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特開2025-24522無段変速機用の駆動プーリ及びウェイト部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024522
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】無段変速機用の駆動プーリ及びウェイト部材
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/18 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
F16H9/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128692
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】西森 達
(72)【発明者】
【氏名】川本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】幸田 吉貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘
【テーマコード(参考)】
3J050
【Fターム(参考)】
3J050AA02
3J050BA04
3J050BB08
3J050CA02
3J050DA03
(57)【要約】
【課題】レシオを任意に拡大するとともに、その拡大したレシオの領域において変速特性を変化させて高速時のフィーリングを向上させることができる無段変速機用の駆動プーリ及びウェイト部材を提供する。
【解決手段】ウェイトローラ8は、所定の重量を有したコア部材8aと、コア部材8aの外側を覆って包含したアウタ部材8bと、を具備するとともに、コア部材8aの重心位置G1とアウタ部材8bの重心位置G2とを異ならせて構成され、遠心力で内径位置から外径位置まで摺動するとともに、外径位置で更なる遠心力が付与されて回転することにより可動シーブ6を固定シーブ5に対して近接させ得るものである。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側テーパ面が形成された固定シーブと、
前記固定シーブの固定側テーパ面と対向した可動側テーパ面を有し、前記固定側テーパ面と可動側テーパ面との間に無端状Vベルトを巻装しつつ前記固定シーブと共に回転可能とされるとともに、前記固定シーブに対して近接または離間可能とされた可動シーブと、
遠心力が付与されて内径位置から外径位置まで摺動する過程で前記可動シーブを前記固定シーブに近接させるウェイト部材と、
を具備し、従動プーリとの間で前記無端状Vベルトが懸架されて動力を伝達可能な無段変速機用の駆動プーリであって、
前記ウェイト部材は、
所定の重量を有したコア部材と、
前記コア部材の外側を覆って包含したアウタ部材と、
を具備するとともに、前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせて構成され、遠心力で前記内径位置から外径位置まで摺動するとともに、前記外径位置で更なる遠心力が付与されて回転することにより前記可動シーブを前記固定シーブに対して近接させ得ることを特徴とする無段変速機用の駆動プーリ。
【請求項2】
前記ウェイト部材が前記内径位置から外径位置まで摺動する過程で前記ウェイト部材に対する接触状態が維持されて反力を受け得る受け部材を具備するとともに、前記ウェイト部材は、前記内径位置から前記外径位置まで摺動する際に前記受け部材と接触する第1接触平面と、前記外径位置で回転した後に前記受け部材と接触する第2接触平面と、が形成されたことを特徴とする請求項1記載の無段変速機用の駆動プーリ。
【請求項3】
前記ウェイト部材は、前記コア部材の前記アウタ部材に対する包含を所望の位置に設定することにより前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせたことを特徴とする請求項1記載の無段変速機用の駆動プーリ。
【請求項4】
前記ウェイト部材は、前記コア部材の方が前記アウタ部材より重量が大きいことを特徴とする請求項1記載の無段変速機用の駆動プーリ。
【請求項5】
前記ウェイト部材は、前記コア部材が金属材料から成るとともに、前記アウタ部材が樹脂材料から成ることを特徴とする請求項4記載の無段変速機用の駆動プーリ。
【請求項6】
駆動プーリと従動プーリとの間で無端状Vベルトを懸架して動力を伝達可能な無段変速機の前記駆動プーリに取り付けられ、遠心力が付与されて内径位置から外径位置まで摺動することにより前記駆動プーリにおける可動シーブを固定シーブに対して近接させて前記駆動プーリの有効径を変化させ得る無段変速機用のウェイト部材であって、
所定の重量を有したコア部材と、
前記コア部材の外側を覆って包含したアウタ部材と、
を具備するとともに、前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせて構成され、遠心力で前記内径位置から外径位置まで摺動するとともに、前記外径位置で更なる遠心力が付与されることにより回転して前記可動シーブを前記固定シーブに対して近接させ得ることを特徴とする無段変速機用のウェイト部材。
【請求項7】
前記駆動プーリは、前記ウェイト部材が前記内径位置から外径位置まで摺動する過程で前記ウェイト部材に対する接触状態が維持されて反力を受け得る受け部材を具備するとともに、前記内径位置から前記外径位置まで摺動する際に前記受け部材と接触する第1接触平面と、前記外径位置で回転した後に前記受け部材と接触する第2接触平面と、が形成されたことを特徴とする請求項6記載の無段変速機用のウェイト部材。
【請求項8】
前記コア部材の前記アウタ部材に対する包含を所望の位置に設定することにより前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせたことを特徴とする請求項6記載の無段変速機用のウェイト部材。
【請求項9】
前記コア部材の方が前記アウタ部材より重量が大きいことを特徴とする請求項6記載の無段変速機用のウェイト部材。
【請求項10】
前記コア部材が金属材料から成るとともに、前記アウタ部材が樹脂材料から成ることを特徴とする請求項9記載の無段変速機用のウェイト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動プーリと従動プーリとの間で無端状Vベルトを懸架して動力を伝達可能な無段変速機用の駆動プーリ及びウェイト部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクータ式の自動二輪車において採用されている無段変速機は、エンジンの駆動により回転する駆動プーリと、駆動プーリとの間で無端状Vベルトが懸架された従動プーリと、遠心力が付与されて内径位置から外径位置まで摺動可能なウェイト部材とを具備している。そして、遠心力でウェイト部材が内径位置から外径位置まで摺動する過程で可動シーブを固定シーブに近接させることにより駆動プーリの有効径を変化させ、連続的に変速可能とされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-203004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、専らウェイト部材が内径位置から外径位置まで摺動する過程で可動シーブを固定シーブに近接させるよう構成されていたので、レシオを任意に拡大することができず、さらには拡大したレシオの領域において変速特性を変化させることが難しいという課題があった。そこで、本出願人は、レシオを任意に拡大するとともに、その拡大したレシオの領域において変速特性を変化することにより、高速時のフィーリングを向上させることを鋭意検討した。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、レシオを任意に拡大するとともに、その拡大したレシオの領域において変速特性を変化させて高速時のフィーリングを向上させることができる無段変速機用の駆動プーリ及びウェイト部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、固定側テーパ面が形成された固定シーブと、前記固定シーブの固定側テーパ面と対向した可動側テーパ面を有し、前記固定側テーパ面と可動側テーパ面との間に無端状Vベルトを巻装しつつ前記固定シーブと共に回転可能とされるとともに、前記固定シーブに対して近接または離間可能とされた可動シーブと、遠心力が付与されて内径位置から外径位置まで摺動する過程で前記可動シーブを前記固定シーブに近接させるウェイト部材とを具備し、従動プーリとの間で前記無端状Vベルトが懸架されて動力を伝達可能な無段変速機用の駆動プーリであって、前記ウェイト部材は、所定の重量を有したコア部材と、前記コア部材の外側を覆って包含したアウタ部材と、を具備するとともに、前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせて構成され、遠心力で前記内径位置から外径位置まで摺動するとともに、前記外径位置で更なる遠心力が付与されて回転することにより前記可動シーブを前記固定シーブに対して近接させ得ることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の無段変速機用の駆動プーリにおいて、前記ウェイト部材が前記内径位置から外径位置まで摺動する過程で前記ウェイト部材に対する接触状態が維持されて反力を受け得る受け部材を具備するとともに、前記ウェイト部材は、前記内径位置から前記外径位置まで摺動する際に前記受け部材と接触する第1接触平面と、前記外径位置で回転した後に前記受け部材と接触する第2接触平面と、が形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の無段変速機用の駆動プーリにおいて、前記ウェイト部材は、前記コア部材の前記アウタ部材に対する包含を所望の位置に設定することにより前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の無段変速機用の駆動プーリにおいて、前記ウェイト部材は、前記コア部材の方が前記アウタ部材より重量が大きいことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の無段変速機用の駆動プーリにおいて、前記ウェイト部材は、前記コア部材が金属材料から成るとともに、前記アウタ部材が樹脂材料から成ることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、駆動プーリと従動プーリとの間で無端状Vベルトを懸架して動力を伝達可能な無段変速機の前記駆動プーリに取り付けられ、遠心力が付与されて内径位置から外径位置まで摺動することにより前記駆動プーリにおける可動シーブを固定シーブに対して近接させて前記駆動プーリの有効径を変化させ得る無段変速機用のウェイト部材であって、所定の重量を有したコア部材と、前記コア部材の外側を覆って包含したアウタ部材と、を具備するとともに、前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせて構成され、遠心力で前記内径位置から外径位置まで摺動するとともに、前記外径位置で更なる遠心力が付与されることにより回転して前記可動シーブを前記固定シーブに対して近接させ得ることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の無段変速機用のウェイト部材において、前記駆動プーリは、前記ウェイト部材が前記内径位置から外径位置まで摺動する過程で前記ウェイト部材に対する接触状態が維持されて反力を受け得る受け部材を具備するとともに、前記内径位置から前記外径位置まで摺動する際に前記受け部材と接触する第1接触平面と、前記外径位置で回転した後に前記受け部材と接触する第2接触平面と、が形成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の無段変速機用のウェイト部材において、前記コア部材の前記アウタ部材に対する包含を所望の位置に設定することにより前記コア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせたことを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項6記載の無段変速機用のウェイト部材において、前記コア部材の方が前記アウタ部材より重量が大きいことを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の無段変速機用のウェイト部材において、前記コア部材が金属材料から成るとともに、前記アウタ部材が樹脂材料から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、6の発明によれば、ウェイト部材は、所定の重量を有したコア部材と、コア部材の外側を覆って包含したアウタ部材と、を具備するとともに、コア部材の重心位置とアウタ部材の重心位置とを異ならせて構成され、遠心力で内径位置から外径位置まで摺動するとともに、外径位置で更なる遠心力が付与されて回転することにより可動シーブを固定シーブに対して近接させ得るので、レシオを任意に拡大するとともに、その拡大したレシオの領域において変速特性を変化させて高速時のフィーリングを向上させることができる。
【0017】
請求項2、7の発明によれば、駆動プーリは、ウェイト部材が内径位置から外径位置まで摺動する過程でウェイト部材に対する接触状態が維持されて反力を受け得る受け部材を具備するとともに、内径位置から外径位置まで摺動する際に受け部材と接触する第1接触平面と、外径位置で回転した後に受け部材と接触する第2接触平面と、が形成されたので、ウェイト部材に対して受け部材を安定して接触させることができる。
【0018】
請求項3、8の発明によれば、ウェイト部材は、コア部材のアウタ部材に対する包含を所望の位置に設定することによりコア部材の重心位置と前記アウタ部材の重心位置とを異ならせたので、コア部材の重心位置及びアウタ部材の重心位置のずれ量及び相対位置を精度よく設定することができる。
【0019】
請求項4、9の発明によれば、ウェイト部材は、コア部材の方がアウタ部材より重量が大きいので、外径位置にてウェイト部材を確実に回転させることができる。
【0020】
請求項5、10の発明によれば、ウェイト部材は、コア部材が金属材料から成るとともに、アウタ部材が樹脂材料から成るので、容易にコア部材の方がアウタ部材より重量を大きく設定することができるとともに、ウェイト部材の摺動時の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る駆動プーリが適用される無段変速機を示す模式図
図2】同駆動プーリを示す3面図
図3】同駆動プーリを可動シーブ側から見た斜視図
図4】同駆動プーリを固定シーブ側から見た斜視図
図5】同駆動プーリを一方向から見た分解斜視図
図6】同駆動プーリを他方向から見た分解斜視図
図7】同駆動プーリにおける可動シーブを示す2面図
図8図7におけるVIII-VIII線断面図
図9】同駆動プーリにおける受け部材を示す3面図
図10図9におけるX-X線断面図
図11】同駆動プーリにおけるウェイトローラ(ウェイト部材)を示す斜視図
図12】同ウェイトローラが内径位置にある状態を示す断面図
図13】同ウェイトローラが外径位置にある状態を示す断面図
図14】同ウェイトローラが外径位置で回転した状態を示す断面図
図15】本実施形態に係るウェイトローラ及び従来のウェイトローラの変速特性を示すグラフ
図16】本発明の他の実施形態に係るウェイトローラ(ウェイト部材)を示す斜視図
図17】本発明のさらに他の実施形態に係るウェイトローラ(ウェイト部材)を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る駆動プーリは、スクータ型の自動二輪車における無段変速機(歯車以外の機構を用いて変速比を連続的に変化させる動力伝達機構)に適用されたものである。かかる無段変速機は、車両の変速比を連続的に変化させるもので、図1に示すように、駆動プーリ1と、従動プーリ2と、無端状Vベルト3と、遠心クラッチ部Kとを具備して構成されている。
【0023】
駆動プーリ1は、入力軸4(クランクシャフト)と連結して構成されており、車両のエンジン(不図示)が駆動すると、入力軸4と共に回転し得るよう構成されている。従動プーリ2は、駆動プーリ1との間で無端状Vベルト3が懸架されるとともに、駆動輪(不図示)を回転させ得る出力軸Lと連結して構成されている。そして、車両のエンジンが駆動して駆動プーリ1が回転すると、その回転力が無端状Vベルト3を介して従動プーリ2に伝達され、駆動軸を回転させ得るようになっている。
【0024】
本実施形態に係る駆動プーリ1は、従動プーリ2との間で無端状Vベルト3が懸架されて動力を伝達可能なもので、図1~6に示すように、固定側テーパ面5aを有する固定シーブ5と、可動側テーパ面6aを有する可動シーブ6と、受け部材7と、ウェイトローラ8(ウェイト部材)と、固定シーブ5及び可動シーブ6を連結する連結部材9とを具備して構成されている。
【0025】
固定シーブ5は、平面視円形状の金属成形品から成り、内径側から外径側に向かって傾斜した固定側テーパ面5aを有するとともに、その中央には、連結部材9を挿通し得る中心孔5bが形成されている。連結部材9は、入力軸4を挿通可能な筒状部材から成り、その突端側が固定シーブ5に連結されるとともに、入力軸4の外周面に形成されたスプラインと嵌合するスプラインが形成されており、入力軸4の回転により連結部材9及び固定シーブ5が回転可能とされている。
【0026】
可動シーブ6は、平面視円形状の金属成形品から成り、内径側から外径側に向かって傾斜した可動側テーパ面6aを有するとともに、その中央には、連結部材9を挿通し得る中心孔6cが形成され、当該中心孔6cの開口縁には、スリーブ6dが形成されている。そして、図1に示すように、スリーブ6dに連結部材9を挿通させ、その連結部材9にクランクシャフト4(入力軸)を挿通させるとともに、クランクシャフト4の先端をナットにより締め上げて組み付ける。これにより、クランクシャフト4のナットによる締め上げと無端状Vベルト3の摩擦によって、可動シーブ6及び固定シーブ5が共に回転可能とされるとともに、可動シーブ6が固定シーブ5に対して近接または離間可能とされている。
【0027】
そして、固定側テーパ面5aと可動側テーパ面6aとが対向するように固定シーブ5及び可動シーブ6が取り付けられるとともに、これら固定側テーパ面5aと可動側テーパ面6aとの間に無端状Vベルト3が巻装されている。これにより、固定シーブ5及び可動シーブ6が回転すると、無端状Vベルト3を介して従動プーリ2に動力が伝達されるとともに、可動シーブ6が固定シーブ5に対して近接または離間することにより、駆動プーリ1の有効径を変化させ得るようになっている。すなわち、可動シーブ6が固定シーブ5に対して近接すると、駆動プーリ1の有効径は大きくなり、レシオ(変速比)が高くなるとともに、可動シーブ6が固定シーブ5に対して離間すると、駆動プーリ1の有効径は小さくなり、レシオが低くなる。
【0028】
さらに、可動シーブ6の背面(可動側テーパ面6aが形成された面と反対面)には、図7、8に示すように、中心から外側に向かって放射状に延びる複数(本実施形態においては6つ)の摺動面6bが形成されており、それぞれの摺動面6bにウェイトローラ8(ウェイト部材)が配設されている。摺動面6bは、図8に示すように、所定の角度傾斜した面から成り、内径側から外径に向かって上り勾配とされている。
【0029】
ウェイトローラ8(ウェイト部材)は、遠心力が付与されて内径位置(図12参照)から外径位置(図13参照)まで摺動することにより駆動プーリ1における可動シーブ6を固定シーブ5に対して近接させて駆動プーリ1の有効径を変化(広げる)させ得るもので、可動シーブ6の摺動面6bにそれぞれ収容されている。すなわち、エンジンが駆動して駆動プーリが回転すると、その遠心力によりウェイトローラ8が摺動面6bを上り方向に摺動し、これにより発生する荷重によって可動シーブ6が押圧されて固定シーブ5に近接するのである。
【0030】
受け部材7は、可動シーブ6の摺動面6bを覆って取り付けられた部材から成り、ウェイトローラ8(ウェイト部材)が内径位置から外径位置まで摺動する過程でウェイトローラ8に対する接触状態が維持されて反力を受け得るもので、図9、10に示すように、中央に形成されて入力軸4を挿通する中心孔7aと、可動シーブ6の摺動面6bと対峙した複数(本実施形態においては6つ)の平面から成る受け面7bとを有して構成されている。
【0031】
受け面7bは、図12~14に示すように、それぞれ摺動面6bに対向してウェイトローラ8を摺動可能に収容する空間を形成するとともに、ウェイトローラ8が内径位置及び外径位置にあるとき、並びに内径位置と外径位置との間で摺動する過程においてウェイトローラ8との接触状態が維持されるようになっている。これにより、受け部材7は、ウェイトローラ8が内径位置から外径位置に摺動して可動シーブ6を押圧する際に生じる反力を受け面7bにて受けることができる。
【0032】
ここで、本実施形態に係るウェイトローラ8は、図11に示すように、所定の重量を有したコア部材8aと、コア部材8aの外側を覆って包含したアウタ部材8bとを具備するとともに、コア部材8aの重心位置G1とアウタ部材8bの重心位置G2とを異ならせて(ずらせて)構成され、図12、13に示すように、遠心力で内径位置から外径位置まで摺動するとともに、図14に示すように、外径位置で更なる遠心力が付与されることにより回転して可動シーブ6を固定シーブ5に対して近接させ得るものである。
【0033】
具体的には、コア部材8aのアウタ部材8bに対する包含を所望の位置(偏心した位置)に設定することによりコア部材8aの重心位置G1とアウタ部材8bの重心位置G2とを異ならせている。また、ウェイトローラ8は、内側のコア部材8aの方が外側のアウタ部材8bより重量が大きいものとされており、例えばコア部材8aが鉄などの金属材料から成るとともに、アウタ部材8bが耐摩耗性に優れた樹脂材料から成るものとすることができる。
【0034】
これにより、遠心力で内径位置から外径位置まで摺動したウェイトローラ8に対し、さらに遠心力が付与されると、コア部材8aの重心位置G1とアウタ部材8bの重心位置G2のずれにより回転力(回転モーメント)が生じ、図14に示すように、矢印方向に回転して可動シーブ6をさらに固定シーブ5側に近接させることとなる。よって、可動シーブ6は、ウェイトローラ8が内径位置から外径位置まで摺動する過程で変位するのに加え、ウェイトローラ8が外径位置で回転することにより更に変位することとなる。
【0035】
さらに、本実施形態に係るウェイトローラ8は、図11に示すように、内径位置から外径位置まで摺動する際に受け部材7の受け面7bと接触する第1接触平面F1と、外径位置で回転した後に受け部材7の受け面7bと接触する第2接触平面F2とが形成されている。これにより、ウェイトローラ8は、内径位置から外径位置まで摺動する際、第1接触平面F1が受け面7bと接触して反力を受けることができるとともに、外径位置で回転して第2平面F2が受け面7bと接触するので、所定角度回転した後にさらに回転してしまうのを規制することができる。
【0036】
次に、本実施形態に係る駆動プーリ1及びウェイトローラ8の作用について、図12~14に基づいて説明する。
車両のエンジンが停止した状態では、ウェイトローラ8は、図12に示すように、内径位置にあり、第1接触平面F1に受け面7bが接触した状態とされている。そして、車両のエンジンが駆動して入力軸4が回転することにより駆動プーリ1が回転すると、内径位置にあるウェイトローラ8は、遠心力により外側に向かって摺動面6bを摺動(スライド)する。
【0037】
このように、ウェイトローラ8が摺動面6bを摺動する過程において、可動シーブ6を押圧する方向に荷重が発生するとともに、第1接触平面F1に対する受け面7bの接触状態が維持されて反力を受けることとなる。したがって、可動シーブ6は、固定シーブ5に対して次第に近接して駆動プーリ1の有効径が連続的に大きくなり、レシオがローレシオから高くなっていく。
【0038】
その後、ウェイトローラ8は、図13に示すように、外径位置に至るとともに、第1接触平面F1に対する受け面7bの接触状態は維持されている。このとき、レシオはトップレシオとされ、さらに遠心力が付与されると、コア部材8aの重心位置G1とアウタ部材8bの重心位置G2のずれにより回転力(回転モーメント)が生じ、図14に示すように、矢印方向に回転して可動シーブ6をさらに押圧して固定シーブ5側に近接させることとなる。
【0039】
そして、ウェイトローラ8が所定角度回転すると、第2接触平面F2に対して受け面7bが接触することとなり、さらなる回転が規制されることとなる。なお、ウェイトローラ8の回転により、レシオはオーバートップレシオとなる。このように、外径位置にあるウェイトローラ8が回転して可動シーブ6をさらに固定シーブ5に近接させることにより、レシオを拡大することができるとともに、その拡大したレシオの領域において変速特性を変化させることができる。
【0040】
すなわち、本実施形態に係るウェイトローラ8によれば、図15のグラフγで示すように、グラフαに比べてレシオを拡大させることができるとともに、グラフβに比べて拡大したレシオの領域において変速特性を変化させることができるのである。なお、図15において、グラフαは、受け面7bと接触する平面を有さない単なる筒状のウェイトローラを用いた場合の変速特性、グラフβは、受け面7bと接触する平面を有するものの回転しない筒状のウェイトローラを用いた場合の変速特性を示している。
【0041】
上記実施形態によれば、ウェイトローラ8(ウェイト部材)は、所定の重量を有したコア部材8aと、コア部材8aの外側を覆って包含したアウタ部材8bと、を具備するとともに、コア部材8aの重心位置G1とアウタ部材8bの重心位置G2とを異ならせて構成され、遠心力で内径位置から外径位置まで摺動するとともに、外径位置で更なる遠心力が付与されて回転することにより可動シーブ6を固定シーブ5に対して近接させ得るので、レシオを任意に拡大するとともに、その拡大したレシオの領域において変速特性を変化させて高速時のフィーリングを向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る駆動プーリ1は、ウェイトローラ8が内径位置から外径位置まで摺動する過程でウェイトローラ8に対する接触状態が維持されて反力を受け得る受け部材7を具備するとともに、内径位置から外径位置まで摺動する際に受け部材7と接触する第1接触平面F1と、外径位置で回転した後に受け部材7と接触する第2接触平面F2と、が形成されたので、ウェイトローラ8に対して受け部材7を安定して接触させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係るウェイトローラ8は、コア部材8aのアウタ部材8bに対する包含を所望の位置に設定することによりコア部材8aの重心位置G1とアウタ部材8bの重心位置G2とを異ならせたので、コア部材8aの重心位置G1及びアウタ部材8bの重心位置G2のずれ量及び相対位置を精度よく設定することができる。
【0044】
またさらに、本実施形態に係るウェイトローラ8は、コア部材8aの方がアウタ部材8bより重量が大きいので、外径位置にてウェイトローラ8を確実に回転させることができる。特に、本実施形態に係るウェイトローラ8は、コア部材8aが金属材料から成るとともに、アウタ部材8bが樹脂材料から成るので、容易にコア部材8aの方がアウタ部材8bより重量を大きく設定することができるとともに、ウェイトローラ8の摺動時の摩耗を抑制することができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図16に示すように、ウェイトローラ8について、コア部材8aが管状部材から成るもの或いは他の形状の部材から成るもの、図17に示すように、第1接触平面F1及び第2接触平面F2に加えて、受け面7bと接触し得る第3接触平面F3が形成されたもの或いは更に複数の接触平面が形成されたもの等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 駆動プーリ
2 従動プーリ
3 無端状Vベルト
4 入力軸(クランクシャフト)
5 固定シーブ
5a 固定側テーパ面
5b 中心孔
6 可動シーブ
6a 可動側テーパ面
6b 摺動面
6c 中心孔
6d スリーブ
7 受け部材
7a 中心孔
7b 受け面
8 ウェイトローラ(ウェイト部材)
8a コア部材
8b アウタ部材
9 連結部材
L 出力軸
K クラッチ部
G1、G2 重心位置
F1 第1接触平面
F2 第2接触平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図17