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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024428
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】バーナ及び燃焼炉
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/48 20060101AFI20250213BHJP
   F23D 17/00 20060101ALN20250213BHJP
   F23D 14/58 20060101ALN20250213BHJP
【FI】
F23D14/48 B
F23D17/00 103
F23D14/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128530
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤徳
(72)【発明者】
【氏名】矢原 俊
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰申
(72)【発明者】
【氏名】小嶺 貴史
【テーマコード(参考)】
3K017
3K065
【Fターム(参考)】
3K017CA04
3K017CA06
3K017CB02
3K017CD02
3K017CE01
3K017CF00
3K065QA01
3K065QB11
3K065QC02
3K065RA01
(57)【要約】
【課題】アンモニアを燃焼するバーナにおいて、安定燃焼とNOx排出量の抑制とを両立する。
【解決手段】バーナは、バーナ軸線を中心とする筒状を呈し、主燃料及び一次空気の混合流体を噴出する主燃料出口を有する第1ノズルと、下流へ向かって拡径する截頭円錐形状を有し、第1ノズルの先端において主燃料出口の周縁に配置され、下流に保炎渦を生じさせる保炎板と、主燃料出口を囲う二次空気出口を有し、二次空気出口から二次空気を吹き出す第2ノズルと、第1ノズルと第2ノズルの間において二次空気が流れる第2流路に配置され、保炎板の外面又は第1ノズルの外面に沿ってN分を含むガス燃料を噴出する補助燃料出口を有する補助燃料ノズルと、を備える。保炎板は、補助燃料出口の下流に配置され、保炎板の外面で周方向に連続する突起を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ軸線を中心とする筒状を呈し、主燃料及び一次空気の混合流体を噴出する主燃料出口を有する第1ノズルと、
下流へ向かって拡径する截頭円錐形状を有し、前記第1ノズルの先端において前記主燃料出口の周縁に配置され、下流に保炎渦を生じさせる保炎板と、
前記主燃料出口を囲う二次空気出口を有し、前記二次空気出口から二次空気を吹き出す第2ノズルと、
前記第1ノズルと前記第2ノズルの間において前記二次空気が流れる第2流路に配置され、前記保炎板の外面又は前記第1ノズルの外面に沿ってN分を含むガス燃料を噴出する補助燃料出口を有する補助燃料ノズルと、を備え、
前記保炎板は、前記補助燃料出口の下流に配置され、前記保炎板の外面で周方向に連続する突起を有する、
バーナ。
【請求項2】
前記バーナ軸線と平行な座標軸を規定し、当該座標軸における前記保炎板の基端の座標を-L、前記保炎板の先端の座標を0と規定したときに、前記突起の座標は-L/2以上0未満である、
請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
前記バーナ軸線を含む断面において、前記突起の前面と前記保炎板の外面とがなす角度が90度以上135度以下である、
請求項1に記載のバーナ。
【請求項4】
前記バーナ軸線を含む断面において、前記突起の前面の突出端と前記保炎板の先端とを結ぶ直線と、前記保炎板の外面とがなす角度は5度以上20度以下である、
請求項2に記載のバーナ。
【請求項5】
燃焼室と、
前記燃焼室の壁に配置された請求項1乃至4のいずれかに記載のバーナと、を備える、
燃焼炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニアなどのN分を多く含むガス燃料を燃焼するバーナ及び当該バーナを備える燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)排出削減の時流から、燃焼で二酸化炭素を排出しない燃料としてアンモニア(NH)が注目されている。アンモニアを燃料とするための課題として、都市ガスの主成分であるメタンと比較して燃焼速度が遅く火炎温度が低いことから、燃え難く安定燃焼し難い点と、N分を多く含むことからNOx排出量が増加しやすい点が挙げられる。そこで、特許文献1に開示されるように、アンモニアを燃料とするバーナにおいて、NOx排出量を抑制する技術の開発が行われている。
【0003】
特許文献1のバーナは、微粉炭などの固体燃料と該固体燃料の搬送ガスとの混合流体を噴き出す燃料供給ノズルと、燃料供給ノズルの外側に配置されて、燃焼用空気を混合流体から外周側へ分離して噴き出す空気ノズルと、燃料供給ノズルの出口よりも下流側からアンモニアガスを噴き出すアンモニア供給ノズルとを備える。アンモニア供給ノズルは空気ノズルに通されており、空気ノズルの空気出口にアンモニア出口が配置されている。アンモニア供給ノズルは、燃料供給ノズルの出口の直ぐ下流において燃料の燃焼によって酸素が消費されて低酸素濃度となった高温還元領域へ向けて、アンモニアガスを供給する。アンモニアが高温還元領域で燃焼することによって、燃焼で生じたNOxは還元反応により窒素となるため、NOx排出量が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-203631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のバーナでは、保炎板の下流であって混合流体の流れと燃焼用空気の流れに挟まれた位置に保炎渦が生じる。火炎が安定し難いアンモニア燃焼では、保炎のために保炎渦の保護が重要となる。特許文献1のバーナでは、アンモニア供給ノズルから出たアンモニアガスの流れは、保炎渦及び混合流体の流れを貫いて高温還元領域へ向かう。そのため、アンモニアガスの流量が少ないと、保炎渦や混合流体の流れに遮られて、アンモニアガスが混合還元領域へ到達できないことが懸念される。また、アンモニアガスの流量が多いと、保炎渦や循環流が乱されて保炎できず燃焼が不安定となることが懸念される。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アンモニア等のN分を含むガス燃料を燃焼するバーナにおいて、安定燃焼とNOx排出量の抑制とを両立する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るバーナは、
バーナ軸線を中心とする筒状を呈し、主燃料及び一次空気の混合流体を噴出する主燃料出口を有する第1ノズルと、
下流へ向かって拡径する截頭円錐形状を有し、前記第1ノズルの先端において前記主燃料出口の周縁に配置され、下流に保炎渦を生じさせる保炎板と、
前記主燃料出口を囲う二次空気出口を有し、前記二次空気出口から二次空気を吹き出す第2ノズルと、
前記第1ノズルと前記第2ノズルの間において前記二次空気が流れる第2流路に配置され、前記保炎板の外面又は前記第1ノズルの外面に沿ってN分を含むガス燃料を噴出する補助燃料出口を有する補助燃料ノズルと、を備え、
前記保炎板は、前記補助燃料出口の下流に配置され、前記保炎板の外面で周方向に連続する突起を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アンモニア等のN分を含むガス燃料を燃焼するバーナにおいて、安定燃焼とNOx排出量の抑制とを両立する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るバーナを備えるボイラの概略構成を示す図である。
図2図2は、本開示に係るバーナのバーナ軸線を含む断面の概略図である。
図3図3は、図2に示すバーナの出口のバーナ軸線を含む断面の拡大図である。
図4図4は、保炎板のバーナ軸線を含む断面の拡大図である。
図5図5は、保炎板のバーナ軸線を含む断面の拡大図である。
図6図6は、保炎板のバーナ軸線を含む断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。まず、本開示の一実施形態に係るバーナ5を備えるボイラ10の概略構成から説明する。
【0011】
《ボイラ10の概略構成》
図1は、本開示の一実施形態に係るバーナ5を備えるボイラ10の概略構成を示す図である。図1に示すボイラ10は、燃料を燃焼する燃焼炉2と、燃焼炉2の燃焼熱を利用して蒸気を生成するボイラ本体40とを備える。ボイラ10は、微粉炭焚きの火力ボイラであって、粉体又は粒体状の化石燃料(即ち、固体燃料)を主燃料とする。但し、本開示に係るバーナ5が適用されるボイラは、微粉炭焚きボイラに限定されず、微粉炭及びバイオマスを主燃料とする混焼ボイラ、石油残渣を主燃料とする石油残渣焚きボイラなどであってもよい。
【0012】
燃焼炉2は内部に竪型の燃焼室20を有する。本実施形態に係る燃焼炉2は倒立式の竪型炉であって、燃焼室20の上部には高温還元ゾーン21が形成され、燃焼室20の下部には低温酸化ゾーン22が形成され、高温還元ゾーン21と低温酸化ゾーン22との間には絞り部23が設けられている。但し、燃焼炉2は、燃焼室20の下部に高温還元ゾーン21が形成され、燃焼室20の上部に低温酸化ゾーン22が形成された竪型炉であってもよい。
【0013】
燃焼炉2の内壁のうち高温還元ゾーン21を形成している部分は耐火材25で覆われている。燃焼炉2の高温還元ゾーン21の炉壁には、上下方向に少なくとも1段のバーナ段が設けられており、各バーナ段は水平方向に並ぶ複数のバーナ5で形成されている。各バーナ5は、高温還元ゾーン21へ燃料及び一段目燃焼用の空気を吹き出し、火炎を生じさせる。高温還元ゾーン21の出口は、絞り部23を介して低温酸化ゾーン22の入口と接続されている。
【0014】
燃焼炉2の低温酸化ゾーン22の炉壁には、複数の空気ノズル26が設けられている。各空気ノズル26から低温酸化ゾーン22へ二段目燃焼用の空気が吹き出す。低温酸化ゾーン22のうち絞り部23と複数の空気ノズル26との上下間は冷却部24であり、冷却部24の炉壁はボイラ本体40の水管が張り巡らされた水冷壁となっている。低温酸化ゾーン22の出口11は煙道28の入口と接続されている。煙道28には、ボイラ本体40の伝熱管43が設けられている。煙道28の出口には排ガス処理系統30が接続されている。
【0015】
上記構成のボイラ10において、高温還元ゾーン21に供給される燃料と一段目燃焼用の空気との空気比は、1未満(例えば、0.7程度)に維持される。その上、耐火材25で覆われた高温還元ゾーン21は、炉の他の部分と比較して炉内温度が下がりにくい。これにより、高温還元ゾーン21は平均約1500℃の高温の還元雰囲気(即ち、空気量が理論空気量よりも低い空気不足の雰囲気)となっており、高温還元ゾーン21では燃料のガス化が促進される。
【0016】
高温還元ゾーン21では、燃料の熱分解によってガス化燃料が生じる。ガス化燃料は、絞り部23を通じて低温酸化ゾーン22に流入する。空気ノズル26から低温酸化ゾーン22へ供給される二段目燃焼用の空気によって、低温酸化ゾーン22の空気比は1以上(例えば、1.1程度)に維持される。これにより、低温酸化ゾーン22は酸化雰囲気となっており、低温酸化ゾーン22ではガス化燃料の燃焼が促進される。
【0017】
低温酸化ゾーン22では、燃料の燃焼が完結する。低温酸化ゾーン22からの燃焼排ガスは、煙道28を通じて排ガス処理系統30へ流出する。煙道28や炉壁に設けられた伝熱管43で燃焼排ガスの熱が回収され、ボイラ本体40で蒸気が生成される。生成された蒸気は、例えば、発電設備の蒸気タービンで利用される。
【0018】
《バーナ5の構成》
ここで、上記構成のボイラ10が備えるバーナ5の構成について説明する。バーナ5は、固体燃料を主燃料とし、アンモニアなどのN分を多く含むガス燃料90を補助燃料として利用する混焼バーナである。本実施形態に係る固体燃料は、例えば微粉炭などの、粉体又は粒体状の化石燃料である。但し、バーナ5の主燃料は化石燃料に限定されず、バイオマスや、石油残渣であってもよい。また、本実施形態に係るガス燃料90は、50体積%以上のアンモニアを含む可燃性ガスである。但し、ガス燃料90は、N分を含むガスであれば、アンモニアガスに限定されない。ガス燃料90は、可燃性の窒素化合物(例えば、シアン化水素、メチルアミン、ヒドラジンなど)を50体積%以上含むガスであってもよい。ガス燃料90は、メタンやプロパンなどの可燃性ガスと窒素や窒素化合物などのN分を含有するガスとの混合ガスであってもよい。
【0019】
図2は、本開示に係るバーナ5の概略断面図であり、図3は、図2のバーナ5の出口近傍の拡大図である。図2及び図3に示すように、バーナ5は、バーナ軸線70を中心として同軸に配置された第1ノズル71、第2ノズル72、及び、第3ノズル73から成る多重ノズルを備える。バーナ軸線70の延伸方向を「バーナ軸線方向X」と称する。
【0020】
第1ノズル71は、内部にバーナ軸線方向Xに延びる第1流路71fを有し、先端に第1流路71fの下流端である主燃料出口71aを有する。主燃料出口71aの周囲には、保炎板77が設けられている。保炎板77は、下流へ向けて拡径する截頭円錐形状を呈する。第1流路71fには、旋回抑制板711が設けられている。また、第1流路71fにおいて旋回抑制板711の上流には分散羽根713が設けられている。
【0021】
第1ノズル71の軸心部には、バーナ軸線70と重複して配置された重油バーナ79が挿通されている。重油バーナ79の出口は主燃料出口71aの略中央に配置されている。重油バーナ79は主に点火に用いられる。
【0022】
第1流路71fには、固体燃料及び一次空気が供給される。一次空気は、燃料の燃焼用空気であるとともに、固体燃料の搬送用気体である。固体燃料及び一次空気から成る混合流体51は、分散羽根713の作用によって旋回し、旋回抑制板711の作用によってその旋回力が弱められて、主燃料出口71aからバーナ軸線方向Xへ向けて噴出する。
【0023】
第1ノズル71の外周には、第2ノズル72が設けられている。第1ノズル71と第2ノズル72との間には、流路断面が環状の第2流路72fが形成されている。第2流路72fの下流端である二次空気出口72aは、主燃料出口71aの外周を囲っている。二次空気出口72aの周縁には、下流へ向けて拡径するエアコーン72bが設けられている。第2流路72fには、風箱から二次空気52が供給される。二次空気52は、二次空気出口72aから混合流体51の流れの外周へ向けて吹き出す。保炎板77及びエアコーン72bによって、二次空気出口72aから吹き出した二次空気52は、第1ノズル71から噴き出した混合流体51から外側へ離れるように案内される。
【0024】
第2ノズル72の外周には、第3ノズル73が設けられている。第3ノズル73と第2ノズル72の間には、流路断面が環状の第3流路73fが形成されている。第3流路73fの下流端である三次空気出口73aは、二次空気出口72aの外周を囲っている。三次空気出口73aの周縁には、下流へ向けて拡径するエアコーン73bが設けられている。第3流路73fには、旋回ベーン731が配置されている。第3流路73fには、風箱から三次空気53が供給される。三次空気53は、旋回ベーン731の作用によって旋回しながら、三次空気出口73aから二次空気52の外周へ向けて吹き出す。エアコーン72b及びエアコーン73bによって、第3ノズル73から吹き出した三次空気53は、第2ノズル72から吹き出した二次空気52から外側へ離れるように案内される。
【0025】
バーナ5は、補助燃料としてガス燃料90を噴出する補助燃料ノズル91を備える。複数の補助燃料ノズル91は、第1ノズル71の外面に周方向に並んで配置されている。補助燃料ノズル91は、内部に補助燃料流路91fを有し、先端に補助燃料流路91fの下流端である補助燃料出口91aを有する。補助燃料ノズル91の補助燃料流路91fには、ガス燃料源からガス燃料90が供給され、ガス燃料90は補助燃料出口91aから噴出する。
【0026】
複数の補助燃料出口91aは、二次空気出口72aの中に配置され、第1ノズル71又は保炎板77の外面に沿って周方向に並んでいる。保炎板77の第1流路71fへ向いた面を内面と称し、保炎板77の第2流路72fへ向いた面を外面と称する。保炎板77の外面には、周方向に連続する突起75が設けられている。突起75は、保炎板77に一体的に形成されていてもよいし、保炎板77に固定されたものであってもよい。複数の補助燃料出口91aは突起75の上流に配置されており、突起75は補助燃料出口91aから出たガス燃料90の噴出流の障害物となる。
【0027】
《バーナ5の燃焼方法》
続いて、上記構成のバーナ5の燃焼方法について説明する。図2及び3に示すように、バーナ5では、第1ノズル71へ供給された固体燃料と一次空気の混合流体51が、分散羽根713の作用によって旋回し、旋回抑制板711の作用によってその旋回力が弱められて、主燃料出口71aから旋回流れとして噴出する。また、主燃料出口71aの外周側において、二次空気出口72aから二次空気52が吹き出し、三次空気出口73aから三次空気53が吹き出す。二次空気52は、保炎板77及びエアコーン72bに案内されて、バーナ軸線70を中心として外周側へ広がるように吹き出す。同様に、三次空気53は、エアコーン72b及びエアコーン73bに案内されて、旋回しながら外周側へ広がるように吹き出す。
【0028】
主燃料出口71aから噴出した混合流体51中の固体燃料は熱分解してガス化し、このガス化燃料が一次空気によって燃焼する。主燃料出口71aの直ぐ下流には、燃焼によって酸素が消費されて高温還元雰囲気となった循環領域49が生じる。保炎板77の直ぐ下流には、保炎板77の作用によって保炎渦55が生じる。保炎渦55を形成する流体は、燃焼により生じた比較的高い温度の既燃ガスを含む。
【0029】
保炎渦55の内周側において循環領域49には、三次空気53の旋回流によって、保炎渦55の内縁に沿って下流へ流れた流体をバーナ軸線70に沿って主燃料出口71aへ戻す循環流50が生じる。循環流50は、流体が保炎渦55の内縁に沿って主燃料出口71aから離れる向きに流れる順流部と、流体がバーナ軸線70に沿って主燃料出口71aへ近づく向きに流れる逆流部とを含む。循環流50を形成する流体は、比較的高い温度の既燃ガスを含む。保炎渦55と循環流50によって、ガス化燃料と一次空気の混合気や未燃ガスと高温の既燃ガスとの熱交換が絶えず行われて、燃焼が促進され、火炎を安定化する。更に、二次空気52、三次空気53の順に段階的に燃焼用空気と燃料とが混合して燃焼が生じる。
【0030】
補助燃料ノズル91から噴出したガス燃料90は、第2流路72fに配置された補助燃料出口91aから第1ノズル71の外面に沿って流れ出る。ガス燃料90の流れの一部、特に、第1ノズル71の外面に沿って流れる境界層を含む部分が突起75に当接する。これによりガス燃料90の流れが第1ノズル71の外面から剥離し、突起75の後方には剥離渦92が生じる。剥離渦92が生じる領域は、バーナ軸線方向Xにおいて、保炎板77の先端よりも上流から二次空気出口72aの下流にまで至る。剥離渦92では、外側を流れるガス燃料90及び二次空気52の作用によって、内側へ巻き込む流体の流れが生じている。一方、保炎板77の下流に生じた保炎渦55では、混合流体51の流れの作用によって、外側へ巻き込む流体の流れが生じている。剥離渦92の流れと保炎渦55の流れは一帯の渦領域を形成し、保炎渦55が実質的に外周側へ拡張される。
【0031】
剥離渦92の外側を通過するガス燃料90及び二次空気52の流れは、剥離渦92を迂回するように剥離渦92の外縁に沿って外側へ膨らむが、剥離渦92の領域を通過すると剥離渦92の圧力分布によって強制的に内側へ方向を変えて、保炎渦55へ向かう。ガス燃料90の流れは保炎渦55に巻き込まれて、ガス燃料90は酸素濃度の低い環境で燃焼する。その結果、燃焼後のNOxの排出が抑制される。また、保炎渦55に巻き込まれたガス燃料90が燃焼することにより保炎渦55の火炎が安定し、安定した燃焼に寄与する。更に、ガス燃料90の流れが剥離渦92を回避したあと内側へ向くことによって、保炎渦55の脇を素通りして三次空気53へ衝突するガス燃料90の流れを抑制できる。これにより、ガス燃料90が三次空気53と急速に混合して酸素過多の環境で燃焼することにより多量のNOxが排出されることを回避できる。
【0032】
以下では、保炎板77に設けられた突起75の好適な態様を説明する。図4に示すように、バーナ軸線70と平行なバーナ軸線方向Xの座標軸を規定し、バーナ軸線方向Xの座標軸における保炎板77の基端の座標を[-L]、保炎板77の先端の座標を[0]と規定する。このバーナ軸線方向Xの座標軸は、主燃料を含む混合流体51の流れの下流へ行くほど値が大きくなる。バーナ軸線方向Xの座標軸において、突起75の座標Pは、[-L/2]以上0未満であることが好ましい。換言すれば、突起75は、保炎板77の先端から保炎板77のバーナ軸線方向Xの長さLの1/2までの間に配置されていることが好ましい。この場合、補助燃料出口91aの座標は[-L/2]より小さい。バーナ軸線方向Xの座標軸において、補助燃料出口91aの座標は[-L]以上[-L/2]未満であって、補助燃料出口91aは保炎板77の外面に沿って設けられていてもよいし、補助燃料出口91aの座標は[-L]より小さく補助燃料出口91aは保炎板77よりも上流に配置されていてもよい。このように配置された突起75によって、ガス燃料90の流れが剥離した際に剥離渦92が生じる領域は、エアコーン72bの後端、即ち、二次空気出口72aの下流にまで至る。これにより、保炎板77で生じた保炎渦55と剥離渦92とを確実に干渉させることができる。
【0033】
突起75においてガス燃料90の流れが衝突する面を前面とし、その反対側の面を後面とする。図5に示すように、バーナ軸線70を含む断面において、突起75の前面と保炎板77の外面とがなす角度θは、90度以上135度以下が好ましい。このように角度θが設定されることによって、突起75に衝突したガス燃料90の流れは径方向外側へより大きく膨らんで、その反動で剥離渦92が拡張され、剥離渦92と保炎渦55との干渉を強めることができる。
【0034】
また、図6に示すように、バーナ軸線70を含む断面において、突起75の前面の突出端と保炎板77の先端とを結ぶ直線と、保炎板77の外面とがなす角度αは、5度以上20度以下が好ましい。但し、補助燃料出口91aから噴出したガス燃料90の流れの一部は突起75と衝突し、残部は突起75と衝突せずに下流へ流れるように、突起75の保炎板77の外面からの突出高さが設計されている。二次空気流速が流路平均で20m/s以上40m/s以下で、補助燃料ガス流速が50m/s以上100m/s以下の条件下において、角度αが5度未満であれば、剥離渦92が保炎板77の下流端よりも下流に到達せず、剥離渦92と保炎渦55との干渉が生じにくい。また、同条件下において、角度αが20度を超えると、剥離渦92が径方向外側へ過度に拡張されて、二次空気流路72fが圧迫される。なお、二次気流路72fが過度に圧迫されると、二次空気流速が過剰となり、三次空気流速と三次空気流速とのバランスが崩れる。
【0035】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係るバーナ5は、
バーナ軸線70を中心とする筒状を呈し、主燃料及び一次空気の混合流体51を噴出する主燃料出口71aを有する第1ノズル71と、
下流へ向かって拡径する截頭円錐形状を有し、第1ノズル71の先端において主燃料出口71aの周縁に配置され、下流に保炎渦55を生じさせる保炎板77と、
主燃料出口71aを囲う二次空気出口72aを有し、二次空気出口72aから二次空気52を吹き出す第2ノズル72と、
第1ノズル71と第2ノズル72の間において二次空気52が流れる第2流路72fに配置され、保炎板77の外面又は第1ノズル71の外面に沿ってN分を含むガス燃料90を噴出する補助燃料出口91aを有する補助燃料ノズル91と、を備え、
保炎板77は、補助燃料出口91aの下流に配置され、保炎板77の外面で周方向に連続する突起75を有するものである。
【0036】
上記構成のバーナ5では、燃焼を開始すると、保炎板77の下流に保炎渦55が生じる。また、保炎板77の外面に沿って流れるガス燃料90の噴出流の一部は突起75に衝突して保炎板77の外面から剥離し、突起75の下流に剥離渦92が生じる。剥離渦92の流れは保炎渦55の流れに巻き込まれて、保炎渦55が外側へ拡張された渦領域が生じる。剥離渦92の外縁に沿って流れるガス燃料90及び二次空気52の流れは、剥離渦92の領域を通過すると剥離渦92の圧力分布によって強制的に内側へ方向を変えて、保炎渦55へ向かう。このようにしてガス燃料90の流れは保炎渦55に巻き込まれて、ガス燃料90は酸素濃度の低い環境で燃焼する。その結果、燃焼後のNOxの排出が抑制されるとともに、保炎渦55でのガス燃料90の燃焼により火炎が安定する。また、ガス燃料90の流れが剥離渦92を回避したあと内側へ向くことによって、保炎渦55の脇を素通りして三次空気53へ衝突するガス燃料90の流れを抑制して、燃焼後のNOxの排出を抑制できる。
【0037】
第2の項目に係るバーナ5は、第1の項目に係るバーナ5において、
バーナ軸線70と平行な座標軸を規定し、当該座標軸における保炎板77の基端の座標を-L、保炎板77の先端の座標を0と規定したときに、突起75の座標は-L/2以上0未満であるものである。
【0038】
上記構成のバーナ5では、上記のように突起75が配置されることによって、突起75の下流に生じた剥離渦92の領域は、第2ノズル72の二次空気出口72aより下流の保炎渦55の領域まで到達し、保炎渦55に剥離渦92を巻き込むことができる。
【0039】
第3の項目に係るバーナ5は、第1又は2の項目に係るバーナ5において、
バーナ軸線70を含む断面において、突起75の前面と保炎板77の外面とがなす角度θが90度以上135度以下であるものである。
【0040】
これにより、補助燃料出口91aから出たガス燃料90の噴出流は、突起75に衝突して径方向外側へより大きく膨らんで、その反動で剥離渦92が拡張され、剥離渦92と保炎渦55との干渉を強めることができる。
【0041】
第4の項目に係るバーナ5は、第1乃至3のいずれかの項目に係るバーナ5において、
バーナ軸線70を含む断面において、突起75の前面の突出端と保炎板77の先端とを結ぶ直線と、保炎板77の外面とがなす角度αは5度以上20度以下であるものである。
【0042】
これにより、二次空気流速と三次空気流速とのバランスを保持した状態で、剥離渦92を保炎渦55に干渉させることができる。
【0043】
本開示の第5の項目に係る燃焼炉2は、燃焼室20と、燃焼室20の壁に配置された第1乃至4のいずれかの項目のバーナ5とを備えるものである。
【0044】
上記構成のバーナ5は、燃焼炉2に備えられるバーナ5として好適である。
【0045】
以上の本開示の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態に纏められているが、複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 :燃焼炉
5 :バーナ
20 :燃焼室
51 :混合流体
52 :二次空気
55 :保炎渦
70 :バーナ軸線
71 :第1ノズル
71a :主燃料出口
72 :第2ノズル
72a :二次空気出口
72f :第2流路
75 :突起
77 :保炎板
90 :ガス燃料
91 :補助燃料ノズル
91a :補助燃料出口
92 :剥離渦
図1
図2
図3
図4
図5
図6