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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024384
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】浮体式基礎の施工方法および架台
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/52 20060101AFI20250213BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20250213BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20250213BHJP
【FI】
E02D27/52 Z
F03D13/25
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128451
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】外山 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】倉門 孝志
(72)【発明者】
【氏名】イム ソンギュ
【テーマコード(参考)】
2D046
3H178
【Fターム(参考)】
2D046DA61
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD61X
(57)【要約】
【課題】コンクリート製の浮体式基礎を効率的に製作できる、浮体式基礎の施工方法と、この浮体式基礎の施工方法に使用する架台を提案する。
【解決手段】架台4の上で分割体を製作する製作工程と、複数の分割体を並設するとともに複数の分割体に緊張材を挿通する配置工程と、緊張材を介して複数の分割体にプレストレスを導入して浮体式基礎を形成する緊張工程とを備える浮体式基礎の施工方法。架台4は、分割体が載置される製作板43と、製作板43を支持する架台主桁41と、架台主桁を支持する支持部材42と、分割体と製作板43との間に介設される縁切り材6とを備えている。縁切り材6は、分割体に水平力を作用させた際に架台4と分割体との間に発生する抵抗力を低減可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台の上で分割体を製作する製作工程と、
複数の前記分割体を並設するとともに複数の前記分割体に緊張材を挿通する配置工程と、
前記緊張材を介して複数の前記分割体にプレストレスを導入して浮体式基礎を形成する緊張工程と、を備える浮体式基礎の施工方法であって、
前記製作工程において、前記分割体に水平力を作用させた際に前記架台と前記分割体との間に発生する抵抗力を低減可能な縁切り材を前記架台と前記分割体との間に設けることを特徴とする浮体式基礎の施工方法。
【請求項2】
前記架台を台船上に固定する架台固定工程と、
前記台船を潜水させて、前記浮体式基礎を進水させる進水工程と、をさらに備えており、
前記架台には、開閉可能な複数の開口部が形成されており、
前記進水工程において、前記開口部を開口することを特徴とする、請求項1に記載の浮体式基礎の施工方法。
【請求項3】
前記架台固定工程では、前記台船に形成された固定装置により前記架台を前記台船に固定することを特徴とする、請求項2に記載の浮体式基礎の施工方法。
【請求項4】
複数の分割体を接続することにより形成される浮体式基礎を製作する際に前記分割体の製作および移動に使用する架台であって、
前記分割体が載置される製作板と、
前記製作板を支持する架台主桁と、
前記架台主桁を支持する支持部材と、
前記分割体と前記製作板との間に介設される縁切り材と、を備え、
前記縁切り材は、前記分割体に水平力を作用させた際に前記架台と前記分割体との間に発生する抵抗力を低減可能であることを特徴とする、架台。
【請求項5】
前記縁切り材は、上面に摩擦力低減加工が施された板材であることを特徴とする、請求項4に記載の架台。
【請求項6】
前記縁切り材は、複数の空洞を有した中空部材からなり、
前記縁切り材の下面には、前記空洞に通じる連通孔が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の架台。
【請求項7】
前記製作板に、前記製作板を上下に貫通する複数の開口が形成されていることを特徴とする、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式基礎の施工方法とこの浮体式基礎の施工方法に使用する架台に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出量削減を目的として、再生可能エネルギーの需要が高まっている。再生可能エネルギーには、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス等がある。風力発電施設は、風車による騒音や振動が生活環境に影響を及ぼす場合があり、居住空間等への影響を十分に考慮する必要があることから、居住区域から離れた山間部などに設置されることが多い。しかしながら、大型の風車を設置する用地を山間部に確保することは難しく、また、風力発電施設までの交通路の確保や、送電線等の設置等も困難であった。そのため、風力発電施設を海上(水上)に設置することが検討されている。
【0003】
水上に構造物を構築する場合において、基礎構造として浮体式基礎を採用する場合がある。浮体式基礎としては、セミサブマージブル型、スパー型、パージ型、TLP型等がある。このうち、セミサブマージブル型基礎(半潜水浮体式基礎)は、風車の支柱を支持するセンターカラムと、センターカラムの周囲に間隔をあけて配設された複数本のサイドカラムと、センターカラムとサイドカラムとを連結するアームとを備えてなり、波や風に対して優れた安定性能を有していることから、比較的実績が多い。
半潜水浮体式基礎は、鋼製部材を主体に構成されることが多い。一方、半潜水浮体式基礎をコンクリートにより構築すれば、コストダウンを図ることができる。
コンクリート製の半潜水浮体式基礎を製作する方法としては、ドックにて製作し、海上へ曳航して設置する方法が考えられる。大規模なコンクリート製の浮体式基礎を構築する場合には、複数のコンクリート製の分割体を製作して、これらの分割体を一体に連結するとともにプレストレスを付与して構築するのが望ましい。一方、ドックにおけるコンクリート製の浮体式基礎の施工方法は確立されておらず、ドックにおける効率的な浮体式基礎の施工方法が望まれている。
【0004】
ここで、特許文献1には、洋上風車のタワーを高さ方向に分割してできた複数のタワー部材を、地盤上に設置された台座を基礎として台座上に構築されたジャッキ付き架台にて組み立てる、タワー組立方法が提案されている。
また、特許文献2には、洋上風車のタワーを高さ方向に分割してできた複数のタワー部材を洋上で組み立てて据え付ける、洋上風車の据付方法が提案されている。この据付方法は、洋上風車の基礎となるケーソンを洋上風車の設置位置に設置するケーソン設置工程と、ケーソンにて複数のタワー部材を組み立てる組立工程と、最上段のタワー部材に取り付けられたナセルにブレードを取り付けるブレード取付工程とを有する。
特許文献1,2には、効率的なタワーの組立方法に関する記載はあるものの、ドックにおいてコンクリート製の浮体式基礎を効率的に製作する技術に関する記載は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-80852号公報
【特許文献2】特開2021-76043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コンクリート製の浮体式基礎を効率的に製作できる、浮体式基礎の施工方法と、この浮体式基礎の施工方法に使用する架台を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の浮体式基礎の施工方法は、架台の上で分割体を製作する製作工程と、複数の前記分割体を並設するとともに複数の前記分割体に緊張材を挿通する配置工程と、前記緊張材を介して複数の前記分割体にプレストレスを導入して浮体式基礎を形成する緊張工程とを備えている。前記製作工程では、前記架台と前記分割体との間に縁切り材を設ける。縁切り材は、前記分割体に水平力を作用させた際に前記架台と前記分割体との間に発生する抵抗力を低減可能である。
かかる浮体式基礎の施工方法によれば、プレストレスを導入する際に、分割体と架台との接触面において抵抗力が低減されるので、必要な緊張力を簡易に導入することができ、効率的に施工できる。
【0008】
前記架台を台船上に固定する架台固定工程と、前記台船を潜水させて前記浮体式基礎を進水させる進水工程とをさらに備えている場合には、前記架台に開閉可能な複数の開口部が形成されたものを使用し、前記進水工程において開口部を開口するのが望ましい。こうすることで、進水時に浮体式基礎に浮力を作用させて、当該浮力により架台と分離させることが可能となる。
なお、前記架台固定工程では、前記台船に形成された固定装置により前記架台を前記台船に固定するのが望ましい。このようにすれば、進水工程において、架台が台船とともに潜水して、簡易に架台と浮体式基礎とを分離できる。
【0009】
また、本発明の架台は、前記浮体式基礎の施工方法に使用するものであって、前記分割体が載置される製作板と、前記製作板を支持する架台主桁と、前記架台主桁を支持する支持部材と、前記分割体と前記製作板との間に介設される縁切り材とを備えている。前記縁切り材は、前記分割体に水平力を作用させた際に前記架台と前記分割体との間に発生する抵抗力を低減可能である。前記縁切り材は、上面に摩擦力低減加工が施された板材であってもよいし、垂直力に対して剛性を有し、かつ、水平力に対する抵抗力(剛性)が小さい材質のもの、せん断剛性が小さい材質のものであってもよい。
かかる架台によれば、プレストレスを導入して分割体同士を連結する際に、分割体と架台との接触面において抵抗力が作用することがなく、必要な緊張力を簡易に導入することができ、効率的に施工できる。
【0010】
前記縁切り材は、複数の空洞を有した中空部材からなるものであってもよい。この縁切り材を使用すれば、浮体式基礎の浸水時に、縁切り材の空洞の水を浸入させて、空洞を介して縁切り材に水の浮力が作用することで、縁切り材とともに浮体式基礎を架台から分離させることができる。
なお、前記製作板に、前記製作板を上下に貫通する複数の開口部が形成されていれば、浮体式基礎を架台とともにドックから進水させることで、水の浮力が開口部を介して縁切り材に作用して、縁切り材とともに浮体式基礎が架台から分離される。そのため、大掛かりな揚重機等を使用しなくても、簡易かつ効率的に、浮体式基礎を進水させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の浮体式基礎の施工方法およびこの浮体式基礎の施工方法に使用する架台によれば、ドックにおけるコンクリート製の浮体式基礎の効率的な製作を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の水上構造物を示す斜視図である。
図2】(a)は浮体式基礎の平面図、(b)は浮体式基礎の側面図である。
図3】浮体式基礎を製作するためのドックの概要を示す斜視図である。
図4】浮体式基礎の施工方法の手順を示すフローチャートである。
図5】架台を示す斜視図である。
図6】第一実施形態の架台を示す断面図である。
図7】補強支柱を示す図であって、(a)は立設時の正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は折り畳み時のA-A断面図である。
図8】支持部材の脚部を示す拡大正面図である。
図9】縁切り材を示す平面図である。
図10】搬送手段を示す斜視図である。
図11】架台同士の接合部を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)の一部を示す拡大図である。
図12】浮体式基礎にプレストレスを導入した様子を示す図であって、(a)は平面図、(b)は横断図である。
図13】固定装置を示す図であって、(a)は断面図、(b)は(a)の一部を示す拡大図である。
図14】第二実施形態の架台を示す断面図である。
図15】浮体式基礎にプレストレスを導入前後の様子を示す図であって、(a)はプレストレス導入前、(b)はプレストレス導入後である。
図16】補強支柱の他の形態を示す側面図である。
図17】補強柱のその他の形態を示す図であって、(a)は立設時の側面図、(b)は折り畳み時の側面図である。
図18】架台の他の形態を示す説明図であって、(a)は架台主桁の一部が補強された架台、(b)は上げ越しが施された架台主桁を有する架台である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、水上(海上)に係留される水上構造物1について説明する。図1に本実施形態の水上構造物1を示す。水上構造物1は、洋上風力発電施設であって、風車21と、風車21を支持する支柱22とを有する上部構造体2と、上部構造体2を支持する浮体式基礎3とを備えている。上部構造体2は、水上に係留された浮体式基礎(浮体)3を介して水面よりも高い位置に設けられている。風車21は、支柱22の上端部に回転可能に設けられている。支柱22は、浮体式基礎3上に立設されている。
図2に浮体式基礎3を示す。図2に示すように、本実施形態の浮体式基礎3は、風車21の支柱22を支持するセンターカラム31と、センターカラム31を中心に間隔をあけて配設された3本のサイドカラム32,32,32と、センターカラム31とサイドカラム32とを接続するビーム33,33,33とを備えている。センターカラム31、サイドカラム32およびビーム33は、複数の分割体30を連結することにより形成されている。
【0014】
センターカラム31は、図1に示すように、円柱状を呈していて、基礎3の中央に配設されている。
サイドカラム32は、円柱状を呈していて、センターカラム31の周囲に3本配設されている。隣り合うサイドカラム32同士の間隔は同一である。サイドカラム32は、ビーム33を介してセンターカラム31に連結されている。
ビーム33は、センターカラム31とサイドカラム32とを連結する。ビーム33の一端は、センターカラム31に連結されており、ビーム33の他端は、サイドカラム32に連結されている。本実施形態のビーム33は、角柱を横向きにした形状を呈している。
【0015】
浮体式基礎3(センターカラム31、サイドカラム32およびビーム33)は、図3に示すように、様々な態様で製作ヤードY1にて分割体として製作され、接続ヤードY2に各分割体が搬送されて接続されることにより、浮体式基礎3が製作される。図3はドックDを示す模式図である。ここで、製作対象の基礎浮体式基礎3は、3基のサイドカラム32を備えている形態であるが、センターカラム31を中心に4つのビーム33が平面視で90度間隔に配設され、各ビーム33にサイドカラム32が接続される形態であってもよい。
【0016】
浮体式基礎3は、ドックDを有する工場において製作する。図3に示すように、ドックDの周囲には、浮体式基礎3を構成する複数種の分割体30を製作するための複数の製作ヤードY1と、各製作ヤードY1から搬送された分割体30同士を接続して浮体式基礎3を製作する、接続ヤードY2とを有する。なお、製作ヤードY1と接続ヤードY2は厳格に区別されている必要はなく、一部重複していても差し支えない。
【0017】
接続ヤードY2の側方の岸壁Pは、製作された浮体式基礎3が曳航されて設置される海上Sに臨んでおり、ドックDには、製作された浮体式基礎3を積載して、所定の設置位置まで曳航して設置するための台船Bが係留されている。
ここで、本実施形態では、海上(洋上)の所定の位置まで曳航して設置された浮体式基礎3に対して、揚重機を備えた台船を利用して海洋にて上部構造体2(支柱22)を接続する。なお、浮体式基礎3に対する上部構造体2の接続方法は限定されるものではなく、例えば、接続ヤードY2において、重機55にて各部材(風車21、支柱22等)を揚重しながら上部構造体2を接続する方法や、ドックDに係留している水上または台船上の浮体式基礎3に対して岸壁Pから重機を用いて上部構造体2を接続する方法がある。
【0018】
<第一実施形態>
第一実施形態の浮体式基礎の施工方法について説明する。図4に浮体式基礎の施工方法の手順を示す。図4に示すように、浮体式基礎の施工方法は、製作工程S1と、移動工程S2と、配置工程S3と、接続工程(緊張工程)S4と、架台固定工程S5と、進水工程S6とを備えている。
製作工程S1では、製作ヤードに設けられた架台4の上で分割体を製作する。図5に架台4を示す。図5に示すように、架台4は、分割体が載置される製作板43と、製作板を支持する架台主桁41と、架台主桁41を支持する支持部材42とを備えている。
【0019】
製作板43は、上面において分割体を製作可能な部材である。図6に架台4の断面図を示す。図6に示すように、製作板43には、製作板43を上下に貫通する複数の開口部43a,43a,…が形成されている。開口部43aには、蓋材44が設けられている。蓋材44は、開口部43aの下側から挿入されることで開口部43aを遮蔽、開口部43aから抜き出すことで、開口部43aを開口する。蓋材44は、開口部43aに挿入した状態で、上面が製作板43の上面と一致する(面一となる)。すなわち、製作板43は、開口部43aに蓋材44を設置した状態で、平面を形成する。蓋材44は、ボルト44aを介して架台主桁41のフランジに固定される。なお、蓋材44の構成は限定されるものではなく、例えば、ヒンジ等を介して架台主桁41に回動可能に取り付けられていてもよい。
【0020】
架台主桁41は、鋼材(本実施形態ではH形鋼)からなり、製作板43を支持している。架台主桁41は、分割体の重量により製作板43がたわむことを抑制する。本実施形態では、架台主桁41を格子状に組み合わせるが、架台主桁41の配置は限定されるものではない。
格子状に組み合わされた架台主桁41の下面には、補強支柱45が設けられている。図7に補強支柱45を示す。なお、図7では、製作板43および縁切り材6を省略している。図7(a)および(b)に示すように、補強支柱45は、架台主桁41と地表面との間に介設される。本実施形態では、左右の支持部材42,42同士の中間付近に補強支柱45が配置されている。複数の補強支柱45は、一列に配置されている。図7(b)および(c)に示すように、補強支柱45は、架台主桁41の下面に回動可能に取り付けられている。すなわち、補強支柱45は、架台主桁41側に折り畳み可能である。補強支柱45を立設すると、架台主桁41の支柱として機能し、補強支柱45を折り畳むと、架台主桁41の下方に搬送手段7が進入可能な進入空間47が形成される。本実施形態の補強支柱45の下端には、分割体製作時の荷重により地盤沈下が生じた場合に備えて、ジャッキが設けられている。すなわち、地盤沈下が生じた場合があっても、ジャッキを伸長させることにより、架台主桁41にたわみが生じることを抑制できる。
【0021】
支持部材42は、架台主桁41を支持する部材である。図5に示すように、本実施形態の支持部材42は、架台主桁41の左右の縁部に沿って配設されている。本実施形態では、複数の支持部材42を積層することにより、架台主桁41を所定の高さに配置している。図8に支持部材42の下部を示す。図8に示すように、支持部材42の下部には、地表面に当接する荷重分散部材5が固定されている。荷重分散部材5は、支持部材42の下端の地盤との当接面を拡幅することで、地盤に作用する荷重を分散させる。本実施形態の荷重分散部材5は、複数のH形鋼を並設することにより形成されている。
【0022】
図5に示すように、製作板43の上面には、縁切り材6が設けられている。縁切り材6は、分割体と製作板43との間に介設されて、分割体に水平力を作用させた際に製作板43と分割体との間に発生する抵抗力を低減可能である。本実施形態の縁切り材6は、上面に摩擦力低減加工が施された板材からなる。縁切り材6は、分割体製作時の上載荷重(垂直力)に対して十分な耐力(剛性)を有している。図9に縁切り材6を示す。また、図9に示すように、縁切り材6の上面には、分割体の形状に応じたマーキングM若しくはガイドが設けられている。
【0023】
製作工程S1では、図7(a)および(b)に示すように、架台主桁41の下面において補強支柱45を立設させて、架台主桁41の下面と地表面との間に補強支柱45を介設することで架台主桁41を補強する。こうすることで、架台主桁41が分割体の重量によってたわむことが防止される。分割体は、縁切り材6の上面に設けられたマーキングMもしくはガイドに沿って形成する。このとき、製作板43の開口部43aは蓋材44により遮蔽する。
【0024】
移動工程S2では、分割体が載置された架台4を製作ヤードから接続ヤードに移動させる(図3参照)。架台4の移動は、搬送手段7により行う。搬送手段7は、図7(c)に示すように、補強支柱45を折り畳むことで架台主桁41の下方に形成された進入空間47に進入させる。図10に搬送手段7を示す。搬送手段7は、架台4を持ち上げて地切りする揚重機構を備えた自走式台車である。搬送手段7は、車体軸方向(L方向)に長尺の車体71に対して複数の車軸73が設けられ、各車軸73には左右一対の車輪75が車体軸直交方向に間隔を置いて複数対設けられており、全ての車輪75が対応する車軸73に対して回動自在に装着され、車体71の上にある荷台72が不図示の揚重機構により昇降自在に装着されることにより、全体が構成されている。搬送手段7は、荷台72を下げた姿勢で、架台4の進入空間47に進入し、分割体とともに架台4を搬送する際は、揚重機構によって荷台72を上昇させることにより、架台4の地切りを行うことができる。
【0025】
接続ヤード20では、センターカラム31および3基のサイドカラム32を、それぞれを載置する架台4とともに位置決めする。このとき、センターカラム31と各サイドカラム32との間にビーム33が挿入されるための隙間を設ける。隙間には、ビーム33を構成する分割体を架台4とともに配置する。図11に並設された架台4,4を示す。図11では縁切り材6の表示を省略している。
ここで、製作板43(架台4)の縁部には、図11(a)および(b)に示すように、隣接する他の製作板43(架台4)との隙間を閉塞する補助板材46が回動可能に取り付けられている。架台4を所定の位置に配置したら、補助板材46を持ち上げて、隣り合う製作板43同士の隙間に補助板材46を配設する。こうすることで、製作板43同士が連結されて連続した平面が形成される。
【0026】
配置工程S3では、複数の分割体を並設するとともに複数の分割体に緊張材を挿通する。このとき、分割体は、架台4に上載されたまま所定の位置に配置する。分割体を所定の位置に配置したら、複数の分割体に対して、同一の緊張材を挿通する。
【0027】
接続工程S4では、接続ヤードにおいて複数の分割体を連結して浮体式基礎3を形成する。図12に接続工程S4を示す。図12(a)に示すように、接続工程S4では、複数の分割体に挿通された緊張材を介してプレストレスを導入する(緊張力を付与する)。このとき、図12(b)に示すように、分割体が縁切り材6の上面を摺動することで、分割体が緊張力に抵抗することなく移動する。
【0028】
架台固定工程S5では、架台4を台船B上に固定する。図13に架台4の固定状況を示す。なお、図13では、製作板43おより縁切り材6を省略している。複数の架台4は、浮体式基礎3を上載した状態で、それぞれの進入空間に進入させた搬送手段7により台船Bまで搬送する。複数の搬送手段7は、動作を同期させ、同時に移動させる。各架台4は、図13(a)および(b)に示すように、台船Bに形成された固定装置8により台船Bに固定する。
【0029】
進水工程S6では、台船Bを潜水させて、浮体式基礎3を進水させる。浮体式基礎3を台船Bに固定したら、台船Bを所定の位置まで曳航する。次に、台船Bを潜水させる。台船Bを潜水させる際には、製作板43の開口部43aを開口することで、水の浮力を浮体式基礎3に作用させる。開口部43aを開口させた状態で台船Bを潜水させると、開口部43aに進入した水による浮力が縁切り材6に作用する。そのため、縁切り材6とともに浮体式基礎3が架台4から分離される。
進水させた浮体式基礎3は、所定の位置に係留する。
【0030】
本実施形態の浮体式基礎の製作方法によれば、浮体式基礎3を形成する複数のコンクリート製の分割体を、個別の製作ヤードY1にある架台4の上で製作した後、複数の分割体を架台4とともに搬送手段7にて接続ヤードY2に搬送し、接続ヤードY2にて各分割体を架台4の上で接続して浮体式基礎3を製作することにより、コンクリート製の浮体式基礎3の効率的な製作を実現できる。
また、架台4の架台主桁41は、たわみ量が大きくなることが予想される部分において補強支柱45により補強されているため、架台主桁41の変形(たわみ)が分割体の寸法精度や分割体同士の位置合わせに影響し難くなり、効率的に施工できる。
【0031】
また、製作板43の縁部に隣接する他の架台41との隙間を閉塞する補助板材46が回動可能に取り付けられているため、補助板材46が接続工程において分割体同士を接続する際の底型枠として機能し、別途型枠を設ける手間を省略できる。
製作板43に、製作板43を上下に貫通する複数の開口部43aが形成されているため、浮体式基礎3を架台4とともにドックDから進水させた際に、水の浮力が開口部43aを介して浮体式基礎3に作用して、浮体式基礎3と架台4とを分離できる。そのため、大掛かりな揚重機等を使用しなくても、簡易かつ効率的に、浮体式基礎3を進水させることが可能となる。
【0032】
プレストレスを導入する際に、分割体と架台4(縁切り材6)との接地面において抵抗力が低減されるので、必要な緊張力を簡易に導入することができ、効率的に施工できる。
さらに、縁切り材6の上面に分割体の形状に応じたマーキング若しくはガイドが設けられているため、分割体製作時の位置決めが容易である。
【0033】
支持部材42の下部に地表面に載置された荷重分散部材5が固定されているため、地盤に載置した荷重分散部材5を介して、支持部材42に作用する荷重を分散することが可能となり、ひいては、支持部材42の支持力を増強することができる。
補強支柱45は、架台主桁41の下面に回動可能に取り付けられているため、補強支柱45を回動させることで、架台主桁41の下側に搬送手段7を進入するスペースを確保できる。
【0034】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態の浮体式基礎の施工方法について説明する。第二実施形態では、複数の空洞を有した中空部材を縁切り材に使用する点で、板材からなる縁切り材を使用する第一実施形態と異なっている。浮体式基礎の施工方法は、製作工程S1と、移動工程S2と、配置工程S3と、接続工程(緊張工程)S4と、架台固定工程S5と、進水工程S6とを備えている(図4参照)。
製作工程S1では、製作ヤードに設けられた架台4の上で分割体を製作する。図14に第二実施形態の架台4を示す。図14に示すように、分割体が載置される製作板48と、製作板を支持する架台主桁41と、架台主桁41を支持する支持部材42とを備えている。
【0035】
製作板43は、上面において分割体を製作可能な部材である。製作板48は、鉄板からなり、分割体を製作および載置するための平面を形成している。
製作板43の上面には、縁切り材60が設けられている。縁切り材60は、分割体と製作板43との間に介設されて、分割体製作時の上載荷重(垂直力)に対して十分な耐力(剛性)を有しているとともに、分割体に水平力を作用させた際に製作板43と分割体との間に発生する抵抗力を低減可能である。本実施形態の縁切り材60は、水平力に対する抵抗力(剛性)が小さい材質(例えばポリプロピレン製)であり、複数の空洞61を有した中空部材からなる。縁切り材60の上面には、分割体の形状に応じたマーキングM若しくはガイドが設けられている(図9参照)。
【0036】
この他の架台4の詳細(架台主桁41、支持部材42、補強支柱45等)は、第一実施形態で示した架台4と同様なため、詳細な説明は省略する。
また、製作工程S1、移動工程S2、配置工程S3、架台固定工程S5の詳細も、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0037】
接続工程S4では、接続ヤードにおいて複数の分割体を連結して浮体式基礎3を形成する。図15に接続工程S4を示す。接続工程S4では、複数の分割体に挿通された緊張材を介してプレストレスを導入する(図12参照)。緊張材にプレストレスを導入すると、図15(a)および(b)に示すように、縁切り材が変形することで、分割体30が緊張力に抵抗することなく移動する。
【0038】
進水工程S6では、台船Bを潜水させて、浮体式基礎3を進水させる。浮体式基礎3を台船Bに固定したら、台船Bを所定の位置まで曳航する。次に、台船Bを潜水させる。台船Bを潜水させると、浮体式基礎3に浮力が作用し、浮体式基礎3が水に浮かぶとともに、架台4は台船とともに潜水する。このとき、縁切り材60の空洞61に水が入り込むことで、縁切り材60に浮力が作用する。そのため、縁切り材60とともに浮体式基礎3が架台4から分離されて、水に浮いた状態となる。
進水させた浮体式基礎3は、所定の位置に係留する。
【0039】
第二実施形態の浮体式基礎の製作方法によれば、プレストレスを導入する際に、縁切り材6が変形することで、分割体と架台4(縁切り材6)との接地面において抵抗力が低減されるので、必要な緊張力を簡易に導入することができ、効率的に施工できる。
この他の第二実施形態の浮体式基礎の製作方法の作用効果は、第一実施形態と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記各実施形態では、水上構造物1が洋上風力発電施設の場合について説明したが、水上構造物1は洋上風力発電施設に限定されるものではない。
また、前記各実施形態では、浮体式基礎3がセミサブマージブル型の場合について説明したが、浮体式基礎3の構造は限定されるものではなく、例えばバージ型であってもよい。
また、浮体式基礎3を構成するサイドカラム32の数は限定されるものではなく、例えば4つ以上であってもよい。また、風車21の支柱22は、サイドカラム32に立設されていてもよい。
【0041】
前記実施形態では、補強支柱45が架台主桁41の下面に回動可能に設けられている場合について説明したが、補強支柱45は、架台主桁41に対して着脱可能であってもよい。このとき、補強支柱45は、図16に示すように、複数の補強支柱45を組み合わせることにより架台主桁41の下方の進入空間に進入可能に形成されたユニット体であってもよい。また、補強支柱45は、図17(a)および(b)に示すように、架台主桁41の直下の地盤に回動可能に設けられていて、立設させることで架台主桁41を補強するようにしてもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、補強支柱45を設けることにより架台主桁41を補強する場合について説明したが、図18(a)に示すように、分割体の重量により架台主桁41のたわみ量が大きくなる部分において、架台主桁41に補強部41aを設けてもよいし、図18(b)に示すように、分割体の重量に応じて 架台主桁41に上げ越しが施されていいてもよい。なお、図16~18では、製作板43および縁切り材6,60を省略している。
【0043】
前記実施形態では、縁切り材6,60が架台4の上面に敷設されている場合について説明したが、縁切り材6,60は必要に応じて使用すればよい。
前記実施形態では、縁切り材6として、分割体に水平力を作用させた際に架台主桁41と分割体との間に発生する抵抗力を低減可能な部材を使用する場合について説明したが、縁切り材の構成は前記実施形態で示したものに限定されるものではない。例えば、縁切り材6は、せん断剛性が小さい材質(例えば、ポリプロピレン)ものであってもよい。さらに、縁切り材6は、上下一対の板材(例えば鋼板)の間に多数の球体(例えば鋼球)や円柱状ローラを介在させた構造としてもよい。
前記実施形態では、縁切り材6の上面にマーキング若しくはガイドが設けられているものとしたが、縁切り材6を使用しない場合には、製作板43にマーキング若しくはガイドが設けてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 水上構造物
2 上部構造体
21 風車
22 支柱
3 基礎
31 センターカラム
32 サイドカラム
33 ビーム
4 架台
41 架台主桁
42 支持部材
43 製作板
43a 開口部
44 蓋材
45 補強支柱
46 補助板材
47 進入空間
48 製作板
5 荷重分散部材
6,60 縁切り材
7 搬送手段
8 固定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18