IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日新イオン機器株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-気化器、イオン源 図1
  • 特開-気化器、イオン源 図2
  • 特開-気化器、イオン源 図3
  • 特開-気化器、イオン源 図4
  • 特開-気化器、イオン源 図5
  • 特開-気化器、イオン源 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024386
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】気化器、イオン源
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20250213BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128453
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩波 悠太
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】趙 維江
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101BB01
5C101BB04
5C101CC17
5C101DD03
5C101DD14
5C101DD16
5C101DD18
5C101DD20
5C101DD33
5C101GG22
(57)【要約】
【課題】坩堝内にハロゲン含有ガスを供給する気化器において、蒸気の安定供給を実現する。
【解決手段】気化器V1-V5は、対向する端部に開孔を有する坩堝3と、坩堝3の一端で、開孔に取り付けられて、坩堝3で生成された蒸気を坩堝3の外部に放出する蒸気放出口Hを有するノズル1と、坩堝3の他端で、開孔に取り付けられて、坩堝3へハロゲン含有ガスを供給するガス管Yと、坩堝3の他端側で、坩堝3をフランジ12上に支持する支持部材Zと、坩堝3と支持部材Zとに物理的に接触し、坩堝3と支持部材Zとの間に配置される熱絶縁部材4とを有し、気化器V1-V5の運転時において、支持部材Zより熱伝導率が小さい材料で構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する端部に開孔を有する坩堝と、
前記坩堝の一端で、前記開孔に取り付けられて、前記坩堝で生成された蒸気を前記坩堝の外部に放出する蒸気放出口を有するノズルと、
前記坩堝の他端で、前記開孔に取り付けられて、前記坩堝へハロゲン含有ガスを供給するガス管と、
前記坩堝の他端側で、前記坩堝をフランジ上に支持する支持部材と、
前記坩堝と前記支持部材とに物理的に接触し、前記坩堝と前記支持部材との間に配置される熱絶縁部材とを有し、
気化器の運転時において、前記熱絶縁部材は、前記支持部材より熱伝導率が小さい材料で構成されている気化器。
【請求項2】
前記坩堝の一端で、前記ノズルは前記坩堝の開孔に内嵌めされていて、
前記蒸気放出口の径は、蒸気放出方向に沿って変化し、前記坩堝の他端側が最も大きい、請求項1記載の気化器。
【請求項3】
前記ガス管は、径が異なる複数本の管からなり、
前記坩堝に隣接する前記管の径が最も大きい、請求項1記載の気化器。
【請求項4】
気化器の運転時において、前記開孔が形成される前記坩堝の端部は、固体材料が配置される前記坩堝の中央部に比べて、温度が高い、請求項1記載の気化器。
【請求項5】
前記ノズルと前記坩堝と前記ガス管が、同一材料で構成されている、請求項1記載の気化器
【請求項6】
前記ガス管の外側には、前記ガス管の周囲を覆う外筒が設けられている、請求項1記載の気化器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の気化器を有するイオン源で、
前記気化器から供給された蒸気からプラズマを生成し、前記プラズマからイオンビームの引き出しを行う、イオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蒸気を供給する気化器とこれを備えたイオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
気化器を備えたイオン源では、気化器からの蒸気をもとにプラズマの生成を行い、生成されたプラズマからイオンビームが引き出される。
【0003】
例えば、特許文献1のイオン源では、プラズマ生成容器の壁面に設けられた蒸気導入口を通して、プラズマ生成容器内へ蒸気が供給されている。この蒸気は、フッ化アルミニウムや純アルミニウムといった固体材料を加熱することにより生成される。
【0004】
昨今、特許文献1とは別方式の気化器として、坩堝内にハロゲン含有ガスを供給する新しい種類の気化器が開発されている。この気化器は、ハロゲン含有ガスと固体材料との反応により生成された反応生成物を加熱することで、反応生成物の蒸気をプラズマ容器に供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-359985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気化器では、蒸気の安定供給が重視されている。蒸気の安定供給を妨げる主たる要因は、坩堝低温部に生じる堆積物により蒸気やガスの供給が阻害されることにある。
坩堝内で蒸発した蒸気が坩堝内の低温部位に触れることで、当該部位に固着し、堆積する。時間の経過に伴い、堆積物の量が増加すると、増加した堆積物が蒸気供給路やガス供給路を塞ぎ、蒸気の安定供給を妨げる。
【0007】
本発明では、坩堝にハロゲン含有ガスを供給する気化器において、蒸気の安定供給を実現することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
気化器は、
対向する端部に開孔を有する坩堝と、
前記坩堝の一端で、前記開孔に取り付けられて、前記坩堝で生成された蒸気を前記坩堝の外部に放出する蒸気放出口を有するノズルと、
前記坩堝の他端で、前記開孔に取り付けられて、前記坩堝へハロゲン含有ガスを供給するガス管と、
前記坩堝の他端側で、前記坩堝をフランジ上に支持する支持部材と、
前記坩堝と前記支持部材とに物理的に接触し、前記坩堝と前記支持部材との間に配置される熱絶縁部材とを有し、
気化器の運転時において、前記熱絶縁部材は、前記支持部材より熱伝導率が小さい材料で構成されている。
【0009】
上記構成の気化器であれば、ガス管近傍での坩堝の低温化を防ぐことができる。これにより、ガス管近傍での蒸気の固着、固着物の堆積が軽減されるので、坩堝へのガス供給を継続することができ、ひいては、蒸気の安定供給が実現できる。
【0010】
前記坩堝の一端で、前記ノズルは前記坩堝の開孔に内嵌めされていて、
前記蒸気放出口の径は、蒸気放出方向に沿って変化し、前記坩堝の他端側が最も大きいことが望ましい。
【0011】
ノズルに蒸気が固着し、これが堆積しても、坩堝の他端側で蒸気放出口の径を最大にしているため、蒸気供給が直ちに不可にはならず、長期間にわたって蒸気供給路を確保することができる。
【0012】
前記ガス管は、径が異なる複数本の管からなり、
前記坩堝に隣接する前記管の径が最も大きいことが望ましい。
【0013】
坩堝近傍のガス管には、蒸気が固着し、固着物が堆積することが懸念される。しかしながら、坩堝に隣接する管の径を最大にしておくことで、ここに堆積物が堆積しても、ガス供給路を確保することができる。
【0014】
気化器の運転時において、前記開孔が形成される前記坩堝の端部は、固体材料が配置される前記坩堝の中央部に比べて、温度が高いことが望ましい。
【0015】
蒸気が固着しやすい場所での坩堝温度を高温化することで、蒸気の固着、堆積が軽減できる。
【0016】
前記ノズルと前記坩堝と前記ガス管が、同一材料で構成されていることが望ましい。
【0017】
熱膨張による部材間での歪が軽減されるため、気化器の長期安定稼働が可能となる。
【0018】
前記ガス管の外側には、前記ガス管の周囲を覆う外筒が設けられていることが望ましい。
【0019】
ハロゲン含有ガスによる支持部材の腐食が防止できるので、坩堝の長期安定支持が可能となる。
【0020】
イオン源は、
上記いずれかの気化器を有し、
前記気化器から供給された蒸気からプラズマを生成し、イオンビームとして引き出す。
【発明の効果】
【0021】
坩堝と支持部材とに物理的に接触し、坩堝と支持部材との間に配置される熱絶縁部材を備えることで、ガス管近傍の坩堝が低温化するのを防ぐことができる。これにより、ガス管近傍での蒸気の固着、固着物の堆積が軽減されるので、坩堝へのガス供給を継続することができ、ひいては、蒸気の安定供給が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】気化器の構成例を示す模式的断面図
図2】気化器の別の構成例を示す模式的断面図
図3】気化器の他の構成例を示す模式的断面図
図4】気化器の他の構成例を示す模式的断面図
図5】気化器の他の構成例を示す模式的断面図
図6】イオン源の構成例を示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、気化器V1の模式的断面図である。気化器V1は、不図示のプラズマ生成容器へ蒸気を供給するノズル1とノズル1が一端に取り付けられる坩堝3とを有している。ノズル1には、蒸気放出方向Aへ蒸気を供給するための蒸気放出口Hが形成されている。
坩堝3の内部には、固体材料Sを配置する空間が形成されている。坩堝3の外周には坩堝3を加熱するためのヒーター2が巻かれている。ノズル1が取り付けられている坩堝3の端部と対向する坩堝3の他端部には、ハロゲン含有ガスを供給するガス管Yが接続されている。
【0024】
ガス管Yは、大径の第1ガス配管11と小径の第2ガス配管10で構成されている。ガス管Yは、気化器V1の支持土台をなすフランジ12の外側で、ハロゲン含有ガスの供給源13に接続されている。ハロゲン含有ガスの供給源13は、低圧あるいは高圧のガスボトルである。
【0025】
ガス管Yからハロゲン含有ガスが坩堝3に供給されると、ハロゲン含有ガスが固体材料Sと反応して、固体材料Sの表面に反応生成物が生成される。例えば、固体材料Sは、純アルミニウムや窒化アルミニウムである。図示される固体材料Sは、坩堝3の左側に偏在しているが、坩堝3の内部に均等配置されていてもいい。
また、固体材料Sの形状は、ブロック状、ペレット状、粉末状といった種々の形状のものが使用される。固体材料Sについては、後述する他の気化器においても同様である。
【0026】
ハロゲン含有ガスは、例えば、塩素ガスや塩酸ガス、あるいはフッ素ガスである。これらのハロゲン含有ガスと固体材料Sとの反応により、固体材料Sの表面には、塩化アルミニウムやフッ化アルミニウム等の反応生成物が生成される。生成された反応生成物は、坩堝3を加熱することで蒸気化されて、ノズル1を通して不図示のプラズマ生成容器へ供給される。
【0027】
ノズル1と坩堝3とガス管Yは、例えば、等方性黒鉛といった耐熱性が高く、熱伝導率が高い同じ材料で構成されている。同一部材とすることで、高温下での熱膨張による部材間での位置ずれが軽減できる。これにより、気化器V1の長期安定稼働が可能となる。
【0028】
一方、こうした材料は高額であることから、坩堝3をフランジ12に支持する支持部材である支持筒6及び支持台5には、ステンレス鋼が使用されている。
【0029】
ステンレス鋼の熱伝導率は、温度により変化し、高温になるほど熱伝導率は高くなる。気化器V1の運転中、坩堝3を直接支持する支持台5は高温となり、坩堝3から支持台5への熱伝達が促進される。これにより、坩堝3の温度が局所的に低温化して、低温化した部位に蒸気が固着し、これが堆積して、ガス管Yからのガス供給の妨げとなることが懸念される。
【0030】
気化器V1の運転時、反応生成物を蒸気化するための温度に、坩堝3が加熱される。その温度は、反応生成物の種類によるが、約180℃乃至約1000℃である。
ステンレス鋼は、種類によっては、400℃乃至500℃で脆化現象が発生する。坩堝3からの熱伝達により、ステンレス鋼が脆くなることで、坩堝3の支持に支障を来すことが懸念される。
【0031】
こうした懸念事項を解消するため、気化器V1では、坩堝3と支持台5との間に、熱絶縁部材4を配置している。この熱絶縁部材4は、耐熱部材であり、かつ、気化器V1の運転時において、支持台5の材料に比べて熱伝導率の低い材料である。具体的に挙げれば、酸化アルミニウムやジルコニア、コージェライトといったセラミックス材料である。
【0032】
この熱絶縁部材4を設けることで、坩堝3のガス供給部位での低温化が防止できることから、坩堝3へのガス供給を継続することができ、ひいては、蒸気の安定供給が実現できる。
【0033】
ガス管Yを構成する第1ガス配管11の先端はテーパー形状に形成されている。このテーパー部位を坩堝3の底部に当接することで、第1ガス配管11が坩堝3に固定されている。ガス管Yと坩堝3との間から塩素やフッ素を含むハロゲン含有ガスが流出すると、支持台5に比べて厚みの薄い支持筒6を浸食し、坩堝3の支持に支障を来す恐れがある。
【0034】
この対策として、ガス管Yの外側にガス漏れ防止用の外筒Xを設けている。この外筒Xは、ガス管Yと同様に、大径の第1外筒7と小径の第2外筒8、両筒の連結部材9から構成されている。各外筒は、連結部材9に対して溶接、篏合等の手法により固定されている。連結部材9は、熱抵抗の大きい材料であり、例えば、外筒Xを構成する材料に比べて熱伝達が小さい、酸化アルミニウムやジルコニア等の材料から構成されている。
【0035】
外筒Xを設けることで、ガス漏れにより外筒Xが腐食されたとしても、支持筒6は腐食されずにすむので、坩堝3の長期安定支持が可能となる。
なお、外筒Xは、ガス管Yの全長にわたって設けられる必要はなく、支持筒6が保護できる程度に、ガス管Yの周囲に設けられていればよい。
【0036】
ノズル1の蒸気放出口Hに、蒸気が固着し、これが堆積すると、ノズル1の蒸気放出口Hが詰まり、安定した蒸気供給に支障を来すことが懸念される。
この対策として、図2に示す気化器V2では、ノズル1の先端から坩堝3側へ向かうにつれて、孔径はD1、D2、D3と段階的に拡げている。蒸気放出口Hの径は、蒸気放出方向Aに沿って変化し、坩堝3にガス管Yが取り付けられる側の径が最大となる。
【0037】
ノズル1の先端は、不図示のプラズマ生成容器の壁面に取り付けられるため、この部分は比較的高温になる。ノズル1の坩堝3側の端部は、ノズル1全体で見たときに、比較的低温となるため、この部分の孔径を大きくすることで、蒸気放出口Hに堆積物が付着しても、蒸気の安定供給が途絶えるまでの時間を引き延ばすことができる。
図2に示す気化器V2では、ノズル1の孔径が段階的に変化する構成であったが、線形的あるいは曲線的に変化するものであってもよい。
【0038】
図1、2に示す気化器V1、V2では、坩堝3の長さ方向(図の上下方向)におけるヒーター2の温度分布は均一であったが、温度分布を不均一にしてもよい。
図3では、坩堝3の各端部に対応する領域R1と領域R3では、固体材料Sが配置される坩堝3の領域R2に比べて、ヒーター2をなすコイルの巻き数を増やしている。
【0039】
これにより、坩堝3の端部を高温化し、蒸気の固着による堆積を軽減することができる。なお、図3の構成に代えて、別の構成を用いて坩堝3の温度を不均一にしてもよい。例えば、坩堝3の各端部に対応するヒーターと、中央部に対応するヒーターとを個別に設けておき、各部位でのヒーター出力を調整することで、坩堝3の温度分布を不均一にする。
【0040】
ヒーター2による坩堝3の加熱効率を向上するために、図4に示す気化器V4のように、ヒーター2の周りに熱遮蔽板を配置してもよい。具体的には、気化器V4において、熱遮蔽板は、ヒーター2を坩堝3側に押し付ける第1熱遮蔽板21と第1熱遮蔽板21の外側に配置される第2熱遮蔽板22から構成されている。
【0041】
このような熱遮蔽板を配置することで、坩堝3から外側へ逃げる熱を抑制し、坩堝3の温度を高温に保つことができる。また、第1熱遮蔽板21が、ヒーター2を坩堝3側に押し付けることで、ヒーター2の位置固定を可能にしている。
なお、ヒーター2の位置固定は、坩堝3の外周に位置固定用の溝を形成し、ここにヒーター2を嵌め込むことで実施されてもよい。
【0042】
不図示のプラズマ生成容器側からの熱を遮蔽し、坩堝3の過度な加熱を避けるために、第3熱遮蔽板23と第4熱遮蔽版24を配置してもよい。これらの熱遮蔽板を配置することで、坩堝3の長さ方向における温度調整が容易になる。
【0043】
熱遮蔽板の枚数については、図4に示す構成に限られるものではない。例えば、第1熱遮蔽板21と第2熱遮蔽板22については、いずれか一方のみを備えていればいい。一方で、第2熱遮蔽板22の外側に更なる熱遮蔽板を備える構成であってもよい。
第3熱遮蔽板23と第4熱遮蔽版24についても、同様に、枚数についての制限はない。
また、第1熱遮蔽板21の主目的がヒーター2の位置固定であれば、第1熱遮蔽板21の厚みは、第2熱遮蔽板22の厚みより薄くしてもよい。
【0044】
図4の気化器V4は、温度計測用の熱電対14を備えている。熱電対14での計測結果をもとに、ヒーター2の出力調整を実施してもよい。また、気化器V4の運転を継続するか否かのインターロック値として、熱電対14の計測結果を使用してもよい。
【0045】
上記実施形態において、気化器V1乃至気化器V4では、フランジ12側への熱の流入を抑制するために、第1外筒7と第2外筒8を熱抵抗の大きい連結部材9に取り付ける構成が採用されていた。しかしながら、外筒Xからフランジ12への熱の流入を考慮する必要がなければ、図5に示すように、第1外筒7のみで外筒Xを構成してもよい。
また、ガス管Yについても同様に、フランジ12への熱の流入を考慮する必要がなければ、図5に示すように、大径の第1ガス配管11のみでガス管Yを構成してもよい。
【0046】
図6には、上記実施形態で説明した気化器V1乃至V5が搭載されるイオン源ISの構成例が描かれている。気化器V1乃至V5のいずれかの気化器から供給された蒸気がプラズマ生成容器31に導入されて、プラズマ生成容器31内でプラズマが生成される。
プラズマの生成にあたっては、アーク放電やマイクロ波放電等の周知技術が使用される。
【0047】
プラズマ生成容器31の一面には、イオン引出し口34が形成されている。プラズマ生成容器31で生成されたプラズマPは、イオン引出し口34を通して、引出電極EによってイオンビームIBとしてプラズマ生成容器31の外部に引き出される。
【0048】
引出電極Eは、例えば、プラズマ生成容器31への電子の流入を抑制するための抑制電極32と接地電位に固定された接地電極33で構成されている。プラズマ生成容器31と抑制電極32には、不図示の電源により、所定の電圧が印加されている。
【0049】
プラズマ生成容器31は、気化器V1-V5からの蒸気供給の他に、ガスが供給されるガス供給口35を備えていてもよい。ガス供給口35を有することで、イオン源ISの汎用性は向上する。
【0050】
上記実施形態において、ヒーター2は、ワイヤー状のコイルヒーターとしていたが、ワイヤー状に代えてシート状のコイルヒーターを使用してもよい。また、フレキシブな加熱面を備えたパネルヒーターを使用してもよい。さらに、熱電対付きのヒーターを使用してもよい。
【0051】
ノズル1と坩堝3、熱絶縁部材4と坩堝3、熱絶縁部材4と支持台5といった各部の取り付けについては、篏合、螺合、溶接などの種々の手法が使用される。
【0052】
上記実施形態では、支持部材Zとして、支持台5と支持筒6を使用していたが、いずれか一方の部材のみを使用して、フランジ12からの坩堝3の支持を実施してもよい。また、支持筒6は、筒状の部材に限らない。複数本の棒または板を用いて、坩堝3を支持する部材であってもよい。
【0053】
上記実施形態では、ノズル1が坩堝3に内嵌されている。しかしながら、ノズル1が坩堝3に外嵌されていてもよい。ノズル1を坩堝3に外嵌することで、坩堝3の内部に広い空間を確保できる。一方で、坩堝3の外周にノズル1が取り付けられるために、ヒーター2の取り付けが難しくなることや気化器の寸法が大型化するといったデメリットがある。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 ノズル
3 坩堝
4 熱絶縁部材
X 外筒
Y ガス管
Z 支持部材
V1-V5 気化器
図1
図2
図3
図4
図5
図6