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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024526
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】炭化炉
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20250213BHJP
   C10B 49/08 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
C10B53/02
C10B49/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128697
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 太司
(72)【発明者】
【氏名】金田 敦
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012JA00
(57)【要約】
【課題】化石燃料を用いることなく、バイオマスを着火させる。
【解決手段】炭化炉100は、炉本体1と、熱風ユニット2と、撹拌ユニット4と、を備える。炉本体1は、バイオマスBを収容する。熱風ユニット2は、炉本体1の側面に設けられ、熱風を炉本体1内に送る。撹拌ユニット4は、炉本体1内のバイオマスBを撹拌する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを収容する炉本体と、
前記炉本体の側面に設けられ、熱風を前記炉本体内に送る熱風ユニットと、
前記炉本体内の前記バイオマスを撹拌する撹拌ユニットと、
を備える、炭化炉。
【請求項2】
前記熱風ユニットを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記熱風ユニットの駆動により前記バイオマスを着火して第1目標温度まで昇温させる第1昇温制御モードと、
前記熱風ユニットの駆動停止後、前記バイオマス自身の燃焼により前記炉本体の内部温度を前記第1目標温度よりも高い第2目標温度まで昇温させる第2昇温制御モードと、
を有する、請求項1に記載の炭化炉。
【請求項3】
前記撹拌ユニットを制御する制御装置と、
前記バイオマスの温度を検出する第1センサと、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記炉本体内の前記バイオマスの堆積層の上面の温度上昇率が所定値以上になると、前記撹拌ユニットを間欠的に駆動する、請求項1に記載の炭化炉。
【請求項4】
前記制御装置は、前記バイオマスの温度上昇に応じて、間欠的に駆動される前記撹拌ユニットにおける1回当たりの撹拌角度、1回当たりの撹拌時間、及び、1回当たりの撹拌停止時間のうちの少なくともいずれかを変化させる、請求項3に記載の炭化炉。
【請求項5】
前記制御装置は、前記バイオマスの温度が第1所定値を超えると、前記撹拌ユニットを連続的に駆動する、請求項3に記載の炭化炉。
【請求項6】
前記炉本体の内部に空気を供給する給気部をさらに備え、
前記炉本体の内側面には、熱風口と、前記前記炉本体に位置する上給気口と、が配置され、
前記熱風ユニットの熱風は、前記熱風口から前記炉本体の内部に流入し、
前記給気部が供給する空気は、前記上給気口を介して前記炉本体に流入し、
前記制御装置は、前記バイオマスの温度が前記第1所定値よりも高い第2所定値を超えると、前記熱風ユニットの駆動を停止し、前記上給気口から前記炉本体の内部に流入する空気の流速を遅くする、請求項5に記載の炭化炉。
【請求項7】
前記撹拌ユニットを制御する制御装置をさらに備え、
前記撹拌ユニットは、
前記炉本体の底面に配置されて上下方向に延びる軸部材と、
前記軸部材回りに回転可能な撹拌翼と、
を有し、
前記炉本体の内側面には、前記熱風ユニットの熱風が内部に流入する熱風口が配置され、
前記制御装置は、前記熱風ユニットの駆動を開始する際、前記撹拌翼の端部を前記熱風口から周方向にずれた位置に回転させた後、前記熱風ユニットを駆動する、請求項1に記載の炭化炉。
【請求項8】
前記撹拌ユニットは、
前記炉本体の底面に配置されて上下方向に延びる軸部材と、
前記軸部材回りに回転可能な撹拌翼と、
を有し、
前記炉本体の下部の内側面には、前記熱風ユニットの熱風が内部に流入する熱風口が配置され、
前記撹拌翼の端部は、前記熱風口の上端の高さ位置よりも下方に位置する、請求項1に記載の炭化炉。
【請求項9】
前記バイオマスを前記炉本体の内部に供給する燃料供給ユニットと、
前記バイオマスの堆積層の上面の高さを検出するための第2センサと、
前記第2センサの検出結果に基づいて前記燃料供給ユニットを制御する制御装置と、
をさらに備え、
前記炉本体の内側面には、前記熱風ユニットの熱風が内部に流入する熱風口が配置され、
前記制御装置は、前記熱風ユニットを駆動する際、前記炉本体内に堆積する前記バイオマスの上面の高さ位置を前記熱風口の下端の高さ位置よりも上方にする、請求項1に記載の炭化炉。
【請求項10】
前記制御装置はさらに、前記熱風ユニットを駆動する際、前記熱風口の径方向外方側において前記炉本体内に堆積する前記バイオマスの上面の高さ位置を前記熱風口の上端の高さ位置以下にする、請求項9に記載の炭化炉。
【請求項11】
前記バイオマスを前記炉本体の内部に供給する燃料供給ユニットをさらに有し、
前記炉本体の内側面には、熱風口と、供給口と、が配置され、
前記熱風ユニットの熱風は、前記熱風口から前記炉本体の内部に流入し、
前記バイオマスは、前記供給口から前記炉本体の内部に供給され、
前記供給口は、前記熱風口よりも上方であって、周方向において前記熱風口と同じ位置にある、請求項1に記載の炭化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、もみ殻などのバイオマス燃料を炭化させる炭化装置が知られている。たとえば、特許文献1では、もみ殻は、着火バーナにより、点火及び炭化される。
【0003】
バイオマス燃料を炭化させたバイオ炭は、土壌改良剤として有用である。さらに、バイオ炭は、農地などの地中に貯留することで、温実効果ガスの排出削減又は吸収をしたと見做される(日本国が認証するJ-クレジット制度参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-071712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにバーナを使用した場合、バーナは、化石燃料(軽油、灯油など)の消費により、二酸化炭素のような温室効果ガスを発生させる。従って、バイオ炭を地中に貯留しても、温室効果ガスの排出削減に対する効果は弱化し、その効果が相殺される虞もある。
【0006】
上記の状況に鑑みて、本発明は、化石燃料を用いることなく、バイオマスを着火させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一の態様による炭化炉は、バイオマスを収容する炉本体と、前記炉本体の側面に設けられ、熱風を前記炉本体内に送る熱風ユニットと、前記炉本体内の前記バイオマスを撹拌する撹拌ユニットと、を備える構成とされる。
【0008】
本発明の更なる特徴や利点は、以下に示す実施形態によって一層明らかにされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、化石燃料を用いることなく、バイオマスを着火させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】炭化装置の構成例を示す概略図
図2】炭化炉の構成例を示す概略図
図3A】撹拌翼の外端形状の変形例を示す断面図
図3B】撹拌翼の外端形状の他の変形例を示す上面図
図4】熱風ユニットを用いたバイオマスの着火及び炉本体の第1昇温制御工程の一例を説明するためのフローチャート
図5】バイオマス自身の燃焼による炉本体の第2昇温制御工程の一例を説明するためのフローチャート
図6】炭化装置における燻炭の製造例を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0012】
なお、本明細書では、特に説明されない限りにおいて、後述する中心軸Jcが延びる方向を「上下方向」と呼ぶ。また、中心軸Jcと垂直な方向を「径方向」と呼び、中心軸Jcを中心とする回転方向を「周方向」と呼ぶ。また、径方向のうち、中心軸Jcに近付く方向を「径方向内方」と呼び、中心軸Jcから離れる方向を「径方向外方」と呼ぶ。
【0013】
<1.炭化装置500>
図1は、炭化装置500の構成例を示す概略図である。炭化装置500は、バイオマスBからバイオ炭などの燻炭Cを作製し、該燻炭Cを袋401に搬送して袋詰めする。なお、バイオマスBは、化石資源を除く生物由来の有機性資源である。本実施形態では、バイオマスBとしてもみ殻が用いられる。但し、この例示に限定されず、バイオマスBは、もみ殻以外の有機性資源であってもよく、たとえば藁、木材であってもよい。バイオ炭は、燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物(炭化物)である。なお、図1において、粗い破線faは、後述するバイオマスBの着火制御及び炉本体1内の第1昇温制御工程におけるバイオマスBの堆積層の上面を示す。また、実線fbは、後述する炉本体1内の第2昇温制御及び定常運転工程におけるバイオマスB(又は燻炭C)の堆積層の上面を示す。
【0014】
図1に示すように、炭化装置500は、炭化炉100と、燃料供給装置200と、炭搬送装置300と、充填装置400と、を備える。炭化炉100は、350℃を越える熱風によりバイオマスBを着火して燃焼させ、燻炭Cを製造する。燃料供給装置200は、バイオマスBを貯蔵し、炭化炉100に適宜供給する。炭搬送装置300は、たとえば搬送コンベアであり、炭化炉100から排出された燻炭Cを充填装置400に運ぶ。炭搬送装置300で搬送された燻炭Cは、充填装置400で袋401に充填される。なお、袋401は、燻炭Cを収容する収容容器の一例である。
【0015】
また、炭化装置500は、燻炭Cに散水可能な散水装置402をさらに備える。散水装置402は、図示しないセンサが燻炭Cの燃焼又は燻りを検出すると燻炭Cに散水し、燻炭Cでの発火を防止する。該センサには、たとえば燻炭Cから発生するガス、煙などを検知するガスセンサ、袋401内の燻炭Cの温度分布を検出する赤外線センサなどを採用できる。或いは、熱電対、サーミスタなどが、袋401内に配置され、充填された燻炭Cの温度を検出してもよい。散水装置402は、本実施形態では充填装置400に配置される。但し、この例示に限定されず、散水装置402は、上述のセンサとともに、炭搬送装置300に配置されてもよい。
【0016】
また、本実施形態では、燻炭Cを製造する際で生じるガスは、後述する煙道15を通って炭化炉100の外部に排気される。但し、この例示に限定されず、炭化装置500は、該ガスから可燃性ガス(水素、メタン、一酸化炭素など)を抽出又は誘導し、該可燃性ガスを用いて発電する設備をさらに有してもよい。
【0017】
<2.炭化炉100>
次に、図1及び図2を参照して、炭化炉100の構成例を説明する。図2は、炭化炉100の構成例を示す概略図である。なお、図2は、図1の一点鎖線II-IIから下方を向いて見た炭化炉100の平面図である。また、図2では、バイオマスB(及び燻炭C)の堆積層を透明で表示している。
【0018】
図1及び図2に示すように、炭化炉100は、炉本体1と、熱風ユニット2と、燃料供給ユニット3と、撹拌ユニット4と、温度センサ5と、上部温度センサ6と、制御装置7と、を備える。
【0019】
<2-1.炉本体1>
炉本体1は、バイオマスBを燃焼させるための耐熱容器であり、バイオマスBを収容する。炉本体1は、筒部11と、蓋部12と、底部13と、ロータリーバルブ14と、煙道15と、を有する。
【0020】
筒部11は、上下方向に延びる中心軸Jcを囲む筒状である。筒部11の少なくとも下部は、中心軸Jcを中心とする円筒形状である。炉本体1の筒部11の内側面には、熱風口111と、供給口112と、下給気口113と、上給気口114と、が配置される。これらは、筒部11を径方向に貫通する。また、炭化炉100は、給気部115をさらに備える。
【0021】
熱風口111には、熱風ユニット2が接続される。熱風口111は、熱風ユニット2から送出される熱風を炉本体1の内部に流入させるための流入口であり、筒部11の下部に配置される。本実施形態では、熱風口111は、図2に示すように2個であり、周方向に並ぶ。また、各々の熱風口111には、異なる熱風ユニット2が接続される。但し、この例示に限定されず、熱風口111(及び熱風ユニット2)は、単数であってもよいし、3以上の複数であってもよい。また、複数の熱風口111(及び熱風ユニット2)の上下方向位置は、全て同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0022】
供給口112には、燃料供給ユニット3が接続される。供給口112は、燃料供給ユニット3が搬送する燃料(つまりバイオマスB)を炉本体1の内部に供給するための燃料投入口であり、熱風口111よりも上方に配置される。
【0023】
下給気口113及び上給気口114には、弁1131,1141を介して、コンプレッサなどの給気部115が接続される。給気部115は、制御装置7に制御され、炉本体1の内部に給気する。なお、下給気口113及び上給気口114には、異なる給気部115がそれぞれ接続されてもよいし、同一の給気部115が接続されてもよい。また、弁1131は、制御装置7の制御に応じて、給気部115及び下給気口113間の給気通路の開閉を切り替える。弁1141は、制御装置7の制御に応じて、給気部115及び上給気口114間の給気通路の開閉を切り替える。
【0024】
下給気口113は、炉本体1(特に筒部11)の下部に位置し、熱風口111よりも上方且つ供給口112よりも下方に配置される。炉本体1の内部のうち、上下方向においてバイオマスBが収容される空間及びその直上の空間は、燻炭Cをバイオ炭にするため、バイオマスBが過度に燃焼しない程度に酸素の濃度が低い低酸素領域となっている。給気部115が供給する空気は、下給気口113を介して炉本体1の下部(つまり低酸素領域)に流入する。つまり、下給気口113では、低酸素領域に適切な酸素量の気体が供給される。
【0025】
また、上給気口114は、供給口112よりも上方に配置される。炉本体1の低酸素領域よりも上方の空間(たとえば上部)には、バイオマスBの燃焼により生成されたガス及び温められた空気による上昇気流が充満する。これらには、黒鉛などの可燃性の微粒子及び可燃性ガスが含まれる。炉本体1の低酸素領域よりも上方の空間は、炉内温度に応じて、これらを燃焼させるため、酸素の濃度が高い高酸素領域となっている。給気部115が供給する空気は、上給気口114を介して炉本体1内(たとえば高酸素領域)に流入する。上給気口114では、高酸素領域に適切な酸素量の気体が供給される。
【0026】
次に、蓋部12は、筒部11の上端部から径方向内方に広がり、筒部11の上端部(つまり上方に面する開口)を覆う。蓋部12には、排気口121が配置される。排気口121は、蓋部12を上下方向に貫通する。なお、この例示に限定されず、排気口121は、筒部11に配置されて該筒部11を径方向に貫通してもよい。炉本体1内の上昇気流の少なくとも一部が排気口121から排気されることで、炉本体1の内部圧力の上昇を抑制できる。また、上昇気流には、バイオマスBの燃焼により発生するガスも含まれる。よって、再利用可能なガス(たとえば水素、メタン、一酸化炭素などの可燃性ガス)を含む排気ガスを排気口121から取り出すこともできる。
【0027】
底部13は、筒部11の下端部から径方向内方に広がり、筒部11の下端部(つまり下方に面する開口)を覆う。底部13には、中央開口131と、吐出口132と、が配置される。中央開口131及び吐出口132はそれぞれ、底部13を上下方向に貫通する。中央開口131は、上下方向から見て、底部13の中央部に形成される。中心軸Jcは、中央開口131の中心を通る。吐出口132は、燻炭Cを炉本体1の外部に排出するための貫通孔である。好ましくは、吐出口132は、周方向のうちの撹拌ユニット4の回転方向と同じ向きにおいて、上下方向から見て熱風口111及び供給口112から周方向に離れた箇所に形成される。こうすれば、十分に炭化していないバイオマスBが吐出口132から排出されることを抑制できる。
【0028】
ロータリーバルブ14は、吐出口132に接続され、制御装置7の制御に応じて炉本体1内の収容物(バイオマスB又は燻炭C)の吐出速度を変更する。ロータリーバルブ14のロータは、回転を停止することで、吐出口132からのバイオマスB(又は燻炭C)の吐出を防止する。また、ロータリーバルブ14のロータは、該ロータの回転速度に応じた吐出速度で、吐出口132から燻炭Cを吐出する。吐出口132の直下には炭搬送装置300が配置される。吐出口132から吐出された燻炭Cは、炭搬送装置300により、充填装置400に搬送され、充填装置400にて袋401に収納される。
【0029】
煙道15は、排気口121に接続される筒状体であって、排気口121から排出される排気ガスを誘導する。なお、煙道15は、省略されてもよい。
【0030】
<2-2.熱風ユニット2>
熱風ユニット2は、炉本体1の側面に設けられる。熱風ユニット2は、制御装置7に制御され、空気を高温に加熱して、熱風を炉本体1内に送る。該熱風は、バイオマスBに吹き当てられ、バイオマスBを加熱する。熱風ユニット2の熱風は、熱風口111から炉本体1の内部に流入する。たとえば、熱風ユニット2は、加熱部21と、送風部22と、遮断弁23と、を有する。加熱部21は、たとえば電熱線などを含んで電力により発熱するヒーターであり、一例として350℃以上且つ600℃以下の高温まで空気を加熱する。なお、加熱された空気(つまり熱風)の温度範囲は、この例示に限定されない。送風部22は、熱風を炉本体1の内部に向けて送出する。熱風口111は、熱風口111と加熱部21及び送風部22との間に配置された弁であり、制御装置7の制御に応じて開閉して熱風の流通の可否を切り替える。
【0031】
熱風での加熱により、化石燃料を用いることなく、炉本体1内のバイオマスBを着火することができ、さらにバイオマスBの燃焼により燻炭Cを製造することができる。従って、軽油、灯油、LPG(liquefied petroleum gas)などの化石燃料を用いたバーナによって炉本体1の内部温度を上昇させた後にバイオマスBを供給して燃焼させる構成と比べて、燻炭Cの作製に要する時間を短縮できる。また、本実施形態の炭化炉100では、化石燃料の燃焼を用いる上述の構成と比べて、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を低減できる。さらに、燻炭Cを土壌改良剤として農地に施用することで、炭素を土壌中に貯留することができ、二酸化炭素の排出量の削減に寄与できる(日本国が認証するJ-クレジット制度参照)。従って、農地の地力を向上させるとともに、カーボンニュートラルの実現に貢献できる。
【0032】
<2-3.燃料供給ユニット3>
燃料供給ユニット3は、制御装置7に制御され、燃料供給装置200に収容された燃料(つまりバイオマスB)を供給口112から炉本体1の内部に供給する。たとえば、燃料供給ユニット3での燃料の単位時間当たりの供給量(以下、「供給速度」と呼ぶ)、供給パターン(供給/停止)などは、制御装置7に制御される。
【0033】
図2に示すように、本実施形態では、供給口112は、周方向において2つの熱風口111の間に配置される。つまり、供給口112は、周方向において熱風口111からずれた位置にある。但し、この例示に限定されず、供給口112は、周方向においていずれかの熱風口111と同じ位置にあってもよい。こうすれば、供給口112から供給されるバイオマスBは、熱風口111付近を中心として山形に堆積できる。熱風口111の高さ位置に対して、熱風口111付近でのバイオマスBの堆積層の上面faを適切な高さ位置とすることにより、炉本体1の内部へのバイオマスBの供給過多を防止できる。従って、バイオマスBを適切に燃焼させることができる。
【0034】
<2-4.撹拌ユニット4>
撹拌ユニット4は、炉本体1の底部13に取り付けられ、中心軸Jcを中心として回転可能である。撹拌ユニット4は、制御装置7に制御され、炉本体1内のバイオマスBを撹拌する。撹拌ユニット4の撹拌により、バイオマスBの局所的な着火及び燃焼を防止できる。従って、バイオマスB全体の着火時間を短縮でき、炉本体1内のバイオマスBをより一様に燃焼させることができる。
【0035】
撹拌ユニット4は、軸部材41と、撹拌翼42と、錐部43と、駆動部44と、を有する。
【0036】
軸部材41は、炉本体1の底面に配置される。軸部材41は、炉本体1の底面の中央部を通る中心軸Jcに沿って上下方向に延び、中心軸Jc回りに回転可能である。軸部材41は、底部13の下方側から中央開口131に挿入され、底部13の上面よりも上方に突出する。
【0037】
撹拌翼42は、軸部材41から該軸部材41を基準とする径方向外方に延びて、軸部材41回りに回転可能である。撹拌翼42の端部(たとえば径方向外端部)は、炉本体1の筒部11の内側面と僅かな隙間を空けて径方向に対向する。
【0038】
本実施形態では、4個の撹拌翼42が軸部材41回りの周方向に並ぶ(図2参照)。但し、この例示に限定されず、撹拌翼42は、単数であってもよいし、4以外の複数であってもよい。また、複数の撹拌翼42は、周方向において、等間隔に並んでもよいし、それぞれ異なる間隔で並んでもよい。
【0039】
なお、好ましくは、撹拌翼42の軸部材41を基準とする径方向外端部は、熱風口111の上端の高さ位置よりも下方に位置する。さらに好ましくは図1に示すように、撹拌翼42の径方向外端部は、熱風口111(の下端の高さ位置)よりも下方に位置する。こうすれば、熱風口111から吹き出る熱風が周方向に移動する撹拌翼42の径方向外端部を直接に加熱することを抑制又は防止できる。従って、撹拌翼42の径方向外端部の熱損傷、熱風口111への熱風の逆流などを抑制又は防止できる。また、撹拌翼42により移動するバイオマスBを熱風で効率良く加熱することができるので、バイオマスBの着火及び温度上昇を効率良く行うことができる。
【0040】
各々の撹拌翼42は、翼部421と、切妻部422と、を有する。翼部421は、軸部材41から径方向外方に延びて上下方向に広がる。切妻部422は、翼部421の上端部に配置されて、径方向に延びる。切妻部422の上面は、径方向から見た断面視において、上方に向かって尖る三角形状である。切妻部422の配置により、撹拌翼42の上面に載るバイオマスBを下方に落とすことができる。従って、撹拌翼42の上端部でのバイオマスBの堆積を防止できるので、撹拌ユニット4は、より一様にバイオマスBを撹拌できる。
【0041】
なお、本実施形態では、撹拌翼42の上下方向幅は、径方向において一様である。但し、この例示に限定されず、図3Aに示すように、撹拌翼42の径方向外端部は、径方向外方に向かうにつれて下方に先細りしてもよい。図3Aは、撹拌翼42の外端形状の変形例を示す断面図である。図3Aは、図1の荒い破線で囲まれた部分IIIaに対応する。
【0042】
詳細には、少なくとも1つの撹拌翼42(特に翼部421)の軸部材41を基準とする径方向外端部において、該径方向外端部の上端は、径方向外方に向かうにつれて下方に延びてもよい。なお、好ましくは、翼部421の先細りした径方向外端部の上端部にも、切妻部422は配置される。
【0043】
こうすれば、たとえば、撹拌翼42の径方向外端部よりも径方向内方の部分の上下方向幅を小さくすることなく、該撹拌翼42の径方向外端部の上下方向幅を小さくして、撹拌翼42の径方向外端部と熱風口111との対向面積をより小さくできる。従って、撹拌翼42の撹拌効果を低減させることなく、加熱により撹拌翼42の先端部分(つまり径方向外端部)が劣化する虞を軽減できる。
【0044】
また、本実施形態では、撹拌翼42の周方向幅は、径方向において一様である。但し、この例示に限定されず、図3Bに示すように、撹拌翼42の径方向外端部は、径方向外方に向かうにつれて先細りしてもよい。図3Bは、撹拌翼42の外端形状の他の変形例を示す上面図である。図3Bは、図2の荒い破線で囲まれた部分IIIbに対応する。
【0045】
詳細には、少なくとも1つの撹拌翼42(特に翼部421)の軸部材41を基準とする径方向外端部において、該径方向外端部の周方向幅は、径方向外方に向かうにつれて小さくなってもよい。
【0046】
こうすれば、たとえば、撹拌翼42(特に翼部421)の径方向外端部よりも径方向内方の部分の周方向幅を小さくすることなく、該撹拌翼42の先端部の周方向幅を小さくできる。周方向に移動する撹拌翼42の径方向外端部が熱風口111と径方向に対向する際、熱風口111から吹き出る熱風は、たとえば撹拌翼42の径方向外端部よりも周方向一方又は他方に流れることができる。従って、撹拌翼42の剛性を低下させることなく、熱風の吹出抵抗の増加、及び熱風口111への逆流を抑制又は防止できる。
【0047】
なお、図3A及び図3Bを参照して説明した上述の構成は、特に矛盾の生じない限りにおいて、組み合わせて実施されてもよい。
【0048】
錐部43は、上方に向けて尖る角錐形状又は円錐形状であって、軸部材41の上端部に固定される。錐部43の配置により、軸部材41の上端部に載るバイオマスBを下方に落とすことができる。従って、軸部材41の上端部でのバイオマスBの堆積を防止できるので、撹拌ユニット4は、より一様にバイオマスBを撹拌できる。
【0049】
駆動部44は、たとえば軸部材41の下端部に配置されるモータを含み、制御装置7の制御に応じて、中心軸Jc回りに軸部材41を撹拌翼42及び錐部43とともに回転させる。
【0050】
<2-5.温度センサ5>
温度センサ5は、炉本体1の下部の内部温度と炉本体1内に堆積するバイオマスBの温度を検出する第1センサであり、筒部11の内側面から径方向内方に突出する。また、温度センサ5は、炉本体1内におけるバイオマスB(又は燻炭C)の堆積層の上面fa,fbの高さ位置を検出するための第2センサでもある。温度センサ5の検出結果は、制御装置7に出力される。
【0051】
本実施形態では、温度センサ5は、第1温度センサ51と、第2温度センサ52と、第3温度センサ53と、第4温度センサ54と、を有する。これらは、上下方向に並べられる。たとえば、第1温度センサ51は、撹拌翼42よりも上方に配置される。第2温度センサ52は、第1温度センサ51よりも上方に配置される。第3温度センサ53は、第2温度センサ52よりも上方に配置される。第4温度センサ54は、第3温度センサ53よりも上方に配置される。上下方向に隣り合う温度センサ5間の検出温度の差からバイオマスB(又は燻炭C)の上面fa,fbの高さ位置を検知することができる。
【0052】
なお、バイオマスBの着火制御及び第1昇温制御工程において、第1温度センサ51は、バイオマスBの堆積層の上面faの目標高さ位置よりも下方に配置される。第2~第4温度センサ52、53,54は、バイオマスBの堆積層の上面faの目標高さ位置よりも上方に配置される。
【0053】
また、炉本体1の第2昇温制御工程及び定常運転において、第1~第3温度センサ51,52,53は、バイオマスB(又は燻炭C)の堆積層の上面fbの目標高さ位置よりも下方に配置される。第4温度センサ54は、バイオマスBの堆積層の上面fbの目標高さ位置よりも上方に配置される。
【0054】
また、炉本体1において上下方向に並べて配置される温度センサ5は、本実施形態では4個であるが、この例示に限定されず、4以外の複数であってもよい。また、バイオマスBの堆積高さを検出するための第2センサは、温度センサ5以外の手段であってもよい。
【0055】
<2-6.上部温度センサ6>
上部温度センサ6は、上給気口114よりも上方に配置され、筒部11の内側面から径方向内方に突出する。上部温度センサ6は、炉本体1のたとえば高酸素領域における内部温度を検出し、制御装置7に出力する。
【0056】
<2-7.制御装置7>
制御装置7は、炭化炉100の各々の構成要素を制御するとともに、炭化装置500を構成する炭化炉100以外の装置200,300,400,500を制御する。制御装置7は、メモリ71と、入力部72と、を有する。メモリ71は、非一過性の記憶媒体である。入力部72は、使用者の操作入力を受け付ける。制御装置7は、たとえば、メモリ71に記憶されたプログラム及び情報、入力部72が受け付けた操作入力、温度センサ5及び上部温度センサ6の検出結果などに基づいて、上述の構成要素及び装置の制御を実施する。
【0057】
たとえば、制御装置7は、熱風ユニット2を制御し、たとえば熱風ユニット2の駆動及び停止、送出する熱風の温度、熱風の流速などを制御する。制御装置は、第1昇温制御モードと、第2昇温制御モードと、を有する。第1昇温制御モードは、熱風ユニット2の駆動により、バイオマスBを着火して、第1目標温度(たとえば600℃:後述する図4の検出温度T5参照)まで昇温させる。第2昇温制御モードは、熱風ユニット2の駆動停止後、バイオマスB自身の燃焼により、炉本体1の内部温度を第2目標温度まで昇温させる。第2目標温度は、たとえば900℃であって、第1目標温度よりも高い温度である(たとえば後述する図5の検出温度T7参照)。こうすれば、着火したバイオマスBの燃焼により、燻炭Cを製造できる。
【0058】
また、制御装置7は、撹拌ユニット4を制御する。好ましくは、制御装置7は、熱風ユニット2の駆動を開始する際、撹拌翼42の径方向外端部を熱風口111から周方向にずれた位置に回転させた後、熱風ユニット2を駆動する。こうすれば、撹拌翼42の外端(つまり径方向外端部)を熱風で直接に加熱することを防止できる。従って、バイオマスBを熱風で直接に加熱して着火できるとともに、加熱により撹拌翼42の外端が劣化する虞を軽減できる。
【0059】
また、好ましくは、制御装置7は、炉本体1内のバイオマスBの堆積層の上面の温度上昇率が所定値以上になると、撹拌ユニット4を間欠的に駆動する。なお、所定値は、たとえば、5[℃/秒]以上である(後述する図4のΔT1s参照)。こうすれば、着火により燃焼を開始したバイオマスBを撹拌によって移動させることができる。そのため、熱風での加熱によるバイオマスBでの過度な温度上昇を防止でき、他の未着火なバイオマスBを熱風により着火できる。また、撹拌停止期間にて、熱風によりバイオマスBを局所的に加熱し続けることにより、未着火なバイオマスBの温度を着火温度まで上昇させることができる。従って、より確実且つ効率的に、バイオマスBを着火して燃焼させることができる。
【0060】
また、好ましくは、制御装置7は、炉本体1内のバイオマスBが着火した後、バイオマスBの燃焼条件を段階的に変化させる。たとえば、制御装置7は、バイオマスBの温度上昇に応じて、間欠的に駆動される撹拌ユニット4における1回当たりの撹拌角度、1回当たりの撹拌時間、及び、1回当たりの撹拌停止時間のうちの少なくともいずれかを段階的に変化させる(後述する図6の時点P3~P5参照)。こうすれば、バイオマスB(及び燻炭C)の温度上昇(つまり燃焼の進み具合)に応じて、撹拌ユニット4の撹拌動作を適切に調節できる。
【0061】
但し、上述の例示は、制御装置7が駆動開始時から撹拌ユニット4を連続回転させる構成を排除しない。
【0062】
また、好ましくは、制御装置7は、バイオマスBの温度が第1所定値を超えると、撹拌ユニット4を連続的に駆動する。たとえば、後述するように、第1温度センサ51から第4温度センサ54での検出温度が300℃に達すると、制御装置7は、撹拌翼42を連続的に回転させる。こうすれば、バイオマスBの温度分布を均一化しつつ、バイオマスBの燃焼を促進できる。
【0063】
但し、上述の例示は、炉本体1内のバイオマスBの着火後に燃焼条件のうちの少なくとも撹拌ユニット4の駆動を一定の条件で実施する構成を排除しない。
【0064】
また、制御装置7は、第2センサ(本実施形態では温度センサ5)の検出結果に基づいて燃料供給ユニット3を制御し、たとえば燃料供給ユニット3の駆動及び停止、バイオマスBの供給速度及び供給時間などを制御する。これにより、制御装置7は、バイオマスBの堆積高さを制御する。たとえば、制御装置7は、熱風ユニット2を駆動する際、熱風口111の径方向外方側において炉本体1内に堆積するバイオマスBの上面faの高さ位置を熱風口111の上端の高さ位置以下にするとともに、熱風口111の下端の高さ位置よりも上方にする。こうすれば、堆積するバイオマスBの上層部分を熱風で加熱して、バイオマスBを適切且つ継続的に燃焼させることができる。
【0065】
また、制御装置7は、炉本体1の内部温度に応じて、炉本体1内に供給する空気の流速を調節する。たとえば、制御装置7は、炉本体1の内部温度が第2所定値を超えると、熱風ユニット2の駆動を停止し、上給気口114から炉本体1の内部に流入する空気の流速V2を高くする(後述する図6の時点P6参照)。なお、第2所定値は、たとえば600℃であり、第1所定値よりも高い。たとえば、本実施形態では、制御装置7は、炉本体1内に供給する単位時間当たりの空気の総量を一定にする一方で、空気を供給する上給気口114の数を多くする。これにより、各々の上給気口114から流出する空気の流速を早くすることができる。但し、この例示に限定されず、炉本体1内に供給される単位時間当たりの空気の総量は、炉本体1内の内部温度が大きく変化しない程度であれば、一定でなくてもよい。
【0066】
バイオマスBの温度が高くなると、これにより生じる上昇気流中に含まれる黒鉛などの可燃物が多くなる。従って、上給気口114から流入する空気の流速V2を高めることで、炉本体1内で上述の可燃物を効率良く燃焼させることができる。従って、炉本体1の外部に排出される空気に含まれる可燃物を低減又は無くすことができる。
【0067】
なお、本実施形態では、制御装置7は、炭化炉100の構成要素である。但し、この例示に限定されず、制御装置7の少なくとも一部は、炭化装置500における炭化炉100とは別の構成要素であってもよい。また、制御装置7が実施する制御の一部は、手動で実施されてもよい。
【0068】
<3.バイオマスBの燃焼による燻炭Cの製造例>
次に、図4図6を参照して、炭化装置500における燻炭Cの製造例を説明する。図4は、熱風ユニット2を用いたバイオマスBの着火及び炉本体1の第1昇温制御工程の一例を説明するためのフローチャートである。図5は、バイオマスB自身の燃焼による炉本体1の第2昇温制御工程の一例を説明するためのフローチャートである。図6は、炭化装置500における燻炭Cの製造例を示すタイムチャートである。図4図6に示す各々のステップは、制御装置7の制御に基づいて実施される。
【0069】
<3-1.熱風ユニット2を用いたバイオマスBの着火及び第1昇温制御工程>
図4に示すように、この工程では、炭化装置500及び炭化炉100は、熱風ユニット2によりバイオマスBを着火し、その着火範囲を拡大させる。そして、炭化装置500及び炭化炉100は、第1昇温制御により、熱風ユニット2を用いなくても燃焼を継続できる温度までバイオマスBを昇温させる。
【0070】
まず、図6の時点P0において、少なくともいずれかの撹拌翼42の径方向外端部(つまり外端)の周方向位置が熱風口111の周方向位置と重なるか否かが判断される(ステップS101)。言い換えると、上下方向から見て、両者が径方向に対向しているか否かが判定される。この判定は、たとえば軸部材41の回転角度位置が、上述の両者が対向する回転角度位置と同じであるか否かで実施できる。或いは、この判定は、軸部材41を回転させるモータ(つまり駆動部44)のシャフトの回転角度位置をエンコーダ、ホール素子などで検出した結果に基づいて実施されてもよい。
【0071】
上述の両者の周方向位置が重なる場合(ステップS101でYES)、駆動部44が軸部材41を回転させて、撹拌翼42の径方向外端部を熱風口111から周方向にずらす(ステップS102)。そして、ステップS103に進む。一方、上述の両者の周方向位置が重なっていない場合(ステップS101でNO)、ステップS103に進む。
【0072】
次に、燃料供給ユニット3の駆動により、炉本体1内に所定量のバイオマスBが供給される(ステップS103)。この初期供給の際、バイオマスBの供給量は、燃料供給ユニット3によるバイオマスBの供給速度と、その供給時間とで制御される。また、この際でのバイオマスBの供給量は、着火したバイオマスBから可燃ガスが発生し過ぎず、且つ、バイオマスBの着火時間が長くなり過ぎない程度とされる。たとえば、該供給量は、温度センサ5付近でのバイオマスBの堆積層の上面faが第1温度センサ51よりも上方、且つ、第2温度センサ52よりも下方に位置する程度とされる。これを満足する供給条件は、たとえば、予め複数回の実証実験を行った結果に基づいて決定される。
【0073】
バイオマスBの初期供給が終わると、図6の時点P1において、下給気口113での給気が開始されるとともに熱風ユニット2の遮断弁23が開けられる(ステップS104)。その後、熱風ユニット2が起動されて、熱風が炉本体1内に供給される(ステップS105)。これにより、熱風口111から吹き出す熱風でバイオマスBが局所的に加熱され、バイオマスBの着火が開始される。また、下給気口113で適量の空気が給気された後に熱風ユニット2を起動することにより、炉本体1の下部の酸素濃度を上げて、着火したバイオマスBから発生する可燃ガスの充満を抑制できる。従って、充満した可燃ガスが一気に燃焼することを防止できる。また、ステップS104での下給気口113での単位時間当たりの給気量(以下、給気速度と呼ぶ。)Qa1は、着火したバイオマスBが消火されない程度とされる。
【0074】
この際、熱風は、堆積するバイオマスBの上層部分を加熱して、バイオマスBを適切且つ継続的に燃焼させる。なお、バイオマスBの中層以下の部分を熱風で加熱して燃焼させると、バイオマスBの局所的な温度上昇及び燃焼によるガスの発生により、該ガス及び燻炭Cが熱風口111に逆流する虞がある。また、堆積するバイオマスBの上面faに多くの熱風を吹き当てると、上面fa付近のバイオマスBの温度が上昇する一方で、上面faから下方に離れた部分でのバイオマスBの温度は上昇し難い。そのため、上面fa付近のバイオマスBが着火しても、燃焼を継続できない虞がある。
【0075】
次に、熱風ユニット2を用いた炉本体1の第1昇温制御が実施される。まず、第1温度センサ51の温度上昇率ΔT1が所定値ΔT1s以上であるか否かが判定される(ステップS106)。この際、好ましくは、第1温度センサ51にてΔT1≧ΔT1sの継続期間t1が所定期間t1s以上であるか否かが判定される。なお、第1温度センサ51は、この時点において、温度センサ5のうちのバイオマスBの堆積層の上面faよりも下方にあるとともに、上下方向において該上面faに最も近い温度センサの一例である。また、温度上昇率ΔT1は、ステップS106での第1温度センサ51での単位時間当たりの検出温度T1の上昇率[℃/秒]であり、たとえば数[℃/秒]である。所定値ΔT1sは、温度上昇率ΔT1の閾値であり、たとえば5[℃/秒]以上に設定される。所定期間t1sは、継続期間t1の閾値であり、たとえば数十[sec]である。着火の成否を継続期間t1で判定することにより、温度検出時のノイズによる検出温度の誤判定を抑制できる。
【0076】
なお、ΔT1<ΔT1s(好ましくはt1<t1s)であれば(ステップS106でNO)、バイオマスBの初期着火に失敗したと判定され、炭化炉100を含む炭化装置500が停止され(ステップS107)、燻炭Cの製造が終了する。或いは、ステップS106でNOの際、ステップS105及びS106を再び実行してもよい。この際、ステップS106でNOとなる判定が連続して所定回数に達した場合に、着火が失敗したと判定されて、炭化装置500が停止される。また、着火が失敗したと判定された場合、、制御装置7などに搭載されたモニタ(図示省略)に所定のメッセージ(警告など)が表示されてもよいし、制御装置7などに搭載されたスピーカーから警告音或いは所定のメッセージ音声が出力されてもよい。
【0077】
一方、ΔT1≧ΔT1s(好ましくはt1≧t1s)であれば(ステップS106でYES)、図6の時点P2において、バイオマスBの初期着火が成功したと判定され、バイオマスBの供給が再開される。さらに、撹拌ユニット4が駆動され、条件を段階的に変化させてバイオマスBを昇温させる。
【0078】
たとえば、燃料供給ユニット3の駆動により、炉本体1内にバイオマスBが連続供給される(ステップS108)。この際、バイオマスBの供給速度Qb1[kg/hr]は、後の第2昇温制御工程(図5参照)での供給速度Qb2よりも少ない量とされる。こうすることで、着火したバイオマスBが、未着火のバイオマスBで覆われることにより消火されることを防止できる。
【0079】
さらに、撹拌ユニット4の間欠駆動が開始される(ステップS109)。本実施形態では、たとえば、撹拌ユニット4は、間欠的に駆動され、数秒間の駆動により所定の回転角度(たとえば72[degree])まで回転させた後に数分間停止するという駆動サイクルを繰り返す。なお、撹拌ユニット4(特に撹拌翼42)の回転角度,駆動期間,及び停止期間は、撹拌により移動した未着火のバイオマスBを確実に着火できる程度とされる。たとえば、停止期間が短すぎるとバイオマスBが着火する前に撹拌により移動する虞がある。また、回転角度及び駆動期間が大きすぎると、未着火のバイオマスBが吐出口132上に移動する虞がある。一方、停止期間が長過ぎたり回転角度及び駆動期間が小さ過ぎたりすると、バイオマスBの燃焼が進み過ぎる虞がある。
【0080】
撹拌ユニット4の駆動が開始された後、ロータリーバルブ14及び炭搬送装置300の駆動が開始される(ステップS110)。これにより、燻炭Cが、吐出口132から吐出され、炭搬送装置300により充填装置400に運ばれて袋詰めされる。なお、ロータリーバルブ14による燻炭Cの単位時間当たりの吐出量(以下、「吐出速度」と呼ぶ。)は、バイオマスBの燃焼の進み具合に応じて適切に調節される。なお、吐出速度が速過ぎると、十分に燃焼していないバイオマスBが吐出される虞がある。吐出速度が遅過ぎると、燻炭Cが過度に燃焼する虞がある。ここで、もみ殻などの一部のバイオマスBでは、過度に燃焼させると、微細な針状のシリカが生成されて燻炭Cに混じってしまう。そのため、ロータリーバルブ14での吐出速度は、たとえば、予め複数回の実証実験を行った結果に基づいて決定される。
【0081】
次に、第1温度センサ51の検出温度T2が所定値T2s以上であるか否かが判定される(ステップS111)。この際、好ましくは、第1温度センサ51にてT2≧T2sの継続期間t2が所定期間t2s以上であるか否かが判定される。なお、第1温度センサ51は、この時点において、温度センサ5のうちのバイオマスBの堆積層の上面faよりも下方にあるとともに、上下方向において該上面faに最も近い温度センサの一例である。また、検出温度T2は、ステップS111における第1温度センサ51での検出結果である。所定値T2sは、検出温度T2の閾値であり、たとえば450[℃]である。所定期間t2sは、継続期間t2の閾値であり、たとえば1[sec]以上である。着火の成否を継続期間t2で判定することにより、温度検出時のノイズによる検出温度T2の誤判定を抑制できる。
【0082】
T2≧T2s(好ましくはt2≧t2s)であれば(ステップS111でYES)、図6の時点P3において、撹拌ユニット4の駆動条件が変更され、撹拌翼42による撹拌が促進される(ステップS112)。たとえば、撹拌ユニット4(特に撹拌翼42)の回転角度,駆動期間,及び停止期間などが変更される。本実施形態では、間欠駆動される撹拌ユニット4の停止期間が短縮され、ステップS109での停止期間よりも短くされる。撹拌を促進することで、着火したバイオマスBをより早く炉内に広めることができる。
【0083】
次に、温度センサ5の検出温度T3が所定値T3s以上であるか否かが判定される(ステップS113)。この際、好ましくは、温度センサ5にてT3≧T3sの継続期間t3が所定期間t3s以上であるか否かが判定される。なお、検出温度T3は、ステップS113において、第1~第4温度センサ51,52,53,54のうちのいずれかでの検出結果であり、たとえば第1~第4温度センサ51,52,53,54の検出温度のうちの最も高い温度である。所定値T3sは、検出温度T3の閾値であり、たとえば600[℃]である。所定期間t3sは、継続期間t3の閾値であり、たとえば1[sec]以上である。継続期間t3で判定することにより、温度検出時のノイズによる検出温度T3の誤判定を抑制できる。
【0084】
T3≧T3s(好ましくはt3≧t3s)であれば(ステップS113でYES)、図6の時点P4において、下給気口113の給気速度Qa2を増加させる(ステップS114)。炉本体1内の下部の低酸素領域に供給する酸素を増加させることで、バイオマスBの燃焼をさらに促進できる。
【0085】
次に、第1~第4温度センサ51,52,53,54の検出温度T4が所定値T4s以上であるか否かが判定される(ステップS115)。この際、好ましくは、第1~第4温度センサ51,52,53,54にてT4≧T4sの継続期間t4が所定期間t4s以上であるか否かが判定される。なお、検出温度T4は、ステップS115において、第1~第4温度センサ51,52,53,54での検出結果であり、たとえば第1~第4温度センサ51,52,53,54の全ての検出温度を含む。所定値T4sは、本発明の「第1所定値」の一例であり、検出温度T4の閾値であり、たとえば600[℃]である。なお、本実施形態では、T4s=T3sであるが、この例示に限定されずにT4s≠T3sであってもよい。所定期間t4sは、継続期間t4の閾値であり、たとえば1[sec]以上である。継続期間t4で判定することにより、温度検出時のノイズによる検出温度T4の誤判定を抑制できる。
【0086】
T4≧T4s(好ましくはt4≧t4s)であれば(ステップS115でYES)、図6の時点P5において、撹拌ユニット4は、連続駆動されて、常時回転する(ステップS116)。これにより、バイオマスBの堆積高さの均一化及びバイオマスBの燃焼をさらに促進できる。
【0087】
さらに、上給気口114での給気が開始される(ステップS117)。なお、この際の炉本体1内に供給される空気の流速V1は、後のバイオマスB自身の燃焼による炉本体1の第2昇温制御工程(図5参照)時よりも速くされる。たとえば、ステップS117における複数の上給気口114での単位時間当たりの総給気量を第2昇温制御工程時と同じにする一方で、炉本体1内に給気する上給気口114のステップS117における数は、たとえば2個とされ、第2昇温制御工程での数(たとえば4個)よりも少なくされる。これにより、個々の上給気口114における空気の流速V1をより速くできる。但し、流速V1を早める手段は、上述の例示に限定されない。たとえば、上給気口114の弁を少し閉じて、空気の流路断面積を小さくしてもよい。なお、バイオマスBの燃焼が促進されると、炉本体1内の高酸素領域における可燃ガス及び可燃物が多くなる。複数の上給気口114での総給気量は、これらの燃焼を維持できる程度とされる。また、個々の上給気口114での流速V1は、炉本体1内の高酸素領域における可燃ガス及び可燃物を十分に燃焼できるとともに、炉本体1内の内部温度が低下せず、且つ、炉本体1の内部から供給口112への気体の逆流が生じない程度とされる。該流速V1が小さ過ぎると、不完全燃焼により多くの可燃ガス及び可燃物が煙道15から外部に排出される。また、該流速V1が大き過ぎると、炉本体1内の内部温度が低下したり、供給口112での逆流が生じたりする。
【0088】
次に、第1温度センサ51の検出温度T5が所定値T5s以上であるか否かが判定される(ステップS118)。この際、好ましくは、第1温度センサ51にてT5≧T5sの継続期間t5が所定期間t5s以上であるか否かが判定される。なお、第1温度センサ51は、この時点において、温度センサ5のうちのバイオマスBの堆積層の上面faよりも下方にあるとともに、上下方向において該上面faに最も近い温度センサの一例である。また、検出温度T5は、ステップS118における第1温度センサ51での検出結果である。所定値T5sは、本発明の「第2所定値」の一例であり、検出温度T5の閾値であり、たとえば900[℃]である。所定期間t5sは、継続期間t5の閾値であり、たとえば1[sec]以上である。継続期間t5で判定することにより、温度検出時のノイズによる検出温度T5の誤判定を抑制できる。
【0089】
T5≧T5s(好ましくはt5≧t5s)であれば(ステップS118でYES)、遮断弁23が閉じられて、熱風ユニット2が停止される(ステップS119)。これにより、図4の熱風ユニット2を用いたバイオマスBの着火及び炉本体1の第1昇温制御工程が終了する。そして、図6の時点P6において、次に説明する図5のバイオマスB自身の燃焼による炉本体1の第2昇温制御工程が開始される。
【0090】
なお、図4の例示では、ステップS109~S115の期間(図6の時点P2~P5間)において、撹拌ユニット4は、間欠駆動される。但し、この例示に限定されず、撹拌ユニット4は、熱風によりバイオマスBが着火できる程度の低速回転で連続運転されてもよい。たとえば、ステップS109~S115の期間において、撹拌ユニット4は、ステップS116以降(つまり図6の時点P5以降)における回転速度よりも低速で連続運転されてもよい。
【0091】
<3-2.バイオマスB自身の燃焼による炉本体1の第2昇温制御工程>
図5に示すように、この工程では、炭化装置500及び炭化炉100は、バイオマスB(及び燻炭C)の燃焼により発生する熱で、炉本体1内の内部温度を目標温度まで上昇させて維持し、定常運転状態で燻炭Cを製造する。なお、この工程では、撹拌ユニット4及びロータリーバルブ14は、常時、連続駆動される。
【0092】
まず、図6の時点P6において、燃料供給装置200でのバイオマスBの供給速度Qb2を増やし(ステップS201)、バイオマスBの燃焼が抑制されない程度まで下給気口113の給気速度Qa3を少なくする(ステップS202)。なお、該給気速度Qa3が少な過ぎると、バイオマスB(及び燻炭C)の燃焼速度が低下するため、燻炭Cの生焼けの状態が長時間継続してしまう。
【0093】
さらに、上給気口114から炉本体1内に供給される空気の流速V2が遅くされる(ステップS203)。たとえば、炉本体1内に給気する上給気口114のステップS203における数は、4個に増やされ、第1昇温制御工程での数(たとえば2個)よりも多くされる。これにより、個々の上給気口114における空気の流速V2を第1昇温制御工程での流速V1より遅くして、炉本体1の内部温度の低下を抑制できる。但し、流速V2を遅くする手段は、上述の例示に限定されない。たとえば、上給気口114の弁を少し開けて、空気の流路断面積を大きくしてもよい。ここで、好ましくは、ステップS203における複数の上給気口114での単位時間当たりの総給気量は、第1昇温工程(図4参照)時と同じにされる。たとえば、単位時間当たりの総給気量を増やすと、炉本体1内の内部温度が低下し、可燃ガス及び可燃物の燃焼効率が低下する虞がある。但し、この例示は、ステップS203における複数の上給気口114での単位時間当たりの総給気量が第1昇温工程時と異なる構成を排除しない。たとえば、ステップS203における上給気口114での単位時間当たりの総給気量は、炉本体1内の内部温度を低下させ過ぎない程度に増やされてもよいし、可燃ガス及び可燃物の燃焼量が低下し過ぎない程度に減らされてもよい。
【0094】
次に、第1~第4温度センサ51,52,53,54の検出温度T6が所定値T6s以上であるか否かが判定される(ステップS204)。この際、好ましくは、第1~第4温度センサ51,52,53,54にてT6≧T6sの継続期間t6が所定期間t6s以上であるか否かが判定される。なお、検出温度T6は、ステップS204において、第1~第4温度センサ51,52,53,54での検出結果であり、たとえば第1~第4温度センサ51,52,53,54の全ての検出温度を含む。所定値T6sは、検出温度T6の閾値であり、たとえば750[℃]である。所定期間t6sは、継続期間t6の閾値であり、たとえば1[sec]以上である。継続期間t6で判定することにより、温度検出時のノイズによる検出温度T6の誤判定を抑制できる。
【0095】
炉本体1の炉壁の蓄熱が進むと、炉本体1内での輻射により、バイオマスB(及び燻炭C)の燃焼がさらに促進される。そのため、T6≧T6s(好ましくはt6≧t6s)であれば(ステップS204でYES)、図6の時点P7において、下給気口113での給気が停止される(ステップS205)。これにより、バイオマスB(及び燻炭C)の過度な燃焼を抑制でき、燻炭Cの歩留まりを向上できる。また、下給気口113に接続された給気部115を停止できるので、節電できるとともに、給気部115での騒音の発生を防止できる。さらに、炉本体1の内部圧力を低下できるので、上給気口114に接続された給気部115に掛かる給気負荷を軽減できる。従って、上給気口114に接続された給気部115での消費電力を軽減できる。なお、下給気口113での給気を停止しても、上給気口114から供給される空気により、バイオマスB(及び燻炭C)の燃焼が維持でき、その反応熱でバイオマスBの温度も維持できる。
【0096】
次に、炉本体1内に配置された上部温度センサ6の検出温度T7が所定値T7s以上であるか否かが判定される(ステップS206)。この際、好ましくは、上部温度センサ6にてT7≧T7sの継続期間t7が所定期間t7s以上であるか否かが判定される。なお、検出温度T7は、ステップS206における上部温度センサ6での検出結果である。所定値T7sは、検出温度T7の閾値であり、たとえば900[℃]である。所定期間t7sは、継続期間t7の閾値であり、たとえば15[min]以上である。継続期間t7で判定することにより、温度検出時のノイズによる検出温度T7の誤判定を抑制できる。
【0097】
下給気口113での給気停止によって、バイオマスB(及び燻炭C)の燃焼により生じる可燃ガス及び可燃物は、上給気口114から供給される空気により燃焼される。そのため、炉本体1内での温度は急上昇する。また、炉本体1内に供給される総給気量は減少するので、これらは不完全燃焼し易い。そのため、T7≧T7s(好ましくはt7≧t7s)であれば(ステップS206でYES)、図6の時点P8において、上給気口114から供給される空気の流速V2(及び単位時間当たりの給気量の増減)による炉本体1の内部の温度調整(以下、炉内温度調整制御と呼ぶ。)が開始される(ステップS207)。これにより、下給気口113での給気を停止しても、炉本体1内の温度を制御できるとともに、炉本体1から外部への排気ガスに含まれる特定のガス(一酸化炭素など)の濃度が基準値を超えないように制御できる。
【0098】
さらに、炉内温度調整制御の開始から所定の運転期間(たとえば数十[min])が経過後(ステップS208でYES)、図6の時点P9において、燃料供給装置200でのバイオマスBの供給速度Qb2の調整による炉本体1の内部の温度調整(以下、燃料供給制御と呼ぶ。)が開始される(ステップS209)。これにより、炉本体1内へのバイオマスBの供給による炉本体1内の温度の変動を抑制して目標温度に維持できる。
【0099】
そして、図6の時点P10において、炭化装置500及び炭化炉100の定常運転が開始される。なお、定常運転が終了すると(ステップS210でYES)、図5の工程が終了する(図6の時点PE参照)。炭化装置500及び炭化炉100の定常運転は、たとえば、燃料供給装置200に貯蔵された燃料(つまりバイオマスB)の供給完了、制御装置7の入力部72での運転停止の操作入力の受付などにより停止される。
【0100】
<4.備考>
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は例示であり、その各構成要素及び各処理の組み合わせに色々な変形が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0101】
<5.総括>
以下では、これまでに説明してきた実施形態について総括的に述べる。
【0102】
たとえば、本明細書中に開示されている炭化炉100は、
バイオマスBを収容する炉本体1と、
前記炉本体1の側面に設けられ、熱風を前記炉本体1内に送る熱風ユニット2と、
前記炉本体1内の前記バイオマスBを撹拌する撹拌ユニット4と、
を備える構成(第1の構成)とされる。
【0103】
上記第1の構成の炭化炉100は、
前記熱風ユニット2を制御する制御装置7をさらに備え、
前記制御装置7は、
前記熱風ユニット2の駆動により前記バイオマスBを着火して第1目標温度(たとえばT5s)まで昇温させる第1昇温制御モードと、
前記熱風ユニット2の駆動停止後、前記バイオマスB自身の燃焼により前記炉本体1の内部温度を前記第1目標温度(たとえばT5s)よりも高い第2目標温度(たとえばT7s)まで昇温させる第2昇温制御モードと、
を有する構成(第2の構成)であってもよい。
【0104】
また、上記第1又は第2の構成の炭化炉100は、
前記撹拌ユニット4を制御する制御装置7と、
前記バイオマスBの温度を検出する第1センサ5と、
をさらに備え、
前記制御装置7は、前記炉本体1内の前記バイオマスBの堆積層の上面faの温度上昇率ΔT1が所定値ΔT1s以上になると、前記撹拌ユニット4を間欠的に駆動する構成(第3の構成)であってもよい。
【0105】
また、上記第3の構成の炭化炉100は、
前記制御装置7は、前記バイオマスBの温度上昇に応じて、間欠的に駆動される前記撹拌ユニット4における1回当たりの撹拌角度、1回当たりの撹拌時間、及び、1回当たりの撹拌停止時間のうちの少なくともいずれかを変化させる構成(第4の構成)であってもよい。
【0106】
また、上記第3又は第4の構成の炭化炉100は、
前記制御装置7は、前記バイオマスBの温度T4が第1所定値T4sを超えると、前記撹拌ユニット4を連続的に駆動する構成(第5の構成)であってもよい。
【0107】
また、上記第5の構成の炭化炉100は、
前記炉本体1の内部に空気を供給する給気部115をさらに備え、
前記炉本体1の内側面には、熱風口111と、前記炉本体1に位置する上給気口114と、が配置され、
前記熱風ユニット2の熱風は、前記熱風口111から前記炉本体1の内部に流入し、
前記給気部115が供給する空気は、前記上給気口114を介して前記炉本体1に流入し、
前記制御装置7は、前記バイオマスBの温度T5が前記第1所定値T4sよりも高い第2所定値T5sを超えると、前記熱風ユニット2の駆動を停止し、前記上給気口114から前記炉本体1の内部に流入する空気の流速V2を遅くする構成(第6の構成)であってもよい。
【0108】
また、上記第1から第6のいずれかの構成の炭化炉100は、
前記撹拌ユニット4を制御する制御装置7をさらに備え、
前記撹拌ユニット4は、
前記炉本体1の底面に配置されて上下方向に延びる軸部材41と、
前記軸部材41回りに回転可能な撹拌翼42と、
を有し、
前記炉本体1の内側面には、前記熱風ユニット2の熱風が内部に流入する熱風口111が配置され、
前記制御装置7は、前記熱風ユニット2の駆動を開始する際、前記撹拌翼42の端部を前記熱風口111から周方向にずれた位置に回転させた後、前記熱風ユニット2を駆動する構成(第7の構成)であってもよい。
【0109】
また、上記第1から第7のいずれかの構成の炭化炉100は、
前記撹拌ユニット4は、
前記炉本体1の底面に配置されて上下方向に延びる軸部材41と、
前記軸部材41回りに回転可能な撹拌翼42と、
を有し、
前記炉本体1の下部の内側面には、前記熱風ユニット2の熱風が内部に流入する熱風口111が配置され、
前記撹拌翼42の端部は、前記熱風口111の上端の高さ位置よりも下方に位置する構成(第8の構成)であってもよい。
【0110】
また、上記第1から第8のいずれかの構成の炭化炉100は、
前記バイオマスBを前記炉本体1の内部に供給する燃料供給ユニット3と、
前記バイオマスBの堆積層の上面の高さを検出するための第2センサ5と、
前記第2センサ5の検出結果に基づいて前記燃料供給ユニット3を制御する制御装置7と、
をさらに備え、
前記炉本体1の内側面には、前記熱風ユニット2の熱風が内部に流入する熱風口111が配置され、
前記制御装置7は、前記熱風ユニット2を駆動する際、前記熱風口111の径方向外方側において前記炉本体1内に堆積する前記バイオマスBの上面faの高さ位置を前記熱風口111の上端の高さ位置以下にするとともに前記熱風口111の下端の高さ位置よりも上方にする構成(第9の構成)であってもよい。
【0111】
また、上記第9の構成の炭化炉100は、
前記制御装置7はさらに、前記熱風ユニット2を駆動する際、前記熱風口111の径方向外方側において前記炉本体1内に堆積する前記バイオマスBの上面faの高さ位置を前記熱風口111の上端の高さ位置以下にする構成(第10の構成)であってもよい。
【0112】
また、上記第1から第10のいずれかの構成の炭化炉100は、
前記バイオマスBを前記炉本体1の内部に供給する燃料供給ユニット3をさらに有し、
前記炉本体1の内側面には、熱風口111と、供給口112と、が配置され、
前記熱風ユニット2の熱風は、前記熱風口111から前記炉本体1の内部に流入し、
前記バイオマスBは、前記供給口112から前記炉本体1の内部に供給され、
前記供給口112は、前記熱風口111よりも上方であって、周方向において前記熱風口111と同じ位置にある構成(第11の構成)であってもよい。
【符号の説明】
【0113】
1・・・炉本体、11・・・筒部、111・・・熱風口、112・・・供給口、113・・・下給気口、114・・・上給気口、1141・・・弁、115・・・給気部、12・・・蓋部、121・・・排気口、13・・・底部、131・・・中央開口、1311・・・弁、132・・・吐出口、14・・・ロータリーバルブ、141・・・駆動部、15・・煙道、2・・・熱風ユニット、21・・・発熱部、22・・・送風部、23・・・遮断弁、3・・・燃料供給ユニット、31・・・供給部、203・・・駆動部、4・・・撹拌ユニット、41・・・軸部材、42・・・撹拌翼、421・・・翼部、422・・・切妻部、43・・・錐部、44・・・駆動部、5・・・温度センサ、51・・・第1温度センサ、52・・・第2温度センサ、53・・・第3温度センサ、54・・・第4温度センサ、6・・・上部温度センサ、7・・・制御装置、71・・・メモリ、72・・・入力部、100・・・炭化炉、200・・・燃料供給装置、300・・・炭搬送装置、301・・・搬送部、302・・・駆動部、400・・・充填装置、401・・・袋、402・・・散水部、500・・・炭化装置、Jc・・・中心軸、B・・・バイオマス、C・・・燻炭
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6