(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024512
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】回転機における冷却液の流路構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
H02K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128679
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】大山 侑樹
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD13
(57)【要約】
【課題】回転機の外周壁において、その壁厚部内の流路を冷却液で充満させた状態に維持することができ、それにより、回転機全体を適切に冷却することができる回転機における冷却液の流路構造を提供する。
【解決手段】フレーム5の壁厚部内に、フレーム5の軸線方向に沿って、蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体1と、流路本体31の一端部に連なるように設けられ、外部から冷却液を流路本体31に導入するための冷却液導入流路部22aと、流路本体31の他端部に連なるように設けられ、流路本体31内の冷却液を外部に排出するための冷却液排出流路部23aと、を備え、流路本体31は、冷却液導入流路部22a側から順に、導入側周方向流路部32、導入側反転流路部33、中間周方向流路部34、排出側反転流路部35、及び排出側周方向流路部36を有している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機における円筒状の外周壁に設けられ、当該回転機を冷却するための冷却液の流路構造であって、
前記外周壁の壁厚部内に、当該外周壁の軸線方向に沿って、蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体と、
前記流路本体の一端部に連なるように設けられ、外部から冷却液を前記流路本体に導入するための冷却液導入流路部と、
前記流路本体の他端部に連なるように設けられ、前記流路本体内の冷却液を外部に排出するための冷却液排出流路部と、
を備え、
前記流路本体は、
前記冷却液導入流路部から前記外周壁の周方向にほぼ1周するように延びる導入側周方向流路部と、
この導入側周方向流路部に連なり、当該導入側周方向流路部を流れた冷却液の流れる方向を反転させる導入側反転流路部と、
この導入側反転流路部に連なり、前記外周壁の周方向にほぼ1周するように延びる中間周方向流路部と、
この中間周方向流路部に連なり、当該中間周方向流路部を流れた冷却液を、前記冷却液排出流路部側に案内するよう、流れる方向を反転させる排出側反転流路部と、
この排出側反転流路部に連なり、前記外周壁の周方向にほぼ1周するように延びるとともに、前記冷却液排出流路部に連なる排出側周方向流路部と、
を有していることを特徴とする回転機における冷却液の流路構造。
【請求項2】
前記中間周方向流路部は、単一の中間周方向流路部によって、又は互いに前記軸線方向に並ぶように設けられかつ互いに端部同士が連通された複数の中間周方向流路部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項3】
前記回転機は、前記外周壁の内側に設置される円筒状のステータを備え、
当該ステータは、その軸線方向に沿って延びるとともに径方向外側に突出する凸状に形成され、互いに周方向に所定角度ごとに配置された複数の係合凸部を有しており、
前記外周壁は、当該外周壁の軸線方向に沿って延びるとともに、径方向外側に突出する凸状に形成されることで径方向内側に開口する凹状に構成され、前記複数の係合凸部がそれぞれ係合する複数のステータ回り止め部を有することを特徴とする請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項4】
前記外周壁は、
円筒状に形成され、内周面側に前記ステータが取り付けられるとともに、外周面側に前記流路本体を構成するための溝部が形成された内側フレームと、
円筒状に形成され、前記内側フレームを内側に挿入した状態で、当該内側フレームに重ねられることにより、前記溝部と内周面との間に前記流路本体を構成する外側フレームと、
を有していることを特徴とする請求項3に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項5】
前記内側フレーム及び前記外側フレームの前記ステータ回り止め部に対応する部位が、径方向外側に突出する凸状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【請求項6】
前記冷却液導入流路部及び前記冷却液排出流路部は、前記外周壁の径方向に延び、前記複数のステータ回り止め部のうちの所定のステータ回り止め部に対応する位置に設けられており、
前記内側フレームは、前記所定のステータ回り止め部に対応する外周面に、径方向外側に凸に湾曲するように形成され、前記冷却液導入流路部を介して流入した冷却液を前記流路本体に案内する案内面を有していることを特徴とする請求項5に記載の回転機における冷却液の流路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車や重機などの駆動用あるいは旋回用のモータ、さらには発電機などの各種の回転機に適用され、その回転機を冷却するための冷却液の流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータに適用され、その外周面に冷却水が流れる冷却水路を備えた流路構造として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このモータは、その外周壁を構成する円筒状のフレームを有しており、そのフレームの外周面を覆うように、冷却水路を有するウォータージャケットが設けられている。具体的には、ウォータージャケットは、モータのフレームの外径よりも大きい内径を有する円筒状の外周壁と、この外周壁とモータのフレームとの間に配置され、モータの軸線方向に沿って所定長さ延びかつモータの径方向に突出する複数のフィンとを有している。これらのフィンは、フレームの周方向に互いに所定間隔を隔てた状態で、長さ方向の一端部がモータの軸線方向の一方側及び他方側に交互に寄った状態に配置されている。これにより、モータのフレームの外周面側には、フレームの周方向に沿って、蛇行しながら延びる冷却水路が構成されている。
【0003】
また、ウォータージャケットには、モータの軸線方向における一方側の端部に、ウォータージャケットの周方向に互いに隣接した状態で、冷却水入口及び冷却水出口が設けられている。さらに、ウォータージャケットには、上記の冷却水入口と冷却水出口の間に、上記フィンとほぼ同様に形成され、モータの軸線方向の全体にわたって延びかつ冷却水入口側と冷却水出口側とを仕切る仕切壁が設けられている。
【0004】
上記のように構成された冷却水路を有するモータでは、ポンプなどによって、冷却水が冷却水入口に送り出されると、その冷却水は、冷却水路に沿って、すなわち、モータのフレームの外周面上において、フレームの周方向に沿って蛇行しながら流れる。そして、冷却水は、フレームの外周面上をほぼ1周した後、冷却水出口から外部に排出される。このように、冷却水が、モータのフレームの外周面上を流れることにより、モータの回転に伴う発熱を、冷却水との熱交換によって抑制し、空冷式に比べて、モータを効率良く冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60-153653号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の冷却水路を備えたモータでは、以下のような問題がある。すなわち、特許文献1の第2図に記載されているように、モータのシャフトが鉛直に延びる姿勢となるようにモータを設置した場合、冷却水は、冷却水路に沿って上下しながら蛇行し、モータのフレームの外周面をほぼ1周するように流れる。この場合、冷却水入口から送り出される冷却水の流量が不十分であると、冷却水は、冷却水路の上端部に充填されないまま流れ、その結果、モータの上端部を冷却できなくなるおそれがある。
【0007】
もちろん、冷却水が冷却水路に充満した状態において、モータの作動開始時から新たな冷却水を冷却水入口に送り出すことにより、モータ全体を冷却することは可能である。しかし、上記のモータでは、モータが停止する際の冷却水の送り出しと排出の停止タイミングのずれや、モータの停止中における冷却水出口からの冷却水の漏出などにより、冷却水路に充満していた冷却水が減少し、その結果、冷却水路内の上部にエアが溜まってしまうことがある。このようなエアがモータの作動時に冷却水路内に存在する場合、モータを適切に冷却できなくなるおそれがある。また、上記のような不具合を回避するためには、モータの利用者がエア抜きしたり、冷却水を冷却水路に充満したりしなければならず、モータの作動開始前に煩雑な作業を要することがある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、回転機の外周壁において、その壁厚部内の流路を冷却液で充満させた状態に維持することができ、それにより、回転機全体を適切に冷却することができる回転機における冷却液の流路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転機における円筒状の外周壁に設けられ、回転機を冷却するための冷却液の流路構造であって、外周壁の壁厚部内に、外周壁の軸線方向に沿って、蛇行しながら延びるように設けられ、冷却時に冷却液が流れる流路本体と、流路本体の一端部に連なるように設けられ、外部から冷却液を流路本体に導入するための冷却液導入流路部と、流路本体の他端部に連なるように設けられ、流路本体内の冷却液を外部に排出するための冷却液排出流路部と、を備え、流路本体は、冷却液導入流路部から外周壁の周方向にほぼ1周するように延びる導入側周方向流路部と、この導入側周方向流路部に連なり、導入側周方向流路部を流れた冷却液の流れる方向を反転させる導入側反転流路部と、この導入側反転流路部に連なり、外周壁の周方向にほぼ1周するように延びる中間周方向流路部と、この中間周方向流路部に連なり、中間周方向流路部を流れた冷却液を、冷却液排出流路部側に案内するよう、流れる方向を反転させる排出側反転流路部と、この排出側反転流路部に連なり、外周壁の周方向にほぼ1周するように延びるとともに、冷却液排出流路部に連なる排出側周方向流路部と、を有していることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、回転機における円筒状の外周壁の壁厚部内に、その外周壁の軸線方向に沿って、蛇行しながら延びる流路本体が設けられており、この流路本体の一端部及び他端部にそれぞれ、上記の冷却液導入流路部及び冷却液排出流路部が連なるように設けられている。また、流路本体は、冷却液導入流路部側から順に、上記の導入側周方向流路部、導入側反転流路部、中間周方向流路部、排出側反転流路部、及び排出側周方向流路部が連なり、その排出側周方向流路部の端部に冷却液排出流路部が設けられている。上記の導入側周方向流路部、中間周方向流路部及び排出側周方向流路部はいずれも、外周壁の周方向にほぼ1周するように延びており、導入側反転流路部及び排出側周方向流路部は、上流側から流れてきた冷却液の流れる方向を反転させ、その冷却水を下流側に流すように構成されている。
【0011】
上記のように構成された流路構造では、冷却液導入流路部に導入された冷却液は、導入側周方向流路部、導入側反転流路部、中間周方向流路部、排出側反転流路部、及び排出側周方向流路部に、順に流れ、各流路部を充満させた状態に維持しながら、冷却液排出流路部から外部に排出される。このように、本発明の流路構造によれば、冷却液が流れる流路本体を、回転機の外周壁の壁厚部内に、外周壁の軸線方向に沿って、蛇行しながら延びるように設けているので、回転機の設置姿勢に関わらず、従来に比べて比較的容易に、流路本体を冷却液で充満させた状態に維持することができ、それにより、作動時に発熱する回転機全体を適切に冷却することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造において、中間周方向流路部は、単一の中間周方向流路部によって、又は互いに軸線方向に並ぶように設けられかつ互いに端部同士が連通された複数の中間周方向流路部によって構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、中間周方向流路部が、単一又は複数の中間周方向流路部によって構成されるので、回転機の形状やサイズ、構造などに応じて、中間周方向流路部の数を適宜、設定することができる。例えば、回転機の軸線方向の長さが比較的短い場合には、中間周方向流路部を単一に設定する一方、回転機の軸線方向の長さが比較的長い場合には、中間周方向流路部を複数に設定することが可能である。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の回転機における冷却液の流路構造において、回転機は、外周壁の内側に設置される円筒状のステータを備え、ステータは、その軸線方向に沿って延びるとともに径方向外側に突出する凸状に形成され、互いに周方向に所定角度ごとに配置された複数の係合凸部を有しており、外周壁は、外周壁の軸線方向に沿って延びるとともに、径方向外側に突出する凸状に形成されることで径方向内側に開口する凹状に構成され、複数の係合凸部がそれぞれ係合する複数のステータ回り止め部を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、回転機の外周壁の内側に、円筒状のステータが設置されており、そのステータには、軸線方向に沿って延びかつ径方向外側に突出する凸状に形成された複数の係合凸部が、互いに周方向に所定角度ごとに設けられている。また、回転機の外周壁は、複数のステータ回り止め部を有している。これらのステータ回り止め部は、外周壁の軸線方向に沿って延びるとともに、径方向外側に突出する凸状に形成されることで径方向内側に開口する凹状に構成されている。ステータが外周壁の内側に設置された状態では、ステータの複数の係合凸部が、外周壁の複数のステータ回り止め部にそれぞれ係合する。これにより、回転機のステータを、外周壁の内側に、回転不能な状態で安定して設置することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の回転機における冷却液の流路構造において、外周壁は、円筒状に形成され、内周面側にステータが取り付けられるとともに、外周面側に流路本体を構成するための溝部が形成された内側フレームと、円筒状に形成され、内側フレームを内側に挿入した状態で、内側フレームに重ねられることにより、溝部と内周面との間に流路本体を構成する外側フレームと、を有していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、回転機の外周壁が、いずれも円筒状に形成された内側フレーム及び外側フレームを有している。内側フレームには、その内周面側にステータが取り付けられる一方、外周面側に流路本体を構成するための溝部が形成されている。この内側フレームを外側フレームの内側に挿入した状態で、外側フレームを内側フレームに重ねることにより、内側フレームの溝部と外側フレームの内周面との間に、上記流路本体を容易に構成することができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の回転機における冷却液の流路構造において、内側フレーム及び外側フレームのステータ回り止め部に対応する部位が、径方向外側に突出する凸状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、内側フレーム及び外側フレームにおいて、ステータ回り止め部に対応する部位が、径方向外側に突出する凸状に形成されることにより、流路本体の横断面のサイズを、ステータ回り止め部の周囲において大きく変化させることなく、ほぼ一定に維持することができる。それにより、冷却液がステータ回り止め部に対応する部位を流れる際に、冷却液の圧力損失が大きくなるのを抑制でき、冷却液の円滑な流れを確保することができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の回転機における冷却液の流路構造において、冷却液導入流路部及び冷却液排出流路部は、外周壁の径方向に延び、複数のステータ回り止め部のうちの所定のステータ回り止め部に対応する位置に設けられており、内側フレームは、所定のステータ回り止め部に対応する外周面に、径方向外側に凸に湾曲するように形成され、冷却液導入流路部を介して流入した冷却液を流路本体に案内する案内面を有していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、冷却液導入流路部及び冷却液排出流路部が、いずれも外周壁の径方向に延び、所定のステータ回り止め部に対応する位置に設けられている。また、内側フレームは、冷却液導入流路部を介して流入した冷却液を、流路本体に案内する案内面を有している。この案内面は、上記所定のステータ回り止め部に対応する外周面に設けられ、径方向外側に凸に湾曲するように形成されている。これにより、冷却液導入流路部に導入された冷却液は、案内面によって、流路本体側に円滑に案内され、その結果、冷却液導入流路部に導入された冷却液の流速をほぼ維持しながら、流路本体に冷却液を送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による冷却液の流路構造を適用したモータを、横置きした状態で示す斜視図であり、(a)は全体を示し、(b)はフロントブラケットが取り外された状態を示す。
【
図2】
図1(a)に示すモータを、縦置きした状態で示す斜視図であり、(a)は全体を示し、(b)はエンドブラケットが取り外された状態を示す。
【
図3】(a)は
図1(a)に示すモータからフロントブラケット、エンドブラケット及び端子が取り外された状態のモータを示す斜視図、(b)は(a)に示すモータを分解して示す斜視図である。
【
図4】フレームの構造を説明するための図であり、(a)は横置きされたフレームの全体を示す斜視図、(b)は(a)に示すフレームを、内側フレームと外側フレームに分解して示す斜視図である。
【
図5】フレームの構造を説明するための図であり、(a)は縦置きされたフレームの全体を示す斜視図、(b)は(a)に示すフレームのA-A線に沿う断面図である。
【
図6】(a)は
図3(a)に示すモータを縦置きした状態の側面図であり、(b)、(c)、(d)及び(e)はそれぞれ、(a)に示すモータのB-B線、C-C線、D-D線及びE-E線に沿う断面図である。
【
図7】(a)は縦置きしたモータのフレームにおける冷却水の流路を示す斜視図、(b)は(a)に示す冷却水の流路を、フレームの周方向に展開した状態で示す図である。
【
図8】(a)及び(b)は、
図7(a)及び(b)の流路にそれぞれ対応し、冷却水の流れを説明するための図である。
【
図9】流路本体の変形例を示す図であり、中間周方向流路部が3つに設定された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による冷却液の流路構造を適用したモータ1(回転機)を、横置きした状態で示しており、(a)は全体を示し、(b)はフロントブラケット6が取り外された状態を示している。また、
図2は、
図1(a)に示すモータ1を、縦置きした状態で示しており、(a)は全体を示し、(b)はエンドブラケット7が取り外された状態を示している。なお、上記の「横置き」とは、モータ1のシャフト2が水平に延びる姿勢となるように、モータ1を設置する状態を意味し、上記の「縦置き」とは、モータ1のシャフト2が鉛直に延びる姿勢となるように、モータ1を設置する状態を意味する。
【0024】
図1及び
図2に示すモータ1は、例えば重機の旋回用のモータなどに使用されるものであり、その場合には一般に、
図2(a)に示すように、縦置きした状態で設置される。
【0025】
図3(a)は、
図1(a)に示すモータ1からフロントブラケット6、エンドブラケット7及び端子9が取り外された状態のモータ1を示し、
図3(b)は、(a)に示すモータ1を分解して示している。
図1~
図3に示すように、このモータ1は、所定長さを有するシャフト2と、このシャフト2が貫通しかつこのシャフト2に固定されたロータ3と、ロータ3の外周を囲むように設けられたステータ4と、上記のロータ3及びステータ4を覆う円筒状に形成され、壁厚部に冷却水(冷却液)の流路10を有するフレーム5(外周壁)と、このフレーム5の軸線方向の前後にそれぞれ取り付けられたフロントブラケット6及びエンドブラケット7と、フレーム5の外周面の後端部に設けられ、ステータ4に電力を供給するための端子9とを備えている。
【0026】
図1(a)に示すように、シャフト2は、その一端部がフロントブラケット6の中央孔6aを貫通し、先端部にピニオン2aが設けられている。また、上記のフロントブラケット6には、その周縁部に径方向に突出するフランジ部6bが設けられ、そのフランジ部6bに、モータ1を取り付けるための複数(
図1(a)では12個)の取付孔6cが設けられている。さらに、フロントブラケット6には、複数(
図1(a)では6個)の連結孔6dが設けられ、各連結孔6dに挿入された連結ボルト6eを介して、フロントブラケット6がフレーム5の前面に連結されている。
【0027】
図2(a)に示すように、エンドブラケット7は、フレーム5の後面全体を覆う所定形状に形成されており、複数(
図2(a)では7個)の連結ボルト7aを介して、フレーム5の後面に連結されている。なお、前述したフロントブラケット6及び上記のエンドブラケット7の内側にはそれぞれ、ベアリングが固定されており、それらのベアリングによって、シャフト2が回転自在に支持されている。
【0028】
図3(b)に示すように、ロータ3は、肉厚円筒状に形成され、中心部を貫通するシャフト2に固定されたロータコア3aと、その内部に埋設された複数の永久磁石(図示せず)とを備えている。
【0029】
ステータ4は、円筒状のステータコア4aと、これに巻き付けられた三相のステータコイル4bとを備えている。また、ステータコア4aの外周面には、互いに周方向に等角度に配置された3つの係合凸部8が設けられている。各係合凸部8は、ステータコア4aの軸線方向に沿って、その長さ方向の全体にわたって延びるとともに、ステータコア4aの径方向外側に円弧状に突出するように形成されている。また、各係合凸部8には、軸線方向に沿って延び、固定ボルトが挿通されるボルト孔8aが形成されている。
【0030】
図4(a)及び
図5(a)はそれぞれ、横置き及び縦置きされたフレーム5を示している。また、
図4(b)は、同図(a)に示すフレーム5を分解して示しており、
図5(b)は、同図(a)に示すフレーム5のA-A線に沿う断面図である。
【0031】
図4及び
図5に示すように、フレーム5は、円筒状に形成され、上記ステータ4が内周面側に取り付けられる内側フレーム11と、円筒状に形成され、内側フレーム11を内側に挿入した状態で、この内側フレーム11に重ねられることにより、冷却水が流れる流路10の流路本体31が構成される外側フレーム12とを有している。
【0032】
図4(b)に示すように、内側フレーム11は、その外周面に、流路10を構成するための所定形状の溝部13aを有するフレーム本体部13と、このフレーム本体部13の後端に連なり、フレーム本体部13よりも外径が大きく形成された拡径部14とを有している。上記の溝部13aは、内側フレーム11の径方向外側に開放し、内側フレーム11の軸線方向に沿って、蛇行しながら延びるように形成されている。
【0033】
また、フレーム本体部13には、互いに周方向に等角度に配置され、内側に設置されるステータ4の3つの係合凸部8がそれぞれ係合する3つのステータ回り止め部15が設けられている。各ステータ回り止め部15は、フレーム本体部13の軸線方向に沿って、フレーム本体部13の前端部の所定位置から後端まで延びるとともに、径方向外側に突出する凸状に形成されることで径方向内側に開口する凹状に構成されている。
【0034】
拡径部14には、その外周面の所定位置に、外部からステータ4における3相のステータコイル4bに電力を供給するための端子9を設置するための端子設置部14aが設けられている。
【0035】
一方、外側フレーム12は、
図4に示すように、互いに周方向に等角度に配置され、内側フレーム11の3つのステータ回り止め部15にそれぞれ対応する3つの回り止め対応部21が設けられている。各回り止め対応部21は、外側フレーム12の軸線方向に沿って、外側フレーム12の長さ方向のほぼ全体にわたって延び、径方向外側に突出する凸状に形成されることで径方向内側に開口する凹状に構成されている。
【0036】
また、外側フレーム12には、所定の同一の回り止め対応部21に、冷却水を流路本体31に導入するための冷却水導入部22、及び流路本体31内の冷却水を外部に排出するための冷却水排出部23が設けられている。これらの冷却水導入部22及び冷却水排出部23は、外側フレーム12の径方向に所定長さ延びる円筒状に形成されており、それらの内部の導入流路部22a(冷却液導入流路部)及び排出流路部23a(冷却液排出流路部)がそれぞれ、流路本体31の両端部に連通している。
【0037】
図5(b)に示すように、外側フレーム12が内側フレーム11に重ねられた状態のフレーム5では、内側フレーム11の溝部13aと、外側フレーム12の内周面とによって、フレーム5の壁厚部内に、流路本体31が構成されている。なお、同図(b)に示すように、このフレーム5では、流路本体31の上方及び下方にそれぞれ設置された上側Oリング25及び下側Oリング26により、流路本体31が水密に保持されている。
【0038】
図6(a)は、
図3(a)に示すモータ1を縦置きした状態の側面図を示しており、
図6(b)、(c)、(d)及び(e)はそれぞれ、
図6(a)に示すモータ1のB-B線、C-C線、D-D線及びE-E線に沿う断面図を示している。また、
図7(a)は、縦置きしたモータ1のフレーム5における流路10を、立体的に示しており、
図7(b)は、流路10を、フレーム5の周方向に展開した状態で示している。
【0039】
図6及び
図7に示すように、流路10は、フレーム5の軸線方向(
図6(a)及び
図7の上下方向)に沿って、蛇行しながら延びる流路本体31と、この流路本体31の下側の端部に連なり、冷却水導入部22内の導入流路部22aと、流路本体31の上側の端部に連なり、冷却水排出部23内の排出流路部23aとを備えている。
【0040】
具体的には、流路本体31は、導入流路部22aからフレーム5の周方向にほぼ1周するように延びる導入側周方向流路部32と、これに連なり、導入側周方向流路部32を流れた冷却水の流れる方向を反転させる導入側反転流路部33と、これに連なり、フレーム5の周方向にほぼ1周するように延びる中間周方向流路部34と、これに連なり、中間周方向流路部34を流れた冷却水の流れる方向を反転させ、排出流路部23a側に案内する排出側反転流路部35と、これに連なり、フレーム5の周方向にほぼ1周するように延びるとともに、排出流路部23aに連なる排出側周方向流路部36とを有している。
【0041】
図5(b)に示すように、流路本体31の導入側周方向流路部32、中間周方向流路部34、及び排出側周方向流路部36は、横断面が縦長矩形状に形成され、所定寸法の流路幅(
図5(b)及び
図7(b)の上下方向の幅)及び流路深さ(
図5(b)の左右方向の幅)を有している。
【0042】
また、
図6及び
図7に示すように、上記の導入側周方向流路部32、中間周方向流路部34、及び排出側周方向流路部36には、内側フレーム11の所定の2つのステータ回り止め部15、15に対応して、径方向外側に突出する凸状流路部が2つずつ形成されている。具体的には、上流側である導入流路部22a側から順に、導入側周方向流路部32には、2つの凸状流路部32a、32bが設けられ、中間周方向流路部34には、2つの凸状流路部34a、34bが設けられ、さらに、排出側周方向流路部36には、2つの凸状流路部36a、36bが設けられている。
【0043】
一方、流路本体31の導入側反転流路部33及び排出側反転流路部35は、上述したように、上流側から流れてきた冷却水の流れる方向を反転させ、下流側に流すように構成されている。また、これらの導入側反転流路部33及び排出側反転流路部35では、それらの横断面積が、導入側、中間及び排出側の周方向流路部32、34及び36の横断面積に比べて大きく設定されている。これにより、冷却水が導入側反転流路部33及び排出側反転流路部35を通過する際の圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0044】
図8(a)及び(b)はそれぞれ、上述した
図7(a)及び(b)の流路10に対応し、冷却水の流れを示している。
図8(a)及び(b)に示すように、冷却水が導入流路部22aに導入されると、その冷却水は、矢印で示すように流路本体31に沿って、すなわち、導入側周方向流路部32、導入側反転流路部33、中間周方向流路部34、排出側反転流路部35、及び排出側周方向流路部36に順に流れ、排出流路部23aから外部に排出される。なお、図示しないが、排出流路部23aから外部に排出された冷却水は、所定の冷却装置によって冷却され、その後、導入流路部22aに再度、導入するように循環される。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態の流路構造を適用したモータ1によれば、冷却水が流れる流路本体31を、モータ1のフレーム5の壁厚部内に、フレーム5の軸線方向に沿って、蛇行しながら延びるように設けているので、モータ1の設置姿勢に関わらず、従来に比べて比較的容易に、流路本体31を冷却水で充満させた状態に維持することができ、それにより、作動時に発熱するモータ1全体を適切に冷却することができる。
【0046】
また、モータ1では、そのステータ4が、3つの係合凸部8を介して、内側フレーム11の3つのステータ回り止め部15にそれぞれ係合するので、モータ1のステータ4を、フレーム5の内側に、回転不能な状態で安定して設置することができる。さらに、モータ1のフレーム5では、溝部13aを有する内側フレーム11を外側フレーム12の内側に挿入した状態で、外側フレーム12を内側フレーム11に重ねることにより、内側フレーム11の溝部13aと外側フレーム12の内周面との間に、流路本体31を容易に構成することができる。
【0047】
また、モータ1では、内側フレーム11のステータ回り止め部15と、外側フレーム12の回り止め対応部21との間に、径方向外側に突出する凸状流路部32a、32b、34a、34b、36a及び36bを形成することにより、流路本体31の横断面のサイズを、ステータ回り止め部15の周囲において大きく変化させることなく、ほぼ一定に維持することができる。それにより、冷却水が凸状流路部32a、32b、34a、34b、36a及び36bを流れる際に、冷却水の圧力損失が大きくなるのを抑制でき、冷却水の円滑な流れを確保することができる。
【0048】
さらに、内側フレーム11は、導入流路部22aを介して流入した冷却水を、流路本体31に案内する案内面13bを有している。この案内面13bは、内側フレーム11において、冷却水導入部22に対応するステータ回り止め部15の外周面に設けられ、径方向外側に凸に湾曲するように形成されている。これにより、導入流路部22aに導入された冷却水は、案内面13bによって、流路本体31の導入側周方向流路部32に円滑に案内され、その結果、導入流路部22aに導入された冷却水の流速をほぼ維持しながら、流路本体31に冷却水を送り出すことができる。
【0049】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、流路本体31において、導入側周方向流路部32と排出側周方向流路部36との間に、単一の中間周方向流路部34を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の中間周方向流路部34を設けるようにしてもよい。
【0050】
図9は、流路本体31の変形例を示している。この流路本体31Aは、単一の中間周方向流路部34を備えた流路本体31に対し、3つの中間周方向流路部34を備えており、これらの中間周方向流路部34の端部同士が、反転流路部34cを介して互いに連通している。このように、モータ1の形状やサイズ、構造などに応じて、中間周方向流路部34の数を適宜、設定することができる。例えば、モータ1の軸線方向の長さが比較的短い場合には、中間周方向流路部34を単一に設定する一方、モータ1の軸線方向の長さが比較的長い場合には、中間周方向流路部34を複数に設定することが可能である。
【0051】
また、実施形態では、回転機としてのモータ1における冷却水の流路構造について説明したが、本発明は、運転によって発熱する各種の回転機(例えば発電機など)に適用することも可能である。
【0052】
また、実施形態で示した流路構造を適用したモータ1、フレーム5及び流路10の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 モータ(回転機)
2 シャフト
3 ロータ
4 ステータ
5 フレーム(外周壁)
6 フロントブラケット
7 エンドブラケット
8 係合凸部
10 流路
11 内側フレーム
12 外側フレーム
13 フレーム本体部
13a 溝部
13b 案内面
15 ステータ回り止め部
21 外側フレームの回り止め対応部
22 冷却水導入部
22a 導入流路部(冷却液導入流路部)
23 冷却水排出部
23a 排出流路部(冷却液排出流路部)
31 流路本体
32 導入側周方向流路部
33 導入側反転流路部
34 中間周方向流路部
35 排出側反転流路部
36 排出側周方向流路部