(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024521
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】鉄筋曲機及び鉄筋曲げ方法
(51)【国際特許分類】
B21D 7/024 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
B21D7/024 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128691
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000223056
【氏名又は名称】東陽建設工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】門馬 功祐
(72)【発明者】
【氏名】戎 俊介
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA09
4E063BB09
4E063CA02
4E063LA10
4E063MA10
(57)【要約】
【課題】鉄筋を所望の角度に精度よく曲げ加工することのできる鉄筋曲機及び鉄筋曲げ方法を提供すること。
【解決手段】鉄筋曲機100は、曲げ加工の支点を構成する支点部材11と、支点部材11の周りを回動可能な力点部材(第1力点部材21及び第2力点部材22)と、前記力点部材を制御するプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記力点部材を第1方向へ回動させて、供給された鉄筋を目標曲げ角度よりも大きい曲げ角度まで曲げ加工する第1制御と、前記力点部材を前記第1方向の反対である第2方向へ回動させて、前記第1制御によって曲げ加工された前記鉄筋を曲げ戻す第2制御と、を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工の支点を構成する支点部材と、
前記支点部材に対して移動可能な力点部材と、
前記力点部材を制御するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記力点部材を移動させて、供給された鉄筋を曲げ加工する第1制御と、前記力点部材を移動させて、前記第1制御によって曲げ加工された前記鉄筋を、前記第1制御による前記鉄筋の曲げ方向とは反対方向に曲げ戻す第2制御と、を行う、鉄筋曲機。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋曲機であって、
前記力点部材は、供給された前記鉄筋に対して一方側に配置される第1力点部材と、当該鉄筋に対して他方側に配置される第2力点部材と、を含み、
前記第1制御が行われる場合には前記第1力点部材が前記鉄筋に曲げ力を付与し、
前記第2制御が行われる場合には前記第2力点部材が前記鉄筋に曲げ力を付与する、鉄筋曲機。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄筋曲機であって、
前記第1力点部材と前記第2力点部材は、前記支点部材の周りを回動可能であり、
前記第2力点部材は、回動半径を変更可能に構成されている、鉄筋曲機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄筋曲機であって、
供給された前記鉄筋の一端部を支持する第1支持部を備え、
前記第1支持部は、前記鉄筋に第3方向への圧力を付与する第1部分と、前記鉄筋に前記第3方向と交差する第4方向への圧力を付与する第2部分との少なくとも一方を含む、鉄筋曲機。
【請求項5】
請求項4に記載の鉄筋曲機であって、
前記支点部材に対し、供給された前記鉄筋を挟んで反対側に配置されて当該鉄筋を支持する第2支持部を備える、鉄筋曲機。
【請求項6】
請求項5に記載の鉄筋曲機であって、
前記第2支持部は、供給された曲げ加工前の前記鉄筋に沿う方向に延びて形成され、前記第1支持部側と反対側の端部は、前記方向において前記支点部材よりも、前記第1支持部側とは反対側に突出している、鉄筋曲機。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄筋曲機であって、
前記第1制御では、供給された鉄筋を目標曲げ角度よりも大きい曲げ角度まで曲げ加工する、鉄筋曲機。
【請求項8】
曲げ加工の支点を構成する支点部材と、前記支点部材に対して移動可能な力点部材と、を用いて鉄筋を曲げ加工する鉄筋曲げ方法であって、
前記力点部材を移動させて、供給された鉄筋を曲げ加工する第1ステップと、
前記第1ステップによって曲げ加工された前記鉄筋を、前記力点部材を移動させて、前記第1ステップによる前記鉄筋の曲げ方向とは反対方向に曲げ戻す第2ステップと、を行う、鉄筋曲げ方法。
【請求項9】
請求項8に記載の鉄筋曲げ方法であって、
前記第1ステップの後に、前記曲げ加工された鉄筋の一端部を支持し、前記一端部を支持した状態で、前記第2ステップを行う、鉄筋曲げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋曲機及び鉄筋曲げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、管材等を挟持して送り出す送りローラの送り出し側に配設され上記管材等を径方向内方へ押圧しつつ曲げ加工する曲げローラと、上記曲げローラにより加工された管材等をその径方向外方へ押し戻し加工する修正ローラと、を備えたコイル等のベンダが記載されている。
【0003】
特許文献2には、異形鉄筋を所定の曲げ加工角度に曲げ加工した後、上記異形鉄筋に対する力点部材の曲げ力を解除した状態で、上記異形鉄筋の曲げ角度を測定する第1曲げ角度測定ステップと、上記力点部材の曲げ力が解除された鉄筋を、更に別の曲げ加工角度に曲げ加工した後、上記異形鉄筋に対する上記力点部材の曲げ力を解除した状態で、上記異形鉄筋の曲げ角度を測定する第2曲げ角度測定ステップと、上記第2曲げ角度測定ステップを1回又は複数回実行した後に、上記第1曲げ角度測定ステップの測定結果と、上記第2曲げ角度測定ステップの測定結果とを利用して、上記曲げ加工角度とスプリングバック量との関係を予測する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-68528号公報
【特許文献2】特開2023-44532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の技術は、鉄筋を所望の角度に精度よく曲げ加工することのできる鉄筋曲機及び鉄筋曲げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術は以下の通りである。以下において、括弧内には、後述する実施形態において対応する構成要素を記載しているが、これに限定されるものではない。
【0007】
(1)
曲げ加工の支点を構成する支点部材(支点部材11)と、
上記支点部材に対して移動可能な力点部材(第1力点部材21及び第2力点部材22)と、
上記力点部材を制御するプロセッサ(制御装置40のプロセッサ)と、を備え、
上記プロセッサは、上記力点部材を移動させて、供給された鉄筋を曲げ加工する第1制御と、上記力点部材を移動させて、上記第1制御によって曲げ加工された上記鉄筋を、上記第1制御による上記鉄筋の曲げ方向とは反対方向に曲げ戻す第2制御と、を行う、鉄筋曲機(鉄筋曲機100)。
【0008】
(2)
(1)に記載の鉄筋曲機であって、
上記力点部材は、供給された上記鉄筋に対して一方側に配置される第1力点部材(第1力点部材21)と、その鉄筋に対して他方側に配置される第2力点部材(第2力点部材22)と、を含み、
上記第1制御が行われる場合には上記第1力点部材が上記鉄筋に曲げ力を付与し、
上記第2制御が行われる場合には上記第2力点部材が上記鉄筋に曲げ力を付与する、鉄筋曲機。
【0009】
(3)
(2)に記載の鉄筋曲機であって、
上記第1力点部材と上記第2力点部材は、上記支点部材の周りを回動可能であり、
上記第2力点部材は、回動半径を変更可能に構成されている、鉄筋曲機。
【0010】
(4)
(1)から(3)のいずれかに記載の鉄筋曲機であって、
供給された上記鉄筋の一端部を支持する第1支持部(支持装置30)を備え、
上記第1支持部は、上記鉄筋に第3方向への圧力を付与する第1部分(前側部材32及び後側部材31)と、上記鉄筋に上記第3方向と交差する第4方向への圧力を付与する第2部分(上側部材33及び下側部材34)との少なくとも一方を含む、鉄筋曲機。
【0011】
(5)
(4)に記載の鉄筋曲機であって、
上記支点部材に対し、供給された上記鉄筋を挟んで反対側に配置されてその鉄筋を支持する第2支持部(鉄筋受け部12)を備える、鉄筋曲機。
【0012】
(6)
(5)に記載の鉄筋曲機であって、
上記第2支持部は、供給された曲げ加工前の上記鉄筋に沿う方向に延びて形成され、上記第1支持部側と反対側の端部は、上記方向において上記支点部材よりも、上記第1支持部側とは反対側に突出している、鉄筋曲機。
【0013】
(7)
(1)から(3)のいずれかに記載の鉄筋曲機であって、
前記第1制御では、供給された鉄筋を目標曲げ角度よりも大きい曲げ角度まで曲げ加工する、鉄筋曲機。
【0014】
(8)
曲げ加工の支点を構成する支点部材(支点部材11)と、上記支点部材に対して移動可能な力点部材(第1力点部材21及び第2力点部材22)と、を用いて鉄筋を曲げ加工する鉄筋曲げ方法であって、
上記力点部材を移動させて、供給された鉄筋を曲げ加工する第1ステップと、
上記第1ステップによって曲げ加工された上記鉄筋を、上記力点部材を移動させて、上記第1ステップによる上記鉄筋の曲げ方向とは反対方向に曲げ戻す第2ステップと、を行う、鉄筋曲げ方法。
【0015】
(9)
(8)に記載の鉄筋曲げ方法であって、
上記第1ステップの後に、上記曲げ加工された鉄筋の一端部を支持し、上記一端部を支持した状態で、上記第2ステップを行う、鉄筋曲げ方法。
【発明の効果】
【0016】
(1)、(7)によれば、例えば複数本の鉄筋を同時に曲げ加工する場合に、第1制御の後に各鉄筋において曲げ角度がばらついたとしても、第2制御による鉄筋の曲げ戻しによって、このばらつきを吸収して、各鉄筋を目標とする角度に精度よく曲げることができる。1本の鉄筋を曲げ加工する場合でも、第1制御によって生じるスプリングバックを考慮して第2制御による曲げ戻しを行うことで、鉄筋を目標とする角度に精度よく曲げることができる。
【0017】
(2)によれば、第1制御と第2制御を高速に実行でき、曲げ加工の効率を高めることができる。
【0018】
(3)によれば、鉄筋の曲げる部分の長さに応じて第2力点部材の回動半径が調整可能となり、曲げ加工精度をより高めることができる。
【0019】
(4)によれば、複数本の鉄筋を同時に曲げ加工する場合に、複数の鉄筋同士を強く密着させて、鉄筋同士の位置ずれを防ぐことができる。これにより、曲げ加工精度をより高めることができる。
【0020】
(5)によれば、第1制御で曲げ加工された部分の基端部が第2支持部と支点部材とで挟まれて支持され、鉄筋の一端部が第1支持部によって支持された状態で、第2制御が行われるため、鉄筋を安定して曲げ戻すことができ、曲げ加工精度をより高めることができる。
【0021】
(6)によれば、第2制御の際に鉄筋にかかる力を第2支持部で受けることができるため、鉄筋を安定して曲げ戻すことができ、曲げ加工精度をより高めることができる。
【0022】
(8)によれば、例えば複数本の鉄筋を同時に曲げ加工する場合に、第1ステップの後に各鉄筋において曲げ角度がばらついたとしても、第2ステップによる鉄筋の曲げ戻しによって、このばらつきを吸収して、各鉄筋を目標とする角度に精度よく曲げることができる。1本の鉄筋を曲げ加工する場合でも、第1ステップによって生じるスプリングバックを考慮して第2ステップによる曲げ戻しを行うことで、鉄筋を目標とする角度に精度よく曲げることができる。
【0023】
(9)によれば、複数本の鉄筋を同時に曲げ加工する場合に、複数の鉄筋同士を強く密着させて、曲げ戻し時の鉄筋の引っ張り込みを防ぐことができる。これにより、曲げ加工精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本開示の技術の一実施形態である鉄筋曲機100の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、曲げ加工時の鉄筋曲機100の状態を示す平面図(その1)である。
【
図3】
図3は、曲げ加工時の鉄筋曲機100の状態を示す平面図(その2)である。
【
図4】
図4は、変形例の鉄筋曲機100の曲げ加工時の状態を示す平面図(その1)である。
【
図5】
図5は、変形例の鉄筋曲機100の曲げ加工時の状態を示す平面図(その2)である。
【
図6】
図6は、変形例の鉄筋曲機100の曲げ加工時の状態を示す平面図(その3)である。
【
図7】
図7は、鉄筋Tを前方向と後方向のそれぞれに曲げることのできる鉄筋曲機100の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本開示の技術の一実施形態である鉄筋曲機100の概略構成を示す平面図である。鉄筋曲機100は、丸鋼又は異形鉄筋等の鉄筋Tを曲げ加工する装置である。鉄筋曲機100は、複数本の鉄筋Tを径方向で重ね合わせて供給し、この複数本の鉄筋Tを同時に曲げ加工することが可能となっている。鉄筋曲機100は、単一の鉄筋Tを曲げ加工する際にも利用可能である。
【0026】
鉄筋曲機100は、曲げ加工に際して曲げる方向を特定する基準平面を構成する平坦な基準面部10を備える。基準面部10には円環状の孔部10Aが設けられており、孔部10Aの内部には、円環状の回動部材20がその周方向(図中の太矢印で示す方向)に回動可能に設けられている。以下では、基準面部10に垂直な方向を上下方向と定義し、上下方向に垂直且つ互いに直交する2方向のうちの一方を左右方向と定義し、他方を前後方向と定義する。
図1には、左右方向のうちの一方側が右方向Rとして記載され、右方向Rの反対方向が左方向Lとして記載され、前後方向のうちの一方側が前方向Frとして記載され、前方向Frの反対方向が後方向Rrとして記載されている。
図1において、紙面手前から奥側に向かう方向を下方向と記載し、下方向の反対方向を上方向と記載する。
【0027】
鉄筋曲機100は、孔部10Aよりも内側に位置する基準面部10の上面に固着された支点部材11及び鉄筋受け部12と、回動部材20の上面に固着された第1力点部材21及び第2力点部材22と、供給された鉄筋Tの一端部(図の例では右端部)を支持する支持装置30と、制御装置40と、を備える。
【0028】
支点部材11は、曲げ加工の支点を構成する部材であり、例えば上下方向と軸方向が一致する円柱状のローラで構成される。
【0029】
鉄筋受け部12は、供給された鉄筋Tを挟んで支点部材11とは反対側に配置されている。鉄筋受け部12は、例えば、厚み方向が前後方向と一致し、且つ、左右方向に延びる矩形板状を成している。鉄筋受け部12の前面は、基準面部10に対して垂直な平坦面となっており、鉄筋受け部12はこの前面において鉄筋Tを支持する。左右方向において、鉄筋受け部12の左端縁は、支点部材11よりも左側に突出して設けられている。つまり、支点部材11の左端縁と鉄筋受け部12の左端縁との左右方向における距離Dは、0よりも大きくなっている。
【0030】
第1力点部材21と第2力点部材22は、それぞれ、例えば上下方向と軸方向が一致する円柱状のローラにより構成されている。第1力点部材21は、鉄筋曲機100に供給されて基準面部10に載置された曲げ加工前の鉄筋Tに対して一方側(後側)に配置され、第2力点部材22は、この鉄筋Tに対して他方側(前側)に配置される。鉄筋Tを複数本同時に曲げ加工する場合には、この複数本の鉄筋Tは上下に重ねられた状態で、基準面部10に載置される。
【0031】
支持装置30は、供給された鉄筋Tに対して前側に配置された前側部材32と、供給された鉄筋Tに対して後側に配置された後側部材31と、供給された鉄筋Tに対して上側に配置された上側部材33と、供給された鉄筋Tに対して下側に配置された下側部材34と、を備える。前側部材32と後側部材31は鉄筋Tを挟んで対向配置されており、前側部材32と後側部材31の各々は鉄筋Tに向かって押圧される。上側部材33と下側部材34は鉄筋Tを挟んで対向配置されており、上側部材33と下側部材34の各々は鉄筋Tに向かって押圧される。このように、支持装置30は、前後方向と上下方向の2方向から鉄筋Tを挟んで支持している。前後方向は第3方向を構成し、上下方向は、この第3方向に交差する第4方向を構成する。これにより、径の異なる複数本の鉄筋Tを同時に曲げ加工する場合であっても、その複数本の鉄筋Tの相対位置がずれるのを防ぐことが可能となっている。支持装置30は、互いに交差する2方向から鉄筋Tを挟んで支持する構造であれば、このような効果を得ることが可能である。
【0032】
制御装置40は、鉄筋曲機100全体を制御するものであり、CPU(central processing unit)等のプロセッサとメモリとを含んで構成される。回動部材20は、図示しないアクチュエータにより回転駆動されるが、制御装置40のプロセッサは、このアクチュエータを制御して、回動部材20を回動させて、鉄筋Tの曲げ加工を行う。回動部材20が回動することで、これに固着された第1力点部材21と第2力点部材22は、支点部材11の周りを回動する。回動部材20の回動方向として、
図1における平面視での時計回りの方向を第1方向と定義し、第1方向の反対である反時計回りの方向を第2方向と定義する。
【0033】
以上のように構成された鉄筋曲機100による鉄筋曲げ方法について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2及び
図3は、曲げ加工時の鉄筋曲機100の状態を示す平面図である。作業者は、まず、
図1に示すように、支点部材11と鉄筋受け部12の間に鉄筋Tを載置し、その鉄筋Tの右端部を支持装置30にて支持させる作業を行う。次に、作業者が曲げ加工の開始操作を行うと、制御装置40のプロセッサは、回動部材20を第1方向に回動させて、目標曲げ角度よりも大きい曲げ角度まで鉄筋Tを曲げ加工する第1制御を行う。回動部材20の第1方向への回動に伴って、
図2に示すように、第1力点部材21が鉄筋Tに後側から接触して、曲げ力が鉄筋Tに付与され、鉄筋Tは第1方向に曲げられる。制御装置40のプロセッサは、この第1制御では、鉄筋Tの目標曲げ角度(一例として90度とする)よりも僅かに大きい角度(例えば95度)まで鉄筋Tが曲がるように、回動部材20を回動させる。
【0034】
制御装置40のプロセッサは、第1制御の後、回動部材20を第2方向へ回動させて、上記第1制御によって曲げ加工された鉄筋Tを曲げ戻す第2制御を行う。回動部材20の第2方向への回動に伴って、
図3に示すように、第2力点部材22が鉄筋Tに接触して、曲げ力が鉄筋Tに付与され、鉄筋Tは第2方向に曲げ戻される。制御装置40のプロセッサは、この第2制御では、鉄筋Tが目標曲げ角度(90度)となるように、回動部材20を回動させる。第2制御における回動部材20の回動量は、実験的に求めた値とすればよい。
【0035】
第2制御において、鉄筋Tには、左方向に押される力が働くが、支持装置30の支持力により、鉄筋Tの左右方向の位置は保持される。また、鉄筋Tにおける第1制御において曲げられた部分の基端部は、鉄筋受け部12における支点部材11よりも左へ突出した領域に押し付けられ、ここを支点にして、鉄筋Tは曲げ戻される。これらの作用により、曲げ戻しの力を鉄筋Tにより良好に伝えることができる。以上の第1制御と第2制御によって、目標曲げ角度に曲げ加工された鉄筋Tを得ることができる。
【0036】
ここで、径の異なる2本の鉄筋Tを鉄筋曲機100にて曲げ加工する際の挙動について説明する。第1制御を行う場合には、支点部材11と第1力点部材21との距離が一定であり、支点部材11と第1力点部材21とで2本の鉄筋Tが挟まれる状態となるため、2本の鉄筋Tのそれぞれに対して曲げ力が加わり始めるタイミングに差が生じる。この結果、例えば、径の大きい方の鉄筋Tがより大きく曲げられた状態となる。第2制御は、2本の鉄筋Tに対して同じ方向から支点部材11と第2力点部材22が接触することになるため、径によらずに、2本の鉄筋Tを所望の角度まで曲げ戻すことができる。このように、鉄筋曲機100によれば、複数本の鉄筋Tを同時に曲げ加工する場合でも、各鉄筋Tの曲げ角度を揃えることができる。ここでは、径の異なる複数本の鉄筋Tについて説明したが、2本の鉄筋Tの径が同じであっても、リブの向きが異なる場合には、同様の現象が生じ得るため、第1制御と第2制御を行うことが有効となる。
【0037】
なお、径の異なる2本の鉄筋Tを鉄筋曲機100にて曲げ加工する際には、第1制御において、この2本の鉄筋Tのうちの細い方が目標曲げ角度となるように曲げ加工してもよい。この場合には、第1制御によって、2本の鉄筋Tのうちの太い方が目標曲げ角度よりも大きく曲げられることになる。このため、第2制御を行うことで、この2本の鉄筋Tのうちの太い方を目標曲げ角度まで曲げ戻すことができる。この結果、2本の鉄筋Tを目標曲げ角度に曲げた状態を得ることができる。
【0038】
また、回動部材20の径方向における第2力点部材22の位置は、固定ではなく、複数の位置で変更できるように構成してもよい。すなわち、第2力点部材22の回動半径は変更可能に構成してもよい。例えば、
図1において点線で示した位置に第2力点部材22を移動できるようにしてもよい。このようにすることで、加工対象とする鉄筋Tの長さに応じて適切な位置に第2力点部材22を配置でき、鉄筋Tの曲げ加工精度を高めることができる。なお、鉄筋曲機100において、回動部材20の径方向における第1力点部材21の位置は、固定ではなく、複数の位置で変更できるように構成してもよい。このようにすることで、加工対象とする鉄筋Tの長さの変化に対応することが可能となる。
【0039】
鉄筋曲機100は、左右方向と軸線方向とが一致するように供給された鉄筋Tを前方向に向かって曲げるものとしているが、鉄筋Tを前方向と後方向の両方に曲げることも可能である。この場合は、例えば、鉄筋受け部12の代わりに、支点部材11と同じ機能を持つ第2の支点部材を設ければよい。この場合、
図1に示す初期状態から、回動部材20を反時計回りに回動させて、第2力点部材22によって鉄筋Tを目標曲げ角度よりも大きい曲げ角度まで曲げ、その後、回動部材20を時計回りに回動させて、第1力点部材21により、鉄筋Tの曲げ戻しを行うようにすればよい。
【0040】
または、支点部材11と鉄筋受け部12の構成を工夫することで、鉄筋Tを前方向と後方向の両方に曲げることも可能である。
図7は、鉄筋Tを前方向と後方向のそれぞれに曲げることのできる鉄筋曲機100の構成例を示す図である。
【0041】
図7に示す変形例の鉄筋曲機100は、支点部材11が支点部材11Aに変更され、鉄筋受け部12が鉄筋受け部12Aに変更された点を除いては、
図1に示す鉄筋曲機100と同じ構成である。支点部材11Aと鉄筋受け部12Aは、それぞれ、左側の端部が円弧状となっており、鉄筋Tを対面する面(支点部材11Aの後側面と鉄筋受け部12Aの前側面)は、平坦面となっている。
【0042】
図7に示す鉄筋曲機100では、
図7に示す状態から、回動部材20を時計回りに回転させることで、
図1に示した鉄筋曲機100と同様に、第1力点部材21によって鉄筋Tに曲げ力を付与して、鉄筋Tを前方向に曲げることができる。また、
図7に示す状態から、回動部材20を反時計回りに回転させることで、第2力点部材22によって鉄筋Tに曲げ力を付与して、鉄筋Tを後方向に曲げることができる。この場合には、鉄筋受け部12Aが支点部材として機能し、支点部材11Aが鉄筋受け部として機能することになる。このように鉄筋Tを後方向に曲げる場合には、その曲げ後に、回動部材20を時計回りに回転させて、第1力点部材21によって鉄筋Tに曲げ力を付与することにより、鉄筋Tを曲げ戻すことができる。
図7に示す鉄筋曲機100においては、第2力点部材22の回動半径だけでなく、第1力点部材21の回動半径(回動部材20の径方向における第2力点部材22の位置)を変更可能に構成しておくことで、加工対象とする鉄筋Tの長さに応じて適切な位置に第1力点部材21を配置でき、鉄筋Tの曲げ加工精度を高めることができる。
【0043】
以上の説明では、第1制御時には第1力点部材21によって鉄筋Tに曲げ力を付与し、第2制御時には第2力点部材22によって鉄筋Tに曲げ力を付与するものとしたが、これに限らない。例えば、単一の力点部材によって、目標曲げ角度又は目標曲げ角度よりも大きい曲げ角度への鉄筋Tの曲げ動作と、その後の曲げ戻し動作と、を行うことも可能である。
【0044】
例えば、鉄筋曲機100において、回動部材20と第2力点部材22を削除し、第1力点部材21を、孔部10A内でその周方向に沿って移動可能に構成する。また、第1力点部材21は、上下方向へも移動が可能に構成しておく。そして、まず、
図1に示す位置に第1力点部材21がある状態で、第1力点部材21を時計回りに回動させて、
図4に示すように鉄筋Tを目標曲げ角度よりも大きい曲げ角度まで曲げ加工する。その後、第1力点部材21を下方向に移動させ、その状態で、第1力点部材21を更に時計回りに回動させて、第1力点部材21を、曲げ加工された鉄筋Tの下をくぐらせ、
図5に示すように、鉄筋Tよりも右側の位置に移動させる。その後、第1力点部材21の上下方向の位置を元に戻し、その状態で、第1力点部材21を半時計回りに回動させて、
図6に示すように、鉄筋Tを目標曲げ角度まで曲げ戻す。以上のようにすることで、単一の力点部材を用いても、目標曲げ角度に曲げ加工された鉄筋Tを得ることができる。
【0045】
また、第2力点部材22は、ローラである必要は無く、例えばシリンダで構成してもよい。この場合、例えば、
図2に示す状態で、第2力点部材22の位置に設けられたシリンダの可動部を鉄筋Tに向けて移動させ、その可動部を鉄筋Tに押し付けることで、鉄筋Tを曲げ戻すことが可能である。なお、シリンダの可動部に板状部材を取り付けておき、この板状部材を鉄筋Tに押し付けることで曲げ戻しを行うようにしてもよい。
【0046】
以上の説明では、支持装置30において、前側部材32と後側部材31の各々が鉄筋Tに向かって押圧されるものとしたが、これに限らない。例えば、前側部材32と後側部材31は、鉄筋Tが前後方向に移動しないように鉄筋Tをガイドするガイド部材として機能させてもよい。この場合、支持装置30は、上下方向のみで鉄筋Tを挟んで支持する。この構成であっても、径の異なる複数本の鉄筋Tを同時に曲げ加工する場合に、その複数本の鉄筋Tの相対位置がずれるのを防ぐことは可能である。
【0047】
また、鉄筋受け部12の左端部は、左右方向において支点部材11よりも左側に突出しているものとしたが、これは必須ではない。また、鉄筋受け部12は必須ではない。例えば、目標曲げ角度が90度よりも十分に大きい場合(180度等の場合)には、第2制御の曲げ戻しの際に、鉄筋Tにおける第1制御において曲げられた部分の基端部が支点部材11に押し付けられることになる。このため、鉄筋受け部12が存在しなくとも、曲げ戻しの力を鉄筋Tに十分に伝えることができる。
【0048】
第1制御が行われるときには、支持装置30によって鉄筋Tを支持することは必須ではなく、鉄筋Tが支持装置30によって支持されていない状態にて第1制御が行われてもよい。このように、第1制御時に支持装置30が鉄筋Tを支持していない場合であっても、第2制御が行われるときには、支持装置30によって鉄筋Tを支持しておくことが好ましい。すなわち、作業者は、第1制御が行われた後に、曲げ加工された鉄筋Tの右端部を支持装置30によって支持し、その状態で、制御装置40に第2制御を実行させる。このようにすることでも、鉄筋Tの曲げ加工精度を高めることができる。
【0049】
支持装置30を設ける位置は、図示してきた例に限らず、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 基準面部
10A 孔部
11 支点部材
12 鉄筋受け部
20 回動部材
21 第1力点部材
22 第2力点部材
30 支持装置
31 後側部材
32 前側部材
33 上側部材
34 下側部材
40 制御装置
100 鉄筋曲機