していることを確認できる。
【0046】
したがって、例えば、
図6に示す30〔wt%〕の変動グラフにおいて、上限値Pxuと下限値Pxdを設定し、成形機コントローラ2に設けた良否判定処理機能部Fjにより良否判定を行うことができる。即ち、成形機コントローラ2に、粉砕材比率演算機能部Faにより得られた粉砕材比率Pxに対して、上限値Pxu又は下限値Pxdの一方、或いは上限値Pxuと下限値Pxdの双方を設定し、上限値Pxu以下及び/又は下限値Pxd以上の成形品を良品として判定することができる。このような良否判定処理機能部Fjを設ければ、成形品に対する良否判定を容易かつ的確に行うことができるため、成形品に対する品質確保と信頼性確保を一段と高めることができる。
【0047】
さらに、成形機コントローラ2は、出力処理機能部Feを備えるため、ディスプレイ2dに、
図7に一例で示す表示画面Vmを設け、粉砕材比率Pxに係わる情報をリアルタイムで表示させることができる。例示の表示画面Vmは、最上部に、粉砕材比率Pxをグラフィック表示するグラフィック表示部Vmgを備え、粉砕材比率Pxを横方向の棒グラフ状に表示するとともに、上限値Pxuと下限値Pxdを三角形の指針マークにより示した。
図7は粉砕材比率Pxは30〔wt%〕の状態を示すとともに、上限値Pxuを35〔wt%〕に、下限値Pxdを25〔wt%〕に表示した状態を示している。また、グラフィック表示部Vmgの下側には、実測した粉砕材比率Px,設定した上限値Pxu,設定した下限値Pxdの数値表示部Vmnを設けるとともに、この数値表示部Vmnの下側となる最下部に、アラーム表示部Vmaを設けた。このアラーム表示部Vmaは、中央位置に正常表示灯4sを配するとともに、この右側に上限アラーム表示灯4uを配し、かつ正常時表示灯4sの左側に下限アラーム表示灯4dを配した。
図7は正常表示灯4sが点灯した状態を示す。
【0048】
この表示画面Vmでは、グラフィック表示部Vmgと数値表示部Vmnにより粉砕材比率Pxをリアルタイムで表示するとともに、数値表示部Vmnに設定された上限値Pxuと下限値Pxdを外れていないときは正常表示灯4sを点灯させた状態となり、この状態が
図7に示す状態となる。他方、上限値Pxu又は下限値Pxdを外れた場合には、対応する上限アラーム表示灯4u又は下限アラーム表示灯4dを点灯させることができる。
【0049】
このように、出力処理機能部Feを構成するに際し、粉砕材比率Pxを数値表示部及び/又はグラフィック表示部を有する表示画面Vmをディスプレイ2dに設ければ、オペレータは視覚的手段により粉砕材比率Pxを容易に確認できるため、粉砕材比率Pxの実際の状況を迅速かつ確実に確認することができる。
【0050】
また、出力処理機能部Feにおける表示画面Vmに、上限値Pxuを越え,及び/又は下限値Pxd未満の成形品を不適切成形品に判定し、ディスプレイ2dによりアラーム表示部を設けることにより所定の出力処理を行うようにすれば、不適切成形品が発生したことを容易かつ確実に知ることができるため、該当する成形品の廃棄や可塑化条件の変更などの、必要なエラー対応処理を速やかに行うことができる。
【0051】
なお、粉砕材比率Pxを求めるに際し、粉砕材混合材料可塑化時間Tmを求めた後、成形品に反映されるまでの遅延時間Tdを、少なくともスクリュ3の容量を含めて算出し、この遅延時間Tdに基づいて、粉砕材比率Pxと当該成形品を紐付けることも可能である。このようにすれば、粉砕材比率Pxに基づく成形品を一致させることができるため、粉砕材比率Pxに対する正確性及び信頼性をより高めることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係る粉砕材混合材料Rmの成形支援方法を含む成形支援装置1の動作について、各図を参照しつつ
図1及び
図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0053】
最初に、本実施形態に係る成形支援方法を使用する生産工程を行う前における準備段階の処理について、
図1に示すフローチャートを参照して説明する。
【0054】
まず、成形機コントローラ2に備える基本時間データ取得機能部Foにより、所定の樹脂材料に係わるバージン材Rvに対するバージン材可塑化時間Tvの取得処理を行う。この場合、ペレット等のバージン材Rvを準備する(ステップS1)。また、成形機コントローラ2における可塑化条件設定機能部Fsにより所定の可塑化条件を設定する(ステップS2)。具体的な可塑化条件には、スクリュ3の回転数,スクリュ3に対する背圧,加熱筒の設定温度,スクリュ3の可塑化終了位置Xe,の一又は二以上の設定項目を含ませることができる。このような設定項目を含ませれば、実際の生産工程と同水準の可塑化条件を設定可能になるため、合理的で信頼性の高い粉砕材比率Pxを得ることができる。
【0055】
そして、ホッパー6hに対してバージン材Rvのみ、即ち、100〔%〕のバージン材Rvを投入する(ステップS3)。可塑化処理の準備が終了したなら、設定した可塑化条件に基づいて可塑化処理を実行する(ステップS4)。可塑化処理は、スクリュ3を最前進位置(又は所定の設定位置)にセットし、この位置から可塑化処理を行う。可塑化処理ではスクリュ3が回転し、可塑化された溶融樹脂がスクリュ3の前方に蓄積されるとともに、これに対応してスクリュ3が徐々に後退する。スクリュ3が後退し、設定した所定の可塑化終了位置Xeに達したなら可塑化処理を終了させる(ステップS5)。また、可塑化処理の終了により、可塑化処理の開始時点から可塑化終了位置Xeに到達した時点までのバージン材可塑化時間Tvを取込む(ステップS6)。
【0056】
他方、同様の処理を行うことにより粉砕材可塑化時間Tsの取得処理を行う。この場合、粉砕材Rsのみを準備する(ステップS7)。粉砕材Rsは、上述した所定の樹脂材料を使用した成形品の生産(成形)後に発生するスプール・ランナー及び成形不良品等の不要成形物を、不図示の粉砕機を利用して粉砕したものであり、得られる粉砕材Rsの大きさや形状はランダムとなる。また、可塑化条件設定機能部Fsにより所定の可塑化条件を設定する(ステップS8)。この場合、基本的には、上述したバージン材可塑化時間Tvの取得処理で使用した可塑化条件と同一の条件を設定する。
【0057】
そして、ホッパー6hに対して粉砕材Rsのみ、即ち、100〔%〕の粉砕材Rsを投入する(ステップS9)。可塑化処理の準備が終了したなら、設定した可塑化条件に基づいて可塑化処理を実行する(ステップS10)。可塑化処理は、スクリュ3を最前進位置(又は所定の設定位置)にセットし、この位置から可塑化処理を行う。これにより、バージン材Rvの場合と同様に、スクリュ3が後退し、設定した所定の可塑化終了位置Xeに達したなら可塑化処理を終了させる(ステップS11)。また、可塑化処理の終了により、可塑化処理の開始時点から可塑化終了位置Xeに到達した時点までの粉砕材可塑化時間Tsを取込む(ステップS12)。
【0058】
以上の取込み処理により、バージン材可塑化時間Tv及び粉砕材可塑化時間Tsを得れるため、成形機コントローラ2の基本時間データ取得機能部Foにより内部メモリ20mのデータベースに登録する(ステップS13)。
図4にデータベースの一例として、粉砕材RsaのデータベースDB1,粉砕材RsbのデータベースDB2…を示す。これにより、所定の樹脂材料に係わる基本時間データの取得が終了するため、他の樹脂材料がある場合には、同様の処理手順により、基本時間データの取得を行えばよい(ステップS14)。さらに、可塑化条件を変更するなどにより、バージン材可塑化時間Tv及び粉砕材可塑化時間Tsを変更した場合にも同様の処理手順により、基本時間データの取得を行い、データベースの登録事項の更新を行うことができる(ステップS15)。そして、
図1のフローチャートに基づく、生産工程を行う前における準備段階の処理が終了すれば、所定の生産工程を実施する(ステップSP)。
【0059】
次に、本実施形態に係る成形支援方法を使用する生産工程の処理について、
図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0060】
今、射出成形機Mにより、所定の樹脂材料によるバージン材Rvと粉砕材Rsを混合した粉砕材混合材料Rmを用いた生産工程を実施中である場合を想定する(ステップSP)。なお、成形条件としての粉砕材混合材料Rmの事前設定は、
図4に示す材料入力部34の粉砕材重量入力部34sとバージン材重量入力部34vにより行うことができる。
【0061】
一方、生産工程中、成形機コントローラ2は、成形工程の成形サイクルを監視する(ステップS21)。そして、成形サイクルが可塑化工程に移行し、可塑化終了位置Xeを確認したなら、そのショットにおける可塑化時間の実測時間データ、即ち、実測時間データ取得機能部Fpにより、実測時間データDpの取込み処理を行う(ステップS22,S23,S24)。
【0062】
成形機コントローラ2は、実測時間データDpが得られたなら、粉砕材比率演算機能部Faにより、粉砕材比率Pxの推定処理(演算処理)を行う(ステップS25)。具体的には、データベースに登録されている基本時間データDoとなるバージン材可塑化時間Tvと粉砕材可塑化時間Tsを使用するとともに、実測時間データDpとなる上述した粉砕材混合材料可塑化時間Tmを使用し、粉砕材比率Pxを、Px=[(Tv-Tv)/(Ts-Tv)]×100〔wt%〕により求める。
【0063】
そして、得られた粉砕材比率Pxは、成形機コントローラ2に備える出力処理機能部Feにより所定の出力処理を行う。具体的には、前述した
図7の表示画面Vmにより、得られた粉砕材比率Pxを、グラフィック表示部Vmgと数値表示部Vmnを用いて表示処理する(ステップS26)。この後、次のショットが継続する場合には、同様の監視処理を継続する(ステップS27,S21…)。
【0064】
また、成形機コントローラ2は良否判定処理機能部Fjにより判定処理を行う(ステップS28)。即ち、粉砕材比率Pxに対して、設定した上限値Pxuと下限値Pxdに基づく判定処理を行う。これにより、粉砕材比率Pxが上限値Pxu以下又は下限値Pxd以上のときは正常と判定し、正常表示灯4sを点灯させる。これに対して、粉砕材比率Pxが上限値Pxuを越え,又は下限値Pxd未満のときは、得られた成形品は不適切成形品と判定し、ディスプレイ2dに設けたアラーム表示部Vmaにより必要なエラー対応処理を行う(ステップS9,S30)。
【0065】
このように、本実施形態に係る粉砕材混合材料の成形支援方法(成形支援装置1)によれば、基本的な構成として、バージン材Rvのみによる所定の可塑化終了位置Xeまでのバージン材可塑化時間Tvと,粉砕材Rsのみによる可塑化条件における所定の可塑化終了位置Xeまでの粉砕材可塑化時間Tsを計測し、基本時間データDoとして登録処理するとともに、粉砕材混合材料Rmによる成形品の生産時に所定のショットにおける可塑化終了位置Xeまでの粉砕材混合材料可塑化時間Tmを計測して実測時間データDpを取得し、バージン材可塑化時間Tv,粉砕材可塑化時間Ts及び粉砕材混合材料可塑化時間Tmに基づいて、粉砕材混合材料Rmにおける粉砕材比率Pxを求めて出力処理するため、実際の成形品における、正確性及び有効性の高い粉砕材Rsの混合比率Pxを容易に得ることができる。これにより、例えば、粉砕材Rsが多過ぎて品質を保障できない虞れが生じる弊害,或いは粉砕材Rsが少過ぎて粉砕材Rsを十分に再利用できない不具合などを排除することができる。
【0066】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,材料,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0067】
例えば、可塑化条件設定機能部Fsにより、スクリュ3の回転数,スクリュ3に対する背圧,加熱筒6の設定温度,スクリュ3の可塑化終了位置Xe,の一又は二以上の設定項目を含ませる場合を示したが他の可塑化条件を含ませてもよい。また、粉砕材比率Pxに対して、上限値Pxu及び下限値Pxdの双方を設定した場合を示したが、上限値Pxuと下限値Pxdのいずれか一方のみを設定する場合を排除するものではなく、特に、上限値Pxuのみの設定であってもよい。さらに、上限値Pxuと下限値Pxdは、それぞれ複数段階で設定してもよい。例えば、上限値Pxuを、第一上限値(予備上限値)と第二上限値(本上限値)を設定するなどにより、予備アラームを発するなど、より細かい判定を行ってもよい。一方、バージン材可塑化時間Tvと粉砕材可塑化時間Tsをそれぞれ基本時間データDoとして登録する場合を示したが、粉砕材比率Pxを求める演算式として登録し、この演算式と実測時間データDpから粉砕材比率Pxを求めてもよい。また、成形機コントローラ2に備える良否判定処理機能部Fjは必須の構成要素ではなく必ずしも設けることを要しない。さらに、出力処理機能部Feに備えるアラーム表示は設けることが望ましいが、必ずしも必須の構成要素となるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、バージン材と粉砕材を所定の比率で混合した粉砕材混合材料を可塑化して射出成形を行う各種射出成形機における粉砕材混合材料の成形支援方法及び装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:成形支援装置,2:成形機コントローラ,2d:ディスプレイ,3:スクリュ,Rm:粉砕材混合材料,Rv:バージン材,Rs:粉砕材,Px:粉砕材比率,Fs:可塑化条件設定機能部,Fo:基本時間データ取得機能部,Fp:実測時間データ取得機能部,Fa:粉砕材比率演算機能部,Fe:出力処理機能部,Fj:良否判定処理機能部,Pxu:上限値,Pxd:下限値,Vmn:数値表示部,Vmg:グラフィック表示部,Vma:アラーム表示部