(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024413
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】粒度分布測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20250213BHJP
【FI】
G01N15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128498
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋口 昇平
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 雅人
(72)【発明者】
【氏名】夏井 琢哉
(57)【要約】
【課題】混合粒度堆積体の全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出可能な粒度分布測定方法を提供する。
【解決手段】第1種類及び第2種類の粒子のそれぞれについて単一粒度試料を用意し、単一粒度試料の第1粒径分布を算出するステップST1と、単一粒度試料の第1円形度分布を算出するステップST2と、第1種類及び第2種類の粒子が配合された混合粒度堆積体の第2粒径分布を算出するステップST3と、混合粒度堆積体の第2円形度分布を算出するステップST4と、第2粒径分布を近似する第1粒径分布の線形和の第1係数を算出するステップST5と、第2円形度分布を近似する第1円形度分布の線形和の第2係数を算出するステップST6と、表面確率モデルを用いて、第2係数から、混合粒度堆積体の全体個数分布を算出するステップST8と、全体個数分布と質量比とに基づき、混合粒度堆積体の全体質量分布を算出するステップST9と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度の大きさで決まる区分である粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、第1種類の粒子については、複数の粒度区分について用意し、第1種類とは異なる種類である第2種類の粒子については、前記複数の粒度区分のうちの1つの粒度区分について用意し、それぞれの前記単一粒度試料の表層を、前記単一粒度試料の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記単一粒度試料の前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布を、前記第1種類の粒子については、前記複数の粒度区分毎に算出し、前記第2種類の粒子については、前記1つの粒度区分について算出する第1粒径分布算出ステップと、
前記単一粒度試料の前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第1円形度分布を、前記第1種類の粒子については、前記複数の粒度区分毎に算出し、前記第2種類の粒子については、前記1つの粒度区分について算出する第1円形度分布算出ステップと、
前記複数の粒度区分に属する前記第1種類の粒子と前記1つの粒度区分に属する前記第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体の表層を、前記混合粒度堆積体の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記混合粒度堆積体の前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布を算出する第2粒径分布算出ステップと、
前記混合粒度堆積体の前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第2円形度分布を算出する第2円形度分布算出ステップと、
前記第2粒径分布を、前記第1種類の粒子について算出した前記複数の粒度区分毎の前記第1粒径分布と、前記第2種類の粒子について算出した前記1つの粒度区分についての前記第1粒径分布との線形和で近似し、前記線形和の係数である第1係数を算出する第1係数算出ステップと、
前記第2円形度分布を、前記第1種類の粒子について算出した前記複数の粒度区分毎の前記第1円形度分布と、前記第2種類の粒子について算出した前記1つの粒度区分についての前記第1円形度分布との線形和で近似し、前記線形和の係数である第2係数を算出する第2係数算出ステップと、
表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルを用いて、前記第2係数から、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分と、前記混合粒度堆積体の前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する全体個数分布算出ステップと、
前記全体個数分布と、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分についての質量比とに基づき、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する全体質量分布算出ステップと、
を有し、
前記第1係数算出ステップでは、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分のうち、前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分と異なる粒度区分に対する前記第1係数のみを確定し、
前記第2係数算出ステップでは、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分のうち、前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分と異なる粒度区分に対する前記第2係数が、前記第1係数算出ステップで確定した前記第1係数に比例するという条件下で、前記第2係数を算出する、
粒度分布測定方法。
【請求項2】
前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布を算出し、
前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出する、請求項1に記載の粒度分布測定方法。
【請求項3】
前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第1粒径分布を算出し、
前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第2粒径分布を算出する、請求項1に記載の粒度分布測定方法。
【請求項4】
粒度の大きさで決まる区分である粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、第1種類の粒子及び前記第1種類とは異なる種類である第2種類の粒子のそれぞれについて用意し、それぞれの前記単一粒度試料の表層を、前記単一粒度試料の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記単一粒度試料の前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第1円形度分布を、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分毎に算出する第1円形度分布算出ステップと、
前記単一粒度試料の前記粒度区分にそれぞれ属する前記第1種類の粒子と前記第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体の表層を、前記混合粒度堆積体の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記混合粒度堆積体の前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第2円形度分布を算出する第2円形度分布算出ステップと、
前記第2円形度分布を、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分毎に算出した前記第1円形度分布の線形和で近似し、前記線形和の係数を算出する係数算出ステップと、
表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルを用いて、前記係数から、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分と、前記混合粒度堆積体の前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する全体個数分布算出ステップと、
前記全体個数分布と、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分についての質量比とに基づき、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子の前記粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する全体質量分布算出ステップと、
を有する、粒度分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱、ペレット等の粒子の粒度分布を測定する方法に関する。特に、本発明は、互いに種類の異なる第1種類の粒子(例えば、焼結鉱)と第2種類の粒子(例えば、ペレット)とが配合された混合粒度堆積体(堆積した粒子群)について、粒度区分(粒径の程度を表す指標である粒度の大きさで決まる区分)と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を、粒子の種類を区別して精度良く算出可能な粒度分布測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスや焼結鉱等の高炉原料は、ベルトコンベア上に堆積した状態で搬送され、高炉に装入される。この際、原料を構成する粒子の粒度(粒径の程度を表す指標)が高炉操業の生産性に影響を及ぼすことが知られている。このため、原料の搬送過程で、原料の粒度分布を連続的に測定して、品質を維持することが望ましい。
ここで、焼結鉱の生産量が足りない場合には、ペレットが補助的に原料として加えられ、焼結鉱と混合した状態で搬送される場合がある。この場合、焼結鉱及びペレットの粒度分布は、たとえ同一の粒度区分であっても区別可能に測定できることが望ましい。
【0003】
高炉原料の粒度は、一般的に、ベルトコンベアから一定時間間隔で試料を採取(サンプリング)し、4時間又は8時間毎に試料を縮分した後、篩にかけることで測定される。したがって、原料の品質のばらつきや生産設備の不具合などで、原料の粒度分布が短時間で変動していたとしても、サンプリング後の篩を用いた間欠的な測定では、時間間隔が粗くなってしまうため、粒度分布の時間的な変動を正確に捉えることができない。
【0004】
粒子の粒径を非接触で連続的に測定可能な方法しては、例えば、非特許文献1に記載の方法が提案されている。非特許文献1に記載の方法は、線状のレーザ光を出射するレーザ光源とエリアスキャンカメラとが一体となった光切断方式の3Dカメラを用いた測定方法である。
非特許文献1に記載の方法では、ベルトコンベアに接触させたロータリエンコーダ等の移動距離検出手段を用いて、ベルトコンベアが一定距離進む毎に、ベルトコンベア上に堆積された粒子の断面上縁の位置を、3Dカメラによって測定することで、各画素の画素値が基準位置からの距離(例えば、3Dカメラからの距離)を示す距離画像(3D画像や深さ画像と称される場合もある)を生成する。積み重なる粒子の境界付近において、照射されたレーザ光が途切れて暗くなることや、粒子の凹凸の段差が大きくなることから、距離画像において、粒子の境界付近に相当する画素領域の画素値は、他の画素領域の画素値と異なる値になり易い。非特許文献1に記載の方法では、この特性を利用して粒子の境界を決定して各粒子を識別し、各粒子の粒径を算出している。積み重なる粒子のうち、他の粒子によって隠されている部分を有する粒子の寸法は、実際の寸法よりも小さくなる。このため、非特許文献1に記載の方法では、3Dカメラで算出できる各粒子の高さ情報(ベルトコンベアの底部からの高さ)を用いて、表層の粒子(以下、適宜「表層粒子」という)を優先的に抽出し、距離画像における各表層粒子を楕円と見なした場合の短軸径を粒径としている。
【0005】
粒子の粒径を非接触で連続的に測定可能な方法しては、非特許文献1に記載の方法と同様に3Dカメラを用いた、非特許文献2や特許文献1に記載の方法も提案されている。
非特許文献2及び特許文献1には、各粒子を識別するためのエッジ検出方法や表層粒子を認識する画像処理方法について詳しく記載されており、特に特許文献1には、測定をより高速化する方法も記載されている。
【0006】
非特許文献2に記載の方法では、堆積した粒子について取得した距離画像に画像処理を施して、重なりの少ない表層にある表層粒子を抽出し、各表層粒子の粒径を篩のメッシュサイズによって決まる粒度区分に振り分けて、粒度区分と粒度区分毎の表層粒子の個数との関係である表層粒子の個数分布(表面個数分布)を算出する。そして、非特許文献2に記載の方法では、粒度に応じた表層への現れやすさや見えやすさの度合いを表すモデル、すなわち、表層粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布(全体個数分布)を推定するモデルである表面確率モデルを用いて、表層粒子だけではなく隠れた粒子も含む、堆積した粒子全体の個数分布を推定する。さらに、非特許文献2に記載の方法では、粒度区分毎の体積比(又は質量比)を用いて、堆積した粒子全体の質量割合の分布(全体質量分布)を推定している。
【0007】
本発明者らは、非特許文献2に記載の方法を、複数の粒度区分に属する粒子(コークス)が所定の質量割合で配合されて堆積した混合粒度堆積体に適用し、その全体質量分布が精度良く推定できるか否かの確認試験を行った。
この確認試験の結果、粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料であったとしても、コークスや焼結鉱等の不定形粒子の場合、表層粒子の粒径は粒子の姿勢によって変わるため、単一粒度試料の粒径分布が粒度区分よりも広がることが分かった。このため、3Dカメラで測定した表層粒子の粒径を篩によって決まる粒度区分に振り分けて、粒度区分毎に表層粒子の個数を集計し、非特許文献2に記載の方法を適用しただけでは、粒度分布(全体質量分布)がぼけて、篩によって測定した結果と精度良く合致しないことが分かった。
【0008】
そこで、本発明者らは、混合粒度堆積体の粒度分布を精度良く算出可能な特許文献2に記載の方法を提案している。
特許文献2に記載の方法では、混合粒度堆積体を構成する粒子が属する複数の粒度区分について、単一粒度試料(粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料)をそれぞれ用意し、各単一粒度試料について表層の粒子の粒径を測定することで、単一粒度試料の表層の粒子の粒径と個数(又は、面積若しくは体積)との関係を示す第1粒径分布を算出する。また、前記複数の粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度堆積体について表層の粒子の粒径を測定することで、混合粒度堆積体の表層の粒子の粒径と個数(又は、面積若しくは体積)との関係を示す第2粒径分布を算出する。さらに、算出した第2粒径分布を、算出した第1粒径分布の線形和で近似し、この線形和の各係数を、混合粒度堆積体が複数の粒度区分の単一粒度試料の組み合わせで構成されていると考えた場合の、混合粒度堆積体の表層の粒子の異なる粒度区分の個数割合であると見なす。そして、以降は、その係数を用いて非特許文献2に記載の方法と同様の手順で全体質量分布を算出することで、篩を用いて測定した結果とよく合致する精度の良い算出が可能である。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、焼結鉱とペレットなど、互いに種類の異なる粒子が配合された混合粒度堆積体の粒度分布を、種類を区別して算出することについて、特に考慮されていない。
【0009】
本発明者らは、特許文献2に記載の方法を、複数の粒度区分に属する第1種類の粒子と、この複数の粒度区分のうちの1つの粒度区分に属する、第1種類と異なる第2種類の粒子とが所定の質量割合で配合されて堆積した混合粒度堆積体に適用し、その全体質量分布が種類毎に精度良く算出できるか否かの確認試験を行った。
具体的には、10mm<粒度≦15mm(すなわち、メッシュサイズが15mmの篩は通過するが10mmの篩は通過しない粒度)、15mm<粒度≦25mm(すなわち、メッシュサイズが25mmの篩は通過するが15mmの篩は通過しない粒度)、25mm<粒度≦35mm(すなわち、メッシュサイズが35mmの篩は通過するが25mmの篩は通過しない粒度)、35mm<粒度≦50mm(すなわち、メッシュサイズが50mmの篩は通過するが35mmの篩は通過しない粒度)の計4つの粒度区分に属する第1種類の粒子としての焼結鉱と、上記4つの粒度区分のうちの1つの粒度区分である10mm<粒度≦15mmの粒度区分に属する第2種類の粒子としてのペレットとが所定の質量割合で配合されて堆積した混合粒度堆積体に、特許文献2に記載の方法を適用する確認試験を行った。
以下、本明細書では、ペレット(第2種類の粒子)が属する10mm<粒度≦15mmの粒度区分を「粒度区分1」と称し、焼結鉱(第1種類の粒子)が属する10mm<粒度≦15mmの粒度区分を「粒度区分2」、15mm<粒度≦25mmの粒度区分を「粒度区分3」、25mm<粒度≦35mmの粒度区分を「粒度区分4」、35mm<粒度≦50mmの粒度区分を「粒度区分5」とそれぞれ称する。粒度区分1及び粒度区分2は、粒度区分に属する粒度の範囲としては同一であるが、粒子の種類が異なるために、別の名称を付している。
【0010】
図1は、上記の確認試験で用いた粒度区分1~5の各単一粒度試料の粒径分布(第1粒径分布)を算出した結果の一例を示す。具体的には、
図1では、粒度区分1~5の各単一粒度試料の表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布を纏めて図示している。また、
図2は、上記の確認試験で用いた混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果の一例を示す。
図2(a)は、粒度区分1のペレットが10%、粒度区分2の焼結鉱が25%、粒度区分3の焼結鉱が25%、粒度区分4の焼結鉱が25%、粒度区分5の焼結鉱が15%の質量割合で配合された混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
図2(b)は、粒度区分1のペレットが20%、粒度区分2の焼結鉱が25%、粒度区分3の焼結鉱が25%、粒度区分4の焼結鉱が20%、粒度区分5の焼結鉱が10%の質量割合で配合された混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
図2において「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)であり、「3D」で示すグラフは3Dカメラを用いた特許文献2に記載の方法で算出されたデータである。
図1に示すように、粒度区分1のペレットの第1粒径分布と、粒度区分2(粒度区分に属する粒度の範囲としては粒度区分1と同一)の焼結鉱の第1粒径分布とは、ほとんど重なっているため、両者を精度良く区別できない。これに起因して、
図2に示すように、特許文献2に記載の方法で算出される混合粒度堆積体の全体質量分布は、篩によって測定した結果と精度良く合致しないことが分かった。
【0011】
以上に述べたように、特許文献2に記載の方法には、互いに種類の異なる焼結鉱等の第1種類の粒子とペレット等の第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体において、特に第1種類の粒子の中に第2種類の粒子と同一の粒度区分に属する粒子が存在する場合に、混合粒度堆積体の全体質量分布を種類を区別して算出する手法が開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019-174155号公報
【特許文献2】特開2022-172620号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】M. J. Thurley, "Automated, On-line, Calibration-Free, Particle Size Measurement using 3D Profile Data", Measurement and Analysis of Blast Fragmentation: Workshop Hosted by FRAGBLAST 10 - The 10th International Symposium on Rock Fragmentation by Blasting, 2013, pp.23-32
【非特許文献2】M. J. Thurley, "Three Dimensional Data Analysis for the Separation and Sizing of Rock Piles in Mining", Ph.D. Thesis, Monash University, December 2002, chapter 4, pp.27-60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、互いに種類の異なる第1種類の粒子と第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体について、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を、粒子の種類を区別して精度良く算出可能な粒度分布測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明者らは、特許文献2に記載の方法に改良を加えるべく、特許文献2に記載の方法で取得される距離画像から算出できる粒子の円形度を利用することに着眼して、鋭意検討を行った。具体的には、第1種類の粒子及び第2種類の粒子のそれぞれについて特許文献2に記載の方法と同様の単一粒度試料を用意し、各単一粒度試料の表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第1円形度分布を算出した。また、第1種類の粒子と第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体について、混合粒度堆積体の表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第2円形度分布を算出した。そして、算出した第2円形度分布を、算出した第1円形度分布の線形和で近似し、この線形和の各係数を、混合粒度堆積体が各単一粒度試料の組み合わせで構成されていると考えた場合の、混合粒度堆積体の表層の粒子の各粒度区分の個数割合であると見なせば、以降はその係数を用いて特許文献2に記載の方法と同様の手順で全体質量分布を算出しても、粒子の種類を区別して、篩を用いて測定した結果とよく合致する精度の良い算出が可能であることを知見した。
本発明は、上記本発明者らの知見により完成したものである。
なお、本発明としては、第2円形度分布を近似する第1円形度分布の線形和の係数(第2係数)を算出する際に、特許文献2に記載の方法で用いた第2粒径分布を近似する第1粒径分布の線形和の係数(第1係数)を一部利用する方法(第1の方法)と、第2円形度分布を近似する第1円形度分布の線形和の係数を算出する際に、特許文献2に記載の方法で用いた第2粒径分布を近似する第1粒径分布の線形和の係数を利用しない方法(第2の方法)とが提供される。
【0016】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、第1の方法として、粒度の大きさで決まる区分である粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、第1種類の粒子については、複数の粒度区分について用意し、第1種類とは異なる種類である第2種類の粒子については、前記複数の粒度区分のうちの1つの粒度区分について用意し、それぞれの前記単一粒度試料の表層を、前記単一粒度試料の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記単一粒度試料の前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布を、前記第1種類の粒子については、前記複数の粒度区分毎に算出し、前記第2種類の粒子については、前記1つの粒度区分について算出する第1粒径分布算出ステップと、前記単一粒度試料の前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第1円形度分布を、前記第1種類の粒子については、前記複数の粒度区分毎に算出し、前記第2種類の粒子については、前記1つの粒度区分について算出する第1円形度分布算出ステップと、前記複数の粒度区分に属する前記第1種類の粒子と前記1つの粒度区分に属する前記第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体の表層を、前記混合粒度堆積体の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記混合粒度堆積体の前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布を算出する第2粒径分布算出ステップと、前記混合粒度堆積体の前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第2円形度分布を算出する第2円形度分布算出ステップと、前記第2粒径分布を、前記第1種類の粒子について算出した前記複数の粒度区分毎の前記第1粒径分布と、前記第2種類の粒子について算出した前記1つの粒度区分についての前記第1粒径分布との線形和で近似し、前記線形和の係数である第1係数を算出する第1係数算出ステップと、前記第2円形度分布を、前記第1種類の粒子について算出した前記複数の粒度区分毎の前記第1円形度分布と、前記第2種類の粒子について算出した前記1つの粒度区分についての前記第1円形度分布との線形和で近似し、前記線形和の係数である第2係数を算出する第2係数算出ステップと、表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルを用いて、前記第2係数から、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分と、前記混合粒度堆積体の前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する全体個数分布算出ステップと、前記全体個数分布と、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分についての質量比とに基づき、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分及び前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する全体質量分布算出ステップと、を有し、前記第1係数算出ステップでは、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分のうち、前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分と異なる粒度区分に対する前記第1係数のみを確定し、前記第2係数算出ステップでは、前記第1種類の粒子の前記複数の粒度区分のうち、前記第2種類の粒子の前記1つの粒度区分と異なる粒度区分に対する前記第2係数が、前記第1係数算出ステップで確定した前記第1係数に比例するという条件下で、前記第2係数を算出する、粒度分布測定方法を提供する。
【0017】
本発明(本発明に係る第1の方法及び後述の第2の方法)において、「距離画像」は、各画素の画素値が基準位置からの距離(例えば、距離画像取得手段からの距離)を示す画像を意味し、単一粒度試料の「距離画像」は、基準位置から単一粒度試料の表層の粒子までの距離を示す画像であり、混合粒度堆積体の「距離画像」は、基準位置から混合粒度堆積体の表層の粒子までの距離を示す画像である。距離画像を取得する距離画像取得手段としては、対象となる表層までの距離を取得できる手段であれば、特に限定されるものではないが、例えば、線状のレーザ光を出射するレーザ光源とエリアスキャンカメラとが一体となった光切断方式の3Dカメラを挙げることができる。基準位置は、任意の位置に設定することができ、例えば、距離画像取得手段の位置を基準位置とすることができる。「距離画像」を取得することができれば、例えば非特許文献2に記載の方法等を用いることにより、距離画像取得手段に接続された演算装置等で、「距離画像」に基づいた演算を行うことで、粒径や粒子の個数や粒子の円形度を算出することが可能である。
また、「円形度」は、距離画像に基づいて算出した、粒子の画素単位の面積をAとし、粒子の画素単位の周囲長をPとし、円周率をπとした場合、以下の式(1)で表される値である。円形度は、その値が1に近いほど、粒子の形状(平面視形状)が円形に近いことを示す指標である。
円形度=4π・A/P2 ・・・(1)
また、「表面確率モデル」は、非特許文献2に記載されている表面確率モデル(Surface Probability Model)と同義であり、粒度に応じた表層への現れやすさや見えやすさの度合いを表すモデルである。換言すれば、表面確率モデルは、表層の粒子の個数分布と堆積した粒子全体の個数分布とを関係付けるモデルであり、表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定するモデルである。
さらに、「質量比」は、一の粒度区分に属する粒子について測定した粒子1個当たりの平均質量を基準質量とした場合に、他の粒度区分に属する粒子について測定した粒子1個当たりの平均質量を基準質量で除算した値を意味する。
【0018】
本発明に係る第1の方法によれば、第2係数算出ステップにおいて、第2円形度分布算出ステップで算出された混合粒度堆積体に関する第2円形度分布が、第1円形度分布算出ステップで算出された各単一粒度試料から得られた第1円形度分布の線形和で近似され、線形和の係数である第2係数が算出される。この線形和の係数は、前述の本発明者の知見により、混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分に属する表層の粒子の個数割合であると見なすことができる。このため、以降は、特許文献2に記載の方法と同様に、全体個数分布算出ステップにおいて、表面確率モデルを用いて、算出された第2係数から、粒度区分(第1種類の粒子の複数の粒度区分及び第2種類の粒子の1つの粒度区分)と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布が算出され、全体質量分布算出ステップにおいて、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布が算出される。
【0019】
ここで、本発明に係る第1の方法では、特許文献2に記載の方法と同様に、第1係数算出ステップにおいて、第2粒径算出ステップで算出された混合粒度堆積体に関する第2粒径分布が、第1粒径分布算出ステップで算出された各単一粒度試料から得られた第1粒径分布の線形和で近似され、線形和の係数である第1係数が算出される。この算出した第1係数が、第2係数算出ステップにおける第2係数の算出に利用される。ただし、この算出された第1係数のうち、第2種類の粒子の1つの粒度区分に対する第1係数(当該粒度区分に属する第2種類の粒子のみからなる単一粒度試料から得られた第1粒径分布に付される第1係数)と、第2種類の粒子の1つの粒度区分と同一(粒度区分に属する粒度の範囲が同一)の第1種類の粒子の粒度区分に対する第1係数(当該粒度区分に属する第1種類の粒子のみからなる単一粒度試料から得られた第1粒径分布に付される第1係数)とは、
図1を参照して前述したように第1係数が付される双方の第1粒径分布がほとんど重なるため、数値的に不安定であり、信頼性に乏しい。このため、本発明に係る第1の方法において、第1係数算出ステップでは、第1種類の粒子の複数の粒度区分のうち、第2種類の粒子の1つの粒度区分と異なる粒度区分に対する第1係数のみを、実際に用いるものとして確定する。そして、第2係数算出ステップでは、第1種類の粒子の複数の粒度区分のうち、第2種類の粒子の1つの粒度区分と異なる粒度区分に対する第2係数が、第1係数算出ステップで確定した第1係数に比例するという条件下で、第2係数を算出する。これにより、精度良く第2係数を算出することが可能である。
以上のように、本発明に係る第1の方法では、第2円形度分布を近似する第1円形度分布の線形和の係数(第2係数)を、混合粒度堆積体が各単一粒度試料の組み合わせで構成されていると考えた場合の、混合粒度堆積体の表層の粒子の各粒度区分の個数割合であると見なし、この係数を用いて最終的に全体質量分布を算出するため、前述の本発明者らの知見通り、全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出することが可能である。
【0020】
以上に述べた本発明に係る第1方法の第1粒径分布算出ステップ及び第2粒径分布算出ステップでは、それぞれ、表層の粒子の粒径と面積との関係を示す粒径分布(第1粒径分布及び第2粒径分布)を算出している。しかしながら、本発明者らの知見によれば、粒径分布で示される関係の一方のパラメータは必ずしも表層の粒子の面積に限られるものではなく、代わりに、表層の粒子の粒径と個数又は体積との関係を示す粒径分布を用いても、全体質量分布を精度良く算出可能である。
したがって、前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布を算出し、前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出してもよい。
或いは、前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第1粒径分布を算出し、前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第2粒径分布を算出してもよい。
【0021】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第2の方法として、粒度の大きさで決まる区分である粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、第1種類の粒子及び前記第1種類とは異なる種類である第2種類の粒子のそれぞれについて用意し、それぞれの前記単一粒度試料の表層を、前記単一粒度試料の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記単一粒度試料の前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第1円形度分布を、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分毎に算出する第1円形度分布算出ステップと、前記単一粒度試料の前記粒度区分にそれぞれ属する前記第1種類の粒子と前記第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体の表層を、前記混合粒度堆積体の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記混合粒度堆積体の前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の円形度と個数との関係を示す第2円形度分布を算出する第2円形度分布算出ステップと、前記第2円形度分布を、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分毎に算出した前記第1円形度分布の線形和で近似し、前記線形和の係数を算出する係数算出ステップと、表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルを用いて、前記係数から、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分と、前記混合粒度堆積体の前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する全体個数分布算出ステップと、前記全体個数分布と、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子のそれぞれの前記粒度区分についての質量比とに基づき、前記第1種類の粒子及び前記第2種類の粒子の前記粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する全体質量分布算出ステップと、を有する、粒度分布測定方法を提供する。
【0022】
本発明に係る第2の方法によれば、係数算出ステップにおいて、第2円形度分布算出ステップで算出された混合粒度堆積体に関する第2円形度分布が、第1円形度分布算出ステップで算出された各単一粒度試料から得られた第1円形度分布の線形和で近似され、線形和の係数が算出される。この線形和の係数は、前述の本発明者の知見により、混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分に属する表層の粒子の個数割合であると見なすことができる。このため、以降は、特許文献2に記載の方法と同様に、全体個数分布算出ステップにおいて、表面確率モデルを用いて、算出された係数から、粒度区分(第1種類の粒度区分及び第2種類の粒子の粒度区分)と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布が算出され、全体質量分布算出ステップにおいて、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布が算出される。このため、全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、互いに種類の異なる第1種類の粒子と第2種類の粒子とが配合された混合粒度堆積体について、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を、粒子の種類を区別して精度良く算出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】混合粒度堆積体に異なる種類の粒子が配合されている場合における特許文献2に記載の方法の測定精度を確認する確認試験で用いた粒度区分1~5の各単一粒度試料の粒径分布(第1粒径分布)を算出した結果の一例を示す。
【
図2】確認試験で用いた混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果の一例を示す。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る粒度分布測定方法が有する工程を概略的に示すフロー図である。
【
図4】
図3に示す工程ST1~工程ST4を模式的に説明する説明図である。
【
図5】
図3に示す工程ST1~工程ST7を模式的に説明する説明図である。
【
図6】実施例1-1で算出した各単一粒度試料の第1円形度分布を示す。
【
図7】実施例1-1で算出した、混合粒度堆積体No.1の第2粒径分布及び第1粒径分布の線形和、並びに、混合粒度堆積体No.1の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
【
図8】実施例1-1で算出した混合粒度堆積体No.1の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
【
図9】実施例1-1で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
【
図10】
図1に示す各単一粒度試料の第1粒径分布のうち、第1粒径分布f
1(x)、f
2(x)を第1粒径分布f
12(x)に統合した後の第1粒径分布を示す。
【
図11】実施例1-2で算出した、実施例1-1と同じ混合粒度堆積体No.1の第2粒径分布及び第1粒径分布の線形和、並びに、混合粒度堆積体No.1の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
【
図12】実施例1-2で算出した、混合粒度堆積体No.1の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
【
図13】実施例1-2で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る粒度分布測定方法が有する工程を概略的に示すフロー図である。
【
図15】実施例2-1で算出した混合粒度堆積体の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
【
図16】実施例2-1で算出した混合粒度堆積体の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
【
図17】実施例2-1で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
【
図18】実施例2-2で算出した混合粒度堆積体の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
【
図19】実施例2-2で算出した混合粒度堆積体の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
【
図20】実施例2-2で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態(第1~第4実施形態)について、第1種類の粒子が焼結鉱であり、第2種類の粒子がペレットである場合を例に挙げて説明する。
【0026】
<第1実施形態>
第1実施形態は、本発明に係る第1の方法に対応する実施形態である。すなわち、第1実施形態に係る方法は、第2円形度分布を近似する第1円形度分布の線形和の係数(第2係数)を算出する際に、特許文献2に記載の方法で用いた第2粒径分布を近似する第1粒径分布の線形和の係数(第1係数)を一部利用する方法である。
【0027】
図3は、第1実施形態に係る粒度分布測定方法が有する工程を概略的に示すフロー図である。
図4は、
図3に示す工程ST1~工程ST4を模式的に説明する説明図である。
図5は、
図3に示す工程ST1~工程ST7を模式的に説明する説明図である。
図3に示すように、第1実施形態に係る粒度分布測定方法は、工程ST1~工程ST9を有する。以下、各工程について順に説明する。なお、第1実施形態では、第1種類の粒子である焼結鉱として、4つの粒度区分に属する粒子が配合され、第2種類の粒子であるペレットとして、前記4つの粒度区分のうちの1つの粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度積層体の粒度分布(全体質量分布)を測定する場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限るものではなく、2つ、3つ、又は5つ以上の粒度区分に属する焼結鉱が配合された混合粒度積層体に適用することも可能である。
【0028】
<工程ST1>
工程ST1(本発明に係る第1の方法の第1粒径分布算出ステップに相当)では、粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、焼結鉱については4つの粒度区分について用意し、ペレットについては1つの粒度区分について用意する。4つの粒度区分に属する焼結鉱と1つの粒度区分に属するペレットとが配合された(すなわち、いろいろな粒度の粒子が配合された)混合粒度積層体がどのような粒度区分に属する粒子が配合されたものであるかについては、予め把握可能である。第1実施形態では、4つの粒度区分に属する焼結鉱と1つの粒度区分に属するペレットとが任意の質量割合で配合された混合粒度積層体の粒度分布を測定するため、用意する単一粒度試料も、混合粒度積層体と同じように、焼結鉱については4つの粒度区分、ペレットについては1つの粒度区分について用意する。
具体的には、第1実施形態では、
図1及び
図2を参照して説明した前述の確認試験と同様に、混合粒度積層体には、粒度区分1(10mm<粒度≦15mm)に属するペレットと、粒度区分2(10mm<粒度≦15mm)、粒度区分3(15mm<粒度≦25mm)、粒度区分4(25mm<粒度≦35mm)及び粒度区分5(35mm<粒度≦50mm)に属する焼結鉱とが任意の質量割合で配合されている。このため、これら計5つの粒度区分(粒度区分1~5)について、単一粒度試料を用意する。具体的には、例えば、
図4(a)に示すように、粒度区分1に属するペレットからなる単一粒度試料をトレイTの1杯分用意する。同様に、
図4(b)に示すように、粒度区分2に属する焼結鉱からなる単一粒度試料をトレイTの1杯分用意する。以下、図示を省略しているが、粒度区分3~5に属する焼結鉱からなる単一粒度試料もトレイTの1杯分用意する。
【0029】
そして、工程ST1では、5つの粒度区分1~5の各単一粒度試料の上方に配置した距離画像取得手段(本実施形態では、
図4(a)、
図4(b)に示す線状のレーザ光Lによる光切断法を用いた3Dカメラ1)を用いて、各単一粒度試料の堆積状態を変更して繰り返し撮像して距離画像を取得し、距離画像取得手段に接続された演算装置(図示せず)で演算を行うことで、各単一粒度試料の表層粒子の粒径及び面積を繰り返し測定する。距離画像を取得する際には、光切断線となる線状のレーザ光Lが延びる方向(
図4(a)、
図4(b)の左右方向)と直交する方向(
図4(a)、
図4(b)の紙面に垂直な方向)に、3Dカメラ1に対してトレイTを相対的に移動させればよい。第1実施形態では、表層粒子の粒径として、距離画像における表層粒子を楕円と見なした場合の短軸径を用いている。堆積状態の変更は、トレイTと他の容器Cとの間で各単一粒度試料を移し替える際に生じる混合、攪拌によって行えばよい。なお、各単一粒度試料の表層粒子の粒径及び面積の測定の繰り返し回数は同一にすることが好ましい。これにより、
図5(a)に示すように、単一粒度試料の表層粒子の粒径(x)と面積との関係を示す第1粒径分布を5つの粒度区分1~5毎に算出する。具体的には、各単一粒度試料の表層粒子の粒径及び面積を、例えば10回繰り返し測定し、各回で測定した表層粒子の面積を、所定間隔(例えば、5mm間隔)の粒径範囲毎に集計して、10回の測定での面積の総和や平均値から第1粒径分布を算出する。
図5(a)において、f
1(x)~f
5(x)が、それぞれ粒度区分1~5の単一粒度試料について算出した第1粒径分布である。
【0030】
<工程ST2>
工程ST2(本発明に係る第1の方法の第1円形度分布算出ステップに相当)では、工程ST1で取得した粒度区分1~5の各単一粒度試料の距離画像に基づいて、単一粒度試料の表層粒子の円形度(x’)と個数との関係を示す第1円形度分布を5つの粒度区分1~5毎に算出する。円形度は、距離画像に基づいて算出した、粒子の画素単位の面積をAとし、粒子の画素単位の周囲長をPとし、円周率をπとした場合、以下の式(1)で表される値である。
円形度=4π・A/P
2 ・・・(1)
具体的には、各単一粒度試料の表層粒子の円形度を、例えば10回分の測定に対応する10枚の距離画像に基づいて繰り返し算出し、各距離画像について算出した表層粒子の円形度に基づき、所定間隔(例えば、0.02間隔)の円形度範囲毎に表層粒子の個数を集計して、第1円形度分布を算出する。
図5(b)において、g
1(x’)~g
5(x’)が、それぞれ粒度区分1~5の単一粒度試料について算出した第1円形度分布である。
【0031】
<工程ST3>
工程ST3(本発明に係る第1の方法の第2粒径分布算出ステップに相当)では、4つの粒度区分2~5に属する焼結鉱と1つの粒度区分1に属するペレットとが任意の質量割合で配合された混合粒度積層体の上方に配置した距離画像取得手段(本実施形態では、
図4(c)に示す線状のレーザ光Lによる光切断法を用いた3Dカメラ1)を用いて、混合粒度堆積体の堆積状態を変更して繰り返し撮像して距離画像を取得し、距離画像取得手段に接続された演算装置(図示せず)で演算を行うことで、混合粒度堆積体の表層粒子の粒径及び面積を繰り返し測定する。第1実施形態では、表層粒子の粒径として、距離画像における表層粒子を楕円と見なした場合の短軸径を用いている。
単一粒度試料の場合と同様に、トレイT内に混合粒度堆積体を堆積させて表層粒子の粒径及び面積を測定する場合、堆積状態の変更は、トレイTと他の容器Cとの間で混合粒度堆積体を移し替える際に生じる混合、攪拌によって行えばよい。混合粒度堆積体の表層粒子の粒径及び面積の測定の繰り返し回数は、必ずしも各単一粒度試料の測定の繰り返し回数と同一にする必要はない。
ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の表層粒子の粒径及び面積を測定する場合には、同一の質量割合で配合された混合粒度堆積体の異なる堆積状態が、ベルトコンベア上で展開されていると見なして、測定を繰り返せばよい。
これにより、
図5(a)に示すように、混合粒度堆積体の表層粒子の粒径(x)と面積との関係を示す第2粒径分布F(x)を算出する。具体的には、混合粒度の表層粒子の粒径及び面積を、例えば40回繰り返し測定し、各回で測定した表層粒子の面積を、所定間隔(例えば、5mm間隔)の粒径範囲毎に集計して、40回の測定での面積の総和や平均値から第2粒径分布F(x)を算出する。
【0032】
<工程ST4>
工程ST4(本発明に係る第1の方法の第2円形度分布算出ステップに相当)では、工程ST3で取得した混合粒度堆積体の距離画像に基づいて、混合粒度堆積体の表層粒子の円形度(x’)と個数との関係を示す第2円形度分布を算出する。
具体的には、混合粒度堆積体の表層粒子の円形度を、例えば40回繰り返し測定し、各回で測定した表層粒子の円形度に基づき、所定間隔(例えば、0.02間隔)の円形度範囲毎に表層粒子の個数を集計して、
図5(b)に示すような第2円形度分布G(x’)を算出する。
【0033】
<工程ST5>
工程ST5(本発明に係る第1の方法の第1係数算出ステップに相当)では、混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)に、各粒度区分1~5の表層粒子の面積がどの程度現れているかを定量化するために、
図5(a)に示すように、混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)を5つの粒度区分1~5毎の第1粒径分布f
i(x)(i=1,2,3,4,5)の線形和Σa
i・f
i(x)で近似し、線形和の係数である第1係数a
iを算出する。線形和での近似は、最小二乗法等の公知の近似手法を用いて行うことが可能である。
そして、工程ST5では、焼結鉱の粒度区分2~5のうち、ペレットの粒度区分1と異なる粒度区分に対する第1係数a
iのみを確定する。第1実施形態では、焼結鉱の粒度区分2は10mm<粒度≦15mmの粒度区分であり、ペレットの粒度区分1も10mm<粒度≦15mmの粒度区分であり、粒度区分としては同一(粒度区分に属する粒度の範囲としては同一)である。焼結鉱の粒度区分2~5のうち、ペレットの粒度区分1と異なる粒度区分は、粒度区分3~5である。このため、工程ST5では、算出した第1係数a
i(i=1~5)のうち、粒度区分3~5に対する第1係数a
3、a
4、a
5のみを確定する。
【0034】
<工程ST6>
工程ST6(本発明に係る第1の方法の第2係数算出ステップに相当)では、混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)に、各粒度区分1~5の表層粒子の円形度がどの程度現れているかを定量化するために、
図5(b)に示すように、混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)を5つの粒度区分1~5毎の第1円形度分布g
i(x’)(i=1,2,3,4,5)の線形和Σb
i・g
i(x’)で近似し、線形和の係数である第2係数b
iを算出する。
この際、焼結鉱の粒度区分2~5のうち、ペレットの粒度区分1と異なる粒度区分に対する第2係数b
i、すなわち、第2係数b
3~b
5が、第2係数工程ST5で確定した第1係数a
3~a
5に比例するという条件下で、第2係数b
iを算出する。すなわち、比例定数をkとして、b
3=k・a
3、b
4=k・a
4、b
5=k・a
5を満足する条件下で、第2係数b
iを算出する。換言すれば、第2係数b
1、b
2及び比例定数kを未知数として、最小二乗法等の公知の近似手法を用いることで、第2円形度分布G(x’)に線形和を近似させるための第2係数b
1、b
2及び比例定数kを算出する。比例定数kが算出されれば、第2係数工程ST5で確定した第1係数a
3~a
5にそれぞれ算出された比例定数kを乗算することで、第2係数b
3~b
5も算出される。これにより、全ての第2係数b
iが算出される。
【0035】
<工程ST7>
工程ST6で算出した第2係数b
i(i=1~5)は、混合粒度堆積体に現れる粒度区分iに属する表層粒子の個数に比例した値(個数割合)であると見なすことができる。
このため、工程ST7では、各第2係数b
1~b
5を、それぞれ混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分1~5に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なして、
図5(c)に示すように、粒度区分と粒度区分毎の表面個数割合との関係を示す表面個数分布を混合粒度堆積体について算出する。
【0036】
<工程ST8>
工程ST8(本発明に係る第1の方法の全体個数分布算出ステップに相当)では、工程ST7で算出した
図5(c)に示すような表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する。
第1実施形態の表面個数分布は、堆積した粒子全体の個数割合の分布である全体個数分布と等しくならない。これは、粒度に応じて表層に現れる頻度が異なり、粒度の大きな粒子ほど表層に現れる頻度が高いため、表面個数分布は全体個数分布に比べて、粒度の大きな粒子が余計に数えられていることになるからである。このため、全体個数分布を算出するには、粒度に応じた表層への現れやすさや見えやすさの度合いを表し、表層粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルが必要になる。
第1実施形態で用いる表面確率モデルは、特許文献2に記載の表面確率モデルと同じである。このため、表面確率モデル及び表面確率モデルを用いた全体個数分布の算出方法の詳細については説明を割愛し、以下、第1実施形態で用いる表面確率モデルに代入するパラメータの値についてのみ説明する。
【0037】
全体個数分布を算出するために、表面確率モデルに値を代入するパラメータとしては、工程ST7で算出した表面個数割合b
iの他、粒度区分iの粒度の中間値D
i、粒度区分iにおける面積比A
i、粒度区分iにおける体積比V
i及び混合粒度堆積体の高さ(嵩高さ)Hが挙げられる。
第1実施形態において、粒度の中間値D
iは、粒度区分1、2については、D
1=D
2=(10+15)/2=12.5mm、粒度区分3~5については、D
3=(15+25)/2=20mm、D
4=(25+35)/2=30mm、D
5=(35+50)/2=42.5mmとなる。
また、粒度区分iにおける面積比A
iは、粒度区分1のペレットの面積比A
1=1としたときの、粒度区分iの粒子の面積に相当するD
iの二乗の比、すなわち、A
i=(D
i/D
1)
2となる。
また、粒度区分iにおける体積比V
iは、粒度区分1のペレットの体積比V
1=1としたときの、粒度区分iの粒子の体積に相当するD
iの三乗の比、すなわち、V
i=(D
i/D
1)
3となる。
さらに、混合粒度堆積体の高さ(嵩高さ)Hは、第1実施形態では、前述のトレイTの高さと同程度の60mmとすることができる。
以上を纏めると、第1実施形態で表面確率モデルに代入するパラメータの値は、混合粒度堆積体の高さ(嵩高さ)Hを除き、以下の表1に示す値となる。なお、表1では、後述の工程ST9で用いる質量比w
iも併せて示している。
【表1】
工程ST8では、上記のパラメータを表面確率モデルに代入して所定の演算を行うことで、粒度区分iと粒度区分i毎の粒子全体の個数割合N
iとの関係である全体個数分布を算出する。
【0038】
<工程ST9>
工程ST9(本発明に係る第1の方法の全体質量分布算出ステップに相当)では、工程ST8で算出した全体個数分布と、各粒度区分iについての質量比w
i(表1参照)とに基づき、粒度区分iと混合粒度堆積体の粒度区分i毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する。
具体的には、以下の式(1)に示すように、粒子全体の個数割合N
iと質量比w
iとを乗算し、その比率を粒子全体の質量割合m
iとして算出する。
【数1】
質量比w
iは、一の粒度区分に属する粒子について測定した粒子1個当たりの平均質量を基準質量とした場合に、他の粒度区分に属する粒子について測定した粒子1個当たりの平均質量を基準質量で除算した値を意味する。第1実施形態では、粒度区分1に属するペレットについて測定したペレット1個当たりの平均質量を基準質量としているため、w
1=1となる。
特許文献2に記載の方法では、質量比w
iの代わりに体積比V
iを用いて質量割合m
iを算出している(特許文献2の式(7))。しかしながら、第1実施形態では、粒度区分1、2が同一の粒度区分(粒度区分に属する粒度の範囲が10mm<粒度≦15mmで同一)であっても、粒子の種類が異なる(密度が異なる)ことから、粒子1個当たりの質量が異なる。このため、粒子全体の質量割合m
iを算出するには質量比w
iが必要である。
【0039】
以上に説明した第1実施形態に係る粒度分布測定方法によれば、工程ST6において、工程ST4で算出された混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)が、工程ST2で算出された各単一粒度試料の第1円形度分布gi(x’)の線形和Σbi・gi(x’)で近似され、線形和の第2係数biが算出される。次に、工程ST7において、算出された線形和の第2係数biが、混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なされ、粒度区分iと粒度区分i毎の表面個数割合との関係を示す表面個数分布が算出される。以降は、特許文献2に記載の方法と同様に表面確率モデルを用い、工程ST8において、算出された表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、粒度区分iと混合粒度堆積体の粒度区分i毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布が算出され、工程ST9によって、粒度区分iと混合粒度堆積体の粒度区分i毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布が算出される。
このように、線形和の第2係数biを、混合粒度堆積体が各単一粒度試料の組み合わせで構成されていると考えた場合の、混合粒度堆積体の表層粒子の各粒度区分iの個数割合であると見なし、この第2係数biを用いて最終的に全体質量分布を算出するため、全体質量分布を粒子の種類を区別して(ペレットと焼結鉱とを区別して)精度良く算出可能である。
【0040】
<実施例1>
以下、実施例1(実施例1-1及び実施例1-2)として、第1実施形態に係る粒度分布測定方法によって全体質量分布を算出した結果の一例について説明する。
【0041】
[実施例1-1]
実施例1-1では、3Dカメラ1として、Sick社製「Ranger-E50(エリアスキャンカメラの画素数数:1536×512、測定速度:35000断面/秒)を用い、焼結鉱及び/又はペレットが堆積したトレイT(幅300mm×長さ400mm×高さ60mm)全体が視野内に入るように、トレイTの底部から3Dカメラ1までの高さを調整した。また、トレイTをベルト駆動の走行台車上に据え付け、走行台車に敷設したロータリエンコーダによって走行距離を検知し、走行台車がトレイTの長さ分走行したところで、1枚の距離画像を取得するように設定した。
【0042】
実施例1-1の工程ST1では、前述の粒度区分1のペレットからなるトレイTの1杯分(7kg程度)の単一粒度試料と、前述の粒度区分2~5の各粒度区分にそれぞれ篩分けされた焼結鉱からなるトレイTの1杯分の単一粒度試料とを用意し、トレイT内での各単一粒度試料の堆積状態を変更して表層粒子の粒径及び面積の測定を10回繰り返し、5mm間隔の粒径範囲毎に表層粒子の面積を集計して、各単一粒度試料の第1粒径分布を算出した。前述の
図1は、実施例1-1で算出した各単一粒度試料の第1粒径分布を示している。
【0043】
次に、実施例1-1の工程ST2では、工程ST1で取得した粒度区分1~5の各単一粒度試料の距離画像(それぞれ10回分の測定に対応する10枚の距離画像)に基づいて、各単一粒度試料の表層粒子の円形度(x’)の算出を繰り返し、0.02間隔の円形度範囲毎に表層粒子の個数を集計して、各単一粒度試料の第1円形度分布を算出した。
図6は、実施例1-1で算出した各単一粒度試料の第1円形度分布を示す。
図6に示すように、球状粒子であるペレットの場合(粒度区分1に対応)には、円形度のピークが1に近くて分布の拡がりが狭いが、不定形粒子である焼結鉱の場合(粒度区分2~5に対応)には、粒度区分2、3、4、5の順に粒度が大きくなるほど、円形度のピークが1から遠ざかり分布が大きく拡がる傾向にあることが分かる。
【0044】
次に、実施例1-1の工程ST3では、前述の
図2(a)を参照して説明した確認試験と同様に、粒度区分1のペレットを10%、粒度区分2の焼結鉱を25%、粒度区分3の焼結鉱を25%、粒度区分4の焼結鉱を25%、粒度区分5の焼結鉱を15%の質量割合で配合し、トレイT内に1杯分堆積させて、混合粒度堆積体(以下、「混合粒度堆積体No.1」と称する)を得た。また、混合粒度堆積体No.1とは別に、前述の
図2(b)を参照して説明した確認試験と同様に、粒度区分1のペレットを20%、粒度区分2の焼結鉱を25%、粒度区分3の焼結鉱を25%、粒度区分4の焼結鉱を20%、粒度区分5の焼結鉱を10%の質量割合で配合し、トレイT内に1杯分堆積させて、混合粒度堆積体(以下、「混合粒度堆積体No.2」と称する)を得た。
そして、単一粒度試料の場合と同様に、3Dカメラ1を用いて、トレイT内での各混合粒度堆積体の堆積状態を変更して測定を40回繰り返し、5mm間隔の粒径範囲毎に表層粒子の面積を集計して、各混合粒度堆積体の第2粒径分布を算出した。
図7は、実施例1-1で算出した、混合粒度堆積体No.1の第2粒径分布及び第1粒径分布の線形和、並びに、混合粒度堆積体No.1の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
図7(a)は第2粒径分布及び第1粒径分布の線形和であり、
図7(b)は第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和である。
図7(a)に実線で示すF(x)が、実施例1-1の工程ST3で算出した混合粒度堆積体No.1の第2粒径分布である。
【0045】
次に、実施例1-1の工程ST4では、単一粒度試料の場合と同様に、工程ST3で取得した各混合粒度堆積体の距離画像(それぞれ40回分の測定に対応する40枚の距離画像)に基づいて、各混合粒度堆積体の表層粒子の円形度(x’)の算出を繰り返し、0.02間隔の円形度範囲毎に表層粒子の個数を集計して、
図7(b)に実線で示すような混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)を算出した。
【0046】
次に、実施例1-1の工程ST5では、最小二乗法によって、各混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)を各単一粒度試料の第1粒径分布f
i(x)の線形和Σa
i・f
i(x)で近似し、線形和の第1係数a
iを算出し、第1係数a
3~a
5のみを確定した。
図7(a)に破線で示すΣa
i・f
i(x)が、実施例1-1の工程ST5で混合粒度堆積体No.1について算出した第1係数a
iを用いた線形和である。
また、実施例1-1の工程ST6では、最小二乗法によって、混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)を各単一粒度試料の第1円形度分布g
i(x’)の線形和Σb
i・g
i(x’)で近似し、線形和の第2係数b
iを算出した。この際、b
3=k・a
3、b
4=k・a
4、b
5=k・a
5を満足する条件下で、第2係数b
iを算出した。
図7(b)に破線で示すΣb
i・g
i(x’)が、実施例1-1の工程ST6で混合粒度堆積体No.1について算出した第2係数b
iを用いた線形和である。
【0047】
次に、実施例1-1の工程ST7では、工程ST6で算出した各第2係数b
iを、それぞれ混合粒度堆積体における粒度区分1~5に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なして、表面個数分布を算出した。
図8は、実施例1-1で算出した混合粒度堆積体No.1の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
図8(a)は表面個数分布であり、
図8(b)は全体個数分布であり、
図8(c)は全体質量分布である。
実施例1-1の工程ST7で算出した、
図8(a)に示す表面個数分布の縦軸の表面個数割合は、各粒度区分に対応する表面個数割合の総和が100%となるように、各第2係数b
iを百分率で表した値である。
【0048】
次に、実施例1-1の工程ST8では、
図8(a)に示す表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、
図8(b)に示す全体個数分布を算出した。
図8(b)に示す全体個数分布の縦軸の全体個数割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の個数割合であり、各粒度区分に対応する全体個数割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。なお、全体個数分布を算出するに際しては、前述の表1に示す質量比w
iを除くi=1~5の各パラメータの値を用いた他、混合粒度堆積体の高さ(嵩高さ)H=60mmとした。
【0049】
最後に、実施例1-1の工程ST9では、
図8(b)に示す全体個数分布と、前述の表1に示す質量比w
i(i=1~5)とに基づき、
図8(c)に示す全体質量分布を算出した。
図8(c)に示す全体質量分布の縦軸の全体質量割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の質量割合であり、各粒度区分に対応する全体質量割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。
なお、混合粒度堆積体No.2についての工程ST3~ST8での算出結果の詳細については説明を省略する。
【0050】
図9は、実施例1-1で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
図9(a)が混合粒度堆積体No.1について算出した結果であり、
図9(b)が混合粒度堆積体No.2について算出した結果である。
図9において「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)であり、「3D」で示すグラフは3Dカメラ1を用いた実施例1-1で算出されたデータである。
図9に示すように、特許文献2に記載の方法で算出された
図2の結果に比べれば、実施例1-1で算出された混合粒度堆積体の全体質量分布は、篩によって測定した結果に近い値になっており、全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出可能である。
【0051】
[実施例1-2]
前述の実施例1-1では、工程ST5において、混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)を5つの単一粒度試料の第1粒径分布f
i(x)(i=1~5)の線形和Σa
i・f
i(x)で近似し、線形和の第1係数a
iを算出している。
しかしながら、
図1に示すように、粒度区分1のペレットの第1粒径分布f
1(x)と、粒度区分2の焼結鉱の第1粒径分布f
2(x)とは、ほとんど重なっているため、第1粒径分布の線形和で近似する際に、粒度区分1、2の第1粒径分布f
1(x)、f
2(x)を統合した第1粒径分布(統合後の粒度区分を粒度区分12と称し、統合後の第1粒径分布を第1粒径分布f
12(x)と称する)を考え、統合後の第1粒径分布f
12(x)と、粒度区分3~5の第1粒径分布f
3(x)~f
5(x)との線形和で、混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)を近似することも可能である。すなわち、混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)を4つの粒度区分の第1粒径分布f
i(x)(i=12,3,4,5)の線形和Σa
i・f
i(x)で近似し、線形和の4つの第1係数a
i(i=12,3,4,5)を算出することも可能である。
実施例1-2では、このようにして工程ST5で線形和の第1係数a
i(i=12,3,4,5)を算出した後、実施例1-1と同様に、第1係数a
3~a
5のみを確定する。実施例1-2では、その後、実施例1-1と同様に、工程ST6~工程ST8を実行し、最終的に工程ST9で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出する。
【0052】
統合後の第1粒径分布f
12(x)を得る方法としては、例えば、f
12(x)をペレットの第1粒径分布f
1(x)で置き換え、f
12(x)=f
1(x)とすることが考えられる。f
12(x)を粒度区分2の焼結鉱の第1粒径分布f
2(x)で置き換え、f
12(x)=f
2(x)とすることも考えられる。また、f
12(x)をペレットの第1粒径分布f
1(x)と粒度区分2の焼結鉱の第1粒径分布f
2(x)とのうち同じ粒度xに対して大きい方の値で置き換え、f
12(x)=max(f
1(x),f
2(x))とすることや、小さい方で置き換え、f
12(x)=min(f
1(x),f
2(x))とすることや、平均値で置き換え、f
12(x)=mean(f
1(x),f
2(x))とすること等も考えられる。
以下に説明する例では、第1粒径分布f
1(x)、f
2(x)の双方を包含する意味で、統合後の第1粒径分布f
12(x)=max(f
1(x),f
2(x))とした。
図10は、
図1に示す各単一粒度試料の第1粒径分布のうち、第1粒径分布f
1(x)、f
2(x)を第1粒径分布f
12(x)に統合した後の第1粒径分布を示す。
【0053】
図11は、実施例1-2で算出した、実施例1-1と同じ混合粒度堆積体No.1の第2粒径分布及び第1粒径分布の線形和、並びに、混合粒度堆積体No.1の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
図11(a)は第2粒径分布及び第1粒径分布の線形和であり、
図11(b)は第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和である。
図11に示す結果は、統合後の第1粒径分布f
12(x)を用いて線形和を算出した点だけが、実施例1-1の
図7に示す結果と異なり、第2粒径分布F(x)及び第2円形度分布G(x’)は
図7に示すものと同じである。
【0054】
図12は、実施例1-2で算出した、混合粒度堆積体No.1の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
図12(a)は表面個数分布であり、
図12(b)は全体個数分布であり、
図12(c)は全体質量分布である。
図12に示す結果は、統合後の第1粒径分布f
12(x)を用いて線形和を算出した点が、実施例1-1の
図8に示す結果と異なる。
【0055】
図13は、実施例1-2で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
図13(a)が混合粒度堆積体No.1について算出した結果であり、
図13(b)が実施例1-1と同じ混合粒度堆積体No.2について算出した結果である。
図13において「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)であり、「3D」で示すグラフは3Dカメラ1を用いた実施例1-2で算出されたデータである。
図13に示すように、特許文献2に記載の方法で算出された
図2の結果に比べれば、実施例1-2で算出された混合粒度堆積体の全体質量分布は、篩によって測定した結果に近い値になっており、実施例1-1と同様に、全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出可能である。
【0056】
<第2実施形態>
第2実施形態は、本発明に係る第2の方法に対応する実施形態である。すなわち、第2実施形態に係る方法は、第2円形度分布を近似する第1円形度分布の線形和の係数を算出する際に、特許文献2に記載の方法で用いた第2粒径分布を近似する第1粒径分布の線形和の係数を利用しない方法である。
【0057】
図14は、第2実施形態に係る粒度分布測定方法が有する工程を概略的に示すフロー図である。
図14に示すように、第2実施形態に係る粒度分布測定方法は、工程ST1’~工程ST6’を有する。以下、各工程について順に説明するが、第1実施形態に係る粒度分布測定方法と共通する部分については適宜説明を割愛し、主として相違する部分について説明する。なお、第2実施形態では、第1種類の粒子である焼結鉱として、1つの粒度区分に属する粒子が配合され、第2種類の粒子であるペレットとして、1つの粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度積層体の粒度分布(全体質量分布)を測定する場合を例に挙げて説明する。
【0058】
<工程ST1’>
工程ST1’(本発明に係る第2の方法の第1円形度分布算出ステップに相当)では、粒度区分が同一となる粒度を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料(1つの粒度区分の単一粒度試料)を、焼結鉱及びペレットの双方について用意する。
具体的には、第2実施形態では、混合粒度堆積体に、粒度区分1(10mm<粒度≦15mm)に属するペレットと、粒度区分2(10mm<粒度≦15mm)に属する焼結鉱とが任意の質量割合で配合されている場合には、粒度区分1のペレットの単一粒度試料と、粒度区分2の焼結鉱の単一粒度試料とを用意する。また、混合粒度堆積体に、粒度区分1(10mm<粒度≦15mm)に属するペレットと、粒度区分3(15mm<粒度≦25mm)に属する焼結鉱とが任意の質量割合で配合されている場合には、粒度区分1のペレットの単一粒度試料と、粒度区分3の焼結鉱の単一粒度試料とを用意する。
そして、第1実施形態の工程ST2と同様に、3Dカメラ1を用いて取得した各単一粒度試料の距離画像に基づいて、単一粒度試料の表層粒子の円形度(x’)と個数との関係を示す第1円形度分布gi(x’)を粒度区分i毎に算出する。
【0059】
<工程ST2’>
工程ST2’(本発明に係る第2の方法の第2円形度分布算出ステップに相当)では、第1実施形態の工程ST4と同様に、3Dカメラ1を用いて取得した混合粒度堆積体の距離画像に基づいて、混合粒度堆積体の表層粒子の円形度(x’)と個数との関係を示す第2円形度分布G(x’)を算出する。
【0060】
<工程ST3’>
工程ST3’(本発明に係る第2の方法の係数算出ステップに相当)では、混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)を粒度区分i毎の第1円形度分布gi(x’)の線形和Σbi・gi(x’)で近似し、線形和の係数biを算出する。この際、第1実施形態の工程ST6と異なり、第2実施形態の工程ST3’では、第2粒径分布F(x)を近似する第1粒径分布fi(x)の線形和Σai・fi(x)の係数aiを利用せず、第2円形度分布G(x’)及び第1円形度分布gi(x’)に対して、最小二乗法等の公知の近似手法を直接用いることで、線形和の係数biを算出する。
【0061】
<工程ST4’、工程ST5’、工程ST6’>
工程ST4’、工程ST5’(本発明に係る第2の方法の全体個数分布算出ステップに相当)及び工程ST6’(本発明に係る第2の方法の全体質量分布算出ステップに相当)は、それぞれ第1実施形態の工程ST7、ST8及びST9と同様である。
すなわち、工程ST4’では、工程ST3’で算出した線形和の係数biを、それぞれ混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分iに属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なして、粒度区分iと粒度区分i毎の表面個数割合との関係を示す表面個数分布を混合粒度堆積体について算出する。
また、工程ST5’では、工程ST4’で算出した表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、粒度区分iと混合粒度堆積体の粒度区分i毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する。
さらに、工程ST6’では、工程ST5’で算出した全体個数分布と、各粒度区分iについての質量比wiとに基づき、粒度区分iと混合粒度堆積体の粒度区分i毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する。
【0062】
以上に説明した第2実施形態に係る粒度分布測定方法によれば、工程ST3’において、工程ST2’で算出された混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)が、工程ST1’で算出された各単一粒度試料の第1円形度分布gi(x’)の線形和Σbi・gi(x’)で近似され、線形和の係数biが算出される。次に、工程ST4’において、算出された線形和の係数biが、混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なされ、粒度区分iと粒度区分i毎の表面個数割合との関係を示す表面個数分布が算出される。以降は、特許文献2に記載の方法と同様に表面確率モデルを用い、工程ST5’において、算出された表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、粒度区分iと混合粒度堆積体の粒度区分i毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布が算出され、工程ST6’によって、粒度区分iと混合粒度堆積体の粒度区分i毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布が算出される。
このように、線形和の係数biを、混合粒度堆積体が各単一粒度試料の組み合わせで構成されていると考えた場合の、混合粒度堆積体の表層粒子の各粒度区分iの個数割合であると見なし、この係数biを用いて最終的に全体質量分布を算出するため、全体質量分布を粒子の種類を区別して(ペレットと焼結鉱とを区別して)精度良く算出可能である。
【0063】
<実施例2>
以下、実施例2(実施例2-1及び実施例2-2)として、第2実施形態に係る粒度分布測定方法によって全体質量分布を算出した結果の一例について、主として実施例1と相違する部分を説明する。
【0064】
[実施例2-1]
実施例2-1の工程ST1’では、前述の粒度区分1のペレットからなるトレイTの1杯分(7kg程度)の単一粒度試料と、前述の粒度区分2の焼結鉱からなるトレイTの1杯分の単一粒度試料とを用意し、トレイT内での各単一粒度試料の堆積状態を変更して、表層粒子の距離画像に基づく各単一粒度試料の表層粒子の円形度(x’)の算出を10回繰り返し、0.02間隔の円形度範囲毎に表層粒子の個数を集計して、各単一粒度試料の第1円形度分布を算出した。
【0065】
次に、実施例2-1の工程ST2’では、粒度区分1のペレットを25%、粒度区分2の焼結鉱を75%の質量割合で配合し、トレイT内に半分の高さ(30mm)分だけ堆積させて、混合粒度堆積体を得た。
そして、単一粒度試料の場合と同様に、3Dカメラ1を用いて、トレイT内での各混合粒度堆積体の堆積状態を変更して、表層粒子の距離画像に基づく混合粒度堆積体の表層粒子の円形度(x’)の算出を10回繰り返し、0.02間隔の円形度範囲毎に表層粒子の個数を集計して、混合粒度堆積体の第2円形度分布を算出した。
図15は、実施例2-1で算出した混合粒度堆積体の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
図15に実線で示すG(x’)が、実施例2-1の工程ST2’で算出した混合粒度堆積体の第2円形度分布である。
【0066】
次に、実施例2-1の工程ST3’では、最小二乗法によって、混合粒度堆積体の第2円形度分布G(x’)を各単一粒度試料の第1円形度分布g
i(x’)の線形和Σb
i・g
i(x’)で近似し、線形和の係数b
iを算出した。
図15に破線で示すΣb
i・g
i(x’)が、実施例2-1の工程ST3’で算出した係数b
iを用いた線形和である。
【0067】
次に、実施例2-1の工程ST4’では、工程ST3’で算出した各係数b
iを、それぞれ混合粒度堆積体における粒度区分1、2に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なして、表面個数分布を算出した。
図16は、実施例2-1で算出した混合粒度堆積体の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
図16(a)は表面個数分布であり、
図16(b)は全体個数分布であり、
図16(c)は全体質量分布である。
実施例2-1の工程ST4’で算出した、
図16(a)に示す表面個数分布の縦軸の表面個数割合は、各粒度区分に対応する表面個数割合の総和が100%となるように、各係数b
iを百分率で表した値である。
【0068】
次に、実施例2-1の工程ST5’では、
図16(a)に示す表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、
図16(b)に示す全体個数分布を算出した。
図16(b)に示す全体個数分布の縦軸の全体個数割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の個数割合であり、各粒度区分に対応する全体個数割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。なお、全体個数分布を算出するに際しては、前述の表1に示す質量比w
iを除く粒度区分i=1、2の各パラメータの値を用いた他、混合粒度堆積体の高さ(嵩高さ)H=30mmとした。
【0069】
最後に、実施例2-1の工程ST6’では、
図16(b)に示す全体個数分布と、前述の表1に示す質量比w
i(i=1、2)とに基づき、
図16(c)に示す全体質量分布を算出した。
図16(c)に示す全体質量分布の縦軸の全体質量割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の質量割合であり、各粒度区分に対応する全体質量割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。
【0070】
図17は、実施例2-1で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
図17において「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)であり、「3D」で示すグラフは3Dカメラ1を用いた実施例2-1で算出されたデータである。
図17に示すように、実施例2-1で算出された混合粒度堆積体の全体質量分布は、篩によって測定した結果に近い値になっており、全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出可能である。
【0071】
[実施例2-2]
実施例2-2では、工程ST1’において、前述の粒度区分1のペレットからなるトレイTの1杯分(7kg程度)の単一粒度試料と、前述の粒度区分3の焼結鉱からなるトレイTの1杯分の単一粒度試料とを用意し、各単一粒度試料の第1円形度分布を算出した点が実施例2-1と異なる。また、実施例2-2では、工程ST2’において、粒度区分1のペレットを25%、粒度区分3の焼結鉱を75%の質量割合で配合し、トレイT内に2/3の高さ(40mm)分だけ堆積させて、混合粒度堆積体を得て、混合粒度堆積体の第2円形度分布を算出した点が実施例2-1と異なる。また、実施例2-2では、工程ST5’で全体個数分布を算出するに際して、前述の表1に示す質量比wiを除く粒度区分i=1、3の各パラメータの値を用いた他、混合粒度堆積体の高さ(嵩高さ)H=40mmとした点が実施例2-1と異なる。さらに、実施例2-2では、工程ST6’で全体質量分布を算出するに際して、前述の表1に示す質量比wi(i=1、3)を用いた点が実施例2-1と異なる。その他の点については、実施例2-1と同じであるため、これ以上の説明は割愛し、以下、結果についてのみ述べる。
【0072】
図18は、実施例2-2で算出した混合粒度堆積体の第2円形度分布及び第1円形度分布の線形和を示す。
図18に実線で示すG(x’)が、実施例2-2の工程ST2’で算出した混合粒度堆積体の第2円形度分布である。
図18に破線で示すΣb
i・g
i(x’)が、実施例2-2の工程ST3’で算出した係数b
iを用いた線形和である。
【0073】
図19は、実施例2-2で算出した混合粒度堆積体の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
図19(a)は表面個数分布であり、
図19(b)は全体個数分布であり、
図19(c)は全体質量分布である。
図19(a)に示す表面個数分布の縦軸の表面個数割合は、各粒度区分に対応する表面個数割合の総和が100%となるように、各係数b
iを百分率で表した値である。
図19(b)に示す全体個数分布の縦軸の全体個数割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の個数割合であり、各粒度区分に対応する全体個数割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。
図19(c)に示す全体質量分布の縦軸の全体質量割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の質量割合であり、各粒度区分に対応する全体質量割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。
【0074】
図20は、実施例2-2で混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した結果を示す。
図20において「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)であり、「3D」で示すグラフは3Dカメラ1を用いた実施例2-2で算出されたデータである。
図20に示すように、実施例2-2で算出された混合粒度堆積体の全体質量分布は、篩によって測定した結果に近い値になっており、全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出可能である。
なお、実施例2-2の場合には、混合粒度堆積体に配合されているペレットの粒度区分1(10mm<粒度≦15mm)と、焼結鉱の粒度区分3(15mm<粒度≦25mm)とが同一の粒度区分ではない(焼結鉱の中にペレットと同一の粒度区分に属する粒子が存在しない)ため、特許文献2に記載の方法を用いたとしても、全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出可能であると考えられる。
【0075】
なお、実施例1、2では、トレイT内に堆積した混合粒度堆積体の粒度分布を測定する場合を例に挙げたが、本発明は、ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の粒度分布を測定することも可能である。ただし、ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の場合、トレイT内に堆積した混合粒度堆積体と異なり、表面確率モデルに用いる混合粒度堆積体の高さHが搬送中に変動し易いため、高さHを実際に測定することが好ましい。
混合粒度堆積体の高さHを測定(算出)する方法としては、ベルトコンベア上に堆積する混合粒度堆積体の断面を台形と見なして近似する特許文献2に記載の方法が適用可能であるため、ここではその具体的な説明は省略する。
【0076】
また、第1実施形態に係る粒度分布測定方法では、工程ST1において、単一粒度試料の表層粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布を算出し、工程ST3において、混合堆積体の表層粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布を算出しているが、これらに代えて、単一粒度試料の表層粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布と共に、混合堆積体の表層粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出したり、又は、単一粒度試料の表層粒子の粒径と体積との関係を示す第1粒径分布と共に、混合堆積体の表層粒子の粒径と体積との関係を示す第2粒径分布を算出することも可能である。
結果の説明は割愛するが、第1粒径分布及び第2粒径分布を上記のような関係を示すものに代えたとしても、混合粒度堆積体の全体質量分布を粒子の種類を区別して精度良く算出可能である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・3Dカメラ(距離画像取得手段)
ST1・・・工程(第1粒径分布算出ステップ)
ST2・・・工程(第1円形度分布算出ステップ)
ST3・・・工程(第2粒径分布算出ステップ)
ST4・・・工程(第2円形度分布算出ステップ)
ST5・・・工程(第1係数算出ステップ)
ST6・・・工程(第2係数算出ステップ)
ST7・・・工程
ST8・・・工程(全体個数分布算出ステップ)
ST9・・・工程(全体質量分布算出ステップ)
T・・・トレイ