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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024405
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】エマルション及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20250213BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20250213BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20250213BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20250213BHJP
   D06M 15/03 20060101ALI20250213BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20250213BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20250213BHJP
   C08J 3/05 20060101ALI20250213BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
C08L71/00 Y
D06M13/292
D06M13/256
D06M13/144
D06M15/03
D06M15/333
C09K3/18 102
C08J3/05 CEZ
C08K5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128485
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 豊
(72)【発明者】
【氏名】山根 銀太
【テーマコード(参考)】
4F070
4H020
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4F070AA52
4F070AB01
4F070AB09
4F070AC12
4F070AC34
4F070AC36
4F070AC50
4F070AC74
4F070AC96
4F070AD02
4F070AE13
4F070AE14
4F070AE28
4F070CA03
4F070CB02
4F070CB12
4H020BA11
4J002AB052
4J002BJ002
4J002CH051
4J002EC047
4J002EV256
4J002FA042
4J002FD207
4J002FD316
4J002GH00
4J002GK02
4J002GT00
4J002HA07
4L033AB04
4L033AC03
4L033AC04
4L033BA12
4L033BA28
4L033BA39
4L033CA02
4L033CA29
(57)【要約】
【課題】パーフルオロポリエーテルリン酸エステルのエマルションを提供する。
【解決手段】
(A)下記式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物と、
(B)対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤と、
(C)水溶性増粘剤と、
(D)アルコールと、
(E)水
を含むエマルション
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~60である。nは1又は2である。]。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物と、
(B)対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤と、
(C)水溶性増粘剤と、
(D)アルコールと、
(E)水
を含むエマルション
【化1】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~60である。nは1又は2である。]。
【請求項2】
前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)の重量平均分子量が2,000~20,000の範囲である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記アルコール(D)が、炭素数1~10の水溶性アルコールである、請求項1に記載のエマルション。
【請求項4】
前記フッ素系アニオン性界面活性剤(B)の含有量が、前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~40質量部である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項5】
前記水溶性増粘剤(C)の含有量が、前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、0.3~40質量部である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項6】
前記アルコール(D)の含有量が、前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~100質量部である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項7】
請求項1に記載のエマルションを含む撥水撥油剤。
【請求項8】
請求項1に記載のエマルションを含む繊維処理剤。
【請求項9】
請求項1に記載のエマルションを含む離型剤。
【請求項10】
前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)と前記フッ素系アニオン性界面活性剤(B)と前記水溶性増粘剤(C)と前記アルコール(D)を含む分散液を調製する工程、及び
前記分散液と前記水(E)を混合する工程
を含む、請求項1に記載のエマルションの製造方法。
【請求項11】
前記分散液100質量部に対する前記水(E)の混合量が、100~10000質量部である、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量のパーフルオロポリエーテル化合物(例えば、重量平均分子量が2000以上)は、一般的に、フッ素系溶媒には溶解するものの、水や他の有機溶媒等に対する溶解性が非常に低い。そのため、パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物を調製する際には、フッ素系溶媒を用いることが通例である。しかし、フッ素系溶媒は高価である上に、環境負荷もあることから、水性組成物が求められていた。
【0003】
パーフルオロポリエーテル油を含むエマルションを調製する技術としては、特許文献1や特許文献2等が知られているが、いずれも超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーが必要であり、簡便な方法とは言いがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第1995/18194号
【特許文献2】特開2020-158600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パーフルオロポリエーテルリン酸エステルのエマルションを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル、対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤、水溶性増粘剤、アルコール、及び水を用いると、パーフルオロポリエーテルリン酸エステルのエマルションを調製できることを見出した。
【0007】
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す広い態様の発明を含むものである。
[項1]
(A)下記式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物と、
(B)対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤と、
(C)水溶性増粘剤と、
(D)アルコールと、
(E)水
を含むエマルション
【化1】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~60である。nは1又は2である。]。
[項2]
前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)の重量平均分子量が2,000~20,000の範囲である、項1に記載のエマルション。
[項3]
前記アルコール(D)が、炭素数1~10の水溶性アルコールである、項1又は2に記載のエマルション。
[項4]
前記フッ素系アニオン性界面活性剤(B)の含有量が、前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~40質量部である、項1~3のいずれか1項に記載のエマルション。
[項5]
前記水溶性増粘剤(C)の含有量が、前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、0.3~40質量部である、項1~4のいずれか1項に記載のエマルション。
[項6]
前記アルコール(D)の含有量が、前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~100質量部である、項1~5のいずれか1項に記載のエマルション。
[項7]
項1~5のいずれか1項に記載のエマルションを含む撥水撥油剤。
[項8]
項1~5のいずれか1項に記載のエマルションを含む繊維処理剤。
[項9]
項1~5のいずれか1項に記載のエマルションを含む離型剤。
[項10]
前記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)と前記フッ素系アニオン性界面活性剤(B)と前記水溶性増粘剤(C)と前記アルコール(D)を含む分散液を調製する工程、及び
前記分散液と前記水(E)を混合する工程
を含む、項1~5のいずれか1項に記載のエマルションの製造方法。
[項11]
前記分散液100質量部に対する前記水(E)の混合量が、100~10000質量部である、項10に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、パーフルオロポリエーテルリン酸エステルのエマルションを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<エマルション>
本発明に係るエマルションは、以下の(A)~(E)を含む。
(A)下記式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物。
【化2】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~60である。nは1又は2である。]
(B)対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤。
(C)水溶性増粘剤。
(D)アルコール。
(E)水。
【0010】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0011】
(A)式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物
【0012】
【化3】
【0013】
Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。炭素数1~4のパーフルオロアルキル基としては例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基等が挙げられる。
【0014】
Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基であり、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0015】
Yで表される炭素数1~10の2価の基としては、ヘテロ原子を含んでいてもよく、芳香族基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ環基、脂肪族基、脂環式基であってもよい。具体的には、例えば以下の基が挙げられる。
【0016】
-(CHN1- (N1=1~10)
-A-(CHN2- (N2=1~5)
-B-(CHN3- (N3=1~5)
-CHCH(OCHCHN4- (N4=1~4)
-BCO(OCHCHN5- (N5=1~4)
(式中、Aは、-O-CO-、-CO-O-、-CONH-又は-NHCO-を示す。Bは、炭素数1~3のアルキル基(メチル、エチル、プロピル)、炭素数1~4のアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)からなる群から選ばれる置換基を1~3個有していてもよいフェニレンを示す。)
【0017】
好ましいYで表される炭素数1~10の2価の基としては、以下の構造の二価の基が挙げられる。
【0018】
-(CHN1- (N1=1~10)
-CONH-(CHN2- (N2=1~5)
-CO-O-(CHN2- (N2=1~5)
【0019】
mは5~60、好ましくは10~50、より好ましくは15~35である。
nは1又は2である。
【0020】
本発明のエマルションにおいては、上記式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)を1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)として、式(I)におけるnが、n=1の化合物とn=2の化合物を混合して使用することもできる。
【0021】
上記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましく、2,500以上であることがより好ましく、3,000以上であることが特に好ましい。また、重量平均分子量が20,000以下であることが好ましく、15,000以下であることがより好ましく、12,000以下であることがさらに好ましく、10,000以下であることがさらにより好ましく、8,000以下であることが特に好ましく、5,000以下であることが最も好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー等、従来公知の方法で測定することができる。
【0022】
また、上記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)は、塩基性金属化合物、アミン化合物、アンモニア等と反応させることによって、金属塩、アミン塩、アンモニウム塩等を形成することができ、これらの塩も上記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)と同様の有用性を有する。金属塩の種類としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等が挙げられる。金属塩を形成する金属原子としては、具体的には、Li、Na、K、Ca、Mg、Cu、Co、Ni、Zn、Mn、Fe、Pb、Hg、Zr等を例示できる。アミン塩又はアンモニウム塩を形成するアミン化合物又はアンモニアとしては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピリジン等が挙げられる。
【0023】
上記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)の具体例としては、例えば以下が挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
【化4】
【0025】
[式中、mは5~60である。]
【0026】
【化5】
【0027】
[式中、mは5~60である。]
【0028】
【化6】
【0029】
[式中、mは5~60である。]
【0030】
【化7】
【0031】
[式中、mは5~60である。]
【0032】
【化8】
【0033】
[式中、mは5~60である。]
【0034】
【化9】
【0035】
[式中、mは5~60である。]
【0036】
パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)は、市販品として入手することもでき、また公知の方法により製造することもできる。例えば、下記式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールの水酸基をリン酸エステル化することにより得られる。
【0037】
【化10】
【0038】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~60である。]
【0039】
上記式(II)において、Rf、X、Y、mは、上記式(I)と同様のものが用いられる。
【0040】
上記式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールは、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましく、1,500以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、2,500以上であることが特に好ましく、3,000以上であることが最も好ましい。また、重量平均分子量が20,000以下であることが好ましく、15,000以下であることがより好ましく、12,000以下であることがさらに好ましく、10,000以下であることがさらにより好ましく、8,000以下であることが特に好ましく、5,000以下であることが最も好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー等、従来公知の方法で測定することができる。
【0041】
上記式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールは、市販品として入手することもでき、また公知の方法により製造することもできる。式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールは、例えば米国特許公報3293306号等に開示されている方法に従って合成することができる。
【0042】
また、式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールの水酸基をリン酸エステル化する方法についても、公知の方法を用いることができる。例えば、五酸化二リン(P)等を用いることで、得ることができる。
【0043】
本発明のエマルションにおけるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)の含有量は、乳化安定性の観点から、エマルション全量100質量%に対して0.2~40質量%であることが好ましく、0.4~30質量%であることがより好ましく、1~25質量%であることがさらに好ましく、2~20質量%であることが特に好ましく、5~15質量%であることが最も好ましい。
【0044】
(B)対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤
対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤(B)としては、フルオロカーボン系の界面活性剤であって、例えばパーフルオロアルキル基やパーフルオロアルケニル基等を有する界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤(B)としては、例えば、以下の(i)~(iv)が挙げられる。この中でも、カルボン酸塩(i)又はスルホン酸塩(ii)が好ましい。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
(i)下記式で表されるカルボン酸塩
RfCOOM
(式中、Rfはフルオロ有機基を示す。Mはアルカリ金属、アミン塩基、又はアンモニウム塩基を示す。)
【0046】
(ii)下記式で表されるスルホン酸塩
RfSO
(式中、Rfはフルオロ有機基を示す。Mはアルカリ金属、アミン塩基、又はアンモニウム塩基を示す。)
【0047】
(iii)下記式で表されるホスホン酸塩
RfPO(OM)(OM)
(式中、Rfはフルオロ有機基を示す。Mは水素原子、アルカリ金属、アミン塩基、又はアンモニウム塩基を示す。Mはアルカリ金属、アミン塩基、又はアンモニウム塩基を示す。)
【0048】
(iv)下記式で表されるリン酸塩
RfOPO(OM)(OM)
(式中、Rfはフルオロ有機基を示す。Mは水素原子、アルカリ金属、アミン塩基、又はアンモニウム塩基を示す。Mはアルカリ金属、アミン塩基、又はアンモニウム塩基を示す。)
【0049】
Rf~Rfで表されるフルオロ有機基としては、炭素数3~20(好ましくは炭素数5~20、より好ましくは炭素数10~20)の置換若しくは無置換のフルオロ炭化水素基が好ましい。
【0050】
炭素数3~20の置換若しくは無置換のフルオロ炭化水素基としては、炭素数3~20の置換若しくは無置換のフルオロアルキル基、炭素数3~20の置換若しくは無置換のフルオロアルケニル基、炭素数3~20の置換若しくは無置換のフルオロシクロアルキル基、炭素数6~20の置換若しくは無置換のフルオロアリール基、炭素数7~20の置換若しくは無置換のフルオロアラルキル基等が挙げられる。この中でも、炭素数3~20の置換若しくは無置換のフルオロアルキル基、又は、炭素数3~20の置換若しくは無置換のフルオロアルケニル基であることが好ましく、炭素数3~20の置換若しくは無置換のパーフルオロアルキル基、又は、炭素数3~20の置換又は無置換のパーフルオロアルケニル基であることがより好ましい。
【0051】
置換基としては、ハロゲン原子、C~Cアルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、NO、NO、NH、CN、OH、SH、COOH、CONH、NHCOCH、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル等が挙げられる。
【0052】
また、Rf~Rfにおいて、フルオロ炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていても良い。ヘテロ原子の数は、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個、とすることができる。フルオロ炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていている場合、フルオロ炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-S-、-SO-、-(C=O)-、-(C=O)O-、-O(C=O)-、-NH(C=O)-、-(C=O)NH-、-NH(C=O)O-、-O(C=O)NH-等の基の少なくとも1種を有し、フルオロ炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。Rf~Rfにおいて、フルオロ炭化水素基がヘテロ原子で置換されていることにより、Rf~Rfがヘテロ環を有する構造となっていても良い。
【0053】
Rf~Rfで表されるフルオロ有機基が、炭素数3~20の置換フルオロ炭化水素基である場合、1個以上のエーテル結合(-O-)を有することが好ましい。
【0054】
~Mにおけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アミン塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピリジン等が挙げられる。なお、アルカリ金属、アミン塩基、又はアンモニウム塩基からなる対カチオンについては、上記M~Mがすべて水素原子である酸化合物(遊離酸)に対して、中和反応を行うことで導入(塩形成)しても良い。
【0055】
上記フッ素系アニオン性界面活性剤(B)としては、例えば、フタージェント100、フタージェント110、フタージェント150(以上、株式会社ネオス製)、サーフロンS-211(AGCセイケミカル株式会社製)、Zonyl TBS(DuPont社製)、メガファックF-410、メガファックF-510(以上、DIC株式会社製)、PF-136A、PF-156A(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0056】
本発明のエマルションにおける上記フッ素系アニオン性界面活性剤(B)の含有量は、乳化安定性の観点から、エマルション全量100質量%に対して0.04~15質量%であることが好ましく、0.1~12質量%であることがより好ましく、0.2~10質量%であることがさらに好ましく、0.5~8質量%であることが特に好ましく、1~5質量%であることが最も好ましい。
【0057】
また、本発明のエマルションにおける上記フッ素系アニオン性界面活性剤(B)の含有量は、乳化安定性の観点から、上記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましく、12~35質量部であることがより好ましく、15~30質量部であることが特に好ましく、15~25質量部であることが最も好ましい。
【0058】
(C)水溶性増粘剤
本発明のエマルションに水溶性増粘剤(C)を含むことにより、エマルションの安定性をさらに向上させることができる。水溶性増粘剤を含むことでエマルションの粘度が上がり、せん断がかかりやすくなっているためと考えられる。
【0059】
水溶性増粘剤(C)としては、例えば、キチン、カルボキシメチルキチン、キトサン、ヒドロキシプロピルキトサン等のキチン系高分子;アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子;デキストラン、サクシノグルカン、プルラン、キサンタンガム等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)等のビニル系高分子;疎水変性ポリエーテルウレタン等のポリオキシエチレン系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等を挙げることができる。
【0060】
一実施形態において、水溶性増粘剤(C)は、1~20質量%水溶液の25℃における粘度が50~3500mPa・sであることが好ましく、50~1000mPa・sであることがより好ましい。上記粘度範囲であることにより、エマルションの安定性向上効果が良好となり、また取り扱いが容易であるため好ましい。ここで、粘度とはE型粘度計(E型粘度計、東機産業製TVE-25、10rpm)による測定値から算出した粘度を意味する。
【0061】
本発明のエマルションにおける上記水溶性増粘剤(C)の含有量は、乳化安定性の観点から、エマルション全量100質量%に対して0.001~7質量%であることが好ましく、0.005~5質量%であることがより好ましく、0.01~4質量%であることがさらに好ましく、0.05~3質量%であることが特に好ましく、0.1~2質量%であることが最も好ましい。
【0062】
また、本発明のエマルションにおける上記水溶性増粘剤(C)の含有量は、乳化安定性の観点から、上記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、0.3~40質量部であることが好ましく、0.5~30質量部であることがより好ましく、0.7~20質量部であることが特に好ましく、1~15質量部であることが最も好ましい。
【0063】
(D)アルコール
本発明のエマルションに用いられるアルコール(D)としては、炭素数1~10の水溶性アルコールであることが好ましく、炭素数1~8の水溶性アルコールであることがより好ましく、炭素数1~6の水溶性アルコールであることが特に好ましい。
【0064】
このようなアルコールとしては、低級アルコール、多価アルコール等が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール等の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール等の4価のアルコール;キシリトール等の5価のアルコール;ソルビトール、マンニトール等の6価のアルコール等が挙げられる。この中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)が好ましい。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0065】
本発明のエマルションにおけるアルコール(D)の含有量は、乳化安定性の観点から、エマルション全量100質量%に対して0.05~25質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.2~18質量%であることがさらに好ましく、0.5~15質量%であることが特に好ましく、1~12質量%であることが最も好ましい。
【0066】
また、本発明のエマルションにおけるアルコール(D)の含有量は、乳化安定性の観点から、上記パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、12~90質量部であることがより好ましく、15~80質量部であることが特に好ましく、15~70質量部であることが最も好ましい。
【0067】
(E)水
本発明のエマルションにおける水(E)の含有量は、乳化安定性の観点から、エマルション全量100質量%に対して50~99質量%であることが好ましく、60~97質量%であることがより好ましく、65~95質量%であることがさらに好ましく、70~92質量%であることが特に好ましく、75~90質量%であることが最も好ましい。
【0068】
(その他添加剤)
本発明のエマルションは、本発明の目的を阻害しない範囲内において、アルコール(D)以外の有機溶媒、防錆剤、触媒、抗菌剤、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、粘度調節剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、防腐剤、凍結防止剤、湿潤剤、pH調整剤、安定剤、防黴剤、耐光安定剤、耐候安定剤、中和剤、艶消し剤、乾燥促進剤、発泡剤、非粘着剤、劣化防止剤等を適宜配合してもよい。これらはそれぞれ単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの添加剤は、それぞれ、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)とフッ素系アニオン性界面活性剤(B)と水溶性増粘剤(C)とアルコール(D)の合計100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲内で用いることができる。
【0069】
<エマルションの製造方法>
本発明のエマルションは、下記(工程1)及び(工程2)を含む方法により製造することができる。
(工程1)パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)とフッ素系アニオン性界面活性剤(B)と水溶性増粘剤(C)とアルコール(D)を含む分散液を調製する工程。
(工程2)分散液と水(E)を混合する工程。
【0070】
(工程1)において、分散液における混合順序は特に限定されず、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)に対してフッ素系アニオン性界面活性剤(B)及び水溶性増粘剤(C)及びアルコール(D)を混合しても良く、他の混合順序であっても良い。また、水溶性増粘剤(C)は、水溶液として混合しても良い。水溶性増粘剤水溶液とする場合、粘度が50~1000mPa・sの範囲となるように調製するのが良い。さらに、必要に応じて、各種添加剤等を混合することができる。これらの成分を混合させ、十分に撹拌等することにより、各成分が均一に分散している状態にすることが好ましい。
【0071】
分散液におけるフッ素系アニオン性界面活性剤(B)の混合量は、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましく、12~35質量部であることがより好ましく、15~30質量部であることが特に好ましく、15~25質量部であることが最も好ましい。
【0072】
分散液における水溶性増粘剤(C)の混合量は、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、0.3~40質量部であることが好ましく、0.5~30質量部であることがより好ましく、0.7~20質量部であることが特に好ましく、1~15質量部であることが最も好ましい。
【0073】
分散液におけるアルコール(D)の混合量は、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物(A)100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、12~90質量部であることがより好ましく、15~80質量部であることが特に好ましく、15~70質量部であることが最も好ましい。
【0074】
(工程2)において、分散液と水(E)の混合方法としては、工程1により得られた分散液を撹拌しながら、水(E)を徐々に加えることが好ましい。水(E)を分散液中に徐々に加えて混合することにより、各成分を均一に分散させることが容易になる。
【0075】
(工程2)における水(E)の混合量は、分散液100質量部に対し、100~10000質量部であることが好ましく、150~3500質量部であることがより好ましく、200~2000質量部であることがさらに好ましく、250~1500質量部であることが特に好ましく、300~900質量部であることが最も好ましい。
【0076】
このようにして得られたエマルションに対し、必要に応じて、各種添加剤等を混合することができる。
【0077】
<エマルションの用途>
本発明のエマルションから得られる塗膜は、離型性、撥液性、連続離型性に優れることから、本発明のエマルションは、離型剤、撥水撥油剤、繊維処理剤等として好適に用いることができる。
【0078】
本発明のエマルションを利用して離型される成形材料又は樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンゴム、H-NBR、NBR、シリコーンゴム、EPDM、CR、NR、フッ素ゴム、SBR、BR、IIR及びIR等のゴムや、ウレタンフォーム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びFRP(ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP))等の熱硬化性樹脂等、やPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、 FRTP(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(GFRTP)、カーボン繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)、アラミド繊維強化熱可塑性樹脂(AFRTP))等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。特に、ポリウレタン、エポキシ樹脂等の樹脂用の金型の離型剤として有用である。
【0079】
また、本発明のエマルションが塗布される材料としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、SUS,鉄等の金属、PP、PE,エポキシ等の樹脂、ゴム、FRP(繊維強化プラスチック)、石膏性基材、木製基材、繊維、ガラス、複合材料等が挙げられる。本発明のエマルションは、これらの材料に対して高い撥水性及び撥油性を付与できる。
【0080】
一実施形態において、本発明のエマルションは、繊維処理剤として用いることができる。本発明のエマルションを利用して処理される線維としては、短繊維(ファイバー)、リンター、ロービング、スライバー、ヤーン、織物、編物、不織布等、いずれの形態であってもよい。繊維の素材としては、綿、亜麻、黄麻、大麻、ラミー、再生繊維セルロース、レーヨン等のセルロース繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維等が挙げられる。
【0081】
本発明のエマルションは、エマルションで処理されるべき部分に対して塗布し、乾燥させておくことにより使用することができる。なお、塗布する際に、エマルションを必要に応じて水等で希釈しても良い。希釈後濃度は、塗布方法や粘度に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、固形分濃度が0.1~5質量%となるように調製することができる。塗布方法としては、特に制限されず、例えばスプレー塗布、刷毛塗布、ロールコーター塗布、ディッピング塗布等が挙げられる。乾燥方法としては風乾又は加熱により溶媒を蒸発させて皮膜を形成する方法が挙げられる。本発明のエマルションを含む皮膜の乾燥厚みは通常、0.01~15μmであり、好ましくは0.1~5.0μmである。
【実施例0082】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
(使用材料)
・PFPEリン酸エステル1:パーフルオロポリエーテルリン酸エステル
CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]-CF(CF3)CH2OPO(OH)2(重量平均分子量4000、mは24程度。)
・FEOH-4000:パーフルオロポリエーテルモノオール(三明社製)
CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]-CF(CF3)CH2OH (重量平均分子量4000)
・FT-100:フタージェント100(フッ素系アニオン性界面活性剤、スルホン酸ナトリウム塩、株式会社ネオス製)
・FT-150:フタージェント150(フッ素系アニオン性界面活性剤、スルホン酸ナトリウム塩、株式会社ネオス製)
・FT-212M:フタージェント212M(ノニオン性界面活性剤、株式会社ネオス製)
・PVP:ポリビニルピロリドン
・キチンナノファイバー:キチンナノファイバー(スギノマシン社製、SFo-2002)
・HEX-G:ヘキシレングリコール
【0084】
<実施例1>
撹拌子が入った200mlのビーカーにPFPEリン酸エステル1(10.0g)、FT-150(2.0g)、2%キチンナノファイバー水溶液(10.0g) 、HEX-G(2.0g)を入れた。混合物をマグネチックスターラーで10分攪拌し、分散液を作製した。分散液を攪拌しながら、蒸留水(76.0g)を徐々に滴下した。PFPEリン酸エステル濃度が10wt%のエマルションを作製した。なお、2%キチンナノファイバー水溶液の粘度は東機産業製E型粘度計TVE-25(回転速度10rpm)を用いて測定した。
得られたエマルションについて、乳化後の液の外観を確認した。
また、エマルションを蒸留水で有効成分濃度が1wt%になるように希釈して塗工用サンプルとした。塗工基材としてSPCC-SBを用いた。塗工基材をアセトンで脱脂後に170℃に加熱し、スプレーガンを用いて塗工用サンプル50g/m2の量を塗布した。塗布後に170℃、1分間加熱し、評価用サンプルを作製した。得られた評価用サンプルについて、接触角、表面自由エネルギー、テープ剥離試験を実施した。結果を表1、表3に示す。
【0085】
(エマルションの外観評価)
乳化後の液を目視で確認した。
〇:きれいに乳化し、安定している。
△:乳化するが、安定性が悪く徐々に沈降する。
×:乳化できず、分層している。
【0086】
(接触角測定)
評価用サンプルについて、水、ジヨードメタン(DI)、ヘキサデカン(HD)の接触角をDMo-702(協和界面科学社製)で測定した。
【0087】
(表面自由エネルギー)
上記により測定した接触角の数値からKaelble-Uyの計算式で算出した。
【0088】
(テープ剥離試験)
評価用サンプルに対して日東電工社製のポリエステル粘着テープNo.31Bを7.5cm2貼り付け、90°でテープを剥離する際の加重をプッシュプルゲージで測定した。また、同じ場所にテープを貼り付け繰り返し剥離試験を10回繰り返した。
【0089】
<実施例2~4、比較例1~4>
表1,2に記載の組成に変更した以外は、実施例1と同様にしてエマルションを作製した。なお、10%ポリビニルピロリドン水溶液の粘度は東機産業製E型粘度計TVE-25(回転速度10rpm)を用いて測定した。その後、実施例1と同様に、乳化後の液の外観、接触角、表面自由エネルギー、テープ剥離試験について評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
実施例1~4において、パーフルオロポリエーテルリン酸エステルを対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤と水溶性増粘剤とアルコールがある状態で攪拌し、分散液を作製後に水を滴下することで、安定なエマルションが得られた。実施例1と比較例1から、パーフルオロポリエーテルリン酸エステルをパーフルオロポリエーテルモノオールに変更した場合には、安定なエマルションが得られないことが明らかとなった。実施例1と比較例2から、フッ素系界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を用いた場合には、安定なエマルションが得られないことが明らかとなった。また、対カチオンを有するフッ素系アニオン性界面活性剤を入れない場合(比較例3)にはエマルションは得られなかった。さらに、水溶性増粘剤及びアルコールを含まない場合(比較例4)にもエマルションが得られないことが明らかとなった。
【0094】
塗工評価においては、実施例1,3でいずれも表面自由エネルギーが16mN/m未満と十分に低い値を示した。テープ剥離試験では、10回繰り返し後においても3N未満となり、繰り返し時の性能維持性を確認できた。