(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024387
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】ドアハンドル
(51)【国際特許分類】
E05B 1/06 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
E05B1/06 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128455
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000138613
【氏名又は名称】株式会社ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】田河 寿一
(57)【要約】
【課題】ハンドル本体が長尺状である場合にも、重量の増大を抑え、ドアを開け閉めする際の撓みを抑え、操作感を向上させることができるドアハンドルを提供する。
【解決手段】
ドアハンドルは、長尺状のハンドル本体10と、一対の固定部材20とを具備する。ハンドル本体10は、中空筒状の外装部材11、及び長尺状の補強部材12を含み、上下方向に配される。補強部材12は、中空筒状の素材を塑性変形によって加工硬化させたものであり、外装部材11の中空部11aに配設される。一対の固定部材20は、ハンドル本体10の上部及び下部においてハンドル本体10をドア1に固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に配される長尺状のハンドル本体(10)であって、中空筒状の外装部材(11)、及び筒状の素材を塑性変形によって加工硬化させたものであり、前記外装部材の中空部に配設される長尺状の補強部材(12)を含むハンドル本体(10)と、
前記ハンドル本体(10)の上部及び下部において前記ハンドル本体(10)をドア(1)に固定する一対の固定部材(20)
とを具備する、ドアハンドル。
【請求項2】
前記塑性変形は、前記筒状の素材を捻じり変形させるものである、請求項1に記載のドアハンドル。
【請求項3】
前記外装部材(11)は、円筒状であり、前記補強部材(12)の前記素材は、角筒状である、請求項2に記載のドアハンドル。
【請求項4】
前記補強部材(12)は、非変形部(12a)を両端に有するとともに、前記両端の非変形部(12a)の間に捻じり変形された変形部(12b)を有し、前記非変形部(12a)において、前記外装部材(11)と一体的に連結される、請求項3に記載のドアハンドル。
【請求項5】
前記補強部材(12)の前記素材に対する前記捻じり変形は、前記外装部材(11)を握る手と当たる部分の長さ(L1)あたりの捻じり角度(α)が、前記外装部材(11)の周方向の全方向において内周面(11b)に前記補強部材(12)の外周角部(12c)が当接し得る角度を基準に設定される、請求項3又は請求項4に記載のドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアハンドルに関し、特に、建物の開き戸等のドアに取付けられる長尺状のドアハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の開き戸等のドアに取付けられる長尺状のドアハンドルとして、特許文献1には、建物の開き戸等のドアの上端及び下端でドアに固定されるドアハンドルが記載されている。特許文献1に記載のドアハンドルは、長尺状のハンドル本体と、一対の固定部材とを具備する。ハンドル本体は、ハンドル本体の上端及び下端において一対の固定部材によってドアに固定される。
【0003】
特許文献1に記載されているような長尺状のドアハンドルにおいては、ドアの開閉の際のハンドルの撓み(たわみ)が問題となり得る。人間の手は、微妙な変形、変位を感じ取る優れた感覚を備えており、ドアを開け閉めする際にドアハンドルが変形したり、撓んだりすると、違和感を覚え、ドアハンドルの操作感は低下する。また、ドアハンドルの撓みが目に見える程に大きくなると、ドアを押し開ける際に指がドアと衝突し、怪我をすることも考えられる。また、ドアの開け閉めを繰り返すときドアハンドルが撓むと、ハンドル本体の変形が繰り返されることとなり、ハンドル本体を一対の固定部材と連結しているボルトや、一対の固定部材をドアに取付けているビス等に緩みが生じる原因ともなり得る。
【0004】
以上のような問題点を解消するために、特許文献1に記載のドアハンドルにおいては、一対の固定部材は、それぞれ、ハンドル本体の長手方向に並ぶように配置される2本のボルトによってハンドル本体と連結される。一対の固定部材が、それぞれ、ハンドル本体の長手方向に並ぶように配置される2本のボルトによってハンドル本体と連結されることによって、ドアの開け閉めの際のハンドル本体の撓みを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のドアハンドルにおいては、ハンドル本体の材質や、形状、サイズによっては十分にハンドル本体の撓みを抑えられないことがある。特に、ハンドル本体の素材として、重量を抑えるために、中空パイプ状の素材を使用し、管壁の厚みを薄くする場合に撓みは生じやすくなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハンドル本体が長尺状である場合にも、重量の増大を抑え、ドアを開け閉めする際の撓みを抑え、操作感を向上させることができるドアハンドルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示するドアハンドルは、上下方向に配される長尺状のハンドル本体(10)と、一対の固定部材(20)とを具備する。前記ハンドル本体(10)は、中空筒状の外装部材(11)、及び長尺状の補強部材(12)を含む。前記補強部材(12)は、筒状の素材を塑性変形によって加工硬化させたものであり、前記外装部材(11)の中空部(11a)に配設される。前記一対の固定部材(20)は、前記ハンドル本体(10)の上部及び下部において前記ハンドル本体(10)をドア(1)に固定する。
【0009】
本願に開示するドアハンドルにおいて、前記塑性変形は、前記筒状の素材を捻じり変形させるものである。
【0010】
また、本願に開示するドアハンドルにおいて、前記外装部材(11)は、円筒状であり、前記補強部材(20)の前記素材は、角筒状である。
【0011】
更に、本願に開示するドアハンドルにおいて、前記補強部材(12)は、両端に非変形部(12a)を有し、前記両端の非変形部(12a)の間に捻じり変形された変形部(12b)を有し、前記非変形部(12a)において前記外装部材(11)と一体的に連結される。
【0012】
更に、本願に開示するドアハンドルにおいて、前記補強部材(12)の前記素材に対する前記捻じり変形は、前記外装部材を握る手と当たる部分の長さ(L1)あたりの捻じり角度(α)が、前記外装部材(11)の周方向の全方向において内周面(11a)に前記補強部材(12)の外周角部(12c)が当接し得る角度を基準に設定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るドアハンドルによれば、ハンドル本体が長尺状である場合にも、重量の増大を抑え、ドアを開け閉めする際の撓みを抑え、操作感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るドアハンドルを示す縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るドアハンドルを示す横断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るドアハンドルを示す平面図である。
【
図4】(a)実施形態の補強部材を示す正面図である。(b)実施形態の補強部材を示す左側面図である。(c)実施形態の補強部材を示す上面図である。
【
図5】(a)実施形態の補強部材を示す、塑性変形前の斜視図である。(b)実施形態の補強部材を示す、塑性変形後の斜視図である。(c)実施形態の補強部材を外装部材に装着する操作を示す斜視図である。
【
図6】(a)本発明の実施例に係る実験の第1段階を概念的に示す説明図である。(b)本発明の実施例に係る実験の第2段階を概念的に示す説明図である。
【
図7】本発明の実施例に係る実験結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るドアハンドルを図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0016】
〈実施形態〉
以下に、
図1から
図5を参照して、本発明の実施形態に係るドアハンドルを説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るドアハンドルを示す縦断面図である。
図2は、本発明の実施形態に係るドアハンドルを示す横断面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るドアハンドルを示す平面図である。
図4(a)は、実施形態の補強部材を示す正面図である。
図4(b)は、実施形態の補強部材を示す左側面図である。
図4(c)は、実施形態の補強部材を示す上面図である。
図5(a)は、実施形態の補強部材を示す、塑性変形前の斜視図である。
図5(b)は、実施形態の補強部材を示す、塑性変形後の斜視図である。
図5(c)は、実施形態の補強部材を外装部材に装着する操作を示す斜視図である。
【0017】
図1から
図3に示すように、実施形態のドアハンドルは、建物の開き戸等のドア1に取付けられるものであり、長尺状のハンドル本体10と、一対の固定部材20とを具備する。ハンドル本体10は、中空筒状の外装部材11、及び長尺状の補強部材12を含み、上下方向に配される。一対の固定部材20は、ハンドル本体10の上部及び下部においてハンドル本体10をドア1に固定する。
【0018】
実施形態の外装部材11は、金属製で円筒状であり、中空部11aを有している。
【0019】
補強部材12は、金属製の筒状の素材を塑性変形によって加工硬化させたものであり、外装部材11の中空部11aに配設される。実施形態において、補強部材12の素材は、横断面の外形が正方形の角筒状である。補強部材12の素材に対する塑性変形は、捻じり変形である。
【0020】
また、補強部材12は、両端に非変形部12aを有し、両端の非変形部12aの間に塑性変形されている変形部12bを有し、両端の非変形部12aにおいて外装部材11と一体的に連結される。実施形態においては、補強部材12は、ボルト13によって、両端の非変形部12aにおいて、外装部材11、及び一対の固定部材20と一体的に連結されている。
【0021】
図4に示すように、補強部材12の素材に対する捻じり変形は、外装部材11を握る手と当たる部分の長さL1あたりの捻じり角度αが、外装部材11の周方向の全方向において内周面11bに補強部材12の外周角部12cが当接し得る角度を基準に設定される。
【0022】
子供の手や一般の成人男性の掌の幅が4~10cm(センチメートル)程度であることを考えると、長さL1の範囲は4~10cmとすることができる。例えば、L1=5cmとすると、横断面の外形が正方形である角筒状の素材を補強部材12の素材として使用するとき、補強部材12の変形部12bにおいて、5cm(=L1)あたりの捻じり角度αをα=90度とすれば、外装部材11の周方向の全方向において内周面11bに外周角部12cを当接させることができる。なお、長さL1は、3~11cmであればよく、4~10cmであるのが好ましく、5~9cmであるのが更に好ましい。
【0023】
図5に示すように、筒状の素材を捻じり変形して形成される補強部材12は、筒状の外装部材11の端面開口から内部に挿入される。
【0024】
<実施例>
以下、
図6、
図7を参照して、本発明の実施例を説明する。
【0025】
図6(a)は、本発明の実施例に係る実験の第1段階を概念的に示す説明図である。
図6(b)は、本発明の実施例に係る実験の第2段階を概念的に示す説明図である。
図7は、本発明の実施例に係る実験結果を示すグラフ図である。
【0026】
一般に、中空円筒状の金属素材を二点で支持し、中央に集中荷重Pを加えたときの撓みδは、E:ヤング係数、I1:断面二次モーメント(mm4)、L:支点間距離とすると、下記式1で表される。
【0027】
δ=(P×L3)/(48×E×I1) (1)
【0028】
また、中空円筒状の金属素材の断面二次モーメントI1は、D:素材の外径、d:素材の内径とすると、下記式2によって表される。
【0029】
I1=π(D4-d4)/64 (2)
【0030】
また、横断面の外形が正方形である角筒状の金属素材の断面二次モーメントI2は、H:横断面の外法の一辺の長さ、h:横断面の内法の一辺の長さ、とすると、下記式3によって表される。
【0031】
I2=π(H4-h4)/12 (3)
【0032】
以下の実施例、及び比較例においては、
図6(a)に示すように、ハンドル本体として使用可能な各種の実験体100を準備し、一対の固定部材20で支持すべき二点において実験体100を支持し、
図6(b)に示すように、実験体100の中央部に様々な値の集中荷重Pを加えたときの撓みδを計測する実験を行った。支点間距離Lは、1400mmとした。
図7に実験結果を示す。なお、
図7の横軸は集中荷重Pを示し、縦軸は撓みδを示す。
【0033】
<実施例>
外径D:34mm、内径d:31mmの円筒状の素材(SUS304)を外装部材として準備した。H:22mm、h:18.8mmの横断面の外形が正方形である角筒状の素材(STK400)を捻じり変形し、補強部材として使用した。補強部材の変形部における長さ5cmあたりの捻じり角度は90度とした。なお、22×22mmの正方形の対角線の長さは、約31.1mmである。
【0034】
外装部材の中空部に補強部材を挿入し、補強部材の両端の非変形部をボルトによって外装部材に固定し、実施例の実験体100を作製した。実施例の実験体100には、10kgf(1kgf(重量キログラム):約9.81N(ニュートン))から100kgfまでの10kgfごとの集中荷重Pを印可した。
【0035】
<比較例>
実施例と同じ外径D:34mm、内径d:31mmの円筒状の素材(SUS304)を外装部材として準備し、H:22mm、h:18.8mmの横断面の外形が正方形である実施例と同じ角筒状の素材(STK400)を捻じり変形せずにそのまま補強部材として使用し、実施例と同様の位置で補強部材をボルトによって外装部材に固定し、比較例の実験体100を作製した。比較例の実験体100にも、10kgfから100kgfまでの10kgfごとの集中荷重Pを印可した。
【0036】
以上の実施例、及び比較例によれば、
図7に示されているとおり、捻じり変形した素材を補強部材として外装部材の中空部に入れる方が、捻じり変形していないそのままの素材を補強部材として入れるよりも、実験体100は撓みにくくなることが確かめられた。また、実施例、及び比較例の各実験体100をドアハンドルとしてドアに取付け、実際にドアを開閉する操作を行った感触としても、実施例の方が、比較例よりも剛性感が高く、捻じり変形した補強部材を使用することによって、ドアハンドルの操作感が向上されることが確かめられた。
【0037】
以上、
図1から
図7を参照して説明したように、実施形態のドアハンドルによれば、ハンドル本体10が、中空筒状の外装部材11、及び長尺状の補強部材12を含み、補強部材12は、筒状の素材を塑性変形によって加工硬化させることによって形成される。
【0038】
補強部材12が、筒状の素材を塑性変形によって加工硬化させたものであることによって、補強部材12を素材自体よりも変形しにくく形成でき、同等の撓みにくさを達成する場合に、補強部材12の素材として、管厚がより小さく、より軽い素材を使用することが可能となり、ハンドル本体が長尺状である場合にも、重量の増大を抑え、ドアを開け閉めする際の撓みを抑え、ドアハンドルの操作感を向上させることができる。その結果、
図3に示すように、ハンドル本体の中央部を支持具120によって支持することなくハンドル本体の撓みを抑え、ドアハンドルの良好な操作感を得ることができる。
【0039】
また、
図1から
図7を参照して説明したように、実施形態のドアハンドルによれば、補強部材12の素材に対する塑性変形は、筒状の素材を捻じり変形させるものである。塑性変形が捻じり変形であることによって、長尺状の素材から長尺状の補強部材12を簡単に作製することができ、補強部材12の作製を容易とすることができる。
【0040】
また、
図1から
図7を参照して説明したように、実施形態のドアハンドルによれば、外装部材11は、円筒状であり、補強部材12の素材は、角筒状である。補強部材12の素材が角筒状であり、塑性変形が捻じり変形であることによって、外装部材11の周方向の全方向において内周面に外周角部12cが当接するように補強部材12を形成でき、外装部材11の変形を抑えるように補強でき、操作感を向上できる。
【0041】
更に、
図1から
図7を参照して説明したように、実施形態のドアハンドルによれば、補強部材12は、両端に非変形部12aを有し、両端の非変形部12aの間に塑性変形された変形部12bを有し、非変形部12aにおいて、外装部材11と一体的に連結される。補強部材12が両端部において外装部材11と一体的に連結されることによって、外装部材11が外力によって変形するとき、外力を補強部材12に効果的に伝えることができ、より効果的に撓みを抑え、ドアを開け閉めする際の操作感を向上できる。
【0042】
更に、
図1から
図7を参照して説明したように、実施形態のドアハンドルによれば、補強部材12の素材に対する捻じり変形は、外装部材を握る手と当たる部分の長さL1あたりの捻じり角度αが、外装部材11の周方向の全方向において内周面11bに外周角部12cが当接し得る角度を基準に設定される。従って、外装部材11を握る手と当たる部分の長さL1単位で外周角部12cによって全方向において外装部材11を内側から支えるようにして効果的に補強でき、ドア1を開け閉めする際のドアハンドルの操作感を更に効果的に向上できる。
【0043】
以上、図面(
図1~
図7)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記(1))。
【0044】
(1)上記実施形態においては、補強部材の素材として、横断面の外形が正方形である筒状の素材を使用したが、これに限られず、横断面の外形が、5角形以上の多角形や、三角形である筒状の素材を補強部材の素材として使用してもよく、あるいは、横断面の外形が円形である筒状の素材を使用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1…ドア
10…ハンドル本体
11…外装部材
11b…内周面
12…補強部材
12a…非変形部
12b…変形部
12c…外周角部
20…固定部材