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  • 特開-柱梁接合部構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024450
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】柱梁接合部構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20250213BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 505G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128563
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 峰里
(72)【発明者】
【氏名】小平 渉
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC01
2E125AC15
2E125BA07
2E125BB11
2E125BC02
2E125BD01
2E125BE03
2E125BF08
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】柱を形成するコンクリートに柱梁接合部の梁からの力を受けるための支圧耐力を持たせつつ、建物を建てる際のコストが高くなることを抑制できる柱梁接合部構造を提供する。
【解決手段】建物の柱梁接合部13は、鉄骨造の梁12同士が交差する箇所に対し柱11も交差する箇所である。柱梁接合部13は、交差する梁12同士で挟まれる部分に配置された塞ぎ板15によって囲まれる。柱11を形成するコンクリートとしては第1のコンクリート21が用いられる。柱梁接合部13における塞ぎ板15で囲まれた部分の内側は、第1のコンクリート21よりも強度の高い第2のコンクリート22によって埋められる。第2のコンクリート22は、柱梁接合部13よりも上に位置する柱11と柱梁接合部13よりも下に位置する柱11とのうち、少なくとも一方に向けてはみ出すことにより、そのはみ出した側の柱11を形成するコンクリートの一部となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨造の梁同士が交差する箇所に対し鉄筋コンクリート造の柱も交差する柱梁接合部に適用され、前記柱梁接合部は、交差する前記梁同士で挟まれる部分に配置された塞ぎ板によって囲まれており、前記柱梁接合部における前記塞ぎ板で囲まれた部分の内側がコンクリートによって埋められている柱梁接合部構造において、
前記柱を形成するコンクリートとしては第1のコンクリートが用いられ、
前記柱梁接合部における前記塞ぎ板で囲まれた部分の内側は、前記第1のコンクリートよりも強度の高い第2のコンクリートによって埋められており、
前記第2のコンクリートは、前記柱梁接合部よりも上に位置する前記柱と前記柱梁接合部よりも下に位置する前記柱とのうち、少なくとも一方に向けてはみ出すことにより、そのはみ出した側の柱を形成するコンクリートの一部となっている柱梁接合部構造。
【請求項2】
前記第2のコンクリートは、前記柱梁接合部よりも上に位置する前記柱と前記柱梁接合部よりも下に位置する前記柱との両方に向けてはみ出している請求項1に記載の柱梁接合部構造。
【請求項3】
前記柱梁接合部に位置する前記梁における上面の幅方向の縁から上側かつ前記梁の幅方向外側に向けて前記柱梁接合部の上に位置する前記柱の側面まで延びる直線L1を定め、その直線L1と前記側面との交点から前記梁の上面の高さ位置までの距離をX1としたとき、前記第2のコンクリートにおける前記柱梁接合部の前記塞ぎ板で囲まれた部分から前記柱梁接合部の上に位置する前記柱に向けはみ出した箇所のはみ出し量H1が距離X1以下とされており、
前記柱梁接合部に位置する前記梁における下面の幅方向の縁から下側かつ前記梁の幅方向外側に向けて前記柱梁接合部の下に位置する前記柱の側面まで延びる直線L2を定め、その直線L2と前記側面との交点から前記梁の下面の高さ位置までの距離をX2としたとき、前記第2のコンクリートにおける前記柱梁接合部の前記塞ぎ板で囲まれた部分から前記柱梁接合部の下に位置する前記柱に向けてはみ出した箇所のはみ出し量H2が距離X2以下とされている請求項2に記載の柱梁接合部構造。
【請求項4】
前記梁の上面に対する前記直線L1の傾斜角度A1は、45°以上且つ90°未満の範囲内の値であり、
前記梁の下面に対する前記直線L2の傾斜角度A2は、45°以上且つ90°未満の範囲内の値である請求項3に記載の柱梁接合部構造。
【請求項5】
前記傾斜角度A1及び前記傾斜角度A2は45°であり、前記はみ出し量H1は前記距離X1とされ、前記はみ出し量H2は前記距離X2とされている請求項4に記載の柱梁接合部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物を柱RC梁S構法(RCS構法)等によって建てる場合、建物には鉄骨造の梁同士が交差する箇所に対し柱も交差する柱梁接合部が設けられる。特許文献1に示すように、そうした柱梁接合部は、交差する前記梁同士で挟まれる部分に配置された塞ぎ板によって囲まれている。そして、柱梁接合部における前記塞ぎ板で囲まれた部分の内側は、コンクリートによって埋められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-106108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記建物においては、柱梁接合部における塞ぎ板で囲まれた部分がコンクリートによって埋められているため、そのコンクリートを柱梁接合部の梁が通過している。この梁は柱を形成するコンクリートに接しているため、そのコンクリートには上記梁からの上または下に向けた力が作用する。従って、上記コンクリートには、梁からの上記力を受けたときの耐久力である支圧耐力が求められる。ただし、上記コンクリートに必要とされる支圧耐力を確保することを意図して、柱全体を強度の高いコンクリートで形成したとすると、そうした強度の高い高価なコンクリートの使用量が増える分、建物を建てる際のコストが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する柱梁接合部構造は、鉄骨造の梁同士が交差する箇所に対し鉄筋コンクリート造の柱も交差する柱梁接合部に適用される。柱梁接合部は、交差する梁同士で挟まれる部分に配置された塞ぎ板によって囲まれている。柱を形成するコンクリートとしては第1のコンクリートが用いられる。柱梁接合部における塞ぎ板で囲まれた部分の内側は、第1のコンクリートよりも強度の高い第2のコンクリートによって埋められている。第2のコンクリートは、柱梁接合部よりも上に位置する柱と柱梁接合部よりも下に位置する柱とのうち、少なくとも一方に向けてはみ出すことにより、そのはみ出した側の柱を形成するコンクリートの一部となっている。
【0006】
上記構成によれば、柱梁接合部の上の柱と下の柱との少なくとも一方の柱については、その柱を形成するコンクリートのうち、柱梁接合部の梁と接する箇所のコンクリートが第2のコンクリートとなり、その他の箇所が第1のコンクリートとなる。これにより、上記柱に対して梁からの力が作用するとき、その力については柱における柱梁接合部の梁と接する箇所を形成するコンクリート、すなわち第1のコンクリートよりも強度の高い第2のコンクリートが受ける。このため、柱を形成するコンクリートに上記力を受けるための支圧耐力を持たせることができる。また、柱における柱梁接合部の梁と接する箇所以外の箇所は、柱を形成するコンクリートとして第2のコンクリートよりも強度の低い第1のコンクリートが用いられている。これにより、柱を形成するコンクリートとしての第2のコンクリートの使用量を少なく抑えることができるため、建物を建てる際のコストが高くなることを抑制できる。
【0007】
上記柱梁接合部構造において、第2のコンクリートは、柱梁接合部よりも上に位置する柱と柱梁接合部よりも下に位置する柱との両方に向けてはみ出しているものとされる。
上記構成によれば、柱梁接合部の上の柱と下の柱との両方の柱について、それらの柱を形成するコンクリートのうち、柱梁接合部の梁と接する箇所のコンクリートが第2のコンクリートとなり、その他の箇所が第1のコンクリートとなる。このため、柱梁接合部の上に位置する柱に対して梁からの上に向かう力が作用するとき、その力については上記柱における柱梁接合部の梁と接する箇所を形成する第2のコンクリートが受ける。また、柱梁接合部の下に位置する柱に対して梁からの下に向かう力が作用するとき、その力については上記柱における柱梁接合部の梁と接する箇所を形成する第2のコンクリートが受ける。これらにより、柱梁接合部の上に位置する柱を形成するコンクリート、及び、柱梁接合部の下に位置する柱を形成するコンクリートに、上記力を受けるための支圧耐力を持たせることができる。
【0008】
上記柱梁接合部構造において、第2のコンクリートにおける柱梁接合部の塞ぎ板で囲まれた部分から柱梁接合部の上に位置する柱に向けてはみ出した箇所のはみ出し量H1は、次のように定められる。すなわち、柱梁接合部に位置する梁における上面の幅方向の縁から上側かつ梁の幅方向外側に向けて柱梁接合部の上に位置する柱の側面まで延びる直線L1を定め、その直線L1と上記側面との交点から梁の上面の高さ位置までの距離をX1としたとき、上記はみ出し量H1が距離X1以下とされる。また、第2のコンクリートにおける柱梁接合部の塞ぎ板で囲まれた部分から柱梁接合部の下に位置する柱に向けてはみ出した箇所のはみ出し量H2は、次のように定められる。すなわち、柱梁接合部に位置する梁における下面の幅方向の縁から下側かつ梁の幅方向外側に向けて柱梁接合部の下に位置する柱の側面まで延びる直線L2を定め、その直線L2と上記側面との交点から梁の下面の高さ位置までの距離をX2としたとき、上記はみ出し量H2が距離X2以下とされる。
【0009】
上記構成によれば、柱梁接合部の上に位置する柱に対して梁からの上に向かう力が作用するとき、その力については上記柱における柱梁接合部の梁と接する箇所を形成する第2のコンクリートが受ける。この第2のコンクリートにおける上記力の作用に基づく応力は、上記柱における第1のコンクリートで形成された箇所に向けて広がるように生じる。これにより、上記柱の第1のコンクリートにおいて、第2のコンクリートからの上記応力を受ける面積が拡大される。こうした面積の拡大には上限があるものの、上記はみ出し量H1が距離X1以下にされることにより、上記面積の拡大が上限以下にとどめられる。このため、上記柱を形成するコンクリートとして第2のコンクリートが無駄に多く使用されることを抑制できる。
【0010】
また、柱梁接合部の下に位置する柱に対して梁からの下に向かう力が作用するとき、その力については上記柱における柱梁接合部の梁と接する箇所を形成する第2のコンクリートが受ける。この第2のコンクリートにおける上記力の作用に基づく応力は、上記柱における第1のコンクリートで形成された箇所に向けて広がるように生じる。これにより、上記柱の第1のコンクリートにおいて、第2のコンクリートからの上記応力を受ける面積が拡大される。こうした面積の拡大には上限があるものの、上記はみ出し量H2が距離X2以下にされることにより、上記面積の拡大が上限以下にとどめられる。このため、上記柱を形成するコンクリートとして第2のコンクリートが無駄に多く使用されることを抑制できる。
【0011】
上記柱梁接合部構造において、梁の上面に対する上記直線L1の傾斜角度A1としては45°以上且つ90°未満の範囲内の値とし、梁の下面に対する上記直線L2の傾斜角度A2としては45°以上且つ90°未満の範囲内の値とすることが考えられる。
【0012】
柱梁接合部の上に位置する柱に対して梁からの上に向かう力が作用するとき、上記柱における柱梁接合部の梁と接する箇所を形成する第2のコンクリートには、上記力に基づく応力が上記柱における第1のコンクリートで形成された箇所に向けて広がるように生じる。第2のコンクリートに作用する上記応力は、上記柱における第1のコンクリートで形成された箇所に向けて、梁の上面に対し45°の角度をもって広がるように生じると推測される。
【0013】
また、柱梁接合部の下に位置する柱に対して梁からの下に向かう力が作用するとき、上記柱における柱梁接合部の梁と接する箇所を形成する第2のコンクリートには、上記力に基づく応力が上記柱における第1のコンクリートで形成された箇所に向けて広がるように生じる。第2のコンクリートに作用する上記応力は、上記柱における第1のコンクリートで形成された箇所に向けて、梁の下面に対し45°の角度をもって広がるように生じると推測される。
【0014】
上記構成によれば、直線L1の傾斜角度A1が45°以上且つ90°未満の範囲内の値とされるとともに、直線L2の傾斜角度A2が45°以上且つ90°未満の範囲内の値とされる。このように傾斜角度A1,A2を定めることにより、はみ出し量H1,H2の上限値である距離X1,X2が適切に定められるようになる。その結果、柱の第1のコンクリートにおいて第2のコンクリートからの上記応力を受ける面積が、はみ出し量H1,H2を距離X1,X2以下とすることによって適切に定められるようになる。
【0015】
上記柱梁接合部構造において、傾斜角度A1,A2、及びみ出し量H1,H2はそれぞれ以下のように定めることが考えられる。すなわち、傾斜角度A1及び傾斜角度A2はそれぞれ45°とされる。はみ出し量H1は距離X1とされる。はみ出し量H2は距離X2とされる。
【0016】
上記構成によれば、傾斜角度A1,A2を45°とすることにより、はみ出し量H1,H2の上限値である距離X1,X2がより一層適切に定められる。更に、はみ出し量H1,H2を距離X1,X2とすることにより、柱の第1のコンクリートにおいて第2のコンクリートからの上記応力を受ける面積がより一層適切に定められる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】建物における柱梁接合部を示す斜視図である。
図2図1の柱梁接合部及びその周辺を矢印II-II方向から見た状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、柱梁接合部構造の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すように、柱RC梁S構法(RCS構法)で建てられた建物は、鉄筋コンクリート造の柱11と鉄骨造の梁12とを備えている。梁12を形成する鉄骨は、上下方向に立った状態となる板状のウェブ12aと、そのウェブ12aの上下両端から水平方向に突出するフランジ12bと、を有している。フランジ12bは、鉄骨の長手方向に延びている。
【0019】
こうした建物には柱梁接合部13が存在している。柱梁接合部13は、建物において、梁12同士が交差するとともに上記梁12同士と柱11とが交差する箇所である。柱梁接合部13における交差する梁12同士の間であって、柱11の外側面に対応する位置にはそれぞれL字状に屈曲された塞ぎ板15が配置されている。塞ぎ板15は、梁12のウェブ12a及びフランジ12bに対し接合されている。
【0020】
建物の柱RC梁S構法では、鉄筋コンクリート造の柱11を形成した後、その柱11の上端部に梁12同士の交差部分を配置する。更に、梁12同士の交差部分(柱梁接合部13)における塞ぎ板15で囲まれた部分には、柱梁接合部13よりも上段の柱11を形成するための鉄筋16が通されるとともにコンクリートが打設される。その後、上記柱梁接合部13の上側に同柱梁接合部13よりも上段の柱11が形成される。建物の柱RC梁S構法では、このように柱11と梁12とが上段に向けて段階的に形成される。そして、柱RC梁S構法で建てられた建物の柱梁接合部13では、塞ぎ板15が剪断抵抗となるとともに、同塞ぎ板15によって柱梁接合部13内のコンクリートの拘束が行われる。
【0021】
柱11を形成するコンクリートとしては第1のコンクリート21が用いられる。柱梁接合部13における塞ぎ板15で囲まれた部分の内側は、第1のコンクリート21よりも強度の高い第2のコンクリート22によって埋められている。第1のコンクリート21よりも強度の高い第2のコンクリート22は、第1のコンクリート21よりも高価になる。
【0022】
第2のコンクリート22は、柱梁接合部13よりも上に位置する柱11と柱梁接合部13よりも下に位置する柱11との両方に向けてはみ出すことにより、柱11を形成するコンクリートの一部となっている。このため、柱11を形成するコンクリートのうち、柱梁接合部13と接する箇所のコンクリートが第2のコンクリート22となり、その他の箇所のコンクリートが第1のコンクリート21となる。柱11を形成するコンクリートのうちの第2のコンクリート22は、柱梁接合部13の梁12と接している。
【0023】
<柱梁接合部13から柱11にはみ出した第2のコンクリート22について>
図2には、第2のコンクリート22における柱梁接合部13の塞ぎ板15で囲まれた部分から、柱梁接合部13の上に位置する柱11に向けてはみ出した箇所のはみ出し量H1が示されている。このはみ出し量H1は距離X1以下とすることが考えられる。より詳しくは、この実施形態でのはみ出し量H1は距離X1とされている。
【0024】
上記距離X1は、次のように定められている。すなわち、柱梁接合部13に位置する梁12における上面の幅方向の縁から上側かつ梁12の幅方向外側に向けて柱梁接合部13の上に位置する柱11の側面まで延びる直線L1を定める。そして、直線L1と上記側面との交点P1から梁12の上面の高さ位置までの距離が上記距離X1とされる。
【0025】
梁12の上面に対する直線L1の傾斜角度A1は、45°以上且つ90°未満の範囲内の値とされる。ここでの範囲としては、例えば45°~70°とすることが好ましく、45°~55°とすることがより好ましい。この実施形態での傾斜角度A1は45°とされている。
【0026】
また、図2には、第2のコンクリート22における柱梁接合部13の塞ぎ板15で囲まれた部分から、柱梁接合部13の下に位置する柱11に向けてはみ出した箇所のはみ出し量H2も示されている。このはみ出し量H2は距離X2以下とすることが考えられる。より詳しくは、この実施形態でのはみ出し量H2は距離X2とされている。
【0027】
上記距離X2は、次のように定められている。すなわち、柱梁接合部13に位置する梁12における下面の幅方向の縁から下側かつ梁12の幅方向外側に向けて柱梁接合部13の下に位置する柱11の側面まで延びる直線L2を定める。そして、直線L2と上記側面との交点P2から梁12の下面の高さ位置までの距離が上記距離X2とされる。
【0028】
梁12の上面に対する直線L2の傾斜角度A2は、45°以上且つ90°未満の範囲内の値とされる。ここでの範囲としては、例えば45°~70°とすることが好ましく、45°~55°とすることがより好ましい。この実施形態での傾斜角度A2は45°とされている。
【0029】
次に、本実施形態の柱梁接合部構造の作用効果について説明する。
(1)柱梁接合部13における塞ぎ板15で囲まれた部分は、第2のコンクリート22によって埋められている。この第2のコンクリート22は、柱梁接合部13の上に位置する柱11側にはみ出すとともに、柱梁接合部13の下に位置する柱11側にはみ出している。このため、柱梁接合部13の上に位置する柱11を形成するコンクリートのうち、柱梁接合部13と接する箇所のコンクリートは第2のコンクリート22となり、その他の箇所のコンクリートは第1のコンクリート21となる。また、柱梁接合部13の下に位置する柱11を形成するコンクリートのうち、柱梁接合部13と接する箇所のコンクリートは第2のコンクリート22となり、その他の箇所のコンクリートは第1のコンクリート21となる。
【0030】
柱梁接合部13を通過する梁12は、柱11を形成する第2のコンクリート22に接している。柱11には上記梁12からの上または下に向けた力が作用する。そして、柱11に対して梁12からの上記力が作用するとき、その力については柱11における柱梁接合部13の梁12と接する箇所を形成する第2のコンクリート22が受ける。詳しくは、柱梁接合部13の上に位置する柱11に対して梁12からの上に向かう力が作用するとき、その力については上記柱11における柱梁接合部13の梁12と接する箇所を形成する第2のコンクリート22が受ける。また、柱梁接合部13の下に位置する柱11に対して梁12からの下に向かう力が作用するとき、その力については上記柱11における柱梁接合部13の梁12と接する箇所を形成する第2のコンクリート22が受ける。
【0031】
このため、柱11における梁12と接する箇所を形成するコンクリート(第2のコンクリート22)に上記力を受けるための支圧耐力を持たせることができる。また、柱11における柱梁接合部13の梁12と接する箇所以外の箇所は、柱11を形成するコンクリートとして第2のコンクリート22よりも強度の低い第1のコンクリート21が用いられている。これにより、柱11を形成するコンクリートとしての第2のコンクリート22の使用量を少なく抑えることができるため、建物を建てる際のコストが高くなることを抑制できる。
【0032】
(2)第2のコンクリート22における柱梁接合部13の塞ぎ板15で囲まれた部分から柱梁接合部13の上に位置する柱11に向けてはみ出した箇所のはみ出し量H1は、距離X1以下とされる。この距離X1は、次のように定められる。すなわち、柱梁接合部13に位置する梁12における上面の幅方向の縁から上側かつ梁12の幅方向外側に向けて柱梁接合部13の上に位置する柱11の側面まで延びる直線L1を定める。そして、直線L1と上記側面との交点P1から梁12の上面の高さ位置までの距離が距離X1とされる。
【0033】
柱梁接合部13の上に位置する柱11を形成するコンクリートのうち、柱梁接合部13に接する箇所を形成する第2のコンクリート22は、梁12からの上に向かう力を受ける。第2のコンクリート22における上記力に基づく応力は、上記柱11における第1のコンクリート21で形成された箇所に向けて広がるように生じる。これにより、上記柱11の第1のコンクリート21において、第2のコンクリート22からの上記応力を受ける面積が拡大される。こうした面積の拡大には上限があるものの、上記はみ出し量H1が距離X1以下にされることにより、上記面積の拡大が上限以下にとどめられる。このため、上記柱11を形成するコンクリートとして第2のコンクリート22が無駄に多く使用されることを抑制できる。
【0034】
(3)柱梁接合部13の上に位置する柱11に対して梁12からの上に向かう力が作用するとき、上記柱11における柱梁接合部13の梁12と接する箇所を形成する第2のコンクリート22には、上記力に基づく応力が上記柱11における第1のコンクリート21で形成された箇所に向けて広がるように生じる。第2のコンクリート22に作用する上記応力は、上記柱11における第1のコンクリート21で形成された箇所に向けて、梁12の上面に対し45°の角度をもって広がるように生じると推測される。このことを考慮して、直線L1の傾斜角度A1が45°以上且つ90°未満の範囲内の値とされる。このように傾斜角度A1を定めることにより、はみ出し量H1の上限値である距離X1を適切に定めることができる。
【0035】
(4)傾斜角度A1が45°とされるため、はみ出し量H1の上限値である距離X1がより一層適切に定められる。更に、はみ出し量H1が距離X1とされているため、柱梁接合部13の上に位置する柱11の第1のコンクリート21において第2のコンクリート22からの上記応力を受ける面積がより一層適切に定められる。
【0036】
(5)第2のコンクリート22における柱梁接合部13の塞ぎ板15で囲まれた部分から柱梁接合部13の下に位置する柱11に向けてはみ出した箇所のはみ出し量H2は、距離X2以下とされる。この距離X2は、次のように定められる。すなわち、柱梁接合部13に位置する梁12における下面の幅方向の縁から下側かつ梁12の幅方向外側に向けて柱梁接合部13の下に位置する柱11の側面まで延びる直線L2を定める。そして、直線L2と上記側面との交点P2から梁12の下面の高さ位置までの距離が距離X2とされる。
【0037】
柱梁接合部13の下に位置する柱11を形成するコンクリートのうち、柱梁接合部13に接する箇所を形成する第2のコンクリート22は、梁12からの下に向かう力を受ける。第2のコンクリート22における上記力に基づく応力は、上記柱11における第1のコンクリート21で形成された箇所に向けて広がるように生じる。これにより、上記柱11の第1のコンクリート21において、第2のコンクリート22からの上記応力を受ける面積が拡大される。こうした面積の拡大には上限があるものの、上記はみ出し量H2が距離X2以下にされることにより、上記面積の拡大が上限以下にとどめられる。このため、上記柱11を形成するコンクリートとして第2のコンクリート22が無駄に多く使用されることを抑制できる。
【0038】
(6)柱梁接合部13の下に位置する柱11に対して梁12からの下に向かう力が作用するとき、上記柱11における柱梁接合部13の梁12と接する箇所を形成する第2のコンクリート22には、上記力に基づく応力が上記柱11における第1のコンクリート21で形成された箇所に向けて広がるように生じる。第2のコンクリート22に作用する上記応力は、上記柱11における第1のコンクリート21で形成された箇所に向けて、梁12の下面に対し45°の角度をもって広がるように生じると推測される。このことを考慮して、直線L2の傾斜角度A2が45°以上且つ90°未満の範囲内の値とされる。このように傾斜角度A2を定めることにより、はみ出し量H2の上限値である距離X2を適切に定めることができる。
【0039】
(7)傾斜角度A2が45°とされるため、はみ出し量H2の上限値である距離X2がより一層適切に定められる。更に、はみ出し量H2が距離X2とされているため、柱梁接合部13の下に位置する柱11の第1のコンクリート21において第2のコンクリート22からの上記応力を受ける面積がより一層適切に定められる。
【0040】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・傾斜角度A1,A2を45°以外の値に適宜変更してもよい。
【0041】
・はみ出し量H1は距離X1未満であってもよい。また、はみ出し量H1を距離X1より大きくすることも可能である。
・はみ出し量H2が距離X2未満であってもよい。また、はみ出し量H2を距離X2より大きくすることも可能である。
【0042】
・第2のコンクリート22は、柱梁接合部13における塞ぎ板15で囲まれた部分から、柱梁接合部13よりも上に位置する柱11と柱梁接合部13よりも下に位置する柱11との一方に向けてはみ出すものであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
11…柱
12…梁
12a…ウェブ
12b…フランジ
13…柱梁接合部
15…塞ぎ板
16…鉄筋
21…第1のコンクリート
22…第2のコンクリート
図1
図2