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  • 特開-有機系廃棄物加水分解処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024429
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】有機系廃棄物加水分解処理システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/45 20220101AFI20250213BHJP
   C02F 11/08 20060101ALI20250213BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20250213BHJP
   A61L 11/00 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B09B3/45
C02F11/08 ZAB
A61L2/07
A61L11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128532
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】523300757
【氏名又は名称】ジーエルコーエコ カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLKOECO Company Limited
【住所又は居所原語表記】2F, 4 Yeongdong-daero115-gill, Gangnam-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】509165655
【氏名又は名称】ザ・カーボン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 裕
(72)【発明者】
【氏名】井下 篤
【テーマコード(参考)】
4C058
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4C058AA27
4C058BB05
4C058CC04
4C058CC07
4C058DD04
4C058DD06
4C058EE01
4C058EE23
4D004AA02
4D004AA03
4D004AA04
4D004AA07
4D004AA12
4D004AA24
4D004AA46
4D004AA48
4D004AC05
4D004BA03
4D004BA04
4D004CA32
4D004CA34
4D004CA35
4D004CA42
4D004CA46
4D004CB28
4D004CC01
4D004CC03
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
4D059AA03
4D059BC03
4D059BJ02
4D059CA16
4D059CA25
4D059CC01
4D059CC03
4D059EA06
4D059EA08
4D059EB06
4D059EB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機系廃棄物の処理システムにおいて、工程の大幅な改善、更には滅菌や悪臭回収手段を有することにより、更に効率的且つ環境に影響を及ぼさない有機系廃棄物加水分解処理システムを提供する。
【解決手段】高温高圧の飽和水蒸気環境下で、有機系廃棄物を撹拌しながら加水分解すると共に、乾燥して処理する有機系廃棄物加水分解処理システムであって、前記システムは、有機系廃棄物を投入するための投入口及び有機系廃棄物を処理中若しくは処理後に出る蒸気若しくはガスを排出するための排出口を備えている耐圧容器と、耐圧容器内に飽和水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、耐圧容器内の圧力を開閉弁により調節するための圧力調節手段と、耐圧容器内の水蒸気を排出するための水蒸気排出手段と、耐圧容器内に投入された廃棄物を撹拌する攪拌手段と、有機系廃棄物を乾燥させるための熱風を供給する熱風供給手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温且つ高圧の飽和水蒸気環境下で、有機系廃棄物を撹拌しながら加水分解すると共に、乾燥して処理する有機系廃棄物加水分解処理システムであって、
前記有機系廃棄物加水分解処理システムは、前記有機系廃棄物を投入するための投入口及び前記有機系廃棄物を処理中若しくは処理後に出る蒸気若しくはガスを排出するための排出口を備えている耐食性のステンレスクラッド製耐圧容器と、前記耐圧容器内に飽和水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、前記耐圧容器内の圧力を開閉弁により調節するための圧力調節手段と、前記耐圧容器内の水蒸気を排出するための水蒸気排出手段と、前記耐圧容器内に投入された前記廃棄物を撹拌する攪拌手段と、前記有機系廃棄物を乾燥させるための熱風を供給する熱風供給手段とを備え、
前記攪拌手段は、攪拌するための軸が前記耐熱容器内を貫通して設けられ、並びに
前記有機系廃棄物加水分解処理システムは、前記耐熱容器内の温度を210~240℃且つ該耐熱容器内の圧力を2~3MPaとして、前記有機系廃棄物を前記攪拌手段により攪拌しながら、滅菌及び加水分解処理を行い、前記滅菌及び加水分解処理の後に、前記熱風供給手段により供給された熱風による乾燥後に分解された前記有機系廃棄物の粉体を排出することを特徴とする有機系廃棄物加水分解処理システム。
【請求項2】
前記有機系廃棄物は、使用済み巻き藁、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木屑、動物系固形不要物、動物性残渣、感染性若しくは非感染性を問わない医療廃棄物、分別済み生ゴミ、食品残渣、廃漁網、又は廃プリント基板のいずれかである請求項1に記載の有機系廃棄物加水分解処理システム。
【請求項3】
更に前記排出口から排出された蒸気及びガスを冷却、凝縮する凝縮手段と、前記凝縮手段に凝縮された排液を中和する中和手段と、前記凝縮手段にて凝縮されなかったガスを水洗する水洗手段及びアルカリ洗浄手段とを具備し、前記排液は、ポンプを介して中和手段と接続し、非凝縮ガスは、ブロワを介して、前記水洗手段及び前記アルカリ洗浄手段と連通し、更に、前記中和手段、前記水洗手段及び前記アルカリ洗浄手段は、減圧乾燥手段に接続されている請求項1又は2に記載の有機系廃棄物加水分解処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系廃棄物を高温・高圧の水蒸気環境下(亜臨界環境下ともいう)で、分解・乾燥するための有機系廃棄物加水分解処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理、特に有機系廃棄物の処理においては、従来の焼却炉による焼却処理や地中への埋設処分に代え、近年は、水蒸気を用いて、高温・高圧の飽和水蒸気(亜臨界環境下)で有機系廃棄物を加水分解処理する廃棄物処理方法が地球環境に悪影響を及ぼさない装置として注目されている。また、その方法による廃棄物処理装置やシステムが実際に開発、製造されており、このような装置やシステムの中には、廃棄物処理業者や地方自治体などに既に納入され、且つ運用されているものもある。
【0003】
上記の廃棄物処理方法、装置及び/又はシステムが、例えば特許第4751977号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示されている廃棄物処理装置は、主に有機系廃棄物を処理対象とし、それらの廃棄物を密閉型の耐圧容器内に入れた後、容器内に高圧の飽和蒸気を供給し、容器内の圧力・温度を制御しながら、高温・高圧の環境下で廃棄物を粉砕し、加水分解するという廃棄物処理装置又はシステムである。
【0004】
ここで、加水分解された廃棄処理物がそのままで耐圧容器から排出された場合、該処理物の多くは、含水率が高く且つヘドロ状態なので、悪臭を放ち、周辺の環境に多大な悪影響を及ぼす。この悪臭の改善を鑑みた場合、廃棄物処理方法、装置及び/又はシステムにおいては乾燥する工程や手段が必要になってくる。
【0005】
しかしながら、特許文献1には、乾燥工程若しくは手段についての記載はない。また特許文献1に開示されている装置では、二重壁構造の耐圧容器の外壁と内壁の隙間に高熱の水蒸気を供給して、乾燥時の水分蒸発による温度の低下を防ぐことができるが、間接的な加熱であるため乾燥に長時間かかり、乾燥時間の短縮化という点で更に改良の余地があった。
【0006】
こうした乾燥時間に係る改良点を改善すべく、例えば特開2008-246300号公報(特許文献2)においては、加水分解廃棄処理物を、別に設置した低圧容器に移動させ、そこで乾燥させ、耐圧容器の回転率を上げるという廃棄物処理装置及びその方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示されている廃棄物処理装置及びその方法においては、乾燥した廃棄処理物であれば、攪拌翼で移動させることができて、そのことにより耐圧容器の回転率を上げ、且つ乾燥時間の短縮を図ることが可能であるが、含水率が高く且つヘドロ状態の廃棄処理物の場合は、該廃棄処理物の移動が簡単ではないという問題があった。
【0007】
また、特開2010-284589号公報(特許文献3)では耐圧容器内に直接過熱水蒸気を供給して廃棄処理物を乾燥させる廃棄物処理システムが提案されている。特許文献3に係るシステムでは、悪臭の懸念は改善されたが、耐圧容器内で、乾燥用の流体の流路を十分に取れないと、乾燥時間がかかるという問題があった。
【0008】
こうした廃棄物処理装置やシステムに係る乾燥時間の短縮化は、廃棄物処理装置若しくはシステムの設置に要する高額な費用の回収、装置運転の経費面からも改善の要望が強かった。これは、大量の廃棄物を1日にどれだけ処理できるか、または1日に何回運転できるかという処理装置の回転率に関連するからで、乾燥時間の短縮化を図ることができれば、装置の回転率を上げて、処理できる廃棄物の量を大幅に増やすことができ、運転経費の節約、コスト回収に寄与できるからである。
【0009】
そして、特開2017-131841号公報(特許文献4)では、乾燥時間の短縮化について、更なる熱風供給手段と、圧力調節手段とを備えた廃棄物処理システムが開示されている。特許文献4に記載の発明においては、高圧の熱風を当該容器内に送入することで、いわゆるパスカルの原理により熱風を、表面だけでなく、内部の保有水にも浸透・接触させ、その後、圧力を低下させることにより、内部の水分を保有する固体が、表面の気流乾燥と同等の乾燥条件となり、乾燥時間に大きく影響する内部保有水の固体表面への移動時間に相当する時間を大幅に短縮することが可能になり、また圧力をパルス変動させることにより、更に短時間で処理が可能になったというものである。
【0010】
しかしながら、特許文献4に係るシステムでは、物質内部の毛細管内の水分移動に時間がかかりパルスの周期を長くする必要があり充分な時間短縮が図れないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4751977号公報
【特許文献2】特開2008-246300号公報
【特許文献3】特開2010-284589号公報
【特許文献4】特開2017-131841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先述したような事情を鑑み、本発明は、有機系廃棄物を高温・高圧の飽和水蒸気による加水分解、粉砕及び乾燥する手段を含む廃棄物処理システムにおいて、乾燥手段若しくは工程の大幅な改善により、更には滅菌や悪臭回収手段を有することによる更に効率的且つ環境に影響を及ぼさない有機系廃棄物加水分解処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決することを目的とした本発明に係る有機系廃棄物加水分解処理システムの構成は、高温且つ高圧の飽和水蒸気環境下で、有機系廃棄物を撹拌しながら加水分解すると共に、乾燥して処理する有機系廃棄物加水分解処理システムであって、前記有機系廃棄物加水分解処理システムは、前記有機系廃棄物を投入するための投入口及び前記有機系廃棄物を処理中若しくは処理後に出る蒸気若しくはガスを排出するための排出口を備えている耐食性のステンレスクラッド製耐圧容器と、前記耐圧容器内に飽和水蒸気を供給するための水蒸気供給手段と、前記耐圧容器内の圧力を開閉弁により調節するための圧力調節手段と、前記耐圧容器内の水蒸気を排出するための水蒸気排出手段と、前記耐圧容器内に投入された前記廃棄物を撹拌する攪拌手段と、前記有機系廃棄物を乾燥させるための熱風を供給する熱風供給手段とを備え、前記攪拌手段は、攪拌するための軸が前記耐熱容器内を貫通して設けられ、並びに前記有機系廃棄物加水分解処理システムは、前記耐熱容器内の温度を210~240℃且つ該耐熱容器内の圧力を2~3MPaとして、前記有機系廃棄物を前記攪拌手段により攪拌しながら、滅菌及び加水分解処理を行い、前記滅菌及び加水分解処理の後に、前記熱風供給手段により供給された熱風による乾燥後に分解された前記有機系廃棄物の粉体を排出することを特徴とすることにより、効果的に達成される。
【0014】
また、本発明に係るシステムの構成は、前記有機系廃棄物は、使用済み巻き藁、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木屑、動物系固形不要物、動物性残渣、感染性若しくは非感染性を問わない医療廃棄物、分別済み生ゴミ、食品残渣、廃漁網、又は廃プリント基板のいずれかであることにより、或いは更に前記排出口から排出された蒸気及びガスを冷却、凝縮する凝縮手段と、前記凝縮手段に凝縮された排液を中和する中和手段と、前記凝縮手段にて凝縮されなかったガスを水洗する水洗手段及びアルカリ洗浄手段とを具備し、前記排液は、ポンプを介して中和手段と接続し、非凝縮ガスは、ブロワを介して、前記水洗手段及び前記アルカリ洗浄手段と連通し、更に、前記中和手段、前記水洗手段及び前記アルカリ洗浄手段は、減圧乾燥手段に接続されていることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機系廃棄物加水分解処理システムによれば、高温・高圧の飽和蒸気による加水分解手段を含む廃棄物処理装置において、乾燥時間が大幅に短縮され、装置の1日の回転率を増やすことができ、コストの大幅な低減を図ることができるようになった。
【0016】
本発明の廃棄物処理装置によれば、世界保健機関(WHO)にて定める滅菌基準(オートクレーブ内で121℃30分以上)よりも高い基準で滅菌することにより完全に有機系廃棄物を滅菌することが可能になり処理乾燥物は一般の廃棄物として廃棄・埋め立てが可能となる。また消臭手段を付加することにより、完全な有機系廃棄物の消臭が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る廃棄物処理システムに用いる産業廃棄物処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る有機系廃棄物の加水分解処理装置の一例を示す概略図を用いて説明する。
【0019】
図1において、1は廃棄物を収容し処理するための耐圧容器を示し、1aは廃棄物の投入口を示し、1bは処理済廃棄物の排出口を示している。なお耐圧容器1は密閉構造となっており、投入口1a、排出口1bは弁により開閉可能な構造(図示せず)になっている。なお図示しないが、廃棄物を処理するための耐圧容器1は二重構造とし、外壁と内壁の隙間に高温の水蒸気を供給する構造にして、乾燥操作を補助する構造にしてもよい。更に、耐圧容器1は、密閉構造であるということを順守すれば三重構造、ひいては多重構造といった構造を採ることも可能である。また、耐圧容器1の大きさ、材質、形状等は、特に限定はなく、設置場所や周囲の環境に応じて適宜選択若しくは設計可能である。また、投入口1a、排出口1bの設置場所については、廃棄物の移送を考慮さえすれば、図1に示すような場所にこだわる必要が無い。
【0020】
2は、投入口1aから投入された廃棄物を攪拌しながら排出口1bへ移送するための攪拌翼を示す。2aは攪拌翼2の撹拌軸を示し、撹拌軸2aは耐圧容器1内に貫通して設けられている。なお、撹拌翼2の形状は、特に問わないが、廃棄物の撹拌並びに投入口1aから排出口1bへの廃棄物の移送を考慮した場合、螺旋スクリュー羽根を設けても良い。
【0021】
3は、撹拌軸2aを回転させるためのモータである。モータ3は正逆回転制御され、投入口1aから投入された廃棄物が、耐圧容器1内を前後に排出口1bへと移送されるようになっている。モータ3については正逆回転可能であれば、性能等に関して、特に限定はない。
【0022】
4は、耐圧容器1内に、廃棄物を加水分解するための高温・高圧の水蒸気を供給するボイラを示し、4aは、廃棄物の加水分解時にボイラ4から耐圧容器1内へ高温・高圧の水蒸気を供給するための水蒸気供給管である。
【0023】
なお、耐圧容器1内に供給する水蒸気の温度、圧力及び/又は供給時間は、処理する廃棄物の状態(例えば、物体(廃棄物)表面の付着水と物体内部保有水の含有率の大小等)により調節される。
【0024】
5は高圧の熱風発生装置を示す。5aは開閉弁で、乾燥時の耐圧容器1の圧力をパルス制御する開閉弁である。言い換えると、開閉弁5aは、熱風発生装置5から発生させた空気(熱風)の風量の制御するための開閉弁も兼ねる。熱風発生装置5や開閉弁5aについては、公知の製品を用いても構わない。なお、開閉弁5aは、自動方式でも手動方式でも構わないが、自動方式が望ましい。
【0025】
9は耐圧容器1内の温度、圧力、時間を制御する制御装置を示す。該制御装置9は、投入口1a、排出口1b、モータ3、ボイラ4、開閉弁5a、温度測定ライン6、圧力測定ライン7、及び蒸気排出口8に連結(接続)されている。なおその詳細は図示しないが、この制御装置9については、連結されている投入口1a等の各構成部のコントローラが集約されているようなものであり、制御装置9の製造については任意の手段若しくは方式を取り得る。また、投入口1a等の各構成部と、制御装置9との接続手段については、図1においては有線(ライン)で接続された形態を記しているが、投入口1a等の各構成部並びに制御装置9にセンサ等をそれぞれ設けて、無線の信号接続手段を採用しても良い。また、該制御装置9の役割としては、温度測定ライン6、圧力測定ライン7により測定した耐圧容器1内の温度、圧力に基づいて、加水分解時のボイラ4の水蒸気蒸気の供給量の制御、乾燥時の開閉弁5aの開閉、及び/又は蒸気排出口8の開閉をする。更にまた、制御装置9では耐圧容器1の投入口1a及び/又は排出口1bの開閉の制御、攪拌翼2(モータ3)の正逆回転及び/又は回転速度の制御などを行う。
【0026】
また、制御装置9や、当該装置に接続されている各構成部については、シーケンサやタイマーなどを設置しても良い。
【0027】
また、図示はしないが、消臭装置(消臭手段)を本発明に係る有機系廃棄物加水分解処理システムに付加的に設置してもよい。消臭装置としては、オゾン消臭装置、光触媒消臭装置、プラズマ消臭装置、放電酸素発生装置等が使用可能である。
【0028】
10は、蒸気排出口8に接続しているコンデンサ(凝縮器)を示す。また11は、コンデンサ10で凝縮しないガスを移送するための移送用ブロワを示す。12は、コンデンサ10で凝縮した排液を中和槽17に移送するポンプを示している。なお、コンデンサ10、ブロワ11、ポンプ12、及び中和槽17に関しては、公知のもので構わない。
【0029】
コンデンサ10で凝縮されないガスは、ブロワ11を経て水洗浄吸収塔13とアルカリ洗浄吸収塔14で洗浄され、無臭化された後外部に排気される。アルカリ洗浄吸収塔14には、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)等のアルカリ水溶液が入れられている。なお、アルカリ水溶液に次亜塩素酸を加えての酸化分解除去する場合もある。また、水洗浄吸収塔13及び/又はアルカリ洗浄吸収塔14に貯まった余剰の水分は、後述する水分蒸発容器(減圧乾燥機)に移送するようラインを組んでも良い(図1参照)。16は排水の最終貯槽であり、周辺の排水の環境基準等により、そのまま排水するか、排水処理場を経由して公共水路に排水する。
【0030】
以上述べた各構成部材を図1に示すように組み合わせることにより、本発明に係る廃棄物処理システムが成立する。
【0031】
次に、本発明に係る廃棄物処理システムの動作内容(廃棄物処理方法の概要)について説明する。本発明に係る廃棄物処理システムは高温且つ高圧の水蒸気を用いた加水分解後の廃棄物について、従来の高圧飽和水蒸気を用いた加水分解廃棄物処理技術と比較した場合、短時間で乾燥させることに特徴があり、処理する廃棄物は、加水分解可能な有機物であれば、特に限定されない。また本発明に係る廃棄物処理システムでは加水分解処理後の廃棄物を短時間で乾燥させるが、熱分解、炭化までは行わないので、燃料や肥料などとして再利用できるようになる。
【0032】
廃棄物を加水分解する条件は、特に限定されないが、耐圧容器(例えば図1の耐熱容器1を参照)内の温度を好ましくは210~240℃、より好ましくは212~234℃、圧力を2~3MPaに制御して廃棄物を高温・高圧の飽和水蒸気を使用して処理すると、大半の(有機系)廃棄物を加水分解処理することが可能である。なお、耐圧容器内の温度が210℃、且つ圧力が2MPa以下であると、廃棄物に混入しているプラスチック類が十分加水分解処理されず、また該耐圧容器内の温度が240℃、且つ圧力が3MPa以上であっても、一般の加水分解性能は必ずしも改良されず、更に耐圧容器の肉厚を厚くせざるを得ないことから、装置のコストが上昇し、経済性が悪くなってしまう問題がある。
【0033】
また、廃棄物を加水分解する水蒸気としては、温度が210~240℃で且つ圧力が2~3MPaであることが望ましい。温度が210℃以下且つ圧力が2MPa以下であると、廃棄物に混入しているプラスチック類が加水分解処理されず、温度が240℃以上且つ圧力3MPa以上であっても加水分解の効果がさほど上がるものではない。
【0034】
また、加水分解に係る反応時間については、耐圧容器内の温度及び/又は圧力、水蒸気の圧力との兼ね合いによるが、5~250分くらいが望ましい。この反応時間が5分以下だと、廃棄物が十分に加水分解処理されない。また250分以内で、一般の廃棄物の加水分解は完了し、それ以上の時間をかけても加水分解の効果が上がるものではない。
【0035】
対象の有機系の廃棄物としては、使用済み巻き藁、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木屑、動物系固形不要物、動物性残渣、感染性又は非感染性を問わない医療廃棄物、分別済み生ゴミ、食品残渣、廃漁網、廃プリント基板などが挙げられる。処理の量は、本発明に係る廃棄物処理システムの規模や各構成装置の大きさに合わせて任意の量の廃棄物を処理することが可能である。
【0036】
次に、高温且つ高圧の水蒸気を用いて加水分解された廃棄物は、含水率が高い、いわゆるヘドロ状態になっているため、そのままでは耐圧容器からうまく取り出すことができない。そこで、本発明に係る廃棄物処理システムでは加水分解処理後に、高温の高圧の熱風を送入することにより、特許文献4に記載されているように圧力をパルス変動させることにより、短時間に乾燥し、排出させるシステムとすることにより、水蒸気で加水分解処理した廃棄物の高効率な乾燥且つ乾燥時間の短縮を図ることが可能になった。しかしながら、当該圧力をパルス変動させなくても、本発明は成立する。
【0037】
なお、熱風(熱風)の温度は凡そ500℃くらいで尚且つ圧力は、0.5~1MPaくらいのものを指す。また、当該乾燥前には、耐圧容器内の圧を予め低く(ほぼ常圧)しておく。ここで言う圧力とは、耐圧容器内で維持する圧力のことを言う。その圧力が0.5MPa以下であると、廃棄物の含水率が下がらない。そして1MPa以上であっても設備投資の金額が増える割には、乾燥時間の短縮に効果が少ないことと、また耐圧容器内で廃棄物の含水率は下がるものの、一般の廃棄物の加水分解性能は必ずしも改良されず、加水分解処理廃棄物の再利用(例えば肥料や燃料)を考慮した場合に高温での劣化が心配されるため適切ではない。
【0038】
次に、熱風は粉体の乾燥具合(粉体の含水率を30%程度とすることを目標とする)により連続して1時間程度挿入される。
【0039】
以上、本発明に係る有機系廃棄物加水分解処理システムの実施形態を述べたが、本発明は、上記の実施形態にとらわれず、本明細書、図面、及び/又は特許請求の範囲に記載の事項を逸脱しなければ、種々の実施形態を採ることが可能であることは言うまでもない。
【実施例0040】
上記に述べた実施形態の詳細を、実施例を挙げて説明する。なお、廃棄物処理については、図1に示す本発明に係る有機系廃棄物加水分解処理システム(装置)を用いた。
【0041】
[試験例1]本発明に係る有機系廃棄物加水分解処理システムを用いた加水分解処理
本試験では、感染症医療廃棄物(「試料1」とする。)及び生ごみ(「試料2」とする。)について、下記表1に示す加水分解処理の条件で、処理を行った。
【0042】
【表1】
【0043】
先ず、表1における加水分解処理については、図1に示す処理システムの耐圧容器内で行った加水分解処理を言う。そして、表1における生成物とは、各試料を加水分解処理且つ乾燥後に各試料を粉体にしたものを言う。
【0044】
試料1に係る感染症医療廃棄物においては、滅菌試験を行ったところ、合格、即ち菌(芽胞菌)の生育が認められなかった。この滅菌試験については、「試験例2」として後述する。一方、試料2に係る生ごみにおいては、滅菌試験を実施しなかったが、堆肥化可能になるほどに加水分解処理が成された。
【0045】
[試験例2]加水分解処理及び乾燥後の感染症医療廃棄物の滅菌試験
試験例2では、試験例1における加水分解処理及び乾燥後の試料1(感染症医療廃棄物)について、滅菌試験を行った。
【0046】
先ず、加水分解処理及び乾燥後の試料1(試験例2においては「検体1」とする。)並びに比較試験例として滅菌されていない感染症医療廃棄物(試験例2においては「検体2」とする。)について、芽胞菌、即ちバイオロジカル・インジケータとしてゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus ATCC#7953)を用いて、各検体共に55℃7日間当該芽胞菌を培養した後の生育の有無を確認した。しかしながら、検体1においては、当該培養後においては芽胞菌の生育の有無を判定できなかったため、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地(栄研化学株式会社製)に培養液100μLを接種し、更に55℃7日間培養後に生育の有無を確認した。その結果を下記表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2より、検体1においては、芽胞菌の生育を認めず、検体2においては、芽胞菌の生育を認めた。
【0049】
なお、上記に述べた実施例は一例であるが、有機系廃棄物に寄生する芽胞菌(例えばバチルス属)のような通常の加熱では殺菌できないような細菌についても、本発明に係る有機系廃棄物加水分解処理システムにおける高温且つ高圧の水蒸気を用いることにより、滅菌できることを示唆する結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る廃棄物処理システムで処理した有機系廃棄物は、熱分解、炭化までは行わないので、燃料や肥料(堆肥)などとして再利用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 耐圧容器
2 攪拌翼
3 モータ
4 ボイラ
5 熱風発生装置
6 温度検出ライン
7 圧力検出ライン
8 蒸気排出口
9 制御装置
10 コンデンサ(凝縮器)
11 ブロワ
12 ポンプ
13 水洗吸収塔
14 アルカリ洗浄用吸収塔
16 排水貯蔵タンク
17 中和槽
図1