(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024392
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】取付部材、及び取付構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20250213BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20250213BHJP
【FI】
E04D13/00 K ETD
E04D13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128462
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AS02
2E108BN06
2E108CC01
2E108DD07
2E108GG05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建築物の屋根等の多種の縦葺き外装構造に適用でき、外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に、絶縁材を介して容易に、太陽電池モジュール等の各種外設部材を取り付けることができる取付部材、及び取付構造を提供する。
【解決手段】金属外装材5Aにて形成される凸状部51に絶縁材を介して固定される取付部材1であって、凸状部51の上方及び左方に配される上方部材2と、他方に配される下方部材3と、下方部材3に取り付けられて上方部材2を貫通する取付ボルト1Bと、該取付ボルト1Bの先端に螺合される締着ナット1Cと、からなり、凸状部51の基端に、一方側から上方部材2に設けた当接部25が、他方側から下方部材3に設けた当接部35が、絶縁材4Aを介して対向状に臨んだ状態で、締着ナット1Cが締め付けられることにより、上方部材2及び下方部材3のそれぞれの当接部25,35が凸状部51の基端に挟着状に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に絶縁材を介して固定される取付部材であって、
前記凸状部の上方及び左右の何れか一方に配される上方部材と、前記凸状部の他方に配される下方部材と、該下方部材に取り付けられて前記上方部材を貫通する取付ボルトと、該取付ボルトの先端に螺合される締着ナットと、からなり、
前記凸状部の基端に、一方側から前記上方部材に設けた当接部が、他方側から前記下方部材に設けた当接部が、前記絶縁材を介して対向状に臨んだ状態で、前記締着ナットが締め付けられることにより、前記上方部材及び前記下方部材のそれぞれの前記当接部が前記凸状部の基端に挟着状に固定されることを特徴とする取付部材。
【請求項2】
前記上方部材と前記下方部材とは回動自在に枢着され、前記下方部材に取り付けられた前記取付ボルトに前記上方部材上から前記締着ナットが螺合されることで、前記上方部材と前記下方部材とが一体化されることを特徴とする請求項1に記載の取付部材。
【請求項3】
外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に、請求項1又は2に記載の取付部材を固定し、該取付部材に直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付け可能であることを特徴とする取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新設、既設を問わず建築物の屋根等の外装面に施工される多種の縦葺き(縦張り)外装構造に適用でき、外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に、絶縁材を介して容易に取り付けることができ、太陽電池モジュール等の各種外設部材を取り付けることができる取付部材、及び取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既存屋根上に新たに外装構造を構築する場合には、既存屋根に取付具や支持材などを配して新たな基礎を構築し、その基礎に新設外装構造を設置する構造が採用され、取付具や支持材は、ボルトによる締着によって既存屋根上に組み付けられている(例えば特許文献1)。
特許文献1には、金属屋根Rのハゼ部Hの基端を、上方及び左右の一方を覆う部材(右側つかみ部4)と他方を覆う部材(左側つかみ部5)とからなる支持金具1が提案されている。そして、この構造では、左側つかみ部5に取り付けたボルト6が、右側つかみ部4に貫通されてナット7を締結することで、ハゼ部Hの基端が右側つかみ部4に設けた右爪片2と左側つかみ部5に設けた左爪片3にて挟着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の構造では、金属屋根Rにアルミ等の押出形材から成る支持金具1を取り付ける構造であるから、二種の金属の接触による接触腐食等が生ずることがあった。即ち前述のように支持金具1の基端に右爪片2や左爪片3の先端が挟着状に当接(接触)し、またこれら右爪片2や左爪片3の下面が、金属屋根Rの左右の肩状部分に載置状に当接(接触)しているので、これらの部分にて接触腐食等が生ずる恐れがあった。
このような二種の金属の接触による接触腐食は、雨水等の存在下で電位差が異なる二種金属の一方に腐食が生ずる現象であり、錆の発生等が現象として確認される。
また、落雷時に、高電線など高いところにある電線などに瞬間的に高い電圧が発生する雷サージが生ずる恐れもあり、太陽電池モジュールや家庭用の電気機器等の傷害を引き起こしたり、火災を引き起こすことも懸念される。
さらに、それら以外にも、二種金属の接触(摩擦)による摩擦音等が発生する事象も生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、新設、既設を問わず建築物の屋根等の外装面に施工される多種の縦葺き(縦張り)外装構造に適用でき、外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に、絶縁材を介して容易に取り付けることができ、接触腐食や雷サージ等を防止しつつ太陽電池モジュール等の各種外設部材を取り付けることができる取付部材、及び取付構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであって、外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に絶縁材を介して固定される取付部材であって、前記凸状部の上方及び左右の何れか一方に配される上方部材と、前記凸状部の他方に配される下方部材と、該下方部材に取り付けられて前記上方部材を貫通する取付ボルトと、該取付ボルトの先端に螺合される締着ナットと、からなり、前記凸状部の基端に、一方側から前記上方部材に設けた当接部が、他方側から前記下方部材に設けた当接部が、前記絶縁材を介して対向状に臨んだ状態で、前記締着ナットが締め付けられることにより、前記上方部材及び前記下方部材のそれぞれの前記当接部が前記凸状部の基端に挟着状に固定されることを特徴とする取付部材に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記取付部材において、前記上方部材と前記下方部材とは回動自在に枢着され、前記下方部材に取り付けられた前記取付ボルトに前記上方部材上から前記締着ナットが螺合されることで、前記上方部材と前記下方部材とが一体化されることを特徴とする取付部材をも提案する。
【0008】
さらに、本発明は、外装面を構成する外装材にて形成される凸状部に、前記構成の取付部材を固定し、該取付部材に直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付け可能であることを特徴とする取付構造をも提案するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の取付部材は、金属外装材にて形成される凸状部に絶縁材を介して固定されるので、金属外装材に対してアルミ押出材等の取付部材を用いても、接触腐食や雷サージ等を防止することができる。
また、上方部材を貫通させた締着ナットを締め付けることにより、上方部材及び下方部材の各当接部を凸状部の基端に絶縁材を介して挟着させ、取付ボルトを上方部材上に起立でき、金属外装材に対して金属製の取付部材を用いても、接触腐食や雷サージ等を防止できる。
なお、絶縁材が弾性が備えられている場合には、凸状部の基端に上方部材及び下方部材の当接部が確実に圧接でき、接触腐食や雷サージ等を確実に防止できる。
【0010】
また、上方部材と下方部材とは回動自在に枢着され、下方部材に取り付けられた取付ボルトに上方部材上から締着ナットが螺合されることで、上方部材と下方部材とが一体化される場合には、上方部材及び下方部材を凸状部に係止できると共に取付ボルトを上方部材上に起立させることができる。さらに、この取付部材は、起立する取付ボルトに対して締着ボルトを締め付けることにより、一体化及び取付が実施されるので、従来の取付作業のように略水平状に配されたボルトナットを締め付ける作業を必要としないため、作業が極めて容易である。
【0011】
本発明の前記取付部材を用いた取付構造は、各種の外設部材を、前記取付部材の上方部材の頂部又は該頂部に取り付けた支持材に取り付け可能であり、外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に対し、太陽電池モジュール等を簡易な構造にて取り付けることができる。しかも、上方部材の頂部には、取付ボルトを起立状に取り付けているので、該取付ボルトに太陽電池モジュール等を容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本発明の実施例1の取付部材を第1仕様の絶縁材を介して凸状部に取り付けようとする状態を示す正面図、(b)それを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図2】(a)実施例2の取付部材(実施例1の本体+第2仕様の絶縁材)を凸状部に取り付けようとする状態を示す正面図、(b)それを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図3】(a)実施例3の取付部材(実施例1の本体+第3仕様の絶縁材)を凸状部に取り付けようとする状態を示す正面図、(b)それを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図4】(a)実施例4の取付部材(実施例1の本体+第4仕様の絶縁材)を凸状部に取り付けようとする状態を示す正面図、(b)それを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図5】(a)実施例5の取付部材(実施例1の本体+第5仕様の絶縁材)を凸状部に取り付けようとする状態を示す正面図、(b)それを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図6】(a)実施例6の取付部材(実施例1の本体+第6仕様の絶縁材)を凸状部に取り付けようとする状態を示す正面図、(b)それを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図7】(a)実施例7の取付部材(別仕様の本体+第1仕様の絶縁材)を凸状部に取り付けた状態を示す正面図、(b)実施例8の取付部材(更に別仕様の本体+第1仕様の絶縁材)を凸状部に取り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の取付部材は、外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に絶縁材を介して固定されるものであって、凸状部の上方及び左右の何れか一方に配される上方部材と、凸状部の他方に配される下方部材と、該下方部材に取り付けられて前記上方部材を貫通する取付ボルトと、該取付ボルトの先端に螺合される締着ナットと、凸状部に固定される際に介在させる絶縁材とからなる。
そして、凸状部の基端に、一方側から上方部材に設けた当接部が、他方側から下方部材に設けた当接部が、絶縁材を介して対向状に臨んだ状態で、締着ナットが締め付けられることにより、上方部材及び下方部材のそれぞれの当接部が凸状部の基端に挟着状に固定されることを特徴とする。
【0014】
本発明の取付部材が金属外装材にて形成される凸状部に固定される際に介在させる絶縁材は、以下に示す多種の仕様が存在する。なお、取付部材と金属外装材との接触箇所は、後述する図示実施例のように凸状部の基端のみに限定されないので、それ以外の接触箇所にもこの絶縁材を介在させていることが望ましい。なお、絶縁材が弾性が備えられている場合には、凸状部の基端に上方部材及び下方部材の当接部が確実に圧接でき、接触腐食や雷サージ等を確実に防止できる。
第1仕様は、上方部材や下方部材の当接部(横片の周囲)にキャップ状に絶縁材(層)が被覆される。
第2仕様は、上方部材や下方部材の当接部(横片の周囲)に塗装又はディッピングにて絶縁材(層)が形成される。
第3仕様は、金属外装材の凸状部(の周囲)が、絶縁材である不定形のゴムシートで被覆される。
第4仕様は、金属外装材の凸状部(の周囲)が、絶縁材である定形の樹脂製又はゴム製の定形材により被覆される。
第5仕様は、金属外装材の凸状部と上方部材や下方部材の当接部(横片の周囲)との間に絶縁材として過剰量のシール材が介在(充填)される。
第6仕様は、金属外装材の凸状部(の周囲)に絶縁材の塗装(絶縁塗装)が施される。
【0015】
前記第1~第6の各仕様における絶縁材について、それぞれ簡単に説明を加える。
第1仕様における絶縁材(層)は、後述する図示実施例(
図1,7)のように上方部材や下方部材の当接部(横片の周囲)に、予め絶縁性を有する樹脂やゴムをキャップ状(嵌合部分を有する形状)に成形しておき、このキャップ状の成形体を当接部に嵌め付けるか、裏面側に粘着層を形成したラベル状として当接部(横片の周囲)に貼り付ける。
第2仕様における絶縁材(層)は、後述する図示実施例(
図2)のように上方部材や下方部材の当接部(横片の周囲)に樹脂を溶媒に溶かした溶解液を塗布したり、樹脂を加熱した熱溶融液に浸漬(ディッピング)することで塗膜状の絶縁材(層)が形成される。
第3仕様における絶縁材は、後述する図示実施例(
図3)のように絶縁性を有する不定形のゴムシートであり、該絶縁性ゴムシートにて金属外装材の凸状部(の周囲)が被覆される。
第4仕様における絶縁材は、後述する図示実施例(
図4)のように絶縁性を有する定形の樹脂製又はゴム製の定形材であり、該絶縁性定形材にて金属外装材の凸状部(の周囲)が被覆される。
第5仕様における絶縁材は、後述する図示実施例(
図5)のように絶縁性を有する過剰量のシール材であり、金属外装材の凸状部と上方部材や下方部材の当接部との間に注入具等を用いて介在(充填)される。
第6仕様における絶縁材は、後述する図示実施例(
図6)のように絶縁材の塗装(絶縁塗装)であり、金属外装材の凸状部(の周囲)に各種塗装法にて絶縁塗膜が形成される。
【0016】
前記上方部材は、前述のように凸状部の上方及び左右の何れか一方に配される部材であるが、詳しくは、この上方部材は、凸状部を覆う部分と、一方側の基端に当接する当接部とを有する構成であり、下方部材との間には空間が形成され、該空間に凸状部を位置させるように配設する。
また、この上方部材は、前述のように取付ボルトが貫通するが、詳しくは、取付ボルトが貫通するための孔を備える構成である。この貫通孔が取付ボルトの径と略同一の場合には、貫通孔に対して対して取付ボルトが正対する方向しか許容されないため、上方部材と下方部材との回動も制御されてしまうため、横長に貫通孔を形成することが望ましい。
なお、この上方部材は、頂部に支持面が形成されていることが望ましく、この支持面に外設部材や太陽電池パネルを安定に支持させることができる。
【0017】
前記下方部材は、前述のように凸状部の左右の他方に配する部材であり、一方に配する上方部材と同様に凸状部の他方側の基端に当接する当接部を有する構成である。
また、この下方部材には、前述のように取付ボルトが取り付けられるが、例えば通孔を形成して裏面側から取付ボルトを突出させてもよいし、取付ボルトの頭部を配する溝状又は凹状の収容部を設けるようにしてもよく、この場合には容易に且つ安定に取付ボルトを下方部材に配設することができ、凸状部への取付作業においても取付ボルトが下方部材から脱離する事故を防ぐことができる。
【0018】
この取付ボルトは、この取付部材における「取付部」を形成するものであるが、前述のように下方部材に取り付けられ、上方部材を貫通するものであるから、上方部材と下方部材との連結部材としても作用する。この取付ボルト自体は、通常の六角ボルト等が利用される。
【0019】
この締着ナットは、上方から前記取付ボルトに締め付けることにより、上方部材と下方部材を一体的に固定すると共に、各部材に設けた当接部を凸状部の基端の左右に配置させるので、上方部材及び下方部材を凸状部に係止させ、取付ボルトを上方部材上に起立させる作用を果たす。この締着ナット自体は、通常の六角ナット等が利用される。
【0020】
なお、前記上方部材及び前記下方部材は、後述する図示実施例(
図1~6)のように回動自在に枢着されることで、各部材が離反することなく、確実に凸状部に取り付けることができる。
また、前記取付ボルトは、後述する図示実施例のように内側へ傾斜状の横片部に設けてもよいが、特に限定されるものではない。
【0021】
本発明の取付部材の取り付け対象である凸状部は、外装面を構成する金属外装材にて形成されるものであって、山状部分と谷状部分とが連続する構成の外装面であれば、山状部分を指し、新築でも既設でもよい。また、後述する図示実施例のように金属外装材の側縁を略垂直状に立ち上げてカシメて凸部を形成したものでもよく、特にその構成を限定するものではない。
【0022】
また、本発明は、前記構成の取付部材を用いた取付構造をも提案するものであり、外装面を構成する金属外装材にて形成される凸状部に、前記構成の取付部材を絶縁材を介して固定し、該取付部材に直接的に外設部材を、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付け可能である。
前記外設部材としては、太陽電池パネルや緑化パネル(構造)、或いは新設の屋根材(構造)等の屋根面の大きな面積を占めるものであっても、雪止め金具や避雷針、アンテナ等の部分的に設けるものであってもよい。また、太陽電池パネルにおいても、太陽電池モジュールの周縁にフレーム材を配したものも、太陽電池を外装材に一体的に設けたものであってもよくその構成は特に問わない。
【実施例0023】
図1(a),(b)に示す本発明の取付部材1の実施例1は、金属外装材5A,5Aにて形成される凸状部51の上方及び左右の何れか一方(=右方)に配する上方部材2と、該上方部材2と回動自在に枢着されて凸状部51の他方(=左方)に配される下方部材3と、該下方部材3に取り付けられて前記上方部材2を貫通する取付ボルト1Bと、該取付ボルト1Bの先端に螺合される締着ナット1Cと、キャップ状(嵌合部分を有する形状)に成形された前記第1仕様の絶縁材4Aとからなる。上記上方部材2と下方部材3とは、組み合わせ状態が断面略筺状になるように形成され、内部に空間19が形成される構成である。
なお、後述する実施例2~6にも、当該実施例1における上方部材2や下方部材3、及び取付ボルト1B、締着ナット1Cが用いられているので、これらを実施例2~6では本体10とする。そのため、この本体10を用いて実施例1の取付部材1を表すと、本体10と絶縁材4Aとからなる。
【0024】
前記上方部材2は、前述のように凸状部51の上方及び左右の一方(右方)に配する部材であり、凸状部51を囲う筺状部分の上面11に相当する横片21と、右側面12に相当する縦片22と、底面右側13aに相当する横片23とを形成する略逆つ字状のアルミ押出材である。前記横片21には、取付ボルト1Bが貫通する横長の孔211が設けられ、外側上方へ向かう延在片212が形成されている。さらに、前記横片23の下面には、下方へ突出する脚片231が形成されている。そして、下方部材3と回動自在に枢着するための軸部15を形成する凹状の枢支受部24は、上面左端(横片21の左端)に位置し、凸状部51に当接する(底面右側13aに相当する)横片23の先端が当接部25である。
【0025】
前記下方部材3は、前述のように凸状部51の左右の他方(左方)に配する部材であり、左側面14に相当する縦片31と、底面左側13bに相当する横片32とを形成する略逆L字状のアルミ押出材である。前記横片32の下面には、下方へ突出する脚片321が形成されている。そして、取付ボルト1Bの頭部16が嵌着される凹状の収容部36が左側面14から跳ね上げ状の横片部33の裏面側に形成され、上方部材2と回動自在に枢着するための軸部15を形成する凸状の枢支部34は、左側面上端(縦片31の上端)に位置し、凸状部51に当接する(底面左側13bに相当する)横片32の先端が当接部35である。
【0026】
この実施例1における絶縁材4Aは、上方部材2や下方部材3の当接部25,35に、予め絶縁性を有する樹脂やゴムをキャップ状(嵌合部分を有する形状)に成形しておき、このキャップ状の成形体を、当接部25,35に嵌め付けている。この絶縁材4Aは、前記第1仕様の絶縁材に相当する。
なお、この絶縁材4Aは、当接部25,35のみに限らず図示するように脚片231,321を含む横片23,32を全体的に被覆するように嵌め付けている。
【0027】
前記取付ボルト1Bは、下端に頭部16が位置し、上方に雄ネジ部分17が位置する六角ボルトである。
また、前記締着ナット1Cは、六角ナットである。
【0028】
この実施例1の取付部材を取り付ける凸状部51は、外装面5を構成する金属外装材5A,5Aにて形成されるものであって、傾斜状に立ち上げた側縁52,52を外側へ折り曲げて形成した肩状部分53,53を略垂直状に立ち上げると共にカシメて凸状部51を形成した。
【0029】
そして、これらの部材を図示するように一体的に組み合わせて本体10を形成すると共に凸状部51に取り付けるが、上方部材2と下方部材3とは回転自在に枢着されて軸部15を形成し、下方部材3の収容部36にその頭部16を取り付けられた取付ボルト1Bの雄ネジ部分17の先端は、上方部材2に設けた孔211を貫通して上方に突出するように組み合わせられている。
なお、締着ナット1Cは、それを締め付ける作業まで取り外した状態としておくようにしてもよいし、取付ボルト1Bの雄ネジ部分17の先端に緩く取り付けておくようにしてもよい。
【0030】
その取付手順を簡単に説明すると、まず、上方部材2と下方部材3と取付ボルト1Bとを予め一体的に組み合わせた状態で、上方部材2と下方部材3で形成される空間19に位置させるように凸状部51に配置する。
上方部材2及び下方部材3は、回動自在に枢着されているので、上方部材2を凸状部51の左側に配設し、当接部25を凸状部51の立ち上がり基部に沿わせ、下方部材3を凸状部51の右側に配設し、当接部35を凸状部51の立ち上がり基部に沿わせ、左右から挟むように配設する。
次に、前記取付ボルト1Bに締着ナット1Cを取り付けて上方から工具等で締め付けるが、この締め付けにより、取付ボルト1Bを引っ張り上げる作用が働き、上方部材2と下方部材3とが一体的に固定される。この状態では、各当接部25,35が凸状部51の立ち上がり基部を左右から挟着する状態となるため、上方部材2及び下方部材3が凸状部51に係止状に取り付けられ、取付ボルト1Bが上方部材2上に起立する。
前記絶縁材4Aの取付作業は、上方部材2や下方部材3の配設以前に行ってもよいし、配設後に、当接部25,35を含む横片23,32全体に嵌め付けるようにしてもよい。
【0031】
なお、固定した取付部材1の取付ボルト1Bの雄ネジ部分17の先端に、外設部材を取り付けた状態については図示していないが、直接的に外設部材を取り付けてもよいし、或いは支持材を介して間接的に外設部材を取り付けてもよい。
【0032】
このように本発明の実施例1の取付部材1は、金属外装材5A,5Aにて形成される凸状部51に絶縁材4Aを介して固定されるので、金属外装材5Aに対してアルミ押出材等の取付部材1(本体10)を用いても、接触腐食や雷サージ等を防止することができる。
また、上方部材2を貫通させた締着ナット1Cを締め付けることにより、上方部材2及び下方部材3の各当接部25,35を凸状部51の基端に絶縁材4Aを介して挟着させ、取付ボルト1Bを上方部材2上に起立でき、金属外装材5Aに対して金属製の取付部材1(本体10)を用いても、接触腐食や雷サージ等を防止できる。
しかも、この実施例1では、絶縁材4Aは、当接部25,35のみに限らず、脚片231,321を含む横片23,32全体に被覆するように嵌め付けているので、金属外装材5Aの凸状部51の基端や肩状部分53,53との接触を防止できる。
この実施例2における絶縁材4Bは、上方部材2や下方部材3の当接部51の周囲に樹脂を溶媒に溶かした溶解液を塗布したり、樹脂を加熱した熱溶融液に浸漬(ディッピング)することで塗膜状の絶縁材(層)が形成される。
なお、この絶縁材4Bは、当接部25,35のみに限らず図示するように脚片231,321を含む横片23,32に全体的に塗布(その後に適宜に乾燥する)したり、全体的に浸漬することで塗膜状に形成している。
そのため、この実施例2の取付部材1IIも、金属外装材5A,5Aにて形成される凸状部51に、横片23,32の周囲に形成した絶縁材4Bを介して固定されているので、前記実施例1と同様に金属外装材5Aに対してアルミ押出材等の本体10を用いても、接触腐食や雷サージ等を防止することができる。
しかも、この実施例2でも、前記実施例1と同様に絶縁材4Bは、横片23,32のみに限らず脚片231,321を含む横片23,32全体に被覆状に形成されているので、金属外装材5Aの凸状部51の基端や肩状部分53,53との接触を防止できる。