(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002447
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】半導体電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20241226BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20241226BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 L
H03K17/687 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102634
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕司
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5J055AX27
5J055AX55
5J055AX56
5J055AX65
5J055BX16
5J055CX07
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5J055DX13
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5J055FX04
5J055FX05
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5J055FX13
5J055FX18
5J055FX20
5J055FX22
5J055GX02
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが短絡することを抑制する。
【解決手段】直列に接続され、第1スイッチング素子100が同期整流される第1、第2スイッチング素子100、200と、ゲート信号GS1を出力するタイミング調整部120と、第1スイッチング素子100のゲート電圧が所定のゲート閾値に達した時点と第1スイッチング素子100を流れる電流が所定の電流閾値に達した時点との間の期間を移行期間TPとする移行期間信号TS1を出力する移行期間検出部180と、第1スイッチング素子100を流れる電流が減少し始めた時点と電流が電流閾値に達した時点との間の期間を減少期間DPとする減少期間信号SS1を出力する減少期間検出部190とを備える。そして、タイミング調整部は、移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるように第1スイッチング素子100をオン状態とするためのゲート信号GS1を出力する印加期間APを調整するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチング素子(100)と第2スイッチング素子(200)とが直列に接続され、前記第1スイッチング素子が同期整流されることで前記第1スイッチング素子に電流が流れる半導体電力変換装置であって、
ゲートを有する前記第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と直列に接続され、ゲートを有する前記第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子のオンオフを制御するゲート信号(GS1)を出力するタイミング調整部(120)と、
前記第1スイッチング素子のゲート電圧に応じた電圧モニタ信号(VM1)を出力するゲート電圧モニタ部(130)と、
前記第1スイッチング素子に流れる電流に応じた電流モニタ信号(IM1)を出力する電流モニタ部(160)と、
前記第1スイッチング素子に当該第1スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させる前記ゲート信号が印加された後、前記電圧モニタ信号および前記電流モニタ信号に基づき、前記第1スイッチング素子のゲート電圧が所定のゲート閾値に達した時点と前記第1スイッチング素子を流れる電流が所定の電流閾値に達した時点との間の期間を移行期間(TP)とする移行期間信号(TS1)を出力する移行期間検出部(180)と、
前記第1スイッチング素子に当該第1スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させる前記ゲート信号が印加された後、前記電流モニタ信号に基づき、前記第1スイッチング素子を流れる電流が減少し始めた時点と前記電流が前記電流閾値に達した時点との間の期間を減少期間(DP)とする減少期間信号(SS1)を出力する減少期間検出部(190)と、を備え、
前記タイミング調整部は、前記移行期間信号および前記減少期間信号が入力され、前記移行期間と前記減少期間との差が小さくなるように、前記第1スイッチング素子をオン状態とするためのゲート信号を出力する印加期間(AP)を調整する半導体電力変換装置。
【請求項2】
前記電流モニタ信号(IM1)と前記電流閾値とを比較してH信号またはL信号である電流判定信号(IJ1)を出力する電流判定部(170)を有し、
前記移行期間検出部は、前記電流判定信号に基づいて前記移行期間信号を出力する請求項1に記載の半導体電力変換装置。
【請求項3】
前記電流判定部は、前記電流閾値が0とされている請求項2に記載の半導体電力変換装置。
【請求項4】
前記電流判定部は、前記電流閾値が0と異なり、前記第1スイッチング素子がオン状態からオフ状態に変化した後に前記0より前に達する所定の値とされている請求項2に記載の半導体電力変換装置。
【請求項5】
前記電流判定部は、前記電流が減少することで前記電流判定信号としての前記H信号と前記L信号とを切り替えた後は、所定期間、前記電流判定信号の状態を維持する請求項2ないし4のいずれか1つに記載の半導体電力変換装置。
【請求項6】
前記タイミング調整部は、前記移行期間の方が前記減少期間より所定期間長くなるオフセット期間を有するように、前記印加期間を調整する請求項1に記載の半導体電力変換装置。
【請求項7】
前記電流モニタ部と接続される過電流検出部(310)、および前記電流モニタ部と接続される短絡検出部(320)の少なくとも一方を備えている請求項1に記載の半導体電力変換装置。
【請求項8】
前記タイミング調整部は、前記移行期間信号および前記減少期間信号を含む判定データを蓄積して記憶する記憶部(121)を有し、前記記憶部に記憶された判定データを用いて前記印加期間を調整する請求項1に記載の半導体電力変換装置。
【請求項9】
前記電流モニタ部は、カレントトランスを用いて構成され、前記第1スイッチング素子がオフ状態とされて前記第1スイッチング素子に流れる電流が遮断された際にリセットされる請求項1に記載の半導体電力変換装置。
【請求項10】
前記第1スイッチング素子と並列に接続される還流ダイオード素子(110)を有し、
前記電流モニタ部は、前記電圧モニタ信号として、前記還流ダイオード素子のオン電圧よりも高い電圧を出力する請求項1に記載の半導体電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチング素子を有する半導体電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、直列に接続された第1スイッチング素子および第2スイッチングを有する半導体電力変換装置が提案されている。なお、第1スイッチング素子および第2スイッチング素子は、例えば、ソース、ドレイン、ゲート等を有するMOSFETで構成される。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略である。また、このようなMOSFETでは、内部に寄生ダイオードが構成される。
【0003】
そして、例えば、特許文献1には、スイッチング素子のドレイン-ソース間電圧Vdsに基づき、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子のオンオフを制御する半導体電力変換装置が提案されている。具体的には、この半導体電力変換装置では、ドレイン-ソース間電圧Vdsに基づき、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが同時にオン状態にならないように、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを同時にオフする期間を設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような半導体電力変換装置は、例えばインバータ回路を構成するために用いられ、損失低減や高周波駆動、高調波抑制等のため、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とを同時にオフする期間を短くすることが望まれている。そして、上記の半導体電力変換装置において、一方のスイッチング素子を同期整流させ、同期整流させている側のスイッチング素子のドレイン-ソース間電圧Vdsを測定して第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが同時にオフする期間を調整しようとすると、次の現象が発生する可能性がある。
【0006】
すなわち、同期整流させている側のスイッチング素子には、オン状態からオフ状態になるとリカバリ電流が発生する。そして、ドレイン-ソース間電圧Vdsは、発生するリカバリ電流が流れる期間や大きさ等によって変動する。このため、ドレイン-ソース間電圧Vdsを測定して第1スイッチング素子および第2スイッチング素子のオンオフを制御する場合、想定するオンオフの切り替え期間が実際のオンオフの切り替え期間と異なる可能性がある。したがって、ドレイン-ソース間電圧Vdsを測定して第1スイッチング素子および第2スイッチング素子のオンオフを制御する場合、制御のばらつきが発生する可能性があり、ひいては第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが短絡する可能性がある。
【0007】
本開示は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが短絡することを抑制できる半導体電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの観点によれば、半導体電力変換装置は、ゲートを有する第1スイッチング素子と、第1スイッチング素子と直列に接続され、ゲートを有する第2スイッチング素子と、第1スイッチング素子のオンオフを制御するゲート信号(GS1)を出力するタイミング調整部(120)と、第1スイッチング素子のゲート電圧に応じた電圧モニタ信号(VM1)を出力するゲート電圧モニタ部(130)と、第1スイッチング素子に流れる電流に応じた電流モニタ信号(IM1)を出力する電流モニタ部(160)と、第1スイッチング素子に当該第1スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させるゲート信号が印加された後、電圧モニタ信号および電流モニタ信号に基づき、第1スイッチング素子のゲート電圧が所定のゲート閾値に達した時点と第1スイッチング素子を流れる電流が所定の電流閾値に達した時点との間の期間を移行期間(TP)とする移行期間信号(TS1)を出力する移行期間検出部(180)と、第1スイッチング素子に当該第1スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させるゲート信号が印加された後、電流モニタ信号に基づき、第1スイッチング素子を流れる電流が減少し始めた時点と電流が電流閾値に達した時点との間の期間を減少期間(DP)とする減少期間信号(SS1)を出力する減少期間検出部(190)と、を備え、タイミング調整部は、移行期間信号および減少期間信号が入力され、移行期間と減少期間との差が小さくなるように、第1スイッチング素子をオン状態とするためのゲート信号を出力する印加期間(AP)を調整する。
【0009】
これによれば、同期整流側である第1スイッチング素子がオフ状態になった後から第1スイッチング素子側に流れる電流が電流閾値に達するまでの期間を移行期間とし、この移行期間と、実際に電流が減少する減少期間との差を小さくするようにしている。このため、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが同時にオフ状態となる期間を短縮できる。また、このように第1スイッチング素子側に流れる電流によって第1スイッチング素子のオフ状態となる期間を調整するため、リカバリ電流の影響を受け難くなり、制御を高精度に行うことができる。したがって、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが短絡することを抑制できる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態における半導体電力変換装置の回路構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す半導体電力変換装置のタイミングチャートである。
【
図3】第2実施形態における半導体電力変換装置のタイミングチャートである。
【
図4】第3実施形態における半導体電力変換装置の回路構成を示す図である。
【
図5】
図4に示す半導体電力変換装置のタイミングチャートである。
【
図6】第4実施形態における半導体電力変換装置の回路構成を示す図である。
【
図7】第5実施形態における半導体電力変換装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、
図1および
図2を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体電力変換装置は、例えば、車両に搭載され、負荷に流れる電流を制御するインバータ回路等を構成するのに適用されると好適である。
【0014】
本実施形態の半導体電力変換装置は、電源10とグランド20との間に直列に接続された第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200を有している。本実施形態の第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200は、シリコン等の半導体基板にゲート、ソース、ドレインを有するnチャネル型のMOSFETが形成されて構成されており、内部に寄生ダイオード素子を有している。
【0015】
第1スイッチング素子100は、ドレインが電源10に接続されるように配置されている。第2スイッチング素子200は、ソースがグランド20に接続されるように配置されている。そして、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200は、第1スイッチング素子100のソースと第2スイッチング素子200のドレインとが接続されるように配置されている。
【0016】
なお、以下では、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200において、ゲートに所定電圧より大きい電圧が印加されて電流が流れる状態のことをオン状態ともいう。また、以下では、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200において、ゲートに所定電圧以下の電圧が印加されることをオフ状態ともいう。つまり、本実施形態では、ゲートに所定電圧以下の電圧が印加された時点からオフ状態が開始され、オン状態の電流が残存する状態であってもオフ状態であるという。なお、本実施形態では、所定電圧が後述の第1ゲート閾値に対応している。
【0017】
半導体電力変換装置は、第1還流ダイオード素子110および第2還流ダイオード素子210を有している。第1還流ダイオード素子110は、第1スイッチング素子100に対して並列に配置されている。具体的には、第1還流ダイオード素子110は、カソードが第1スイッチング素子100のドレインに接続され、アノードが第1スイッチング素子100のソースに接続されるように配置されている。第2還流ダイオード素子210は、第2スイッチング素子200に対して並列に配置されている。具体的には、第2還流ダイオード素子210は、カソードが第1スイッチング素子100のドレインに接続され、アノードが第2スイッチング素子200のソースに接続されるように配置されている。このため、本実施形態の半導体電力変換装置は、第1スイッチング素子100および第1還流ダイオード素子110を有する上アームと、第2スイッチング素子200および第2還流ダイオード素子210を有する下アームとが直列に接続されているともいえる。
【0018】
なお、
図1中の第1、第2還流ダイオード素子110、210は、第1、第2スイッチング素子100、200とは別部材で構成される素子を想定しており、寄生ダイオード素子は省略している。但し、第1、第2還流ダイオード素子110、210は、第1、第2スイッチング素子100、200における寄生ダイオードのみで構成されていてもよい。
【0019】
半導体電力変換装置は、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200との間に出力配線30を介して配置された負荷としてのコイル40を有している。
【0020】
また、半導体電力変換装置は、駆動部50、第1タイミング調整部120、第1ドライバ回路部130、第1ゲート電圧モニタ部140、第1オフ判定用比較器150、第1電流モニタ部160、第1電流判定用比較器170、第1移行期間検出部180、第1減少期間検出部190を備えている。また、半導体電力変換装置は、第2タイミング調整部220、第2ドライバ回路部230、第2ゲート電圧モニタ部240、第2オフ判定用比較器250、第2電流モニタ部260、第2電流判定用比較器270、第2移行期間検出部280、第2減少期間検出部290を備えている。
【0021】
なお、第1タイミング調整部120と第2タイミング調整部220、第1ドライバ回路部130と第2ドライバ回路部230とは、同様の構成とされている。第1ゲート電圧モニタ部140と第2ゲート電圧モニタ部240、第1オフ判定用比較器150と第2オフ判定用比較器250、第1電流モニタ部160と第2電流モニタ部260とは同様の構成とされている。第1電流判定用比較器170と第2電流判定用比較器270、第1移行期間検出部180と第2移行期間検出部280、第1減少期間検出部190と第2減少期間検出部290とは同様の構成とされている。そして、本実施形態では、後述するように、第1スイッチング素子100を同期整流させる例について説明する。このため、以下では、第1タイミング調整部120、第1ドライバ回路部130、第1ゲート電圧モニタ部140、第1オフ判定用比較器150、第1電流モニタ部160、第1電流判定用比較器170、第1移行期間検出部180、第1減少期間検出部190を例に挙げて説明する。
【0022】
駆動部50は、H信号またはL信号の第1駆動信号DS1を第1タイミング調整部120に出力する。また、駆動部50は、H信号またはL信号の第2駆動信号DS2を第2タイミング調整部220に出力する。第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2は、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200のオンオフを制御するための基準信号である。なお、第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2は、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200が同時にオン状態とならないように、H信号となる期間が互いに異なるように調整されている。また、本実施形態では、駆動部50から第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2が出力される例を説明するが、第1駆動信号DS1および第2駆動信号DS2を出力する駆動部50が別々に備えられていてもよい。
【0023】
第1タイミング調整部120は、第1駆動信号DS1に基づき、H信号またはL信号の第1ゲート信号GS1を第1ドライバ回路部130に出力する。第1ゲート信号GS1は、第1スイッチング素子100のオンオフを制御するための信号である。そして、第1スイッチング素子100は、第1ゲート信号GS1がH信号である場合にオン状態となり、第1ゲート信号GS1がL信号である場合にオフ状態となる。また、第1タイミング調整部120は、具体的には後述するが、第1移行期間検出部180からの第1移行期間信号TS1および第1減少期間検出部190からの第1減少期間信号SS1に基づき、第1ゲート信号GS1がH信号である期間を調整する。
【0024】
第1ドライバ回路部130は、第1タイミング調整部120に接続されており、昇圧回路等を有している。そして、第1ドライバ回路部130は、第1タイミング調整部120から出力される第1ゲート信号GS1を昇圧等して第1スイッチング素子100のゲートに印加する。
【0025】
第1ゲート電圧モニタ部140は、第1スイッチング素子100のゲートに印加されるゲート電圧に応じた第1ゲート電圧モニタ信号(以下では、単に第1電圧モニタ信号ともいう)VM1を出力する。例えば、第1ゲート電圧モニタ部140は、直列に接続された第1検出抵抗および第2検出抵抗を有し、第1検出抵抗と第2検出抵抗とで分圧した電圧を第1電圧モニタ信号VM1として出力する。
【0026】
第1オフ判定用比較器150は、負入力端子に第1電圧モニタ信号VM1が入力されると共に正入力端子に所定の第1ゲート閾値が入力され、第1電圧モニタ信号VM1と第1ゲート閾値とを比較して第1オフ判定信号VJ1を出力する。本実施形態では、第1オフ判定用比較器150は、第1オフ判定信号VJ1として、第1電圧モニタ信号VM1が第1ゲート閾値より大きい場合にL信号を出力し、第1電圧モニタ信号VM1が第1ゲート閾値以下である場合にH信号を出力する。なお、第1ゲート閾値は、本実施形態では0とされる。このため、第1オフ判定信号VJ1は、第1電圧モニタ信号VM1が0より大きい場合にL信号となり、第1電圧モニタ信号VM1が0である場合にH信号となる。但し、第1ゲート閾値は、適宜変更可能である。
【0027】
第1電流モニタ部160は、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200との間の中点と、第1スイッチング素子100との間に配置され、流れる電流に応じた第1電流モニタ信号IM1を出力する。この場合、例えば、第1電流モニタ部160は、増幅回路等を有する構成とし、第1還流ダイオード素子110のオン電圧よりも高い電圧を出力するようにしてもよい。これによれば、第1還流ダイオード素子110のオン電圧が小さい場合でも、誤検出することを抑制できる。なお、第1還流ダイオード素子110が寄生ダイオード素子および第1スイッチング素子100と異なる別部材のダイオード素子で構成される場合には、オン電圧の小さいダイオード素子のオン電圧よりも高い電圧を出力するようにすることが好ましい。また、第1電流モニタ部160は、後述するように第1電流モニタ信号IM1と第1電流閾値との比較が検出できる程度の精度を有すればよく、特に、本実施形態では電流ゼロクロス点を検出できればよい。このため、第1電流モニタ部160は、詳細な電流の絶対値を検出する精度までは特に要求されない。
【0028】
第1電流モニタ部160は、例えば、シャント抵抗や、1次巻線と2次巻線とを有するカレントトランス等を含んで構成されている。なお、第1電流モニタ部160をカレントトランスを含んで構成する場合、1次巻線が第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200との間に配置され、2次巻線には、1次巻線に流れる電流に応じた電流が流れる。そして、第1電流モニタ部160は、2次巻線を流れる電流に基づいた第1電流モニタ信号IM1を出力する。この場合、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200のオフオフが制御されることによって1次巻線に電流が流れない期間が発生するが、1次巻線には、磁束が残存する可能性がある。このため、第1電流モニタ部160をカレントトランスを含んで構成する場合には、例えば、1次巻線に逆電流を流すための回路を配置し、1次巻線に電流が流れていない際、逆電流を流して1次巻線の残留磁束を消去するリセット処理を行うようにしてもよい。これにより、第1電流モニタ部160の精度の向上を図ることができる。
【0029】
第1電流判定用比較器170は、負入力端子に第1電流モニタ信号IM1が入力されると共に正入力端子に所定の第1電流閾値が入力され、第1電流モニタ信号IM1と第1電流閾値とを比較した第1電流判定信号IJ1を出力する。具体的には、第1電流判定用比較器170は、第1電流判定信号IJ1として、第1電流モニタ信号IM1が第1電流閾値より大きい場合にL信号を出力し、第1電流モニタ信号IM1が第1電流閾値以下である場合に信号を出力する。なお、第1電流閾値は、本実施形態では0とされる。つまり、本実施形態の第1電流判定用比較器170は、電流ゼロクロス点を検出する。但し、第1電流閾値は、用途に応じて適宜変更可能であり、後述する移行期間TPとなった後の0より前の所定の値とされていてもよい。本実施形態では、後述するように移行期間TPとなると第1電流モニタ信号IM1が減少するため、移行期間TPとなった後の0より前の所定の値とは、正の値となる。また、本実施形態では、第1電流判定用比較器170が電流判定部に相当する。
【0030】
第1移行期間検出部180は、第1オフ判定用比較器150および第1電流判定用比較器170と接続され、第1オフ判定信号VJ1および第1電流判定信号IJ1が入力される。そして、第1移行期間検出部180は、第1オフ判定信号VJ1および第1電流判定信号IJ1に基づく移行期間TPを含む第1移行期間信号TS1を出力する。
【0031】
具体的には、第1移行期間検出部180は、第1オフ判定信号VJ1がL信号からH信号に切り替わるとL信号からH信号に切り替わり、第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切り替わるとH信号からL信号に切り替わる第1移行期間信号TS1を出力する。つまり、第1移行期間検出部180は、第1オフ判定信号VJ1がL信号からH信号に切り替わった時点を始点とすると共に第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切り替わった時点を終点とし、この期間がH信号となる第1移行期間信号TS1を出力する。言い換えると、第1移行期間検出部180は、第1スイッチング素子100がオフ状態になってから第1スイッチング素子100に流れる電流が0となるまでの移行期間TPにH信号となる第1移行期間信号TS1を出力する。なお、移行期間TPが長いほど、第1スイッチング素子100がオフ状態に移行してから第1スイッチング素子100に流れる電流が0になるまでの期間が長くなり、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200とが同時にオフ状態となる期間が長くなる。
【0032】
第1減少期間検出部190は、第1電流モニタ部160および第1電流判定用比較器170と接続され、第1電流モニタ信号IM1および第1電流判定信号IJ1が入力される。そして、第1減少期間検出部190は、第1電流モニタ部160および第1電流判定用比較器170に基づく減少期間DPを含む第1減少期間信号SS1を出力する。
【0033】
具体的には、第1減少期間検出部190は、第1電流モニタ信号IM1が下がり始めるとL信号からH信号に切り替わり、第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切り替わるとH信号からL信号に切り替わる第1減少期間信号SS1を出力する。つまり、第1減少期間検出部190は、第1電流モニタ信号IM1が下がり始めた時点を始点とすると共に第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切り替わった時点を終点とし、この期間がH信号となる第1減少期間信号SS1を出力する。言い換えると、第1減少期間検出部190は、第1スイッチング素子100の電流が減少し始めてから第1スイッチング素子100に流れる電流が0となるまでの実際の減少期間DPにH信号となる第1減少期間信号SS1を出力する。
【0034】
そして、第1タイミング調整部120は、第1移行期間信号TS1および第1減少期間信号SS1に基づき、第1ゲート信号GS1としてH信号を出力する印加期間APを調整する。具体的には、第1タイミング調整部120は、初回動作時では、第1駆動信号DS1がL信号からH信号に切り替わるとH信号を出力すると共に第1駆動信号DS1がH信号からL信号に切り替わるとL信号を出力する。また、第1タイミング調整部120は、2回目以降の動作時では、第1駆動信号DS1がL信号からH信号に切り替わると、第1移行期間信号TS1および第1減少期間信号SS1に基づき、次回の移行期間TPと減少期間DPとの差が短くなるように印加期間APを調整する。なお、初回作動時とは、例えば、工場出荷時の調整であったり、車両に搭載される場合にはイグニッションオンされた際等である。
【0035】
より詳しくは、第1タイミング調整部120は、第1駆動信号DS1がH信号である期間に基づいた期間を基準期間BPとすると、基準期間BPに延長期間EPを付加して印加期間APを調整する。つまり、第1タイミング調整部120は、移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるように延長期間EPを調整することで印加期間APを調整する。この場合、移行期間TPと減少期間DPとの差が0となるように印加期間APを調整してもよいが、移行期間TPが減少期間DPより所定期間長くなるオフセット期間を有するように印加期間APを調整するようにしてもよい。但し、ここでのオフセット期間は、初回動作時における移行期間TPと減少期間DPとの差よりも小さい期間となる。
【0036】
以上が本実施形態における半導体電力変換装置の構成である。次に、上記半導体電力変換装置の作動について、
図2を参照しつつ説明する。なお、以下では、第1スイッチング素子100を同期整流させて第1スイッチング素子100に電流を流している状態から第1スイッチング素子100をオフ状態にし、その後に第2スイッチング素子200をオン状態にする例について説明する。また、以下では、初回作動時を含む例を説明し、時点T0~T6が初回動作時の作動となり、時点T7以降が2回目以降の作動となる。また、以下では、第1スイッチング素子100を流れる電流において、第1スイッチング素子100の逆導通を正とする。すなわち、第1スイッチング素子100をソース側からドレイン側に流れる電流を正とする。また、以下では、第1スイッチング素子100のゲート-ソース間電圧Vgsを単に第1ゲート-ソース間電圧1vgsともいい、第2スイッチング素子200のゲート-ソース間電圧Vgsを単に第2ゲート-ソース間電圧2Vgsともいう。
【0037】
図2に示されるように、時点T0から時点T1では、第1スイッチング素子100を同期整流させているため、第1駆動信号DS1はH信号となり、第1ゲート信号GS1もH信号となる。そして、第1スイッチング素子100の第1ゲート-ソース間電圧1Vgsが第1ゲート閾値以上となり、第1電圧モニタ信号VM1は、第1スイッチング素子100に印加されるゲート電圧に応じた電圧となる。第1オフ判定信号VJ1は、第1電圧モニタ信号VM1として第1スイッチング素子100がオン状態である際のゲート電圧が入力され、第1電圧モニタ信号VM1が0とはならないのでL信号となる。
【0038】
また、第1スイッチング素子100が同期整流状態であるため、第2スイッチング素子200は、オフ状態となり、第2ゲート-ソース間電圧2Vgsは0Vとなる。
【0039】
第1電流モニタ信号IM1は、第1スイッチング素子100が同期整流中であり、ソース側からドレイン側に電流が流れるため、電流に応じた正の信号となる。第1電流判定信号IJ1は、第1電流モニタ信号IM1が正の信号であり、0とならないのでL信号となる。
【0040】
第1移行期間信号TS1は、上記のように、第1オフ判定信号VJ1がL信号からH信号に切り替わるとL信号からH信号に切り替わるため、時点T0から時点T1の期間ではL信号となる。同様に、第1減少期間信号SS1は、第1電流モニタ信号IM1が下がり始めるとL信号からH信号に切り替わるため、時点T0から時点T1の期間ではL信号となる。
【0041】
そして、時点T1で第1駆動信号DS1がH信号からL信号から切り替わると、第1ゲート信号GS1もH信号からL信号に切り替わる。このため、第1スイッチング素子100の第1ゲート-ソース間電圧1Vgsが時点T1から小さくなり、第1電圧モニタ信号VM1も時点T1から小さくなる。そして、時点T2で第1電圧モニタ信号VM1が第1ゲート閾値以下となると、第1オフ判定信号VJ1がL信号からH信号に切り替わる。また、第1オフ判定信号VJ1がL信号からH信号に切り替わることにより、時点T2では、第1移行期間信号TS1がL信号からH信号に切り替わる。つまり、初回動作時では、時点T2から移行期間TPが始まる。
【0042】
その後、図示を省略しているが、時点T3で第2駆動信号DS2がH信号になると、第2スイッチング素子200をオンさせるための第2ゲート信号GS2が第2スイッチング素子200に印加される。このため、時点T3以降では、第2スイッチング素子200の第2ゲート-ソース間電圧2Vgsが大きくなって第2スイッチング素子200がオン状態となる。
【0043】
また、第2スイッチング素子200がオン状態となるため、第1スイッチング素子100を流れる電流(すなわち、第1電流モニタ部160)が減少し始める。そして、第1減少期間信号SS1は、第1電流モニタ信号IM1が下がり始めるとL信号からH信号に切り替わるため、時点T3からH信号となる。つまり、初回動作時では、時点T3から減少期間DPが始まる。そして、時点T2と時点T3との間の期間は、移行期間TPであっても電流が減少しない期間となる。
【0044】
その後、時点T4にて、第1電流モニタ信号IM1が第1電流閾値より低くなる(すなわち、ゼロクロス点となる)と、第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切りかわる。このため、第1移行期間信号TS1がH信号からL信号に切り替わり、第1減少期間信号SS1もH信号からL信号に切り替わる。
【0045】
なお、第1スイッチング素子100を同期整流させている状態から第2スイッチング素子200をオン状態にすると、第1スイッチング素子100にはリカバリ電流が発生する。このため、時点T4から時点T5では、第1電流モニタ信号IM1が第1電流閾値以下となる。そして、時点T5にて、リカバリ動作が終了して第1電流モニタ信号IM1が0(すなわち、第1電流閾値と同じ)となると、第1電流判定信号IJ1がH信号からL信号に切り替わる。
【0046】
その後、時点T6で第2スイッチング素子200をオフ状態にすると、第2スイッチング素子200の第2ゲート-ソース間電圧2Vgsが小さくなる。
【0047】
そして、時点T7で再び第1スイッチング素子100を同期整流させるため、第1駆動信号DS1はH信号となり、第1ゲート信号GS1もH信号となる。これにより、第1ゲート-ソース間電圧1Vgsが大きくなり、第1電圧モニタ信号VM1が大きくなる。
【0048】
その後、時点T8で第1駆動信号DS1がH信号からL信号から切り替わる。この場合、第1タイミング調整部120は、前回の第1移行期間信号TS1がH信号である移行期間TPおよび第1減少期間信号SS1がH信号である減少期間DPに基づき、次回の移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるように印加期間APを調整する。具体的には、延長期間EPを長くするほど、第2スイッチング素子200がオン状態になる時点との間の期間が減少して移行期間TPが短くなるため、延長期間EPを調整して印加期間APを調整する。これにより、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200とが同時にオフ状態となる期間を短くできる。本実施形態では、移行期間TPと減少期間DPとの差が0となるように印加期間APを調整する。なお、上記のように、第1タイミング調整部120は、移行期間TPが減少期間DPより所定期間だけ長くなるように移行期間TPを調整するようにしてもよい。
【0049】
本実施形態では、第1タイミング調整部120は、時点T9にて、第1ゲート信号GS1をH信号からL信号に切り替える。これにより、時点T9から、第1スイッチング素子100の第1ゲート-ソース間電圧1Vgsが小さくなり、第1電圧モニタ信号VM1も小さくなる。そして、本実施形態では、時点T10にて第1電圧モニタ信号VM1が第1ゲート閾値以下となり、第1オフ判定信号VJ1がL信号からH信号に切り替わる。
【0050】
また、本実施形態では、時点T10で第2駆動信号DS2がH信号になり、第2スイッチング素子200をオンさせるための第2ゲート信号GS2が第2スイッチング素子200に印加される。このため、時点T10以降では、第2スイッチング素子200の第2ゲート-ソース間電圧2Vgsが大きくなって第2スイッチング素子200がオン状態となる。なお、時点T1と時点T3との期間と、時点T8と時点T10との期間は同じである。
【0051】
そして、T10にて第2スイッチング素子200がオン状態となるため、第1スイッチング素子100を流れる電流(すなわち、第1電流モニタ部160)が減少し始める。このため、第1減少期間信号SS1は、第1電流モニタ信号IM1が下がり始めるとL信号からH信号に切り替わるため、時点T10からH信号となる。
【0052】
そして、時点T11にて、第1電流モニタ信号IM1が第1電流閾値より低くなると、第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切りかわる。このため、第1移行期間信号TS1がH信号からL信号に切り替わり、第1減少期間信号SS1もH信号からL信号に切り替わる。その後、時点T12にて第1スイッチング素子100のリカバリ動作が終了して第1電流モニタ信号IM1が0(すなわち、第1電流閾値と同じ)となると、第1電流判定信号IJ1がH信号からL信号に切り替わる。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、同期整流側である第1スイッチング素子100がオフ状態になった後から第1スイッチング素子100側に流れる電流がゼロクロスするまでの期間を移行期間TPとしている。そして、この移行期間TPと、実際に電流が減少する減少期間DPとの差を小さくするようにしている。このため、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200とが同時にオフ状態となる期間を短縮できる。また、本実施形態では、このように第1スイッチング素子100側に流れる電流によって第1スイッチング素子100のオフ状態となる期間を調整するため、リカバリ電流の影響を受け難くなり、制御を高精度に行うことができる。したがって、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200とが短絡することを抑制できる。
【0054】
さらに、第1スイッチング素子100のドレイン-ソース間電圧Vdsを測定して第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200のオンオフを制御する半導体電力変換装置を比較例の電力変換装置とすると、次の効果を得ることもできる。すなわち、比較例の半導体電力変換装置では、ドレイン-ソース間電圧Vdsが高電圧になり易いため、ドレイン-ソース間電圧Vdsを測定するための測定素子として高耐圧のものが必要になり、構成が複雑になると共にコストが高くなり易い。一方、本実施形態では、第1スイッチング素子100を流れる電流に基づいて各制御を行っているため、高耐圧の測定素子が不要であり、コストの低減を図ることもできる。
【0055】
(1)本実施形態では、第1タイミング調整部120は、移行期間TPが減少期間DPより所定期間だけ長くなるように、所定のオフセット期間を加味して移行期間TPを調整するようにしてもよい。つまり、第1タイミング調整部120は、移行期間TPの始点が減少期間DPの始点よりも所定期間だけ早くなるように印加期間APを調整してもよい。これにより、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200とが同時にオン状態となることを抑制し易くできる。
【0056】
(2)本実施形態では、リカバリ期間が短い場合には、第1電流閾値を0とすることが好ましい。一方、リカバリ期間が長い場合には、第1電流閾値を、移行期間TPとなった後に0より前に達する所定の値されることが好ましい。これにより、移行期間TPおよび減少期間DPとの差を小さくしつつ、第1スイッチング素子100と第2スイッチング素子200とが短絡することを抑制し易くできる。
【0057】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1電流判定信号IJ1を所定期間維持するようにしたものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
本実施形態の半導体電力変換装置の構成は、上記第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200は、炭化珪素等の高速駆動が可能は半導体基板を用いて構成されている。
【0059】
このような第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200を用いた場合、
図3の第1電流モニタ信号IM1に示されるように、時点T5にて、リカバリによるリンギング現象Rによって電流が増減する可能性がある。このため、第1電流モニタ部160からの第1電流モニタ信号IM1は、想定していないばらつきによって不安定になる可能性がある。
【0060】
したがって、本実施形態では、第1電流判定用比較器170は、第1電流モニタ信号IM1が第1電流閾値より低くなり、第1電流判定信号IJ1としてL信号を出力した後は、このL信号を所定期間維持する構成とされている。なお、このような構成は、例えば、第1電流判定用比較器170にラッチ回路等を追加することで実現される。
【0061】
以上説明した本実施形態によれば、第1タイミング調整部120は、移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるようにしている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
(1)本実施形態では、第1電流判定用比較器170は、第1電流判定信号IJ1としてL信号を出力した後は、このL信号を所定期間維持する構成とされている。このため、リンギング現象Rによって第1電流判定信号IJ1が不安定になることを抑制できる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1電流モニタ部160および第2電流モニタ部260の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、
図4に示されるように、第1電流モニタ部160は、第1センス素子161と、第1センス素子161に並列接続される第1センス用ダイオード素子162とを有している。また、第1電流モニタ部160は、第1センス素子161と直列に接続される第1センス抵抗163を有している。そして、第1電流モニタ部160は、第1センス素子161と第1センス抵抗163との間が第1電流判定用比較器170の負入力端子と接続されている。
【0065】
同様に、第2電流モニタ部260は、第2センス素子261と、第2センス素子261に並列接続される第2センス用ダイオード素子262とを有している。また、第2電流モニタ部260は、第2センス素子261と直列に接続される第2センス抵抗263を有している。そして、第2電流モニタ部260は、第2センス素子261と第2センス抵抗263との間が第2電流判定用比較器270の負入力端子と接続されている。
【0066】
なお、第1センス素子161は、例えば、第1スイッチング素子100が形成される半導体基板と同じ半導体基板に形成され、第1スイッチング素子100と同様の構成とされて互いの面積比が調整されている。そして、第1センス素子161は、ドレインが第1スイッチング素子100のドレインと接続され、ソースが第1センス抵抗163を介して第1スイッチング素子100のソースと接続されている。このため、第1スイッチング素子100と第1センス素子161とは、面積比に応じた電流が流れる。
【0067】
同様に、第2センス素子261は、例えば、第2スイッチング素子200が形成される半導体基板と同じ半導体基板に形成され、第2スイッチング素子200と同様の構成とされて互いの面積比が調整されている。そして、第2センス素子261は、ドレインが第2スイッチング素子200のドレインと接続され、ソースが第2センス抵抗263を介して第2スイッチング素子200のソースと接続されている。このため、第2スイッチング素子200と第2センス素子261とは、面積比に応じた電流が流れる。
【0068】
第1電流モニタ部160は、本実施形態では、第1電流モニタ信号IM1として、第1スイッチング素子100のソースを0(すなわち、基準)とした第1センス抵抗163に応じた電圧を出力する。このため、第1電流モニタ信号IM1は、同期整流中に第1センス素子161に電流が流れている際には負となり、第1センス素子161に流れる電流が減少すると増加する(すなわち、0に近づく)。
【0069】
第1減少期間検出部190から出力される第1減少期間信号SS1は、第1電流モニタ信号IM1が上がり始めるとL信号からH信号に切り替わり、第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切り替わるとH信号からL信号に切り替わる。つまり、本実施形態の第1減少期間検出部190は、第1電流モニタ信号IM1が上がり始めた時点を始点とすると共に第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切り替わった時点を終点とし、この期間をH信号とする第1減少期間信号SS1を出力する。言い換えると、第1減少期間検出部190は、第1スイッチング素子100の電流が減少し始めてから第1スイッチング素子100に流れる電流が0となるまでの減少期間DPにH信号を出力する。
【0070】
以上が本実施形態における半導体電力変換装置の構成である。次に、上記電力変換装置の作動について、
図5を参照しつつ説明する。なお、以下では、上記第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子100を同期整流させて電流を流している状態から第1スイッチング素子100をオフ状態にし、その後に第2スイッチング素子200をオン状態にする例について説明する。また、以下では、初回作動時を含む例を説明し、時点T20~T26が初回動作時の作動となり、時点T27以降が2回目以降の作動となる。また、以下では、第1電流モニタ信号IM1は、第1スイッチング素子100のソースを0(すなわち、基準)とした電圧とであり、整流状態で第1スイッチング素子100に電流が流れている際には負となる。また、時点T20~時点32は、上記第1実施形態における時点T0~T12に相当する。
【0071】
図5に示されるように、時点T20から時点T21では、第1スイッチング素子100を同期整流させている。このため、第1駆動信号DS1、第1ゲート信号GS1、第1ゲート-ソース間電圧1Vgs、第1電圧モニタ信号VM1第2ゲート-ソース間電圧2Vgs、第1電流判定信号IJ1、第1移行期間信号TS1、第1減少期間信号SS1は、上記第1実施形態と同様の信号となる。そして、本実施形態では、第1電流モニタ部160が上記のように構成されており、第1電流モニタ信号IM1は、第1スイッチング素子100のソースを0とした電圧としているため、負電圧となる。
【0072】
その後、時点T21にて、第1駆動信号DS1がH信号からL信号から切り替わり、時点T22で第1電圧モニタ信号VM1が第1ゲート閾値以下となると、第1オフ判定信号VJ1がL信号からH信号に切り替わると共に、第1移行期間信号TS1がL信号からH信号に切り替わる。
【0073】
次に、図示を省略しているが時点T23にて第2駆動信号DS2がH信号になると、第2スイッチング素子200の第2ゲート-ソース間電圧2Vgsが大きくなって第2スイッチング素子200がオン状態となる。そして、第2スイッチング素子200がオン状態となると、第1センス素子161を流れる電流(すなわち、第1センス抵抗163)が減少し始めるため、第1電流モニタ信号IM1が大きくなる(すなわち、第1スイッチング素子100のソース電圧に近づく)。
【0074】
また、第1減少期間信号SS1は、第1電流モニタ信号IM1が上がり始めるとL信号からH信号に切り替わるため、時点T23からH信号となる。つまり、初回動作時では、時点T23から減少期間DPが始まる。その後、時点T24にて、第1電流モニタ信号IM1が第1電流閾値より高くなると、第1電流判定信号IJ1がL信号からH信号に切り替わる。これにより、第1移行期間信号TS1がH信号からL信号に切り替わり、第1減少期間信号SS1もH信号からL信号に切り替わる。
【0075】
その後、時点T26で第2スイッチング素子200をオフ状態にし、時点T27で再び第1スイッチング素子100を同期整流させる。そして、時点T28~時点T32にて、時点T21~時点T25と同様の処理を行う。
【0076】
この場合、第1タイミング調整部120は、時点T29では、前回の第1移行期間信号TS1がH信号である移行期間TPおよび第1減少期間信号SS1がH信号である減少期間DPに基づき、次回の移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるように印加期間APを調整する。
【0077】
以上説明した本実施形態のように、第1電流モニタ部160を第1センス素子161および第1センス抵抗163を有する構成としても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(1)本実施形態では、第1電流モニタ部160を第1センス素子161および第1センス抵抗163を有する構成としており、第1スイッチング素子100と同様の半導体基板に形成することができる。このため、別部材を用意する場合と比較して、部材点数の削減を図ることができる。
【0079】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、過電流検出部および短絡検出部を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0080】
本実施形態では、
図6に示されるように、第1電流モニタ部160には、第1電流判定用比較器170と共に、第1過電流用比較器310および第1短絡用比較器320が接続されている。そして、第1電流モニタ信号IM1は、第1電流判定用比較器170の負入力端子と共に、第1過電流用比較器310および第1短絡用比較器320の負入力端子に入力される。なお、本実施形態では、第1過電流用比較器310が過電流検出部に相当し、第1短絡用比較器320が短絡検出部に相当する。
【0081】
第1過電流用比較器310は、正入力端子に第1過電流閾値が入力され、第1電流モニタ信号IM1と第1過電流閾値とを比較した第1過電流判定信号を出力する。第1短絡用比較器320は、正入力端子に第1短絡閾値が入力され、第1電流モニタ信号IM1と第1短絡閾値とを比較した第1短絡判定信号を出力する。つまり、本実施形態の第1電流モニタ信号IM1は、過電流判定および短絡判定にも用いられるようになっている。
【0082】
なお、特に図示しないが、第2電流モニタ部260には、第2電流判定用比較器270と共に、第2過電流用比較器および第2短絡用比較器が接続されている。そして、第2過電流用比較器は、第2電流モニタ部260からの第2電流モニタ信号IM2に基づいた過電流判定信号を出力する。第2短絡用比較器は、第2電流モニタ部260からの第2電流モニタ信号IM2に基づいた短絡判定信号を出力する。
【0083】
以上説明した本実施形態によれば、第1タイミング調整部120は、移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるようにしている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
(1)本実施形態では、第1電流モニタ信号IM1は、過電流判定および短絡判定にも用いられる。このため、過電流判定用の電流モニタ部または短絡判定用の電流モニタ部等を別に用意する必要がなく、第1電流モニタ部160を有効利用できる。言い換えると、既に過電流判定用の電流モニタ部または短絡判定用の電流モニタ部を有する構成に本実施形態を適用する場合、既に備えられている電流モニタ部を第1電流モニタ部160や第2電流モニタ部260として利用することができる。
【0085】
(第4実施形態の変形例)
上記第4実施形態の変形例について説明する。上記第4実施形態において、半導体電力変換装置は、第1過電流用比較器310および第1短絡用比較器320の一方のみが備えられていてもよい。
【0086】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、記憶部を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0087】
本実施形態の半導体電力変換装置は、
図6に示されるように、負荷としてのコイル40を流れる相電流に応じた相電流モニタ信号PM1を出力する相電流モニタ部330が配置されている。そして、相電流モニタ部330は、相電流モニタ信号PM1を第1タイミング調整部120に出力する。
【0088】
第1タイミング調整部120は、記憶部121を備えており、この記憶部121に、第1移行期間信号TS1、第1減少期間信号SS1、相電流モニタ信号PM1を判定データとして記憶する。そして、第1タイミング調整部120は、判定データに基づき、移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるように印加期間APを調整する。この場合、第1タイミング調整部120は、各信号TS1、SS1、PM1を蓄積し、蓄積した判定データの平均値に基づいて印加期間APを調整するようにしてもよい。つまり、第1タイミング調整部120は、前回の各信号TS1、SS1、PM1によって次回の移行期間TPを調整するのではなく、前回以前の複数の各信号TS1、SS1、PM1によって次回の移行期間TPを調整するようにしてもよい。例えば、本実施形態の半導体電力変換装置を3相交流の電力変換装置として使用する場合、1周期毎の印加期間APを判定データに基づいて調整するようにしてもよい。
【0089】
このような第1タイミング調整部120は、例えば、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部121等を備えたマイクロコンピュータ等で構成される。なお、CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略であり、HDDはHard Disk Driveの略である。
【0090】
以上説明した本実施形態によれば、第1タイミング調整部120は、移行期間TPと減少期間DPとの差が小さくなるようにしている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(1)本実施形態では、第1タイミング調整部120は、記憶部121を備え、蓄積した判定データに基づいて印加期間APを調整する。このため、例えば、ノイズ等の影響によって瞬間的に第1移行期間信号TS1が変動したとしても、蓄積したデータに基づいて印加期間APを調整するため、誤制御してしまうことを抑制できる。
【0092】
(2)本実施形態では、相電流モニタ部330を備えており、相電流モニタ部330からの相電流モニタ信号PM1も含めて印加期間APを調整するようにしている。このため、さらに印加期間APの精度を向上できる。
【0093】
(第5実施形態の変形例)
上記第5実施形態の変形例について説明する。上記第5実施形態において、半導体電力変換装置は、相電流モニタ部330を備えていなくてもよい。すなわち、第1タイミング調整部120は、第1移行期間信号TS1および第1減少期間信号SS1が蓄積された判定データに基づいて印加期間APを調整するようにしてもよい。また、第1タイミング調整部120は、記憶部121に記憶される判定データが更新されるようにしてもよいし、予め設定された判定データが維持されるようにしてもよい。なお、予め設定された判定データが維持されるようにした場合は、蓄積される判定データは、予め実験等を行って取得した判定データとなる。
【0094】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0095】
例えば、上記各実施形態において、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子は、MOSFETではなく、IGBTであってもよい。
【0096】
また、上記各実施形態において、第1スイッチング素子100および第2スイッチング素子200は、電源10側に第2スイッチング素子200が配置されると共にグランド20側に第1スイッチング素子100が配置されるようにしてもよい。そして、グランド側に配置される第1スイッチング素子100を整流動作させるようにしてもよい。
【0097】
さらに、上記各実施形態において、同期整流されるのが第1スイッチング素子100であることが明らかである場合、第2スイッチング素子200側には、第2移行期間検出部280や第2減少期間検出部290等が備えられていなくてもよい。
【0098】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
100 第1スイッチング素子
200 第2スイッチング素子
120 第1タイミング調整部
130 第1ゲート電圧モニタ部
160 第1電流モニタ部
AP 印加期間
DP 減少期間
TP 移行期間