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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002453
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20241226BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01D5/12 N
G01D5/12 C
G01B7/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102641
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼岡 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】四方 康博
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅史
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063BA04
2F063CA08
2F063DA01
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063EA03
2F063GA52
2F063GA69
2F077AA21
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN04
2F077NN22
2F077PP11
2F077UU22
(57)【要約】
【課題】2つの回転部材の相対位置を精度良く検出可能な位置検出装置を提供すること。
【解決手段】
複数の第1ギア歯を有する第1回転部材と複数の第2ギア歯を有する第2回転部材とを備える動力伝達装置に適用される位置検出装置は、第1ギア歯と第2ギア歯との相対的な位置関係に応じた信号を、周波数成分を含む位置信号として出力する位置センサ70と、第1回転部材の回転数に応じた第1回転信号を出力する第1回転センサ81と、第2回転部材の回転数に応じた第2回転信号を出力する第2回転センサ82と、位置センサが出力する位置信号から上側周波数以上の周波数成分および下側周波数以下の周波数成分を除去したフィルタ信号を出力するフィルタ部531と、を備える。フィルタ部は、第1回転センサが出力する第1回転信号に基づいて上側周波数を変化させるとともに、第2回転センサが出力する第2回転信号に基づいて下側周波数を変化させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向を軸方向としたとき、前記軸方向に延びる軸心を中心として回転可能に構成され、複数の第1ギア歯(231)を有する第1回転部材(20)と、前記軸心を中心として回転可能に構成され、前記複数の第1ギア歯と噛み合わせることが可能な複数の第2ギア歯(311)を有する第2回転部材(30、40)と、を備える動力伝達装置(1)に適用される位置検出装置であって、
回転する前記第1ギア歯と回転する前記第2ギア歯との相対的な位置関係に応じた信号を、周波数成分を含む位置信号として出力する位置センサ(70、75、76)と、
前記第1回転部材の回転数を検出し、検出した前記第1回転部材の回転数に応じた第1回転信号を出力する第1回転センサ(81、83)と、
前記第2回転部材の回転数を検出し、検出した前記第2回転部材の回転数に応じた第2回転信号を出力する第2回転センサ(82、84)と、
前記位置センサが出力する前記位置信号から所定の周波数である上側周波数以上の周波数成分および前記上側周波数より低い周波数である下側周波数以下の周波数成分を除去したフィルタ信号を出力するフィルタ部(531)と、を備え、
前記フィルタ部は、前記第1回転センサが出力する前記第1回転信号に基づいて前記上側周波数を変化させるとともに、前記第2回転センサが出力する前記第2回転信号に基づいて前記下側周波数を変化させる位置検出装置。
【請求項2】
前記フィルタ部は、前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分をデジタル処理によって除去するデジタルバンドパスフィルタを有する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記フィルタ部は、前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分をアナログ処理によって除去する複数のバンドパス回路(531a、531b、531c、531d)を有する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記フィルタ部は、前記上側周波数以上の周波数成分をアナログ処理によって除去するローパス回路(531e、531f)および前記下側周波数以下の周波数成分をアナログ処理によって除去するハイパス回路(531g、531h)を有する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第1回転センサは、前記第1回転部材の回転数を直接検出し、
前記第2回転センサは、前記第2回転部材の回転数を直接検出する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記動力伝達装置は、前記第1回転部材の回転数を変換する第1変換部(3)と、前記第1変換部によって前記第1回転部材の回転数とは異なる回転数に変換された回転数で前記第1回転部材と一体に回転する第3回転部材(4)と、前記第2回転部材の回転数を変換する第2変換部(5)と、前記第2変換部によって前記第2回転部材の回転数とは異なる回転数に変換された回転数で前記第2回転部材と一体に回転する第4回転部材(6)と、を有し、
前記第1回転センサは、前記第3回転部材の回転数を検出することで前記第1回転部材の回転数を間接的に検出し、
前記第2回転センサは、前記第4回転部材の回転数を検出することで前記第2回転部材の回転数を間接的に検出する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記動力伝達装置は、該動力伝達装置の作動を制御する制御装置(53)を有する車両に適用され、
前記フィルタ部は、前記制御装置によって構成されている請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記動力伝達装置は、該動力伝達装置の作動を制御する制御装置(53)を有する車両に適用され、
前記フィルタ部は、前記制御装置と別体に構成されており、前記フィルタ信号を前記制御装置に出力する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記第1回転部材および前記第2回転部材は、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合って一体に回転可能であって、
前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に基づいて前記第1ギア歯と前記第2ギア歯との相対位置を検出し、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合い可能となる係合タイミングを求める相対位置算出部(532)を備える請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記相対位置算出部は、前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号を複数のハイ信号および複数のロー信号に二値化したパルス信号にして出力する二値化処理部(5321)および前記二値化処理部が出力する前記パルス信号における前記複数のハイ信号それぞれの間隔に基づいて前記係合タイミングを求める係合タイミング検出部(5322)を有する請求項9に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記相対位置算出部は、前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に対して、信号の大きさを絶対値化する検波処理を実行する検波処理部(5323)を有する請求項10に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記相対位置算出部は、前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に対してヒルベルト変換を実行して包絡線を求めるとともに、求めた前記包絡線に基づいて前記係合タイミングを求める請求項9に記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記位置センサが出力する前記位置信号から前記上側周波数とは異なる周波数である除去周波数以上の周波数成分を除去した除去後信号を出力するローパスフィルタ部(533)と、
前記ローパスフィルタ部が出力する前記除去後信号に基づいて、前記第1ギア歯と前記第2ギア歯とが噛み合って前記第1回転部材と前記第2回転部材とが一体に回転する係合状態を判定する係合判定部(534)と、を備え、
前記除去周波数は、前記第1回転部材と前記第2回転部材とが一体に回転する際の前記第1回転部材および前記第2回転部材の回転数に基づいて設定されている請求項9ないし12のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記ローパスフィルタ部は、前記第1回転センサが出力する前記第1回転信号および前記第2回転センサが出力する前記第2回転信号の少なくとも一方に基づいて前記除去周波数を変化させる請求項13に記載の位置検出装置。
【請求項15】
前記ローパスフィルタ部は、前記除去周波数が予め定められている請求項13に記載の位置検出装置。
【請求項16】
前記ローパスフィルタ部は、前記除去周波数以上の周波数成分をデジタル処理によって除去するデジタルローパスフィルタを有する請求項13に記載の位置検出装置。
【請求項17】
前記ローパスフィルタ部は、前記除去周波数以上の周波数成分をアナログ処理によって除去するアナログ回路(5331)を有する請求項13に記載の位置検出装置。
【請求項18】
前記位置センサは、複数の前記第1ギア歯の回転位置に応じた第1位置信号を出力する第1位置センサ(75)と、複数の前記第2ギア歯の回転位置に応じた第2位置信号を出力する第2位置センサ(76)と、によって構成されている請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項19】
前記第1回転部材および前記第2回転部材は、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合って一体に回転可能であって、
前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に基づいて前記第1ギア歯と前記第2ギア歯との相対位置を検出し、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合い可能となる係合タイミングを求める相対位置算出部(532)を備え、
前記第1位置センサは、前記第1位置信号をハイ信号およびロー信号に二値化したパルス信号として出力し、
前記第2位置センサは、前記第2位置信号をハイ信号およびロー信号に二値化したパルス信号として出力し、
前記フィルタ部は、前記第1位置センサが出力する前記第1位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分を除去するとともに、前記第2位置センサが出力する前記第2位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分を除去し、
前記相対位置算出部は、前記第1位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分が除去された前記フィルタ信号および前記第2位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分が除去された前記フィルタ信号それぞれに含まれるハイ信号に基づいて前記係合タイミングを求める係合タイミング検出部(5322)を有する請求項18に記載の位置検出装置。
【請求項20】
前記第1ギア歯と前記第2ギア歯とが噛み合って前記第1回転部材と前記第2回転部材とが一体に回転する係合状態を判定する係合判定部(534)を備え、
前記第1位置センサおよび前記第2位置センサの少なくとも一方は、前記第1回転部材および前記第2回転部材が前記係合状態である場合と前記係合状態でない場合とで異なる信号を出力し、
前記係合判定部は、前記第1回転部材および前記第2回転部材が前記係合状態である場合と前記係合状態でない場合とで前記第1位置センサおよび前記第2位置センサの少なくとも一方が出力する異なる信号に基づいて前記係合状態を判定する請求項19に記載の位置検出装置。
【請求項21】
前記位置センサは、回転する前記第1ギア歯と回転する前記第2ギア歯との相対的な位置関係によって変化する磁束の変化を検出する磁気検出素子(72)を含んでいる請求項1に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ターボチャージャの吸気コンプレッサのハウジング内で回転するブレードを検出するブレード検出センサと、ブレード検出センサの出力を2値化して出力するセンサ回路と、を備える回転数検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この回転数検出装置において、センサ回路は、ブレード検出センサの出力信号のうち、路面に設置されたロードヒータから発生する低周波の磁気に起因する低周波ノイズを除去するハイパスフィルタを有する。また、センサ回路は、ブレード検出センサの出力信号のうち、ターボチャージャが備えるシャフトの軸ずれに起因する高周波ノイズを除去するローパスフィルタを有する。これにより、特許文献1に記載の回転数検出装置は、ブレード検出センサの出力信号に含まれる低周波ノイズおよび高周波ノイズをそれぞれ除去可能となっている。そして、ハイパスフィルタは、ターボチャージャの回転数によって周波数の値が変化する高周波ノイズの周波数に応じて、除去する高周波ノイズの周波数の値を上下に変更可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-072068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、それぞれ独立して回転する2つの回転部材の相対位置を検出する位置検出装置において、2つの回転部材の回転数が互いに異なる場合、2つの回転部材それぞれの回転に起因した互いに周波数が異なる2つのノイズが発生することが有る。このような2つの回転部材それぞれの回転に起因したノイズは、2つの回転部材それぞれの回転数によって、それぞれの周波数の値が変化する。したがって、互いに周波数が異なる2つのノイズをそれぞれ除去する場合、それぞれのノイズの周波数に応じて、除去する周波数の値を変更することが求められる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の位置検出装置では、除去する低周波ノイズおよび高周波ノイズのうち、高周波ノイズ側の周波数の値を変更可能となっているが、低周波ノイズ側の周波数の値を変更することができない。このため、特許文献1に記載の構成を、2つの回転部材の相対位置を検出する位置検出装置に用いても、当該2つの回転部材の相対位置を精度良く検出することが難しい。このような課題は、発明者らの鋭意検討によって見出された。
【0007】
本開示は、回転する2つの回転部材の相対位置を精度良く検出可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの観点によれば、
所定方向を軸方向としたとき、軸方向に延びる軸心を中心として回転可能に構成され、複数の第1ギア歯(231)を有する第1回転部材(20)と、軸心を中心として回転可能に構成され、複数の第1ギア歯と噛み合わせることが可能な複数の第2ギア歯(311)を有する第2回転部材(30、40)と、を備える動力伝達装置(1)に適用される位置検出装置であって、
回転する第1ギア歯と回転する第2ギア歯との相対的な位置関係に応じた信号を、周波数成分を含む位置信号として出力する位置センサ(70、75、76)と、
第1回転部材の回転数を検出し、検出した第1回転部材の回転数に応じた第1回転信号を出力する第1回転センサ(81、83)と、
第2回転部材の回転数を検出し、検出した第2回転部材の回転数に応じた第2回転信号を出力する第2回転センサ(82、84)と、
位置センサが出力する位置信号から所定の周波数である上側周波数以上の周波数成分および上側周波数より低い周波数である下側周波数以下の周波数成分を除去したフィルタ信号を出力するフィルタ部(531)と、を備え、
フィルタ部は、第1回転センサが出力する第1回転信号に基づいて上側周波数を変化させるとともに、第2回転センサが出力する第2回転信号に基づいて下側周波数を変化させる。
【0009】
これによれば、フィルタ部は、上側周波数を、第1回転部材の回転数に応じて周波数が変化する高周波ノイズの周波数に対応させることができる。また、フィルタ部は、下側周波数を、第2回転部材の回転数に応じて変化する低周波ノイズの周波数に対応させることができる。したがって、位置検出装置は、第1回転部材と第2回転部材との相対位置の検出精度を向上させることができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る位置検出装置が適用される動力伝達装置の概略構成図である。
図2】第1ギア部の模式的な正面図である。
図3】第2ギア部の模式的な正面図である。
図4】第3ギア部の模式的な正面図である。
図5】複数の第1ギア歯と複数の第2ギア歯とを噛み合わせることができない状態を示す模式図である。
図6】複数の第1ギア歯と複数の第2ギア歯とを噛み合わせることが可能な状態を示す模式図である。
図7】複数の第1ギア歯と複数の第2ギア歯とを噛み合わせることが可能な状態を説明するための説明図である。
図8】位置検出装置の概略構成図である。
図9】磁気センサの模式的な正面図である。
図10】位置検出装置に含まれる磁気センサとドグクラッチとの配置関係を示す模式図である。
図11】磁気センサが出力する位置信号の時間変化の一例を示す図である。
図12】磁気センサが出力する位置信号にノイズが重畳した状態の一例を示す図である。
図13】フィルタ部が抽出する周波数成分の一例を示す図である。
図14】フィルタ部が出力するフィルタ信号および相対位置算出部が特定する係合タイミングを示す図である。
図15】第2実施形態に係る位置検出装置を説明するための図である。
図16】第3実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図17】第3実施形態に係る制御装置が係合タイミングを特定する際に実行する処理を説明するための図である。
図18】第3実施形態に係る制御装置が特定する係合タイミングの特定方法を説明するための図である。
図19】第4実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図20】第4実施形態に係る制御装置が係合タイミングを特定する際に実行する処理を説明するための図である。
図21】第5実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図22】従動部材とスリーブとが係合する際の作動を説明するための図である。
図23】磁気センサが出力する位置信号にノイズが重畳した状態の一例を示す図である。
図24】磁気センサが出力する位置信号からノイズを除去した波形の一例を示す図である。
図25】ローパスフィルタ部が抽出する周波数成分の一例を示す図である。
図26】第6実施形態に係るローパスフィルタ部のアナログ回路の一例を示す図である。
図27】第7実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図28】第7実施形態に係るフィルタ部のバンドパス回路の一例を示す図である。
図29】第8実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図30】第8実施形態に係るフィルタ部のハイパス回路の一例を示す図である。
図31】第9実施形態に係る制御装置が特定する係合タイミングの特定方法を説明するための図である。
図32】第10実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図33】第11実施形態に係る位置検出装置を説明するための図である。
図34】第11実施形態に係る位置検出装置の概略構成図である。
図35】第11実施形態に係る第1磁気センサおよび第2磁気センサが検出する磁束の変化を示す図である。
図36】第11実施形態に係る第1磁気センサおよび第2磁気センサが出力する磁気信号を示す図である。
図37】第1凸部と第2凸部とが軸方向に重なっていない場合の第1磁気センサおよび第2磁気センサが出力する磁気信号を示す図である。
図38】第1凸部と第2凸部とが軸方向に重なっている場合の第1磁気センサおよび第2磁気センサが出力する磁気信号を示す図である。
図39】第1磁気センサおよび第2磁気センサが出力する磁気信号にノイズが重畳した状態の一例を示す図である。
図40】第1磁気センサおよび第2磁気センサが出力する磁気信号にパルス欠けが発生している状態を示す図である。
図41】従動部材とスリーブとが開放状態および接続状態である場合それぞれの第2磁気センサの位置を示す図である。
図42】従動部材とスリーブとが接続状態である場合の第11実施形態に係る第1磁気センサおよび第2磁気センサが出力する磁気信号を示す図である。
図43】第12実施形態に係る位置検出装置が適用されるドグクラッチを示す図である。
図44】従動部材とスリーブとが接続状態である場合の第12実施形態に係る第2磁気センサが出力する磁気信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1図14を参照して説明する。本実施形態では、本開示の位置検出装置60が車両の動力伝達装置1に適用される例について説明する。まず、この動力伝達装置1について説明する。動力伝達装置1は、内燃機関やモータ等の走行駆動源51から出力される動力の車両の車軸への伝達を断続させる。図1に示すように、動力伝達装置1は、ドグクラッチ10、駆動機器50、位置検出装置60を備える。
【0014】
ドグクラッチ10は、従動部材20、スリーブ30、および駆動部材40を備える。従動部材20、スリーブ30、および駆動部材40は、同じ軸心CLを中心に回転可能に構成されている。ドグクラッチ10は、走行駆動源51と車両の車軸との接続状態および未接続状態を切り替えるものである。
【0015】
従動部材20は、スリーブ30および駆動部材40を介して走行駆動源51から出力される動力を受けて、軸心CLを中心に回転する回転部材である。従動部材20の回転は、車両の車軸を介して車輪Wへ伝達される。また、従動部材20は、車輪Wから伝達される動力によって回転可能になっている。本実施形態では、従動部材20が“第1回転部材”に対応している。
【0016】
従動部材20は、筒形状に形成された第1軸部材21および当該第1軸部材21の軸方向Daxの一方側に設けられた第1ギア部22を備えている。第1軸部材21および第1ギア部22は、軸心CLを中心に一体に回転するように連結されている。
【0017】
第1ギア部22は、複数の第1ギア歯231が形成されている。第1ギア部22には、複数の第1ギア歯231とは別の複数の第1凸部241が複数の第1ギア歯231の位置を特定する要素として形成されている。なお、図1では、便宜上、複数の第1ギア歯231および複数の第1凸部241それぞれにおける代表的なものに対して符合を付し、他のものへの符号を省略している。このことは、図1以外の図面においても同様である。
【0018】
複数の第1ギア歯231は、第1ギア部22のうち、軸方向Daxの一方側にある第1先端部23に形成されている。複数の第1ギア歯231は、第1先端部23において、軸心CLから離れる方向、すなわち、径方向Dorの外側に突き出ている。複数の第1ギア歯231は、軸心CLを中心とする周方向Drの全周にわたって所定の間隔をあけて設けられている。複数の第1ギア歯231は、それぞれ同じ形に構成されている。周方向Drに隣り合う第1ギア歯231の間隔は、第1ギア歯231と後述の第2ギア歯311とを噛み合わせることが可能な大きさになっている。複数の第1ギア歯231は、後述の第2ギア歯311との噛み合わせに適した形状となっている。
【0019】
複数の第1凸部241は、第1ギア部22の第1先端部23に隣接して設けられた鍔形状の第1フランジ部24に形成されている。複数の第1凸部241は、第1フランジ部24において、軸心CLから離れる方向、すなわち、径方向Dorの外側に突き出ている。複数の第1凸部241は、軸心CLを中心とする周方向Drの全周にわたって所定の間隔をあけて設けられている。複数の第1凸部241は、それぞれ同じ形に構成されている。第1フランジ部24は、従動部材20に対して一体に回転するように設けられている。
【0020】
第1ギア部22には、複数の第1ギア歯231の約数となる数の第1凸部241が設けられている。本実施形態の第1ギア部22には、図2に示すように、複数の第1ギア歯231と同数の第1凸部241が設けられている。なお、図2には、一例として、12個の第1ギア歯231および第1凸部241が設けられた第1ギア部22を示しているが、第1ギア歯231および第1凸部241の数は、図2に示すものに制限されず、任意の数に設定することができる。
【0021】
複数の第1凸部241それぞれは、第1ギア歯231と同じ方向に突き出ている。すなわち、複数の第1凸部241それぞれは、第1ギア部22を軸方向Daxから見たとき、径方向Dorにおいて第1ギア歯231と重なり合うように形成されている。
【0022】
第1ギア部22は、その全体が磁性材料、例えば、鉄を含む材料によって構成されている。なお、第1ギア部22は、少なくとも複数の第1凸部241が磁性材料で構成されていれば、他の要素が別の材料で構成されていてもよい。
【0023】
スリーブ30および駆動部材40は、走行駆動源51から出力される動力を従動部材20に伝達する回転部材である。スリーブ30および駆動部材40は、走行駆動源51から出力される動力によって、軸心CLを中心に一体に回転するように互いに連結されている。本実施形態では、スリーブ30および駆動部材40が“第2回転部材”に対応している。
【0024】
スリーブ30は、従動部材20と駆動部材40とを連結するための部材である。スリーブ30は、従動部材20の第1先端部23および駆動部材40の第3ギア部42を覆うことが可能なように、内径が従動部材20の第1先端部23の外径および駆動部材40の第3ギア部42の外径よりも大きくなっている。
【0025】
スリーブ30は、筒形状の第2ギア部31を備える。本実施形態のスリーブ30は、全体が第2ギア部31を構成している。図3に示すように、第2ギア部31は、複数の第1ギア歯231と噛み合わせることが可能な複数の第2ギア歯311が形成されている。第2ギア部31には、複数の第2ギア歯311とは別の複数の第2凸部321が複数の第2ギア歯311の位置を特定する要素として形成されている。なお、図3では、便宜上、複数の第2ギア歯311および複数の第2凸部321それぞれにおける代表的なものに対して符合を付し、他のものへの符号を省略している。このことは、図3以外の図面においても同様である。
【0026】
スリーブ30は、複数の第2ギア歯311が複数の第1ギア歯231と噛み合った状態で従動部材20と一体に軸心CLを中心に回転する。複数の第2ギア歯311は、第2ギア部31の内側に形成されている。第2ギア部31には、複数の第1ギア歯231と同数の第2ギア歯311が設けられている。複数の第2ギア歯311は、第2ギア部31において、軸心CLに近づく方向、すなわち、径方向Dorの内側に突き出ている。複数の第2ギア歯311は、軸心CLを中心とする周方向Drの全周にわたって所定の間隔をあけて設けられている。複数の第2ギア歯311は、それぞれ同じ形に構成されている。周方向Drに隣り合う第2ギア歯311の間隔は、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることが可能な大きさになっている。複数の第2ギア歯311は、第1ギア歯231との噛み合わせに適した形状となっている。
【0027】
複数の第2凸部321は、第2ギア部31の外側に設けられた鍔形状の第2フランジ部32に形成されている。第2フランジ部32は、第2ギア部31における軸方向Daxの他方側の端部に設けられている。第2フランジ部32は、スリーブ30に対して一体に回転するように設けられている。
【0028】
複数の第2凸部321は、第2フランジ部32において、軸心CLから離れる方向、すなわち、径方向Dorの外側に突き出ている。複数の第2凸部321は、軸心CLを中心とする周方向Drの全周にわたって所定の間隔をあけて設けられている。複数の第2凸部321は、それぞれ同じ形に構成されている。
【0029】
また、第2ギア部31には、複数の第2ギア歯311の約数となる数の第2凸部321が設けられている。本実施形態の第2ギア部31には、複数の第2ギア歯311と同数の第2凸部321が設けられている。なお、図3には、一例として、12個の第2ギア歯311および第2凸部321が設けられた第2ギア部31を示しているが、第2ギア歯311および第2凸部321の数は、図3に示すものに制限されない。
【0030】
複数の第2凸部321それぞれは、隣り合う第2ギア歯311の間の窪みに対応するように軸心CLから離れる方向に突き出ている。すなわち、複数の第2凸部321それぞれは、第2ギア部31を軸方向Daxから見たとき、径方向Dorにおいて、隣り合う第2ギア歯311の間の窪みと重なり合うように形成されている。
【0031】
複数の第2凸部321は、複数の第2ギア歯311とは異なる形状になっている。複数の第2凸部321は、複数の第1凸部241と同じ形に構成されている。具体的には、複数の第1凸部241および複数の第2凸部321は、周方向Drの長さが径方向Dorの寸法よりも大きい扇形状の突起である。なお、複数の第1凸部241および複数の第2凸部321は、周方向Drの長さが径方向Dorの寸法と同等または小さくなっていてもよい。また、複数の第1凸部241および複数の第2凸部321は、長方形状の突起であってもよい。
【0032】
複数の第1凸部241を含む第1フランジ部24および複数の第2凸部321を含む第2フランジ部32が同じような大きさになっている。
【0033】
第2ギア部31は、その全体が磁性材料、例えば、鉄を含む材料によって構成されている。具体的には、第2ギア部31は、第1ギア部22と同じ磁性材料、すなわち、同一の材質によって構成されている。なお、第2ギア部31は、少なくとも複数の第2凸部321が磁性材料で構成されていれば、他の要素が別の材料で構成されていてもよい。
【0034】
スリーブ30は、シフトフォーク521を介してアクチュエータ522に接続されている。具体的には、スリーブ30は、第2ギア部31における第2フランジ部32よりも軸方向Daxの一方側に位置する部位に、後述するシフトフォーク521の一端を係合させるための係合溝33が形成されている。
【0035】
これにより、スリーブ30は、軸方向Daxに変位可能になっている。本実施形態のスリーブ30は、径方向Dorにおいて従動部材20および駆動部材40の双方と重なり合う位置から径方向Dorにおいて駆動部材40と重なり合うものの従動部材20と重なり合わない位置までの範囲で変位する。
【0036】
駆動部材40は、軸方向Daxにおいて所定の隙間をあけて従動部材20と対向するように配置されている。駆動部材40の一部は、スリーブ30の内側に配置されている。駆動部材40は、筒形状に形成された第3軸部材41および第3ギア部42を備えている。第3軸部材41および第3ギア部42は、軸心CLを中心に一体に回転するように連結されている。
【0037】
第3軸部材41は、軸方向Daxの一方側が走行駆動源51に接続されている。第3軸部材41は、走行駆動源51の動力によって第3ギア部42とともに、軸心CLを中心に回転する。第3軸部材41の軸方向Daxの他方側には、第3ギア部42が設けられている。駆動部材40は、スリーブ30の内側に第3ギア部42を挿通させることができるように、第3ギア部42の外形がスリーブ30の内径よりも小さくなっている。また、駆動部材40は、第3ギア部42の軸方向Daxの寸法がスリーブ30の軸方向Daxの寸法よりも大きくなっている。
【0038】
第3ギア部42は、図4に示すように、複数の第2ギア歯311と噛み合う複数の第3ギア歯421が形成されている。なお、図4では、便宜上、複数の第3ギア歯421における代表的なものに対して符合を付し、他のものへの符号を省略している。このことは、図4以外の図面においても同様である。
【0039】
複数の第3ギア歯421は、複数の第1ギア歯231と同様に、軸心CLから離れる方向、すなわち、径方向Dorの外側に突き出ている。複数の第3ギア歯421は、軸心CLを中心とする周方向Drの全周にわたって所定の間隔をあけて設けられている。複数の第3ギア歯421は、それぞれ同じ形に構成されている。周方向Drに隣り合う第3ギア歯421の間隔は、第3ギア歯421と第2ギア歯311とを噛み合わせることが可能な大きさになっている。複数の第3ギア歯421は、第2ギア歯311との噛み合わせに適した形状となっている。
【0040】
そして、第3ギア歯421と第2ギア歯311とが噛み合わされることで、スリーブ30と駆動部材40とが軸心CLを中心に一体に回転するように互いに連結されている。すなわち、スリーブ30の第2ギア部31と駆動部材40の第3軸部材41および第3ギア部42とは、軸心CLを中心に一体に回転する。
【0041】
第3ギア部42には、軸方向Daxの一方側の端部に鍔形状の第3フランジ部43が設けられている。第3フランジ部43は、スリーブ30が軸方向Daxの一方側に変位した際のストッパとして機能する。なお、第3フランジ部43は、第3軸部材41に設けられていてもよい。
【0042】
このように構成されるドグクラッチ10は、図5に示すように、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが軸方向Daxに重なり合うタイミングにおいて、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることができない。すなわち、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが軸方向Daxに重なり合うタイミングが、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることが不可能な不適合タイミングとなる。
【0043】
一方、図6に示すように、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが軸方向Daxに重なり合わないタイミングにおいて、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることができる。すなわち、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが軸方向Daxに重なり合わないタイミングが、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることが可能な係合タイミングとなる。
【0044】
ドグクラッチ10は、図7に示すように、係合タイミングにおいて、スリーブ30を、従動部材20に近づくように変位させると、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合って従動部材20とスリーブ30とが一体に回転する。
【0045】
ここで、ドグクラッチ10は、接続状態において、第1フランジ部24と第2フランジ部32とが接触していてもよいし、接触していなくてもよい。また、第1フランジ部24および第2フランジ部32は、スリーブ30の軸方向Daxの他方側への変位を制限するストッパとしての機能させるようになっていてもよい。
【0046】
続いて、駆動機器50について図1を参照しつつ説明する。駆動機器50は、従動部材20とスリーブ30とが離間する解放状態と、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合って従動部材20とスリーブ30とが一体に回転する接続状態とを切り替える機器である。図1に示すように、駆動機器50は、走行駆動源51、直動機器52、および制御装置53を備えている。
【0047】
本実施形態の走行駆動源51は、電動車両に搭載される車両走行用のモータによって構成されている。走行駆動源51は、駆動部材40に接続されている。走行駆動源51は、スリーブ30および駆動部材40を回転させるための回転動力を出力する。
【0048】
直動機器52は、スリーブ30を軸方向Daxに沿って変位させるための機器である。直動機器52は、シフトフォーク521および直動型のアクチュエータ522を備える。
【0049】
シフトフォーク521は、スリーブ30とアクチュエータ522とを接続する部材である。シフトフォーク521は、軸方向Daxの一方側の端がアクチュエータ522に接続され、軸方向Daxの他方側の端がスリーブ30に接続されている。
【0050】
アクチュエータ522は、電動モータや電磁ソレノイド等で構成される。アクチュエータ522は、シフトフォーク521をスリーブ30とともに軸方向Daxに変位させることで、ドグクラッチ10を断続させる。
【0051】
制御装置53は、走行駆動源51および直動機器52の作動を制御することで動力伝達装置1の作動を制御する電子制御部を構成している。制御装置53は、プロセッサP、ROMやRAM等のメモリMを含むコンピュータおよびその周辺回路により構成されている。メモリMには、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを有する。なお、メモリMは、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
【0052】
制御装置53は、車両全体を制御するための上位ECUが双方向に通信可能に接続されている。また、制御装置53の入力側には、位置検出装置60等の各種センサが接続されている。位置検出装置60は、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係を示す物理量に基づいて、第1ギア歯231と第2ギア歯311との相対的な位置関係を検出する機器である。また、位置検出装置60は、第1軸部材21の回転数を検出するとともに、第3軸部材41および第3軸部材41と一体に回転する第2ギア部31の回転数を検出する。位置検出装置60は、検出した第1ギア歯231と第2ギア歯311との相対的な位置関係に応じた信号と、第1軸部材21の回転数に応じた信号と、第2ギア部31および第3軸部材41の回転数に応じた信号とを制御装置53に出力する。
【0053】
制御装置53は、位置検出装置60から入力される情報に基づいて走行駆動源51、直動機器52等の動作を制御する。本実施形態では、制御装置53は、位置検出装置60の構成要素の1つとして解釈することができる。位置検出装置60の詳細については後述する。
【0054】
制御装置53の出力側には、走行駆動源51、アクチュエータ522が接続されている。制御装置53は、メモリMに記憶されたコンピュータプログラムを実行するとともに、コンピュータプログラムに従って種々の制御処理を実行する。
【0055】
制御装置53は、位置検出装置60の出力に基づいて、ドグクラッチ10の解放状態と接続状態とを切り替える。すなわち、制御装置53は、第1ギア歯231と第2ギア歯311との相対的な位置関係に基づいて、解放状態と接続状態とを切り替える。
【0056】
続いて、位置検出装置60の詳細について、図8図14を参照しつつ説明する。図8に示すように、位置検出装置60は、従動センサ81、スリーブセンサ82および磁気センサ70を備える。
【0057】
従動センサ81は、従動部材20の回転数を検出する回転センサである。従動センサ81は、従動部材20の第1軸部材21の回転数を検出することで、直接従動部材20の回転数を検出する。従動センサ81は、図1に示すように、径方向Dorにおいて所定の隙間をあけて第1軸部材21と対向するように配置される。従動センサ81は、検出した第1軸部材21の回転数に応じた出力信号を第1回転信号として制御装置53に出力する。本実施形態では、従動センサ81が第1回転センサとして機能する。
【0058】
スリーブセンサ82は、スリーブ30の回転数を検出する回転センサである。スリーブセンサ82は、第3軸部材41の回転数を検出することで、第3軸部材41と一体に回転するスリーブ30の回転数、すなわち、第2ギア部31の回転数を直接検出する。スリーブセンサ82は、図1に示すように、径方向Dorにおいて所定の隙間をあけて第3軸部材41と対向するように配置される。スリーブセンサ82は、検出した第2ギア部31および第3軸部材41の回転数に応じた出力信号を第2回転信号として制御装置53に出力する。本実施形態では、スリーブセンサ82が第2回転センサとして機能する。
【0059】
従動センサ81およびスリーブセンサ82は、例えば、光学式、磁気式、電磁誘導式などの非接触式の回転センサを採用することができる。なお、従動センサ81およびスリーブセンサ82は、機械式の回転センサなど、接触式の回転センサを採用してもよい。
【0060】
磁気センサ70は、第1凸部241と第2凸部321との相対的な位置関係を求めることで、第1ギア歯231と回転する第2ギア歯311との相対的な位置関係を示す“物理量”を検出する“センサ”である。本実施形態の磁気センサ70は、第1凸部241と第2凸部321との相対的な位置関係によって変化する磁束の変化を検出し、検出した磁束の変化に応じた信号を出力する。
【0061】
磁気センサ70は、それ自体が磁界を発生させて磁気回路を形成する自励式センサである。本実施形態の磁気センサ70は、磁気回路部71、磁気検出素子72、磁気回路部71および磁気検出素子72を収容する図示しないケースを有する。
【0062】
磁気回路部71は、磁気回路を形成する部材である。磁気回路部71は、全体形状がU字状の形状になっている。図8および図9に示すように、磁気回路部71は、第1磁石711、第2磁石712、第1ヨーク713、第2ヨーク714、および第3ヨーク715を有する。
【0063】
第1磁石711および第2磁石712は、磁界を発生させる磁界発生部である。第1磁石711および第2磁石712は、永久磁石で構成されている。第1磁石711および第2磁石712は、大きさ、形状、構成材料が略同じである。第1磁石711および第2磁石712は、第1磁石711の磁極の中央同士を直線で結んだ第1磁極線ML1と第2磁石712の磁極の中央同士を直線で結んだ第2磁極線ML2とが略並行となるように、所定の間隔をあけて並列に配置されている。
【0064】
具体的には、第1磁石711は、N極を構成する第1磁極面711a、S極を構成する第2磁極面711bを有する。第1磁極面711aおよび第2磁極面711bは、第1磁石711の本体を挟んで対向している。
【0065】
第2磁石712は、N極を構成する第3磁極面712a、S極を構成する第4磁極面712bを有する。第3磁極面712aおよび第4磁極面712bは、第2磁石712の本体を挟んで対向している。
【0066】
第1ヨーク713は、第1磁石711の第1磁極面711aに接続されている。第1ヨーク713は、第1磁極線ML1に沿って伸びている。第1ヨーク713は、先端側に向かって細くなる先細り形状になっている。なお、第1ヨーク713は、第1ヨーク713と第1磁石711との間で磁束を通過させることが可能になっていれば、第1磁石711から離れていてもよい。
【0067】
第2ヨーク714は、第2磁石712の第3磁極面712aに接続されている。第2ヨーク714は、第2磁極線ML2に沿って伸びている。第2ヨーク714は、先端側に向かって細くなる先細り形状になっている。なお、第2ヨーク714は、第2ヨーク714と第2磁石712との間で磁束を通過させることが可能になっていれば、第2磁石712から離れていてもよい。
【0068】
第3ヨーク715は、第1磁石711の第2磁極面711bおよび第2磁石712の第4磁極面712bの双方に接続されている。第3ヨーク715は、U字形状に構成されている。なお、第3ヨーク715は、第1磁石711と第2磁石712とを接続するために設けられているが、磁気回路部71は、第3ヨーク715が省略されていてもよい。
【0069】
磁気検出素子72は、第1凸部241と第2凸部321との相対的な位置関係によって変化する磁束の変化を“物理量”として検出する素子である。磁気検出素子72は、第1ヨーク713と第2ヨーク714との間に配置されている。磁気検出素子72は、第1ヨーク713と第2ヨーク714との間の磁束の変化を検出する。図示しないが、磁気検出素子72は、磁束の向きを検出する検出回路と、当該検出部で検出させる磁束の向きに応じた電圧をセンサ信号として出力する出力回路とを備える。
【0070】
ここで、図9に示すように、第1ヨーク713および第2ヨーク714の並び方向をx軸とし、第1ヨーク713および第2ヨーク714の延伸方向をy軸とし、x軸およびy軸それぞれに直交する方向をz軸としたとする。本実施形態の検出回路は、z軸の方向の磁束密度Mzを検出する不図示の第1ホール素子、y軸の方向の磁束密度Myを検出する不図示の第2ホール素子を備える。
【0071】
磁気検出素子72の出力回路は、z軸の方向の磁束密度Mzとy軸の磁束密度Myに基づいて、径方向Dorに対する磁束角度θorを求め、当該磁束角度θorを、“物理量として出力する。磁束角度θorは、例えば、以下の数式F1を用いて求められる。
【0072】
θor=arctan(Mz/My) …(F1)
このように構成される磁気センサ70は、図10に示すように、径方向Dorにおいて所定の隙間をあけて第1ギア部22および第2ギア部31と対向するように配置される。具体的には、磁気センサ70は、第1ヨーク713および第2ヨーク714それぞれの先端が、各凸部241、321および各フランジ部24、32と対向するように、各ギア部22、31の径方向Dorの外側に配置されている。
【0073】
磁気センサ70の軸方向Daxの長さLaxは、“解放状態”における第1フランジ部24と第2フランジ部32との軸方向Daxの間隔Lgよりも大きくなっている。なお、磁気センサ70で磁束の変化を検出可能であれば、長さLaxが間隔Lg以下になっていてもよい。また、磁気センサ70と第1凸部241および第2凸部321との隙間は、磁気センサ70の出力の大きさ等に応じて適宜設定される。
【0074】
ここで、複数の第2ギア歯311が複数の第1ギア歯231と噛み合っていない状態で従動部材20およびスリーブ30が互いに異なる回転数で回転すると、複数の第1凸部241および複数の第2凸部321の周方向Drにおける相対位置が変化する。この際、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係等が変化すると、磁気検出素子72付近における磁束の向きが変化する。
【0075】
例えば、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321とが磁気センサ70に近接する位置で軸方向Daxに重なり合うと、磁気検出素子72付近における磁束の向きが径方向Dorに沿った向きとなる。この場合、磁束角度θorが略ゼロとなる。すなわち、複数の第1凸部241のいずれか1つと複数の第2凸部321のいずれか1つとが磁気センサ70に近接する状態で複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれがゼロである場合、磁束角度θorが略ゼロとなる。この場合、磁気センサ70は、磁束角度θorが略ゼロを示す電圧を出力する。
【0076】
また、複数の第1凸部241が磁気センサ70に近接した状態で、複数の第2凸部321が磁気センサ70から離れていると、磁気検出素子72付近における磁束の向きが第1凸部241側に傾く。この場合、磁束角度θorは、磁束の向きが第1凸部241側に傾いていることを示す値となる。すなわち、複数の第1凸部241のいずれか1つが磁気センサ70に近接し、複数の第2凸部321が磁気センサ70から離れた状態で複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれている場合、磁束角度θorがゼロとは異なる値となる。この場合、磁気センサ70は、磁束角度θorに対応する電圧を出力する。
【0077】
また、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321とが磁気センサ70から離れた位置で軸方向Daxに重なり合うと、磁気検出素子72付近における磁束の向きが径方向Dorに沿った向きとなる。この場合、磁束角度θorが略ゼロとなる。すなわち、複数の第1凸部241それぞれと複数の第2凸部321それぞれとが磁気センサ70から離れた状態で複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれがゼロである場合、磁束角度θorが略ゼロとなる。この場合、磁気センサ70は、磁束角度θorが略ゼロを示す電圧を出力する。
【0078】
また、複数の第2凸部321が磁気センサ70に近接した状態で、複数の第1凸部241が磁気センサ70から離れていると、磁気検出素子72付近における磁束の向きが第2凸部321側に傾く。この場合、磁束角度θorは、磁束の向きが第2凸部321側に傾いていることを示す値となる。すなわち、複数の第2凸部321のいずれか1つが磁気センサ70に近接し、複数の第1凸部241が磁気センサ70から離れる状態で複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれている場合、磁束角度θorがゼロとは異なる値となる。磁気センサ70は、磁束角度θorに対応する電圧を出力する。
【0079】
このように、磁気センサ70に対する第1凸部241と第2凸部321と相対的な位置関係と、磁気検出素子72付近における磁束の向きとの間には一定の相関性がある。このため、磁気センサ70によって磁束角度θorを検出することで、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係を把握することができる。
【0080】
ここで、磁気センサ70の位置が軸方向Daxにずれると、磁気センサ70によって磁束角度θorの検出値が変化する。但し、この場合は、磁気センサ70によって磁束角度θorの検出値が所定角度Δθだけオフセットされるだけで、第1凸部241と第2凸部321と相対的な位置関係と、磁気検出素子72付近における磁束の向きとの間に一定の相関性がある。このため、磁気センサ70で検出される磁束角度θorに基づいて、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係を把握することができる。
【0081】
従動部材20とスリーブ30とを異なる一定の速度で回転させた場合における磁気センサ70が出力する電圧の時間変化の一例を図に11に示す。すなわち、図11は、従動部材20とスリーブ30との回転数差が一定である場合における磁気センサ70が出力する電圧の時間変化を示す。また、磁気センサ70が出力する電圧値は、第1凸部241と第2凸部321との相対角度のずれ率を示している。
【0082】
図11に示すように、従動部材20とスリーブ30とを異なる一定の速度で回転させた場合、第1凸部241と第2凸部321との相対位置が時間経過とともに周期的に変化する。これにより、磁気センサ70の出力波形は、“うなり”を持った波形となる。すなわち、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係によって変化する磁束角度θorに基づく磁気センサ70の出力信号は、周波数成分を含む信号となる。そして、第1凸部241と第2凸部321との相対位置を示す出力信号は、電圧値ゼロを中心としたプラス側とマイナス側とを往復する周波数成分を含む出力波形となる。以下、磁気センサ70が出力する複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係を示す信号を位置信号RSとも呼ぶ。磁気センサ70は、位置信号RSを制御装置53に出力する。
【0083】
制御装置53は、磁気センサ70が出力する位置信号RSに基づいて係合タイミングを演算する。係合タイミングは、第1ギア歯231と第2ギア歯311とをみ合わせることが可能なタイミングである。
【0084】
ここで、上述したように、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度がずれている場合、磁気センサ70の出力はゼロとは異なる値となる。また、磁気センサ70の出力波形において振幅の変化が最も大きくなるタイミングKNaは、第1凸部241と第2凸部321とが軸方向Daxに重なり合っておらず、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることが不可能な不適合タイミングとなる。
【0085】
一方、振幅の変化が最小となるタイミングKTaは、第1凸部241と第2凸部321とが軸方向Daxに重なり合っており、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることが可能な係合タイミングとなる。このような出力特性に基づいて制御装置53は係合タイミングを特定する。例えば、制御装置53は、振幅の変化が所定の大きさ以下となったタイミングを係合タイミングとして特定する。
【0086】
ところで、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合っていない状態で回転する従動部材20、スリーブ30および駆動部材40には、軸心CLからずれて回転する軸ずれが発生する場合がある。これは、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合っていない状態では、従動部材20およびスリーブ30が軸方向Daxの一方側および他方側のどちらか一方のみが支持される片持ち状態で回転するためである。
【0087】
そして、従動部材20に軸ずれが発生すると、第1軸部材21および第1ギア部22が軸心CLからずれて回転することとなる。これにより、従動部材20が回転する際、第1ギア部22が軸心CLから離れる方向、すなわち径方向Dorに変位するガタが発生する。また、スリーブ30および駆動部材40に軸ずれが発生すると、第2ギア部31、第3軸部材41および第3ギア部42が軸心CLからずれて回転することとなる。これにより、スリーブ30および駆動部材40が回転する際、第2ギア部31が軸心CLから離れる方向、すなわち径方向Dorに変位するガタが発生する。
【0088】
そして、第1ギア部22および第2ギア部31にガタが発生すると、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係が変化する。これにより、磁気センサ70が出力する複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係を示す位置信号RSには、第1ギア部22および第2ギア部31のガタに起因するノイズが重畳する。この場合、図12に示すように、磁気センサ70の出力波形は、ノイズが重畳しない場合に比較して大きく乱れることとなる。
【0089】
このように磁気センサ70の出力波形にノイズが重畳する場合、当該出力波形に基づいて振幅の変化が最小となるタイミングKTaを特定することが困難となる。そして、係合タイミングを特定することが難しくなる。このため、磁気センサ70の出力波形に基づいて係合タイミングを特定する場合、第1ギア部22および第2ギア部31のガタに起因するノイズを除去した状態の磁気センサ70の出力波形に基づいて係合タイミングを特定することが望ましい。
【0090】
ただし、第1ギア部22のガタに起因するノイズは、従動部材20の回転数に応じて、そのノイズの周波数成分が変化する。例えば、従動部材20の回転数が大きいほど、第1ギア部22のガタに起因するノイズの周波数成分が大きくなり、従動部材20の回転数が小さいほど、第1ギア部22のガタに起因するノイズの周波数成分が小さくなる。
【0091】
また、第2ギア部31のガタに起因するノイズは、スリーブ30、すなわち、駆動部材40の回転数に応じて、そのノイズの周波数成分が変化する。例えば、駆動部材40の回転数が大きいほど、第2ギア部31のガタに起因するノイズの周波数成分が大きくなり、駆動部材40の回転数が小さいほど、第2ギア部31のガタに起因するノイズの周波数成分が小さくなる。
【0092】
このため、従動部材20および駆動部材40の回転数に応じて周波数成分が変化するノイズを除去することが求められる。
【0093】
これに対して、本実施形態の制御装置53は、磁気センサ70の出力波形から従動部材20および駆動部材40の回転数に応じたノイズを除去し、ノイズを除去した出力波形に基づいて係合タイミングを特定可能となっている。具体的に、制御装置53は、図8に示すように、ノイズを除去するフィルタ部531と、ノイズを除去した出力波形に基づいて係合タイミングを特定する相対位置算出部532とを有する。換言すれば、フィルタ部531および相対位置算出部532は、車両に適用される動力伝達装置1の作動を制御する制御装置53によって構成されている。
【0094】
本実施形態のフィルタ部531は、磁気センサ70から出力される位置信号RSから所定の周波数以上の周波数成分を除去するとともに、所定の周波数以下の周波数成分を除去するバンドパスフィルタで構成されている。本実施形態のフィルタ部531は、例えば、所定の周波数以上の周波数成分および所定の周波数以下の周波数成分をデジタル処理によって除去することで特定の周波数帯域の信号を通過させるデジタルバンドパスフィルタが採用されている。
【0095】
フィルタ部531の入力側には、磁気センサ70、従動センサ81およびスリーブセンサ82が接続されている。また、フィルタ部531の出力側には、相対位置算出部532が接続されている。
【0096】
フィルタ部531は、従動センサ81から出力される第1回転信号およびスリーブセンサ82から出力される第2回転信号に基づいて除去する周波数を変化させることができる。ここで、フィルタ部531が除去する所定の周波数以上の周波数成分のうち、最も低い周波数の値をハイカットオフ周波数と呼び、フィルタ部531が除去する所定の周波数以下の周波数成分のうち、最も高い周波数の値をローカットオフ周波数と呼ぶ。フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数およびローカットオフ周波数を第1回転信号および第2回転信号に基づいて設定する。本実施形態では、ハイカットオフ周波数が上側周波数に対応し、ローカットオフ周波数が下側周波数に対応する。
【0097】
具体的なハイカットオフ周波数およびローカットオフ周波数の設定方法について説明する。
【0098】
上述したように、磁気センサ70が出力する位置信号RSは、周期的に変化する複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対的な位置関係に基づいている。また、磁気センサ70が出力する位置信号RSは、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との回転数差、すなわち、従動部材20とスリーブ30との回転数差に基づいている。
【0099】
このため、磁気センサ70が出力する位置信号RSは、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が大きい側に設けられた凸部の磁気センサ70に対向する凸部が変移する時間よりも短い時間でその信号値が変化しないはずである。すなわち、磁気センサ70が出力する位置信号RSの周期は、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が大きい側の凸部の周期より短くなる。
【0100】
また、磁気センサ70が出力する位置信号RSは、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が小さい側に設けられた凸部の磁気センサ70に対向する凸部が変移する時間より遅い時間でその信号値が変化しないはずである。すなわち、磁気センサ70が出力する位置信号RSの周期は、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が小さい側の凸部の周期より長くなる。
【0101】
なお、磁気センサ70に対向する第1凸部241が変移する時間とは、従動部材20の回転によって磁気センサ70に対向する第1凸部241が、所定の第1凸部241から当該所定の第1凸部241の隣の第1凸部241に変移するまでの時間である。磁気センサ70に対向する第1凸部241が変移する時間を第1凸部241の周期とも呼ぶことができる。
【0102】
また、磁気センサ70に対向する第2凸部321が変移する時間とは、スリーブ30の回転によって磁気センサ70に対向する第2凸部321が、所定の第2凸部321から当該所定の第2凸部321の隣の第2凸部321に変移するまでの時間である。磁気センサ70に対向する第2凸部321が変移する時間を第2凸部321の周期とも呼ぶことができる。
【0103】
従動部材20およびスリーブ30それぞれの所定の凸部が磁気センサ70に対向する状態から当該所定の凸部の隣の凸部が磁気センサ70に対向する状態に変移するまでの時間を1周期とする。そして、磁気センサ70が出力する位置信号RSの周期は、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が大きい側の凸部の周期より小さい。また、磁気センサ70が出力する位置信号RSの周期は、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が小さい側の凸部の周期より大きい。
【0104】
したがって、フィルタ部531は、位置信号RSにおいて、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が大きい側に設けられた凸部の磁気センサ70に対向する凸部が変移する時間より速い周波数成分の信号を高周波ノイズとして除去する。また、フィルタ部531は、位置信号RSにおいて、回転する従動部材20およびスリーブ30のうちの回転数が小さい側に設けられた凸部の磁気センサ70に対向する凸部が変移する時間より遅い周波数成分の信号を低周波ノイズとして除去する。
【0105】
ところで、ドグクラッチ10は、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311との係合状態を切り替えることで、走行駆動源51と車両の車軸との接続状態および未接続状態を切り替えるものである。そして、従動部材20は、車両の車軸を介して不図示の車輪Wへ接続されている。このため、従動部材20の第1軸部材21および第1ギア部22に設けられた第1凸部241は、車輪Wと一体に、車輪Wと同じ回転数で回転する。これに対して、スリーブ30は、駆動部材40を介して車両走行用のモータである走行駆動源51に接続されている。このため、スリーブ30の第2ギア部31に設けられた第2凸部321および駆動部材40の第3軸部材41は、モータと一体に、車両走行用のモータと同じ回転数で回転する。
【0106】
そして、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない状態で従動部材20およびスリーブ30が互いに異なる回転数で回転する場合、一般的に、車輪Wは、車両走行用のモータの回転数より大きい回転数で回転する。そして、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない状態から噛合わせる状態へ変移させるにあたり、車両走行用のモータの回転数を車輪Wの回転数まで増加させる。すなわち、第2ギア歯311の回転数が第1ギア歯231の回転数と同じ速度となるように車両走行用のモータの回転数を増加させる。換言すれば、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない状態から噛合う状態へ変移させるにあたり、第1ギア歯231の回転数に第2ギア歯311の回転数を合わせる必要がある。
【0107】
このように動作するドグクラッチ10では、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない状態では、従動部材20およびスリーブ30のうち、従動部材20が回転数が大きい側となる。そして、スリーブ30が回転数が小さい側となる。
【0108】
したがって、フィルタ部531は、磁気センサ70が出力する位置信号RSにおいて、回転する従動部材20に設けられた第1凸部241の周期より速い周波数成分の信号を高周波ノイズとして除去する。また、フィルタ部531は、磁気センサ70が出力する位置信号RSにおいて、回転するスリーブ30に設けられた第2凸部321の周期より遅い周波数成分の信号を低周波ノイズとして除去する。
【0109】
具体的に、フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数を、例えば、以下の数式F2を用いて求められる。
【0110】
ハイカットオフ周波数=第1軸部材21の回転数×第1凸部241の数量×係数k1 …(F2)
第1軸部材21の回転数は、従動センサ81によって検出される。また、本実施形態では、第1凸部241の数量は12個である。そして、係数k1は、ハイカットオフ周波数を求めるために予め定められる係数であって、ハイカットオフ周波数が磁気センサ70に対向する第1凸部241の周期以上になるように設定される。具体的に、係数k1は、「1」以上の値であって、例えば、「1.1」で設定される。なお、係数k1の値は、「1.1」に限定されるものでなく、「1」以上の値であれば「1.1」とは異なる値で設定されてもよい。
【0111】
また、フィルタ部531は、ローカットオフ周波数を、例えば、以下の数式F3を用いて求められる。
【0112】
ローカットオフ周波数=第3軸部材41の回転数×第2凸部321の数量×係数k2 …(F3)
第3軸部材41の回転数は、スリーブセンサ82によって検出される。また、本実施形態では、第2凸部321の数量は、第1凸部241の数量と同じ12個である。そして、係数k2は、ローカットオフ周波数を求めるために予め定められる係数であって、ローカットオフ周波数が磁気センサ70に対向する第2凸部321の周期以下になるように設定される。具体的に、係数k2は、「1」以下の値であって、例えば、「0.9」で設定される。なお、係数k2の値は、「0.9」に限定されるものでなく、「1」以下の値であれば「0.9」と異なる値で設定されてもよい。
【0113】
これにより、フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数を、従動部材20の回転数に応じて周波数が変化する高周波ノイズの周波数に対応させることができる。また、フィルタ部531は、ローカットオフ周波数を、駆動部材40の回転数に応じて変化する低周波ノイズの周波数に対応させることができる。
【0114】
このようにハイカットオフ周波数およびローカットオフ周波数を変化させることで、フィルタ部531は、磁気センサ70から出力される位置信号RSからハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去する。そして、フィルタ部531は、図13に示すように、磁気センサ70から出力される位置信号RSから係合タイミングを特定するために必要な周波数成分の信号を抽出することができる。
【0115】
フィルタ部531は、磁気センサ70から出力された位置信号RSのうち、ハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去したフィルタ信号FSを相対位置算出部532に出力する。フィルタ部531から相対位置算出部532に出力されるフィルタ信号FSは、図14に示すように、周期的に値が変化するうなりを持った波形である。
【0116】
相対位置算出部532は、フィルタ部531から出力されるフィルタ信号FSに基づいて係合タイミングを特定する。具体的に、相対位置算出部532は、図14に示すように、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ率がゼロに収束することでフィルタ信号FSの振幅変化が所定値以下となるタイミングを係合タイミングとして特定する。そして、制御装置53は、相対位置算出部532が特定した係合タイミングに基づいて駆動部材40の作動を制御する。
【0117】
具体的に、制御装置53は、相対位置算出部532が係合タイミングを求めると、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へ変位するように、直動機器52のアクチュエータ522を制御する。そして、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合わされて、従動部材20とスリーブ30とが一体に回転可能な接続状態となると、走行駆動源51と車両の車軸とが接続されて車両走行用のモータから出力される動力が車両の車軸へ伝達される。
【0118】
以上の如く、本実施形態の位置検出装置60は、回転する第1ギア歯231と回転する第2ギア歯311との相対的な位置関係に応じた信号を、周波数成分を含む位置信号RSとして出力する磁気センサ70を備える。また、位置検出装置60は、従動部材20の回転数に応じた第1回転信号を出力する従動センサ81と、スリーブ30および駆動部材40の回転数に応じた第2回転信号を出力するスリーブセンサ82と、を備える。さらに、位置検出装置60は、位置信号RSからハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去したフィルタ信号FSを出力するフィルタ部531を備える。フィルタ部531は、従動センサ81が出力する第1回転信号に基づいてハイカットオフ周波数を変化させるとともに、第2軸センサが出力する第2回転信号に基づいてローカットオフ周波数を変化させる。
【0119】
これによれば、フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数を、従動部材20の回転数に応じて周波数が変化する高周波ノイズの周波数に対応させることができる。また、フィルタ部531は、ローカットオフ周波数を、駆動部材40の回転数に応じて変化する低周波ノイズの周波数に対応させることができる。したがって、位置検出装置60は、従動部材20とスリーブ30との相対位置を精度良く検出することができる。
【0120】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0121】
(1)上記実施形態では、フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分をデジタル処理によって除去するデジタルバンドパスフィルタで構成されている。
【0122】
ここで、仮に、フィルタ部531がハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去させるアナログ回路を有するアナログフィルタによって構成されているとする。この場合、フィルタ部531は、変化する高周波ノイズのパターンに応じてコンデンサやコイルなどを含むアナログ回路を複数設けて、さらに、変化する低周波ノイズのパターンに応じてコンデンサやコイルなどを含むアナログ回路を複数設けることが必要となる。これは、フィルタ部531の構成部品の増加およびフィルタ部531の大型化の要因となるため、好ましくない。
【0123】
これに対して、フィルタ部531がデジタルバンドパスフィルタによって構成されている本実施形態によれば、フィルタ部531がアナログフィルタで構成される場合に比較して、フィルタ部531の構成部品を減少させるとともに小型化できる。
【0124】
(2)上記実施形態では、従動センサ81は、第1軸部材21の回転数を検出することで直接従動部材20の回転数を検出する。スリーブセンサ82は、第3軸部材41の回転数を検出することで直接スリーブ30の回転数を検出する。
【0125】
これによれば、従動センサ81が従動部材20の回転数を間接的に検出する構成に比較して、フィルタ部531がハイカットオフ周波数を演算する際の演算処理の負担を除去することができる。また、スリーブセンサ82がスリーブ30の回転数を間接的に検出する構成に比較して、フィルタ部531がローカットオフ周波数を演算する際の演算処理の負担を除去することができる。
【0126】
(3)上記実施形態では、フィルタ部531は、車両に適用される動力伝達装置1の作動を制御する制御装置53によって構成されている。
【0127】
ところで、一般的に、動力伝達装置1が車両に適用される場合、当該車両は、動力伝達装置1の作動を制御する電子制御部を備える。このため、フィルタ部531を当該電子制御部である制御装置53によって構成することによって、フィルタ部531の処理を実行するための電子制御部を、制御装置53とは別に車両に搭載する必要をなくすことができる。
【0128】
(4)上記実施形態では、従動部材20およびスリーブ30は、第1ギア歯231および第2ギア歯311が噛み合って一体に回転可能である。位置検出装置60は、フィルタ部531が出力するフィルタ信号FSに基づいて、第1ギア歯231および第2ギア歯311が噛み合い可能な係合タイミングを求める相対位置算出部532を備える。
【0129】
これによれば、位置検出装置60は、フィルタ部531によって第1ギア部22および第2ギア部31のガタに起因するノイズを除去したフィルタ信号FSに基づいて係合タイミングを求めることができる。このため、位置検出装置60は、係合タイミングを精度良く求めることができる。
【0130】
(5)上記実施形態では、磁気センサ70は、回転する第1ギア歯231と回転する第2ギア歯311との相対的な位置関係によって変化する磁束の変化を検出する磁気検出素子72を含んでいる。
【0131】
これによれば、第1凸部241および第2凸部321近傍の磁束変化を磁気検出素子72の検出対象としており、磁気検出素子72の出力が第1ギア部22および第2ギア部31のギア形状に依存しない。このため、第1ギア部22および第2ギア部31のギア形状に応じた位置検出装置60のカスタマイズが不要となる。
【0132】
また、磁気検出素子72は、互いに直交する2軸の磁束密度を検出し、磁気検出素子72を通過する磁束の向きを出力するようになっている。これによれば、例えば、第1凸部241および第2凸部321と磁気回路部71との間隔が拡大して、磁気検出素子72を通過する磁束の強度が小さくなった場合でも、磁束の変化を適切に検出することができる。
【0133】
したがって、フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数を高周波ノイズの周波数にさらに対応させることができるとともにローカットオフ周波数を低周波ノイズの周波数にさらに対応させることができる。
【0134】
また、位置検出装置60は、第1凸部241および第2凸部321といった2つのターゲットの相対的な位置関係を単一の磁気センサ70で検出するので、狭いスペースに配置することができ、搭載性に優れる。
【0135】
ここで、位置検出装置60は、第1凸部241および第2凸部321の相対的な位置関係を複数のセンサによって検出するように構成されていてもよい。但し、本実施形態の如く単一のセンサを用いた方が出力値の演算量が少なく、応答性に優れるので、位置検出装置60は、本実施形態の如く構成されている方が望ましい。
【0136】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図15を参照して説明する。本実施形態では、動力伝達装置1がディファレンシャルギア3および変速機5を備える点が第1実施形態と相違している。また、本実施形態では、従動センサ81およびスリーブセンサ82の構成が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0137】
図15に示すように、動力伝達装置1は、ディファレンシャルギア3および変速機5を備える。ディファレンシャルギア3は、従動部材20の第1軸部材21に接続されており、第1軸部材21とドライブシャフト4との間に設けられている。変速機5は、スリーブ30と一体に回転する駆動部材40の第3軸部材41に接続されており、第3軸部材41とモータ軸6との間に設けられている。
【0138】
ディファレンシャルギア3は、走行駆動源51から出力される動力を車両の右側の車輪Wおよび不図示の左側の車輪に伝達しつつ、右側の車輪Wの回転数と不図示の左側の車輪の回転数の差を吸収するものである。ディファレンシャルギア3は、入力側に第1軸部材21が接続され、出力側にドライブシャフト4が接続されている。ディファレンシャルギア3は、不図示の歯車機構を有し、第1軸部材21の回転数を、歯車機構によって予め定められる変速比で変換して第1軸部材21の回転数とは異なる回転数でドライブシャフト4を回転させる。
【0139】
これにより、ドライブシャフト4は、第1軸部材21および第1ギア部22とは異なる回転数で車輪Wと一体に回転する。車輪Wには、車輪Wの回転数を検出する車輪センサ83が設けられている。本実施形態では、ディファレンシャルギア3が第1変換部に対応し、ドライブシャフト4が第3回転部材に対応する。
【0140】
変速機5は、走行駆動源51である車両走行用のモータの回転数を増減させて車輪Wに伝達するものである。変速機5は、入力側にモータ軸6が接続され、出力側に第3軸部材41が接続されている。そして、変速機5は、不図示の歯車機構を有し、モータ軸6の回転数を、歯車機構によって予め定められる変速比で変換してモータ軸6の回転数とは異なる回転数で第3軸部材41を回転させる。
【0141】
これにより、第3軸部材41は、モータ軸6とは異なる回転数でスリーブ30の第2ギア部31と一体に回転する。換言すれば、変速機5は、第3軸部材41の回転数を変換してモータ軸6に伝達する。モータ軸6には、モータ軸6の回転数を検出するモータセンサ84が設けられている。本実施形態では、変速機5が第2変換部に対応し、モータ軸6が第4回転部材に対応する。
【0142】
本実施形態では、第1実施形態に比較して従動センサ81が廃されており、従動センサ81の代わり車輪センサ83が設けられている。車輪センサ83は、ドライブシャフト4と同じ回転数で回転する車輪Wの回転数を検出する。車輪センサ83は、例えば、エンコーダを採用することができる。車輪センサ83は、車輪Wの回転数を検出することで、間接的に従動部材20の回転数を検出する。車輪センサ83は、検出した車輪Wの回転数に応じた第1回転信号を制御装置53のフィルタ部531に出力する。本実施形態では、車輪センサ83が第1回転センサとして機能する。
【0143】
また、本実施形態では、第1実施形態に比較してスリーブセンサ82が廃されており、スリーブセンサ82の代わりモータセンサ84が設けられている。モータセンサ84は、モータ軸6の回転数を検出する。モータセンサ84は、例えば、レゾルバを採用することができる。モータセンサ84は、モータ軸6の回転数を検出することで、第3軸部材41と一体に回転するスリーブ30の回転数を間接的に検出する。モータセンサ84は、検出したモータ軸6の回転数に応じた第2回転信号を制御装置53のフィルタ部531に出力する。本実施形態では、モータセンサ84が第2回転センサとして機能する。
【0144】
フィルタ部531は、車輪センサ83が出力する第1回転信号およびディファレンシャルギア3の歯車機構によって予め定められる変速比に基づいて従動部材20の回転数を求める。また、フィルタ部531は、モータセンサ84が出力する第2回転信号および変速機5の歯車機構によって予め定められる変速比に基づいてスリーブ30の回転数を求める。スリーブ30の回転数は第3軸部材41の回転数と等しいものである。
【0145】
そして、フィルタ部531は、求めた従動部材20の回転数および数式F2を用いてハイカットオフ周波数を求めるとともに、求めたスリーブ30の回転数および数式F3を用いてローカットオフ周波数を求める。
【0146】
これにより、フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数を、従動部材20の回転数に応じて周波数が変化する高周波ノイズの周波数に対応させることができる。また、フィルタ部531は、ローカットオフ周波数を、スリーブ30および駆動部材40の回転数に応じて変化する低周波ノイズの周波数に対応させることができる。
【0147】
以上の如く、本実施形態の車輪センサ83は、車輪Wの回転数を検出することで間接的に従動部材20の回転数を検出する。また、モータセンサ84は、モータ軸6の回転数を検出することで、間接的にスリーブ30の回転数を検出する。
【0148】
ところで、一般的に、位置検出装置60が車両に適用される場合、当該車両には、車輪Wの回転数を検出する車輪センサ83およびモータ軸6の回転数を検出するモータセンサ84が設けられる。このため、従動部材20の回転数を、当該車輪センサ83を用いて間接的に検出することで、従動部材20の回転数を検出するための専用の回転センサを車両に搭載する必要をなくすことができる。また、スリーブ30の回転数を、当該モータセンサ84を用いて間接的に検出することで、スリーブ30の回転数を検出するための専用の回転センサを車両に搭載する必要をなくすことができる。
【0149】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図16図17を参照して説明する。本実施形態では、相対位置算出部532が係合タイミングを特定する際の特定方法が第1実施形態と相違している。そして、これに伴い、相対位置算出部532の構成が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0150】
本実施形態の相対位置算出部532は、図16に示すように、二値化処理部5321および係合タイミング検出部5322を含んでいる。そして、本実施形態の二値化処理部5321および係合タイミング検出部5322は、動力伝達装置1の作動を制御する制御装置53に含まれている。二値化処理部5321および係合タイミング検出部5322は、制御装置53のメモリMに記憶されたコンピュータプログラムによって実行される。
【0151】
二値化処理部5321は、フィルタ部531が出力するフィルタ信号FSをハイ信号およびロー信号に二値化したパルス信号PSにして出力するものである。二値化処理部5321は、図17に示すように、フィルタ部531が出力するフィルタ信号FSのうち、第1凸部241と第2凸部321との相対的な位置関係を示す電圧値が予め定められるオン判定値以上の値の信号をハイ信号とする。そして、二値化処理部5321は、フィルタ部531が出力するフィルタ信号FSのうち、第1凸部241と第2凸部321との相対的な位置関係を示す電圧値がオン判定値より小さい値の信号をロー信号とする。これにより、フィルタ部531から出力されるうなりをもった出力波形が、図17に示すパルス信号PSに変換される。二値化処理部5321は、フィルタ信号FSから変換したパルス信号PSを係合タイミング検出部5322に出力する。
【0152】
係合タイミング検出部5322は、二値化処理部5321が出力するパルス信号PSに基づいて、係合タイミングを特定するものである。具体的に、図18に示すように、係合タイミング検出部5322は、二値化処理部5321が出力するパルス信号PSから各ハイ信号それぞれの間隔を求める。ここで、係合タイミング検出部5322が検出する各ハイ信号の間隔を信号間隔Aとする。係合タイミング検出部5322は、検出した信号間隔Aを、当該検出した信号間隔Aの1つ前の信号間隔Aと比較し、検出した信号間隔Aと1つ前の信号間隔Aとの時間差に基づいて検出した信号間隔A内に係合タイミングが含まれるか否かを判定する。
【0153】
具体的に、係合タイミング検出部5322は、例えば、信号間隔Aが以下の条件F4を満たすか否かに基づいて、信号間隔A内に係合タイミングが含まれるか否かを判定する。
【0154】
n-1×k3<A…(F4)
数式F4におけるnは自然数を示し、信号間隔An-1は信号間隔Aの1つ前の信号間隔Aを示す。また、係数k3は、信号間隔A内に係合タイミングが含まれるか否かを判定するために予め定められる係数であって、検出した信号間隔Aが当該検出した信号間隔Aの1つ前の信号間隔Aより充分に長くなったか否かを判定可能な値に設定される。具体的に、係数k3は、「1」より大きい値であって、例えば、「1.5」で設定される。なお、係数k3の値は、「1.5」に限定されるものでなく、検出した信号間隔Aが当該検出した信号間隔Aの1つ前の信号間隔Aより長くなったか否かを判定可能となる「1」より大きい値であれば「1.5」とは異なる値で設定されてもよい。
【0155】
そして、係合タイミング検出部5322は、信号間隔Aが上記の条件F4を満たすと判定する場合、信号間隔A内に係合タイミングが存在すると判定し、信号間隔Aの中心のタイミングを係合タイミングとして特定する。これに対して、係合タイミング検出部5322は、信号間隔Aが上記の条件F4を満たさないと判定する場合、信号間隔A内に係合タイミングが存在しないと判定する。そして、制御装置53は、係合タイミング検出部5322が特定した係合タイミングに基づいて駆動部材40の作動を制御する。
【0156】
このように、パルス信号PSにおけるオン信号の間隔によって係合タイミングを求めることができる。これによれば、フィルタ信号FSの振幅変化が所定値以下となるタイミングを係合タイミングとして特定する場合に比較して、係合タイミングを特定する際の演算処理の負担を除去することができる。
【0157】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図19図20を参照して説明する。本実施形態では、相対位置算出部532が係合タイミングを特定する際の特定方法が第3実施形態と相違している。そして、これに伴い、相対位置算出部532に検波処理部5323が追加されている点が第3実施形態と相違している。これ以外は、第3実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第3実施形態と異なる部分について主に説明し、第3実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0158】
本実施形態の相対位置算出部532は、図19に示すように、二値化処理部5321および係合タイミング検出部5322に加えて検波処理部5323を含んでいる。本実施形態の検波処理部5323は、動力伝達装置1の作動を制御する制御装置53に含まれている。検波処理部5323は、制御装置53のメモリMに記憶されたコンピュータプログラムによって実行される。
【0159】
検波処理部5323は、フィルタ部531が出力するフィルタ信号FSに対して検波処理を行うものである。具体的に、検波処理部5323は、図20に示すように、フィルタ部531が出力する電圧値ゼロを中心としたプラス側とマイナス側とを往復するフィルタ信号FSを、絶対値化する。具体的に、検波処理部5323は、フィルタ部531が出力するフィルタ信号FSにおけるマイナス側の信号値をプラス側の信号値に変換する。すなわち、フィルタ部531は、検波処理を行うことによって、フィルタ信号FSを、フィルタ信号FSにおけるマイナス側の電圧値で示される信号をプラス側の電圧値で示した信号に変換する。
【0160】
これにより、フィルタ信号FSは、プラス側の電圧値のみで示される信号に変換される。以下、フィルタ信号FSからプラス側の電圧値のみで示される信号に変換された信号を検波後信号DSと呼ぶ。フィルタ部531は、フィルタ信号FSに対して検波処理した検波後信号DSを二値化処理部5321に出力する。
【0161】
二値化処理部5321は、検波処理部5323が出力する検波後信号DSに対して第4実施形態で説明した処理と同じ処理を行うことによって、検波後信号DSをハイ信号およびロー信号に二値化したパルス信号PSにして出力する。二値化処理部5321は、図20に示すように、検波処理部5323が出力する検波後信号DSのうち、オン判定値以上の値の信号をハイ信号とし、オン判定値より小さい値の信号をロー信号とする。二値化処理部5321は、検波後信号DSから変換したパルス信号PSを係合タイミング検出部5322に出力する。
【0162】
ここで、検波後信号DSは、検波処理によってフィルタ信号FSに比較して、プラス側のハイ信号が多くなっている。このため、二値化処理部5321によって検波後信号DSをパルス信号PSに変換した際のハイ信号の数量は、検波処理をしない場合に比較してハイ信号の数量が多くなる。
【0163】
そして、係合タイミング検出部5322は、二値化処理部5321が出力するパルス信号PSに対して第4実施形態で説明した処理と同じ処理を行うことによって、二値化処理部5321が出力するパルス信号PSに基づいて係合タイミングを特定する。具体的に、係合タイミング検出部5322は、二値化処理部5321が出力するパルス信号PSから信号間隔Aを求め、信号間隔Aおよび信号間隔An-1に基づいて信号間隔A内に係合タイミングが含まれるか否かを判定する。そして、係合タイミング検出部5322は、信号間隔A内に係合タイミングが存在すると判定する場合、信号間隔Aの中心のタイミングを係合タイミングとして特定する。そして、制御装置53は、係合タイミング検出部5322が特定した係合タイミングに基づいて駆動部材40の作動を制御する。
【0164】
このように、パルス信号PSにおけるオン信号の間隔によって係合タイミングを求めることができる。これによれば、フィルタ信号FSの振幅変化が所定値以下となるタイミングを係合タイミングとして特定する場合に比較して、係合タイミングを特定する際の演算処理の負担を除去することができる。
【0165】
また、本実施形態では、検波処理部5323が検波処理を実行することによって、二値化処理部5321によって検波後信号DSをパルス信号PSに変換した際のハイ信号の数量は、検波処理をしない場合に比較してハイ信号の数量が多くできる。これにより、検波処理を実行しない場合に比較して係合タイミングを特定し易くできる。
【0166】
如何に、検波処理を実行することによって係合タイミングが特定し易くなる理由について説明する。
【0167】
二値化処理部5321がフィルタ信号FSからハイ信号およびロー信号によって構成されるパルス信号PSを生成するにあたり、オン判定値以上の値の信号をハイ信号とする。ここで、従動部材20の回転数およびスリーブ30の回転数が小さくなるほど、所定時間内に生成されるハイ信号の数量が少なくなる。これは、従動部材20の回転数およびスリーブ30の回転数が小さくなるほど、所定時間が経過するまでに磁気センサ70を通過する第1凸部241および第2凸部321の数量が少なくなるためである。そしてこの結果、従動部材20の回転数およびスリーブ30の回転数が小さくなるほど、係合タイミング検出部5322がパルス信号PSから検出するそれぞれの信号間隔Aが大きくなる。
【0168】
ところで、係合タイミング検出部5322が検出する係合タイミングは、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ率がゼロに収束することでフィルタ信号FSの振幅変化が所定値以下となるタイミングである。このため、比較的狭い間隔でハイ信号およびロー信号が繰り返す状態から、ハイ信号が存在しなくなることでロー信号の出力が比較的長い時間継続される状態になるタイミングが係合タイミングである。すなわち、検出した信号間隔Aが当該検出した信号間隔Aの1つ前の信号間隔Aよりある程度長い場合に係合タイミングを特定することができる。
【0169】
しかし、従動部材20の回転数およびスリーブ30の回転数が小さくなることで信号間隔Aが大きくなると、検出した信号間隔Aと当該検出した信号間隔Aの1つ前の信号間隔Aとの時間差に基づいて係合タイミングの特定がし難くなる。例えば、1つ前の信号間隔Aに比較して新たに検出した信号間隔Aが大きくなる場合であっても、信号間隔Aの増加が複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ率がゼロに収束することに起因するものか否かの判定がし難くなる。
【0170】
このため、第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ率がゼロに収束する場合であっても、信号間隔Aが上記の条件F4を満たさなくなることがある。この場合、係合タイミング検出部5322は、信号間隔A内に係合タイミングが存在する場合であっても係合タイミングの存在を検出できない。
【0171】
これに対して、本実施形態の位置検出装置60は、検波処理部5323が検波処理を実行することによって、フィルタ部531が出力するフィルタ信号FSをプラス側の電圧値のみで示された検波後信号DSに変換する。そして、位置検出装置60は、二値化処理部5321が二値化処理を実行することによって検波後信号DSをパルス信号PSに変換する。また、検波処理部5323および二値化処理部5321の処理によって検波後信号DSからパルス信号PSに変換した際のハイ信号の数量は、検波処理をしない場合に比較して数量が多くなっている。
【0172】
このため、従動部材20の回転数およびスリーブ30の回転数が小さくなる場合であっても、ハイ信号の数量が多くなることで信号間隔Aが大きくなり難くなる。すなわち、従動部材20の回転数およびスリーブ30の回転数が小さくなる場合であっても、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ率がゼロに収束しない状態では、信号間隔Aが小さくなる。そして、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ率がゼロに収束するように向かう状態では、信号間隔Aが大きくなる。
【0173】
このため、係合タイミング検出部5322は、検出した信号間隔Aと当該検出した信号間隔Aの1つ前の信号間隔Aとの時間差に基づいて、信号間隔A内に存在する係合タイミングを検出し易くできる。したがって、従動部材20の回転数およびスリーブ30の回転数が小さくなる場合であっても、係合タイミング検出部5322は、係合タイミングの特定をし易くなる。そして、制御装置53は、係合タイミング検出部5322が特定した係合タイミングに基づいて駆動部材40の作動を制御することができる。
【0174】
その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第3実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第3実施形態と同様に得ることができる。
【0175】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図21図25を参照して説明する。本実施形態では、制御装置53にローパスフィルタ部533および係合判定部534が追加されている点が第4実施形態と相違している。これ以外は、第4実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明し、第4実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0176】
本実施形態の位置検出装置60は、図21に示すように、ローパスフィルタ部533および係合判定部534を有する。ローパスフィルタ部533および係合判定部534は、動力伝達装置1の作動を制御する制御装置53に含まれている。ローパスフィルタ部533および係合判定部534は、制御装置53のメモリMに記憶されたコンピュータプログラムによって実行される。ローパスフィルタ部533および係合判定部534は、従動部材20とスリーブ30とが接続された状態を検出ためのものである。
【0177】
ここで、ローパスフィルタ部533および係合判定部534の説明をするにあたり、相対位置算出部532が係合タイミングを求めることでスリーブ30が軸方向Daxの他方側へ変位する際の作動について説明する。
【0178】
相対位置算出部532が係合タイミングを求めると、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へ変位するように、直動機器52のアクチュエータ522を制御する。ここで、第1ギア歯231と第2ギア歯311との噛み合いが可能な係合タイミングになると、複数の第1凸部241のいずれか1つが複数の第2凸部321のいずれか1つと軸方向Daxに重なり合った状態になる。この場合、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれがゼロとなる。
【0179】
複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれがゼロの状態において、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へ変位する前では、磁束角度θorが略ゼロとなる。そして、磁気センサ70は、磁束角度θorが略ゼロを示す位置信号RSを出力する。
【0180】
そして、図22に示すように、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へストロークし始めると、軸方向Daxにおいて第2凸部321が第1凸部241に近づくことで、磁気検出素子72付近における磁束の向きが第1凸部241側に傾く。これにより、磁束角度θorがゼロから大きくなる。磁気センサ70は、磁束角度θorに対応する位置信号RSを出力する。
【0181】
そして、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へさらにストロークして第2凸部321が第1凸部241に近づくにしたがい、磁束角度θorが徐々に大きる。これに伴い、磁気センサ70が出力する電圧値は、図23に示すように、徐々に大きくなる。そして、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へさらにストロークして第1凸部241と第2凸部321とが接すると、従動部材20とスリーブ30とが接続状態となる。すなわち、従動部材20と駆動部材40との係合が完了して、車両走行用のモータから出力される動力が車両の車軸へ伝達可能な状態となる。
【0182】
従動部材20とスリーブ30とが接続状態となると、制御装置53は、スリーブ30の軸方向Daxの他方側への変位が停止するように、直動機器52のアクチュエータ522を制御する。このため、制御装置53は、従動部材20とスリーブ30とが接続状態となったことを検出する必要がある。
【0183】
ここで、上述したように、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へストロークするほど磁気センサ70が出力する位置信号RSが大きくなることから、磁気センサ70の出力値に基づいて従動部材20とスリーブ30との相対位置を検出することができる。また、磁気センサ70の位置信号RSに基づいて従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出することができる。例えば、図23に示すように、磁気センサ70が出力する位置信号RSが所定の接続判定閾値以上になった際に、従動部材20とスリーブ30とが接続状態と判定することができる。
【0184】
しかし、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へストロークする際に磁気センサ70が出力する位置信号RSには、従動部材20およびスリーブ30の回転に伴い、図23に示すように、上下に振幅する波が重畳する。これは、従動部材20およびスリーブ30が回転することによって磁気センサ70と第1凸部241との距離および磁気センサ70と第2凸部321との距離が変化するためである。また、従動部材20およびスリーブ30の軸ずれが生じる場合、当該軸ずれによって磁気センサ70と第1凸部241との距離および磁気センサ70と第2凸部321との距離が変化することで磁気センサ70が出力する出力値にブレが生じる。このため、磁気センサ70が出力する位置信号RSには、従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出するにあたり、不要な周波数成分が含まれる。
【0185】
そして、このような磁気センサ70の出力値に不要は周波数成分が含まれることによって、従動部材20とスリーブ30とが接続状態となる前に磁気センサ70の出力値が接続判定閾値以上になる場合がある。この場合、磁気センサ70が出力する位置信号RSに基づいて従動部材20とスリーブ30との接続状態を判定すると、誤った判定がなされる虞がある。
【0186】
これに対して、本実施形態の制御装置53は、磁気センサ70の位置信号RSから不要な周波数成分を除去し、不要な周波数成分を除去した出力波形に基づいて従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出可能となっている。具体的に、制御装置53は、不要な周波数成分を除去するローパスフィルタ部533と、不要な周波数成分を除去した出力波形に基づいて従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出する係合判定部534とを有する。
【0187】
ローパスフィルタ部533は、磁気センサ70から出力される位置信号RSから所定の周波数以上の周波数成分を除去するローパスフィルタで構成されている。本実施形態のローパスフィルタ部533は、例えば、所定の周波数である除去周波数以上の周波数成分をデジタル処理によって除去することで特定の周波数以下の信号を通過させるデジタルローパスフィルタが採用されている。
【0188】
ローパスフィルタ部533の入力側には、磁気センサ70、従動センサ81およびスリーブセンサ82が接続されている。また、ローパスフィルタ部533の出力側には、係合判定部534が接続されている。
【0189】
ローパスフィルタ部533は、従動センサ81から出力される第1回転信号およびスリーブセンサ82から出力される第2回転信号に基づいて除去する除去周波数を変化させることができる。なお、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へ変位するように制御装置53が直動機器52のアクチュエータ522を制御する場合、従動部材20とスリーブ30との回転数は互いに等しくなるように調整される。
【0190】
このため、従動センサ81から出力される第1回転信号およびスリーブセンサ82から出力される第2回転信号は、同じ回転数を示す。したがって、ローパスフィルタ部533は、従動センサ81から出力される第1回転信号およびスリーブセンサ82から出力される第2回転信号のうちのどちらか一方の回転信号に基づいて除去する除去周波数を変化させてもよい。本実施形態では、ローパスフィルタ部533が従動センサ81から出力される第1回転信号に基づいて除去する除去周波数を変化させる例について説明する。
【0191】
ここで、従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出するにあたり、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へストロークすることによって変化する磁気センサ70の出力値を検出する必要がある。ただし、当該磁気センサ70の出力値には、上述したように、磁気センサ70と第1凸部241との距離および磁気センサ70と第2凸部321との距離の変化や従動部材20およびスリーブ30の軸ずれに起因する周波数成分が重畳する。このため、磁気センサ70の出力値に重畳する周波数成分を除去する必要がある。
【0192】
そして、スリーブ30のストロークのみによって変化する磁気センサ70の出力値の変化は、磁気センサ70と第1凸部241との距離および磁気センサ70と第2凸部321との距離の変化に起因する磁気センサ70の出力値の変化に比較して周波数成分が低い。また、スリーブ30のストロークのみによって変化する磁気センサ70の出力値の変化は、従動部材20およびスリーブ30の軸ずれに起因する磁気センサ70の出力値の変化に比較して周波数成分が低い。
【0193】
このため、ローパスフィルタ部533は、磁気センサ70が出力する位置信号RSから、第1回転信号が示す周波数成分より速い周波数成分を除去する。具体的に、ローパスフィルタ部533は、除去する周波数成分における最も低い周波数である除去周波数を、例えば、以下の数式F5を用いて求める。
【0194】
除去周波数=第1軸部材21の回転周波数×係数k4 …(F5)
第1軸部材21の回転数は、従動センサ81によって検出される。また、係数k4は、除去周波数を求めるために予め定められる係数であって、除去周波数が第1軸部材21の回転数以下になるように設定される。具体的に、係数k4は、「1」以下の値であって、例えば、「0.9」で設定される。なお、係数k4の値は、「0.9」に限定されるものでなく、「1」以下の値であれば「0.9」とは異なる値で設定されてもよい。
【0195】
これにより、ローパスフィルタ部533によって不要な周波数成分が除去された除去後信号KSは、図24に示すように、位置信号RSから上下に振幅する波が除去された波形となる。また、ローパスフィルタ部533は、図25に示すように、除去する除去周波数を、一体に回転する従動部材20およびスリーブ30の回転数に対応させることができる。
【0196】
また、除去周波数を変化させることにより、ローパスフィルタ部533は、磁気センサ70から出力される電圧値から不要な周波数成分を除去する。そして、ローパスフィルタ部533は、磁気センサ70から出力される電圧値から、従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出するために必要な周波数成分の信号を抽出することができる。
【0197】
なお、ローパスフィルタ部533によって抽出される周波数成分は、フィルタ部531によって抽出される周波数成分に比較して、低い周波数成分となる。
【0198】
ローパスフィルタ部533は、磁気センサ70から出力された位置信号RSのうち、除去周波数以上の周波数成分を除去した除去後信号KSを係合判定部534に出力する。
【0199】
係合判定部534は、ローパスフィルタ部533から出力される除去後信号KSに基づいて従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出する。具体的に、係合判定部534は、図24に示すように、除去後信号KSが接続判定閾値以上となると、従動部材20とスリーブ30とが接続されたと判定する。そして、制御装置53は、スリーブ30のストロークを停止させる。具体的に、制御装置53は、係合判定部534によって従動部材20およびスリーブ30が接続状態と判定されると、スリーブ30の軸方向Daxの他方側への変位が停止するように、直動機器52のアクチュエータ522を制御する。
【0200】
その他の構成は、第4実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第3実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第4実施形態と同様に得ることができる。
【0201】
また、本実施形態の位置検出装置60は、位置信号RSから除去周波数以上の周波数成分を除去するローパスフィルタ部533および従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出する係合判定部534を備える。
【0202】
これによれば、ローパスフィルタ部533は、磁気センサ70に重畳する不要な周波数成分を除去することができる。このため、係合判定部534が従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出する際の検出精度を向上させることができる。
【0203】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0204】
(1)上記実施形態では、ローパスフィルタ部533は、従動センサ81が出力する第1回転信号に基づいて除去周波数を変化させる。
【0205】
これによれば、ローパスフィルタ部533は、除去周波数を、従動部材20およびスリーブ30の回転数に対応させることができる。したがって、係合判定部534は、従動部材20とスリーブ30との接続状態を検出する際の検出精度をさらに向上させることができる。
【0206】
(2)上記実施形態では、ローパスフィルタ部533は、除去周波数以上の周波数成分をデジタル処理によって除去するデジタルバンドパスフィルタで構成されている。
【0207】
これによれば、ローパスフィルタ部533がアナログフィルタで構成される場合に比較して、ローパスフィルタ部533の構成部品を減少させるとともに小型化できる。
【0208】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、図26を参照して説明する。本実施形態では、ローパスフィルタ部533の構成が第5実施形態と相違している。これ以外は、第5実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について主に説明し、第5実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0209】
本実施形態のローパスフィルタ部533は、除去周波数以上の周波数成分をアナログ処理によって除去するアナログフィルタによって構成されている。具体的に、ローパスフィルタ部533は、除去周波数以上の周波数成分を除去するアナログ回路5331を有する。アナログ回路5331は、磁気センサ70から出力される位置信号RSから予め定められる除去周波数以上の周波数成分を除去するローパスフィルタである。
【0210】
アナログ回路5331は、複数の電子部品によって構成される。アナログ回路5331は、例えば、図26に示すように、抵抗RとコンデンサCとが組み合わされて構成される。そして、アナログ回路5331は、除去する周波数帯域に応じて、抵抗Rの抵抗値と、コンデンサCの静電容量とが設定される。予め抵抗値が定められる抵抗Rと、予め静電容量が定められるコンデンサCとによって構成されるアナログ回路5331を含むローパスフィルタ部533は、除去する周波数成分が固定される。
【0211】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0212】
また、本実施形態のローパスフィルタ部533は、予め抵抗値が定められる抵抗Rと、予め静電容量が定められるコンデンサCとによって構成されるアナログ回路5331を含む。そして、ローパスフィルタ部533は、除去周波数以上の周波数成分をアナログ処理によって除去する。
【0213】
これによれば、ローパスフィルタ部533が除去周波数以上の周波数成分をデジタル処理によって除去するデジタルフィルタによって構成される場合に比較して、ローパスフィルタ部533の構成を簡易にできる。
【0214】
その他の構成は、第6実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第6実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第6実施形態と同様に得ることができる。
【0215】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、図27図28を参照して説明する。本実施形態では、フィルタ部531の構成が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0216】
本実施形態のフィルタ部531は、ハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分をアナログ処理によって除去するアナログフィルタによって構成されている。具体的に、フィルタ部531は、ハイカットオフ周波数以上の周波数成分を除去するとともにローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去させる複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dを有する。
【0217】
複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dは、磁気センサ70から出力される位置信号RSから予め定められる周波数以上の周波数成分を除去するとともに予め定められる周波数以下の周波数成分を除去するバンドパスフィルタである。複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dそれぞれがカットする周波数は、互いに異なる周波数で設定される。このため、複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dそれぞれは、磁気センサ70から出力される位置信号RSから互いに異なる周波数を除去することで、異なる周波数帯域の周波数成分を通過させる。
【0218】
複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dは、複数の電子部品によって構成される。複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dは、例えば、図28に示すように、抵抗Rと、コイルLと、コンデンサCとが組み合わされて構成される。そして、複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dそれぞれは、除去する周波数帯域に応じて、抵抗Rの抵抗値と、コイルLのインダクタンスと、コンデンサCの静電容量とが設定される。
【0219】
フィルタ部531は、複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dのうち相対位置算出部532に電気的に接続する回路を切り替え可能に構成されている。フィルタ部531は、従動センサ81から出力される第1回転信号およびスリーブセンサ82から出力される第2回転信号に基づいて相対位置算出部532に接続する回路を切り替える。
【0220】
具体的に、フィルタ部531は、上述した数式F2および数式F3によってハイカットオフ周波数およびローカットオフ周波数を求める。そして、フィルタ部531は、求めたハイカットオフ周波数およびローカットオフ周波数に基づいて複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dのうち相対位置算出部532に接続する回路を切り替える。フィルタ部531は、除去する周波数成分が求めたハイカットオフ周波数およびローカットオフ周波数に近づくように複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dのうち相対位置算出部532に接続する回路を選択する。
【0221】
なお、フィルタ部531が有する複数のバンドパス回路531a、531b、531c、531dは複数であれば4つより少なくてもよいし、4つ多くてもよい。
【0222】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0223】
また、フィルタ部531は、従動部材20およびスリーブ30それぞれの回転数に応じて、高周波側および低周波側それぞれの除去する周波数成分を変更することができる。そして、フィルタ部531は、磁気センサ70から出力される位置信号RSから係合タイミングを特定するために必要な周波数成分の信号を抽出することができる。したがって、位置検出装置60は、従動部材20とスリーブ30との相対位置の検出精度を向上させることができる。
【0224】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、図29を参照して説明する。本実施形態では、フィルタ部531の構成が第7実施形態と相違している。これ以外は、第7実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明し、第7実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0225】
本実施形態のフィルタ部531はハイカットオフ周波数以上の周波数成分を除去する複数のローパス回路531e、531fと、ローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去させる複数のハイパス回路531g、531hとを有する。
【0226】
複数のローパス回路531e、531fは、磁気センサ70から出力される位置信号RSから予め定められる周波数以上の周波数成分を除去するローパスフィルタである。複数のローパス回路531e、531fそれぞれがカットする周波数は、互いに異なる周波数で設定される。このため、複数のローパス回路531e、531fは、磁気センサ70から出力される位置信号RSから互いに異なる周波数以上の周波数成分を除去する。
【0227】
複数のハイパス回路531g、531hは、磁気センサ70から出力される位置信号RSから予め定められる周波数以下の周波数成分を除去するハイパスフィルタである。複数のハイパス回路531g、531hそれぞれがカットする周波数は、互いに異なる周波数で設定される。このため、複数のハイパス回路531g、531hは、磁気センサ70から出力される位置信号RSから互いに異なる周波数以下の周波数成分を除去する。
【0228】
複数のローパス回路531e、531fおよび複数のハイパス回路531g、531hは、複数の電子部品によって構成される。複数のローパス回路531e、531fは、例えば、図26で示したアナログ回路5331と同様に、抵抗RとコンデンサCとが組み合わされて構成される。複数のローパス回路531e、531fは、除去する周波数帯域に応じて、抵抗Rの抵抗値と、コンデンサCの静電容量とが設定される。
【0229】
複数のハイパス回路531g、531hは、例えば、図30に示すように、抵抗RとコイルLとが組み合わされて構成される。複数のハイパス回路531g、531hは、除去する周波数帯域に応じて、抵抗Rの抵抗値と、コイルLのインダクタンスとが設定される。
【0230】
フィルタ部531は、複数のローパス回路531e、531fおよび複数のハイパス回路531g、531hのうち相対位置算出部532に電気的に接続する回路を切り替え可能に構成されている。
【0231】
具体的に、フィルタ部531は、上述した数式F2によってハイカットオフ周波数を求め、求めたハイカットオフ周波数に基づいて複数のローパス回路531e、531fのうち相対位置算出部532に接続する回路を切り替える。フィルタ部531は、除去する周波数成分が求めたハイカットオフ周波数に近づくように、ローパス回路531e、531fのうち相対位置算出部532に接続する回路を選択する。
【0232】
また、フィルタ部531は、上述した数式F3によってローカットオフ周波数を求め、求めたローカットオフ周波数に基づいて複数のハイパス回路531g、531hのうち相対位置算出部532に接続する回路を切り替える。フィルタ部531は、除去する周波数成分が求めたローカットオフ周波数に近づくように、ハイパス回路531g、531hのうち相対位置算出部532に接続する回路を選択する。
【0233】
なお、フィルタ部531が有する複数のローパス回路531e、531fは3つ以上であってもよい。また、フィルタ部531が有する複数のハイパス回路531g、531hの数量は、3つ以上であってもよい。
【0234】
その他の構成は、第7実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第7実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第7実施形態と同様に得ることができる。
【0235】
また、フィルタ部531は、従動部材20およびスリーブ30それぞれの回転数に応じて、高周波側および低周波側それぞれの除去する周波数成分を変更することができる。そして、フィルタ部531は、磁気センサ70から出力される位置信号RSから係合タイミングを特定するために必要な周波数成分の信号を抽出することができる。したがって、位置検出装置60は、従動部材20とスリーブ30との相対位置の検出精度を向上させることができる。
【0236】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、図31を参照して説明する。本実施形態では、相対位置算出部532が係合タイミングを特定する際の特定方法が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0237】
相対位置算出部532は、フィルタ部531から出力されるフィルタ信号FSに基づいて係合タイミングを特定する。具体的に、相対位置算出部532は、図31に示すように、フィルタ信号FSに対してヒルベルト変換を実行して包絡線ELを生成し、当該包絡線ELにおける振幅の中心に至るタイミングを係合タイミングとして特定する。そして、制御装置53は、相対位置算出部532が特定した係合タイミングに基づいて駆動部材40の作動を制御する。
【0238】
このように、フィルタ信号FSに基づいて包絡線ELを生成することで係合タイミングを求めることができる。ここで、包絡線ELで示す信号の絶対値は、複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ量である。このため、包絡線ELによって、ゼロ以外の複数の第1凸部241と複数の第2凸部321との相対角度のずれ量を検出することができる。
【0239】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0240】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態について、図32を参照して説明する。本実施形態では、フィルタ部531が制御装置53に含まれていない点が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0241】
本実施形態の磁気センサ70は、図32に示すように、制御装置53と別体で構成されており、磁気回路部71、磁気検出素子72、磁気回路部71および磁気検出素子72を収容する収容部73を有する。そして、フィルタ部531は、磁気センサ70の収容部73に収容されている。フィルタ部531は、従動センサ81が出力する第1回転信号に基づいてハイカットオフ周波数を設定するとともに、スリーブセンサ82が出力する第2回転信号に基づいてローカットオフ周波数を設定する。フィルタ部531は、磁気センサ70から出力される位置信号RSからハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去し、制御装置53の相対位置算出部532へ出力する。
【0242】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0243】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態について、図33図42を参照して説明する。本実施形態では、第1凸部241および第2凸部321の相対的な位置関係を2つのセンサによって検出するように構成されている点が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0244】
本実施形態の位置検出装置60は、図33および図34に示すように、第1凸部241を検出する第1磁気センサ75および第2凸部321を検出する第2磁気センサ76を有する。
【0245】
第1磁気センサ75は、第1凸部241の位置関係を示す“物理量”を検出する“センサ”である。本実施形態の第1磁気センサ75は、従動部材20の回転によって変化する磁束の変化を検出する。第2磁気センサ76は、第2凸部321の位置関係を示す“物理量”を検出する“センサ”である。本実施形態の第2磁気センサ76は、スリーブ30の回転によって変化する磁束の変化を検出する。
【0246】
第1磁気センサ75および第2磁気センサ76は、それ自体が磁界を発生させて磁気回路を形成する自励式センサである。本実施形態の第1磁気センサ75および第2磁気センサ76は、不図示の磁気回路部および磁気検出素子を有する。
【0247】
第1磁気センサ75は、径方向Dorにおいて所定の隙間をあけて第1フランジ部24の第1凸部241と対向するように配置される。第1磁気センサ75は、従動部材20が回転して第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との径方向Dorの距離が変化することで第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との間に生じる磁束の変化を検出する。第1磁気センサ75の磁気検出素子は、第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との間に生じる磁束の変化を電圧値として出力する。
【0248】
第1磁気センサ75が出力する電圧値は、例えば、第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との径方向Dorの距離が最も小さくなる時に最大値となる。また、第1磁気センサ75が出力する電圧値は、例えば、第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との径方向Dorの距離が最も大きくなる時に最小値となる。本実施形態では第1磁気センサ75が第1位置センサに対応している。
【0249】
第2磁気センサ76は、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない状態において、径方向Dorにおいて所定の隙間をあけて第2フランジ部32の第2凸部321と対向するように配置される。また、第2磁気センサ76は、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っている状態において、径方向Dorにおいて所定の隙間をあけて係合溝33と対向するように配置される。
【0250】
そして、第2磁気センサ76は、軸方向Daxにおいて第1磁気センサ75と重なる位置において、第1磁気センサ75と第2磁気センサ76との間に所定の隙間が設けられるように配置される。また、第1磁気センサ75と第1フランジ部24との径方向Dorの距離は、第2磁気センサ76と第2フランジ部32との径方向Dorの距離と略等しくなっている。
【0251】
第2磁気センサ76は、径方向Dorにおいて第2凸部321と対向する際、スリーブ30が回転して第2磁気センサ76と複数の第2凸部321それぞれとの距離が変化することで第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との間に生じる磁束の変化を検出する。第2磁気センサ76の磁気検出素子は、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との間に生じる磁束の変化を電圧値として出力する。
【0252】
第2磁気センサ76が出力する電圧値は、例えば、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との径方向Dorの距離が最も小さくなる時に最大値となる。また、第2磁気センサ76が出力する電圧値は、例えば、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との径方向Dorの距離が最も大きくなる時に最小値となる。
【0253】
また、径方向Dorにおいて係合溝33と対向する際、スリーブ30が回転することによって、第2磁気センサ76と係合溝33との距離が変化しない。このため、第2磁気センサ76の磁気検出素子は、径方向Dorにおいて係合溝33と対向する際、第2磁気センサ76と係合溝33との間において変化しない磁束を電圧値として出力する。すなわち、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っている場合、第2磁気センサ76が出力する電圧値は、一定となる。
【0254】
ここで、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない場合、第1磁気センサ75が検出する磁束の変化および第2磁気センサ76が検出する磁束の変化は、図35示すように、振幅する波形になる。そして、第1磁気センサ75および第2磁気センサ76は、図36に示すように、検出する磁束の変化に基づく波形を、予め定められるオン判定値以上の値の信号をハイ信号とし、オン判定値より小さい値の信号をロー信号として出力する。以下、第1磁気センサ75が出力する信号を第1磁気信号MS1、第2磁気センサ76が出力する信号を第2磁気信号MS2とも呼ぶ。第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2は、図36に示すように、ハイ信号およびロー信号が周期的に交互に繰り返される信号となる。本実施形態では第1磁気センサ75が第1位置信号を出力する第1位置センサに対応し、第2磁気センサ76が第2位置信号を出力する第2位置センサに対応している。
【0255】
第1磁気センサ75は、第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との間に生じる磁束の変化を示す第1磁気信号MS1をフィルタ部531に出力する。また、第2磁気センサ76は、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との間に生じる磁束の変化を示す第2磁気信号MS2をフィルタ部531に出力する。なお、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っている場合、第2磁気信号MS2は、上述したように、一定値となる。
【0256】
ところで、上述したように、第1磁気信号MS1は、第1磁気センサ75と第1凸部241との径方向Dorの距離が最も小さくなる時に最大値となり、径方向Dorの距離が最も大きくなる時に最小値となる。また、第2磁気信号MS2は、第2磁気センサ76と第2凸部321との径方向Dorの距離が最も小さくなる時に最大値となり、径方向Dorの距離が最も大きくなる時に最小値となる。このため、第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2は、第1凸部241と第2凸部321とが軸方向Daxに重なる際に、互いのハイ信号のタイミングが重なる。
【0257】
したがって、第1磁気センサ75から出力される第1磁気信号MS1および第2磁気センサ76から出力される第2磁気信号MS2それぞれのハイ信号の時間差に基づいて第1凸部241と第2凸部321との相対的な位置関係を特定することができる。例えば、図37に示すように、第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2それぞれのハイ信号がオンとなる時間が異なっているタイミングでは、第1凸部241と第2凸部321とが軸方向Daxに重なっていない。この場合、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることが不可能な不適合タイミングとなる。
【0258】
これに対して、図38に示すように、第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2それぞれのハイ信号がオンとなる時間が重なっているタイミングでは、第1凸部241と第2凸部321とが軸方向Daxに重なっている。この場合、第1ギア歯231と第2ギア歯311とを噛み合わせることが可能な係合タイミングとなる。このため、第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2に基づいて係合タイミングを特定することができる。
【0259】
ところで、上述したように、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合っていない状態で回転する従動部材20およびスリーブ30は、軸心CLからずれる軸ずれが発生する場合がある。
【0260】
従動部材20に軸ずれが発生すると、従動部材20の第1ギア部22にガタが発生し、第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との径方向Dorの距離が変化する。これにより、例えば、軸ずれが発生しない場合に比較して第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との径方向Dorの距離が大きくなる場合、図39に示すように、第1磁気センサ75が検出する磁束が小さくなる場合がある。すると、第1磁気センサ75が検出する磁束の変化を示す複数の振幅を有する波形のうち、一部の振幅の最大値がオン判定値より小さくなる場合がある。
【0261】
また、スリーブ30に軸ずれが発生すると、スリーブ30の第2ギア部31にガタが発生し、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との径方向Dorの距離が変化する。これにより、例えば、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との径方向Dorの距離が大きくなる場合、第2磁気センサ76が検出する磁束が小さくなる場合がある。そして、第2磁気センサ76が検出する磁束の変化を示す複数の振幅を有する波形のうち、一部の振幅の最大値がオン判定値より小さくなる場合がある。
【0262】
このため、従動部材20に軸ずれが発生すると、ハイ信号およびロー信号が周期的に交互に繰り返される第1磁気信号MS1は、図40に示すように、一部のハイ信号が欠けた状態となることがある。また、スリーブ30に軸ずれが発生すると、ハイ信号およびロー信号が周期的に交互に繰り返される第2磁気信号MS2も同様に、一部のハイ信号が欠けた状態となることがある。このように、従動部材20の軸ずれおよびスリーブ30の軸ずれは、第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2に対してハイ信号が欠けるパルス欠けを発生させる要因となる。そして、第1磁気センサ75および第2磁気センサ76それぞれから出力される信号がこのようなパルス欠けを含む場合、係合タイミングを正常に特定することができなくなる虞がある。
【0263】
このため、第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2に基づいて係合タイミングを特定する場合、従動部材20の軸ずれおよびスリーブ30の軸ずれに起因するパルス欠けの発生を回避することが望ましい。
【0264】
ここで、第1磁気信号MS1は、第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との径方向Dorの距離、すなわち、第1磁気センサ75と従動部材20との径方向Dorの距離に基づいている。そして、第1磁気信号MS1のパルス欠けは、従動部材20に軸ずれが発生することで、従動部材20に対する径方向Dorへのガタの発生に起因する。
【0265】
このため、第1磁気信号MS1から、従動部材20の径方向Dorへのガタの発生に起因する周波数成分を除去することによって、第1磁気センサ75と複数の第1凸部241との径方向Dorの距離の変化を抽出することができる。そしてこれにより、第1磁気信号MS1に従動部材20の軸ずれに起因するパルス欠けが発生することを回避することができる。したがって、図37および図38に示したようにパルス欠けが発生していない第1磁気信号MS1を得ることができる。
【0266】
また、第2磁気信号MS2は、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との径方向Dorの距離、すなわち、第2磁気センサ76とスリーブ30との径方向Dorの距離に基づいている。そして、第2磁気信号MS2のパルス欠けは、スリーブ30の軸ずれが発生することで、スリーブ30に対する径方向Dorへのガタの発生に起因する。
【0267】
このため、第2磁気信号MS2から、スリーブ30の径方向Dorへのガタの発生に起因する周波数成分を除去することによって、第2磁気センサ76と複数の第2凸部321との径方向Dorの距離の変化を抽出することができる。そしてこれにより、第2磁気信号MS2にスリーブ30の軸ずれに起因するパルス欠けが発生することを回避することができる。したがって、図37および図38に示したようにパルス欠けが発生していない第2磁気信号MS2を得ることができる。
【0268】
以上より、本実施形態のフィルタ部531は、上述した数式F2によってハイカットオフ周波数を求めるとともに、上述した数式F3によってローカットオフ周波数を求める。そして、フィルタ部531は、第1磁気信号MS1からハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去する。さらに、フィルタ部531は、第2磁気信号MS2からハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去する。これにより、ハイカットオフ周波数を従動部材20の回転数に応じて変化させることができるとともに、ローカットオフ周波数をスリーブ30の回転数に応じて変化させることができる。
【0269】
そして、フィルタ部531は、パルス欠けを除去した第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2を相対位置算出部532へ出力する。
【0270】
相対位置算出部532は、フィルタ部531から出力される第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2に基づいて係合タイミングを特定する。具体的に、相対位置算出部532は、第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2それぞれのハイ信号がオンとなる時間が重なるタイミングを係合タイミングとして特定する。そして、制御装置53は、相対位置算出部532が特定した係合タイミングに基づいて駆動部材40の作動を制御する。
【0271】
具体的に、制御装置53は、相対位置算出部532が係合タイミングを求めると、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へ変位するように、直動機器52のアクチュエータ522を制御する。そして、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合わされて、従動部材20とスリーブ30とが一体に回転可能な接続状態となると、走行駆動源51と車両の車軸とが接続されて車両走行用のモータから出力される動力が車両の車軸へ伝達される。
【0272】
ところで、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合わされる前の状態では、図41に示すように、第2磁気センサ76は、径方向Dorにおいて第2凸部321と対向する。そして、第1ギア歯231と第2ギア歯311との噛み合いが可能な係合タイミングになり、スリーブ30が軸方向Daxの他方側へストロークして従動部材20とスリーブ30とが係合すると第2磁気センサ76は、径方向Dorにおいて係合溝33と対向する。
【0273】
この場合、スリーブ30が回転する状態において、第2磁気センサ76と係合溝33との距離は一定である。このため、第2磁気センサ76が出力する第2磁気信号MS2は、図42に示すように、一定の値となる。
【0274】
なお、従動部材20とスリーブ30とが係合した状態において、第1磁気センサ75は、径方向Dorにおいて第1凸部241と対向する。このため、従動部材20と駆動部材40との係合が完了した状態において、第1磁気センサ75が出力する第1磁気信号MS1は、図42に示すように、ハイ信号およびロー信号が繰り返される。
【0275】
このため、制御装置53は、第1磁気信号MS1がハイ信号およびロー信号が繰り返され、第2磁気信号MS2が一定の値になると、第1凸部241と第2凸部321とが接することで従動部材20とスリーブ30との係合が完了したと判定することができる。制御装置53は、ハイ信号およびロー信号が繰り返される第1磁気信号MS1と、出力値が一定となる第2磁気信号MS2との差を検出する場合、従動部材20とスリーブ30との係合が完了したと判定してもよい。または、制御装置53は、第2磁気信号MS2の出力値が一定であることを検出した場合、従動部材20とスリーブ30との係合が完了したと判定してもよい。
【0276】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の位置検出装置60は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0277】
また、本実施形態の位置検出装置60は、複数の第1ギア歯231の回転位置に応じた第1位置信号を出力する第1磁気センサ75と、複数の第2ギア歯311の回転位置に応じた第2位置信号を出力する第2磁気センサ76と、を有する。
【0278】
これによれば、第1磁気センサ75および第2磁気センサ76それぞれの出力値に基づいて係合タイミングを特定することができる。
【0279】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0280】
(1)上記実施形態では、第1磁気センサ75は、第1磁気信号MS1をハイ信号およびロー信号で構成される信号として出力する。第2磁気センサ76は、第2磁気信号MS2をハイ信号およびロー信号で構成される信号として出力する。
【0281】
フィルタ部531は、第1磁気信号MS1からハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去して出力する。さらに、フィルタ部531は、第2磁気信号MS2からハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去して出力する。相対位置算出部532は、フィルタ部531が出力する第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2に基づいて係合タイミングを求める係合タイミング検出部5322を有する。
【0282】
これによれば、フィルタ部531が第1磁気信号MS1および第2磁気信号MS2それぞれからハイカットオフ周波数以上の周波数成分およびローカットオフ周波数以下の周波数成分を除去しない場合に比較して、係合タイミングを精度よく検出することができる。
【0283】
(2)上記実施形態では、第2磁気センサ76は、従動部材20とスリーブ30とが接続状態である場合と接続状態でない場合とで異なる信号を出力する。係合判定部534は、従動部材20とスリーブ30とが接続状態である場合と接続状態でない場合とで異なる第2磁気センサ76が出力する異なる信号に基づいて係合状態を判定する。
【0284】
これによれば、第2磁気センサ76が出力する第2磁気信号MS2に基づいて係合タイミングを検出するのに加えて係合状態も検出することができる。
【0285】
(第11実施形態の変形例)
上述の第1施形態では、位置検出装置60が係合判定部534を含む例について説明したが、これに限定されない。例えば、位置検出装置60は、係合判定部534を含まない構成であってもよい。
【0286】
(第12実施形態)
次に、第12実施形態について、図43を参照して説明する。本実施形態では、スリーブ30の形状が異なっている点が第11実施形態と相違している。これ以外は、第11実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第11実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0287】
本実施形態のスリーブ30は、図43に示すように、第11実施形態に比較して軸方向Daxの大きさが大きくなっており、第2フランジ部32と係合溝33との間に複数の第3凸部34が形成されている。複数の第3凸部34は、スリーブ30の外周部において、軸心CLから離れる方向、すなわち、径方向Dorの外側に突き出ている。複数の第3凸部34は、軸心CLを中心とする周方向Drの全周にわたって所定の間隔をあけて設けられている。複数の第3凸部34は、それぞれ同じ形に構成されている。
【0288】
また、複数の第3凸部34は、複数の第2凸部321の数量より少ない数だけ設けられている。例えば、複数の第3凸部34は、複数の第2凸部321の数量の半分の数である6個設けられている。そして、複数の第3凸部34は、軸方向Daxにおいて複数の第2凸部321のいずれかと重なるように配置されている。なお、第3凸部34の数量は6個に限定されず、複数の第2凸部321の数量と異なる数であれば6個より多く設けられていてもよいし、6個より少なく設けられていてもよい。
【0289】
第2磁気センサ76は、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っている状態において、径方向Dorにおいて所定の隙間をあけて複数の第3凸部34と対向するように配置される。
【0290】
第2磁気センサ76は、径方向Dorにおいて複数の第3凸部34と対向する際、スリーブ30が回転して第2磁気センサ76と複数の第3凸部34それぞれとの距離が変化することで第2磁気センサ76と複数の第3凸部34との間に生じる磁束の変化を検出する。第2磁気センサ76の磁気検出素子は、第2磁気センサ76と複数の第3凸部34との間に生じる磁束の変化を電圧値として出力する。
【0291】
第2磁気センサ76は、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っている場合、第2磁気センサ76と複数の第3凸部34との間に生じる磁束の変化を、ハイ信号とロー信号とが周期的に交互に繰り返される第2磁気信号MS2として出力する。ただし、複数の第3凸部34は、複数の第2凸部321の数量より少ない数だけ設けられている。
【0292】
このため、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っている際の第2磁気信号MS2は、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない場合に比較してハイ信号の数量が少なくなる。具体的に、第2磁気信号MS2は、複数の第1ギア歯231と複数の第2ギア歯311とが噛み合っていない場合に比較して所定時間内におけるハイ信号の数量が半分となる。
【0293】
このように、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合わされる前の従動部材20とスリーブ30とが係合していない状態では、図43に示すように、第2磁気センサ76は、径方向Dorにおいて第2凸部321と対向する。そして、第1ギア歯231と第2ギア歯311とが噛み合わされて従動部材20とスリーブ30とが係合した状態では、径方向Dorにおいて複数の第3凸部34と対向する。
【0294】
また、第2磁気センサ76は、従動部材20とスリーブ30とが係合している場合、従動部材20とスリーブ30とが係合していない場合に比較してハイ信号の数量が少ない第2磁気信号MS2を出力する。
【0295】
このため、制御装置53は、例えば、第2磁気信号MS2の複数のハイ信号の間隔を比較することで、従動部材20とスリーブ30との係合が完了したと判定することができる。
【0296】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0297】
上述の第1実施形態では、各ギア歯231、311および各凸部241、321について図面を用いて具体的なものを示したが、上述したものに限定されない。各ギア歯231、311および各凸部241、321は、形状、大きさ、配置態様、数、位置、材質等が異なっていてもよい。このことは、第1実施形態以外についても同様である。例えば、複数の第1凸部241それぞれは、隣り合う第1ギア歯231との間の窪み対応して軸心CLから離れる方向に突き出るようになっていてもよい。また、複数の第2凸部321それぞれは、第2ギア歯311に対応するように軸心CLから離れる方向に突き出るようになっていてもよい。
【0298】
上述の実施形態では、位置検出装置60として磁気検出素子72を含むものを例示したが、位置検出装置60は、これに限定されない。位置検出装置60は、例えば、機械式センサ、光学式センサ等を含んで構成されていてもよい。
【0299】
上述の実施形態では、本開示の位置検出装置60を車両に設けられた動力伝達装置1に適用した例について説明したが、本開示の位置検出装置60は、車両以外の機器にも適用することができる。
【0300】
上述の実施形態では、従動部材20およびスリーブ30のうち、従動部材20が回転数が大きい側であって、スリーブ30が回転数が小さい側である例について説明した。そして、ハイカットオフ周波数を従動部材20に回転数に基づいて設定し、ローカットオフ周波数をスリーブ30の回転数に基づいて設定する例について説明した。しかし、これに限定されない。
【0301】
例えば、従動部材20およびスリーブ30のうち、従動部材20が回転数が小さい側であって、スリーブ30が回転数が大きい側である場合、ローカットオフ周波数を従動部材20に回転数に基づいて設定してもよい。そして、ハイカットオフ周波数をスリーブ30の回転数に基づいて設定してもよい。
【0302】
上述の実施形態では、フィルタ部531がデジタルフィルタおよびアナログフィルタのうちのどちらか一方のみで構成されている例について説明したが、これに限定されない。
【0303】
例えば、フィルタ部531は、デジタルフィルタおよびアナログフィルタが組み合わされて構成されていてもよい。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0304】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0305】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0306】
本開示の制御装置53及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御装置53及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0307】
(本開示の観点)
上記した本開示については、例えば以下に示す観点として把握することができる。
【0308】
[第1の観点]
所定方向を軸方向としたとき、前記軸方向に延びる軸心を中心として回転可能に構成され、複数の第1ギア歯(231)を有する第1回転部材(20)と、前記軸心を中心として回転可能に構成され、前記複数の第1ギア歯と噛み合わせることが可能な複数の第2ギア歯(311)を有する第2回転部材(30、40)と、を備える動力伝達装置(1)に適用される位置検出装置であって、
回転する前記第1ギア歯と回転する前記第2ギア歯との相対的な位置関係に応じた信号を、周波数成分を含む位置信号として出力する位置センサ(70、75、76)と、
前記第1回転部材の回転数を検出し、検出した前記第1回転部材の回転数に応じた第1回転信号を出力する第1回転センサ(81、83)と、
前記第2回転部材の回転数を検出し、検出した前記第2回転部材の回転数に応じた第2回転信号を出力する第2回転センサ(82、84)と、
前記位置センサが出力する前記位置信号から所定の周波数である上側周波数以上の周波数成分および前記上側周波数より低い周波数である下側周波数以下の周波数成分を除去したフィルタ信号を出力するフィルタ部(531)と、を備え、
前記フィルタ部は、前記第1回転センサが出力する前記第1回転信号に基づいて前記上側周波数を変化させるとともに、前記第2回転センサが出力する前記第2回転信号に基づいて前記下側周波数を変化させる位置検出装置。
【0309】
[第2の観点]
前記フィルタ部は、前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分をデジタル処理によって除去するデジタルバンドパスフィルタを有する第1の観点に記載の位置検出装置。
【0310】
[第3の観点]
前記フィルタ部は、前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分をアナログ処理によって除去する複数のバンドパス回路(531a、531b、531c、531d)を有する第1の観点に記載の位置検出装置。
【0311】
[第4の観点]
前記フィルタ部は、前記上側周波数以上の周波数成分をアナログ処理によって除去するローパス回路(531e、531f)および前記下側周波数以下の周波数成分をアナログ処理によって除去するハイパス回路(531g、531h)を有する第1の観点に記載の位置検出装置。
【0312】
[第5の観点]
前記第1回転センサは、前記第1回転部材の回転数を直接検出し、
前記第2回転センサは、前記第2回転部材の回転数を直接検出する第1ないし第4の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0313】
[第6の観点]
前記動力伝達装置は、前記第1回転部材の回転数を変換する第1変換部(3)と、前記第1変換部によって前記第1回転部材の回転数とは異なる回転数に変換された回転数で前記第1回転部材と一体に回転する第3回転部材(4)と、前記第2回転部材の回転数を変換する第2変換部(5)と、前記第2変換部によって前記第2回転部材の回転数とは異なる回転数に変換された回転数で前記第2回転部材と一体に回転する第4回転部材(6)と、を有し、
前記第1回転センサは、前記第3回転部材の回転数を検出することで前記第1回転部材の回転数を間接的に検出し、
前記第2回転センサは、前記第4回転部材の回転数を検出することで前記第2回転部材の回転数を間接的に検出する第1ないし第4の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0314】
[第7の観点]
前記動力伝達装置は、該動力伝達装置の作動を制御する制御装置(53)を有する車両に適用され、
前記フィルタ部は、前記制御装置によって構成されている第1ないし第6の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0315】
[第8の観点]
前記動力伝達装置は、該動力伝達装置の作動を制御する制御装置(53)を有する車両に適用され、
前記フィルタ部は、前記制御装置と別体に構成されており、前記フィルタ信号を前記制御装置に出力する第1ないし第6の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0316】
[第9の観点]
前記第1回転部材および前記第2回転部材は、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合って一体に回転可能であって、
前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に基づいて前記第1ギア歯と前記第2ギア歯との相対位置を検出し、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合い可能となる係合タイミングを求める相対位置算出部(532)を備える第1ないし第8の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0317】
[第10の観点]
前記相対位置算出部は、前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号を複数のハイ信号および複数のロー信号に二値化したパルス信号にして出力する二値化処理部(5321)および前記二値化処理部が出力する前記パルス信号における前記複数のハイ信号それぞれの間隔に基づいて前記係合タイミングを求める係合タイミング検出部(5322)を有する第9の観点に記載の位置検出装置。
【0318】
[第11の観点]
前記相対位置算出部は、前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に対して、信号の大きさを絶対値化する検波処理を実行する検波処理部(5323)を有する第10の観点に記載の位置検出装置。
【0319】
[第12の観点]
前記相対位置算出部は、前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に対してヒルベルト変換を実行して包絡線を求めるとともに、求めた前記包絡線に基づいて前記係合タイミングを求める第9の観点に記載の位置検出装置。
【0320】
[第13の観点]
前記位置センサが出力する前記位置信号から前記上側周波数とは異なる周波数である除去周波数以上の周波数成分を除去した除去後信号を出力するローパスフィルタ部(533)と、
前記ローパスフィルタ部が出力する前記除去後信号に基づいて、前記第1ギア歯と前記第2ギア歯とが噛み合って前記第1回転部材と前記第2回転部材とが一体に回転する係合状態を判定する係合判定部(534)と、を備え
前記除去周波数は、前記第1回転部材と前記第2回転部材とが一体に回転する際の前記第1回転部材および前記第2回転部材の回転数に基づいて設定されている第9ないし第12の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0321】
[第14の観点]
前記ローパスフィルタ部は、前記第1回転センサが出力する前記第1回転信号および前記第2回転センサが出力する前記第2回転信号の少なくとも一方に基づいて前記除去周波数を変化させる第13の観点に記載の位置検出装置。
【0322】
[第15の観点]
前記ローパスフィルタ部は、前記除去周波数が予め定められている第13の観点に記載の位置検出装置。
【0323】
[第16の観点]
前記ローパスフィルタ部は、前記除去周波数以上の周波数成分をデジタル処理によって除去するデジタルローパスフィルタを有する第13ないし第15の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0324】
[第17の観点]
前記ローパスフィルタ部は、前記除去周波数以上の周波数成分をアナログ処理によって除去するアナログ回路(5331)を有する第13ないし第15の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0325】
[第18の観点]
前記位置センサは、複数の前記第1ギア歯の回転位置に応じた第1位置信号を出力する第1位置センサ(75)と、複数の前記第2ギア歯の回転位置に応じた第2位置信号を出力する第2位置センサ(76)と、によって構成されている第1ないし第8の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【0326】
[第19の観点]
前記第1回転部材および前記第2回転部材は、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合って一体に回転可能であって、
前記フィルタ部が出力する前記フィルタ信号に基づいて前記第1ギア歯と前記第2ギア歯との相対位置を検出し、前記第1ギア歯および前記第2ギア歯が噛み合い可能となる係合タイミングを求める相対位置算出部(532)を備え、
前記第1位置センサは、前記第1位置信号をハイ信号およびロー信号に二値化したパルス信号として出力し、
前記第2位置センサは、前記第2位置信号をハイ信号およびロー信号に二値化したパルス信号として出力し、
前記フィルタ部は、前記第1位置センサが出力する前記第1位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分を除去するとともに、前記第2位置センサが出力する前記第2位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分を除去し、
前記相対位置算出部は、前記第1位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分が除去された前記フィルタ信号および前記第2位置信号から前記上側周波数以上の周波数成分および前記下側周波数以下の周波数成分が除去された前記フィルタ信号それぞれに含まれるハイ信号に基づいて前記係合タイミングを求める係合タイミング検出部(5322)を有する第18の観点に記載の位置検出装置。
【0327】
[第20の観点]
前記第1ギア歯と前記第2ギア歯とが噛み合って前記第1回転部材と前記第2回転部材とが一体に回転する係合状態を判定する係合判定部(534)を備え、
前記第1位置センサおよび前記第2位置センサの少なくとも一方は、前記第1回転部材および前記第2回転部材が前記係合状態である場合と前記係合状態でない場合とで異なる信号を出力し、
前記係合判定部は、前記第1回転部材および前記第2回転部材が前記係合状態である場合と前記係合状態でない場合とで前記第1位置センサおよび前記第2位置センサの少なくとも一方が出力する異なる信号に基づいて前記係合状態を判定する第19の観点に記載の位置検出装置。
【0328】
[第21の観点]
前記位置センサは、回転する前記第1ギア歯と回転する前記第2ギア歯との相対的な位置関係によって変化する磁束の変化を検出する磁気検出素子(72)を含んでいる第1ないし第20の観点のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【符号の説明】
【0329】
1 動力伝達装置
20 第1回転部材
30、40 第2回転部材
70、75、76 位置センサ
81、83 第1回転センサ
82、84 第2回転センサ
231 第1ギア歯
311 第2ギア歯
531 フィルタ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11
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