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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002448
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ACDCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
H02M7/06 H
H02M7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102635
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 藤行
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平野 哲夫
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006CA07
5H006CB03
5H006CC08
(57)【要約】
【課題】筐体の構造によらないで、放射ノイズの増大を抑制するACDCコンバータを提供する。
【解決手段】ACDCコンバータ30は、第1整流器31、第2整流器32、第1コンデンサ41、第2コンデンサ42、第3コンデンサ43、第4コンデンサ44、第1コイル51、第2コイル52およびバイパス経路55を収容する筐体70を備え、バイパス経路55は、第1コンデンサ41および第2コンデンサ42の間と、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44の間とに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(15)からの交流電流のうち正の部分を負荷(20)に出力する第1整流器(31)と、
前記交流電流のうち負の部分を前記負荷に出力することにより、前記第1整流器とともに前記交流電流を直流電流に変換する第2整流器(32)と、
前記第1整流器および前記第2整流器と並列接続されているとともに、前記第1整流器のうち前記第2整流器とは反対側に接続されている第1コンデンサ(41)と、
前記第1コンデンサと直列接続されているとともに、前記第2整流器のうち前記第1整流器とは反対側に接続されている第2コンデンサ(42)と、
前記負荷と並列接続されているとともに、前記第1整流器および前記第2整流器の間と接続されている第3コンデンサ(43)と、
前記第3コンデンサと直列接続されているとともに、前記負荷のうち前記第3コンデンサとは反対側に接続されている第4コンデンサ(44)と、
前記第1整流器のうち前記第2整流器とは反対側に接続されているとともに、前記第2整流器からの出力を、前記第3コンデンサおよび前記第4コンデンサとともに平滑にする第1コイル(51)と、
前記第2整流器のうち前記第1整流器とは反対側に接続されているとともに、前記第1整流器からの出力を、前記第3コンデンサおよび前記第4コンデンサとともに平滑にする第2コイル(52)と、
前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサの間と、前記第3コンデンサおよび前記第4コンデンサの間とに接続されているバイパス経路(55)と、
前記第1整流器、前記第2整流器、前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサ、前記第3コンデンサ、前記第4コンデンサ、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記バイパス経路を収容する筐体(70)と、
を備えるACDCコンバータ。
【請求項2】
前記第1整流器のうち前記第2整流器とは反対側と、前記第1コンデンサのうち前記第2コンデンサとは反対側と、に接続されている第1変換コイル(61)と、
前記第2整流器のうち前記第1整流器とは反対側と、前記第2コンデンサのうち前記第1コンデンサとは反対側と、に接続されている第2変換コイル(62)と、
を備える請求項1に記載のACDCコンバータ。
【請求項3】
前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサと並列接続されているフィルタコイル(80)を備える請求項1に記載のACDCコンバータ。
【請求項4】
前記ACDCコンバータは、前記第1整流器および前記第2整流器の間と、前記第3コンデンサと、に接続されている第3コイル(53)をさらに備え、
前記第3コイルのインダクタンス(Lc3)は、前記第1コイルのインダクタンス(Lc1)および前記第2コイルのインダクタンス(Lc2)よりも大きくなっている請求項1ないし3のいずれか1つに記載のACDCコンバータ。
【請求項5】
前記バイパス経路のインピーダンスは、前記第1整流器および前記第2整流器から大地を通る電流の経路におけるインピーダンスに対して低くなっている請求項1ないし3のいずれか1つに記載のACDCコンバータ。
【請求項6】
ACDCコンバータであって、
交流電源(15)からの交流電流のうち正の部分を負荷(20)に出力する第1整流器(31)と、
前記交流電流のうち負の部分を前記負荷に出力することにより、前記第1整流器とともに前記交流電流を直流電流に変換する第2整流器(32)と、
前記負荷と並列接続されているとともに、前記第1整流器および前記第2整流器の間に接続されているコンデンサと、
前記第1整流器のうち前記第2整流器とは反対側に接続されているとともに、前記第2整流器からの出力を、前記コンデンサとともに平滑にする第1コイル(51)と、
前記第2整流器のうち前記第1整流器とは反対側に接続されているとともに、前記第1整流器からの出力を、前記コンデンサとともに平滑にする第2コイル(52)と、
前記第1整流器および前記第2整流器の間と、前記コンデンサと、に接続されている第3コイル(53)と、
前記第1整流器、前記第2整流器、前記コンデンサ、前記第1コイル、前記第2コイルおよび前記第3コイルを収容する筐体(70)と、
を備え、
前記第3コイルのインダクタンス(Lc3)は、前記第1コイルのインダクタンス(Lc1)および前記第2コイルのインダクタンス(Lc2)よりも大きくなっているACDCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ACDCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、3つの整流コイルおよび2つのダイオードを有する整流回路部を備える無線給電装置が知られている。この整流回路部は、高周波電源部からの高周波の電力を整流することにより直流にする。整流回路部によって直流にされた電力は、制御回路部を通して蓄電部に蓄えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-137180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された整流回路部では、ダイオードによる整流によって、ダイオードから、高周波電源部のプラス側およびマイナス側にて同位相のノイズ電流が同一方向へ流れ、大地を経由してダイオードに戻る。このとき、ノイズ電流の経路が同一方向となることから、比較的大きな放射ノイズが発生する。そこで、ノイズ電流および放射ノイズを低減させるため、整流回路部を金属筐体で収容するとともに、金属筐体と整流回路部の入出力端子とに接続されたYコンデンサを設けることがある。このYコンデンサを設けると、ダイオードからのノイズ電流の一部がYコンデンサを通るため、ダイオードから大地を経由するノイズ電流が低減する。これにより、放射ノイズが低減する。しかし、金属筐体の構造によっては、金属筐体およびYコンデンサの間の距離が長くなることから、ダイオードからYコンデンサを通るノイズ電流の経路におけるインピーダンスが高くなる。この経路におけるインピーダンスが高いと、ダイオードからYコンデンサを通るノイズ電流が低減する。このため、ダイオードから大地を経由するノイズ電流が増大する。したがって、Yコンデンサを設けても、金属筐体の構造によっては、放射ノイズが増大する。
【0005】
本開示は、筐体の構造によらないで、放射ノイズの増大を抑制するACDCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、交流電源(15)からの交流電流のうち正の部分を負荷(20)に出力する第1整流器(31)と、交流電流のうち負の部分を負荷に出力することにより、第1整流器とともに交流電流を直流電流に変換する第2整流器(32)と、第1整流器および第2整流器と並列接続されているとともに、第1整流器のうち第2整流器とは反対側に接続されている第1コンデンサ(41)と、第1コンデンサと直列接続されているとともに、第2整流器のうち第1整流器とは反対側に接続されている第2コンデンサ(42)と、負荷と並列接続されているとともに、第1整流器および第2整流器の間と接続されている第3コンデンサ(43)と、第3コンデンサと直列接続されているとともに、負荷のうち第3コンデンサとは反対側に接続されている第4コンデンサ(44)と、第1整流器のうち第2整流器とは反対側に接続されているとともに、第2整流器からの出力を、第3コンデンサおよび第4コンデンサとともに平滑にする第1コイル(51)と、第2整流器のうち第1整流器とは反対側に接続されているとともに、第1整流器からの出力を、第3コンデンサおよび第4コンデンサとともに平滑にする第2コイル(52)と、第1コンデンサおよび第2コンデンサの間と、第3コンデンサおよび第4コンデンサの間とに接続されているバイパス経路(55)と、第1整流器、第2整流器、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第1コイル、第2コイルおよびバイパス経路を収容する筐体(70)と、を備えるACDCコンバータである。
【0007】
バイパス経路は、筐体に収容された一電流経路となることから、バイパス経路のインピーダンスは、第1整流器および第2整流器から大地を通るノイズ電流の経路におけるインピーダンスに対して低い。このため、第1整流器および第2整流器からのノイズ電流は、第1コンデンサまたは第2コンデンサを介して、バイパス経路に流れやすい。また、バイパス経路を流れたノイズ電流は、第3コンデンサまたは第4コンデンサを通る。したがって、第1整流器および第2整流器からのノイズ電流がバイパス経路に流れるため、第1整流器および第2整流器から大地を通るノイズ電流は、低減する。これにより、放射ノイズの増大が抑制される。また、バイパス経路を筐体に接続する必要はない。よって、筐体の構造によらないで、放射ノイズの増大が抑制される。
【0008】
また、請求項6に記載の発明は、ACDCコンバータであって、交流電源(15)からの交流電流のうち正の部分を負荷(20)に出力する第1整流器(31)と、交流電流のうち負の部分を負荷に出力することにより、第1整流器とともに交流電流を直流電流に変換する第2整流器(32)と、負荷と並列接続されているとともに、第1整流器および第2整流器の間に接続されているコンデンサと、第1整流器のうち第2整流器とは反対側に接続されているとともに、第2整流器からの出力を、コンデンサとともに平滑にする第1コイル(51)と、第2整流器のうち第1整流器とは反対側に接続されているとともに、第1整流器からの出力を、コンデンサとともに平滑にする第2コイル(52)と、第1整流器および第2整流器の間と、コンデンサと、に接続されている第3コイル(53)と、第1整流器、第2整流器、コンデンサ、第1コイル、第2コイルおよび第3コイルを収容する筐体(70)と、を備え、第3コイルのインダクタンス(Lc3)は、第1コイルのインダクタンス(Lc1)および第2コイルのインダクタンス(Lc2)よりも大きくなっているACDCコンバータである。
【0009】
これにより、第1コイル、第2コイルおよび第3コイルのインダクタンスが同じである場合と比較して、交流電流が直流電流に変換されるときにおける、第1コイルおよび第3コイルを流れる電流と、第2コイルおよび第3コイルを流れる電流との差が小さくなる。このため、大地に対しての電流バランスが崩れることが抑制される。したがって、ノイズ電流の発生が抑制される。よって、放射ノイズの発生が抑制される。また、第3コイルを筐体に接続する必要はない。したがって、筐体の構造によらないで、放射ノイズの増大が抑制される。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のACDCコンバータが用いられる電力変換システムの構成図。
図2】ACDCコンバータが交流電流から直流電流に変換するときの電流の流れを示す図。
図3】ACDCコンバータが交流電流から直流電流に変換するときの電流の流れを示す図。
図4】比較例のノイズ電流の流れを示す図。
図5】ACDCコンバータのバイパス経路を流れるノイズ電流を示す図。
図6】バイパス経路の有無、ノイズ電流の周波数、大地を通るノイズ電流および放射ノイズの関係を示す図。
図7】ACDCコンバータが交流電流から直流電流に変換するときの電流の流れを示す図。
図8】ACDCコンバータが交流電流から直流電流に変換するときの電流の流れを示す図。
図9】第2実施形態のACDCコンバータが用いられる電力変換システムの構成図。
図10】第3実施形態のACDCコンバータが用いられる電力変換システムの構成図。
図11】第4実施形態のACDCコンバータが用いられる電力変換システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態のACDCコンバータでは、筐体の構造によらないで放射ノイズの増大が抑制される。また、ACDCコンバータは、交流電流を直流電流に変換する電力変換システムに用いられる。まず、この電力変換システムについて説明する。
【0014】
図1に示すように、電力変換システム10は、交流電源15、負荷20およびACDCコンバータ30を備える。
【0015】
交流電源15は、例えば、インバータ等を有しており、交流電流を生成する。また、交流電源15は、寄生コンデンサ17を介して大地18に接続されている。負荷20は、例えば、蓄電装置等である。さらに、負荷20は、寄生コンデンサ17を介して大地18に接続されている。
【0016】
ACDCコンバータ30は、第1整流器31、第2整流器32、第1コンデンサ41、第2コンデンサ42、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44を備える。また、ACDCコンバータ30は、第1コイル51、第2コイル52、第3コイル53、バイパス経路55、第1変換コイル61、第2変換コイル62および筐体70を備える。
【0017】
第1整流器31および第2整流器32は、ダイオードである。第1整流器31は、交流電源15からの交流電流のうち正の部分を負荷20に出力する。第2整流器32のカソードは、第1整流器31のカソードに接続されている。さらに、第2整流器32は、交流電源15からの交流電流のうち負の部分を負荷20に出力する。これにより、第2整流器32は、第1整流器31とともに、交流電源15からの交流電流を直流電流に変換する。
【0018】
第1コンデンサ41は、第1整流器31および第2整流器32と並列接続されている。また、第1コンデンサ41の一端は、第1整流器31のうち第2整流器32とは反対側、ここでは、第1整流器31のアノードに接続されている。
【0019】
第2コンデンサ42は、第1コンデンサ41とともに、第1整流器31および第2整流器32と並列接続されている。さらに、第2コンデンサ42の一端は、第1コンデンサ41の他端と直列接続されている。また、第2コンデンサ42の他端は、第2整流器32のうち第1整流器31とは反対側、ここでは、第2整流器32のアノードに接続されている。
【0020】
第3コンデンサ43は、負荷20と並列接続されている。さらに、第3コンデンサ43の一端は、後述の第3コイル53を介して、第1整流器31のカソードおよび第2整流器32のカソードの間に接続されている。また、第3コンデンサ43の一端は、後述の筐体70の第1出力端子711を介して、負荷20の一端に接続されている。
【0021】
第4コンデンサ44は、第3コンデンサ43とともに、負荷20と並列接続されている。さらに、第4コンデンサ44の一端は、第3コンデンサ43の他端に直列接続されている。また、第4コンデンサ44の他端は、後述の筐体70の第2出力端子712を介して、負荷20の他端に接続されている。
【0022】
第1コイル51の一端は、第1整流器31のアノードおよび第1コンデンサ41の一端に接続されている。さらに、第1コイル51の他端は、第4コンデンサ44の他端に接続されている。また、第1コイル51は、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44とでLC回路を構成している。これにより、第1コイル51は、後述するように、第2整流器32からの出力を、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44とともに平滑にする。
【0023】
第2コイル52の一端は、第2整流器32のアノードおよび第2コンデンサ42の他端に接続されている。さらに、第2コイル52の他端は、第4コンデンサ44の他端および第1コイル51の他端に接続されている。また、第2コイル52は、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44とでLC回路を構成している。これにより、第2コイル52は、後述するように、第1整流器31からの出力を、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44とともに平滑にする。
【0024】
第3コイル53の一端は、第1整流器31のカソードおよび第2整流器32のカソードの間に接続されている。さらに、第3コイル53の他端は、第3コンデンサ43の一端に接続されている。また、第3コイル53は、第3コンデンサ43、第4コンデンサ44、第1コイル51および第2コイル52とでLC回路を構成している。これにより、第3コイル53は、後述するように、第1整流器31および第2整流器32からの出力を平滑にする。
【0025】
ここで、第1コイル51のインダクタンスを第1インダクタンスLc1とする。第2コイル52のインダクタンスを第2インダクタンスLc2とする。第3コイル53のインダクタンスを第3インダクタンスLc3とする。
【0026】
そして、第3インダクタンスLc3は、第1インダクタンスLc1および第2インダクタンスLc2よりも大きくなっている、すなわち、Lc3>Lc1、Lc3>Lc2とされている。なお、第1インダクタンスLc1および第2インダクタンスLc2は、同じであってもよく、異なっていてもよい。すなわち、Lc1=Lc2であってもよく、Lc1≠Lc2であってもよい。
【0027】
バイパス経路55は、配線等である。バイパス経路55の一端は、第1コンデンサ41および第2コンデンサ42の間、ここでは、第1コンデンサ41の他端および第2コンデンサ42の一端に接続されている。さらに、バイパス経路55の他端は、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44の間、ここでは、第3コンデンサ43の他端および第4コンデンサ44の一端に接続されている。
【0028】
第1変換コイル61の一端は、第1整流器31のうち第2整流器32とは反対側、ここでは、第1整流器31のアノードに接続されている。また、第1変換コイル61の一端は、第1コンデンサ41のうち第2コンデンサ42とは反対側、ここでは、第1コンデンサ41の一端に接続されている。さらに、第1変換コイル61の一端は、第1コイル51の一端に接続されている。
【0029】
第2変換コイル62の一端は、第2整流器32のうち第1整流器31とは反対側、ここでは、第2整流器32のアノードに接続されている。さらに、第2変換コイル62の一端は、第2コンデンサ42のうち第1コンデンサ41とは反対側、ここでは、第2コンデンサ42の他端に接続されている。また、第2変換コイル62の一端は、第2コイル52の一端に接続されている。さらに、第2変換コイル62は、第1コンデンサ41、第2コンデンサ42および第1変換コイル61とでインピーダンス変換回路を構成している。これらによって構成されたインピーダンス変換回路は、交流電源15と負荷20とのインピーダンスマッチングを行う。
【0030】
筐体70は、金属等で形成されていることにより、導電性を有する。また、筐体70は、第1整流器31、第2整流器32、第1コンデンサ41、第2コンデンサ42、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44を収容している。さらに、筐体70は、第1コイル51、第2コイル52、第3コイル53、バイパス経路55、第1変換コイル61および第2変換コイル62を収容している。また、筐体70は、第1入力端子701、第2入力端子702、第1出力端子711および第2出力端子712を有する。
【0031】
第1入力端子701は、交流電源15の一端に接続されている。さらに、第1入力端子701は、第1変換コイル61の他端に接続されている。
【0032】
第2入力端子702は、交流電源15の他端に接続されている。また、第2入力端子702は、第2変換コイル62の他端に接続されている。
【0033】
第1出力端子711は、負荷20の一端に接続されている。さらに、第1出力端子711は、第3コンデンサ43の一端および第3コイル53の他端に接続されている。
【0034】
第2出力端子712は、負荷20の他端に接続されている。また、第2出力端子712は、第4コンデンサ44の他端、第1コイル51の他端および第2コイル52の他端に接続されている。
【0035】
以上のように、第1実施形態のACDCコンバータ30を備える電力変換システム10は、構成されている。次に、ACDCコンバータ30による、交流電流から直流電流への変換について説明する。
【0036】
ここで、交流電源15から第1入力端子701に流れる電流の向きを正方向とする。また、交流電源15から第2入力端子702に流れる電流の向きを負方向とする。
【0037】
そして、交流電源15によって交流電流が生成される。生成された交流電流は、第1コンデンサ41、第2コンデンサ42、第1変換コイル61および第2変換コイル62によって構成されたインピーダンス変換回路を流れる。これらによって構成されたインピーダンス変換回路によって、交流電源15と負荷20とのインピーダンスマッチングがされる。
【0038】
また、交流電源15からの電流の向きが正方向であると、図2に示すように、交流電源15から、第1入力端子701、第1変換コイル61を経由して、第1整流器31に電流が流れる。このとき、第1整流器31は、交流電源15からの交流電流のうち正の部分を負荷20に出力することから、第3コイル53および第1出力端子711を経由して、負荷20に電流を出力する。さらに、負荷20に流れた電流は、第2出力端子712、第2コイル52、第2変換コイル62および第2入力端子702を経由して、交流電源15に流れる。また、このとき、第2コイル52、第3コイル53、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44によって構成されるLC回路によって、負荷20に流れる電流は、平滑にされる。なお、図2において、電流の流れが二点鎖線で示されている。
【0039】
また、交流電源15からの電流の向きが負方向であると、図3に示すように、交流電源15から、第2入力端子702、第2変換コイル62を経由して、第2整流器32に電流が流れる。このとき、第2整流器32は、交流電源15からの交流電流のうち負の部分を負荷20に出力することから、第3コイル53および第1出力端子711を経由して、負荷20に電流を出力する。これにより、第2整流器32は、第1整流器31とともに、交流電源15からの交流電流を直流電流に変換する。さらに、負荷20に流れた電流は、第2出力端子712、第1コイル51、第1変換コイル61および第1入力端子701を経由して、交流電源15に流れる。また、このとき、第1コイル51、第3コイル53、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44によって構成されるLC回路によって、負荷20に流れる電流は、平滑にされる。なお、図3において、電流の流れが二点鎖線で示されている。
【0040】
以上のように、ACDCコンバータ30は、交流電流を直流電流に変換する。次に、ACDCコンバータ30によって、筐体70の構造によらないで、放射ノイズの増大が抑制されることについて説明する。
【0041】
ここで、図4に示す比較用ACDCコンバータ90のように、複数のYコンデンサ100を設けることがある。Yコンデンサ100は、筐体70に接続されている。また、Yコンデンサ100は、第1入力端子701、第2入力端子702、第1出力端子711および第2出力端子712にそれぞれ接続されている。しかし、筐体70によっては、筐体70およびYコンデンサ100の間の距離が長くなることから、第1整流器31および第2整流器32からYコンデンサ100を通るノイズ電流の経路におけるインピーダンスが高くなる。この経路におけるインピーダンスが高いと、第1整流器31および第2整流器32からYコンデンサ100を通るノイズ電流が低減する。このため、第1整流器31および第2整流器32から大地18を経由するノイズ電流が増大する。したがって、Yコンデンサ100を設けても、筐体70の構造によっては、放射ノイズが増大する。なお、図4において、第1整流器31および第2整流器32からYコンデンサ100を通るノイズ電流が二点鎖線で示されている。また、第1整流器31および第2整流器32から大地18を経由するノイズ電流が破線で示されている。
【0042】
これに対して、本実施形態のACDCコンバータ30は、図1に示すように、バイパス経路55を備えている。バイパス経路55は、第1コンデンサ41および第2コンデンサ42の間と、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44の間とに接続されている。
【0043】
バイパス経路55は、筐体70に収容された一電流経路となることから、バイパス経路55のインピーダンスは、第1整流器31および第2整流器32から大地18を通るノイズ電流の経路におけるインピーダンスに対して低い。このため、図5に示すように、第1整流器31および第2整流器32からのノイズ電流は、第1コンデンサ41または第2コンデンサ42を介して、バイパス経路55に流れやすい。また、バイパス経路55を流れたノイズ電流は、第3コンデンサ43または第4コンデンサ44を通る。なお、図5において、第1整流器31および第2整流器32からバイパス経路55を通るノイズ電流が二点鎖線で示されている。さらに、第1整流器31および第2整流器32から大地18を経由するノイズ電流が破線で示されている。
【0044】
したがって、第1整流器31および第2整流器32からのノイズ電流がバイパス経路55に流れるため、図6に示すように、第1整流器31および第2整流器32から大地18を経由するノイズ電流は、低減する。これにより、放射ノイズの増大が抑制される。また、バイパス経路55を筐体70に接続する必要はない。よって、筐体70の構造によらないで、放射ノイズの増大が抑制される。
【0045】
さらに、第1実施形態のACDCコンバータ30では、以下に記載する効果も奏する。
【0046】
[1-1]ACDCコンバータ30は、図1に示すように、第1変換コイル61と、第2変換コイル62と、を備える。第1変換コイル61は、第1整流器31のうち第2整流器32とは反対側と、第1コンデンサ41のうち第2コンデンサ42とは反対側とに接続されている。第2変換コイル62は、第2整流器32のうち第1整流器31とは反対側と、第2コンデンサ42のうち第1コンデンサ41とは反対側とに接続されている。
【0047】
第1コンデンサ41、第2コンデンサ42、第1変換コイル61および第2変換コイル62によって、インピーダンス変換回路が構成される。これにより、第1コンデンサ41および第2コンデンサ42を、交流電源15と負荷20とのインピーダンスマッチングに用いることもできる。
【0048】
[1-2]ここで、大地18に対しての電流バランスを取るため、特許文献1に記載された3つの整流コイルのインダクタンスを同じとすることがある。しかし、整流コイルの製造バラつき等により、整流コイルのインダクタンスがバラつく。整流コイルのインダクタンスのバラつきによって、整流コイルを流れる電流に差異が発生する。このため、大地18に対しての電流バランスが崩れることから、同位相のノイズ電流が発生する。これにより、放射ノイズが発生する。
【0049】
また、ここで、例えば、交流電源15からの電流の向きが正方向であるとする。このとき、図7に示すように、上記したように、交流電源15から、第1入力端子701、第1変換コイル61、第1整流器31、第3コイル53、第1出力端子711を経由して、負荷20に電流が流れる。負荷20を流れた電流は、第2出力端子712、第2コイル52、第2変換コイル62および第2入力端子702を経由して、交流電源15に流れる。さらに、第1整流器31、第3コイル53、第1出力端子711、負荷20、第2出力端子712、第1コイル51および第1整流器31を電流が流れる。このときの第1コイル51および第3コイル53を流れる電流をI1とする。また、このときの第2コイル52および第3コイル53を流れる電流をI2とする。なお、図7において、I1は、一点鎖線で示されている。さらに、I2は、二点鎖線で示されている。
【0050】
また、交流電源15からの電流の向きが負方向であるとする。このとき、図8に示すように、上記したように、交流電源15から、第2入力端子702、第2変換コイル62、第2整流器32、第3コイル53、第1出力端子711を経由して、負荷20に電流が流れる。負荷20を流れた電流は、第2出力端子712、第1コイル51、第1変換コイル61および第1入力端子701を経由して、交流電源15に流れる。また、第2整流器32、第3コイル53、第1出力端子711、負荷20、第2出力端子712、第2コイル52および第2整流器32を電流が流れる。このときの第1コイル51および第3コイル53を流れる電流は、I1に対応する。さらに、このときの第2コイル52および第3コイル53を流れる電流は、I2に対応する。なお、図8において、I1は、二点鎖線で示されている。また、I2は、一点鎖線で示されている。
【0051】
さらに、ここで、交流電源15からの電流の振幅をVとする。交流電源15からの電流の周波数をωとする。負荷20の電気抵抗をRとする。虚数をjとする。
【0052】
このとき、I1は、下記関係式(1)に示すように、V、ω、R、j、第1インダクタンスLc1および第3インダクタンスLc3を用いて表される。また、I2は、下記関係式(2)に示すように、V、ω、R、j、第2インダクタンスLc2および第3インダクタンスLc3を用いて表される。
【0053】
【数1】
【0054】
また、ここで、例えば、ωが1MHzであるとする。Vが1000Vであるとする。Rが5Ωであるとする。
【0055】
この場合に、第1コイル51、第2コイル52および第3コイル53のバラつきがなく、Lc1=Lc2=Lc3=10μHであるとする。このとき、|I1|=|I2|=7.95Aとなる。|I1|と|I2|と等しいことから、大地18に対しての電流バランスが取れる。
【0056】
しかし、第1コイル51、第2コイル52および第3コイル53の製造バラつき等により、第1インダクタンスLc1、第2インダクタンスLc2および第3インダクタンスLc3は、バラつく。例えば、インダクタンスのバラつき度合が±25%であるとし、Lc1=12.5μH、Lc2=7.5μH、Lc3=10μHであるとする。このとき、|I1|=7.07Aとなる。また、|I2|=9.09Aとなる。したがって、|I1|-|I2|=2.02Aとなる。このI1およびI2の差異のため、大地18に対しての電流バランスが崩れることから、同位相のノイズ電流が発生する。これにより、放射ノイズが発生する。
【0057】
これに対して、本実施形態のACDCコンバータ30では、第3インダクタンスLc3は、第1インダクタンスLc1および第2インダクタンスLc2よりも大きくなっている、すなわち、Lc3>Lc1、Lc3>Lc2とされている。
【0058】
ここで、第1コイル51、第2コイル52および第3コイル53のバラつきがなく、Lc1=Lc2=5μHであるとし、Lc3=15μHであるとする。このとき、|I1|=|I2|=7.95Aとなることから、上記したLc1=Lc2=Lc3=10μHであるときと同じとなる。
【0059】
そして、第1コイル51、第2コイル52および第3コイル53の製造バラつき等により、例えば、インダクタンスのバラつき度合が±25%であるとし、Lc1=6.25μH、Lc2=3.75μH、Lc3=15μHであるとする。このとき、|I1|=7.48Aとなる。また、|I2|=8.48Aとなる。したがって、|I1|-|I2|=1.00Aとなる。よって、I1およびI2の差の絶対値は、Lc1=Lc2=Lc3である場合と比較して小さい。このため、大地18に対しての電流バランスが崩れることが抑制される。したがって、同位相のノイズ電流の発生が抑制される。よって、放射ノイズの発生が抑制される。また、第3コイル53を筐体70に接続する必要はない。したがって、筐体70の構造によらないで放射ノイズの増大が抑制される。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態では、図9に示すように、ACDCコンバータ30は、第1変換コイル61および第2変換コイル62に代えて、変換回路75およびフィルタコイル80を備える。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0061】
変換回路75は、インピーダンス変換回路であって、コイルおよびコンデンサ等を有することにより、交流電源15と負荷20とのインピーダンスマッチングを行う。また、変換回路75は、第1入力端子701および第2入力端子702に接続されている。さらに、変換回路75は、第1整流器31のアノード、第1コンデンサ41の一端および第1コイル51の一端に接続されている。また、変換回路75は、第2整流器32のアノード、第2コンデンサ42の他端および第2コイル52の一端に接続されている。
【0062】
フィルタコイル80は、第1コンデンサ41のうち第2コンデンサ42とは反対側、ここでは、第1コンデンサ41の一端に接続されている。さらに、フィルタコイル80は、第2コンデンサ42のうち第1コンデンサ41とは反対側、ここでは、第2コンデンサ42の他端に接続されている。したがって、フィルタコイル80は、第1コンデンサ41および第2コンデンサ42と並列接続されている。
【0063】
以上のように、第2実施形態のACDCコンバータ30は、構成されている。この第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0064】
[2]フィルタコイル80により、第1整流器31および第2整流器32からのノイズ電流が第1コンデンサ41および第2コンデンサ42を通りやすくさせるフィルタとして、第1コンデンサ41および第2コンデンサ42を用いることもできる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態では、図10に示すように、第1コンデンサ41、第2コンデンサ42、変換回路75およびフィルタコイル80の形態が第2実施形態と異なる。これ以外は、第2実施形態と同様である。
【0066】
具体的には、第1入力端子701が、変換回路75に接続されていることに加えて、第1コンデンサ41の一端およびフィルタコイル80の一端に接続されている。また、第2入力端子702が、変換回路75に接続されていることに加えて、第2コンデンサ42の他端およびフィルタコイル80の他端に接続されている。
【0067】
以上のように、第3実施形態のACDCコンバータ30は、構成されている。この第3実施形態においても、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0068】
(第4実施形態)
第4実施形態では、図11に示すように、ACDCコンバータ30は、バイパス経路55を備えていない。また、ACDCコンバータ30は、第3コンデンサ43および第4コンデンサ44を備えていない。さらに、第1コンデンサ41および第2コンデンサ42の態様が第1実施形態と異なる。具体的には、第1コンデンサ41は、第1整流器31および第2整流器32と並列接続されている。また、第1コンデンサ41の一端は、第1整流器31のうち第2整流器32とは反対側、ここでは、第1整流器31のアノードに接続されている。さらに、第1コンデンサ41の他端は、第2整流器32のうち第1整流器31とは反対側、ここでは、第2整流器32のアノードに接続されている。第2コンデンサ42は、負荷20と並列接続されている。また、第2コンデンサ42の一端は、第3コイル53に接続されている。さらに、第2コンデンサ42の一端は、第1出力端子711を介して、負荷20の一端に接続されている。また、第2コンデンサ42の他端は、第1コイル51の他端および第2コイル52の他端に接続されている。さらに、第2コンデンサ42の他端は、第2出力端子712を介して、負荷20の他端に接続されている。これら以外は、第1実施形態と同様である。この第4実施形態においても、上記[1-2]に記載した効果と同様の効果を奏する。
【0069】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0070】
上記各実施形態は、適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0071】
31 第1整流器
32 第2整流器
41 第1コンデンサ
42 第2コンデンサ
43 第3コンデンサ
44 第4コンデンサ
51 第1コイル
52 第2コイル
55 バイパス経路
70 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11